管状体及びその製造方法
【課題】ボイド率を効果的に低下させうる管状体の製造方法の提供。
【解決手段】本発明の製造方法は、マンドレル2に、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体6を得る工程と、上記中間成形体6の外周面にラッピングテープを巻き付ける工程と、上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体6を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、上記硬化工程の後に上記マンドレル2の引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含む。上記ラッピングテープとして織物テープ8が用いられている。上記硬化工程が、70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱する第一加熱ステップと、上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱する第二加熱ステップとを含む。
【解決手段】本発明の製造方法は、マンドレル2に、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体6を得る工程と、上記中間成形体6の外周面にラッピングテープを巻き付ける工程と、上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体6を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、上記硬化工程の後に上記マンドレル2の引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含む。上記ラッピングテープとして織物テープ8が用いられている。上記硬化工程が、70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱する第一加熱ステップと、上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱する第二加熱ステップとを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、繊維強化樹脂製の管状体の製造方法及びこの製造方法により製造された管状体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非力な高齢者や女性ゴルファーの増加に伴い、わずかな力でも飛距離を伸ばすことのできるゴルフクラブシャフト(以下、単にシャフトともいう)の開発が望まれている。中でもシャフトの軽量化は、この問題を解決する有効な手段の一つと考えられ、様々な取り組みがなされてきた。
【0003】
この取り組みとして、材料面では、まず、スチールからCFRP(炭素繊維強化プラスチック)への変更が挙げられる。また、同じCFRPでも、カーボン繊維の強度を向上させること、樹脂の物性を変更すること又はカーボン繊維と樹脂との密着強度を向上させること等により、シャフト全体の強度を向上させ、その分重量を低減している。また、構造面での取り組みとして、強度が向上する角度に繊維を配向又は積層させて強度を向上させることにより、その強度向上分の重量を低減してきた。
【0004】
繊維強化樹脂製の管状体(以下、FRP管状体ともいう)は、様々な用途で用いられている。FRP管状体の製造方法として、ラッピングテープを用いた製造方法が公知である。この製造方法では、マンドレル(芯金)にシート状のFRP材料を巻き付けた後、所定の張力を付与しつつ樹脂テープを巻き付ける。この樹脂テープは、一般にラッピングテープとも称されている。このラッピングテープにより、成形圧力が付与される。
【0005】
このラッピングテープは、最終的には除去される。この除去を容易とするため、離型性の高いラッピングテープが好ましい。特開2002−144439号公報には、離型性を高める目的で、内面が織物文様であるラッピングテープを開示する。具体的には、織物と樹脂フィルムとが一体とされたラッピングテープが開示されている。
【特許文献1】特開2002−144439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CFRP製シャフトを軽量化する目的で、上記の通り、繊維や樹脂の強度、あるいは、繊維と樹脂との密着を高めることでシャフト全体の強度を高め、強度向上分の重量を低減する方法が採られてきた。そして、それらの方法によりシャフトの軽量化が図られてきた。しかしながら強度を向上させてその分軽量化するという開発にも限界がある。一方、ゴルファーのニーズには限界が無く、少しでも飛距離を伸ばすことが求められている。飛距離の増加を実現する手段の一つがシャフトの軽量化であり、シャフト軽量化への要求は尽きない。この要求を実現するために、シャフトに必要な最低限の強度は維持しつつ、シャフト剛性に関わる特性(フレックスやトルク)は犠牲にするという手法が採られてきた。しかしこの手法による軽量化も限界にきており、剛性の低下もクラブとしての機能に支障をきたすところまできている。如何にシャフトの剛性を維持したまま更なる軽量化を図るかが重要である。
【0007】
シャフトの剛性を維持したまま軽量化を実現する手段として、繊維含有率の高いCFRPを使用することが考えられる。つまり、管状体の成形品としての強度や剛性を主として担う繊維の含有率を高めることにより、単位重量当たりの強度や剛性が高まり、軽量化が図られる。しかしながら、繊維含有率の高いCFRPでの成形は、タック性が不足しているため、成形しにくい上に、繊維強化樹脂部材層間に空気が入り込みやすい。またこの場合、材料自体にも空気が多く含まれることになるため、管状体全体に空気が多く入り込む。この空気はボイドとなり、管状体の強度や耐久性を低下させうる。
【0008】
このように、軽量化を図りながら、強度と剛性とを同時に維持することは困難である。
【0009】
また、上記従来技術のラッピングテープでは、織物と樹脂フィルムとで伸び率が異なるため、張力を付与した際に織物と樹脂フィルムとが部分的に分離したり、テープが捻れたり、テープが湾曲したり、成形圧力がばらついたりする現象が発生しうる。これらの現象により、FRP管状体の表面が不均一となりやすく、不良品の発生又は強度の不均一が生じやすい。
【0010】
ところで、軽量で且つ強度の高いFRP管状体は、様々な用途において有用である。このFRP管状体、例えばゴルフクラブシャフトでは、軽量化が望まれている。軽量なゴルフクラブシャフトは、ヘッドスピード及び飛距離の増大に寄与しうる。本発明では、新たな技術思想に基づき、FRP管状体のボイド率を低下させうる製造方法を見いだした。ボイド率の低下は、強度の向上に寄与しうる。強度の向上は、シャフトの軽量化に寄与しうる。この製造方法においては、硬化工程が従来と異なる。
【0011】
本発明の目的は、ボイド率を効果的に低下させうる管状体の製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の製造方法は、マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体を得る工程と、上記中間成形体の外周面に、張力を付与しつつラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程と、上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、上記硬化工程の後に上記マンドレルの引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含む。上記ラッピングテープとして織物テープが用いられている。上記硬化工程が、70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱する第一加熱ステップと、上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱する第二加熱ステップとを含む。
【0013】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程が、上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後に樹脂フィルムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む。
【0014】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1が5(Mpa)以上150(Mpa)以下とされる。
【0015】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1とされ、上記第二巻き付け工程において上記樹脂フィルムテープに付与される引張応力がT2とされるとき、比(T1/T2)が0.1以上0.95以下とされる。
【0016】
好ましくは、上記樹脂フィルムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている。
【0017】
好ましくは、上記中間成形体の繊維含有率がZ1(質量%)であり、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)であるとき、差(Z2−Z1)が3質量%以上25質量%以下である。
【0018】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程が、上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後にゴムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む。
【0019】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1aが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である。
【0020】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1aとされ、上記第二巻き付け工程において上記ゴムテープに付与される引張応力がT2aとされるとき、比(T2a/T1a)が0.1以上である。
【0021】
好ましくは、上記ゴムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている。
【0022】
好ましくは、上記ラッピングテープが織物テープのみである。
【0023】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1bが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である。
【0024】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程において巻き付けられた上記織物テープのラッピング層数L1が、管状体のチップ端位置Tp1から管状体のバット端位置Bt1までの全ての点において1層以上である。
【0025】
本発明に係る他の製造方法は、マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体を得る工程と、上記中間成形体の外側に、張力を付与しつつラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程と、上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、上記硬化工程の後に上記マンドレルの引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含む。上記ラッピングテープとして織物テープが用いられており、更に、上記ラッピングテープとして、樹脂フィルムテープ又はゴムテープが用いられている。上記中間成形体の繊維含有率がZ1(質量%)であり、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)であるとき、差(Z2−Z1)が3質量%以上25質量%以下である。上記硬化工程が、70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱される第一加熱ステップと、上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱される第二加熱ステップとを含む。
【0026】
本発明に係る管状体は、上記のいずれかの製造方法により製造された管状体である。好ましくは、この管状体のボイド率Rbは0.5%以下とされる。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、長時間で且つ低温である第一加熱ステップにより、ボイド率が効果的に低下しうる。本発明により、軽量で且つ高強度な管状体が得られうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0029】
本実施形態の製造方法では、ラッピングテープが用いられる。以下の実施形態では、ラッピングテープの使用方法として、次の3通りの方法が採用される。
(1)ラッピングテープとして織物テープと樹脂フィルムテープとが用いられる
(2)ラッピングテープとして、織物テープとゴムテープとが用いられる。
(3)ラッピングテープとして、織物テープのみが用いられる。
【0030】
先ず、ラッピングテープとして織物テープと樹脂フィルムテープとが用いられる実施形態が、図1から図4を参照しつつ、説明される。
【0031】
図1は、本発明の第一実施形態に係る製造方法を説明するための図である。ここでは、管状体の製造方法の一例として、ゴルフクラブシャフトの製造方法が説明される。この製造方法では、先ず、マンドレル2と繊維強化樹脂部材4とが用意される。典型的なマンドレル2の材質は、鋼等の金属である。マンドレル2の中心軸線は、略直線である。マンドレル2の断面形状は、円形である。マンドレル2は、テーパーを有している。このテーパーにより、マンドレル2は、その一端に近づくほど細くなされている。マンドレル2は、部分的にパラレルであってもよい。換言すれば、マンドレル2は、部分的に直径が一定の部分を有していても良い。マンドレル2の全体において直径が一定であってもよい。
【0032】
マンドレル2は、最終的に得られる管状体の中空部を形成する。マンドレル2の形状により、管状体の中空部の形状が決定される。後述されるように、マンドレル2は、後の工程において引き抜かれる。この引き抜きが容易となるように、好ましくは、マンドレル2の表面に離型剤が塗布される。
【0033】
本実施形態では、先ず、マンドレルに、繊維強化樹脂部材が巻回される工程がなされる。この工程が、以下、巻回工程とも称される。
【0034】
巻回工程に先立ち、繊維強化樹脂部材が用意される。本実施形態では、繊維強化樹脂部材は、シート状である。繊維強化樹脂部材は、プリプレグ4である。この製造方法では、シート状の繊維強化樹脂部材が巻回される。この製造方法は、シートワインディング製法とも称される。なお、繊維強化樹脂部材として、プリプレグ4の他、液状の樹脂に含浸させた繊維が例示される。この繊維を用いた製法の一例は、いわゆるフィラメントワインディング製法である。本製造方法は、フィラメントワインディング製法にも適用されうる。
【0035】
プリプレグ4は、繊維とマトリクス樹脂とを含む。この繊維は、炭素繊維である。プリプレグ4の炭素繊維は、一方向に配向している。後述されるように、炭素繊維以外の繊維でもよい。高強度で且つ軽量な管状体とする観点から、炭素繊維が好ましい。巻回工程において、マトリクス樹脂は、完全には硬化していない。よってプリプレグ4は柔軟性を有する。この柔軟性は、プリプレグ4のマンドレル2への巻回を許容する。なお、後述されるように、マトリクス樹脂は限定されず、好ましくはエポキシ樹脂である。
【0036】
巻回工程の前に、プリプレグ4は、所望の形状に切断される。図1の実施形態では、6枚のプリプレグ4が用いられる。図1の実施形態では、切断されたプリプレグ4の例として、シートs1からs6が示されている。プリプレグ4は、いわゆるアングル層用シートs1、s2と、ストレート層用シートs3、s5、s6と、フープ層用シートs4とを含む。プリプレグ4は、シャフトの全長に亘って設けられる全長シートs1からs5と、シャフト長手方向の一部に設けられる部分シートs6とを含む。なお、プリプレグ4の仕様は限定されない。プリプレグ4の形状、厚み、繊維種類、繊維含有率等は限定されない。
【0037】
巻回工程では、シートs1からシートs6までが、順次マンドレル2に巻回される。巻回に先立ち、シートs2は、シートs1に貼り合わせられる。この貼り合わされたシート群がマンドレル2に巻回される。この貼り合わせにおいて、シートs2は、裏返される。この裏返しにより、シートs1の繊維とシートs2の繊維とは、互いに逆方向に配向する。図1において各シートs1からs6に記載された角度は、シャフト軸方向と繊維の配向方向とのなす角度を示している。
【0038】
シートs1からs6の巻回は、例えば人力によりなされる。巻回機(ローリングマシンとも称される)が用いられても良い。巻回工程により、中間成形体6が得られる。中間成形体6は、巻き付けられたプリプレグ4により構成されている。中間成形体6の断面は、渦巻き状の層よりなる。この層は、プリプレグ4により形成されている。
【0039】
次に、テープ巻き付け工程がなされる。このテープ巻き付け工程では、中間成形体6の外周面にラッピングテープが巻き付けられる。図2及び図3は、テープ巻き付け工程の様子を示す一部断面斜視図である。図2及び図3の断面において、中間成形体6は、単一の層として簡略的に示されている。実際には、中間成形体6は、前述したように複数の層よりなる。
【0040】
テープ巻き付け工程では、2種類のラッピングテープ8、10が用いられる。第一のラッピングテープは、織物テープ8である。第二のラッピングテープは、樹脂フィルムテープ10である。
【0041】
テープ巻き付け工程は、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とを含む。第一巻き付け工程では、織物テープ8が用いられる。織物テープ8は、織物を基材とするテープである。第二巻き付け工程では、樹脂フィルムテープ10が用いられる。樹脂フィルムテープ10は、樹脂フィルムを基材とするテープである。第一巻き付け工程の後に第二巻き付け工程がなされる。第一巻き付け工程の様子が、図2で示される。第二巻き付け工程の様子が、図3で示される。
【0042】
第一巻き付け工程では、中間成形体6の外周面に織物テープ8が直接巻き付けられる。中間成形体6の外周面と織物テープ8とは当接する。織物テープ8は中間成形体6の外周面に接触している。
【0043】
図2が示すように、第一巻き付け工程において、織物テープ8は、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、中間成形体6の軸線方向と織物テープ8の長手方向とは互いに垂直とされない。織物テープ8は、中間成形体6に隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、織物テープ8の幅W1は、巻き付けピッチP1よりも広い。巻き付けピッチP1は、図2において両矢印で示されている。つまり、織物テープ8は、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。この織物テープ8の巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。織物テープ8は、中間成形体6の全長に亘って巻き付けられる。第一巻き付け工程の結果、中間成形体6の全体が織物テープ8により覆われる。なお、織物テープ8の両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により中間成形体6に固定される。この両端の固定により、織物テープ8の巻き付けが自然に解けることはない。
【0044】
織物テープ8の巻き付けは、張力F1を付与しつつなされる。この張力F1により、中間成形体6は、織物テープ8により締め付けられる。織物テープ8の巻き付けにより、織物被覆体12が得られる。織物被覆体12は、中間成形体6が織物テープ8で覆われてなる。
【0045】
第二巻き付け工程では、織物被覆体12の外周面に樹脂フィルムテープ10が直接巻き付けられる。織物被覆体12の外周面と樹脂フィルムテープ10とは当接する。樹脂フィルムテープ10は織物被覆体12の外周面に接触している。つまり樹脂フィルムテープ10は織物テープ8に接触している。
【0046】
図3が示すように、第二巻き付け工程において、樹脂フィルムテープ10は、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、織物被覆体12の軸線方向と樹脂フィルムテープ10の長手方向とは互いに垂直とされない。樹脂フィルムテープ10は、織物被覆体12に隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、樹脂フィルムテープ10の幅W2は、巻き付けピッチP2よりも広い。巻き付けピッチP2は、図3において両矢印で示されている。つまり、樹脂フィルムテープ10は、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。この樹脂フィルムテープ10の巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。樹脂フィルムテープ10は、織物被覆体12の全長に亘って巻き付けられる。第二巻き付け工程の結果、織物被覆体12の全体が樹脂フィルムテープ10により覆われる。なお、樹脂フィルムテープ10の両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により織物被覆体12に固定される。この両端の固定により、樹脂フィルムテープ10の巻き付けが自然に解けることはない。
【0047】
樹脂フィルムテープ10の巻き付けは、張力F2を付与しつつなされる。この張力F2により、織物被覆体12は、樹脂フィルムテープ10により締め付けられる。
【0048】
以上のような第一巻き付け工程及び第二巻き付け工程により、中間成形体6は、織物テープ8及び樹脂フィルムテープ10によって締め付けられた状態となる。
【0049】
なお織物被覆体12の表面には、織物テープ8による螺旋模様が形成されているが、図3においては、この織物テープ8による螺旋模様の記載が省略されている。
【0050】
次に、硬化工程がなされる。この硬化工程では、織物テープ8及び樹脂フィルムテープ10が巻き付けられた中間成形体6において、マトリクス樹脂を硬化させる。この硬化工程は、加熱工程である。加熱は、加熱炉によりなされる。
【0051】
硬化工程は、第一加熱ステップと、第二加熱ステップとを含む。好ましくは、硬化工程は、第一加熱ステップ及び第二加熱ステップのみからなる。第一加熱ステップの後に、第二加熱ステップがなされる。第一加熱ステップの温度は、第二加熱ステップの温度よりも低い。
【0052】
第一加熱ステップの温度は、70℃以上90℃以下とされる。第一加熱ステップの時間は、120分以上4320分以下とされる。
【0053】
第二加熱ステップの温度は、120℃以上200℃以下とされる。第二加熱ステップの時間は、10分以上60分以下とされる。
【0054】
プリプレグには、気泡が含まれている。この気泡は、プリプレグの製造段階において取り込まれたものである。この気泡は、完成されたシャフトにも残留しうる。この気泡は、シャフトの強度を低下させる。ボイド率が大きい場合、シャフトの強度は低い。
【0055】
大きな気泡は、小さな気泡と比較して、シャフトのひび割れの起点となりやすい。大きな気泡は、シャフトの強度を低下させる。
【0056】
前述のように、第一加熱ステップは、低温である。低温であるため、気泡の熱膨張が少ない。熱膨張が少ないため、気泡が大きくなりにくい。第一加熱ステップでは、気泡の熱膨張が抑制されつつ、マトリクス樹脂の硬化が進行する。第一加熱ステップでマトリクス樹脂の硬化が進行するため、第二加熱ステップに移行した段階では、気泡の熱膨張は起こりにくい。第一加熱ステップが長時間とされることにより、第一加熱ステップにおけるマトリクス樹脂の硬化はより一層進行する。第一加熱ステップによりマトリクス樹脂の硬化が進行している場合、第二加熱ステップにおける気泡の熱膨張は、更に起こりにくい。
【0057】
第一加熱ステップでは、マトリクス樹脂が加熱されるため、マトリクス樹脂は流動化しうる。マトリクス樹脂の流動化により、気泡が、マトリクス樹脂中を移動しうる。この移動に伴い、気泡同士が合体しうる。気泡同士が合体した場合、より大きな気泡が生成されうる。上記の通り、大きな気泡は、シャフト強度を低下させる。しかし、本発明において、第一加熱ステップは低温である。この温度の低さに起因して、マトリクス樹脂の粘度は高い。この高い粘度に起因して、気泡は、第一加熱ステップにおいて、移動しにくい。第一加熱ステップにおいて、気泡同士は合体しにくい。低温の第一加熱ステップは、気泡同士の合体を抑制しうる。低温の第一加熱ステップは、気泡同士の合体による気泡の成長を抑制しうる。低温の第一加熱ステップは、大きな気泡の生成を抑制しうる。
【0058】
気泡の熱膨張を抑制する観点、及び、気泡同士の合体を抑制する観点から、第一加熱ステップの温度は、90℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましく、80℃以下がより好ましい。
【0059】
第一加熱ステップにおける硬化を促進し、第二加熱ステップにおける気泡の熱膨張を抑制する観点から、第一加熱ステップの温度は、70℃以上が好ましい。
【0060】
第一加熱ステップにおける硬化を促進し、第二加熱ステップにおける気泡の熱膨張を抑制する観点から、第一加熱ステップの時間は、120分以上が好ましく、180分以上がより好ましい。
【0061】
長時間の第一加熱ステップは、織物テープの使用との相乗効果を奏しうる。第一加熱ステップでは、マトリクス樹脂が流動化しうる。第一加熱ステップが長時間であるから、流動化している時間も長時間である。流動化したマトリクス樹脂は、織物テープに移行しうる。マトリクス樹脂の織物テープへの移行を促進する観点からも、第一加熱ステップの時間は、120分以上が好ましく、180分以上がより好ましい。
【0062】
シャフトの生産性の観点から、第一加熱ステップの時間は、4320分以下が好ましく、1440分以下がより好ましい。
【0063】
長時間の第一加熱ステップにより、マトリクス樹脂の硬化はかなり進行している。しかし、第一加熱ステップは低温であるため、マトリクス樹脂の硬化は完全ではない。このため第二加熱ステップが設定される。高温の第二加熱ステップにより、マトリクス樹脂が完全に硬化しうる。
【0064】
マトリクス樹脂の硬化を促進する観点から、第二加熱ステップの温度は、120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましい。シャフトの製造に要するエネルギーのコストを削減する観点から、第二加熱ステップの温度は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。
【0065】
マトリクス樹脂の硬化を促進する観点から、第二加熱ステップの時間は、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましい。シャフトの生産性の観点から、第二加熱ステップの時間は、60分以下が好ましく、30分以下がより好ましい。
【0066】
硬化工程の温度は、加熱炉(オーブン)内の空気の温度を意味しうる。硬化工程の温度は、硬化工程におけるラッピングテープの表面温度を意味しうる。
【0067】
