説明

管内調査機器挿入具

【課題】 内視鏡などの調査機器を送り出す案内部材を、管内へ挿入する際には確実に収納状態に維持する一方、管内で展開させる際にはスムーズで確実に展開させることができる管内調査機器挿入具の提供。
【解決手段】 補修弁5に着脱可能に取り付けられる取付部材25と、取付部材25に水密状態で上下動可能に設けられる挿入部材27と、挿入部材27の下端部に設けられ、内視鏡本体Sを収容可能なホルダー29と、ホルダー29に回転可能にかつ上下動可能に保持される案内部材31とを備える。案内部材31はホルダー29に対して垂下した状態では回動が規制されており、ホルダー29に対して相対的に上方へ押し上げられるとねじりコイルバネ107の付勢力により回動して展開する。案内部材31の回動が規制された状態で挿入部材27が押し込まれ、案内部材31の先端部が管底に当接してホルダー29に対し相対的に上方へ移動することで案内部材31が回動して展開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種管内を調査するために、管内へ調査用機器を送り込むのに用いられる挿入具に関し、特に上水道配水管内に不断水で内視鏡を送り込むための内視鏡挿入具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本件発明者は、先に、下記特許文献1に開示されるように、縦管部から横管部(配水管)内へ内視鏡を送り込むための内視鏡挿入器を提案している。この特許文献1に記載の発明によれば、不断水で縦管部から横管部内へ内視鏡を送り込み配水管内の調査を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3704104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、板バネ(51)の付勢力にさからってガイド板(37)を展開させる必要があった。かといって、板バネ(51)を無くすとガイド板(37)が不用意に展開して配水管内に挿入するのに支障をきたすものであった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、内視鏡などの調査機器を送り出す案内部材を、管内へ挿入する際には確実に収納状態に維持する一方、管内で展開させる際にはスムーズで確実に展開できる管内調査機器挿入具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、請求項1に記載の発明は、管内への調査機器の挿入具であって、棒状または筒状の挿入部材の下端部に設けられ、調査機器本体が配置されるホルダーと、このホルダーの下端部に回動可能に、かつ、上下動可能に設けられ、前記ホルダーに対して垂下した状態では、前記ホルダーより下方へ延出する案内部材とを備え、前記案内部材は、垂下した状態では、回動が規制されており、前記ホルダーに対し相対移動して設定位置まで上方へ押し上げられると回動可能とされることを特徴とする管内調査機器挿入具である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記案内部材は、付勢手段により展開する方向へ付勢されており、前記ホルダーに対し相対移動して設定位置まで上方へ押し上げられると、前記案内部材は前記付勢手段の付勢力により回動して展開することを特徴とする請求項1に記載の管内調査機器挿入具である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記案内部材に設けられた取付ピンが、前記ホルダーに形成された第一溝に回動可能にかつ上下動可能に通されており、前記案内部材に設けられた誘導ピンが、前記ホルダーに形成された第二溝に通されており、前記第二溝は、上下に長い縦溝と、この縦溝の上端部から連続して設けられる円弧状溝とを有し、前記案内部材が前記ホルダーに対して垂下した状態では、前記取付ピンは第一溝の下端部に配置される一方、前記誘導ピンは縦溝の下端部に配置されており、前記ホルダーが前記案内部材に対して下方へ移動して、前記誘導ピンが前記縦溝の上端部に位置した際に、前記付勢手段の付勢力により前記案内部材が前記ホルダーに対して回動することを特徴とする請求項2に記載の管内調査機器挿入具である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、横管から上方へ向けて分岐する縦管部に取り付けられる筒状の取付部材をさらに備え、前記挿入部材は、前記取付部材の上部において前記取付部材との隙間が封止されて、前記取付部材に対して上下に進退可能に設けられ、前記調査機器のケーブルは、前記挿入部材の上部において前記挿入部材との隙間が封止されて、前記挿入部材に対して進退可能とされることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の管内調査機器挿入具である。
