説明

管搬送用台車及び管搬送方法

【課題】新設管の既設管への搬入作業を容易にかつ安全に行う。
【解決手段】管搬送用台車1の台車フレーム2に2本の管昇降用シリンダを直立して設け、各シリンダの上端と梁7とを連結するとともに、この梁7の上面側に弾性部材9を設ける。また、この梁7の両端に、上向きに突出・収縮自在なロッドを有する油圧ジャッキ10を設け、このロッドに回転軸13を設ける。さらに、この回転軸13の上端にローラ14を設け、ロッドの突出・収縮によって、弾性部材9とローラ14の相対的な高さを自在に変え得るようにする。新設管P1の搬送の際は、この新設管P1を弾性部材9で支持して新設管P1が動くのを防止する一方で、新設管P1同士の位置合わせの際は、この新設管P1をローラ14で支持して、管軸周方向の回転等を自在に行うことで、新設管P1同士の連結作業を簡便かつ容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上下水道・農業用水路等の既設管や隧道内に新設管を搬入する際に使用する管搬送用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
管搬送用台車は、老朽化した上下水道・農業用水路等の既設管や隧道内に新設管を設けて、この既設管を更新する工法(パイプインパイプ工法)において、その既設管等の中に新設管を搬入する際に用いるものである。この工法においては、更新する既設管の端部に竪坑を形成して新設管を搬入するスペースを確保し、このスペースに地上から新設管を下ろした後、前記台車でこの新設管をその内面側から支持し、新設管の前後から突出して設けた走行車輪で搬送する。この新設管の搬送を順次行いつつ、それらを連結することによって既設管全体を更新する。
【0003】
前記工法に用いる台車として、上端にローラを設けた油圧ジャッキ等の伸縮部材を台車フレームに取り付け、このローラによって新設管をその内面から支持して、この新設管を既設管の内面(床面)から浮かせた状態で搬送するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記ローラとして、前記新設管の管軸方向に沿う回転方向を有するものと、前記新設管の管軸周方向に沿う回転方向を有するものとが、それぞれ独立して設けられている。そして、各ローラを設けた伸縮部材の伸縮調節を個別に行い、いずれかの回転方向のローラで新設管を支持することによって、この新設管の管軸方向への搬送と、管軸周方向への回転とを交互に行い、新設管同士の位置合わせを行いつつ連結する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−22618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す台車は、前記両ローラの回転方向がそれぞれ異なるため、前記管軸方向への移動又は管軸周方向への回転の際に、一方のローラが前記新設管の内面を支持する一方で、他方のローラが前記内面から離れるように、前記ローラを支持する各伸縮部材の伸縮調節を行う必要がある。そのため、この調節作業が煩雑なものとなって、その作業に多くの時間を要することがよくある。
【0007】
さらに、搬送する新設管の重量が大きい場合には、前記ローラの個数を増やしてこのローラ1個当たりに掛かる荷重を分散させる必要があるが、その場合、調節すべき伸縮部材の数が増加し、これらの伸縮調節の煩雑さが格段に増す。このため、その調節作業に一層多くの人手と時間を要することとなって、作業コストが大幅に増大する。
【0008】
また、前記新設管の搬送中に、台車の走行車輪が管の内周面に沿って次第に傾く、所謂ローリングが生じることがある。このローリングによって、台車及び搬送中の新設管が不安定な状態となりやすく、作業の安全性が低下する恐れがある。
【0009】
