説明

管状バーナ

【課題】燃料ガスと一次空気とが流入する後端の流入口21を有する混合管2の前端部に炎口部材3を嵌合させた管状バーナであって、炎口部材を材料費の安い板金製として、コストダウンを図ることができるようにし、且つ、火炎が径方向外方に広がることを防止できるようにしたものを提供する。
【解決手段】炎口部材3は、板金製の前板4と板金製の後板5とで構成される。前板4の中央部に、その前面から突出する筒状の第1炎口41が形成され、第1炎口41の周囲に、第1炎口41より小さな複数の第2炎口42が形成される。後板5の中央部に、第1炎口41に対向する第1通気孔51が形成され、後板5の外周寄りの部分に、第1通気孔51より小さな複数の第2通気孔52が形成され、第1通気孔51と第2通気孔52との間の後板5の部分は孔を形成しない無孔部53とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと一次空気とが流入する後端の流入口と、流入口に対し縮径したベンチュリー部と、ベンチュリー部から前方に向けて次第に拡径するテーパー管部とを有する混合管を備え、混合管の前端部に、複数の炎口を有する炎口部材が嵌合された管状バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のバーナとして、特許文献1に記載のものが知られている。このものでは、炎口部材を焼結金属製の厚肉のものとしている。そして、炎口部材に前後方向に貫通する複数の炎口を形成し、燃料ガスと一次空気との混合ガスがこれら炎口から噴出して燃焼するようにしている。
【0003】
ここで、混合管から炎口部材に向かう混合ガスの流れは、テーパー管部の影響で径方向外方に向かう方向成分を持つ。そのため、炎口部材の厚さを薄くしたのでは、火炎が径方向外方に広がりやすくなる。これに対し、上記従来例のものでは、炎口部材が厚いため、各炎口で混合ガスの流れが前方に向くように整流され、火炎が径方向外方に広がることを防止できる。
【0004】
然し、上記従来例では、炎口部材を材料費の高い焼結金属製のものにするため、コストアップを招く不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5186620号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、炎口部材を材料費の安い板金製として、コストダウンを図ることができるようにし、且つ、火炎が径方向外方に広がることを防止できるようにした管状バーナを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、燃料ガスと一次空気とが流入する後端の流入口と、流入口に対し縮径したベンチュリー部と、ベンチュリー部から前方に向けて次第に拡径するテーパー管部とを有する混合管を備え、混合管の前端部に、複数の炎口を有する炎口部材が嵌合され、燃料ガスと一次空気との混合ガスがこれら炎口から噴出して燃焼するようにした管状バーナであって、炎口部材は、板金製の前板と、前板よりも後方に位置する板金製の後板とで構成され、前板に、中央部の第1炎口と、第1炎口の周囲に位置する、第1炎口より小さな複数の第2炎口とが形成され、第1炎口は、前板の前面から突出する筒状に形成され、後板の中央部に、第1炎口に対向する第1通気孔が形成され、第1通気孔から径方向に所定距離離れた後板の外周寄りの部分に、第1通気孔より小さな複数の第2通気孔が形成され、第1通気孔と第2通気孔との間の後板の部分は孔を形成しない無孔部としたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、炎口部材を板金製の前後2枚の板で構成するため、焼結金属製の炎口部材を用いる上記従来例に比し、コストダウンを図ることができる。更に、本発明では、炎口部材を板金製としても、火炎が径方向外方に広がることを防止できる。
【0009】
即ち、本発明では、前板の中央部の第1炎口を筒状に形成するため、第1炎口から噴出する混合ガスの流れが前方に向かうように整流され、この混合ガスの燃焼で前方に大きく伸びる中央火炎が形成される。従って、中央火炎の流速が第1炎口より小さな第2炎口から噴出する混合ガスの燃焼で形成される周囲の火炎の流速よりも速くなって、周囲の火炎が中央火炎側に引き寄せられ、火炎が径方向外方に広がることを抑制できる。
【0010】
