説明

管マニピュレータ

本発明は、大きな直径の管を(8)を曲げるための装置において使用する、管(8)を搬入及び搬出する管マニピュレータに関し、この曲げるための装置において、管(8)を軸線方向において、この管を環状に取り囲む、誘導式に作用する加熱装置(3)を通して案内する。管(8)の端部には、管(8)の送り方向において軸線方向で可動な押さえスリーブ(5)が設けられており、この押さえスリーブ(5)は管を曲げるための装置と不動に接合されている。押さえスリーブ(5)は内側から管(8)を把持し、この管を内側から緊締し、管(8)を誘導式に作用する加熱装置を通して押し込む軸線方向の力を付与する。押さえスリーブ(5)は管(8)を、前方の緊締囲みロック部(2)における後方の端部が曲げアームに固定されるまで、所定の形式で誘導式に作用する加熱装置(3)を通して軸線方向に案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げようとする管を曲げ個所において誘導加熱する管曲げ機械に、管を供給しかつ導入する装置並びに方法に関する。本発明において管は、一般的に3〜120mmの壁厚、400〜1660mmの大きな直径及び数トンの重量を備えた肉厚の鋼管である。この鋼管のために開発された管曲げ機械も相応に大きく重くなっている。このような曲げ機械によって1〜10mの曲げ半径を実現することができる。
【0002】
上記構成において、曲げられた管の取り扱いには問題が多い。曲げ加工のたびに、曲げようとする管の真っ直ぐな端部を送りキャリッジに取り付ける必要がある一方で、曲げようとする端部に曲げ囲みロック部(Biegeschloss)を固定する。曲げ囲みロック部と送りキャリッジとの間に、一般的に誘導リングとも称呼される誘導加熱のための環状の装置が設けられている。この誘導リングは搬送時に管が揺れることにより損傷する危険性があるので、全ての囲み緊締工程(Umspannvorgang)及び供給工程において手間をかけて解体する必要があり、かつ解体後には再び組み立てて調整する必要がある。この構成は通常、曲げ工程の著しい遅延を意味する。この遅延は管曲げ機械の実施を著しく制限する。
【0003】
したがって、本発明の目的は、管曲げ機械のための取囲み・供給工程を短縮しかつ簡略化し、もって上記機械の達成可能な処理量を高めると共に、上記機械の経済性を高める装置を提供することである。
【0004】
上記目的は、大きな直径の管を曲げるための装置において使用する、管を移動させる管マニピュレータであって、
−曲げるための装置において、1本の管を環状に取り囲む加熱装置を通して管を軸線方向に案内し、
−管の送り方向に位置する曲げるための装置の部分に、少なくとも1つの曲げアームが設けられており、
−曲げアームに設けられている曲げ囲みロック部が曲げようとする管部材を不動に包囲し、管の送り中に曲げ回動軸を中心に運動する、
−管の端部において、管の送り方向において軸線方向に可動な押さえスリーブ(Aufnahmepinole)が、送り装置に可動に組み込まれており、
−押さえスリーブは内側から管を把持して、管を内側から緊締し、
−押さえスリーブは管を所定の形式で軸線方向に加熱装置を通して、前方の緊締装置に案内することにより達成される。
【0005】
これにより、管を正確に誘導リングを通して、後方の管の端部が誘導システムの前において十分に緊締することができるまで貫通案内することができるので、誘導リングの解体及び再構築を回避することができる。この構成において、不都合な作用を伴う管の変位運動を心配する必要はない。押さえスリーブは、管を加熱装置を通して案内する力を加える。この構成において管マニピュレータは実質的に、押さえスリーブと、この押さえスリーブの軸線方向における運動のために働く装置とから成っている。この装置は従来の先行技術に基づく一般的な送り装置に相当する。
【0006】
上記困難性を解消するために、管を案内する他の緊締装置も既に先行技術において公知になっている。ドイツ連邦共和国特許出願公開第2630967号明細書において、管を曲げて押さえニードルにより曲げ装置から引き出す構成が開示されている。この構成においては、誘導リングを取り去る必要はない。いずれにしても押さえニードルは送り部として使用されず、管を把持し管曲げ機械内に導入するための工具としても使用されない。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3147688号明細書において、管を迅速に緊締する装置が開示されている。この装置によって、可能な限り短く、曲げることができない管の長さが締付け端部に達成されるようになっている。この構成において、周面に沿って配分された複数の長手方向スリットを備えたピン状の拡開ペンチによって半径方向のクランプ運動が実施される。このために拡開ペンチは曲げようとする管の一方の端部に亘って被せ嵌められる。しかしこのような工業技術によっては、単に薄い壁厚の差しか補償可能ではなく、工具は大きな管の直径範囲にわたって使用することはできない。また、後方の管の端部を加熱装置を通じて案内することもできない。
【0008】
管のための他の締付けピンチが、ドイツ連邦共和国実用新案第1966496号明細書及び米国特許出願公開第2862540号明細書に開示されている。しかしこの締付けピンチは、種々異なる直径の大きな管を押さえ、管曲げ機械内において誘導式に曲げることに適していない。