硬化工程の後、マンドレル2の引き抜き及びラッピングテープの除去を行い硬化管状体を得る工程がなされる。ラッピングテープの除去は、先に樹脂フィルムテープ10の除去がなされ、次に織物テープ8の除去がなされる。マンドレル2の引き抜き及びラッピングテープの除去は、どちらが先になされてもよい。作業性の観点から、好ましくは、マンドレル2が引き抜かれた後にラッピングテープが除去される。
【0068】
通常は、上記硬化管状体に仕上げ加工が施されて、最終製品の管状体が完成する。この仕上げ加工には、両端部の切断、表面研磨、塗装等が含まれうる。
【0069】
図4は、樹脂フィルムテープ10の断面図である。樹脂フィルムテープ10は、樹脂フィルムよりなる基材14と、コーティング剤16とを有する。コーティング剤16は層を形成している。樹脂フィルムテープ10は、基材14とコーティング剤16との2層構造である。基材14の内面に、コーティング剤16が設けられている。コーティング剤16として、フッ素系化合物やシリコン系化合物が好ましい。なお、織物テープ8に発生する皺を抑制する観点から、織物テープ8の内面にコーティング剤が設けられても良い。
【0070】
上記の如く、製造工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂(マトリクス樹脂)は織物テープ8に移行しうる。特に、第一加熱ステップにおいて、マトリクス樹脂が織物テープ8に移行しやすい。第一加熱ステップが長時間であるから、この長い時間を利用して、マトリクス樹脂が織物テープ8に移行しやすい。
【0071】
織物テープ8は、織られた繊維の間に空隙や穴を有している。よって織物テープ8は、樹脂を吸収及び/又は透過させうる。織物テープ8により、マトリクス樹脂が成形体の外部に排出されやすくなり、管状体の繊維含有率が向上しうる。これにより、管状体の軽量化が達成される。
【0072】
FRP管状体の繊維含有率を高くする手段として、繊維含有率が高い繊維強化樹脂部材を用いることが考えられる。繊維含有率が高いことは、樹脂含有率が低いことを意味する。樹脂含有率が低い繊維強化樹脂部材は、タック性(粘着性)が低い。よって、樹脂含有率が低い繊維強化樹脂部材は、繊維強化樹脂部材同士の密着性が低い。このような粘着性の低い繊維強化樹脂部材は、一旦巻回されても解けやすい。このようなタック性の低い繊維強化樹脂部材では、マンドレル2への巻き付け作業が行いにくく、且つ、巻き付けの際に皺が発生しやすい。また、密着性が悪いため、渦巻き状に巻き付けられた繊維強化樹脂部材層の層間に空気が含まれやすくなり、管状体の強度や耐久性が損なわれる。粘着性の低い繊維強化樹脂部材は、生産性の低下や成形不良を招きやすい。
【0073】
本発明の製造方法では、上記中間成形体の外側に直接織物テープ8を張力を付与しつつ巻き付け、更にその外側に樹脂フィルムテープ10を張力を付与しつつ巻き付ける。この製造方法により、硬化工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8に吸収される。この吸収により、繊維含有率の高い繊維強化樹脂部材を用いることなく、FRP管状体の繊維含有率を高くすることができる。よって、タック性の高い繊維強化樹脂部材を使用されても、繊維含有率が高められうる。更に、織物テープ8は、中間成形体6に含まれる空気も吸収又は透過させうる。これにより、ボイドの原因となる空気が抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。また、樹脂フィルムテープ10が中間成形体6に大きな圧力を加えることにより、ボイドの原因となる空気が一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。
【0074】
織物テープ8による樹脂の吸収は、繊維強化樹脂部材を巻回した後になされる。本発明では、粘着性が過度に低い繊維強化樹脂部材を用いることなく、繊維含有率の高いFRP管状体が得られうる。本実施形態では、繊維強化樹脂部材の巻回が行いやすく、且つ繊維含有率の向上が達成されうる。製造工程中に繊維含有率を向上させているので、成形性及び生産性を維持しながら軽量化が達成されている。
【0075】
本実施形態では、織物テープ8の外側に樹脂フィルムテープ10が巻き付けられている。実質的に空気や樹脂を通さない樹脂フィルムテープ10が織物テープ8の外側に巻き付けられることにより、繊維強化樹脂部材から織物テープ8への樹脂の移行がより一層促進されうる。また、中間成形体6に含まれる空気が織物テープ8に移行しうるため、エアー溜まりやボイドが抑制されたFRP管状体が得られうる。
【0076】
前述したように、特開2002−144439に記載されたラッピングテープでは、織物と樹脂フィルムとが一体化されている。このテープも織物部分に樹脂が吸収される可能性がある。しかし実際には、この一体化されたテープでは、樹脂の吸収効果が低いことが判明した。
【0077】
このように吸収効果が低い原因は、次のように考えられる。ラッピングテープは、幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられる。よって、螺旋状に巻き付けられたラッピングテープには、ラッピングテープ同士が重なった重複部が存在する。つまり、この重複部には、中間成形体と接する内側のラッピングテープ(内側テープ)と、この内側テープの外側に位置する外側のラッピングテープ(外側テープ)とが存在する。従来の一体化されたラッピングテープの場合、内側テープに存在する樹脂フィルム層が、外側テープと中間成形体との間に介在することになる。この樹脂フィルム層は、樹脂及びエアーを通さない。よって、従来の一体化されたテープの場合、上記重複部において、内側テープの樹脂フィルム層が、外側テープの織物層への樹脂及び空気の移行を阻害する。このように、従来の一体化されたテープでは、樹脂及び空気が織物層に移行しにくい。
【0078】
更に、織物と樹脂フィルムとが一体化されているテープでは、織物と樹脂フィルムとの間の空隙が少なくなっているため、樹脂の吸収効果が低いと考えられる。更に、従来の一体化されたテープでは、織物と樹脂フィルム層との間に存在する接着剤層の一部が織物の内部に浸透しており、織物自体の空隙が少なくなっているため、樹脂の吸収効果が低いと考えられる。
【0079】
これに対して本実施形態では、上記重複部において、織物テープ同士が重なっている。この重複部において、織物テープの内側に樹脂テープ層が存在しない。よって、重複部を含めた織物テープの全体に樹脂及び空気が移行することができ、樹脂及び空気が織物テープに移行しやすい。
【0080】
更に本実施形態では、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10とが別体であり、且つ両者を別々に巻き付けるため、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との間の空隙は大きくなりやすい。よって、樹脂及び空気が織物層に移行しやすい。
【0081】
前述したように、織物テープ8は幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられる。このように螺旋状に巻き付けられた織物テープ8により、凹凸が形成される。織物テープ8同士が重なった部分の厚さは、重なっていない部分の厚さの2倍である。よって、織物テープ8が重なった部分と重なっていない部分とにより凹凸が生じる。また、織物テープ8の幅方向縁9(図2参照)には、織物テープ8の厚さに相当する段差があり、この段差が凹凸となる。これらの凹凸により、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との間の空隙が大きくなる。このような空隙に、樹脂や空気が入り込みうる。よって、樹脂及び空気が織物テープ8側に移行しやすい。
【0082】
第二巻き付け工程において、樹脂フィルムテープ10は、張力F2を付与されつつ織物被覆体12に巻き付けられる。この張力F2に起因して、外側から樹脂フィルムテープ10を巻き付けられた織物テープ8に皺が発生することがある。上記コーティング剤16は、この皺の発生を抑制しうる。上記コーティング剤16は、第二巻き付け工程における織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との摩擦抵抗を低下させうる。この摩擦抵抗の低下に起因して、織物テープ8における皺の発生が抑制されうる。更にコーティング剤16は、樹脂フィルムテープ10に離型性を付与する。この離型性により、樹脂フィルムテープ10の除去が容易とされうる。
【0083】
前述したように、織物テープ8は張力F1が付与されつつ巻き付けられており、樹脂フィルムテープ10は張力F2が付与されつつ巻き付けられている。ここで、上記第一巻き付け工程において織物テープ8に付与される引張応力T1と、上記第二巻き付け工程において上記樹脂フィルムテープ10に付与される引張応力がT2とが定義される。引張応力T1は、上記張力F1を、織物テープ8の断面積S1で割った値である。即ち、[T1=F1/S1]である。この断面積S1は、張力が作用していない(フリーな)状態の織物テープ8において測定される。この引張応力T1は、巻き付けられる直前において織物テープ8に作用する引張応力を意味する。この引張応力T1は、巻き付けられた状態において織物テープ8に作用する引張応力を意味しない。引張応力T2は、上記張力F2を、樹脂フィルムテープ10の断面積S2で割った値である。即ち、[T2=F2/S2]である。この断面積S2は、張力が作用していない(フリーな)状態の樹脂フィルムテープ10において測定される。この引張応力T2は、巻き付けられる直前において樹脂フィルムテープ10に作用する引張応力を意味する。この引張応力T2は、巻き付けられた状態において樹脂フィルムテープ10に作用する引張応力を意味しない。
【0084】
織物テープ8に移行する樹脂の量を大きくするとともに、織物テープ8のたるみを抑制する観点から、引張応力T1は5Mpa以上が好ましく、10Mpa以上がより好ましく、20Mpa以上がより好ましく、25Mpa以上がより好ましく、30Mpa以上が更に好ましい。管状体の表面に発生する段差を抑制し、管状体表面を滑らかにするための研磨量を抑える観点から、引張応力T1は150Mpa以下が好ましく、100Mpa以下がより好ましく、60Mpa以下が更に好ましい。
【0085】
織物テープ8に移行する樹脂の量を大きくする観点から、引張応力T2は40Mpa以上が好ましく、50Mpa以上がより好ましく、65Mpa以上が更に好ましい。樹脂フィルムテープ10が切れることを抑制する観点から、引張応力T2は200Mpa以下が好ましく、180Mpa以下がより好ましく、150Mpa以下がより好ましい。
【0086】
引張応力T2は、引張応力T1よりも大きいのが好ましい。T2>T1とされることにより、織物テープ8に移行する樹脂の量が増加しうる。引張応力T1が比較的小さくされることにより、織物テープ8の空隙が維持されやすい。引張応力T2が比較的大きくされることにより、織物テープ8の空隙を維持しつつ、中間成形体6への締め付け力を大きくすることができる。よって、T2>T1により、織物テープ8に樹脂が移行しやすい。また、T2>T1とすることにより、FRP管状体内のボイドが低減される。
【0087】
第二巻き付け工程において織物テープ8に皺が発生することを抑制する観点から、比(T1/T2)は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.4以上が更に好ましい。織物テープ8に移行する樹脂を増加させる観点から、比(T1/T2)は、0.95以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下が更に好ましい。
【0088】
本実施形態では、中間成形体6の繊維含有率がZ1(質量%)とされ、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)とされる。軽量化の観点から、差(Z2−Z1)は3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましい。樹脂が過度に除去された場合、ラッピングテープを除去しにくくなる等により生産性が低下しやすい。この観点から、差(Z2−Z1)は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0089】
差(Z2−Z1)を3質量%以上25質量%以下とするための製造方法は、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とを含む上記製造方法に限定されない。この製造方法として、上記巻き付け工程において織物テープ8のみを巻き付ける製造方法が例示される。この製造方法は、上記第二巻き付け工程を含まない他は上記製造方法と同じである。織物テープ8のみを巻き付ける製造方法の一例は、後述される。
【0090】
中間成形体6の繊維含有率Z1は限定されない。FRP管状体の剛性及び強度を高める観点から、繊維含有率Z1は50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。巻き付け作業の生産性を高めると共に巻き付け不良を抑制する観点から、繊維含有率Z1は85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。中間成形体6の繊維含有率Z1は、繊維強化樹脂部材(プリプレグ4)の繊維含有率に等しい。繊維含有率Z1は、繊維強化樹脂部材(プリプレグ4)の製品データに基づき決定されうる。
【0091】
硬化管状体の繊維含有率Z2は限定されない。FRP管状体を軽量とする観点から、繊維含有率Z2は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。樹脂が過度に除去された場合、中間成形体6から排出された樹脂によりラッピングテープの除去が行いにくくなるので、生産性が低下しやすい。この観点から、繊維含有率Z2は95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がより好ましく、83質量%以下が更に好ましい。繊維含有率Z2の値は、繊維含有率Z1の値と、中間成形体6の質量と、除去された樹脂の質量とから算出される。
【0092】
織物テープ8の繊維は、離型性、締め付け力、強度等を総合的に考慮すると、ナイロン繊維及びポリエステル繊維が好ましい。織物テープ8の厚さd1は限定されない。織物テープ8による樹脂の吸収量を大きくするとともに、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との間の空隙を増やす観点から、織物テープ8の厚さd1は、50μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましく、90μm以上が更に好ましい。皺の発生を抑制するとともにコストを下げる観点から、織物テープ8の厚さd1は、150μm以下が好ましく、140μm以下がより好ましく、130μm以下が更に好ましい。
【0093】
織物テープ8の幅W1は限定されない。織物テープ8に吸収されうる樹脂の量を増加させる観点から、織物テープ8の幅W1は5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましく、10mm以上が更に好ましい。皺の発生を抑制するとともに、中間成形体6を締め付けやすくする観点から、織物テープ8の幅W1は35mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下が更に好ましい。
【0094】
織物テープ8の織り組織は限定されない。この織り組織として、平織り、朱子織り及び綾織りが例示される。張力により過度に引き延ばされると、樹脂が入り込みうる空隙及び繊維に吸収されうる樹脂の量が減少しやすい。張力により過度に引き延ばされることを抑制する観点から、織り組織には、織物テープ8の長手方向に対して略平行に配向する糸が存在しているのが好ましい。
【0095】
樹脂フィルムテープ10の基材14の材質としては、ポリプロピレン樹脂及びポリエステル樹脂が例示される。これらの樹脂は引張強度が高いため好ましい。更には、繊維強化樹脂部材中の樹脂の粘度が低下する温度域において収縮する樹脂フィルムテープが好ましく、例えば、ポリプロピレン樹脂層とポリエステル樹脂層とをラミネート積層してなる複合フィルムが好ましい。
【0096】
樹脂フィルムテープ10の厚さd2は限定されない。張力F2により切断されることを抑制する観点から、樹脂フィルムテープ10の厚さd2は10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上がより好ましく、25μm以上が更に好ましい。皺の発生を抑制するとともにコストを下げる観点から、樹脂フィルムテープ10の厚さd2は、150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。
【0097】
樹脂フィルムテープ10の幅W2は限定されない。管状体表面に発生する段差を抑制する観点から、幅W2は10mm以上が好ましく、12mm以上がより好ましく、14mm以上が更に好ましい。巻き付け時の皺を抑制する観点から、幅W2は35mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下が更に好ましい。
【0098】
繊維強化樹脂部材の繊維は限定されない。この繊維として、無機繊維、有機繊維及び金属繊維が例示される。この無機繊維として、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維及びアルミナ繊維が例示される。この有機繊維として、ポリエチレン繊維及びポリアミド繊維が例示される。複数の繊維が組み合わされてもよい。ゴルフクラブシャフトに要求される剛性を確保しつつ軽量な管状体を得る観点から、繊維の引張弾性率は、5t/mm2以上が好ましく、10t/mm2以上がより好ましく、24t/mm2以上が更に好ましい。繊維の入手可能性の観点から、繊維の引張弾性率は100t/mm2以下が好ましい。この引張弾性率は、JIS R7601:1986「炭素繊維試験方法」に準拠して測定される。
【0099】
次に、ラッピングテープとして織物テープとゴムテープとが用いられる実施形態について、図5から図8を参照しつつ、説明する。
【0100】
図5は、本発明の第二実施形態に係る製造方法を説明するための図である。ここでは、管状体の製造方法の一例として、ゴルフクラブシャフトの製造方法が説明される。この製造方法では、先ず、マンドレル2aと繊維強化樹脂部材4aとが用意される。マンドレル2aは、芯金とも称される。典型的なマンドレル2aの材質は、鋼等の金属である。マンドレル2aの中心軸線は、略直線である。マンドレル2aの断面形状は、円形である。マンドレル2aは、テーパーを有している。このテーパーにより、マンドレル2aは、その一端に近づくほど細くなされている。マンドレル2aは、部分的にパラレルであってもよい。換言すれば、マンドレル2aは、部分的に直径が一定の部分を有していても良い。マンドレル2aの全体において直径が一定であってもよい。
【0101】
マンドレル2aは、最終的に得られる管状体の中空部を形成する。マンドレル2aの形状により、管状体の中空部の形状が決定される。後述されるように、マンドレル2aは、後の工程において引き抜かれる。この引き抜きが容易となるように、好ましくは、マンドレル2aの表面に離型剤が塗布される。
【0102】
本製造方法では、先ず、マンドレルに、繊維強化樹脂部材が巻回される工程がなされる。
【0103】
巻回工程の前に、プリプレグ4aは、所望の形状に切断される。図5の実施形態では、6枚のプリプレグ4aが用いられる。図5の実施形態では、切断されたプリプレグ4aの例として、シートh1からh6が示されている。プリプレグ4aは、いわゆるアングル層用シートh1、h2と、ストレート層用シートh3、h5、h6と、フープ層用シートh4とを含む。プリプレグ4aは、シャフトの全長に亘って設けられる全長シートh1からh5と、シャフト長手方向の一部に設けられる部分シートh6とを含む。なお、プリプレグ4aの仕様は限定されない。プリプレグ4aの形状、厚み、繊維種類、繊維含有率等は限定されない。
【0104】
巻回工程は、上記第一実施形態と同様である。プリプレグ4aは、上記プリプレグ4と同様である。
【0105】
前述した第一実施形態と、本第二実施形態とでは、テープ巻き付け工程のみが相違する。樹脂フィルムテープに代えてゴムテープが用いられている他は、本第二実施形態は、上記第一実施形態と同様である。
【0106】
本実施形態のテープ巻き付け工程では、中間成形体6aの外側にラッピングテープが巻き付けられる。図6及び図7は、テープ巻き付け工程の様子を示す一部断面斜視図である。図6及び図7の断面において、中間成形体6aは、単一の層として簡略的に示されている。実際には、中間成形体6aは、前述したように複数の層よりなる。
【0107】
このテープ巻き付け工程では、2種類のラッピングテープ8a、10aが用いられる。第一のラッピングテープは、織物テープ8aである。第二のラッピングテープは、ゴムテープ10aである。
【0108】
このテープ巻き付け工程は、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とを含む。第一巻き付け工程では、織物テープ8aが用いられる。織物テープ8aは、織物を基材とするテープである。織物テープ8aは、織物のみにより構成されていてもよい。第二巻き付け工程では、ゴムテープ10aが用いられる。ゴムテープ10aは、ゴム又はゴム組成物を基材とするテープである。ゴムテープ10aは、ゴム組成物のみからなっていてもよい。第一巻き付け工程の後に第二巻き付け工程がなされる。第一巻き付け工程の様子が、図6で示される。第二巻き付け工程の様子が、図7で示される。
【0109】
第一巻き付け工程では、中間成形体6aの外周面に織物テープ8aが直接巻き付けられる。中間成形体6aの外周面と織物テープ8aとは当接する。織物テープ8aは中間成形体6aの外周面に接触している。
【0110】
図6が示すように、第一巻き付け工程において、織物テープ8aは、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、中間成形体6aの軸線方向と織物テープ8aの長手方向とは互いに垂直とされない。織物テープ8aは、中間成形体6aに隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、織物テープ8aの幅W1aは、巻き付けピッチP1aよりも広い。巻き付けピッチP1aは、図6において両矢印で示されている。つまり、織物テープ8aは、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。この織物テープ8aの巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。織物テープ8aは、中間成形体6aの全長に亘って巻き付けられる。第一巻き付け工程の結果、中間成形体6aの全体が織物テープ8aにより覆われる。なお、織物テープ8aの両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により中間成形体6aに固定される。この両端の固定により、織物テープ8aの巻き付けが自然に解けることはない。
【0111】
織物テープ8aの巻き付けは、張力F1aを付与しつつなされる。この張力F1aにより、中間成形体6aは、織物テープ8aにより締め付けられる。織物テープ8aの巻き付けにより、織物被覆体12aが得られる。織物被覆体12aは、中間成形体6aが織物テープ8aで覆われてなる。
【0112】
第二巻き付け工程では、中間成形体6aの外側にゴムテープ10aが巻き付けられる。この第二巻き付け工程では、織物被覆体12aの外周面にゴムテープ10aが直接巻き付けられる。織物被覆体12aの外周面とゴムテープ10aとは当接する。ゴムテープ10aは織物被覆体12aの外周面に接触している。つまりゴムテープ10aは織物テープ8aに接触している。
【0113】
図7が示すように、第二巻き付け工程において、ゴムテープ10aは、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、織物被覆体12aの軸線方向とゴムテープ10aの長手方向とは互いに垂直とされない。ゴムテープ10aは、織物被覆体12aに隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、ゴムテープ10aの幅W2aは、巻き付けピッチP2aよりも広い。巻き付けピッチP2aは、図7において両矢印で示されている。つまり、ゴムテープ10aは、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。このゴムテープ10aの巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。ゴムテープ10aは、織物被覆体12aの全長に亘って巻き付けられる。第二巻き付け工程の結果、織物被覆体12aの全体がゴムテープ10aにより覆われる。なお、ゴムテープ10aの両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により織物被覆体12aに固定される。この両端の固定により、ゴムテープ10aの巻き付けが自然に解けることはない。
【0114】
ゴムテープ10aの巻き付けは、張力F2aを付与しつつなされる。この張力F2aにより、織物被覆体12aは、ゴムテープ10aにより締め付けられる。
【0115】
以上のような第一巻き付け工程及び第二巻き付け工程により、中間成形体6aは、織物テープ8a及びゴムテープ10aによって締め付けられた状態となる。
【0116】
なお織物被覆体12aの表面には、織物テープ8aによる螺旋模様が形成されているが、図7においては、この織物テープ8aによる螺旋模様の記載が省略されている。
【0117】
次に、硬化工程がなされる。この硬化工程では、織物テープ8a及びゴムテープ10aが巻き付けられた中間成形体6aにおいて、マトリクス樹脂を硬化させる。この硬化工程は、前述した第一実施形態と同様である。
【0118】
硬化工程の後、マンドレル2aの引き抜き及びラッピングテープの除去を行い硬化管状体を得る工程がなされる。ラッピングテープの除去は、先にゴムテープ10aの除去がなされ、次に織物テープ8aの除去がなされる。マンドレル2aの引き抜き及びラッピングテープの除去は、どちらが先になされてもよい。作業性の観点から、好ましくは、マンドレル2aが引き抜かれた後にラッピングテープが除去される。硬化管状体の表面には、螺旋状に巻き付けられた織物テープ8aの跡が螺旋状の凹凸として残る。
【0119】
図8は、ゴムテープ10aの断面図である。ゴムテープ10aは、ゴム組成物よりなる基材14aと、コーティング剤16aとを有する。ゴムテープ10aは、基材14aとコーティング剤16aとの2層構造である。基材14aの内面に、コーティング剤16aが設けられている。コーティング剤16aとして、フッ素系化合物やシリコン系化合物が好ましい。なおコーティング剤16aは設けられなくてもよい。また、織物テープ8aに発生する皺を抑制する観点から、織物テープ8aの内面にコーティング剤が設けられても良い。
【0120】
第二実施形態によれば、第一実施形態と同様に、ボイドの大型化及びボイド率が抑制される。また、本第二実施形態では、製造工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8aに移行しうる。織物テープ8aは、織られた繊維の間に空隙や穴を有している。よって織物テープ8aは、樹脂を吸収及び/又は透過させうる。織物テープ8aにより、マトリクス樹脂が成形体の外部に排出されやすくなり、管状体の繊維含有率が向上しうる。これにより、管状体の軽量化が達成される。
【0121】