そこで、この発明は、新設管の既設管への搬送及び連結作業を、容易かつ安全に行い得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明は、台車フレームに複数の伸縮部材を起立して設け、この伸縮部材の上端側で新設管の内面を支持して、この新設管を既設管の内面から浮かせた状態のまま、その既設管内を搬送するようにした管搬送用台車において、前記各伸縮部材の上端同士を連結する梁を設け、この梁の上面側に弾性部材を設けるとともに、前記梁に、上向きに突出・収納自在であって、軸心周りに回転自在な複数の回転軸を設け、各回転軸の上端にローラを設け、前記新設管の搬送の際に、前記回転軸を収納して前記ローラの上端が前記弾性部材の上端から突出しないようにし、搬送する新設管の荷重を前記弾性部材で受け止める一方で、前記新設管同士を連結するための位置合わせの際に、前記回転軸を上向きに突出して、前記ローラの上端が前記弾性部材の上端から突出した状態とし、新設管の荷重を前記ローラで受け止めるとともに、前記回転軸を軸心周りに回転させてローラの回転方向を新設管を移動させたい方向に合わせ、前記位置合わせを行う構成を採用する。
【0011】
前記梁は、少なくとも2つの伸縮部材によって支持されており、各伸縮部材の伸縮調節によって、この梁の高さを自在に調節することができる。この伸縮部材として、例えば油圧シリンダのように、必要に応じて起立方向(すなわち上向き)への突出量を調節できるものが好ましい。
【0012】
この台車フレームを搬送する新設管に挿入し、この台車フレームに設けられた走行車輪を新設管の前後から突出させて接地する。そして、各伸縮部材を上向きに突出させて、弾性部材を新設管の内面上部に当接させて担ぎ上げ、この新設管を接地面(既設管)から浮かせた状態とする。この弾性部材として、例えばシート状ゴムや多孔質部材を用いることにより、搬送の際に新設管の内面に傷が付くのを防止することができる。
【0013】
この搬送の際には、前記梁に設けた回転軸を収納して、この回転軸の上端に設けたローラが新設管の内面から離間した状態としておくことが好ましい。このようにすれば、新設管が弾性部材のみによって支持されることとなって、この弾性部材による滑り止め作用によって安定した支持状態が得られるとともに、新設管の搬送に伴う振動がローラに伝わらず、新設管の支持位置が不用意にずれるのが防止できる。
【0014】
その一方で、新設管同士の位置合わせを行う際は、前記回転軸を上向きに突出させて、その上端のローラを新設管の内面に当接させることにより、新設管を弾性部材から若干浮かせた状態として、この弾性部材による新設管の滑り止め作用を解除する。そして、前記回転軸を新設管を動かしたい方向(新設管の管軸方向から管軸周方向の間の任意の方向)にローラの回転方向を合わせて回転させることにより、前記位置合わせを自在に行うことができる。
【0015】
また、前記構成においては、前記回転軸を、前記梁に固定された軸受によって支持するとともに、この回転軸にハンドルを設け、このハンドル操作により回転軸の回転角度を調節するようにすることができる。
【0016】
この軸受の種類は適宜選択することができるが、特に、黒鉛や4フッ化エチレン樹脂等の固体潤滑材が摺動面に介在するように形成したブッシュを用いるのが好ましい。このブッシュは、ころ等の転動体を用いる軸受と比較して容易に小型化を図ることができるとともに、構造が単純なためコスト的にも優れているためである。このブッシュとして、金属製、樹脂製のもの等があるが、耐久性の観点から、金属製のブッシュを採用するのがさらに好ましい。
【0017】
また、前記ハンドルを設けることにより、台車とともに移動する作業者が、このハンドルを操作してローラの向きを容易に調節し得る。このため、新設管同士の位置合わせをスムーズに行うことができ、連結作業の時間短縮と作業コストの低減を図ることができる。
【0018】
この搬送作業は断面円形の既設管の内部を台車が走行するため、その断面に沿うように台車が傾くローリングが生じやすく、台車及び新設管の姿勢が不安定な状態となることが多い。この場合、上述した位置合わせのときと同様に、回転軸を上向きに突出してローラで新設管を支持するとともに、回転軸のハンドルを操作して、ローラの回転方向が管軸方向と垂直方向となるように調節する。そうすると、新設管の自重によってローラが回転して、この新設管が安定位置(新設管の重心がより低くなる位置)まで移動する(管軸周方向に回転する)。これにより、台車の姿勢の安定化を図ることができ、作業における安全性の向上が期待できる。
【0019】
上記のように回転軸の上端にローラを設ける構成とする代わりに、前記各伸縮部材の上端同士を連結する梁を設けるとともに、この梁に、前記台車フレームの進行方向及びそれと垂直方向の両方向に自在に回転し得る複数の全方向キャスタを設け、この全方向キャスタで支持する新設管の管軸方向への移動及び管軸周方向への回転をなし得るようにした構成とすることもできる。