【0009】
本発明の一構成において押さえスリーブは、水平の管中心軸線に対して垂直に位置する少なくとも2つの保持平面において曲げようとする管を固定するようになっている。上記管の内側からの押さえ装置によって、管が長手方向においても接線方向においても滑動することがないように管を不動に固定することができる。管の力導入点において変形することはないように、2つの保持平面は、大きなレバー力を確実に吸収することができる程度に互いに離れて位置する必要がある。サポートのために他の保持平面を設けることができる。
【0010】
本発明の別の構成において、固定は摩擦接続式に各保持平面において、内側から管に押し付けられる保持装置により行われるようになっている。この構成において、著しい力に基づき、規定して制限可能な圧力及び十分な力導入面に注意する必要がある。
【0011】
本発明のさらに別の構成において、各平面における保持装置は保持レバーにより形成されるようになっている。保持レバーの外側の端部は、管内面に対する力導入エレメントを有している。この構成において、保持レバーは押さえスリーブ内部の液圧システムにより操作されると共に、同心的に拡開される。保持レバーは同一方向を向いて又は反対方向を向いて配置することができる。同一方向の構成においては、種々異なる保持平面の力導入面は互いに接続することもできる。
【0012】
本発明のさらに別の構成において、各保持平面には、3,4,5又は6つの保持レバーが設けられているようになっている。保持レバーは周面に亘って均等に配分されている。
【0013】
本発明のさらに別の構成において、押さえスリーブは回動可能になっている。この構成により、複数の曲げ加工の場合において緊締が容易になり、空間的に複雑な場合がある複数の曲げ工程後に管を回動させることができ、管の確実な取出しが可能になる。
【0014】
また本発明は、上記本発明に係る装置により曲げ工程の前後において管を供給しかつ案内する方法に関し、
a)曲げようとする管を管マニピュレータの前において軸線方向に整合させて位置決めし、
b)少なくとも2つの保持平面が曲げようとする管の内側に位置するまで、閉じた保持レバーを備えた管マニピュレータの押さえスリーブを管内へ導入し、
c)押さえスリーブにより管を固定するまで、保持レバーを液圧により開き、
d)送りキャリッジにおいて管を緊締することができる位置まで、管を閉じた誘導リングを通って引き寄せ、
e)管を押し込むと同時に誘導加熱により曲げ、
f)曲げ工程の終了後に曲げられた管を、閉じているが、停止している誘導リングを通って前方の緊締装置まで送り出し、
g)曲げアーム囲みロック部において管を緊締し、
h)保持レバーを液圧により閉じ、
i)押さえスリーブを管から導出し、
j)管を搬出する、
ステップを有している。
【0015】
つまり、クレーンによって管を曲げ機械において位置決めすることはもはや必要ではない。さらに、通常の曲げ工程においては、管が冷却されるまでの待機時間はなく、連続して実施することができるので、全曲げ工程が著しく促進されるので、生産性は著しく改良される。また、搬出は簡単に、例えば天井クレーンにより行うことができる。
【0016】
上記力導入面が誘導リングの近くに達する場合には、保持レバーは開いているのではなく、保持レバーは待機位置にあることに、曲げ工程中には注意する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】曲げ機械の部分の概略図及び曲げ機械と管マニピュレータとの協働を示す図である。
【図2】図2a〜dは閉じた保持レバーと収容スリーズとを示す図である。
【図3】図3a〜dは開いた保持レバーと押さえスリーブとを示す図である。
【0018】
以下に、本発明を9つの図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1に、曲げ囲みロック部1と、曲げ回動軸線2とを備えた曲げ装置を示す。また、曲げ囲みロック部1の後方において同じ平面には誘導リング3が設けられてもいる。送り棒6に接合されている押さえスリーブ5が送りキャリッジ4の前方の部分には設けられている。押さえスリーブ5は保持レバー7を有している。押さえスリーブ5と送り棒6と保持レバー7とが、管マニピュレータを形成する。挿入される管8は誘導リング3の個所まで示してあり、この誘導リング3の後は単に、曲げられてない状態において鎖線で示す。
【0020】
図2aに、押さえスリーブ5と、送り棒6と、閉じた状態の4つの保持レバー7と、これらの保持レバー7の力導入面9とから成る管マニピュレータの側面図を示す。図2bに45°の断面図を示し、図2cに軸線方向の正面図を示し、図2dに等角投影図を示す。同様に図3aに、押さえスリーブ5と、送り棒6と、開いた状態の4つの保持レバー7と、これらの保持レバー7の力導入面9とから成る管マニピュレータの側面図を示す。図3aには保持平面10も示す。図3bに45°の断面図を示し、図3cに軸線方向の正面図を示し、図3dに等角投影図を示す。
【符号の説明】
【0021】