本実施形態では、上記中間成形体の外側に直接織物テープ8aを張力を付与しつつ巻き付け、更にその外側にゴムテープ10aを張力を付与しつつ巻き付ける。この製造方法により、加熱工程中において繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8aに吸収される。この吸収により、繊維含有率の高い繊維強化樹脂部材を用いることなく、FRP管状体の繊維含有率を高くすることができる。よって、タック性の高い繊維強化樹脂部材が使用されても、繊維含有率が高められうる。更に、織物テープ8aは、中間成形体6aに含まれる空気も吸収又は透過させうる。これにより、ボイドの原因となる空気が抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。また、ゴムテープ10aは弾性体のため、中間成形体6aの中心に向かう圧力を効果的に付与しうる。この圧力により、ボイドの原因となる空気が一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。ゴムテープ10aは、弾性的に伸ばされた状態で巻き付けられているので、収縮しようとする。この収縮しようとする力により、ゴムテープ10aは、中間成形体6aの表面を効果的に押圧しうる。この押圧力により、ボイドの原因となる空気が一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。
【0122】
織物テープ8aによる樹脂の吸収(抽出)は、繊維強化樹脂部材を巻回した後になされる。本実施形態では、粘着性が過度に低い繊維強化樹脂部材を用いることなく、繊維含有率の高いFRP管状体が得られうる。つまり本発明では、繊維強化樹脂部材の巻回が行いやすく、且つ繊維含有率の向上が達成されうる。製造工程中に繊維含有率を向上させうるので、成形性及び生産性を維持しながら軽量化が達成されている。
【0123】
本実施形態では、織物テープ8aの外側にゴムテープ10aが巻き付けられている。実質的に空気や樹脂を通さないゴムテープ10aが織物テープ8aの外側に巻き付けられることにより、繊維強化樹脂部材から織物テープ8aへの樹脂の移行がより一層促進されうる。また、中間成形体6aに含まれる空気が織物テープ8aに移行しうるため、エアー溜まりやボイドが抑制されたFRP管状体が得られうる。
【0124】
本実施形態では、ラッピングテープが重なった重複部において、織物テープ同士が重なっている。この重複部において、織物テープの内側に樹脂テープ層又はゴムテープ層が存在しない。よって、重複部を含めた織物テープの全体に樹脂及び空気が移行することができ、樹脂及び空気が織物テープに移行しやすい。
【0125】
更に本実施形態では、織物テープ8aとゴムテープ10aとが別体であり、且つ両者を別々に巻き付けるため、織物テープ8aとゴムテープ10aとの間の空隙は大きくなりやすい。よって、樹脂及び空気が織物層に移行しやすい。
【0126】
前述したように、織物テープ8aは幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられる。このように螺旋状に巻き付けられた織物テープ8aにより、凹凸が形成される。織物テープ8a同士が重なった部分の厚さは、重なっていない部分の厚さの2倍である。よって、織物テープ8aが重なった部分と重なっていない部分とにより凹凸が生じる。また、織物テープ8aの幅方向縁9(図6参照)には、織物テープ8aの厚さに相当する段差があり、この段差が凹凸となる。これらの凹凸により、織物テープ8aとゴムテープ10aとの間の空隙が大きくなる。このような空隙に、樹脂や空気が入り込みうる。よって、樹脂及び空気が織物テープ8a側に移行しやすい。
【0127】
第二巻き付け工程において、ゴムテープ10aは、張力F2aを付与されつつ織物被覆体12aに巻き付けられる。この張力F2aに起因して、外側からゴムテープ10aを巻き付けられた織物テープ8aに皺が発生することがある。上記コーティング剤16aは、この皺の発生を抑制しうる。上記コーティング剤16aは、第二巻き付け工程における織物テープ8aとゴムテープ10aとの摩擦抵抗を低下させうる。この摩擦抵抗の低下に起因して、織物テープ8aにおける皺の発生が抑制されうる。更にコーティング剤16aは、ゴムテープ10aに離型性を付与する。この離型性により、ゴムテープ10aの除去が容易とされうる。
【0128】
前述したように、織物テープ8aは張力F1aが付与されつつ巻き付けられており、ゴムテープ10aは張力F2aが付与されつつ巻き付けられている。ここで、上記第一巻き付け工程において織物テープ8aに付与される引張応力T1aと、上記第二巻き付け工程において上記ゴムテープ10aに付与される引張応力がT2aとが定義される。引張応力T1aは、上記張力F1aを、織物テープ8aの断面積S1aで割った値である。即ち、[T1a=F1a/S1a]である。この断面積S1aは、張力が作用していない(フリーな)状態の織物テープ8aにおいて測定される。この引張応力T1aは、巻き付けられる直前において織物テープ8aに作用する引張応力を意味する。この引張応力T1aは、巻き付けられた状態において織物テープ8aに作用する引張応力を意味しない。引張応力T2aは、上記張力F2aを、ゴムテープ10aの断面積S2aで割った値である。即ち、[T2a=F2a/S2a]である。この断面積S2aは、張力が作用していない(フリーな)状態のゴムテープ10aにおいて測定される。この引張応力T2aは、巻き付けられる直前においてゴムテープ10aに作用する引張応力を意味する。この引張応力T2aは、巻き付けられた状態においてゴムテープ10aに作用する引張応力を意味しない。
【0129】
織物テープ8aに移行する樹脂の量を大きくするとともに、織物テープ8aのたるみを抑制する観点から、引張応力T1aは5Mpa以上が好ましく、10Mpa以上がより好ましく、20Mpa以上がより好ましく、25Mpa以上がより好ましく、30Mpa以上が更に好ましい。管状体の表面に発生する段差を抑制し、管状体表面を滑らかにするための研磨量を抑える観点から、引張応力T1aは150Mpa以下が好ましく、100Mpa以下がより好ましく、60Mpa以下が更に好ましい。
【0130】
織物テープ8aに移行する樹脂の量を大きくする観点から、引張応力T2aは2Mpa以上が好ましく、4Mpa以上がより好ましく、6Mpa以上が更に好ましい。ゴムテープ10aが切れることを抑制する観点から、引張応力T2aは60Mpa以下が好ましく、40Mpa以下がより好ましく、30Mpa以下がより好ましく、20Mpa以下が更に好ましい。
【0131】
織物テープ8aに移行する樹脂量を多くする観点から、比(T2a/T1a)は大きくされるのがよい。織物テープに樹脂が移行することにより、中間成形体の外径が小さくなる。外径が小さくなることにより、織物テープ8aによる締め付け力が低下しうる。しかし、弾性を有するゴムテープ10aをその外側から巻き付けることにより、外径が小さくなった場合であっても、中間成形体への締め付け力が効果的に維持されうる。このゴムテープ10aの締め付け力により、織物テープ8aに樹脂が移行しやすくなる。また、このゴムテープ10aの締め付け力により、FRP管状体内のボイドが低減されうる。
【0132】
比(T2a/T1a)が大きいほど、織物テープ8aに移行する樹脂量が多くなる。この観点から、比(T2a/T1a)は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。比(T2a/T1a)が過度に大きい場合、皺の発生又はゴムテープの損傷が発生しやすくなる。この観点から、比(T2a/T1a)は2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましい。
【0133】
なお、織物テープ8aに移行する樹脂を増加させることを重視する場合、比(T2a/T1a)が大きめに設定されるのが好ましく、具体的には、比(T2a/T1a)は1.0より大きくするのがよく、更には1.1以上が好ましく、特に1.2以上が好適であり、この場合において、比(T2a/T1a)の上限については、皺の発生を抑制する観点から、2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましい。
【0134】
また、皺の発生を抑制することを重視する場合、比(T2a/T1a)は小さめに設定されるのが好ましく、具体的には、比(T2a/T1a)は1.0未満が好ましく、0.95以下がより好ましく、0.8以下が更に好ましく、この場合において、織物テープ8aへ移行する樹脂量を所定量確保するために、比(T2a/T1a)は0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。
【0135】
第二巻き付け工程において、ゴムテープに代えて樹脂フィルムテープが用いられる場合、この樹脂フィルムテープの引張応力M2aは、織物テープの引張応力T1aよりも大きいのが好ましい。即ち、M2a>T1aが好ましい。樹脂フィルムテープは、ゴムテープに比較して弾性に乏しく、シャフト成形温度に昇温されると引張応力が低下しやすい。この引張応力の低下は、樹脂フィルムテープによる押圧力(シャフト内側に向かう圧力)の低下を招来する。そのため、樹脂フィルムテープの場合、M2a>T1aとすることにより、シャフト成形温度における引張応力の低下を抑制しておくのが好ましい。一方、ゴムテープは、その弾性に起因して、シャフト成形温度にまで昇温された場合であってもシャフトへの圧力がほとんど低下しない。よってゴムテープの場合、皺等の不具合を効果的に抑制するためには、T2a<T1aとされるのが好ましい。ただし、T2a>T1aとすれば、織物テープへ移行する樹脂量を多くすることができることは、前述した通りである。
【0136】
ゴムテープ10aの基材14aは、ゴム組成物を加硫成形してなるものが好ましい。このゴム組成物の基材ゴムとして、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル化ニトリルゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−酢酸ビニルゴム(EVA)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エチレン−アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩化ポリエチレン(CM)、エピクロルヒドリンゴム(CO)、ウレタン系ゴム、シリコーン系ゴム及びフッ素系ゴムから選択される1種又は2種以上が挙げられる。耐熱性、耐久性、引張強度及び離型性を総合的に考慮した総合性能に優れるという理由で、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)又はフッ素ゴムを基材ゴム100質量部に対して50質量部以上含む基材ゴムが好ましい。上記ゴム組成物は、加硫剤を含むのが好ましく、硫黄架橋とするのが好ましい。上記ゴム組成物は、必要に応じて、加硫促進剤、架橋開始剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤等を含んでいてもよい。加硫促進剤として、例えば、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤から選択される1種又は2種以上が挙げられる。可塑剤として、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルセパケート、ジオクチルアジペート及びトリクレジルフォスフェートから選択される1種又は2種以上が挙げられる。充填剤として、カーボンブラック及びシリカが例示され、こららが併用されてもよい。
【0137】
ゴムテープ10aの厚さd2aは限定されない。張力F2aにより切断されることを抑制する観点、及びゴムテープ自身の捻れ等を抑制する観点から、ゴムテープ10aの厚さd2aは300μm以上が好ましく、400μm以上がより好ましく、500μm以上がより好ましく、550μm以上が更に好ましい。ゴムテープの幅方向の一部が重ねられつつ巻き付けられる際において発生する外側テープと内側テープとの境界における過度な段差を抑制するとともにコストを下げる観点から、ゴムテープ10aの厚さd2aは、2000μm以下が好ましく、1800μm以下がより好ましく、1500μm以下がより好ましく、1200μm以下が更に好ましい。
【0138】
ゴムテープ10aの幅W2aは限定されない。張力F2aによる切断されることを抑制する観点から、幅W2aは8mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、12mm以上が更に好ましい。巻き付け時の皺を抑制する観点から、幅W2aは35mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下が更に好ましい。
【0139】
テープ巻き付け工程は、ゴムテープをラッピングテープとして巻き付ける工程を少なくとも含んでいるのが好ましい。より好ましくは、テープ巻き付け工程は、上記第二実施形態の様に、織物テープを巻き付ける工程と織物テープの外側にゴムテープを巻き付ける工程とを含む。
【0140】
次に、ラッピングテープとして織物テープのみが用いられる実施形態について、図9から図11を参照しつつ、説明する。
【0141】
第三実施形態は、ラッピングテープが織物テープのみとされる他は、上記第一実施形態と同様である。
【0142】
図9は、本発明の第三実施形態に係る製造方法を説明するための図である。ここでは、管状体の製造方法の一例として、ゴルフクラブシャフトの製造方法が説明される。この製造方法では、先ず、マンドレル2bと繊維強化樹脂部材4bとが用意される。マンドレル2bは、芯金とも称される。典型的なマンドレル2bの材質は、鋼等の金属である。マンドレル2bの中心軸線は、略直線である。マンドレル2bの断面形状は、円形である。マンドレル2bは、テーパーを有している。このテーパーにより、マンドレル2bは、その一端に近づくほど細くなされている。マンドレル2bは、部分的にパラレルであってもよい。換言すれば、マンドレル2bは、部分的に直径が一定の部分を有していても良い。マンドレル2bの全体においてその直径が一定であってもよい。
【0143】
マンドレル2bは、前述したマンドレル2と同様である。
【0144】
本製造方法では、先ず、マンドレルに、繊維強化樹脂部材が巻回される工程がなされる。
【0145】
プリプレグ4bは、前述したプリプレグ4と同様である。
【0146】
巻回工程の前に、プリプレグ4bは、所望の形状に切断される。図9の実施形態では、6枚のプリプレグ4bが用いられる。図9の実施形態では、切断されたプリプレグ4bの例として、シートe1からe6が示されている。プリプレグ4bは、いわゆるアングル層用シートe1、e2と、ストレート層用シートe3、e5、e6と、フープ層用シートe4とを含む。プリプレグ4bは、シャフトの全長に亘って設けられる全長シートe1からe5と、シャフト長手方向の一部に設けられる部分シートe6とを含む。なお、プリプレグ4bの仕様は限定されない。プリプレグ4bの形状、厚み、繊維種類、繊維含有率等は限定されない。
【0147】
巻回工程では、シートe1からシートe6までが、順次マンドレル2bに巻回される。図示されていないが、巻回に先立ち、シートe2は、シートe1に貼り合わせられる。この貼り合わせされてなるシート群がマンドレル2bに巻回される。この貼り合わせにおいて、シートe2は、裏返される。この裏返しにより、シートe1の繊維とシートe2の繊維とは、互いに逆方向に配向する。図9において各シートe1からe6に記載された角度は、シャフト軸方向と繊維の配向方向とのなす角度を示している。この巻回工程は、前述した第一実施形態と同様である。
【0148】
次に、テープ巻き付け工程がなされる。このテープ巻き付け工程では、中間成形体6bの外周面にラッピングテープが巻き付けられる。図10及び図11は、テープ巻き付け工程の様子を示す一部断面斜視図である。図10及び図11の断面において、中間成形体6bは、単一の層として簡略的に示されている。実際には、中間成形体6bは、前述したように複数の層よりなる。
【0149】
テープ巻き付け工程におけるラッピングテープは、織物テープ8bである。本実施形態において、ラッピングテープとして織物テープのみが用いられる。テープ巻き付け工程では、織物テープ8bのみが巻き付けられる。織物テープ8bは、織物を基材とするテープである。織物テープ8bは、織物である基材の表面にコーティング剤等を有していてもよい。
【0150】
テープ巻き付け工程の様子が、図10で示される。テープ巻き付け工程では、中間成形体6bの外周面に織物テープ8bが直接巻き付けられる。中間成形体6bの外周面と織物テープ8bとは当接している。織物テープ8bは中間成形体6bの外周面に接触している。
【0151】
図10が示すように、テープ巻き付け工程において、織物テープ8bは、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、中間成形体6bの軸線方向と織物テープ8bの長手方向とは互いに垂直とされない。織物テープ8bは、中間成形体6bに隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、織物テープ8bの幅W1bは、巻き付けピッチP1bよりも広い。巻き付けピッチP1bは、図10において両矢印で示されている。つまり、織物テープ8bは、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。巻き付けピッチP1bは、一定である。中間成形体6bのチップ端からバット端にかけて、巻き付けピッチP1bは一定である。この織物テープ8bの巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。織物テープ8bは、中間成形体6bの全長に亘って巻き付けられる。テープ巻き付け工程の結果、中間成形体6bの全体が織物テープ8bにより覆われる。なお、織物テープ8bの両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により中間成形体6bに固定される。この両端の固定により、織物テープ8bの巻き付けが自然に解けることはない。
【0152】
後述されるように、その後の工程において、中間成形体6bに含まれる樹脂が、織物テープ8bへと移行する。即ち中間成形体6bに含まれる樹脂は、織物テープ8bへと吸収されるか、又は、織物テープ8bを透過して外部に排出される。
【0153】
織物テープ8bに吸収される樹脂量を増加させる観点から、織物テープ8bのラッピング層数L1は多いのが好ましい。なお、ラッピング層数L1とは、中間成形体6bに巻き付けられた織物テープ8bの層数である。ラッピング層数L1は、中間成形体6bの表面上の各点のそれぞれにおいて定まる。前述した螺旋状の巻き付けにおいて、仮に巻き付けピッチP1bが織物テープの幅W1bよりも大きい場合、巻き付け工程後の中間成形体6bには、ラッピング層数L1が0層である部分と、ラッピング層数L1が1層である部分とが存在することになる。また、比(P1b/W1b)が0.5を超えて1.0未満である場合、巻き付け工程後の中間成形体6bには、ラッピング層数L1が1層である部分と、ラッピング層数L1が2層である部分とが存在することになる。
【0154】
ラッピング層数L1を多くするための方法として、次の(方法A)及び(方法B)が採用されうる。
(方法A)巻き付けピッチP1bの、織物テープの幅W1bに対する比(P1b/W1b)が小さくされる。
(方法B)複数回の巻き付けがなされる。
【0155】
(方法A)は、一回の巻き付けでラッピング層数L1を増加することができるため、生産性の向上に寄与しうる。一方、(方法B)は、チップ側からバット側への巻き付け、及び/又はチップ側からバット側への巻き付けを繰り返す必要が生じるので、(方法A)と比較して生産性に劣る。生産性の観点からは、(方法B)よりも(方法A)が好ましい。ただし、織物テープ8bの厚さや柔軟性等によっては、比(P1b/W1b)を小さくしてラッピング層数L1を増加させることには限界が生じる場合がある。この場合、(方法B)が有効に用いられうる。
【0156】
ラッピング層数L1を多くして樹脂吸収量を高める観点から、比(P1b/W1b)は、0.70以下が好ましく、0.50以下がより好ましく、0.40以下が更に好ましく、0.33以下が更に好ましい。なお、比(P1b/W1b)が過度に小さくされ、ラッピング層数L1が過度に多くされた場合、樹脂吸収量の増加がほとんどみられない一方で生産性が低下しうる。この観点から、比(P1b/W1b)は、0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましく、0.10以上が更に好ましい。
【0157】
織物テープ8bの巻き付けは、張力F1bを付与しつつなされる。この張力F1bにより、中間成形体6bは、織物テープ8bにより締め付けられる。織物テープ8bの巻き付けにより、織物被覆体12bが得られる。織物被覆体12bは、中間成形体6bが織物テープ8bで覆われてなる。
【0158】
図11は、上記(方法B)が採用される場合における二回目の巻き付けの様子が示された一部断面斜視図である。二回目の巻き付けでは、織物被覆体12bの外周面に織物テープ10bが直接巻き付けられる。織物被覆体12bの外周面と織物テープ10bとは当接する。織物テープ10bは織物被覆体12bの外周面に接触している。つまり織物テープ10bは織物テープ8bに接触している。なお、織物テープ8bと織物テープ10bとは、同一のテープであってもよいし、異なるテープであってもよい。
【0159】
図11が示すように、二回目の巻き付けにおいて、織物テープ10bは、螺旋状に巻き付けられる。この二回目の巻き付けは、前述した一回目の巻き付けと同様になされうる。生産性の観点からは、この二回目の巻き付けは実施されないのが好ましい。差(Z2−Z1)を大きくする観点からは、この二回目の巻き付けがなされるのが好ましい。
【0160】
織物テープ10bの巻き付けは、張力F2bを付与しつつなされる。この張力F2bにより、織物被覆体12bは、織物テープ10bにより締め付けられる。張力F2bと張力F1bとは、同一であってもよいし、異なっていても良い。
【0161】
なお織物被覆体12bの表面には、織物テープ8bによる螺旋模様が形成されているが、図11においては、この織物テープ8bによる螺旋模様の記載が省略されている。
【0162】
図11の実施形態では、織物テープがチップ端からバット端にかけて巻き付けられる。この実施形態では、巻き付けが二回繰り返されている。このように、巻き付けを繰り返すことにより、ラッピング層数L1を調整することができ、樹脂吸収量の調整が可能である。なお生産性の観点から、織物テープが一方向に向かって巻き付けられる巻き付けの回数(以下、単に巻き付け回数ともいう)は、三回以下が好ましく、二回以下がより好ましく、一回が特に好ましい。この「一方向」とは、チップ側からバット側へと向かう方向でもよいし、バット側からチップ側へと向かう方向でもよい。
【0163】
巻き付け工程の後に、硬化工程がなされる。この硬化工程は、前述した第一実施形態と同様である。
【0164】
硬化工程の後、マンドレル2bの引き抜き及び織物テープの除去を行い硬化管状体を得る工程がなされる。マンドレル2bの引き抜き及び織物テープの除去は、どちらが先になされてもよい。作業性の観点から、好ましくは、マンドレル2bが引き抜かれた後に織物テープが除去される。
【0165】
なお、織物テープ8bに発生する皺を抑制する観点から、織物テープ8bの内面にコーティング剤が設けられても良い。織物テープ8bの内面とは、中間成形体6bと当接する面である。このコーティング剤として、フッ素系化合物又はシリコン系化合物が好ましい。
【0166】
第三実施形態では、第一実施形態と同様に、ボイドの大型化及びボイド率が抑制される。更に、第三実施形態では、製造工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8bに移行しうる。織物テープ8bは、織られた繊維の間に空隙や穴を有している。よって織物テープ8bは、樹脂を吸収及び/又は透過させうる。織物テープ8bにより、マトリクス樹脂が成形体の外部に排出されやすくなり、管状体の繊維含有率が向上しうる。これにより、管状体の軽量化が達成される。
【0167】
FRP管状体の繊維含有率を高くする手段として、繊維含有率が高い繊維強化樹脂部材を用いることが考えられる。繊維含有率が高いことは、樹脂含有率が低いことを意味する。樹脂含有率が低い繊維強化樹脂部材は、タック性(粘着性)が低い。なぜならタック性は樹脂に起因するものだからである。よって、樹脂含有率が低い繊維強化樹脂部材は、繊維強化樹脂部材同士の密着性が低い。このような粘着性の低い繊維強化樹脂部材は、一旦巻回されても解けやすい。このようなタック性の低い繊維強化樹脂部材では、マンドレル2への巻き付け作業が行いにくく、且つ、巻き付けの際に皺が発生しやすい。また、密着性が悪いため、渦巻き状に巻き付けられた繊維強化樹脂部材層の層間に空気が含まれやすくなり、管状体の強度や耐久性が損なわれる。粘着性の低い繊維強化樹脂部材は、生産性の低下や成形不良を招きやすい。
【0168】
第三実施形態では、上記中間成形体の外側に直接織物テープ8bを張力を付与しつつ巻き付ける。この製造方法により、加熱工程中において繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8bに吸収される。この吸収により、繊維含有率の高い繊維強化樹脂部材を用いることなく、FRP管状体の繊維含有率を高くすることができる。更に、織物テープ8bは、中間成形体6bに含まれる空気も吸収又は透過させうる。これにより、ボイドの原因となる空気が抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。また、ラッピング層数L1が複数とされることにより、織物テープ8bが中間成形体6bに大きな圧力を付与することができる。このためボイドの原因となる空気が一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。
【0169】
織物テープ8bによる樹脂の吸収は、繊維強化樹脂部材を巻回した後になされる。本発明では、粘着性が過度に低い繊維強化樹脂部材を用いることなく、繊維含有率の高いFRP管状体が得られうる。本実施形態では、繊維強化樹脂部材の巻回が行いやすく、且つ繊維含有率の向上が達成されうる。製造工程中に繊維含有率を向上させているので、成形性及び生産性を維持しながら軽量化が達成されている。
【0170】
本実施形態では、ラッピングテープが重なった重複部において、織物テープ同士が重なっている。この重複部において、織物テープの内側に樹脂テープ層が存在しない。よって、重複部を含めた織物テープの全体に樹脂及び空気が移行することができ、樹脂及び空気が織物テープに移行しやすい。
【0171】
中間成形体6bへの圧力を高め、織物テープの樹脂吸収量を増加させる観点から、平均ラッピング層数Laは、1層以上が好ましく、2層以上がより好ましく、3層以上がより好ましく、5層以上が更に好ましい。平均ラッピング層数Laが過度に多い場合、織物テープのコスト増加及び織物テープを剥がす手間の増加が生じうる。また平均ラッピング層数Laが過度に多い場合、中間成形体6bの表面に皺が発生しやすくなる。これらの観点から、平均ラッピング層数Laは、15層以下が好ましく、12層以下がより好ましく、10層以下が更に好ましい。
【0172】
なお、平均ラッピング層数Laは、前述したラッピング層数L1とは異なる概念である。ラッピング層数L1が中間成形体6bの表面上の各点においてそれぞれ定まるのに対し、平均ラッピング層数Laは、ラッピング層数L1の平均値として理解されうる。具体的には、平均ラッピング層数Laは以下の計算式(1)により決定されうる。
La=St/Sn ・・・(1)