【0020】
この構成も、上述した構成(回転軸の上端にローラを設ける構成)と同様に、梁を複数の伸縮部材によって支持し、各伸縮部材の伸縮調整によって、前記梁の高さを自在に調節するようにしている。この伸縮部材として、例えば油圧シリンダのように、必要に応じて起立方向(すなわち上向き)への突出量を調節できるものが好ましい。
【0021】
台車による新設管の搬送においては、台車フレームを搬送する新設管に挿入し、この管軸方向と前記梁の傾斜方向がほぼ平行となるように各伸縮部材の伸縮調節を行う。この梁に設けた全方向キャスタを、前記梁と前記新設管の傾斜方向に合わせることにより、全ての全方向キャスタを同時に前記内面に当接させることができる。
【0022】
また、前記全方向キャスタが、固定回転軸周りに回転する主ローラを有するとともに、前記主ローラの回転方向に沿う補助回転軸周りに回転する複数の子ローラを有し、搬送する新設管を前記主ローラの回転によってその管軸方向に移動させる一方で、前記子ローラの回転によってその管軸周方向に回転させるようにすることもできる。
【0023】
この全方向キャスタは、前記台車フレームに対して、進行方向及びそれと垂直方向の力が同時に作用した場合においても、前記主ローラと前記子ローラとが同時に回転し、スムーズにそれらの合力の方向に台車を移動させる。このため、背景技術において示した台車において、各方向のローラを別々に前記新設管の内面に接触させてこの新設管を支持し、各方向への移動を行う場合と比較して、前記新設管同士の連結に伴う位置合わせ作業を速やかに行い得る。
【0024】
このように全方向キャスタを採用した構成においても、上述した回転軸の上端にローラを設けた構成と同様に、台車にローリングが生じた場合における、台車の不安定さの解消が期待できる。すなわち、新設管の自重によって全方向キャスタの子ローラが回転し、この新設管が安定位置(新設管の重心がより低くなる位置)まで移動(管軸周方向に回転)する。これにより、上述したのと同様に、台車の安定性が向上し、作業における安全性の向上が期待できる。
【0025】
また、前記各構成においては、台車フレームと梁との平行状態を保ちつつ、各伸縮部材を同時に伸縮調節してもよいが、前記梁と各伸縮部材とをヒンジを介して連結し、このヒンジ角度を変えることによって、前記台車フレームと前記梁との間の角度を自在に調節し得るようにすることもできる。
【0026】
このように、台車フレームと梁との間の角度を自在に調節し得るようにすることで、例えば新設管を搬送する台車の前後いずれか一方の走行車輪が、連結する他の新設管の内面に乗り上げて、台車フレーム自体が傾斜した場合においても、連結する新設管同士が一直線上に並んだ状態とすることができる。これにより、新設管同士の連結を容易に行うことができるとともに、前記梁に設けた弾性部材又は全方向キャスタによって、新設管を安定的に保持することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によると、回転軸の上端にローラを設け、このローラで、又は、全方向キャスタで新設管を支持し、新設管同士の連結作業における位置合わせの際に、ローラ又は全方向キャスタで支持された新設管を、容易にその管軸方向に移動し、又は、管軸周方向に回転するようにした。このため、新設管の搬入と新設管同士の位置合わせを容易に行うことができ、連結作業に要する人員と作業コストの削減を図ることができる。
【0028】
また、新設管の搬送作業中に、既設管内で台車のローリングが生じた場合、新設管がその自重によって安定位置まで回転する。これにより、台車の姿勢が安定化し、作業における安全性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明に係る管搬送用台車の一実施形態を示す側面図
【図2】図1に示す管搬送用台車のA−A断面図
【図3】図1に示す管搬送用台車の底面図
【図4】図1に示す管搬送用台車の要部を示す側面図
【図5】図1に示す管搬送用台車で新設管を持ち上げた状態(台車走行中の状態)を示し、(a)は側面図、(b)は(a)のB−B断面図
【図6(a)】管搬送の工程を示す作用図
【図6(b)】管搬送の工程を示す作用図
【図6(c)】管搬送の工程を示す作用図
【図6(d)】管搬送の工程を示す作用図
【図6(e)】管搬送の工程を示す作用図
