説明

管体等固定具

【課題】部品数を少なくし、被取付部材への取り付けを容易とし、管体等を所定高さに保持して固定できること。
【解決手段】接合面部10と、その両端からそれぞれ上方に起立する起立部12と、両起立部からそれぞれ上方に湾曲して延長する把持部14と、これら両把持部の上端からそれぞれ上方に延長する締着部16とからなる管体等固定具である。接合面部は、螺子等により被取付部材に螺着される。両把持部は、管体やケーブル等を把持することができる。両締着部の対応する部位には螺子孔又は貫通孔が設けられ、両把持部が管体等を把持した後に、これら両締着部が相互に螺子等により締着され、管体等を固定できる。接合面部以外の起立部、把持部及び締着部の両側縁部にはふち立て部を設ける。接合面部と起立部との境界部20は塑性変形可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面、床面、柱等の被取付部材に取り付けて、各種管体等を固定するための固定具に関するものであり、金属製の管体を始め、硬質合成樹脂製及び軟質合成樹脂製のもの等の各種管体やケーブル、更には棒状体等をも固定できるものである。また本発明に係る固定具は、金属製のものとして開発されたが、合成樹脂製のものとして実施することもできる。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の管体等固定具を図示する分解説明図である。
この管体等固定具は、ベース部材60とその上面に螺子62によって固定されるサドル部材65とから構成される。ベース部材60は、平面視略矩形形状で、その前方と後方縁部には下向きに起立部61、61が形成され、固定される管体69を一定の高さに維持して固定することができる。また、その中央部には、ベース部材60を壁面等に固定する螺子挿通孔63が設けられ、その両端部側には螺子孔64、64が形成されている。
他方、サドル部材65には、逆U字形状の本体部の両脚部先端部を水平方向に折曲して形成した取付部66、66が形成され、これらの取付部66のそれぞれには固定用の螺子62が挿通する螺子挿通孔67が設けられている。これら螺子挿通孔67と前記螺子孔64の位置を合致させ、螺子62によってサドル部材65をベース部材60に螺着し、管体69がサドル部材65に固定される。
【0003】
その他、従来の管体等固定具としては、以下の特許文献に記載のものを挙げることができる。
【特許文献1】特開2005−106279号公報
【特許文献2】特開2000−312421号公報
【特許文献3】特開2000−9261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明に係る管体等固定具においては、先ず壁面や床面等の被取付部材への取り付けを簡単なものとすること、部品点数を少なくすること、異なる管体の外径にも同一のサイズの固定具である程度対応できるようにすることをその課題とする。
また、上記図4に記載した従来の固定金具においては、ベース部材を用いることにより固定される管体等と壁面や床面等との間隔を保持することにより、管体と壁面との間に塵埃等が溜まってしまうことを防止し、通気性を維持し、腐食等を防止しているのであるが、このような効果をツーピースのものでなく、ワンピースの固定具により実現することも本発明の課題である。
更には、本発明の固定具を壁面等に取り付けた後、管体等をこの固定具に仮置きでき、仮置きした管体等が容易には脱落又は落下しないようにすることもその課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、被取付部材に接合する接合面部と、接合面部の両端からそれぞれ上方に起立する起立部と、これら両起立部からそれぞれ上方に湾曲して延長する把持部と、これら把持部の上端からそれぞれ上方に延長する締着部とからなり、前記接合面部には螺子孔又は貫通孔が設けられ、螺子等により被取付部材に螺着等することができ、前記両把持部は、管体やケーブル等を把持することができ、前記両締着部の対応する部位には螺子孔又は貫通孔が設けられ、前記両把持部が管体等を把持した後に、これら両締着部が相互に螺子等により締着されて管体等を固定することができる管体等固定具である。
【0006】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、接合面部以外の起立部、把持部及び締着部の両側縁部の全部又は一部を起立させた、ふち立て部を設けたことを特徴とする管体等固定具である。
本発明の第3のものは、上記第1又は第2の発明において、接合面部と起立部との境界部を塑性変形可能に形成したことを特徴とする管体等固定具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1のものにおいては、その起立部の存在により、固定される管体が起立部の高さ分だけ高位置に保持されて、管体等と被取付部材である壁面等との間に間隔を維持することができる。これにより管体等と壁面等との間に塵埃が溜まることを防止でき、管体等の周囲の通気性が向上し、腐食等の防止にもつながる。
この効果を発揮するために、本発明では、従来のベース部材とサドル部材とのツービースのものでなく、たった1個の部材でこの効果を実現することができる。