ただし、式(1)において、Stは巻き付けられた状態における織物テープの内面の総面積(mm2)であり、Snは巻き付けられた織物テープと接触する部分における中間成形体6bの表面積(mm2)である。この総面積Stは、巻かれている織物テープの長さNt(mm)と織物テープの幅Wa(mm)との積である。即ちSt=Nt×Waである。長さNtは、織物テープの長手方向に沿って測定される。長さNtは、中間成形体6bから解かれた状態において測定される織物テープの長さNkと実質的に等しいか、又は、この長さNkよりも長い。Nt>Nkとなりうる場合は、張力によって引き延ばされた状態で織物テープが巻き付けられている場合である。幅Waは、中間成形体6bから解かれた状態において測定される織物テープの幅W1bと実質的に等しいか、又は、この幅W1bよりも狭い。W1b>Waとなりうる場合は、張力によって引き延ばされた状態で織物テープが巻き付けられている場合である。ラッピング層数L1は0又は1以上の整数であるが、平均ラッピング層数Laは整数とならない場合がある。
【0173】
例えば、比(P1b/W1b)が0.5であり、W1b=Waであり、且つ巻き付け回数が1回である場合、平均ラッピング層数Laは、2層である。この場合、巻き付けピッチP1bの誤差を無視すれば、ラッピング層数L1は、全ての点において、2層である。
【0174】
上記総面積St及び表面積Snは、管状体のチップ端位置Tp1から管状体のバット端位置Bt1までの範囲において測定される。前述したように、管状体製造の仕上げ工程においては、硬化管状体の両端部が切断されてもよい。この両端部の切断がなされた場合、管状体のチップ端位置Tp1と、硬化管状体のチップ端位置Tpとは相違する。前述した両端部の切断がなされない場合、管状体のチップ端位置Tp1と、硬化管状体のチップ端位置Tpとは一致する。同様に、前述した両端部の切断がなされた場合、管状体のバット端位置Bt1と、硬化管状体のバット端位置Btとは相違する。前述した両端部の切断がなされない場合、管状体のチップ端位置Tp1と、硬化管状体のチップ端位置Tpとは一致する。図9には、両端部の切断がなされた場合におけるチップ端位置Tp1及びバット端位置Bt1が示されている。
【0175】
中間成形体6bへの圧力を高め、織物テープの樹脂吸収量を増加させる観点から、ラッピング層数L1は、チップ端位置Tp1からバット端位置Bt1までの全ての点において、1層以上が好ましく、2層以上がより好ましく、3層以上がより好ましく、5層以上が更に好ましい。ラッピング層数L1が過度に多い場合、織物テープのコスト増加及び織物テープを剥がす手間の増加が生じうる。またラッピング層数L1が過度に多い場合、中間成形体6bの表面に皺が発生しやすくなる。これらの観点から、ラッピング層数L1は、チップ端位置Tp1からバット端位置Bt1までの全ての点において、15層以下が好ましく、12層以下がより好ましく、10層以下が更に好ましい。
【0176】
平均ラッピング層数Laの値に関わらず、巻き付け回数が1回である場合、巻き付け部分の両端部には、ラッピング層数L1が1回である部分が存在する。例えば、平均ラッピング層数Laが2層以上とされた場合であっても、巻き付け回数が1回である限り、巻き付けの開始部分及び巻き付けの終了部分には、ラッピング層数L1が1回である部分が存在する。巻き付けの開始点に隣接し且つラッピング層数L1が1層である部分Xtは、他の部分に比べて織物テープへの樹脂の移行が少ない傾向にある。よって、部分Xtが切除されてなる管状体(シャフト)がより好ましい。同様に、巻き付けの終了点に隣接し且つラッピング層数L1が1回である部分Ytは、他の部分に比べて織物テープへの樹脂の移行が少ない傾向にある。よって、部分Ytが切除されてなる管状体(シャフト)がより好ましい。なお、ラッピング層数L1が2層以上である部分を軸方向両側に有する部分は、ラッピング層数L1が1層であったとしても、上記部分Xtには該当しない。同様に、ラッピング層数L1が2層以上である部分を軸方向両側に有する部分は、ラッピング層数L1が1層であったとしても、上記部分Ytには該当しない。上記軸方向とは、管状体の軸方向を意味する。
【0177】
巻き付け工程において、チップ側とバット側との間で織物テープ8bを往復させて巻き付けてもよい。例えば、織物テープ8bをバット側からチップ側に向かって螺旋状に巻き付け、引き続き、織物テープ8bをチップ側からバット側に向かって螺旋状に巻き付けてもよい。このような往復方式の巻き付けにより、巻き付け回数が増加されてもよい。なお本明細書では、このような往復方式の巻き付けにより一往復の巻き付けがなされた場合であっても、巻き付け回数は2回であると定義される。織物テープ8bが途中で切断されることなく一往復の巻き付けがなされた場合であっても、巻き付け回数は2回であると定義される。前述した通り、生産性の観点から、平均ラッピング層数Laを増加させる方法としては、巻き付け回数が1回とされ且つ比(P1b/W1b)が小さくされる方法が好ましい。
【0178】
前述したように、織物テープ8bは張力F1bが付与されつつ巻き付けられている。ここで、上記テープ巻き付け工程において織物テープ8bに付与される引張応力T1bが定義される。引張応力T1bは、上記張力F1bを、織物テープ8bの断面積Sdで割った値である。即ち、[T1b=F1b/Sd]である。この断面積Sdは、張力が作用していない(フリーな)状態の織物テープ8bにおいて測定される。この引張応力T1bは、巻き付けられる直前において織物テープ8bに作用する引張応力を意味する。この引張応力T1bは、巻き付けられた状態において織物テープ8bに作用する引張応力を意味しない。
【0179】
織物テープ8bに移行する樹脂の量を大きくするとともに、織物テープ8bのたるみを抑制する観点から、引張応力T1bは5Mpa以上が好ましく、10Mpa以上がより好ましく、20Mpa以上がより好ましく、25Mpa以上がより好ましく、30Mpa以上が更に好ましい。管状体の表面に発生する段差を抑制し、管状体表面を滑らかにするための研磨量を抑える観点から、引張応力T1bは150Mpa以下が好ましく、100Mpa以下がより好ましく、60Mpa以下が更に好ましい。
【0180】
なお、樹脂吸収量を高める観点から、平均ラッピング層数Laと、織物テープ8bの厚さd1(μm)との積(La×d1)は、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上がより好ましく、500以上が更に好ましい。生産性の観点から、この積(La×d1)は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、1500以下がより好ましく、1200以下が更に好ましい。
【実施例】
【0181】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0182】
実施例1から9は、織物テープ及び樹脂フィルムテープを用いた実施例である。これらの実施例1から9が、下記の表1に示される。比較例1から13は、実施例1から9に対応する比較例である。これらの比較例1から13が、下記の表2に示される。
【0183】
実施例1aから9aは、織物テープ及びゴムテープを用いた実施例である。これらの実施例1aから9aが、下記の表3に示される。比較例1aから13aは、実施例1aから9aに対応する比較例である。これらの比較例1aから13aが、下記の表4に示される。
【0184】
実施例1bから9bは、織物テープのみを用いた実施例である。これらの実施例1bから9bが、下記の表5に示される。比較例1bから13bは、実施例1bから9bに対応する比較例である。これらの比較例1bから13bが、下記の表6に示される。
【0185】
先ず、評価方法について説明する。
【0186】
[順式フレックスの測定]
硬化管状体のバット端Btから75mm隔てた位置の上側と、このバット端Btから215mm隔てた位置の下側とが支持点とされた。これらの二点が支持された状態で、硬化管状体の軸線方向が水平とされた。次に、バット端Btから1039mm隔てた荷重点Kに、2.7kgの錘りを掛けた。錘りにより硬化管状体が曲がり、上記荷重点Kが下方へと移動した。荷重点Kの鉛直方向における移動量が、順式フレックスFjとして下記の表に示される。
【0187】
[しわの程度]
硬化管状体の表面に生じたしわ(皺)の程度が、外観の目視により評価された。次の5段階により評価がなされた。この評価が、下記の表で示される。評価点数が小さいほど、評価が高い。
評価1:しわが無い。
評価2:長さが1mm以上2mm未満の皺が有る。
評価3:長さが2mm以上3mm未満の皺が有る。
評価4:長さが3mm以上4mm未満の皺が有る。
評価5:長さが4mm以上の皺が有る。
【0188】
[織物テープの厚さ]
織物テープの厚さd1は、JIS L 1096に準拠して、デジマチックマイクロメータを用いて測定された。240g/cm2の一定圧力を付与させて10秒間経過した後、240g/cm2の圧力のもとで測定がなされた。測定は5箇所で行われた。5箇所のデータの平均値が、「厚さd1」として下記の表に示される。
【0189】
[ボイド率Rb]
ボイド率Rbは、シャフト先端から90mm隔てた地点の断面の画像によりボイド面積Sb及びシャフト断面積Smを求め、下記式により算出した。
Rb(%)=(Sb/Sm)×100
【0190】
ゴルフクラブシャフトにおいては、先端部にヘッドが取り付けられるため、先端部における強度が特に重要である。ボイド率Rbは、シャフト強度との相関が高い。
【0191】
[三点曲げ強度]
SG式三点曲げ強度試験が採用された。これは、製品安全協会が定める試験である。図12は、SG式三点曲げ強度試験の測定方法を示す。図12が示すように、2つの支持点e1、e2においてシャフト20を下方から支持しつつ、荷重点e3において上方から下方に向かって荷重Fを加える。荷重点e3の位置は、支持点e1と支持点e2とを二等分する位置である。荷重点e3が、測定点である。測定点は、T点、A点、B点及びC点とされた。T点は、チップ端位置Tpから90mmの点である。A点は、チップ端位置Tpから175mmの点である。B点は、チップ端位置Tpから525mmの点である。C点は、バット端位置Btから175mmの点である。シャフト20が破損したときの荷重Fの値(ピーク値)が測定された。T点が測定される場合、上記スパンSは、150mmとされた。A点、B点及びC点が測定される場合、上記スパンSは、300mmとされた。
【0192】
T点における三点曲げ強度の測定結果が、下記の表に示される。A点、B点及びC点における三点曲げ強度に関しては、後述される。
【0193】
[生産性]
以下の基準に従い、4段階で評価された。評価Aが、最も生産性が高く、良好である。評価Dは、最も生産性が低い。
A・・・硬化工程における加熱時間が4時間以内である。
B・・・硬化工程における加熱時間が4時間を超えて24時間以内である。
C・・・硬化工程における加熱時間が24時間を超えて72時間以内である。
D・・・硬化工程における加熱時間が72時間を超える。
【0194】
次に、織物テープ及び樹脂フィルムテープを用いた実施例について説明する。
【0195】
[実施例1]
図1で示すマンドレルに離型剤を塗布した後、このマンドレルに6枚のプリプレグを巻き付け、中間成形体を得た。これら6枚のプリプレグの構成は、図1で示された通りとされた。シートs1からs6のプリプレグ種類及びプリプレグ構成が、下記の表7で示されている。シートs1からs6は、いずれも東レ社製のプリプレグである。表7における「先端ply数」とは、チップ端Tpにおけるプリプレグの巻回数を示している。表7における「繊維角度」は、シャフト軸線方向に対する炭素繊維の配向角度である。各プリプレグにおいてマトリクス樹脂はエポキシ樹脂である。各プリプレグの品番及び炭素繊維の種類(品番)は表7で示す通りである。
【0196】
次に、上記中間成形体の外周面にラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程がなされた。テープ巻き付け工程は、横手鉄工所製のラッピング機によりなされた。テープ巻き付け工程として、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とが行われた。第一巻き付け工程は、一定の張力F1を付与しつつなされた。第二巻き付け工程は、一定の張力F2を付与しつつなされた。張力F1及び張力F2は、日本電産シンポ社製のロードセルにより測定された。これらの張力F1、F2に基づき、引張応力T1及び引張応力T2が算出された。
【0197】
第一巻き付け工程では、織物テープが巻き付けられた。この織物テープとして、キンキテープ社が販売する商品名「ナイロンタフタ」が用いられた。このナイロンタフタは、ナイロン繊維が平織りで織られた織物テープである。このナイロン繊維を構成するナイロンの種類は、ナイロン6である。この織物テープの幅W1は15mmであり、厚さd1は100μmであった。第一巻き付け工程における引張応力T1は35Mpaとされた。第一巻き付け工程において、巻き付けピッチP1は1.5mmとされた。
【0198】
第一巻き付け工程の平均ラッピング層数Laは、10とされた。比(P1/W1)が0.1とされた。
【0199】
第一巻き付け工程の後、第二巻き付け工程がなされた。第二巻き付け工程では、樹脂フィルムテープが巻き付けられた。この樹脂フィルムテープとして、ポリプロピレン(PP)フィルムテープが用いられた。このPPフィルムテープとして、信越フィルム社製のPT30Hが用いられた。このフィルムテープの片面には、シリコン系のコーティング剤が設けられている。このコーティング剤層を内側にして、このPPフィルムテープが巻き付けられた。このPPフィルムテープの幅W2は25mmであり、厚さd2は30μmであった。第二巻き付け工程における引張応力T2は85Mpaとされた。第二巻き付け工程において、巻き付けピッチP2は2mmとされた。
【0200】
第二巻き付け工程の後に、硬化工程がなされた。硬化工程では、第一加熱ステップの後に、第二加熱ステップがなされた。第一加熱ステップは、温度が70℃とされ、時間が150分とされた。第二加熱ステップでは、温度が130℃とされ、時間が30分とされた。
【0201】
次に、マンドレルが引き抜かれた。次に、樹脂フィルムテープ及び織物テープが除去され、実施例1に係る硬化管状体を得た。実施例1の仕様と評価結果が下記の表1で示される。
【0202】
[実施例2から9]
表1で示される仕様以外は実施例1と同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表1で示される。
【0203】
[比較例1から4]
第二巻き付け工程がなされず、且つ、各仕様が表2に示される通りとされた。その他については実施例1と同様にして、比較例1から4の硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表2で示される。
【0204】
なお、比較例2では、ラッピングテープとして、PETフィルムテープが用いられた。このPETフィルムテープとして、信越フィルム社製の商品名「PET−25K」が用いられた。比較例3では、ラッピングテープとして、一体化テープが用いられた。この一体化テープは、幅が15mmで且つ厚さが100μmであるナイロンタフタと、幅15mmで且つ厚さが30μmのPPフィルムテープとが、加熱及び圧着により一体化されたテープである。この一体化テープの厚みは、115μmである。比較例1のPPフィルムテープは、実施例1のそれと同じである。比較例4のPPフィルムテープは、幅及び厚さが実施例1のそれと異なる。
【0205】
[比較例5から13]
表2で示される仕様以外は実施例1と同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表2で示される。
【0206】
実施例及び比較例において、順式フレックスFjに差異が見られるのは、差(Z2−Z1)の相違及びマトリクス樹脂の硬化度合いの相違に起因する。ただし、比較例4では、ストレート層用のプリプレグを薄いものに変更した。
【0207】
【表1】
【0208】
【表2】
【0209】
差(Z2−Z1)は、製造工程中において排出された樹脂の量(樹脂の減少量)を示している。差(Z2−Z1)が大きいことは、軽量化に寄与する。
【0210】
樹脂の減少量が大きい場合、硬化管状体の外径が小さくなる。硬化管状体の外径が小さい場合、順式フレックスFjは、より大きくなる。表1及び表2では、順式フレックスFjの逆数(1/Fj)を硬化管状体の質量Wtで割った値[1/(Fj×Wt)]が示されている。[1/(Fj×Wt)]が大きいことは、単位質量当たりの剛性が向上していることを意味する。[1/(Fj×Wt)]が大きいほど、軽量性に優れる。
【0211】
実施例1及び実施例6は、マトリクス樹脂が若干不十分であるため、三点曲げ強度がやや低い。実施例2、3、4、7及び8の結果は良好である。実施例5及び9は、第一加熱ステップの時間が長いため、生産性が良くない。
【0212】
比較例1及び2は、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。比較例3では、一体化テープを用い、引張応力は高めに設定したが、差(Z2−Z1)は実施例よりも小さい。比較例3では、ラッピングの際にテープがよじれて、皺が発生した。
【0213】
従来製法の比較例4では、実施例と同様の軽量化を達成する目的で、ストレート層用プリプレグの使用量を減らした。その結果、順式フレックスFjが大きくなり、[1/(Fj×Wt)]が悪化した。また、比較例4では、三点曲げ強度が低い。
【0214】
比較例1から5では、第一加熱ステップの時間が短い。このため比較例1から5では、
第二加熱ステップで気泡が熱膨張しやすく、ボイド率が高い。
【0215】
比較例6及び8では、樹脂の硬化が不十分であり、三点曲げ強度が低い。
【0216】
比較例7及び9は、第一加熱ステップの時間が長く、生産性が悪い。
【0217】
比較例10は、第一加熱ステップの温度が低く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0218】
比較例11は、第二加熱ステップの温度が低く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0219】
比較例12は、第一加熱ステップの温度が高く、ボイド率が高い。
【0220】
比較例13は、第二加熱ステップの時間が短く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0221】
なお、A点、B点及びC点における三点曲げ強度は、表に示すT点の強度と同様の傾向となった。即ち、A点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2、3、4、5、7、8及び9)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4、5、6、8、10、11、12及び13)のうちの最高値よりも大きかった。同様に、B点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2、3、4、5、7、8及び9)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4、5、6、8、10、11、12及び13)のうちの最高値よりも大きかった。同様に、C点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2、3、4、5、7、8及び9)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4、5、6、8、10、11、12及び13)のうちの最高値よりも大きかった。
【0222】
次に、織物テープ及びゴムテープを用いた実施例について説明する。
【0223】
[実施例1a]
図5で示すマンドレルに離型剤を塗布した後、このマンドレルに6枚のプリプレグを巻き付け、中間成形体を得た。これら6枚のプリプレグの構成は、図5で示された通りとされた。シートh1からh6のプリプレグ種類及びプリプレグ構成が、下記の表8で示されている。シートh1からh6は、いずれも東レ社製のプリプレグである。表8における「先端ply数」とは、チップ端Tpにおけるプリプレグの巻回数を示している。表8における「繊維角度」は、シャフト軸線方向に対する炭素繊維の配向角度である。各プリプレグにおいてマトリクス樹脂はエポキシ樹脂である。各プリプレグの品番及び炭素繊維の種類(品番)は表8で示す通りである。
【0224】
次に、上記中間成形体の外側にラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程がなされた。テープ巻き付け工程は、横手鉄工所製のラッピング機によりなされた。テープ巻き付け工程として、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とが行われた。第一巻き付け工程は、一定の張力F1aを付与しつつなされた。第二巻き付け工程は、一定の張力F2aを付与しつつなされた。張力F1a及び張力F2aは、日本電産シンポ社製のロードセルにより測定された。これらの張力F1a、F2aに基づき、引張応力T1a及び引張応力T2aが算出された。
【0225】
第一巻き付け工程では、織物テープが巻き付けられた。この織物テープとして、キンキテープ社が販売する商品名「ナイロンタフタ」が用いられた。このナイロンタフタは、ナイロン繊維が平織りで織られた織物テープである。このナイロン繊維を構成するナイロンの種類は、ナイロン6である。この織物テープの幅W1aは15mmであり、厚さd1は100μmであった。第一巻き付け工程における引張応力T1aは15Mpaとされた。第一巻き付け工程における平均ラッピング層数Laは、10とされた。
【0226】
第一巻き付け工程の後、第二巻き付け工程がなされた。第二巻き付け工程では、ゴムテープが巻き付けられた。このゴムテープとして、EPDMゴムが基材ゴムとされたゴムテープが用いられた。このゴムテープには、コーティング剤が設けられていない。このゴムテープとして、三ツ星ベルト社製の商品名「ネオ・ルーフィングE」を下記の幅W2aとなるように切断してなるテープが用いられた。このゴムテープの幅W2aは12.5mmとされ、このゴムテープの厚さd2aは1000μmであった。第二巻き付け工程において、巻き付けピッチP2aは5mmとされた。
【0227】
第二巻き付け工程の後に、硬化工程がなされた。この硬化工程では、第一加熱ステップの後に第二加熱ステップがなされた。第一加熱ステップは、温度が70℃とされ、時間が150分とされた。第二加熱ステップは、温度が130℃とされ、時間が30分とされた。
【0228】
次に、マンドレルが引き抜かれた。次に、ゴムテープ及び織物テープが除去され、実施例1aに係る硬化管状体を得た。実施例1aの仕様と評価結果が下記の表3に示される。
【0229】
[実施例2aから9a]
表3で示される仕様以外は実施例1aと同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表3で示される。
【0230】
[比較例1aから4a]
第二巻き付け工程がなされず、且つ、各仕様が表4に示される通りとされた。その他については実施例1aと同様にして、比較例1aから4aの硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表4に示される。
【0231】
なお、比較例2aでは、ラッピングテープとして、PETフィルムテープが用いられた。このPETフィルムテープとして、信越フィルム社製の商品名「PET−25K」が用いられた。比較例3aでは、ラッピングテープとして、一体化テープが用いられた。この一体化テープは、幅が15mmで且つ厚さが100μmであるナイロンタフタと、幅15mmで且つ厚さが30μmのPPフィルムテープとが、加熱及び圧着により一体化されたテープである。この一体化テープの厚みは、115μmである。比較例1aのPPフィルムテープは、実施例1のそれと同じである。比較例4aのPPフィルムテープは、幅及び厚さが実施例1のそれと異なる。
【0232】
[比較例5aから13a]
表4で示される仕様以外は実施例1aと同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表4に示される。
【0233】
【表3】
【0234】
【表4】
【0235】
実施例1a及び実施例6aは、マトリクス樹脂が若干不十分であるため、三点曲げ強度がやや低い。実施例2a、3a、4a、7a及び8aの結果は良好である。実施例5a及び9aは、第一加熱ステップの時間が長いため、生産性が良くない。
【0236】
比較例1a及び2aは、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。比較例3aでは、一体化テープを用い、引張応力は高めに設定したが、差(Z2−Z1)は実施例よりも小さい。比較例3aでは、ラッピングの際にテープがよじれて、皺が発生した。
【0237】
従来製法の比較例4aでは、実施例と同様の軽量化を達成する目的で、ストレート層用プリプレグの使用量を減らした。その結果、順式フレックスFjが大きくなり、[1/(Fj×Wt)]が悪化した。また、比較例4aでは、三点曲げ強度が低い。
【0238】
比較例1aから5aでは、第一加熱ステップの時間が短い。このため比較例1aから5aでは、第二加熱ステップで気泡が熱膨張しやすく、ボイド率が高い。
【0239】
比較例6a及び8aでは、樹脂の硬化が不十分であり、三点曲げ強度が低い。
【0240】
比較例7a及び9aは、第一加熱ステップの時間が長く、生産性が悪い。
【0241】
比較例10aは、第一加熱ステップの温度が低く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0242】
比較例11aは、第二加熱ステップの温度が低く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0243】
比較例12aは、第一加熱ステップの温度が高く、ボイド率が高い。
【0244】
比較例13aは、第二加熱ステップの時間が短く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0245】
なお、A点、B点及びC点における三点曲げ強度は、表に示すT点の強度と同様の傾向となった。即ち、A点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2a、3a、4a、5a、7a、8a及び9a)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4a、5a、6a、8a、10a、11a、12a及び13a)のうちの最高値よりも大きかった。同様に、B点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2a、3a、4a、5a、7a、8a及び9a)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4a、5a、6a、8a、10a、11a、12a及び13a)のうちの最高値よりも大きかった。同様に、C点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2a、3a、4a、5a、7a、8a及び9a)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4a、5a、6a、8a、10a、11a、12a及び13a)のうちの最高値よりも大きかった。
【0246】
次に、織物テープのみを用いた実施例について説明する。
【0247】
[実施例1b]
図9で示すマンドレルに離型剤を塗布した後、このマンドレルに6枚のプリプレグを巻き付け、中間成形体を得た。これら6枚のプリプレグの構成は、図9で示された通りとされた。シートe1からe6のプリプレグ種類及びプリプレグ構成が、下記の表9で示されている。シートe1からe6は、いずれも東レ社製のプリプレグである。表9における「先端ply数」とは、チップ端位置Tpにおけるプリプレグの巻回数を示している。表9における「繊維角度」は、シャフト軸線方向に対する炭素繊維の配向角度である。各プリプレグにおいてマトリクス樹脂はエポキシ樹脂である。各プリプレグの品番及び炭素繊維の種類(品番)は表9で示す通りである。