【図6(f)】管搬送の工程を示す作用図
【図6(g)】管搬送の工程を示す作用図
【図6(h)】管搬送の工程を示す作用図
【図6(i)】管搬送の工程を示す作用図
【図7】搬送中にローリングが生じた状態を示す正面図
【図8】この発明に係る管搬送用台車の他の実施形態を示す側面図
【図9】図8に示す管搬送用台車の底面図
【図10】この発明に係る管搬送用台車のさらに他の実施形態を示す側面図
【図11】全方向キャスタの一例を示し、(a)は側面図、(b)は正面図
【図12】搬送中にローリングが生じた状態を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
この発明に係る管搬送用台車1(以下、単に「台車」という。)の一実施形態を図1乃至3に示す。この台車1の台車フレーム2には、2本の油圧式管昇降用シリンダ3が直立するように固定されており、この管昇降用シリンダ3のロッド4の上端側には、ロッド4と平行に梁用支柱5が設けられている。この梁用支柱5は、支持部材6によって上下動自在に支持されていて、ロッド4の突出・収納とともに、上下動するようになっている。この梁用支柱5と梁7とは、ヒンジ8を介して連結されている。さらに、この梁7の上面には、シート状ゴムからなる弾性部材9が設けられている。
【0031】
この梁7の両端には、図4に示す油圧ジャッキ10が固定されていて、この油圧ジャッキ10は、上向きに突出・収納自在なロッド11を有している。このロッド11の上端には、摺動面に固体潤滑材を設けた金属製のブッシュ12を介して、回転軸13が同軸に設けられている。この回転軸13の上端には樹脂材からなるローラ14が設けられるとともに、この回転軸13から横方向に突出して、回転軸13を軸心周りに回転してローラ14の回転方向を調節するためのハンドル15が設けられている。
【0032】
このローラ14の上端の高さは、油圧ジャッキ10のロッド11を収納した時には弾性部材9の高さよりも低い位置となるが、このロッド11を突出させた時には弾性部材9の高さよりも高い位置となるように設計されている。
【0033】
すなわち、管昇降用シリンダ3のロッド4を突出して新設管P1を既設管P2内で浮かせた状態とするとともに、油圧ジャッキ10のロッド11を収納又は突出することで、搬送する新設管P1の内面を弾性部材9で支持するか、又は、ローラ14で支持するか、を適宜選択することができる。
【0034】
具体的には、新設管P1を台車1で搬送する際には、図5に示すように、この新設管P1を弾性部材9で支持して、搬送中の新設管P1が振動によりずれて動かないようにする。その一方で、新設管P1同士を連結するために位置合わせする際や、台車1にローリングが生じて台車1や新設管P1の姿勢の修正が必要になった際には、図1に示したように、新設管P1をローラ14で支持して、この新設管P1を管軸方向に移動及び管軸周方向へ回転させて位置調節を行う。
【0035】
このように、新設管P1を支持するローラ14で、この新設管P1の位置調節を行うようにしたので、新設管P1の断面形状が馬蹄形等のように特殊な形状であっても、新設管P1同士の連結作業を容易に行うことができる。
【0036】
また、管昇降用シリンダ3のロッド4と梁7をヒンジ8を介して接続したことにより、台車フレーム2と梁7との間に傾斜を持たせることができる。このため、新設管P1同士の接続の際に、連結する新設管P1に走行車輪16b及び昇降車輪18bが乗り上げた状態となって、台車1自体が傾斜した場合でも、両新設管P1同士が一直線上に並んだ状態とすることができ、新設管P1同士の連結を容易に行うことができる。
【0037】
また、ヒンジ8の接続部は、管軸方向に長い長孔17によって接続されている。このため台車1の傾斜が生じた場合であっても、ヒンジ8の軸がその長孔17内をスライドし、その傾斜に対応できる。
【0038】
この台車フレーム2の前後には、台車1を既設管P2内で前後に移動するための走行車輪16(16a、16b)と、この台車1を持ち上げて走行車輪16を浮かせた状態とするための昇降車輪18(18a、18b)とが設けられている。
【0039】
この走行車輪16はゴム製のタイヤからなり、新設管P1内に乗り上げた際に、新設管P1の内面を傷付ける恐れは低い。
【0040】