【0010】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記調査機器は、調査機器本体がカメラを内蔵した内視鏡とされることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の管内調査機器挿入具である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の管内調査機器挿入具によれば、内視鏡などの調査機器を送り出す案内部材を、管内へ挿入する際には確実に収納状態に維持する一方、管内で展開させる際にはスムーズで確実に展開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】配水管の縦管部に消火栓が設けられた状態を示す縦断面図である。
【図2】本発明の管内調査機器挿入具の一実施例の使用状態を示す図であり、管内調査機器挿入具が補修弁に取り付けられた状態を示す縦断面図である。
【図3】図2の管内調査機器挿入具の一部を示す拡大図である。
【図4】図2の管内調査機器挿入具のホルダーおよび案内部材を示す図であり、案内部材がホルダーに対して垂下した状態を示す断面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】図4のB−B断面図である。
【図7】図2の管内調査機器挿入具のホルダーおよび案内部材を示す図であり、案内部材がホルダーに対して展開した状態を示す断面図である。
【図8】図2の管内調査機器挿入具の止水部を示す概略図である。
【図9】図2の管内調査機器挿入具のホルダーおよび案内部材を示す図であり、案内部材がホルダーに対して傾斜している状態を示す斜視図である。
【図10】図2の管内調査機器挿入具のホルダーおよび案内部材を示す図であり、(a)は案内部材がホルダーに対して垂下した状態を背面から見た斜視図であり、(b)は(a)の一部拡大図である。
【図11】図2の状態から挿入部材が押し込まれた状態を示す図である。
【図12】図11の状態からさらに挿入部材が押し込まれ、ホルダーの下端部が配水管の管底に到達した状態を示す図である。
【図13】図12の一部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の管内調査機器挿入具の実施例について図面に基づいて具体的に説明する。本発明の管内調査機器挿入具は、各種の気体や液体が通される管内に調査機器を送り込むのに用いることが可能であるが、以下においては、上水道配水管内の状況を調査するために、配水管を断水することなく配水管内に内視鏡を送り込むのに使用される場合について説明する。
【0014】
図1は、配水管に縦管部が設けられた状態を示す縦断面図である。
【0015】
横管からなる配水管には、適宜、上方へ分岐して縦管部が設けられている。たとえば、図1に示すように、横管1には、適宜、上方へ分岐して縦管3が設けられており、この縦管3に補修弁5などを介して消火栓Hが接続されて縦管部Tが構成されている。なお、図示例では、縦管部Tを構成する消火栓Hや補修弁5などは、地下に形成されたボックスB内に収容されている。
【0016】
本実施例の管内調査機器挿入具は、消火栓Hなどの縦管部Tから配水管1内へ内視鏡を送り込むことが可能であるが、ここでは、本実施例の管内調査機器挿入具を使用して補修弁5から内視鏡を送り込む場合について説明する。
【0017】
図2は、本発明の管内調査機器挿入具の一実施例を示す図であり、補修弁に取り付けられた状態を示す縦断面図である。なお、以下の説明においては、図2に示す状態において、上下左右を定義し、紙面に垂直な方向を前後方向とする。
【0018】
補修弁5は、スライド式補修弁などでもよいが、図示例では、ボール式補修弁とされている。ボール式補修弁5は、弁箱7と、この弁箱7に回転可能に収容される球状の弁体9とを有する。弁箱7には、上下両端部にフランジ11,13が形成されており、下側のフランジ13は、縦管3の上端部のフランジ15に接続される。