【0248】
次に、上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付けるテープ巻き付け工程がなされた。テープ巻き付け工程は、横手鉄工所製のラッピング機によりなされた。巻き付け工程において、巻き付け回数は1回とされた。テープ巻き付け工程は、一定の張力F1bを付与しつつなされた。張力F1bは、日本電産シンポ社製のロードセルにより測定された。これらの張力F1bに基づき、引張応力T1bが算出された。
【0249】
テープ巻き付け工程では、織物テープのみが巻き付けられた。この織物テープとして、キンキテープ社が販売する商品名「ナイロンタフタ」が用いられた。このナイロンタフタは、ナイロン繊維が平織りで織られた織物テープである。このナイロン繊維を構成するナイロンの種類は、ナイロン6である。この織物テープの幅W1bは15mmであり、厚さd1は100μmであった。テープ巻き付け工程における引張応力T1bは50Mpaとされた。平均ラッピング層数Laは2とされた。
【0250】
巻き付け工程の後に、硬化工程がなされた。この硬化工程では、第一加熱ステップの後に第二加熱ステップがなされた。第一加熱ステップは、温度が70℃とされ、時間が150分とされた。第二加熱ステップは、温度が130℃とされ、時間が30分とされた。
【0251】
次に、マンドレルが引き抜かれた。次に、織物テープが除去され、実施例1bに係る硬化管状体を得た。実施例1bの仕様と評価結果とが下記の表5で示される。
【0252】
[実施例2bから9b]
表5で示される仕様以外は実施例1bと同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表5で示される。
【0253】
[比較例1bから4b]
織物テープに代えて他のテープが用いられ、且つ、各仕様が表6に示される通りとされた。その他については実施例1bと同様にして、比較例1bから4bの硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表6に示される。
【0254】
なお、比較例2bでは、ラッピングテープとして、PETフィルムテープが用いられた。このPETフィルムテープとして、信越フィルム社製の商品名「PET−25K」が用いられた。比較例3bでは、ラッピングテープとして、一体化テープが用いられた。この一体化テープは、幅が15mmで且つ厚さが100μmであるナイロンタフタと、幅15mmで且つ厚さが30μmのPPフィルムテープとが、加熱及び圧着により一体化されたテープである。この一体化テープの厚みは、115μmである。比較例1bのPPフィルムテープは、実施例1のそれと同じである。比較例4bのPPフィルムテープは、幅及び厚さが実施例1のそれと異なる。
【0255】
[比較例5bから13b]
表6で示される仕様以外は実施例1bと同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表6に示される。
【0256】
【表5】
【0257】
【表6】
【0258】
実施例1b及び実施例6bは、マトリクス樹脂が若干不十分であるため、三点曲げ強度がやや低い。実施例2b、3b、4b、7b及び8bの結果は良好である。実施例5b及び9bは、第一加熱ステップの時間が長いため、生産性が良くない。
【0259】
比較例1b及び2bは、ラッピングテープが樹脂フィルムテープであるため、差(Z2−Z1)が小さい。比較例3bでは、一体化テープを用い、引張応力は高めに設定したが、差(Z2−Z1)は実施例よりも小さい。比較例3bでは、ラッピングの際にテープがよじれて、皺が発生した。
【0260】
従来製法の比較例4bでは、実施例と同様の軽量化を達成する目的で、ストレート層用プリプレグの使用量を減らした。その結果、順式フレックスFjが大きくなり、[1/(Fj×Wt)]が悪化した。また、比較例4bでは、三点曲げ強度が低い。
【0261】
比較例1bから5bでは、第一加熱ステップの時間が短い。このため比較例1bから5bでは、第二加熱ステップで気泡が熱膨張しやすく、ボイド率が高い。
【0262】
比較例6b及び8bでは、樹脂の硬化が不十分であり、三点曲げ強度が低い。
【0263】
比較例7b及び9bは、第一加熱ステップの時間が長く、生産性が悪い。
【0264】
比較例10bは、第一加熱ステップの温度が低く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0265】
比較例11bは、第二加熱ステップの温度が低く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0266】
比較例12bは、第一加熱ステップの温度が高く、ボイド率が高い。
【0267】
比較例13bは、第二加熱ステップの時間が短く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0268】
なお、A点、B点及びC点における三点曲げ強度は、表に示すT点の強度と同様の傾向となった。即ち、A点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2b、3b、4b、5b、7b、8b及び9b)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4b、5b、6b、8b、10b、11b、12b及び13b)のうちの最高値よりも大きかった。同様に、B点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2b、3b、4b、5b、7b、8b及び9b)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4b、5b、6b、8b、10b、11b、12b及び13b)のうちの最高値よりも大きかった。同様に、C点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2b、3b、4b、5b、7b、8b及び9b)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4b、5b、6b、8b、10b、11b、12b及び13b)のうちの最高値よりも大きかった。
【0269】
【表7】
【0270】
【表8】
【0271】
【表9】
【0272】
このように、実施例は、比較例に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0273】
本発明は、ゴルフクラブシャフトをはじめとして、あらゆるFRP管状体に適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0274】
【図1】図1は、本発明の一実施形態で用いられうるマンドレル及びプリプレグを示す図である。
【図2】図2は、本発明における第一巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図3】図3は、本発明における第二巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図4】図4は、樹脂フィルムテープの断面図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施形態で用いられうるマンドレル及びプリプレグを示す図である。
【図6】図6は、本発明における第一巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図7】図7は、本発明における第二巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図8】図8は、ゴムテープの断面図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施形態で用いられうるマンドレル及びプリプレグを示す図である。
【図10】図10は、本発明におけるテープ巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図11】図11は、本発明におけるテープ巻き付け工程の他の例を示す一部断面斜視図である。
【図12】図12は、三点曲げ強度の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0275】
2・・・マンドレル
4・・・プリプレグ
6・・・中間成形体
8・・・織物テープ
10・・・樹脂フィルムテープ
12・・・織物被覆体
s1、s2、s3、s4、s5、s6・・・切断されたプリプレグシート
2a・・・マンドレル
4a・・・プリプレグ
6a・・・中間成形体
8a・・・織物テープ
10a・・・ゴムテープ
12a・・・織物被覆体
h1、h2、h3、h4、h5、h6・・・切断されたプリプレグシート
2b・・・マンドレル
4b・・・プリプレグ
6b・・・中間成形体
8b・・・織物テープ
10b・・・織物テープ
12b・・・織物被覆体
e1、e2、e3、e4、e5、e6・・・切断されたプリプレグシート
20・・・シャフト
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、繊維強化樹脂製の管状体の製造方法及びこの製造方法により製造された管状体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非力な高齢者や女性ゴルファーの増加に伴い、わずかな力でも飛距離を伸ばすことのできるゴルフクラブシャフト(以下、単にシャフトともいう)の開発が望まれている。中でもシャフトの軽量化は、この問題を解決する有効な手段の一つと考えられ、様々な取り組みがなされてきた。
【0003】
この取り組みとして、材料面では、まず、スチールからCFRP(炭素繊維強化プラスチック)への変更が挙げられる。また、同じCFRPでも、カーボン繊維の強度を向上させること、樹脂の物性を変更すること又はカーボン繊維と樹脂との密着強度を向上させること等により、シャフト全体の強度を向上させ、その分重量を低減している。また、構造面での取り組みとして、強度が向上する角度に繊維を配向又は積層させて強度を向上させることにより、その強度向上分の重量を低減してきた。
【0004】
繊維強化樹脂製の管状体(以下、FRP管状体ともいう)は、様々な用途で用いられている。FRP管状体の製造方法として、ラッピングテープを用いた製造方法が公知である。この製造方法では、マンドレル(芯金)にシート状のFRP材料を巻き付けた後、所定の張力を付与しつつ樹脂テープを巻き付ける。この樹脂テープは、一般にラッピングテープとも称されている。このラッピングテープにより、成形圧力が付与される。
【0005】
このラッピングテープは、最終的には除去される。この除去を容易とするため、離型性の高いラッピングテープが好ましい。特開2002−144439号公報には、離型性を高める目的で、内面が織物文様であるラッピングテープを開示する。具体的には、織物と樹脂フィルムとが一体とされたラッピングテープが開示されている。
【特許文献1】特開2002−144439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CFRP製シャフトを軽量化する目的で、上記の通り、繊維や樹脂の強度、あるいは、繊維と樹脂との密着を高めることでシャフト全体の強度を高め、強度向上分の重量を低減する方法が採られてきた。そして、それらの方法によりシャフトの軽量化が図られてきた。しかしながら強度を向上させてその分軽量化するという開発にも限界がある。一方、ゴルファーのニーズには限界が無く、少しでも飛距離を伸ばすことが求められている。飛距離の増加を実現する手段の一つがシャフトの軽量化であり、シャフト軽量化への要求は尽きない。この要求を実現するために、シャフトに必要な最低限の強度は維持しつつ、シャフト剛性に関わる特性(フレックスやトルク)は犠牲にするという手法が採られてきた。しかしこの手法による軽量化も限界にきており、剛性の低下もクラブとしての機能に支障をきたすところまできている。如何にシャフトの剛性を維持したまま更なる軽量化を図るかが重要である。
【0007】
シャフトの剛性を維持したまま軽量化を実現する手段として、繊維含有率の高いCFRPを使用することが考えられる。つまり、管状体の成形品としての強度や剛性を主として担う繊維の含有率を高めることにより、単位重量当たりの強度や剛性が高まり、軽量化が図られる。しかしながら、繊維含有率の高いCFRPでの成形は、タック性が不足しているため、成形しにくい上に、繊維強化樹脂部材層間に空気が入り込みやすい。またこの場合、材料自体にも空気が多く含まれることになるため、管状体全体に空気が多く入り込む。この空気はボイドとなり、管状体の強度や耐久性を低下させうる。
【0008】
このように、軽量化を図りながら、強度と剛性とを同時に維持することは困難である。
【0009】
また、上記従来技術のラッピングテープでは、織物と樹脂フィルムとで伸び率が異なるため、張力を付与した際に織物と樹脂フィルムとが部分的に分離したり、テープが捻れたり、テープが湾曲したり、成形圧力がばらついたりする現象が発生しうる。これらの現象により、FRP管状体の表面が不均一となりやすく、不良品の発生又は強度の不均一が生じやすい。
【0010】
ところで、軽量で且つ強度の高いFRP管状体は、様々な用途において有用である。このFRP管状体、例えばゴルフクラブシャフトでは、軽量化が望まれている。軽量なゴルフクラブシャフトは、ヘッドスピード及び飛距離の増大に寄与しうる。本発明では、新たな技術思想に基づき、FRP管状体のボイド率を低下させうる製造方法を見いだした。ボイド率の低下は、強度の向上に寄与しうる。強度の向上は、シャフトの軽量化に寄与しうる。この製造方法においては、硬化工程が従来と異なる。
【0011】
本発明の目的は、ボイド率を効果的に低下させうる管状体の製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の製造方法は、マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体を得る工程と、上記中間成形体の外周面に、張力を付与しつつラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程と、上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、上記硬化工程の後に上記マンドレルの引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含む。上記ラッピングテープとして織物テープが用いられている。上記硬化工程が、70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱する第一加熱ステップと、上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱する第二加熱ステップとを含む。
【0013】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程が、上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後に樹脂フィルムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む。
【0014】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1が5(Mpa)以上150(Mpa)以下とされる。
【0015】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1とされ、上記第二巻き付け工程において上記樹脂フィルムテープに付与される引張応力がT2とされるとき、比(T1/T2)が0.1以上0.95以下とされる。
【0016】
好ましくは、上記樹脂フィルムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている。
【0017】
好ましくは、上記中間成形体の繊維含有率がZ1(質量%)であり、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)であるとき、差(Z2−Z1)が3質量%以上25質量%以下である。
【0018】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程が、上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後にゴムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む。
【0019】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1aが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である。
【0020】
好ましくは、上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1aとされ、上記第二巻き付け工程において上記ゴムテープに付与される引張応力がT2aとされるとき、比(T2a/T1a)が0.1以上である。
【0021】
好ましくは、上記ゴムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている。
【0022】
好ましくは、上記ラッピングテープが織物テープのみである。
【0023】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1bが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である。
【0024】
好ましくは、上記テープ巻き付け工程において巻き付けられた上記織物テープのラッピング層数L1が、管状体のチップ端位置Tp1から管状体のバット端位置Bt1までの全ての点において1層以上である。
【0025】
本発明に係る他の製造方法は、マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体を得る工程と、上記中間成形体の外側に、張力を付与しつつラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程と、上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、上記硬化工程の後に上記マンドレルの引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含む。上記ラッピングテープとして織物テープが用いられており、更に、上記ラッピングテープとして、樹脂フィルムテープ又はゴムテープが用いられている。上記中間成形体の繊維含有率がZ1(質量%)であり、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)であるとき、差(Z2−Z1)が3質量%以上25質量%以下である。上記硬化工程が、70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱される第一加熱ステップと、上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱される第二加熱ステップとを含む。
【0026】
本発明に係る管状体は、上記のいずれかの製造方法により製造された管状体である。好ましくは、この管状体のボイド率Rbは0.5%以下とされる。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、長時間で且つ低温である第一加熱ステップにより、ボイド率が効果的に低下しうる。本発明により、軽量で且つ高強度な管状体が得られうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0029】
本実施形態の製造方法では、ラッピングテープが用いられる。以下の実施形態では、ラッピングテープの使用方法として、次の3通りの方法が採用される。
(1)ラッピングテープとして織物テープと樹脂フィルムテープとが用いられる
(2)ラッピングテープとして、織物テープとゴムテープとが用いられる。
(3)ラッピングテープとして、織物テープのみが用いられる。
【0030】
先ず、ラッピングテープとして織物テープと樹脂フィルムテープとが用いられる実施形態が、図1から図4を参照しつつ、説明される。
【0031】
図1は、本発明の第一実施形態に係る製造方法を説明するための図である。ここでは、管状体の製造方法の一例として、ゴルフクラブシャフトの製造方法が説明される。この製造方法では、先ず、マンドレル2と繊維強化樹脂部材4とが用意される。典型的なマンドレル2の材質は、鋼等の金属である。マンドレル2の中心軸線は、略直線である。マンドレル2の断面形状は、円形である。マンドレル2は、テーパーを有している。このテーパーにより、マンドレル2は、その一端に近づくほど細くなされている。マンドレル2は、部分的にパラレルであってもよい。換言すれば、マンドレル2は、部分的に直径が一定の部分を有していても良い。マンドレル2の全体において直径が一定であってもよい。
【0032】
マンドレル2は、最終的に得られる管状体の中空部を形成する。マンドレル2の形状により、管状体の中空部の形状が決定される。後述されるように、マンドレル2は、後の工程において引き抜かれる。この引き抜きが容易となるように、好ましくは、マンドレル2の表面に離型剤が塗布される。
【0033】
本実施形態では、先ず、マンドレルに、繊維強化樹脂部材が巻回される工程がなされる。この工程が、以下、巻回工程とも称される。
【0034】
巻回工程に先立ち、繊維強化樹脂部材が用意される。本実施形態では、繊維強化樹脂部材は、シート状である。繊維強化樹脂部材は、プリプレグ4である。この製造方法では、シート状の繊維強化樹脂部材が巻回される。この製造方法は、シートワインディング製法とも称される。なお、繊維強化樹脂部材として、プリプレグ4の他、液状の樹脂に含浸させた繊維が例示される。この繊維を用いた製法の一例は、いわゆるフィラメントワインディング製法である。本製造方法は、フィラメントワインディング製法にも適用されうる。
【0035】
プリプレグ4は、繊維とマトリクス樹脂とを含む。この繊維は、炭素繊維である。プリプレグ4の炭素繊維は、一方向に配向している。後述されるように、炭素繊維以外の繊維でもよい。高強度で且つ軽量な管状体とする観点から、炭素繊維が好ましい。巻回工程において、マトリクス樹脂は、完全には硬化していない。よってプリプレグ4は柔軟性を有する。この柔軟性は、プリプレグ4のマンドレル2への巻回を許容する。なお、後述されるように、マトリクス樹脂は限定されず、好ましくはエポキシ樹脂である。
【0036】
巻回工程の前に、プリプレグ4は、所望の形状に切断される。図1の実施形態では、6枚のプリプレグ4が用いられる。図1の実施形態では、切断されたプリプレグ4の例として、シートs1からs6が示されている。プリプレグ4は、いわゆるアングル層用シートs1、s2と、ストレート層用シートs3、s5、s6と、フープ層用シートs4とを含む。プリプレグ4は、シャフトの全長に亘って設けられる全長シートs1からs5と、シャフト長手方向の一部に設けられる部分シートs6とを含む。なお、プリプレグ4の仕様は限定されない。プリプレグ4の形状、厚み、繊維種類、繊維含有率等は限定されない。
【0037】
巻回工程では、シートs1からシートs6までが、順次マンドレル2に巻回される。巻回に先立ち、シートs2は、シートs1に貼り合わせられる。この貼り合わされたシート群がマンドレル2に巻回される。この貼り合わせにおいて、シートs2は、裏返される。この裏返しにより、シートs1の繊維とシートs2の繊維とは、互いに逆方向に配向する。図1において各シートs1からs6に記載された角度は、シャフト軸方向と繊維の配向方向とのなす角度を示している。
【0038】
シートs1からs6の巻回は、例えば人力によりなされる。巻回機(ローリングマシンとも称される)が用いられても良い。巻回工程により、中間成形体6が得られる。中間成形体6は、巻き付けられたプリプレグ4により構成されている。中間成形体6の断面は、渦巻き状の層よりなる。この層は、プリプレグ4により形成されている。
【0039】
次に、テープ巻き付け工程がなされる。このテープ巻き付け工程では、中間成形体6の外周面にラッピングテープが巻き付けられる。図2及び図3は、テープ巻き付け工程の様子を示す一部断面斜視図である。図2及び図3の断面において、中間成形体6は、単一の層として簡略的に示されている。実際には、中間成形体6は、前述したように複数の層よりなる。
【0040】
テープ巻き付け工程では、2種類のラッピングテープ8、10が用いられる。第一のラッピングテープは、織物テープ8である。第二のラッピングテープは、樹脂フィルムテープ10である。
【0041】
テープ巻き付け工程は、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とを含む。第一巻き付け工程では、織物テープ8が用いられる。織物テープ8は、織物を基材とするテープである。第二巻き付け工程では、樹脂フィルムテープ10が用いられる。樹脂フィルムテープ10は、樹脂フィルムを基材とするテープである。第一巻き付け工程の後に第二巻き付け工程がなされる。第一巻き付け工程の様子が、図2で示される。第二巻き付け工程の様子が、図3で示される。
【0042】
第一巻き付け工程では、中間成形体6の外周面に織物テープ8が直接巻き付けられる。中間成形体6の外周面と織物テープ8とは当接する。織物テープ8は中間成形体6の外周面に接触している。
【0043】
図2が示すように、第一巻き付け工程において、織物テープ8は、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、中間成形体6の軸線方向と織物テープ8の長手方向とは互いに垂直とされない。織物テープ8は、中間成形体6に隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、織物テープ8の幅W1は、巻き付けピッチP1よりも広い。巻き付けピッチP1は、図2において両矢印で示されている。つまり、織物テープ8は、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。この織物テープ8の巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。織物テープ8は、中間成形体6の全長に亘って巻き付けられる。第一巻き付け工程の結果、中間成形体6の全体が織物テープ8により覆われる。なお、織物テープ8の両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により中間成形体6に固定される。この両端の固定により、織物テープ8の巻き付けが自然に解けることはない。
【0044】
織物テープ8の巻き付けは、張力F1を付与しつつなされる。この張力F1により、中間成形体6は、織物テープ8により締め付けられる。織物テープ8の巻き付けにより、織物被覆体12が得られる。織物被覆体12は、中間成形体6が織物テープ8で覆われてなる。
【0045】
第二巻き付け工程では、織物被覆体12の外周面に樹脂フィルムテープ10が直接巻き付けられる。織物被覆体12の外周面と樹脂フィルムテープ10とは当接する。樹脂フィルムテープ10は織物被覆体12の外周面に接触している。つまり樹脂フィルムテープ10は織物テープ8に接触している。
【0046】