また、この昇降車輪18(18a、18b)と台車フレーム2との間には車輪昇降用シリンダ19(19a、19b)が介在して設けられていて、この車輪昇降用シリンダ19(19a、19b)のロッド20(20a、20b)を突出・収納することによって昇降車輪18の昇降を行っている。
【0041】
台車フレーム2の後端には連結部21が形成されており、この連結部21に動力車(図示せず)を連結して、台車1を前後に移動し得るようにしている。また、この台車フレーム2には作業者Wが乗れるようになっていて、この作業者Wが台車1上で油圧ジャッキ10や管昇降用シリンダ3等を操作して、新設管P1の位置合わせ等を行うことができる。
【0042】
次に、この台車1を用いた新設管P1の搬送作業について、図6(a)〜(i)を用いて説明する。この新設管P1を設ける既設管P2の端部には地上に通じる竪坑Hが形成してあって、まず、この竪坑Hからクレーンによって新設管P1を1本ずつ下ろす。この新設管P1を設ける既設管P2の奥側には台車1が待機しており、この台車1を竪坑Hに下ろした新設管P1の方に移動させる(同図(a)参照)。
【0043】
この新設管P1に台車1が到達したら、新設管P1に近い側の車輪昇降用シリンダ19aのロッド20aを伸ばして、昇降車輪18aを既設管P2の内面に接地させて走行車輪16aを浮かせた状態とし、この走行車輪16aを新設管P1の管内に乗り入れる(同図(b)参照)。そして、車輪昇降用シリンダ19aのシリンダロッド20aを所定量収納し、昇降車輪18aも管内に乗り入れ、台車1を新設管P1内に入れる(同図(c)参照)。
【0044】
この台車1を新設管P1の他端側に向けて走行させて、走行車輪16aがこの他端側から出たら(同図(d)参照)、車輪昇降用シリンダ19aのロッド20aを完全に収納し、走行車輪16aを既設管P2の内面に接地させる(同図(e)参照)。このように、台車1の前後の走行車輪16a、16bが新設管P1の両端から突出したら、管昇降用シリンダ3のロッド4を突出して梁用支柱5を上昇し、梁7の上面側に設けた弾性部材9で新設管P1を持ち上げる。このとき、油圧ジャッキ10のロッド11は収納状態としておく。そうすれば、ロッド11の上端に設けられたローラ14と新設管P1は離間し、弾性部材9のみでもって新設管P1を支持した状態となる(同図(f)参照)。この状態のまま、既に連結が完了した新設管P1の近傍まで、台車1で支持された新設管P1を搬送する。
【0045】
この新設管P1を所定位置まで搬送したら、油圧ジャッキ10のロッド11を上向きに突出させて、ロッド11の上端のローラ14のみでもって新設管P1を支持し、弾性部材9と新設管P1を離間する(同図(g)参照)。そして、ロッド11に設けられたハンドル15を操作して、ローラ14の回転方向を適宜変えることによって、この新設管P1を管軸方向に移動させたり、管軸周方向に回転させたりすることができる。これにより、新設管P1同士の連結に先立って、両新設管P1、P1の位置合わせを容易かつ簡便に行うことができる。
【0046】
さらに、新設管P1を搬送しながら、走行方向先端側の昇降車輪18bを連結される側の新設管P1内に差し入れ、車輪昇降用シリンダ19bを操作してそのロッド20bを突出させ、昇降車輪18bを新設管P1内に接地させるとともに、走行車輪16bを浮かせた状態とする。そうすると、この走行車輪16bを、既設管P2から連結される側の新設管P1に容易に乗り上げることができる。そして、両新設管P1、P1が一直線上に並ぶように、両管昇降用シリンダ3、3の突出量、すなわち梁用支柱5の上昇量を個別に操作し、新設管P1同士を連結する(同図(h)参照)。
【0047】
この連結が完了したら、新たに竪坑Hから下ろされた新設管P1を既設管P2内に搬送するために、台車1を竪坑H側に移動させる(同図(i)参照)。以下、全ての新設管P1の連結が完了するまで、図6(a)〜(i)の各工程を繰り返す。
【0048】
上記一連の説明においては、新設管P1を竪坑Hに下ろす際に、台車1を既設管P2の奥側(図6(a)の右側)に待機させたが、この竪坑Hが十分大きく、新設管P1を下ろすためのスペースとともにこの台車1を待機させておくスペースを確保できるのであれば、この台車1を既設管P2の手前側(図6(a)の左端)に待機させておいても良い。
【0049】