一方、弁箱7の上側のフランジ11は、本実施例の管内調査機器挿入具の設置前には、図1に示すように、通常、消火栓Hが接続されている。また、弁箱7には、図2に示すように、上下方向に貫通して管路17が設けられており、この管路17の中途に弁体9が回転可能に配置されている。弁体9には、直径方向に貫通穴19が形成されており、この貫通穴19の直径は、前記管路17の直径と対応している。このような構成であるから、弁体9を開閉操作するレバー21により弁体9の貫通穴19の向きを弁箱7の管路17に沿って上下方向に配置するか(図12)、あるいは管路17と垂直な横方向に配置するかにより(図2)、補修弁5の開閉が可能とされる。
【0019】
本実施例の管内調査機器挿入具は、補修弁5を閉じて縦管3を止水し、その状態で補修弁5から消火栓Hが取り外された後に、補修弁5に取り付けられる。
【0020】
図3は、図2の管内調査機器挿入具の一部を示す拡大図である。また、図4は、図2の管内調査機器挿入具のホルダーおよび案内部材を示す図であり、案内部材がホルダーに対して垂下した状態を示す断面図であり、図5は図4のA−A断面図であり、図6は図4のB−B断面図である。さらに、図7は、図2の管内調査機器挿入具のホルダーおよび案内部材を示す図であり、案内部材がホルダーに対して展開した状態を示す断面図である。
【0021】
本実施例の管内調査機器挿入具は、補修弁5に着脱可能に取り付けられる取付部材25と、この取付部材25に水密状態で上下動可能に設けられる挿入部材27と、この挿入部材27の下端部に設けられ、内視鏡本体Sを収容可能なホルダー29と、このホルダー29に回転可能に保持される案内部材31とを主要部に備える。
【0022】
取付部材25は、円筒状とされ、軸線を上下に配置して補修弁5に取り付けられる。
具体的には、取付部材25の上下両端部には、それぞれ径方向外側へ延出してフランジ33,35が形成されている。また、取付部材25の軸方向中途部には、水平に延出して開閉弁37付き排水管39が接続されている。
【0023】
取付部材25は、その下端部のフランジ35が補修弁5の上側のフランジ11に重ね合わされて、ボルト・ナット(不図示)により補修弁5に固定される。この際、補修弁5の上側のフランジ11と取付部材25の下側のフランジ35との間にはシール材(不図示)が配置され、水密で固定される。
【0024】
取付部材25の上端部には、止水部41が設けられており、この止水部41を介して挿入部材27が取付部材25に水密状態で差し込まれる。
【0025】
図8は、止水部を示す概略図である。
止水部41は、取付部材25の上端部に載せ置かれるパッキン収容部43と、このパッキン収容部43に設けられるパッキン45と、このパッキン45を固定するパッキン押え47とを有する。パッキン収容部43は、略円板形状とされ、その中央部は上方へ若干突出している。パッキン収容部43は、取付部材25の上端部に載せ置かれて取付部材25のフランジ33にボルト(不図示)で固定される。また、パッキン収容部43の中央部には、軸方向に沿って段付き穴49が貫通して形成されている。この段付き穴49の内、上側の大径穴49aにパッキン45が収容される。
【0026】
本実施例のパッキン45は、複数のシール材51により構成される。各シール材51は、同一形状とされ、それぞれ合成樹脂により形成されている。また、各シール材51は、V字形状断面で円環状に形成されており、この各シール材51の中央穴に後述するように挿入部材27が通される。各シール材51には周方向の一部に、斜めに切込みが入れられて切断されており、この切込みを利用して、挿入部材27の外周面から各シール材51の着脱が可能とされる。
【0027】
各シール材51は、そのV字形状の開口を下方へ向けて重ね合わされる。なお、上下に隣接する各シール材51は、前記斜めの切込みの向きが逆方向とされている。具体的には、図8において、上下両端部と中央部の三つのシール材51Aは、右下へ向けて切込み51aが入れられており、それらの間の二つのシール材51Bは、右上へ向けて切込みが入れられている。なお、図示例では、上下両端部と中央部の三つのシール材51Aの切込み51aと、それらの間の二つのシール材51Bの切込みとは直径方向に対向して配置されており、シール材51Bの切込みは図8において図示されていない。
【0028】
そして、そのように重ね合わされたシール材51の上下両端部には、アダプタ53,55が重ね合わされる。下部のアダプタ55は、シール材51と略同径の円環状であり、下端面が水平面に形成され上端部が山形に上方へ突出した断面形状の円環状である。この上方の突出部に一番下側のシール材51のV字形状溝が配置される。一方、上部のアダプタ53は、シール材51と略同径の円環状であり、上端面が水平面に形成され、下端部は、山形に上方へ凹んで形成された断面形状の円環状である。この上方への凹部に、一番上側のシール材51のV字形状の凸部が配置される。
