説明

管内の生体サンプルのための液体処理プランジャ

【課題】管内で生体サンプルと試薬とを混合させるためのプランジャに関し、プランジャを除去することなくピペットが試験管内の抽出材料を引き出すことができるようにする。
【解決手段】プランジャ10は、中空円筒形状を成しており、下端に口部を有し、複数のスロット14が円筒面上に形成されるとともに、開口16が上端に形成される。試験管20から除去されるときのプランジャからの滴り落ちに起因する汚染を回避でき、また、サンプルが試薬と混合された後、試験管内の液体を引き出すために使用されるピペットがサンプルの断片102によって塞がれない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、試験管内で生体サンプルと試薬とを混合させるためのプランジャであって、生体サンプルと試薬とを十分に混合させるために上下に往復動されるプランジャに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]生物学的分析を行なうプロセスでは、分析されるべき材料を抽出するために、生体サンプルおよび試薬が試験管内に配置される。抽出される材料の濃度は、正確に分析されるのに十分な程度でなければならない。例えば、生体サンプルのDNAが抽出されるべき場合には、通常、生体サンプルが試験管内に配置された後、サンプルを抽出するための試薬が生体サンプルと混合するために加えられる。DNAを効果的に抽出するためには、DNAの濃度を分析されるのに十分高くできるように試薬とサンプルとが互いに十分に混合されなければならない。
【0003】
[0003]従来、プランジャ100は、試験管20内で(図1に示されるように)垂直に往復動により撹拌して生体サンプル102と試薬104との混合を促進させるために使用される。一般に使用されるプランジャは、中実の円柱体またはテーパ状の円柱体である。作業時、プランジャが試験管内で往復動する際に試験管内の液体がこぼれ出るのを避けるために、プランジャと試験管との間に十分大きい隙間が維持される。しかしながら、隙間が大きすぎる場合には、サンプルと試薬とを混合させるためのプランジャ撹拌があまり効果的でなくなる。
【0004】
[0004]また、抽出プロセスが完了された後、抽出された材料をその後の分析のために試験管から引き出さなければならない。材料を引き出す前に、プランジャが除去されなければならず、また、(図2に示されるような)吸引ピペット30が使用される。しかしながら、プランジャの除去中には少なくとも2つの問題が生じる。第1に、プランジャに付着される流体が試験管の外側に滴り落ちる場合がある。これにより、作業者が流体と接触する可能性が高まるだけでなく、流体が他の試験管上に滴り落ちて予期しない危険な結果を引き起こす場合には他の試験管も汚染する。したがって、生体サンプルを処理するプロセス時には、そのような流体の滴り落ちが回避されなければならない。第2に、生体サンプルを処理する自動プロセスでは、ピペットが試験管内に配置される前にプランジャが除去される。この状況でも、依然として流体が他の試験管上に滴り落ちて汚染を引き起こす可能性があるとともに、作業プロセスが複雑になる。試験管を把持する、プランジャを除去する、プランジャを解放するなどの更なるステップも必要とされる。しかしながら、これらの更なるステップは、生体サンプルと試薬との混合の効率を低下させる。
【0005】
[0005]また、生体サンプルは、生物体からチップまたは小片を切除することによって得られるため、サンプルの組織がそれらを試験管内で撹拌した後に更に小さい小片に分断される可能性がある。そのため、吸引ピペットが使用される際に、サンプルチップまたは小片が吸引ピペット内に引き込まれて詰まりを引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]先の説明から明らかなように、従来から使用されるプランジャは、克服されるべき幾つかの欠点を依然として有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本発明のプランジャは、従来のプランジャと同様な円柱形態を成すが、相違点として、以下の特徴、すなわち、中心部が中空、下端に形成される口部、円筒面に形成される複数のスロット、上端に形成される開口、および、開口の周囲に形成される肩部が挙げられる。
【0008】