この台車1で新設管P1を搬送する際に、既設管P2の内面に沿って台車1がローリングし、この台車1と搬送する新設管P1の姿勢が不安定になることがある。この場合、図7に示すように、ローラ14で支持された新設管P1が自重によってわずかに回転して、その高さが若干低くなる(同図中の符号hを参照)。それに伴って、新設管P1の重心位置も若干低くなって台車1及び新設管P1の安定性が回復し、作業者の安全性が確保される。
【0050】
この発明に係る他の実施形態を図8及び9に示す。
この台車1は、図1等に示したものと異なり、竪坑Hに近い側の走行車輪16aを浮かせるための昇降車輪を有していない。このため、竪坑H内に下ろした新設管P1に、走行車輪16aで直接乗り上げるようにする。この新設管P1と既設管P2との間の段差の大きさに比べて、乗り上げを行う走行車輪16aの径が十分大きい場合には、走行車輪16aを浮かせるための昇降車輪を用いなくても、容易に乗り上げを行うことができる。
【0051】
この発明に係るさらに他の実施形態を図10に示す。
この台車1の台車フレーム2には、図1等に示した台車1と同様に、2本の油圧式管昇降用シリンダ3、3が直立して設けられており、各シリンダ3、3の上端と梁7とは、ヒンジ8を介して連結されている。また、この梁7の上面側には、周方向に2個及び管軸方向に3組の計6個の全方向キャスタ22が設けられている。
【0052】
この全方向キャスタ22として、オムニホイール(商品名、INTERROLL社製)を採用している。このオムニホイール22の個数は新設管P1の重量等に対応して適宜変更することができ、新設管P1が大重量の場合は、例えば周方向に2個及び管軸方向に4組の計8個を設け、このオムニホイール22一つ当たりに負荷される荷重を低減することもできる。
【0053】
この管昇降用シリンダ3を操作して、ロッド4を上向きに突出させると、図10に示すように、新設管P1の内面側に当接するオムニホイール22によって、この新設管P1が既設管P2の内面から浮いた状態となる。
【0054】
このオムニホイール22は、図11に示すように、台車フレーム2の進行方向に主ローラ23を回転させる固定回転軸24を有するとともに、この主ローラ23は、その回転方向に沿った補助回転軸25を有する複数の子ローラ26から構成されている。そして、この主ローラ23及び子ローラ26はそれぞれ独立して回転し得るので、この台車1を新設管P1の搬入方向に移動し得るとともに、管軸周方向に回転させることによって、連結する新設管P1同士の位置合わせも行うことができる。
【0055】
また、この搬入作業中にこの台車1が既設管P2内で内面に沿って傾いた際(ローリングが生じた際)には、図12に示すように新設管P1の自重によって子ローラ26がわずかに回転し、この回転によってその重心位置が若干低くなる。この重心位置の低下によって、台車1及び新設管P1の安定性が回復し、作業者の安全性が確保される。
【0056】
この全方向キャスタ22としては、このオムニホイールに限定されず、例えばボールキャスタを採用することもできる。このボールキャスタも、任意の方向に転動し得る点において、オムニホイールと同様の機能を有するからである。なお、この全方向キャスタ22に公知のストッパ機構を設け、搬送中にこの全方向キャスタ22が転動しないようにすることによって、搬送の際の安定性を向上することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1 管搬送用台車
2 台車フレーム
3 管昇降用シリンダ
4 (管昇降用シリンダの)ロッド
5 梁用支柱
6 支持部材
7 梁
8 ヒンジ
9 弾性部材
10 油圧ジャッキ
11 (油圧ジャッキの)ロッド
12 ブッシュ(軸受)
13 回転軸
14 ローラ
15 ハンドル
16(16a、16b) 走行車輪
17 長孔
18(18a、18b) 昇降車輪
19(19a、19b) 車輪昇降用シリンダ
20(20a、20b) (車輪昇降用シリンダの)ロッド
21 連結部
22 全方向キャスタ(オムニホイール)
23 主ローラ
24 固定回転軸
25 補助回転軸
26 子ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車フレーム(2)に複数の伸縮部材(3)を起立して設け、この伸縮部材(3)の上端側で新設管(P1)の内面を支持して、この新設管(P1)を既設管(P2)の内面から浮かせた状態のまま、その既設管(P2)内を搬送するようにした管搬送用台車において、