図3が示すように、第二巻き付け工程において、樹脂フィルムテープ10は、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、織物被覆体12の軸線方向と樹脂フィルムテープ10の長手方向とは互いに垂直とされない。樹脂フィルムテープ10は、織物被覆体12に隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、樹脂フィルムテープ10の幅W2は、巻き付けピッチP2よりも広い。巻き付けピッチP2は、図3において両矢印で示されている。つまり、樹脂フィルムテープ10は、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。この樹脂フィルムテープ10の巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。樹脂フィルムテープ10は、織物被覆体12の全長に亘って巻き付けられる。第二巻き付け工程の結果、織物被覆体12の全体が樹脂フィルムテープ10により覆われる。なお、樹脂フィルムテープ10の両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により織物被覆体12に固定される。この両端の固定により、樹脂フィルムテープ10の巻き付けが自然に解けることはない。
【0047】
樹脂フィルムテープ10の巻き付けは、張力F2を付与しつつなされる。この張力F2により、織物被覆体12は、樹脂フィルムテープ10により締め付けられる。
【0048】
以上のような第一巻き付け工程及び第二巻き付け工程により、中間成形体6は、織物テープ8及び樹脂フィルムテープ10によって締め付けられた状態となる。
【0049】
なお織物被覆体12の表面には、織物テープ8による螺旋模様が形成されているが、図3においては、この織物テープ8による螺旋模様の記載が省略されている。
【0050】
次に、硬化工程がなされる。この硬化工程では、織物テープ8及び樹脂フィルムテープ10が巻き付けられた中間成形体6において、マトリクス樹脂を硬化させる。この硬化工程は、加熱工程である。加熱は、加熱炉によりなされる。
【0051】
硬化工程は、第一加熱ステップと、第二加熱ステップとを含む。好ましくは、硬化工程は、第一加熱ステップ及び第二加熱ステップのみからなる。第一加熱ステップの後に、第二加熱ステップがなされる。第一加熱ステップの温度は、第二加熱ステップの温度よりも低い。
【0052】
第一加熱ステップの温度は、70℃以上90℃以下とされる。第一加熱ステップの時間は、120分以上4320分以下とされる。
【0053】
第二加熱ステップの温度は、120℃以上200℃以下とされる。第二加熱ステップの時間は、10分以上60分以下とされる。
【0054】
プリプレグには、気泡が含まれている。この気泡は、プリプレグの製造段階において取り込まれたものである。この気泡は、完成されたシャフトにも残留しうる。この気泡は、シャフトの強度を低下させる。ボイド率が大きい場合、シャフトの強度は低い。
【0055】
大きな気泡は、小さな気泡と比較して、シャフトのひび割れの起点となりやすい。大きな気泡は、シャフトの強度を低下させる。
【0056】
前述のように、第一加熱ステップは、低温である。低温であるため、気泡の熱膨張が少ない。熱膨張が少ないため、気泡が大きくなりにくい。第一加熱ステップでは、気泡の熱膨張が抑制されつつ、マトリクス樹脂の硬化が進行する。第一加熱ステップでマトリクス樹脂の硬化が進行するため、第二加熱ステップに移行した段階では、気泡の熱膨張は起こりにくい。第一加熱ステップが長時間とされることにより、第一加熱ステップにおけるマトリクス樹脂の硬化はより一層進行する。第一加熱ステップによりマトリクス樹脂の硬化が進行している場合、第二加熱ステップにおける気泡の熱膨張は、更に起こりにくい。
【0057】
第一加熱ステップでは、マトリクス樹脂が加熱されるため、マトリクス樹脂は流動化しうる。マトリクス樹脂の流動化により、気泡が、マトリクス樹脂中を移動しうる。この移動に伴い、気泡同士が合体しうる。気泡同士が合体した場合、より大きな気泡が生成されうる。上記の通り、大きな気泡は、シャフト強度を低下させる。しかし、本発明において、第一加熱ステップは低温である。この温度の低さに起因して、マトリクス樹脂の粘度は高い。この高い粘度に起因して、気泡は、第一加熱ステップにおいて、移動しにくい。第一加熱ステップにおいて、気泡同士は合体しにくい。低温の第一加熱ステップは、気泡同士の合体を抑制しうる。低温の第一加熱ステップは、気泡同士の合体による気泡の成長を抑制しうる。低温の第一加熱ステップは、大きな気泡の生成を抑制しうる。
【0058】
気泡の熱膨張を抑制する観点、及び、気泡同士の合体を抑制する観点から、第一加熱ステップの温度は、90℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましく、80℃以下がより好ましい。
【0059】
第一加熱ステップにおける硬化を促進し、第二加熱ステップにおける気泡の熱膨張を抑制する観点から、第一加熱ステップの温度は、70℃以上が好ましい。
【0060】
第一加熱ステップにおける硬化を促進し、第二加熱ステップにおける気泡の熱膨張を抑制する観点から、第一加熱ステップの時間は、120分以上が好ましく、180分以上がより好ましい。
【0061】
長時間の第一加熱ステップは、織物テープの使用との相乗効果を奏しうる。第一加熱ステップでは、マトリクス樹脂が流動化しうる。第一加熱ステップが長時間であるから、流動化している時間も長時間である。流動化したマトリクス樹脂は、織物テープに移行しうる。マトリクス樹脂の織物テープへの移行を促進する観点からも、第一加熱ステップの時間は、120分以上が好ましく、180分以上がより好ましい。
【0062】
シャフトの生産性の観点から、第一加熱ステップの時間は、4320分以下が好ましく、1440分以下がより好ましい。
【0063】
長時間の第一加熱ステップにより、マトリクス樹脂の硬化はかなり進行している。しかし、第一加熱ステップは低温であるため、マトリクス樹脂の硬化は完全ではない。このため第二加熱ステップが設定される。高温の第二加熱ステップにより、マトリクス樹脂が完全に硬化しうる。
【0064】
マトリクス樹脂の硬化を促進する観点から、第二加熱ステップの温度は、120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましい。シャフトの製造に要するエネルギーのコストを削減する観点から、第二加熱ステップの温度は、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。
【0065】
マトリクス樹脂の硬化を促進する観点から、第二加熱ステップの時間は、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましい。シャフトの生産性の観点から、第二加熱ステップの時間は、60分以下が好ましく、30分以下がより好ましい。
【0066】
硬化工程の温度は、加熱炉(オーブン)内の空気の温度を意味しうる。硬化工程の温度は、硬化工程におけるラッピングテープの表面温度を意味しうる。
【0067】
硬化工程の後、マンドレル2の引き抜き及びラッピングテープの除去を行い硬化管状体を得る工程がなされる。ラッピングテープの除去は、先に樹脂フィルムテープ10の除去がなされ、次に織物テープ8の除去がなされる。マンドレル2の引き抜き及びラッピングテープの除去は、どちらが先になされてもよい。作業性の観点から、好ましくは、マンドレル2が引き抜かれた後にラッピングテープが除去される。
【0068】
通常は、上記硬化管状体に仕上げ加工が施されて、最終製品の管状体が完成する。この仕上げ加工には、両端部の切断、表面研磨、塗装等が含まれうる。
【0069】
図4は、樹脂フィルムテープ10の断面図である。樹脂フィルムテープ10は、樹脂フィルムよりなる基材14と、コーティング剤16とを有する。コーティング剤16は層を形成している。樹脂フィルムテープ10は、基材14とコーティング剤16との2層構造である。基材14の内面に、コーティング剤16が設けられている。コーティング剤16として、フッ素系化合物やシリコン系化合物が好ましい。なお、織物テープ8に発生する皺を抑制する観点から、織物テープ8の内面にコーティング剤が設けられても良い。
【0070】
上記の如く、製造工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂(マトリクス樹脂)は織物テープ8に移行しうる。特に、第一加熱ステップにおいて、マトリクス樹脂が織物テープ8に移行しやすい。第一加熱ステップが長時間であるから、この長い時間を利用して、マトリクス樹脂が織物テープ8に移行しやすい。
【0071】
織物テープ8は、織られた繊維の間に空隙や穴を有している。よって織物テープ8は、樹脂を吸収及び/又は透過させうる。織物テープ8により、マトリクス樹脂が成形体の外部に排出されやすくなり、管状体の繊維含有率が向上しうる。これにより、管状体の軽量化が達成される。
【0072】
FRP管状体の繊維含有率を高くする手段として、繊維含有率が高い繊維強化樹脂部材を用いることが考えられる。繊維含有率が高いことは、樹脂含有率が低いことを意味する。樹脂含有率が低い繊維強化樹脂部材は、タック性(粘着性)が低い。よって、樹脂含有率が低い繊維強化樹脂部材は、繊維強化樹脂部材同士の密着性が低い。このような粘着性の低い繊維強化樹脂部材は、一旦巻回されても解けやすい。このようなタック性の低い繊維強化樹脂部材では、マンドレル2への巻き付け作業が行いにくく、且つ、巻き付けの際に皺が発生しやすい。また、密着性が悪いため、渦巻き状に巻き付けられた繊維強化樹脂部材層の層間に空気が含まれやすくなり、管状体の強度や耐久性が損なわれる。粘着性の低い繊維強化樹脂部材は、生産性の低下や成形不良を招きやすい。
【0073】
本発明の製造方法では、上記中間成形体の外側に直接織物テープ8を張力を付与しつつ巻き付け、更にその外側に樹脂フィルムテープ10を張力を付与しつつ巻き付ける。この製造方法により、硬化工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8に吸収される。この吸収により、繊維含有率の高い繊維強化樹脂部材を用いることなく、FRP管状体の繊維含有率を高くすることができる。よって、タック性の高い繊維強化樹脂部材を使用されても、繊維含有率が高められうる。更に、織物テープ8は、中間成形体6に含まれる空気も吸収又は透過させうる。これにより、ボイドの原因となる空気が抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。また、樹脂フィルムテープ10が中間成形体6に大きな圧力を加えることにより、ボイドの原因となる空気が一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。
【0074】
織物テープ8による樹脂の吸収は、繊維強化樹脂部材を巻回した後になされる。本発明では、粘着性が過度に低い繊維強化樹脂部材を用いることなく、繊維含有率の高いFRP管状体が得られうる。本実施形態では、繊維強化樹脂部材の巻回が行いやすく、且つ繊維含有率の向上が達成されうる。製造工程中に繊維含有率を向上させているので、成形性及び生産性を維持しながら軽量化が達成されている。
【0075】
本実施形態では、織物テープ8の外側に樹脂フィルムテープ10が巻き付けられている。実質的に空気や樹脂を通さない樹脂フィルムテープ10が織物テープ8の外側に巻き付けられることにより、繊維強化樹脂部材から織物テープ8への樹脂の移行がより一層促進されうる。また、中間成形体6に含まれる空気が織物テープ8に移行しうるため、エアー溜まりやボイドが抑制されたFRP管状体が得られうる。
【0076】
前述したように、特開2002−144439に記載されたラッピングテープでは、織物と樹脂フィルムとが一体化されている。このテープも織物部分に樹脂が吸収される可能性がある。しかし実際には、この一体化されたテープでは、樹脂の吸収効果が低いことが判明した。
【0077】
このように吸収効果が低い原因は、次のように考えられる。ラッピングテープは、幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられる。よって、螺旋状に巻き付けられたラッピングテープには、ラッピングテープ同士が重なった重複部が存在する。つまり、この重複部には、中間成形体と接する内側のラッピングテープ(内側テープ)と、この内側テープの外側に位置する外側のラッピングテープ(外側テープ)とが存在する。従来の一体化されたラッピングテープの場合、内側テープに存在する樹脂フィルム層が、外側テープと中間成形体との間に介在することになる。この樹脂フィルム層は、樹脂及びエアーを通さない。よって、従来の一体化されたテープの場合、上記重複部において、内側テープの樹脂フィルム層が、外側テープの織物層への樹脂及び空気の移行を阻害する。このように、従来の一体化されたテープでは、樹脂及び空気が織物層に移行しにくい。
【0078】
更に、織物と樹脂フィルムとが一体化されているテープでは、織物と樹脂フィルムとの間の空隙が少なくなっているため、樹脂の吸収効果が低いと考えられる。更に、従来の一体化されたテープでは、織物と樹脂フィルム層との間に存在する接着剤層の一部が織物の内部に浸透しており、織物自体の空隙が少なくなっているため、樹脂の吸収効果が低いと考えられる。
【0079】
これに対して本実施形態では、上記重複部において、織物テープ同士が重なっている。この重複部において、織物テープの内側に樹脂テープ層が存在しない。よって、重複部を含めた織物テープの全体に樹脂及び空気が移行することができ、樹脂及び空気が織物テープに移行しやすい。
【0080】
更に本実施形態では、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10とが別体であり、且つ両者を別々に巻き付けるため、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との間の空隙は大きくなりやすい。よって、樹脂及び空気が織物層に移行しやすい。
【0081】
前述したように、織物テープ8は幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられる。このように螺旋状に巻き付けられた織物テープ8により、凹凸が形成される。織物テープ8同士が重なった部分の厚さは、重なっていない部分の厚さの2倍である。よって、織物テープ8が重なった部分と重なっていない部分とにより凹凸が生じる。また、織物テープ8の幅方向縁9(図2参照)には、織物テープ8の厚さに相当する段差があり、この段差が凹凸となる。これらの凹凸により、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との間の空隙が大きくなる。このような空隙に、樹脂や空気が入り込みうる。よって、樹脂及び空気が織物テープ8側に移行しやすい。
【0082】
第二巻き付け工程において、樹脂フィルムテープ10は、張力F2を付与されつつ織物被覆体12に巻き付けられる。この張力F2に起因して、外側から樹脂フィルムテープ10を巻き付けられた織物テープ8に皺が発生することがある。上記コーティング剤16は、この皺の発生を抑制しうる。上記コーティング剤16は、第二巻き付け工程における織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との摩擦抵抗を低下させうる。この摩擦抵抗の低下に起因して、織物テープ8における皺の発生が抑制されうる。更にコーティング剤16は、樹脂フィルムテープ10に離型性を付与する。この離型性により、樹脂フィルムテープ10の除去が容易とされうる。
【0083】
前述したように、織物テープ8は張力F1が付与されつつ巻き付けられており、樹脂フィルムテープ10は張力F2が付与されつつ巻き付けられている。ここで、上記第一巻き付け工程において織物テープ8に付与される引張応力T1と、上記第二巻き付け工程において上記樹脂フィルムテープ10に付与される引張応力がT2とが定義される。引張応力T1は、上記張力F1を、織物テープ8の断面積S1で割った値である。即ち、[T1=F1/S1]である。この断面積S1は、張力が作用していない(フリーな)状態の織物テープ8において測定される。この引張応力T1は、巻き付けられる直前において織物テープ8に作用する引張応力を意味する。この引張応力T1は、巻き付けられた状態において織物テープ8に作用する引張応力を意味しない。引張応力T2は、上記張力F2を、樹脂フィルムテープ10の断面積S2で割った値である。即ち、[T2=F2/S2]である。この断面積S2は、張力が作用していない(フリーな)状態の樹脂フィルムテープ10において測定される。この引張応力T2は、巻き付けられる直前において樹脂フィルムテープ10に作用する引張応力を意味する。この引張応力T2は、巻き付けられた状態において樹脂フィルムテープ10に作用する引張応力を意味しない。
【0084】
織物テープ8に移行する樹脂の量を大きくするとともに、織物テープ8のたるみを抑制する観点から、引張応力T1は5Mpa以上が好ましく、10Mpa以上がより好ましく、20Mpa以上がより好ましく、25Mpa以上がより好ましく、30Mpa以上が更に好ましい。管状体の表面に発生する段差を抑制し、管状体表面を滑らかにするための研磨量を抑える観点から、引張応力T1は150Mpa以下が好ましく、100Mpa以下がより好ましく、60Mpa以下が更に好ましい。
【0085】
織物テープ8に移行する樹脂の量を大きくする観点から、引張応力T2は40Mpa以上が好ましく、50Mpa以上がより好ましく、65Mpa以上が更に好ましい。樹脂フィルムテープ10が切れることを抑制する観点から、引張応力T2は200Mpa以下が好ましく、180Mpa以下がより好ましく、150Mpa以下がより好ましい。
【0086】
引張応力T2は、引張応力T1よりも大きいのが好ましい。T2>T1とされることにより、織物テープ8に移行する樹脂の量が増加しうる。引張応力T1が比較的小さくされることにより、織物テープ8の空隙が維持されやすい。引張応力T2が比較的大きくされることにより、織物テープ8の空隙を維持しつつ、中間成形体6への締め付け力を大きくすることができる。よって、T2>T1により、織物テープ8に樹脂が移行しやすい。また、T2>T1とすることにより、FRP管状体内のボイドが低減される。
【0087】
第二巻き付け工程において織物テープ8に皺が発生することを抑制する観点から、比(T1/T2)は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.4以上が更に好ましい。織物テープ8に移行する樹脂を増加させる観点から、比(T1/T2)は、0.95以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下が更に好ましい。
【0088】
本実施形態では、中間成形体6の繊維含有率がZ1(質量%)とされ、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)とされる。軽量化の観点から、差(Z2−Z1)は3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましい。樹脂が過度に除去された場合、ラッピングテープを除去しにくくなる等により生産性が低下しやすい。この観点から、差(Z2−Z1)は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0089】
差(Z2−Z1)を3質量%以上25質量%以下とするための製造方法は、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とを含む上記製造方法に限定されない。この製造方法として、上記巻き付け工程において織物テープ8のみを巻き付ける製造方法が例示される。この製造方法は、上記第二巻き付け工程を含まない他は上記製造方法と同じである。織物テープ8のみを巻き付ける製造方法の一例は、後述される。
【0090】
中間成形体6の繊維含有率Z1は限定されない。FRP管状体の剛性及び強度を高める観点から、繊維含有率Z1は50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。巻き付け作業の生産性を高めると共に巻き付け不良を抑制する観点から、繊維含有率Z1は85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。中間成形体6の繊維含有率Z1は、繊維強化樹脂部材(プリプレグ4)の繊維含有率に等しい。繊維含有率Z1は、繊維強化樹脂部材(プリプレグ4)の製品データに基づき決定されうる。
【0091】
硬化管状体の繊維含有率Z2は限定されない。FRP管状体を軽量とする観点から、繊維含有率Z2は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。樹脂が過度に除去された場合、中間成形体6から排出された樹脂によりラッピングテープの除去が行いにくくなるので、生産性が低下しやすい。この観点から、繊維含有率Z2は95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がより好ましく、83質量%以下が更に好ましい。繊維含有率Z2の値は、繊維含有率Z1の値と、中間成形体6の質量と、除去された樹脂の質量とから算出される。
【0092】
織物テープ8の繊維は、離型性、締め付け力、強度等を総合的に考慮すると、ナイロン繊維及びポリエステル繊維が好ましい。織物テープ8の厚さd1は限定されない。織物テープ8による樹脂の吸収量を大きくするとともに、織物テープ8と樹脂フィルムテープ10との間の空隙を増やす観点から、織物テープ8の厚さd1は、50μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましく、90μm以上が更に好ましい。皺の発生を抑制するとともにコストを下げる観点から、織物テープ8の厚さd1は、150μm以下が好ましく、140μm以下がより好ましく、130μm以下が更に好ましい。
【0093】
織物テープ8の幅W1は限定されない。織物テープ8に吸収されうる樹脂の量を増加させる観点から、織物テープ8の幅W1は5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましく、10mm以上が更に好ましい。皺の発生を抑制するとともに、中間成形体6を締め付けやすくする観点から、織物テープ8の幅W1は35mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下が更に好ましい。
【0094】
織物テープ8の織り組織は限定されない。この織り組織として、平織り、朱子織り及び綾織りが例示される。張力により過度に引き延ばされると、樹脂が入り込みうる空隙及び繊維に吸収されうる樹脂の量が減少しやすい。張力により過度に引き延ばされることを抑制する観点から、織り組織には、織物テープ8の長手方向に対して略平行に配向する糸が存在しているのが好ましい。
【0095】
樹脂フィルムテープ10の基材14の材質としては、ポリプロピレン樹脂及びポリエステル樹脂が例示される。これらの樹脂は引張強度が高いため好ましい。更には、繊維強化樹脂部材中の樹脂の粘度が低下する温度域において収縮する樹脂フィルムテープが好ましく、例えば、ポリプロピレン樹脂層とポリエステル樹脂層とをラミネート積層してなる複合フィルムが好ましい。
【0096】
樹脂フィルムテープ10の厚さd2は限定されない。張力F2により切断されることを抑制する観点から、樹脂フィルムテープ10の厚さd2は10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上がより好ましく、25μm以上が更に好ましい。皺の発生を抑制するとともにコストを下げる観点から、樹脂フィルムテープ10の厚さd2は、150μm以下が好ましく、120μm以下がより好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。
【0097】
樹脂フィルムテープ10の幅W2は限定されない。管状体表面に発生する段差を抑制する観点から、幅W2は10mm以上が好ましく、12mm以上がより好ましく、14mm以上が更に好ましい。巻き付け時の皺を抑制する観点から、幅W2は35mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下が更に好ましい。
【0098】
繊維強化樹脂部材の繊維は限定されない。この繊維として、無機繊維、有機繊維及び金属繊維が例示される。この無機繊維として、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維及びアルミナ繊維が例示される。この有機繊維として、ポリエチレン繊維及びポリアミド繊維が例示される。複数の繊維が組み合わされてもよい。ゴルフクラブシャフトに要求される剛性を確保しつつ軽量な管状体を得る観点から、繊維の引張弾性率は、5t/mm2以上が好ましく、10t/mm2以上がより好ましく、24t/mm2以上が更に好ましい。繊維の入手可能性の観点から、繊維の引張弾性率は100t/mm2以下が好ましい。この引張弾性率は、JIS R7601:1986「炭素繊維試験方法」に準拠して測定される。
【0099】
次に、ラッピングテープとして織物テープとゴムテープとが用いられる実施形態について、図5から図8を参照しつつ、説明する。
【0100】
図5は、本発明の第二実施形態に係る製造方法を説明するための図である。ここでは、管状体の製造方法の一例として、ゴルフクラブシャフトの製造方法が説明される。この製造方法では、先ず、マンドレル2aと繊維強化樹脂部材4aとが用意される。マンドレル2aは、芯金とも称される。典型的なマンドレル2aの材質は、鋼等の金属である。マンドレル2aの中心軸線は、略直線である。マンドレル2aの断面形状は、円形である。マンドレル2aは、テーパーを有している。このテーパーにより、マンドレル2aは、その一端に近づくほど細くなされている。マンドレル2aは、部分的にパラレルであってもよい。換言すれば、マンドレル2aは、部分的に直径が一定の部分を有していても良い。マンドレル2aの全体において直径が一定であってもよい。
【0101】
マンドレル2aは、最終的に得られる管状体の中空部を形成する。マンドレル2aの形状により、管状体の中空部の形状が決定される。後述されるように、マンドレル2aは、後の工程において引き抜かれる。この引き抜きが容易となるように、好ましくは、マンドレル2aの表面に離型剤が塗布される。
【0102】
本製造方法では、先ず、マンドレルに、繊維強化樹脂部材が巻回される工程がなされる。
【0103】
巻回工程の前に、プリプレグ4aは、所望の形状に切断される。図5の実施形態では、6枚のプリプレグ4aが用いられる。図5の実施形態では、切断されたプリプレグ4aの例として、シートh1からh6が示されている。プリプレグ4aは、いわゆるアングル層用シートh1、h2と、ストレート層用シートh3、h5、h6と、フープ層用シートh4とを含む。プリプレグ4aは、シャフトの全長に亘って設けられる全長シートh1からh5と、シャフト長手方向の一部に設けられる部分シートh6とを含む。なお、プリプレグ4aの仕様は限定されない。プリプレグ4aの形状、厚み、繊維種類、繊維含有率等は限定されない。
【0104】
巻回工程は、上記第一実施形態と同様である。プリプレグ4aは、上記プリプレグ4と同様である。
【0105】
前述した第一実施形態と、本第二実施形態とでは、テープ巻き付け工程のみが相違する。樹脂フィルムテープに代えてゴムテープが用いられている他は、本第二実施形態は、上記第一実施形態と同様である。
【0106】
本実施形態のテープ巻き付け工程では、中間成形体6aの外側にラッピングテープが巻き付けられる。図6及び図7は、テープ巻き付け工程の様子を示す一部断面斜視図である。図6及び図7の断面において、中間成形体6aは、単一の層として簡略的に示されている。実際には、中間成形体6aは、前述したように複数の層よりなる。
【0107】
このテープ巻き付け工程では、2種類のラッピングテープ8a、10aが用いられる。第一のラッピングテープは、織物テープ8aである。第二のラッピングテープは、ゴムテープ10aである。
【0108】