尚、第1炎口の前板前面からの突出量を大きくすると、第1炎口の筒状部に入熱される周囲の火炎からの熱量が大きくなり、第1炎口の過熱で逆火し易くなる。これに対し、本発明では、後板の第1通気孔と第2通気孔との間に無孔部を設けることにより、第1通気孔から第1炎口に向かう混合ガスの流れが第2通気孔から流入する混合ガスの流れの影響を受けにくくなり、第1通気孔から第1炎口に向けて混合ガスがほぼ直進するようになる。そのため、第1炎口の前板前面からの突出量を小さくしても、第1炎口から噴出する混合ガスの流れが前方に向かうように整流され、上述した火炎の外方への広がりを抑制する効果が得られる。従って、第1炎口の前板前面からの突出量を可及的に小さくすることができ、第1炎口の過熱による逆火を防止できる。
【0011】
また、本発明においては、第1炎口と同心の径の異なる複数の同心円上に第2炎口が夫々複数形成され、後板の第2通気孔が形成される部分は、前記同心円のうち最も小径の同心円よりも径方向外方に位置することが望ましい。これによれば、第2炎口から径方向外方に向かう方向成分を持って混合ガスが噴出することを抑制でき、火炎が径方向外方に広がることを一層効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態のバーナの切断側面図。
【図2】実施形態のバーナの斜視図。
【図3】実施形態のバーナの一部を切除した斜視図。
【図4】実施形態のバーナの前方から見た正面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、1は本発明の実施形態の管状バーナを示している。このバーナ1は、暖房機の熱源として用いるものであり、室内空気との熱交換を行う熱交換パイプPの流入端に対向して配置される。
【0014】
バーナ1は、混合管2と、混合管2の前端部に嵌合させた炎口部材3とで構成されている。図2、図3も参照して、混合管2は、後端の流入口21と、流入口21に対し縮径したベンチュリー部22と、ベンチュリー部22から前方に向けて次第に拡径するテーパー管部23とを有している。そして、流入口21に臨ませて配置したガスノズル(図示せず)から噴射する燃料ガスと一次空気とが流入口21から混合管2内に流入し、混合管2内で燃料ガスと一次空気との混合ガスが生成されるようにしている。尚、混合管2は、板金製であって、プレス成形されたステンレス鋼板等の2枚の板金2a,2aを重ね合わせて形成される。
【0015】
また、図示しないが、管状バーナ1は複数並設されている。そして、混合管2を構成する2枚の板金2a,2aの前端部に、他の板金2aから離れる方向の窪み部2bを形成し、この窪み部2bによって両板金2a,2a間に生ずる隙間により、隣接するバーナに火移りさせるスリット状の火移り炎口2cを形成している。
【0016】
混合管2の前端部は、テーパー管部23の前端のアール状の拡径部23aから前方にのびる円筒状に形成されている。そして、混合管2の前端部に嵌合させる炎口部材3は、ステンレス鋼板等の板金で形成された前板4と、前板4よりも後方に位置する、ステンレス鋼板等の板金で形成された円板状の後板5とで構成されている。
【0017】
前板4は、円板状の前面部分の外周から後方にのびて混合管2の前端部内周面に嵌合する筒部4aを有している。また、前板4には、中央部の第1炎口41と、第1炎口41の周囲に位置する、第1炎口41より小さな複数の第2炎口42とが形成されている。図4を参照して、本実施形態では、第1炎口41と同心の径の異なる内側と外側の2つの同心円C、C上に第2炎口42を半ピッチ位置をずらして夫々8個形成している。尚、第1炎口41と同心の3つ以上の同心円上に夫々複数の第2炎口42を形成してもよい。また、前板4の前面部分と筒部4aとの間のコーナーアール部4bには、周方向の間隔を存してスリット状の複数の保炎口43が形成されている。
【0018】
後板5の中央部には、第1炎口41に対向する、第1炎口41と同等の径の第1通気孔51が形成されている。また、第1通気孔51から径方向に所定距離離隔した後板5の外周寄りの部分には、第1通気孔51よりも小さな複数の第2通気孔52が形成されている。図4を参照して、本実施形態では、前記同心円のうち最も小径の内側の同心円Cよりも径方向外方に位置する後板5の外周寄りの部分に、内外2重の正六角形上に位置する内側と外側の第2通気孔52を半ピッチ位置をずらして夫々18個形成している。尚、後板5の外周寄りの部分に、内外複数の同心円上に位置させて夫々複数の第2通気孔52を形成してもよい。また、第1通気孔51と内側の第2通気孔52との間の後板5の部分は、孔を形成しない無孔部53になっている。
【0019】
上述した本実施形態の管状バーナ1によれば、炎口部材3を板金製の前後2枚の板4,5で構成するため、焼結金属製の炎口部材を用いる上記従来例に比し、コストダウンを図ることができる。また、炎口部材3を板金製にすると、燃料ガスと一次空気との混合ガスが混合管2のテーパー管部23の影響で径方向外方に向かう方向成分を持って噴出して、火炎が径方向外方に広がりやすくなる。然し、本実施形態では、火炎が径方向外方に広がることを抑制でき、熱交換パイプPに火炎を確実に送り込むことができる。以下、その理由について詳述する。