前記各伸縮部材(3)の上端同士を連結する梁(7)を設け、この梁(7)の上面側に弾性部材(9)を設けるとともに、前記梁(7)に、上向きに突出・収納自在であって、軸心周りに回転自在な複数の回転軸(13)を設け、各回転軸(13)の上端にローラ(14)を設け、
前記新設管(P1)の搬送の際に、前記回転軸(13)を収納して前記ローラ(14)の上端が前記弾性部材(9)の上端から突出しないようにし、搬送する新設管(P1)の荷重を前記弾性部材(9)で受け止める一方で、
前記新設管(P1)同士を連結するための位置合わせの際に、前記回転軸(13)を上向きに突出して、前記ローラ(14)の上端が前記弾性部材(9)の上端から突出した状態とし、新設管の荷重を前記ローラで受け止めるとともに、前記回転軸(13)を軸心周りに回転させてローラの回転方向を新設管を移動させたい方向に合わせ、前記位置合わせを行うようにしたことを特徴とする管搬送用台車。
【請求項2】
前記回転軸(13)が、前記梁(7)に固定された軸受(12)によって支持されるとともに、この回転軸(13)にハンドル(15)を設け、このハンドル操作により回転軸(13)の回転角度を調節するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の管搬送用台車。
【請求項3】
台車フレーム(2)に複数の伸縮部材(3)を起立して設け、この伸縮部材(3)の上端側で新設管(P1)の内面を支持して、この新設管(P1)を既設管(P2)の内面から浮かせた状態のまま、その既設管(P2)内を搬送するようにした管搬送用台車において、
前記各伸縮部材(3)の上端同士を連結する梁(7)を設けるとともに、この梁(7)に、前記台車フレーム(2)の進行方向及びそれと垂直方向の両方向に自在に回転し得る複数の全方向キャスタ(22)を設け、この全方向キャスタ(22)で支持する新設管(P1)の管軸方向への移動及び管軸周方向への回転をなし得るようにしたことを特徴とする管搬送用台車。
【請求項4】
前記全方向キャスタ(22)が、固定回転軸(24)周りに回転する主ローラ(23)を有するとともに、前記主ローラ(23)の回転方向に沿う補助回転軸(25)周りに回転する複数の子ローラ(26)とを有し、
搬送する新設管(P1)を、前記主ローラ(23)の回転によってその管軸方向に移動させる一方で、前記子ローラ(26)の回転によってその管軸周方向に回転させるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の管搬送用台車。
【請求項5】
前記梁(7)と前記伸縮部材(3)とをヒンジ(8)を介して連結し、このヒンジ角度を変えることによって、前記台車フレーム(2)と前記梁(7)との間の角度を自在に調節し得るようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の管搬送用台車。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の管搬送用台車を用いて、新設管(P1)の搬送を行うようにしたことを特徴とする管搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図6(d)】
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【図6(e)】
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【図6(f)】
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【図6(g)】
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【図6(h)】
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【図6(i)】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−24819(P2010−24819A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119797(P2009−119797)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000164885)栗本化成工業株式会社 (32)