【0029】
このようにして、上下にアダプタ53,55を配置された重合状態のシール材51,51,…は、全体として円筒形状とされ、パッキン収容部43の大径穴49aに保持される。そして、上下にアダプタ53,55を配置された重合状態のシール材51,51,…の上方から段付き円筒状のパッキン押え47が載せ置かれて、パッキン収容部43にパッキン押え47がネジ(不図示)で固定される。これにより、シール材51がパッキン収容部43に対して位置決めされて保持される。
【0030】
挿入部材27は、細長い円筒形状とされ、パッキン収容部43の段付き穴49の内、下側の小径穴49bに対応した外径とされる。挿入部材27は、止水部41のパッキン収容部43の段付き穴49に差し込まれて、水密状態で取付部材25に上下に進退可能に設けられる。つまり、挿入部材27は、パッキン押え47の中央穴、およびシール材51の中央穴に差し込まれて取付部材25内へ導入される。この状態では、パッキン収容部43の内周面と、挿入部材27の外周面との間がパッキン45により水密状態に維持され、しかも挿入部材27は、パッキン収容部43および取付部材25に対して上下に進退可能である。また、挿入部材27の上端部には、水平に延出して開閉弁59付き排水管61が接続されている。
【0031】
挿入部材27の下端部には、図3に示すように、前後方向に貫通してピン穴63が形成されている。本実施例では、挿入部材27の下端部には、ピン穴63が4個形成されており、2個のピン穴63,63同士がそれぞれ同軸上に配置されている。また、一方の同軸上に配置された一対のピン穴63Aと、他方の同軸上に配置された一対のピン穴63Bとは左右方向にずれていると共に、上下方向にもずれて形成されている。
【0032】
図9は、本実施例のホルダーおよび案内部材を示す図であり、案内部材がホルダーに対して展開している状態を示す斜視図である。また、図10は、本実施例のホルダーおよび案内部材を示す図であり、(a)は案内部材がホルダーに対して垂下した状態を左側(背面側)から見た斜視図であり、(b)は(a)の一部拡大図である。
【0033】
ホルダー29は、細長い筒形状とされ、挿入部材27の下端部に着脱可能に取り付けられる。本実施例では、ホルダー29は、金属製の円筒形状とされ、その上端部は、内穴が若干拡径して形成されている。このホルダー29の上端部の内穴67は、挿入部材27の外径に対応しており、挿入部材27が差し込まれる差込部とされる。なお、ホルダー29の上端部の前後端部は、矩形状の平坦面に形成されている。
【0034】
ホルダー29の上端部には、前後方向に貫通して4個のピン穴69が形成されている。この各ピン穴69は、挿入部材27の下端部がホルダー29の上端部にはめ込まれた際に、挿入部材27の前記各ピン穴63と対応する位置に形成されている。
【0035】
ホルダー29の下端部には、下方へ開口する矩形状の切欠き部71が形成されている。
具体的には、ホルダー29の下端部には、図3および図9において、その周側壁の右部分が上下方向に沿って切り欠かれて切欠き部71が形成されている。これにより、ホルダー29の下端部は、図5や図6に示すように、横断面略C字形の溝状に形成されている。なお、このホルダー29に形成された切欠き部の前後寸法xは、内視鏡本体Sの外径より若干大径とされる。
【0036】
また、図4や図10に示すように、ホルダー29の下端部には、切欠き部71に対向する位置に貫通穴73が形成されている。この貫通穴73は、上端部の第一穴75が矩形状に形成されると共に、下端部の第二穴77が上端部の第一穴75より幅広な矩形状に形成されて、略逆T字形状とされる。さらに、ホルダー29の下端は、図3および図6において左側端部が径方向外側へ矩形状に凹んで凹部79が形成されている。そして、ホルダー29の下端部に、案内部材31が回動可能に保持される。
【0037】
案内部材31は、断面略円弧状で細長く、換言すれば、円筒の周方向一部を長手方向に沿って切り出した溝形に形成されている。案内部材31の先端部81は、その背面(外面)が傾斜面に形成されている。具体的には、案内部材31の先端部81は、先端側へ行くに従って肉厚が薄くなるように形成されて、内面側(右側)へ傾斜する傾斜面に形成されている。
【0038】
また、案内部材31の基端部83は、その前後両端辺が切り欠かれて、先端側より若干溝が浅く形成されている。換言すれば、案内部材31の基端部83は、その前後方向中央部(幅方向中央部)が矩形状に上方へ突出しており、この基端部83は、ホルダー29の第一穴75に差し込み可能な大きさとされる。さらに、案内部材31には、前後方向中央部(幅方向中央部)に、4つの貫通穴85,87,89,91が長手方向に離間して形成されている。