また、把持部が管体等を把持した後、両締着部を螺子等によって締め付けて管体等を固定することができるため、両締着部間の間隔調整により、ある程度異なる外径の管体をも固定することができる。
本発明は1個の部材からなるために、その固定も1個の螺子等で固定でき、図4に示した従来の固定具のようにベース部材の壁面等への固定、そしてベース部材へのサドル部材の固定等の数回の螺着作業が、簡単に1度の螺着作業によって壁面等に取り付けることができ、取付作業の簡略化に寄与する。
【0008】
本発明の第2のものにおいては、接合面部以外の起立部、把持部及び締着部の両側縁部の全部又は一部にふち立て加工を施して、ふち立て部を設けている関係上、固定される管体等の表面が固定具の側縁部によって傷つけられないという効果を発揮する。
本発明の第3のものにおいては、接合面部と起立部との境界部が塑性変形を行うために、管体等を把持部に把持させる際に、両締着部を指等を用いて把持部を先ず広げ、管体を両把持部間に把持させ、その後やはり指等を用いて両把持部を内側方向に押圧する。このような操作により、上記接合面部と起立部との境界が塑性変形を行うことにより、両把持部は、管体等を保持したままの状態を維持することとなり、管体等の仮置きができ、両締着部を螺子等により締着するまでの暫くの間、管体等を保持したままの状態に維持することが出来るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付の図面と共に本発明の一実施例について説明する。
図1は、本発明に係る管体等固定具の一実施形態の全体斜視図である。
本発明に係る配管等固定具は、一枚の金属製板材を折曲して形成する。その略中央部には、接合面部10が設けられ、この接合面部10の略中央部には貫通孔11が穿設されている。この接合面部10が壁面、床面、柱等の被取付部材に接合され、螺子等により取り付けられるのである。
【0010】
この貫通孔11を螺子孔に形成し、図3で後に説明するように他の管体等固定具を螺着することもできる。
接合面部10の両側に略上方方向に延長するように起立部12を設ける。この起立部12の存在により固定される管体等が被取付部材に一定の高さを維持して固定されることとなる。
起立部の12の高さは、適宜必要に応じて決定することができるが、最低、螺着用の螺子頭部の高さ分の高さを保つ必要がある。
【0011】
両起立部12、12の上端から更に上方に湾曲して延長する把持部14、14が形成されている。これら両把持部14、14が固定される管体等を両側から把持することができる。
この把持部14、14の曲率は、適宜大きさの管体等の外径に合致するように形成するが、管体等を両側から挟みつけるように把持するために、固定される管体の外径は多少大小異なっていても把持可能である。
これら両把持部14、14の上端から更に締着部16、16が斜め上方に延長するように形成されている。
【0012】
締着部16の一方には螺子孔17が、他方には貫通孔18が設けられている。これにより、図示はしていないが、螺子の先端部を貫通孔18から貫通させ、対向する螺子孔17と螺合させて、両締着部16、16を相互に近づける方向に締め付けることができる。
螺子孔17は、貫通孔に形成してもよく、その際はボルト・ナットにより締着すればよい。
更に、この実施形態においては、起立部12の両側縁部を固定される管体等の配管方向と直行する方向に起立するように折り曲げ、ふち立て加工を施している。この起立部12の両側縁のふち立て部を13で示し、把持部14の両側縁のふち立て部を15で示し、締着部16の両側縁のふち立て部を19で示している。
【0013】
従って、ふち立て部13,15,19は、起立部12の始端から締着部16の終端まで連続して、固定具の両側に設けられている。
これらのふち立て部が固定される管体等の表面部を保護することができ、管体等の表面に傷が付くことを防止できる。
このふち立て部は、接合面部10の両側縁部には設けていない。接合面部10にも設けた場合には、この固定具の両側縁の全てにふち立て部が形成されることとなり、接合面部12と起立部12との境界部15の折曲が困難となる。即ち、ふち立て部は補強効果を有しているために、後に説明するこの境界部20の塑性変形を阻害することとなるからである。
【0014】
この固定具は、締着部16の間隔調整で、即ち、螺子等の締め付けの程度により、固定できる管体等の外径は大小多少異なるものであっても固定することができる。
本発明に係る固定具は、金属製であり、所謂一般みがき鋼と呼ばれるもので、塑性変形可能なものを用いている。即ち、針金のような塑性変形を有するものを使用している。しかし一般の針金程の柔軟性はない。
この素材を用いることにより、起立部から把持部そして締着部に至る両側縁部に形成されたふち立て部が補強効果を発揮し、これらの部分では変形しないように構成し、接合面部と起立部との境界部のみが塑性変形しうるように形成したのである。
これにより、幾つかの固定具を被取付部材に取り付けておき、それぞれの固定具の両締着部を指等により広げて固定すべき管体を把持部に把持させ、その後やはり親指と人差し指で挟んで両締着部を近接させることによって管体が保持され、管体を締着部で螺子等により締め付ける前の段階で、管体を仮置きしておくことができるのである。