このテープ巻き付け工程は、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とを含む。第一巻き付け工程では、織物テープ8aが用いられる。織物テープ8aは、織物を基材とするテープである。織物テープ8aは、織物のみにより構成されていてもよい。第二巻き付け工程では、ゴムテープ10aが用いられる。ゴムテープ10aは、ゴム又はゴム組成物を基材とするテープである。ゴムテープ10aは、ゴム組成物のみからなっていてもよい。第一巻き付け工程の後に第二巻き付け工程がなされる。第一巻き付け工程の様子が、図6で示される。第二巻き付け工程の様子が、図7で示される。
【0109】
第一巻き付け工程では、中間成形体6aの外周面に織物テープ8aが直接巻き付けられる。中間成形体6aの外周面と織物テープ8aとは当接する。織物テープ8aは中間成形体6aの外周面に接触している。
【0110】
図6が示すように、第一巻き付け工程において、織物テープ8aは、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、中間成形体6aの軸線方向と織物テープ8aの長手方向とは互いに垂直とされない。織物テープ8aは、中間成形体6aに隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、織物テープ8aの幅W1aは、巻き付けピッチP1aよりも広い。巻き付けピッチP1aは、図6において両矢印で示されている。つまり、織物テープ8aは、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。この織物テープ8aの巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。織物テープ8aは、中間成形体6aの全長に亘って巻き付けられる。第一巻き付け工程の結果、中間成形体6aの全体が織物テープ8aにより覆われる。なお、織物テープ8aの両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により中間成形体6aに固定される。この両端の固定により、織物テープ8aの巻き付けが自然に解けることはない。
【0111】
織物テープ8aの巻き付けは、張力F1aを付与しつつなされる。この張力F1aにより、中間成形体6aは、織物テープ8aにより締め付けられる。織物テープ8aの巻き付けにより、織物被覆体12aが得られる。織物被覆体12aは、中間成形体6aが織物テープ8aで覆われてなる。
【0112】
第二巻き付け工程では、中間成形体6aの外側にゴムテープ10aが巻き付けられる。この第二巻き付け工程では、織物被覆体12aの外周面にゴムテープ10aが直接巻き付けられる。織物被覆体12aの外周面とゴムテープ10aとは当接する。ゴムテープ10aは織物被覆体12aの外周面に接触している。つまりゴムテープ10aは織物テープ8aに接触している。
【0113】
図7が示すように、第二巻き付け工程において、ゴムテープ10aは、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、織物被覆体12aの軸線方向とゴムテープ10aの長手方向とは互いに垂直とされない。ゴムテープ10aは、織物被覆体12aに隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、ゴムテープ10aの幅W2aは、巻き付けピッチP2aよりも広い。巻き付けピッチP2aは、図7において両矢印で示されている。つまり、ゴムテープ10aは、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。このゴムテープ10aの巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。ゴムテープ10aは、織物被覆体12aの全長に亘って巻き付けられる。第二巻き付け工程の結果、織物被覆体12aの全体がゴムテープ10aにより覆われる。なお、ゴムテープ10aの両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により織物被覆体12aに固定される。この両端の固定により、ゴムテープ10aの巻き付けが自然に解けることはない。
【0114】
ゴムテープ10aの巻き付けは、張力F2aを付与しつつなされる。この張力F2aにより、織物被覆体12aは、ゴムテープ10aにより締め付けられる。
【0115】
以上のような第一巻き付け工程及び第二巻き付け工程により、中間成形体6aは、織物テープ8a及びゴムテープ10aによって締め付けられた状態となる。
【0116】
なお織物被覆体12aの表面には、織物テープ8aによる螺旋模様が形成されているが、図7においては、この織物テープ8aによる螺旋模様の記載が省略されている。
【0117】
次に、硬化工程がなされる。この硬化工程では、織物テープ8a及びゴムテープ10aが巻き付けられた中間成形体6aにおいて、マトリクス樹脂を硬化させる。この硬化工程は、前述した第一実施形態と同様である。
【0118】
硬化工程の後、マンドレル2aの引き抜き及びラッピングテープの除去を行い硬化管状体を得る工程がなされる。ラッピングテープの除去は、先にゴムテープ10aの除去がなされ、次に織物テープ8aの除去がなされる。マンドレル2aの引き抜き及びラッピングテープの除去は、どちらが先になされてもよい。作業性の観点から、好ましくは、マンドレル2aが引き抜かれた後にラッピングテープが除去される。硬化管状体の表面には、螺旋状に巻き付けられた織物テープ8aの跡が螺旋状の凹凸として残る。
【0119】
図8は、ゴムテープ10aの断面図である。ゴムテープ10aは、ゴム組成物よりなる基材14aと、コーティング剤16aとを有する。ゴムテープ10aは、基材14aとコーティング剤16aとの2層構造である。基材14aの内面に、コーティング剤16aが設けられている。コーティング剤16aとして、フッ素系化合物やシリコン系化合物が好ましい。なおコーティング剤16aは設けられなくてもよい。また、織物テープ8aに発生する皺を抑制する観点から、織物テープ8aの内面にコーティング剤が設けられても良い。
【0120】
第二実施形態によれば、第一実施形態と同様に、ボイドの大型化及びボイド率が抑制される。また、本第二実施形態では、製造工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8aに移行しうる。織物テープ8aは、織られた繊維の間に空隙や穴を有している。よって織物テープ8aは、樹脂を吸収及び/又は透過させうる。織物テープ8aにより、マトリクス樹脂が成形体の外部に排出されやすくなり、管状体の繊維含有率が向上しうる。これにより、管状体の軽量化が達成される。
【0121】
本実施形態では、上記中間成形体の外側に直接織物テープ8aを張力を付与しつつ巻き付け、更にその外側にゴムテープ10aを張力を付与しつつ巻き付ける。この製造方法により、加熱工程中において繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8aに吸収される。この吸収により、繊維含有率の高い繊維強化樹脂部材を用いることなく、FRP管状体の繊維含有率を高くすることができる。よって、タック性の高い繊維強化樹脂部材が使用されても、繊維含有率が高められうる。更に、織物テープ8aは、中間成形体6aに含まれる空気も吸収又は透過させうる。これにより、ボイドの原因となる空気が抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。また、ゴムテープ10aは弾性体のため、中間成形体6aの中心に向かう圧力を効果的に付与しうる。この圧力により、ボイドの原因となる空気が一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。ゴムテープ10aは、弾性的に伸ばされた状態で巻き付けられているので、収縮しようとする。この収縮しようとする力により、ゴムテープ10aは、中間成形体6aの表面を効果的に押圧しうる。この押圧力により、ボイドの原因となる空気が一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。
【0122】
織物テープ8aによる樹脂の吸収(抽出)は、繊維強化樹脂部材を巻回した後になされる。本実施形態では、粘着性が過度に低い繊維強化樹脂部材を用いることなく、繊維含有率の高いFRP管状体が得られうる。つまり本発明では、繊維強化樹脂部材の巻回が行いやすく、且つ繊維含有率の向上が達成されうる。製造工程中に繊維含有率を向上させうるので、成形性及び生産性を維持しながら軽量化が達成されている。
【0123】
本実施形態では、織物テープ8aの外側にゴムテープ10aが巻き付けられている。実質的に空気や樹脂を通さないゴムテープ10aが織物テープ8aの外側に巻き付けられることにより、繊維強化樹脂部材から織物テープ8aへの樹脂の移行がより一層促進されうる。また、中間成形体6aに含まれる空気が織物テープ8aに移行しうるため、エアー溜まりやボイドが抑制されたFRP管状体が得られうる。
【0124】
本実施形態では、ラッピングテープが重なった重複部において、織物テープ同士が重なっている。この重複部において、織物テープの内側に樹脂テープ層又はゴムテープ層が存在しない。よって、重複部を含めた織物テープの全体に樹脂及び空気が移行することができ、樹脂及び空気が織物テープに移行しやすい。
【0125】
更に本実施形態では、織物テープ8aとゴムテープ10aとが別体であり、且つ両者を別々に巻き付けるため、織物テープ8aとゴムテープ10aとの間の空隙は大きくなりやすい。よって、樹脂及び空気が織物層に移行しやすい。
【0126】
前述したように、織物テープ8aは幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられる。このように螺旋状に巻き付けられた織物テープ8aにより、凹凸が形成される。織物テープ8a同士が重なった部分の厚さは、重なっていない部分の厚さの2倍である。よって、織物テープ8aが重なった部分と重なっていない部分とにより凹凸が生じる。また、織物テープ8aの幅方向縁9(図6参照)には、織物テープ8aの厚さに相当する段差があり、この段差が凹凸となる。これらの凹凸により、織物テープ8aとゴムテープ10aとの間の空隙が大きくなる。このような空隙に、樹脂や空気が入り込みうる。よって、樹脂及び空気が織物テープ8a側に移行しやすい。
【0127】
第二巻き付け工程において、ゴムテープ10aは、張力F2aを付与されつつ織物被覆体12aに巻き付けられる。この張力F2aに起因して、外側からゴムテープ10aを巻き付けられた織物テープ8aに皺が発生することがある。上記コーティング剤16aは、この皺の発生を抑制しうる。上記コーティング剤16aは、第二巻き付け工程における織物テープ8aとゴムテープ10aとの摩擦抵抗を低下させうる。この摩擦抵抗の低下に起因して、織物テープ8aにおける皺の発生が抑制されうる。更にコーティング剤16aは、ゴムテープ10aに離型性を付与する。この離型性により、ゴムテープ10aの除去が容易とされうる。
【0128】
前述したように、織物テープ8aは張力F1aが付与されつつ巻き付けられており、ゴムテープ10aは張力F2aが付与されつつ巻き付けられている。ここで、上記第一巻き付け工程において織物テープ8aに付与される引張応力T1aと、上記第二巻き付け工程において上記ゴムテープ10aに付与される引張応力がT2aとが定義される。引張応力T1aは、上記張力F1aを、織物テープ8aの断面積S1aで割った値である。即ち、[T1a=F1a/S1a]である。この断面積S1aは、張力が作用していない(フリーな)状態の織物テープ8aにおいて測定される。この引張応力T1aは、巻き付けられる直前において織物テープ8aに作用する引張応力を意味する。この引張応力T1aは、巻き付けられた状態において織物テープ8aに作用する引張応力を意味しない。引張応力T2aは、上記張力F2aを、ゴムテープ10aの断面積S2aで割った値である。即ち、[T2a=F2a/S2a]である。この断面積S2aは、張力が作用していない(フリーな)状態のゴムテープ10aにおいて測定される。この引張応力T2aは、巻き付けられる直前においてゴムテープ10aに作用する引張応力を意味する。この引張応力T2aは、巻き付けられた状態においてゴムテープ10aに作用する引張応力を意味しない。
【0129】
織物テープ8aに移行する樹脂の量を大きくするとともに、織物テープ8aのたるみを抑制する観点から、引張応力T1aは5Mpa以上が好ましく、10Mpa以上がより好ましく、20Mpa以上がより好ましく、25Mpa以上がより好ましく、30Mpa以上が更に好ましい。管状体の表面に発生する段差を抑制し、管状体表面を滑らかにするための研磨量を抑える観点から、引張応力T1aは150Mpa以下が好ましく、100Mpa以下がより好ましく、60Mpa以下が更に好ましい。
【0130】
織物テープ8aに移行する樹脂の量を大きくする観点から、引張応力T2aは2Mpa以上が好ましく、4Mpa以上がより好ましく、6Mpa以上が更に好ましい。ゴムテープ10aが切れることを抑制する観点から、引張応力T2aは60Mpa以下が好ましく、40Mpa以下がより好ましく、30Mpa以下がより好ましく、20Mpa以下が更に好ましい。
【0131】
織物テープ8aに移行する樹脂量を多くする観点から、比(T2a/T1a)は大きくされるのがよい。織物テープに樹脂が移行することにより、中間成形体の外径が小さくなる。外径が小さくなることにより、織物テープ8aによる締め付け力が低下しうる。しかし、弾性を有するゴムテープ10aをその外側から巻き付けることにより、外径が小さくなった場合であっても、中間成形体への締め付け力が効果的に維持されうる。このゴムテープ10aの締め付け力により、織物テープ8aに樹脂が移行しやすくなる。また、このゴムテープ10aの締め付け力により、FRP管状体内のボイドが低減されうる。
【0132】
比(T2a/T1a)が大きいほど、織物テープ8aに移行する樹脂量が多くなる。この観点から、比(T2a/T1a)は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。比(T2a/T1a)が過度に大きい場合、皺の発生又はゴムテープの損傷が発生しやすくなる。この観点から、比(T2a/T1a)は2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましい。
【0133】
なお、織物テープ8aに移行する樹脂を増加させることを重視する場合、比(T2a/T1a)が大きめに設定されるのが好ましく、具体的には、比(T2a/T1a)は1.0より大きくするのがよく、更には1.1以上が好ましく、特に1.2以上が好適であり、この場合において、比(T2a/T1a)の上限については、皺の発生を抑制する観点から、2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましい。
【0134】
また、皺の発生を抑制することを重視する場合、比(T2a/T1a)は小さめに設定されるのが好ましく、具体的には、比(T2a/T1a)は1.0未満が好ましく、0.95以下がより好ましく、0.8以下が更に好ましく、この場合において、織物テープ8aへ移行する樹脂量を所定量確保するために、比(T2a/T1a)は0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。
【0135】
第二巻き付け工程において、ゴムテープに代えて樹脂フィルムテープが用いられる場合、この樹脂フィルムテープの引張応力M2aは、織物テープの引張応力T1aよりも大きいのが好ましい。即ち、M2a>T1aが好ましい。樹脂フィルムテープは、ゴムテープに比較して弾性に乏しく、シャフト成形温度に昇温されると引張応力が低下しやすい。この引張応力の低下は、樹脂フィルムテープによる押圧力(シャフト内側に向かう圧力)の低下を招来する。そのため、樹脂フィルムテープの場合、M2a>T1aとすることにより、シャフト成形温度における引張応力の低下を抑制しておくのが好ましい。一方、ゴムテープは、その弾性に起因して、シャフト成形温度にまで昇温された場合であってもシャフトへの圧力がほとんど低下しない。よってゴムテープの場合、皺等の不具合を効果的に抑制するためには、T2a<T1aとされるのが好ましい。ただし、T2a>T1aとすれば、織物テープへ移行する樹脂量を多くすることができることは、前述した通りである。
【0136】
ゴムテープ10aの基材14aは、ゴム組成物を加硫成形してなるものが好ましい。このゴム組成物の基材ゴムとして、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル化ニトリルゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−酢酸ビニルゴム(EVA)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エチレン−アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩化ポリエチレン(CM)、エピクロルヒドリンゴム(CO)、ウレタン系ゴム、シリコーン系ゴム及びフッ素系ゴムから選択される1種又は2種以上が挙げられる。耐熱性、耐久性、引張強度及び離型性を総合的に考慮した総合性能に優れるという理由で、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)又はフッ素ゴムを基材ゴム100質量部に対して50質量部以上含む基材ゴムが好ましい。上記ゴム組成物は、加硫剤を含むのが好ましく、硫黄架橋とするのが好ましい。上記ゴム組成物は、必要に応じて、加硫促進剤、架橋開始剤、充填剤、可塑剤、老化防止剤等を含んでいてもよい。加硫促進剤として、例えば、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤及びスルフェンアミド系加硫促進剤から選択される1種又は2種以上が挙げられる。可塑剤として、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルセパケート、ジオクチルアジペート及びトリクレジルフォスフェートから選択される1種又は2種以上が挙げられる。充填剤として、カーボンブラック及びシリカが例示され、こららが併用されてもよい。
【0137】
ゴムテープ10aの厚さd2aは限定されない。張力F2aにより切断されることを抑制する観点、及びゴムテープ自身の捻れ等を抑制する観点から、ゴムテープ10aの厚さd2aは300μm以上が好ましく、400μm以上がより好ましく、500μm以上がより好ましく、550μm以上が更に好ましい。ゴムテープの幅方向の一部が重ねられつつ巻き付けられる際において発生する外側テープと内側テープとの境界における過度な段差を抑制するとともにコストを下げる観点から、ゴムテープ10aの厚さd2aは、2000μm以下が好ましく、1800μm以下がより好ましく、1500μm以下がより好ましく、1200μm以下が更に好ましい。
【0138】
ゴムテープ10aの幅W2aは限定されない。張力F2aによる切断されることを抑制する観点から、幅W2aは8mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、12mm以上が更に好ましい。巻き付け時の皺を抑制する観点から、幅W2aは35mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下が更に好ましい。
【0139】
テープ巻き付け工程は、ゴムテープをラッピングテープとして巻き付ける工程を少なくとも含んでいるのが好ましい。より好ましくは、テープ巻き付け工程は、上記第二実施形態の様に、織物テープを巻き付ける工程と織物テープの外側にゴムテープを巻き付ける工程とを含む。
【0140】
次に、ラッピングテープとして織物テープのみが用いられる実施形態について、図9から図11を参照しつつ、説明する。
【0141】
第三実施形態は、ラッピングテープが織物テープのみとされる他は、上記第一実施形態と同様である。
【0142】
図9は、本発明の第三実施形態に係る製造方法を説明するための図である。ここでは、管状体の製造方法の一例として、ゴルフクラブシャフトの製造方法が説明される。この製造方法では、先ず、マンドレル2bと繊維強化樹脂部材4bとが用意される。マンドレル2bは、芯金とも称される。典型的なマンドレル2bの材質は、鋼等の金属である。マンドレル2bの中心軸線は、略直線である。マンドレル2bの断面形状は、円形である。マンドレル2bは、テーパーを有している。このテーパーにより、マンドレル2bは、その一端に近づくほど細くなされている。マンドレル2bは、部分的にパラレルであってもよい。換言すれば、マンドレル2bは、部分的に直径が一定の部分を有していても良い。マンドレル2bの全体においてその直径が一定であってもよい。
【0143】
マンドレル2bは、前述したマンドレル2と同様である。
【0144】
本製造方法では、先ず、マンドレルに、繊維強化樹脂部材が巻回される工程がなされる。
【0145】
プリプレグ4bは、前述したプリプレグ4と同様である。
【0146】
巻回工程の前に、プリプレグ4bは、所望の形状に切断される。図9の実施形態では、6枚のプリプレグ4bが用いられる。図9の実施形態では、切断されたプリプレグ4bの例として、シートe1からe6が示されている。プリプレグ4bは、いわゆるアングル層用シートe1、e2と、ストレート層用シートe3、e5、e6と、フープ層用シートe4とを含む。プリプレグ4bは、シャフトの全長に亘って設けられる全長シートe1からe5と、シャフト長手方向の一部に設けられる部分シートe6とを含む。なお、プリプレグ4bの仕様は限定されない。プリプレグ4bの形状、厚み、繊維種類、繊維含有率等は限定されない。
【0147】
巻回工程では、シートe1からシートe6までが、順次マンドレル2bに巻回される。図示されていないが、巻回に先立ち、シートe2は、シートe1に貼り合わせられる。この貼り合わせされてなるシート群がマンドレル2bに巻回される。この貼り合わせにおいて、シートe2は、裏返される。この裏返しにより、シートe1の繊維とシートe2の繊維とは、互いに逆方向に配向する。図9において各シートe1からe6に記載された角度は、シャフト軸方向と繊維の配向方向とのなす角度を示している。この巻回工程は、前述した第一実施形態と同様である。
【0148】
次に、テープ巻き付け工程がなされる。このテープ巻き付け工程では、中間成形体6bの外周面にラッピングテープが巻き付けられる。図10及び図11は、テープ巻き付け工程の様子を示す一部断面斜視図である。図10及び図11の断面において、中間成形体6bは、単一の層として簡略的に示されている。実際には、中間成形体6bは、前述したように複数の層よりなる。
【0149】
テープ巻き付け工程におけるラッピングテープは、織物テープ8bである。本実施形態において、ラッピングテープとして織物テープのみが用いられる。テープ巻き付け工程では、織物テープ8bのみが巻き付けられる。織物テープ8bは、織物を基材とするテープである。織物テープ8bは、織物である基材の表面にコーティング剤等を有していてもよい。
【0150】
テープ巻き付け工程の様子が、図10で示される。テープ巻き付け工程では、中間成形体6bの外周面に織物テープ8bが直接巻き付けられる。中間成形体6bの外周面と織物テープ8bとは当接している。織物テープ8bは中間成形体6bの外周面に接触している。
【0151】
図10が示すように、テープ巻き付け工程において、織物テープ8bは、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、中間成形体6bの軸線方向と織物テープ8bの長手方向とは互いに垂直とされない。織物テープ8bは、中間成形体6bに隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、織物テープ8bの幅W1bは、巻き付けピッチP1bよりも広い。巻き付けピッチP1bは、図10において両矢印で示されている。つまり、織物テープ8bは、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。巻き付けピッチP1bは、一定である。中間成形体6bのチップ端からバット端にかけて、巻き付けピッチP1bは一定である。この織物テープ8bの巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。織物テープ8bは、中間成形体6bの全長に亘って巻き付けられる。テープ巻き付け工程の結果、中間成形体6bの全体が織物テープ8bにより覆われる。なお、織物テープ8bの両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により中間成形体6bに固定される。この両端の固定により、織物テープ8bの巻き付けが自然に解けることはない。
【0152】
後述されるように、その後の工程において、中間成形体6bに含まれる樹脂が、織物テープ8bへと移行する。即ち中間成形体6bに含まれる樹脂は、織物テープ8bへと吸収されるか、又は、織物テープ8bを透過して外部に排出される。
【0153】
織物テープ8bに吸収される樹脂量を増加させる観点から、織物テープ8bのラッピング層数L1は多いのが好ましい。なお、ラッピング層数L1とは、中間成形体6bに巻き付けられた織物テープ8bの層数である。ラッピング層数L1は、中間成形体6bの表面上の各点のそれぞれにおいて定まる。前述した螺旋状の巻き付けにおいて、仮に巻き付けピッチP1bが織物テープの幅W1bよりも大きい場合、巻き付け工程後の中間成形体6bには、ラッピング層数L1が0層である部分と、ラッピング層数L1が1層である部分とが存在することになる。また、比(P1b/W1b)が0.5を超えて1.0未満である場合、巻き付け工程後の中間成形体6bには、ラッピング層数L1が1層である部分と、ラッピング層数L1が2層である部分とが存在することになる。
【0154】
ラッピング層数L1を多くするための方法として、次の(方法A)及び(方法B)が採用されうる。
(方法A)巻き付けピッチP1bの、織物テープの幅W1bに対する比(P1b/W1b)が小さくされる。
(方法B)複数回の巻き付けがなされる。
【0155】
(方法A)は、一回の巻き付けでラッピング層数L1を増加することができるため、生産性の向上に寄与しうる。一方、(方法B)は、チップ側からバット側への巻き付け、及び/又はチップ側からバット側への巻き付けを繰り返す必要が生じるので、(方法A)と比較して生産性に劣る。生産性の観点からは、(方法B)よりも(方法A)が好ましい。ただし、織物テープ8bの厚さや柔軟性等によっては、比(P1b/W1b)を小さくしてラッピング層数L1を増加させることには限界が生じる場合がある。この場合、(方法B)が有効に用いられうる。
【0156】
ラッピング層数L1を多くして樹脂吸収量を高める観点から、比(P1b/W1b)は、0.70以下が好ましく、0.50以下がより好ましく、0.40以下が更に好ましく、0.33以下が更に好ましい。なお、比(P1b/W1b)が過度に小さくされ、ラッピング層数L1が過度に多くされた場合、樹脂吸収量の増加がほとんどみられない一方で生産性が低下しうる。この観点から、比(P1b/W1b)は、0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましく、0.10以上が更に好ましい。
【0157】
織物テープ8bの巻き付けは、張力F1bを付与しつつなされる。この張力F1bにより、中間成形体6bは、織物テープ8bにより締め付けられる。織物テープ8bの巻き付けにより、織物被覆体12bが得られる。織物被覆体12bは、中間成形体6bが織物テープ8bで覆われてなる。
【0158】