【0039】
案内部材31は、ホルダー29の下端部に配置されて取付ピン93によりホルダー29に回動可能に取り付けられると共に、ホルダー29に対して上下動可能に設けられる。具体的には、案内部材31は、その円弧状溝を右側へ向けた状態で、ホルダー29の溝状下端部内に配置される。この際、案内部材31の基端部83がホルダー29の第一穴75に配置される。
【0040】
案内部材31の基端部83には、前後方向外側へ突出して取付ピン93,93が設けられており、この各取付ピン93がホルダー29に形成された第一溝95に回転可能にはめ込まれる。具体的には、ホルダー29には、第一穴75に開口するように、第一穴75を挟んで前後に離隔して一対の第一溝95,95が前後方向に沿って形成されている。この第一溝95は、上下に長い溝とされている。
【0041】
案内部材31は、その基端部83に設けられた取付ピン93,93がホルダー29の第一溝95,95にはめ込まれて、ホルダー29に回転可能にかつ上下動可能に取り付けられる。なお、本実施例では、取付ピン93は、図3においてホルダー29の軸心より左側へ配置されている。
【0042】
また、本実施例では、案内部材31の長手方向中途部に誘導ピン97,97が前後方向外側へ突出して設けられている。この誘導ピン97,97は、ホルダー29に形成された第二溝99に通される。
【0043】
具体的には、ホルダー29の下端部には、前後に対応した位置に一対の第二溝99,99が形成されている。各第二溝99は、上下方向に沿う縦溝101と、この縦溝101の上端部から上方へ延出する下へ凸の円弧状溝103とにより構成される。
さらに具体的には、第二溝99は、上下方向に延びる直線状の縦溝101と、その上部に連続する略四分の一の円弧状の円弧状溝103とからなり、この円弧状溝103は、上方へ行くに従って右側へ延びるよう形成されている。そして、第二溝99の縦溝101は、第一溝95とほぼ同じ長さ寸法(上下寸法)とされている。
【0044】
このようにホルダー29に取り付けられた案内部材31は、付勢手段によりホルダー29に対して展開する方向へ付勢されている。本実施例では、ホルダー29に設けられたねじりコイルバネ107により付勢される。
【0045】
具体的には、案内部材31の第一穴75の下端部に、前後方向に沿って軸部109が配置されて固定されている。この軸部109には、2つのねじりコイルバネ107が通されており、ねじりコイルバネ107,107は前後に離隔して配置されている。ねじりコイルバネ107の各端部は、それぞれ案内部材31の背面(外面)およびホルダー29の凹部79に当接して設けられている。これにより、案内部材31は、ホルダー29に対して取付ピン93を軸として図3において反時計方向へ付勢されている。なお、案内部材31の背面には、貫通穴87,89を挟んで前後に離隔して長手方向に沿って一対の溝111,111が形成されており、コイルバネ107の端部がスライド可能にはめ込まれている。また、案内部材31は、図3や図4において、軸部109と当接する部分が円弧状に切り欠かれている。
【0046】
案内部材31は、ホルダー29に対して垂下した状態、つまり取付ピン93が第一溝95の下端部に配置されると共に、誘導ピン97が縦溝101の下端部に配置された状態では、回動が規制される。本実施例では、垂下した状態の案内部材31がホルダー29に対して相対的に上方へ押し上げられて、誘導ピン97が縦溝101の上端部(つまり縦溝101と円弧状溝103の境界部)に達するまでは、案内部材31の回動が規制される。
また、案内部材31は、ホルダ―29に対して垂下した状態では、ホルダー29の下端部より下方へ延出しており、本実施例では、若干傾斜した状態で配置される。具体的には、案内部材31は、ホルダー29に対して垂下した状態では、下方へ行くに従って右側へ傾斜した状態でホルダー29に設けられている。
【0047】
ホルダー29は、その上端部に挿入部材27の下端部がはめ込まれてピン115により挿入部材27に固定される。具体的には、図9に示すように、挿入部材27の下端部を、ホルダー29の上端部にはめ込んだ状態で、ホルダー29のピン穴69と挿入部材27のピン穴63とが前後方向に一致するように周方向にまわして位置決めを行い、丸棒状のピン115を前後方向に沿って各ピン穴69,63にそれぞれ差し込む。
【0048】