【0015】
図2は、本発明に係る固定具の使用例を示す説明図である。
本発明に係る固定具Sは、その接合面部に形成されている貫通孔を利用して螺子等により壁面、床面、柱等に簡単に螺着して取り付けることができるが、この図に示した通り、L型鋼50の縁部に金属製のクリップ60を取り付け、このクリップ60に設けられている螺子穴を利用して螺着することができる。
このように、本発明に係る固定具Sは、直接被取付部材に取り付けるばかりでなく、図2のようにクリップ60等の固定具用取付具を利用して間接的に取り付けることも出来る。
【0016】
図3は、本発明に係る固定具の他の使用例を示す説明図である。
ここに示した例は、本発明に係る固定具を2つ利用して、接合面部を相互に螺着し、固定される管体71、72を略90度に交差させるように配管したものである。
この場合、一方の固定具S1の接合面部S10には螺子孔を設け、他方の固定具S2の接合面部S20には貫通孔を設け、固定具S2の側から螺着すればよい。
このように本発明においては、用途を考慮して、接合面部に螺子孔又は貫通孔の何れかを設けたものを2種類製作し、用途に合わせて何れかのタイプのものを使用すればよいものである。
本発明に係る固定具の使用方法は全く自由であり、上記のものに限られない。
【0017】
以上、一実施形態について説明したが、本発明においては、その大きさは、適宜所望のサイズに設定することができる。
把持部の湾曲度又は曲率も自由に設定でき、固定される管体等のサイズに合わせて種々の大きさのものを用意することができる。
把持部上端から上方に延長する締着部の延長角度も自由に設定することができ、これら両締着部を接合したときに略鉛直上方に向くように設定すればよい。
また、締着部の一方に設けられた貫通孔は図では略円形に示されているが、上下方向に長い長円形に形成しておくことも自由である。貫通孔を長円形にすることにより、貫通孔から挿入した螺子の先端部が対向する締着部に設けられた螺子孔に良好に螺合することができる。
【0018】
起立部の高さも自由に設定することができ、その配管方向から見た横幅も自由に設定することができる。ただし螺子頭部がその接合面部と起立部との空間に収まるように形成する必要がある。
ふち立て部は、起立部、把持部、及び締着部の両側縁部に設けているが、管体等の表面部の保護のために、少なくとも把持部にのみ設けても良い。しかし、このふち立て部は、補強効果も有しているために、これらの部分の塑性変形を防止するために、これらの部分の全体に設けた方が好ましい。但し接合面部と起立部の間の境界部の両側縁にはこのふち立て部は設けない。両者間の境界部の塑性変形を可能とするためである。
ふち立て部は、それぞれの部分の側縁から鋭角的でなく、湾曲するようにアールをもって形成することが好ましい。
接合面部には螺子孔又は貫通孔の何れかを設けることができる。
また、本発明に係る固定具は、金属製でなく、合成樹脂製のものとして実施することも可能である。
以上、本発明においては、請求の範囲内で種々設計変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る固定具の一実施形態の全体斜視図である。
【図2】本発明に係る固定具の使用例を示す説明図である。
【図3】本発明に係る固定具の他の使用例を示す説明図である。
【図4】従来の管体等固定具を図示する分解説明図である。
【符号の説明】
【0020】
10 接合面部
11 貫通孔
12 起立部
13、15、19 ふち立て部
14 把持部
16 締着部
17 螺子孔
18 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材に接合する接合面部(10)と、接合面部(10)の両端からそれぞれ上方に起立する起立部(12, 12)と、これら両起立部(12, 12)からそれぞれ上方に湾曲して延長する把持部(14, 14)と、これら把持部(14, 14)の上端からそれぞれ上方に延長する締着部(16, 16)とからなり、
前記接合面部(10)には螺子孔又は貫通孔(11)が設けられ、螺子等により被取付部材に螺着等することができ、
前記両把持部(14, 14)は、管体やケーブル等を把持することができ、
前記両締着部(16, 16)の対応する部位には螺子孔(17)又は貫通孔(18)が設けられ、前記両把持部(14, 14)が管体等を把持した後に、これら両締着部(16, 16)が相互に螺子等により締着されて管体等を固定することができる管体等固定具。
【請求項2】
請求項1において、接合面部(10)以外の起立部(12, 12)、把持部(14, 14)及び締着部(16, 16)の両側縁部の全部又は一部を起立させた、ふち立て部(13, 15, 19)を設けたことを特徴とする管体等固定具。
【請求項3】
請求項1又は2において、接合面部(10)と起立部(12, 12)との境界部(20, 20)を塑性変形可能に形成したことを特徴とする管体等固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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