[0008]本発明のプランジャの使用時には、該プランジャは従来のプランジャと同様である。すなわち、プランジャは、試験管内の生体サンプルを撹拌して破砕するために試験管内で往復動され、それにより、試験管内で生体サンプルが試薬と十分に混合され、分析されるべき材料を抽出できる。
【0009】
[0009]本発明のプランジャは中空である。プランジャの下端に形成される口部およびプランジャの円筒面に形成されるスロットは、プランジャが下方へ移動されるときに試験管内の流体の押圧を促進し、また、流体の一部は、口部およびスロットを通じて試験管内へ流入させられるとともに、流体の他の部分は、試験管とプランジャとの間の隙間を通じて流され、したがって、試験管内の流体に対して効果的な撹拌がもたらされる。プランジャを数回往復動させた後、試験管内のサンプルおよび試薬を互いに十分に混合させることができる。
【0010】
[0010]また、本発明のプランジャはその上端に開口を有しており、それにより、試験管内のサンプルおよび試薬が互いに十分に混合した後、その後の分析のために吸引ピペットを使用して試験管内の流体混合物をプランジャの開口から引き出すことができる。プランジャはサンプルおよび試薬を撹拌するために上下に往復動するため、必然的にサンプルが更に小さい切片または断片に破砕される。プランジャが除去された後にピペットを使用して試験管内の液体を引き出す場合には、断片が液体と共に引き出されてピペットを詰まらせる可能性が非常に高い。しかしながら、ピペットを使用してプランジャの開口から液体を引き出す場合には、液体中の断片がプランジャ内から排除されてピペット内へ引き込まれない。
【0011】
[0011]したがって、本発明のプランジャを使用すると、サンプルと試薬とを混合させるための時間が短縮されるだけでなく、試験管から液体を引き出す前にプランジャを除去する必要もなくなる。つまり、サンプルと試薬とを混合させるための時間が短縮されるとともに、試験管から除去されるときのプランジャからの滴り落ちに起因する汚染を回避できる。また、サンプルが試薬と混合された後、試験管内の液体を引き出すために使用されるピペットがサンプルの断片によって塞がれない。
【0012】
[0012]本発明の特徴は、好ましい実施形態の以下の詳細な説明と共に本発明の図面を参照することにより当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来技術で使用されるプランジャを示している。
【図2】従来技術で使用されるプランジャを示している。
【図3】本発明のプランジャおよび該プランジャと共に使用される試験管を示している。
【図4】試験管中に完全に浸漬された本発明のプランジャを示している。
【図5】作業中における本発明のプランジャを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0017]以下、図面にしたがって本発明の実施形態について説明する。
【0015】
[0018]本発明のプランジャ10は、生体サンプルと試薬との混合を促進するために使用される。プランジャは、生体サンプルを撹拌して破砕するために試験管内で上下に往復動され、それにより、生体サンプルと試薬とが互いに急速に混合される。図3は本発明に係るプランジャ10を示している。プランジャ10は、円筒の中空構造を成しており、上端の開口16、下端の口部12、および、円筒面上の複数のスロット14を有する。スロット14は、プランジャの長手方向軸線に沿って形成されるのが好ましい。プランジャ10の上端には肩部18が形成される。
【0016】
[0019]外径は、プランジャが試験管20内で上下に往復動できるように試験管20の内径よりも僅かに小さい。図4は、プランジャ10が試験管20内にある状態を示している。肩部18の直径は試験管20の内径よりも大きく、そのため、プランジャ10が試験管20の上端面に当て付くことができる。
【0017】
[0020]図5の右側は、プランジャ10が試験管20内にあって試験管20内で上下動することを示している。プランジャ10は、図1の従来技術のプランジャ100とは異なる。プランジャ10は、中空の内部を有する円筒形状を成す。プランジャの下端は口部12を有し、また、プランジャの円筒面は複数のスロット14を有する。プランジャが下方へ移動されると、試験管20内の流体が押圧され、流体の一部がプランジャ10の外面と試験管20との間の隙間を通じて流れる。流体の他の部分は、口部12およびスロット14を通じてプランジャ10の内部へ流れ込む。したがって、プランジャによって引き起こされる撹拌の効果は図1に示される効果を上回る。すなわち、プランジャは、非常に短い時間でサンプルからの材料の抽出を促進する。