このピン115の一端部には、周方向に沿って環状溝115aが形成されており、他端部には、径方向外側へ突出して鍔部115bが形成されている。ピン115がホルダー29および挿入部材27にはめ込まれた状態では、ピン115の環状溝115aが、ホルダー29の外周面より若干外側に配置される。そして、ホルダー29の外周面に沿ってピン115の環状溝115aに係止部材117がはめ込まれ、鍔部115bと係止部材117とによりピン115の軸方向の移動が規制され、ひいては挿入部材27にホルダー29が固定される。本実施例では、係止部材117として、Eリングが使用される。
【0049】
このように、挿入部材27に設けられたホルダー29は、図2および図3に示すように、取付部材25内に収容される。取付部材25の上端部まで引き上げられた状態において、ホルダー29および案内部材31は、取付部材25から下方へ延出しない。
【0050】
ところで、挿入部材27に取り付けられるホルダー29内には、カメラが搭載された内視鏡本体Sが予めそのヘッドを下方へ向けて配置される。本実施例では、内視鏡本体Sは、略円柱形状とされ、その中央部にレンズが配置され、その周囲に複数の照明用のLEDが設けられたカメラヘッドとされる。また、内視鏡のケーブルCは、可撓性を有すると共に、比較的剛性を有したものとされ、外周面が滑らかとされている。取付部材25内にホルダー29が収容された状態では、内視鏡本体Sは、案内部材31より上方位置に引き上げられた状態でホルダー29内に収容されている。
【0051】
また、内視鏡のケーブルCは、挿入部材27の上端部に設けられる止水部120を介して挿入部材27およびホルダー29内に導入される。本実施例では、挿入部材27の上端部に径方向外側へ延出してフランジ121が形成されており、この挿入部材27の上端部に止水部120が載せ置かれて固定される。
【0052】
止水部120は、挿入部材27の上端部に載せ置かれるパッキン収容部123と、このパッキン収容部123に設けられるパッキン125と、このパッキン125を位置決め固定するパッキン押え127とを有する。この止水部120は、取付部材25の上端部に設けられた止水部41と同様の構成であるので、詳細は省略する。内視鏡のケーブルCは、パッキン押え127の中央穴およびパッキン125を構成するシール材129の中央穴に差し込まれて、挿入部材27内へ導入される。この状態では、パッキン収容部123の内周面と、内視鏡のケーブルCの外周面との間が水密状態に維持され、しかもパッキン収容部123および挿入部材27に対してケーブルCが上下に進退可能とされる。
【0053】
また、本実施例では、内視鏡のケーブルCは、ホルダー29の上端部に通される際、ピン115によりホルダー29内の左側に寄せられており、内視鏡本体Sもホルダー内の左側に近接または当接して配置される。
【0054】
内視鏡のケーブルCは、挿入部材27の外部においてドラムに巻かれており、その端部には、内視鏡本体Sからの映像を映し出すモニターや録画機器が設けられている。
また、挿入部材27の上端部に形成されたフランジ121には、棒状のハンドル131の一端部が固定されて、ハンドル131が水平に保持されている。図示例では、フランジ121に二本のハンドル131が設けられている。
【0055】
次に、本実施例の管内調査機器挿入具により、不断水で内視鏡を配水管内に送り、管内を調査する方法について説明する。
【0056】
図2に示すように、取付部材25を補修弁5に固定した後、補修弁5を開ける。これにより、補修弁5を介して取付部材25および挿入部材27に水が進入する。取付部材25と挿入部材27との間、および挿入部材27と内視鏡のケーブルCとの間は、パッキン45,125によりそれぞれ封止されていることで、外部に対する水密性が維持され、水が外部に漏れ出ることはない。なお、取付部材25および挿入部材27の排水管39,61の各開閉弁37,59は閉鎖状態とされる。
【0057】
図11は、図2の状態から挿入部材が押し込まれた状態を示す図である。
補修弁5を開けた状態で、挿入部材27を取付部材25に対して下方へ押し込んでいく。なお、内視鏡を配水管の下流側(図2において右側)へ送り込みたい場合には、案内部材31の溝を右側へ向けた状態で挿入部材27を取付部材25に対してまっすぐに押し込んでいけばよい。
【0058】
挿入部材27を押し込んでいくことで、図11に示すように、内視鏡本体Sを収容したホルダー29は、補修弁5の弁体9の貫通穴および縦管3を通って配水管1内へ進入する。
【0059】
図12は、図11の状態からさらに挿入部材が押し込まれ、ホルダーの下端部が配水管の管底に到達した状態を示す図であり、図13は、図12の一部を示す拡大図である。
【0060】