1 曲げ囲みロック部、 2 曲げ回動軸線、 3 誘導リング、 4 送りキャリッジ、 5 押さえスリーブ、 6 送り棒、 7 保持レバー、 8 管、 9 力導入面、 10 保持平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大きな直径の管を曲げるための装置において使用する、該管(8)を移動させるための管マニピュレータであって、
−前記曲げるための装置において、1本の前記管を環状に取り囲む加熱装置(3)を通して前記管を軸線方向に案内し、
−前記管の送り方向に位置する前記曲げるための装置の部分に、少なくとも1つの曲げアームが設けられており、
−前記曲げアームに設けられている曲げ囲みロック部(1)が曲げようとする管部材を不動に包囲し、前記管の送り中に曲げ回動軸(2)を中心に運動する、
大きな直径の管を曲げるための装置において使用する、管を移動させる管マニピュレータにおいて、
−前記管(8)の端部において、前記管の送り方向において軸線方向に可動な押さえスリーブ(5)が、送り装置(4)に可動に組み込まれており、
−前記押さえスリーブ(5)は内側から前記管(8)を把持して、該管(8)を内側から緊締し、
−前記押さえスリーブ(5)は前記管(8)を所定の形式で軸線方向に前記加熱装置(3)を通して、前方の緊締装置に案内することを特徴とする、大きな直径の管を曲げるための装置において使用する、管を移動させる管マニピュレータ。
【請求項2】
前記押さえスリーブ(5)は、管中心軸線に対して垂直に位置する少なくとも2つの保持平面(10)において、曲げようとする前記管(8)を固定することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記固定は摩擦接続式に前記各保持平面(10)において、内側から前記管(8)に押し付けられる保持装置(7,9)により行われることを特徴とする、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記保持装置(7,9)は前記各保持平面(10)において保持レバー(7)により形成され、該保持レバー(7)の外側の端部は管内面に対する力導入エレメント(9)を有しており、前記保持レバー(7)は前記押さえスリーブ(5)内部の液圧システムにより操作され、同心的に拡開されることを特徴とする、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記各保持平面(10)に3,4,5又は6つの保持レバー(7)が設けられ、該保持レバー(7)は周面に亘って均等に分配されていることを特徴とする、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記押さえスリーブ(5)は回動可能であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項記載の装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項記載の装置により、曲げ工程の前後に管(8)を供給しかつ案内するための方法において、
a)曲げようとする前記管(8)を管マニピュレータの前において軸線方向に整合させて位置決めし、
b)少なくとも2つの保持平面(10)が曲げようとする前記管(8)の内側に位置するまで、前記管マニピュレータの閉じた保持レバー(7)を備えた押さえスリーブ(5)を前記管(8)内へ導入し、
c)前記押さえスリーブ(5)により前記管(8)を固定保持するまで、前記保持レバー(7)を液圧により開き、
d)送りキャリッジ(4)において前記管(8)を緊締することができる位置まで、前記管(8)を閉じた誘導リング(3)を通って引き寄せ、
e)前記管(8)を押し込むと同時に誘導加熱により曲げ、
f)前記曲げ工程の終了後に曲げられた前記管(8)を、閉じているが、停止している誘導リング(3)を通って前方の緊締装置まで送り出し、
g)曲げアーム囲みロック部(2)において前記管を緊締し、
h)前記保持レバー(7)を液圧により閉じ、
i)前記押さえスリーブ(5)を前記管(8)から導出し、
j)前記管(8)を搬出する、
ステップを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項記載の装置により曲げ工程の前後に管を供給しかつ案内する方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【公表番号】特表2012−524662(P2012−524662A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507604(P2012−507604)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際出願番号】PCT/DE2011/000008
【国際公開番号】WO2011/085713
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(509309651)アーヴェーエス シェーファー テヒノロギー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】AWS Schaefer Technologie GmbH
【住所又は居所原語表記】Oberhausener Strasse 8, D−57234 Wilnsdorf, Germany
【Fターム(参考)】