【0018】
[0021]撹拌プロセスおよび抽出プロセスが完了した後、分析プロセスが始まる。図5の左側に示されるように、プランジャ10は、中空であるとともに、その上端に開口16を有する。試験管20内の流体を引き出そうとするときには、試験管20内にピペット30を位置させる前に図2に示される従来技術のように、プランジャ100を除去する必要はない。図5の左側に示されるように、プランジャ10を除去する必要がない。ピペット30は、プランジャ内の液体を引き出すために中空のプランジャ10内へ直接に挿入される。プランジャ10を除去する必要がないため、生体サンプルの処理効率が高められる。これに対し、従来のプランジャが試験管から除去されるときには、プランジャに付着された液体が他の試験管に滴り落ちあるいは作業者に接触する。それにより、分析結果の精度に影響が及ぶだけでなく、作業者への感染の危険も高まる。
【0019】
[0022]プランジャによる撹拌の後、試験管は、通常は、サンプルの幾つかの断片102を収容する。(図2に示されるように)試験管20内の液体を引き出すためにピペット30が使用される前にプランジャ100が除去される場合には、断片102が必然的にピペットに引き込まれてピペットが詰まる。
【0020】
[0023]図5の左側に示されるように、プランジャ10が試験管20内でサンプルおよび試薬を撹拌した後、プランジャ10は除去されずに試験管20内に配置されたままである。液体をプランジャから引き出すために、ピペット30がプランジャの上端の開口16を通じて試験管20内に挿入される。したがって、断片がプランジャ10によって阻害され、断片がピペット30に引き込まれてピペット30を詰まらせる。
【0021】
[0024]要約すると、本発明のプランジャは、効果的な撹拌を行なって、試験管流出を回避するとともに、プランジャを最初に除去する必要なく、プランジャの上端の開口を通じてピペットを試験管内に挿入して試験管内の液体を引き出すという利点を有する。また、プランジャが試験管内に配置されたままであるため、生体サンプルの断片がプランジャによって阻害され、試験管内の液体を引き出すためにピペットが使用されるときに断片がピペットに入ることが防止される。したがって、抽出された材料のその後の分析が、ピペットにより引き出される断片によって妨げられない。
【0022】
[0025]本発明は、本発明の思想および本質から逸脱することなく他の特定の態様で実施されてもよい。したがって、前述した実施形態は、解説的なものと見なされるべきであって、限定的に見なされるべきではない。特許請求項の意味および範囲と一貫性のある全ての変更および等価物は、本発明の特許請求項の範囲内に入るものとする。
【符号の説明】
【0023】
10…プランジャ、12…口部、14…スロット、16…開口、18…肩部、20…試験管、30…ピペット、100…プランジャ、102…生体サンプル、104…試薬

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内の生体サンプルのための液体処理プランジャであって、
前記管内の生体サンプルおよび試薬を互いに十分に混合させることができるように前記管内で上下に往復動するとともに、複数のスロットがその表面に形成される中空構造を成す、液体処理プランジャ。
【請求項2】
前記スロットが前記プランジャの長手方向軸線に沿って形成される、請求項1に記載の液体処理プランジャ。
【請求項3】
前記プランジャの下端に口部が形成される、請求項1に記載の液体処理プランジャ。
【請求項4】
ピペットを前記プランジャ内に挿入できるように前記プランジャの上端に開口が形成される、請求項1に記載の液体処理プランジャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−61333(P2013−61333A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−198661(P2012−198661)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【出願人】(508017111)タイゲン バイオサイエンス コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】