挿入部材27を押し込んでいくことで、やがて案内部材31の先端部が配水管1の管底に接触する。案内部材31の先端部が管底に接触した後、さらに挿入部材27を押し込んでいくことで、ホルダー29が案内部材31に対して下方へ移動する。これにより、案内部材31に固定されている取付ピン93がホルダー29の第一溝95の上端部に配置されると共に、誘導ピン97が、縦溝101の上端部に配置される。誘導ピン97が、縦溝101の上端部つまり縦溝101と円弧状溝103の境界部に到達すると、ねじりコイルバネ107の付勢力により案内部材31が取付ピン93を軸として回動する。この際、誘導ピン97が円弧状溝103に沿って移動し、案内部材31がホルダー29に対して展開位置まで傾斜する。
【0061】
このように、案内部材31が展開した状態で、ホルダー29の下端部が管底に到達する。なお、誘導ピン97が円弧状溝103の端部へ当接することで、案内部材31の一定以上の回動が規制される。また、ホルダー29の下端部が管底に接触した状態では、挿入部材27をそれ以上押し込むことが出来ない。
【0062】
このように、案内部材31が展開してホルダー29の下端部が管底に到達した状態で、挿入部材27の上下動を規制する。本実施例では、リング状の規制部材133を予め挿入部材27に通しておき、ホルダー29の下端部が管底に到達した際に、規制部材133を挿入部材27に対して固定し、この規制部材133からパッキン収容部43へボルト135がねじ込まれて規制部材133の上方への移動が規制され、ひいては挿入部材27の上方への移動が規制される。
【0063】
そして挿入部材27が、取付部材25に対して上下動が規制された状態において、内視鏡本体Sの映像を見ながらケーブルCを操作して、内視鏡本体Sを配水管1の管路に沿って進行させる。内視鏡本体Sからの映像は、モニターに映し出され、配水管1内の状況を確認することができる。また、録画機器により映像を保存することも可能となる。なお、本実施例では、案内部材31に貫通穴85,87,89,91が形成されていることで、案内部材31に対する配水管内を流れる水の抵抗が軽減される。
【0064】
配水管1の下流側の調査が終了したなら、挿入部材27の規制を解除し、案内部材31が取付部材25内に収容されるまで挿入部材27を引き上げる。本実施例では、挿入部材27を引き上げることで、案内部材31が、縦管3の下端部3aつまり配水管(横管)1と縦管3との境界部(角部)に当たり、ねじりコイルバネ107の付勢力に対抗して押し戻され、そのまま縦管部T内へ収容されていく。そして、取付部材25内に収容されたなら、補修弁5を閉じればよい。また、調査を終了する場合には補修弁5に消火栓Hを取り付けて元の状態に戻す。
【0065】
なお、配水管の下流側の調査終了後、ホルダー29および内視鏡を若干引き上げ、挿入部材27を180度回転させて、上流側の調査を続けて行うようにしてもよい。
【0066】
本実施例では、案内部材31がホルダー29に対して垂下した状態では案内部材31の回動が規制される一方、案内部材31がねじりコイルバネ107により付勢されていることで、配水管内への挿入および案内部材31の展開がスムーズに行われる。
【0067】
本発明の管内調査機器挿入具は、上記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。
たとえば、上記実施例では、ねじりコイルバネにより付勢したが、板バネなどでもよく、その付勢手段は適宜変更可能である。なお、付勢手段が設けられることで、案内部材31の展開が確実にかつスムーズになされるが、付勢手段が設けられていない場合でも、案内部材31がホルダー29に対して相対的に上方へ押し上げられることで案内部材31は回動可能であるので、付勢手段を省略してもよい。
【0068】
また、上記実施例では、ホルダー29と挿入部材27とを別物品としたが、一体であっても構わない。また、挿入部材27は、上記実施例では、1本で構成されたが、複数本を着脱可能に連結して使用する構成であってもよい。この際、連結する本数を適宜調整でき、その最上段の挿入部材にケーブルが通される止水部が設けられるようにすればよい。
【0069】
また、上記実施例では、案内部材31は断面略円弧状の溝形とされたが、断面略U字状、C字状およびコ字状などの溝形でもよい。
【0070】