【0020】
本実施形態では、前板4の中央部の第1炎口41を筒状に形成するため、第1炎口41から噴出する混合ガスの流れが前方に向かうように整流され、この混合ガスの燃焼で前方に大きく伸びる中央火炎が形成される。従って、中央火炎の流速が第1炎口41より小さな第2炎口42から噴出する混合ガスの燃焼で形成される周囲の火炎の流速よりも速くなって、ベルヌーイの定理により、周囲の火炎が中央火炎側に引き寄せられる。その結果、図1に示すように、中央火炎に周囲の火炎が合体して前方に細長く伸びる集合火炎Faが形成され、火炎が径方向外方に広がることを抑制できる。
【0021】
但し、第1炎口41の前板4前面からの突出量を大きくすると、第1炎口41の筒状部41aに入熱される周囲の火炎からの熱量が大きくなり、第1炎口41の過熱で逆火し易くなる。これに対し、本実施形態では、後板5の第1通気孔51と第2通気孔52との間に無孔部53を設けることにより、第1通気孔51から第1炎口41に向かう混合ガスの流れが第2通気孔52から流入する混合ガスの流れの影響を受けにくくなり、第1通気孔51から第1炎口41に向けて混合ガスがほぼ直進するようになる。そのため、第1炎口41の前板4前面からの突出量を小さくしても、第1炎口41から噴出する混合ガスの流れが前方に向かうように整流され、上述した火炎の外方への広がりを抑制する効果が得られる。従って、第1炎口41の前板4前面からの突出量を可及的に小さくすることができ、第1炎口41の過熱による逆火を防止できる。
【0022】
更に、本実施形態では、内側の同心円Cよりも径方向外方に位置する後板5の部分に第2通気孔52を形成するため、第2通気孔52から内側の同心円C上に位置する第2炎口42に向かう混合ガスの流れが径方向内方に傾き、第2通気孔42から径方向外方に向かう方向成分を持って混合ガスが噴出することを抑制できる。従って、火炎が径方向外方に広がることを一層効果的に防止できる。
【0023】
また、開口面積の小さな保炎口43から比較的低速で噴出する混合ガスの燃焼によりリフトしにくい火炎Fbが形成され、保炎性が確保される。
【0024】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、板金製の混合管2を用いたが、鋳造品から成る混合管を用いることも可能である。また、上記実施形態の保炎口43は省略してもよい。また、上記実施形態は、暖房機用の管状バーナに本発明を適用したものであるが、暖房機以外の燃焼装置で用いる管状バーナにも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0025】
1…管状バーナ、2…混合管、21…流入口、22…ベンチュリー部、23…テーパー管部、3…炎口部材、4…前板、41…第1炎口、42…第2炎口、5…後板、51…第1通気孔、52…第2通気孔、53…無孔部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと一次空気とが流入する後端の流入口と、流入口に対し縮径したベンチュリー部と、ベンチュリー部から前方に向けて次第に拡径するテーパー管部とを有する混合管を備え、混合管の前端部に、複数の炎口を有する炎口部材が嵌合され、燃料ガスと一次空気との混合ガスがこれら炎口から噴出して燃焼するようにした管状バーナであって、
炎口部材は、板金製の前板と、前板よりも後方に位置する板金製の後板とで構成され、
前板に、中央部の第1炎口と、第1炎口の周囲に位置する、第1炎口より小さな複数の第2炎口とが形成され、第1炎口は、前板の前面から突出する筒状に形成され、
後板の中央部に、第1炎口に対向する第1通気孔が形成され、第1通気孔から径方向に所定距離離れた後板の外周寄りの部分に、第1通気孔より小さな複数の第2通気孔が形成され、第1通気孔と第2通気孔との間の後板の部分は孔を形成しない無孔部としたことを特徴とする管状バーナ。
【請求項2】
前記第1炎口と同心の径の異なる複数の同心円上に前記第2炎口が夫々複数形成され、前記後板の前記第2通気孔が形成される部分は、前記同心円のうち最も小径の同心円よりも径方向外方に位置することを特徴とする請求項1記載の管状バーナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−37109(P2012−37109A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176151(P2010−176151)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】