また、上記実施例では、本発明の管内調査機器挿入具が補修弁に取り付けられて使用される場合について説明したが、取付部材25の下端部の形状を適宜変更することで、消火栓や分水栓などの縦管部からも内視鏡を管内へ送り込むことが可能である。さらに、水密状態や気密状態を維持する必要がない場合などには、取付部材を用いず、挿入部材27を手で把持して管内へ送り込むようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施例では、挿入部材27が筒状である場合について説明したが、棒状の場合には、上記実施例と同様に止水部を介して取付部材25に挿入部材を水密状態で差し込めばよい。そして、内視鏡のケーブルCは、取付部材25に別途止水部を設けて、この止水部を介して水密状態で進退可能に取付部材25内に導入すればよい。
【0072】
また、上記実施例では、本発明の管内調査機器挿入具を用いて内視鏡により配水管内の状況を確認する場合について説明したが、水道管以外でも使用可能である。たとえば、ガス管などの気体が通される管内調査も可能である。さらに、上記実施例では、本発明の管内調査機器挿入具を用いて内視鏡を管内へ送り込む場合について説明したが、内視鏡に換えて、本発明の管内調査機器挿入具により音波検出器、防水マイクや各種センサなどのケーブル付き調査機器を同様に管内へ送り込むことが可能である。つまり、内視鏡本体に換えて各種センサなどの本体を上記実施例と同様に管内へ送り込むことが可能となる。また、調査機器には採水器も含まれ、本発明の管内調査機器挿入具により管内へ同様に送り込むことが可能である。なお、採水器は、ケーブルが中空のホース状とされ、その採水器本体から採取された水がケーブル内を通されて外部へ排出される。
【符号の説明】
【0073】
1 横管
25 取付部材
27 挿入部材
29 ホルダー
31 案内部材
93 取付ピン
95 第一溝
97 誘導ピン
99 第二溝
107 ねじりコイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内への調査機器の挿入具であって、
棒状または筒状の挿入部材の下端部に設けられ、調査機器本体が配置されるホルダーと、
このホルダーの下端部に回動可能に、かつ、上下動可能に設けられ、前記ホルダーに対して垂下した状態では、前記ホルダーより下方へ延出する案内部材とを備え、
前記案内部材は、垂下した状態では、回動が規制されており、前記ホルダーに対し相対移動して設定位置まで上方へ押し上げられると回動可能とされる
ことを特徴とする管内調査機器挿入具。
【請求項2】
前記案内部材は、付勢手段により展開する方向へ付勢されており、
前記ホルダーに対し相対移動して設定位置まで上方へ押し上げられると、前記案内部材は前記付勢手段の付勢力により回動して展開する
ことを特徴とする請求項1に記載の管内調査機器挿入具。
【請求項3】
前記案内部材に設けられた取付ピンが、前記ホルダーに形成された第一溝に回動可能にかつ上下動可能に通されており、
前記案内部材に設けられた誘導ピンが、前記ホルダーに形成された第二溝に通されており、
前記第二溝は、上下に長い縦溝と、この縦溝の上端部から連続して設けられる円弧状溝とを有し、
前記案内部材が前記ホルダーに対して垂下した状態では、前記取付ピンは第一溝の下端部に配置される一方、前記誘導ピンは縦溝の下端部に配置されており、
前記ホルダーが前記案内部材に対して下方へ移動して、前記誘導ピンが前記縦溝の上端部に位置した際に、前記付勢手段の付勢力により前記案内部材が前記ホルダーに対して回動する
ことを特徴とする請求項2に記載の管内調査機器挿入具。
【請求項4】
横管から上方へ向けて分岐する縦管部に取り付けられる筒状の取付部材をさらに備え、
前記挿入部材は、前記取付部材の上部において前記取付部材との隙間が封止されて、前記取付部材に対して上下に進退可能に設けられ、
前記調査機器のケーブルは、前記挿入部材の上部において前記挿入部材との隙間が封止されて、前記挿入部材に対して進退可能とされる
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の管内調査機器挿入具。
【請求項5】
前記調査機器は、調査機器本体がカメラを内蔵した内視鏡とされる
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の管内調査機器挿入具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−234132(P2012−234132A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104559(P2011−104559)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(503436085)
【Fターム(参考)】