図11は、上記(方法B)が採用される場合における二回目の巻き付けの様子が示された一部断面斜視図である。二回目の巻き付けでは、織物被覆体12bの外周面に織物テープ10bが直接巻き付けられる。織物被覆体12bの外周面と織物テープ10bとは当接する。織物テープ10bは織物被覆体12bの外周面に接触している。つまり織物テープ10bは織物テープ8bに接触している。なお、織物テープ8bと織物テープ10bとは、同一のテープであってもよいし、異なるテープであってもよい。
【0159】
図11が示すように、二回目の巻き付けにおいて、織物テープ10bは、螺旋状に巻き付けられる。この二回目の巻き付けは、前述した一回目の巻き付けと同様になされうる。生産性の観点からは、この二回目の巻き付けは実施されないのが好ましい。差(Z2−Z1)を大きくする観点からは、この二回目の巻き付けがなされるのが好ましい。
【0160】
織物テープ10bの巻き付けは、張力F2bを付与しつつなされる。この張力F2bにより、織物被覆体12bは、織物テープ10bにより締め付けられる。張力F2bと張力F1bとは、同一であってもよいし、異なっていても良い。
【0161】
なお織物被覆体12bの表面には、織物テープ8bによる螺旋模様が形成されているが、図11においては、この織物テープ8bによる螺旋模様の記載が省略されている。
【0162】
図11の実施形態では、織物テープがチップ端からバット端にかけて巻き付けられる。この実施形態では、巻き付けが二回繰り返されている。このように、巻き付けを繰り返すことにより、ラッピング層数L1を調整することができ、樹脂吸収量の調整が可能である。なお生産性の観点から、織物テープが一方向に向かって巻き付けられる巻き付けの回数(以下、単に巻き付け回数ともいう)は、三回以下が好ましく、二回以下がより好ましく、一回が特に好ましい。この「一方向」とは、チップ側からバット側へと向かう方向でもよいし、バット側からチップ側へと向かう方向でもよい。
【0163】
巻き付け工程の後に、硬化工程がなされる。この硬化工程は、前述した第一実施形態と同様である。
【0164】
硬化工程の後、マンドレル2bの引き抜き及び織物テープの除去を行い硬化管状体を得る工程がなされる。マンドレル2bの引き抜き及び織物テープの除去は、どちらが先になされてもよい。作業性の観点から、好ましくは、マンドレル2bが引き抜かれた後に織物テープが除去される。
【0165】
なお、織物テープ8bに発生する皺を抑制する観点から、織物テープ8bの内面にコーティング剤が設けられても良い。織物テープ8bの内面とは、中間成形体6bと当接する面である。このコーティング剤として、フッ素系化合物又はシリコン系化合物が好ましい。
【0166】
第三実施形態では、第一実施形態と同様に、ボイドの大型化及びボイド率が抑制される。更に、第三実施形態では、製造工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8bに移行しうる。織物テープ8bは、織られた繊維の間に空隙や穴を有している。よって織物テープ8bは、樹脂を吸収及び/又は透過させうる。織物テープ8bにより、マトリクス樹脂が成形体の外部に排出されやすくなり、管状体の繊維含有率が向上しうる。これにより、管状体の軽量化が達成される。
【0167】
FRP管状体の繊維含有率を高くする手段として、繊維含有率が高い繊維強化樹脂部材を用いることが考えられる。繊維含有率が高いことは、樹脂含有率が低いことを意味する。樹脂含有率が低い繊維強化樹脂部材は、タック性(粘着性)が低い。なぜならタック性は樹脂に起因するものだからである。よって、樹脂含有率が低い繊維強化樹脂部材は、繊維強化樹脂部材同士の密着性が低い。このような粘着性の低い繊維強化樹脂部材は、一旦巻回されても解けやすい。このようなタック性の低い繊維強化樹脂部材では、マンドレル2への巻き付け作業が行いにくく、且つ、巻き付けの際に皺が発生しやすい。また、密着性が悪いため、渦巻き状に巻き付けられた繊維強化樹脂部材層の層間に空気が含まれやすくなり、管状体の強度や耐久性が損なわれる。粘着性の低い繊維強化樹脂部材は、生産性の低下や成形不良を招きやすい。
【0168】
第三実施形態では、上記中間成形体の外側に直接織物テープ8bを張力を付与しつつ巻き付ける。この製造方法により、加熱工程中において繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8bに吸収される。この吸収により、繊維含有率の高い繊維強化樹脂部材を用いることなく、FRP管状体の繊維含有率を高くすることができる。更に、織物テープ8bは、中間成形体6bに含まれる空気も吸収又は透過させうる。これにより、ボイドの原因となる空気が抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。また、ラッピング層数L1が複数とされることにより、織物テープ8bが中間成形体6bに大きな圧力を付与することができる。このためボイドの原因となる空気が一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。
【0169】
織物テープ8bによる樹脂の吸収は、繊維強化樹脂部材を巻回した後になされる。本発明では、粘着性が過度に低い繊維強化樹脂部材を用いることなく、繊維含有率の高いFRP管状体が得られうる。本実施形態では、繊維強化樹脂部材の巻回が行いやすく、且つ繊維含有率の向上が達成されうる。製造工程中に繊維含有率を向上させているので、成形性及び生産性を維持しながら軽量化が達成されている。
【0170】
本実施形態では、ラッピングテープが重なった重複部において、織物テープ同士が重なっている。この重複部において、織物テープの内側に樹脂テープ層が存在しない。よって、重複部を含めた織物テープの全体に樹脂及び空気が移行することができ、樹脂及び空気が織物テープに移行しやすい。
【0171】
中間成形体6bへの圧力を高め、織物テープの樹脂吸収量を増加させる観点から、平均ラッピング層数Laは、1層以上が好ましく、2層以上がより好ましく、3層以上がより好ましく、5層以上が更に好ましい。平均ラッピング層数Laが過度に多い場合、織物テープのコスト増加及び織物テープを剥がす手間の増加が生じうる。また平均ラッピング層数Laが過度に多い場合、中間成形体6bの表面に皺が発生しやすくなる。これらの観点から、平均ラッピング層数Laは、15層以下が好ましく、12層以下がより好ましく、10層以下が更に好ましい。
【0172】
なお、平均ラッピング層数Laは、前述したラッピング層数L1とは異なる概念である。ラッピング層数L1が中間成形体6bの表面上の各点においてそれぞれ定まるのに対し、平均ラッピング層数Laは、ラッピング層数L1の平均値として理解されうる。具体的には、平均ラッピング層数Laは以下の計算式(1)により決定されうる。
La=St/Sn ・・・(1)
ただし、式(1)において、Stは巻き付けられた状態における織物テープの内面の総面積(mm2)であり、Snは巻き付けられた織物テープと接触する部分における中間成形体6bの表面積(mm2)である。この総面積Stは、巻かれている織物テープの長さNt(mm)と織物テープの幅Wa(mm)との積である。即ちSt=Nt×Waである。長さNtは、織物テープの長手方向に沿って測定される。長さNtは、中間成形体6bから解かれた状態において測定される織物テープの長さNkと実質的に等しいか、又は、この長さNkよりも長い。Nt>Nkとなりうる場合は、張力によって引き延ばされた状態で織物テープが巻き付けられている場合である。幅Waは、中間成形体6bから解かれた状態において測定される織物テープの幅W1bと実質的に等しいか、又は、この幅W1bよりも狭い。W1b>Waとなりうる場合は、張力によって引き延ばされた状態で織物テープが巻き付けられている場合である。ラッピング層数L1は0又は1以上の整数であるが、平均ラッピング層数Laは整数とならない場合がある。
【0173】
例えば、比(P1b/W1b)が0.5であり、W1b=Waであり、且つ巻き付け回数が1回である場合、平均ラッピング層数Laは、2層である。この場合、巻き付けピッチP1bの誤差を無視すれば、ラッピング層数L1は、全ての点において、2層である。
【0174】
上記総面積St及び表面積Snは、管状体のチップ端位置Tp1から管状体のバット端位置Bt1までの範囲において測定される。前述したように、管状体製造の仕上げ工程においては、硬化管状体の両端部が切断されてもよい。この両端部の切断がなされた場合、管状体のチップ端位置Tp1と、硬化管状体のチップ端位置Tpとは相違する。前述した両端部の切断がなされない場合、管状体のチップ端位置Tp1と、硬化管状体のチップ端位置Tpとは一致する。同様に、前述した両端部の切断がなされた場合、管状体のバット端位置Bt1と、硬化管状体のバット端位置Btとは相違する。前述した両端部の切断がなされない場合、管状体のチップ端位置Tp1と、硬化管状体のチップ端位置Tpとは一致する。図9には、両端部の切断がなされた場合におけるチップ端位置Tp1及びバット端位置Bt1が示されている。
【0175】
中間成形体6bへの圧力を高め、織物テープの樹脂吸収量を増加させる観点から、ラッピング層数L1は、チップ端位置Tp1からバット端位置Bt1までの全ての点において、1層以上が好ましく、2層以上がより好ましく、3層以上がより好ましく、5層以上が更に好ましい。ラッピング層数L1が過度に多い場合、織物テープのコスト増加及び織物テープを剥がす手間の増加が生じうる。またラッピング層数L1が過度に多い場合、中間成形体6bの表面に皺が発生しやすくなる。これらの観点から、ラッピング層数L1は、チップ端位置Tp1からバット端位置Bt1までの全ての点において、15層以下が好ましく、12層以下がより好ましく、10層以下が更に好ましい。
【0176】
平均ラッピング層数Laの値に関わらず、巻き付け回数が1回である場合、巻き付け部分の両端部には、ラッピング層数L1が1回である部分が存在する。例えば、平均ラッピング層数Laが2層以上とされた場合であっても、巻き付け回数が1回である限り、巻き付けの開始部分及び巻き付けの終了部分には、ラッピング層数L1が1回である部分が存在する。巻き付けの開始点に隣接し且つラッピング層数L1が1層である部分Xtは、他の部分に比べて織物テープへの樹脂の移行が少ない傾向にある。よって、部分Xtが切除されてなる管状体(シャフト)がより好ましい。同様に、巻き付けの終了点に隣接し且つラッピング層数L1が1回である部分Ytは、他の部分に比べて織物テープへの樹脂の移行が少ない傾向にある。よって、部分Ytが切除されてなる管状体(シャフト)がより好ましい。なお、ラッピング層数L1が2層以上である部分を軸方向両側に有する部分は、ラッピング層数L1が1層であったとしても、上記部分Xtには該当しない。同様に、ラッピング層数L1が2層以上である部分を軸方向両側に有する部分は、ラッピング層数L1が1層であったとしても、上記部分Ytには該当しない。上記軸方向とは、管状体の軸方向を意味する。
【0177】
巻き付け工程において、チップ側とバット側との間で織物テープ8bを往復させて巻き付けてもよい。例えば、織物テープ8bをバット側からチップ側に向かって螺旋状に巻き付け、引き続き、織物テープ8bをチップ側からバット側に向かって螺旋状に巻き付けてもよい。このような往復方式の巻き付けにより、巻き付け回数が増加されてもよい。なお本明細書では、このような往復方式の巻き付けにより一往復の巻き付けがなされた場合であっても、巻き付け回数は2回であると定義される。織物テープ8bが途中で切断されることなく一往復の巻き付けがなされた場合であっても、巻き付け回数は2回であると定義される。前述した通り、生産性の観点から、平均ラッピング層数Laを増加させる方法としては、巻き付け回数が1回とされ且つ比(P1b/W1b)が小さくされる方法が好ましい。
【0178】
前述したように、織物テープ8bは張力F1bが付与されつつ巻き付けられている。ここで、上記テープ巻き付け工程において織物テープ8bに付与される引張応力T1bが定義される。引張応力T1bは、上記張力F1bを、織物テープ8bの断面積Sdで割った値である。即ち、[T1b=F1b/Sd]である。この断面積Sdは、張力が作用していない(フリーな)状態の織物テープ8bにおいて測定される。この引張応力T1bは、巻き付けられる直前において織物テープ8bに作用する引張応力を意味する。この引張応力T1bは、巻き付けられた状態において織物テープ8bに作用する引張応力を意味しない。
【0179】
織物テープ8bに移行する樹脂の量を大きくするとともに、織物テープ8bのたるみを抑制する観点から、引張応力T1bは5Mpa以上が好ましく、10Mpa以上がより好ましく、20Mpa以上がより好ましく、25Mpa以上がより好ましく、30Mpa以上が更に好ましい。管状体の表面に発生する段差を抑制し、管状体表面を滑らかにするための研磨量を抑える観点から、引張応力T1bは150Mpa以下が好ましく、100Mpa以下がより好ましく、60Mpa以下が更に好ましい。
【0180】
なお、樹脂吸収量を高める観点から、平均ラッピング層数Laと、織物テープ8bの厚さd1(μm)との積(La×d1)は、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上がより好ましく、500以上が更に好ましい。生産性の観点から、この積(La×d1)は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、1500以下がより好ましく、1200以下が更に好ましい。
【実施例】
【0181】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0182】
実施例1から9は、織物テープ及び樹脂フィルムテープを用いた実施例である。これらの実施例1から9が、下記の表1に示される。比較例1から13は、実施例1から9に対応する比較例である。これらの比較例1から13が、下記の表2に示される。
【0183】
実施例1aから9aは、織物テープ及びゴムテープを用いた実施例である。これらの実施例1aから9aが、下記の表3に示される。比較例1aから13aは、実施例1aから9aに対応する比較例である。これらの比較例1aから13aが、下記の表4に示される。
【0184】
実施例1bから9bは、織物テープのみを用いた実施例である。これらの実施例1bから9bが、下記の表5に示される。比較例1bから13bは、実施例1bから9bに対応する比較例である。これらの比較例1bから13bが、下記の表6に示される。
【0185】
先ず、評価方法について説明する。
【0186】
[順式フレックスの測定]
硬化管状体のバット端Btから75mm隔てた位置の上側と、このバット端Btから215mm隔てた位置の下側とが支持点とされた。これらの二点が支持された状態で、硬化管状体の軸線方向が水平とされた。次に、バット端Btから1039mm隔てた荷重点Kに、2.7kgの錘りを掛けた。錘りにより硬化管状体が曲がり、上記荷重点Kが下方へと移動した。荷重点Kの鉛直方向における移動量が、順式フレックスFjとして下記の表に示される。
【0187】
[しわの程度]
硬化管状体の表面に生じたしわ(皺)の程度が、外観の目視により評価された。次の5段階により評価がなされた。この評価が、下記の表で示される。評価点数が小さいほど、評価が高い。
評価1:しわが無い。
評価2:長さが1mm以上2mm未満の皺が有る。
評価3:長さが2mm以上3mm未満の皺が有る。
評価4:長さが3mm以上4mm未満の皺が有る。
評価5:長さが4mm以上の皺が有る。
【0188】
[織物テープの厚さ]
織物テープの厚さd1は、JIS L 1096に準拠して、デジマチックマイクロメータを用いて測定された。240g/cm2の一定圧力を付与させて10秒間経過した後、240g/cm2の圧力のもとで測定がなされた。測定は5箇所で行われた。5箇所のデータの平均値が、「厚さd1」として下記の表に示される。
【0189】
[ボイド率Rb]
ボイド率Rbは、シャフト先端から90mm隔てた地点の断面の画像によりボイド面積Sb及びシャフト断面積Smを求め、下記式により算出した。
Rb(%)=(Sb/Sm)×100
【0190】
ゴルフクラブシャフトにおいては、先端部にヘッドが取り付けられるため、先端部における強度が特に重要である。ボイド率Rbは、シャフト強度との相関が高い。
【0191】
[三点曲げ強度]
SG式三点曲げ強度試験が採用された。これは、製品安全協会が定める試験である。図12は、SG式三点曲げ強度試験の測定方法を示す。図12が示すように、2つの支持点e1、e2においてシャフト20を下方から支持しつつ、荷重点e3において上方から下方に向かって荷重Fを加える。荷重点e3の位置は、支持点e1と支持点e2とを二等分する位置である。荷重点e3が、測定点である。測定点は、T点、A点、B点及びC点とされた。T点は、チップ端位置Tpから90mmの点である。A点は、チップ端位置Tpから175mmの点である。B点は、チップ端位置Tpから525mmの点である。C点は、バット端位置Btから175mmの点である。シャフト20が破損したときの荷重Fの値(ピーク値)が測定された。T点が測定される場合、上記スパンSは、150mmとされた。A点、B点及びC点が測定される場合、上記スパンSは、300mmとされた。
【0192】
T点における三点曲げ強度の測定結果が、下記の表に示される。A点、B点及びC点における三点曲げ強度に関しては、後述される。
【0193】
[生産性]
以下の基準に従い、4段階で評価された。評価Aが、最も生産性が高く、良好である。評価Dは、最も生産性が低い。
A・・・硬化工程における加熱時間が4時間以内である。
B・・・硬化工程における加熱時間が4時間を超えて24時間以内である。
C・・・硬化工程における加熱時間が24時間を超えて72時間以内である。
D・・・硬化工程における加熱時間が72時間を超える。
【0194】
次に、織物テープ及び樹脂フィルムテープを用いた実施例について説明する。
【0195】
[実施例1]
図1で示すマンドレルに離型剤を塗布した後、このマンドレルに6枚のプリプレグを巻き付け、中間成形体を得た。これら6枚のプリプレグの構成は、図1で示された通りとされた。シートs1からs6のプリプレグ種類及びプリプレグ構成が、下記の表7で示されている。シートs1からs6は、いずれも東レ社製のプリプレグである。表7における「先端ply数」とは、チップ端Tpにおけるプリプレグの巻回数を示している。表7における「繊維角度」は、シャフト軸線方向に対する炭素繊維の配向角度である。各プリプレグにおいてマトリクス樹脂はエポキシ樹脂である。各プリプレグの品番及び炭素繊維の種類(品番)は表7で示す通りである。
【0196】
次に、上記中間成形体の外周面にラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程がなされた。テープ巻き付け工程は、横手鉄工所製のラッピング機によりなされた。テープ巻き付け工程として、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とが行われた。第一巻き付け工程は、一定の張力F1を付与しつつなされた。第二巻き付け工程は、一定の張力F2を付与しつつなされた。張力F1及び張力F2は、日本電産シンポ社製のロードセルにより測定された。これらの張力F1、F2に基づき、引張応力T1及び引張応力T2が算出された。
【0197】
第一巻き付け工程では、織物テープが巻き付けられた。この織物テープとして、キンキテープ社が販売する商品名「ナイロンタフタ」が用いられた。このナイロンタフタは、ナイロン繊維が平織りで織られた織物テープである。このナイロン繊維を構成するナイロンの種類は、ナイロン6である。この織物テープの幅W1は15mmであり、厚さd1は100μmであった。第一巻き付け工程における引張応力T1は35Mpaとされた。第一巻き付け工程において、巻き付けピッチP1は1.5mmとされた。
【0198】
第一巻き付け工程の平均ラッピング層数Laは、10とされた。比(P1/W1)が0.1とされた。
【0199】
第一巻き付け工程の後、第二巻き付け工程がなされた。第二巻き付け工程では、樹脂フィルムテープが巻き付けられた。この樹脂フィルムテープとして、ポリプロピレン(PP)フィルムテープが用いられた。このPPフィルムテープとして、信越フィルム社製のPT30Hが用いられた。このフィルムテープの片面には、シリコン系のコーティング剤が設けられている。このコーティング剤層を内側にして、このPPフィルムテープが巻き付けられた。このPPフィルムテープの幅W2は25mmであり、厚さd2は30μmであった。第二巻き付け工程における引張応力T2は85Mpaとされた。第二巻き付け工程において、巻き付けピッチP2は2mmとされた。
【0200】
第二巻き付け工程の後に、硬化工程がなされた。硬化工程では、第一加熱ステップの後に、第二加熱ステップがなされた。第一加熱ステップは、温度が70℃とされ、時間が150分とされた。第二加熱ステップでは、温度が130℃とされ、時間が30分とされた。
【0201】
次に、マンドレルが引き抜かれた。次に、樹脂フィルムテープ及び織物テープが除去され、実施例1に係る硬化管状体を得た。実施例1の仕様と評価結果が下記の表1で示される。
【0202】
[実施例2から9]
表1で示される仕様以外は実施例1と同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表1で示される。
【0203】
[比較例1から4]
第二巻き付け工程がなされず、且つ、各仕様が表2に示される通りとされた。その他については実施例1と同様にして、比較例1から4の硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表2で示される。
【0204】
なお、比較例2では、ラッピングテープとして、PETフィルムテープが用いられた。このPETフィルムテープとして、信越フィルム社製の商品名「PET−25K」が用いられた。比較例3では、ラッピングテープとして、一体化テープが用いられた。この一体化テープは、幅が15mmで且つ厚さが100μmであるナイロンタフタと、幅15mmで且つ厚さが30μmのPPフィルムテープとが、加熱及び圧着により一体化されたテープである。この一体化テープの厚みは、115μmである。比較例1のPPフィルムテープは、実施例1のそれと同じである。比較例4のPPフィルムテープは、幅及び厚さが実施例1のそれと異なる。
【0205】
[比較例5から13]
表2で示される仕様以外は実施例1と同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表2で示される。
【0206】
実施例及び比較例において、順式フレックスFjに差異が見られるのは、差(Z2−Z1)の相違及びマトリクス樹脂の硬化度合いの相違に起因する。ただし、比較例4では、ストレート層用のプリプレグを薄いものに変更した。
【0207】
【表1】
【0208】
【表2】
【0209】
差(Z2−Z1)は、製造工程中において排出された樹脂の量(樹脂の減少量)を示している。差(Z2−Z1)が大きいことは、軽量化に寄与する。
【0210】
樹脂の減少量が大きい場合、硬化管状体の外径が小さくなる。硬化管状体の外径が小さい場合、順式フレックスFjは、より大きくなる。表1及び表2では、順式フレックスFjの逆数(1/Fj)を硬化管状体の質量Wtで割った値[1/(Fj×Wt)]が示されている。[1/(Fj×Wt)]が大きいことは、単位質量当たりの剛性が向上していることを意味する。[1/(Fj×Wt)]が大きいほど、軽量性に優れる。
【0211】
実施例1及び実施例6は、マトリクス樹脂が若干不十分であるため、三点曲げ強度がやや低い。実施例2、3、4、7及び8の結果は良好である。実施例5及び9は、第一加熱ステップの時間が長いため、生産性が良くない。
【0212】
比較例1及び2は、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。比較例3では、一体化テープを用い、引張応力は高めに設定したが、差(Z2−Z1)は実施例よりも小さい。比較例3では、ラッピングの際にテープがよじれて、皺が発生した。
【0213】
従来製法の比較例4では、実施例と同様の軽量化を達成する目的で、ストレート層用プリプレグの使用量を減らした。その結果、順式フレックスFjが大きくなり、[1/(Fj×Wt)]が悪化した。また、比較例4では、三点曲げ強度が低い。
【0214】
比較例1から5では、第一加熱ステップの時間が短い。このため比較例1から5では、
第二加熱ステップで気泡が熱膨張しやすく、ボイド率が高い。
【0215】
比較例6及び8では、樹脂の硬化が不十分であり、三点曲げ強度が低い。
【0216】
比較例7及び9は、第一加熱ステップの時間が長く、生産性が悪い。
【0217】
比較例10は、第一加熱ステップの温度が低く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0218】
比較例11は、第二加熱ステップの温度が低く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0219】
比較例12は、第一加熱ステップの温度が高く、ボイド率が高い。
【0220】
比較例13は、第二加熱ステップの時間が短く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0221】
なお、A点、B点及びC点における三点曲げ強度は、表に示すT点の強度と同様の傾向となった。即ち、A点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2、3、4、5、7、8及び9)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4、5、6、8、10、11、12及び13)のうちの最高値よりも大きかった。同様に、B点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2、3、4、5、7、8及び9)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4、5、6、8、10、11、12及び13)のうちの最高値よりも大きかった。同様に、C点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2、3、4、5、7、8及び9)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4、5、6、8、10、11、12及び13)のうちの最高値よりも大きかった。
【0222】
次に、織物テープ及びゴムテープを用いた実施例について説明する。
【0223】
[実施例1a]
図5で示すマンドレルに離型剤を塗布した後、このマンドレルに6枚のプリプレグを巻き付け、中間成形体を得た。これら6枚のプリプレグの構成は、図5で示された通りとされた。シートh1からh6のプリプレグ種類及びプリプレグ構成が、下記の表8で示されている。シートh1からh6は、いずれも東レ社製のプリプレグである。表8における「先端ply数」とは、チップ端Tpにおけるプリプレグの巻回数を示している。表8における「繊維角度」は、シャフト軸線方向に対する炭素繊維の配向角度である。各プリプレグにおいてマトリクス樹脂はエポキシ樹脂である。各プリプレグの品番及び炭素繊維の種類(品番)は表8で示す通りである。
【0224】
次に、上記中間成形体の外側にラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程がなされた。テープ巻き付け工程は、横手鉄工所製のラッピング機によりなされた。テープ巻き付け工程として、第一巻き付け工程と第二巻き付け工程とが行われた。第一巻き付け工程は、一定の張力F1aを付与しつつなされた。第二巻き付け工程は、一定の張力F2aを付与しつつなされた。張力F1a及び張力F2aは、日本電産シンポ社製のロードセルにより測定された。これらの張力F1a、F2aに基づき、引張応力T1a及び引張応力T2aが算出された。
【0225】
第一巻き付け工程では、織物テープが巻き付けられた。この織物テープとして、キンキテープ社が販売する商品名「ナイロンタフタ」が用いられた。このナイロンタフタは、ナイロン繊維が平織りで織られた織物テープである。このナイロン繊維を構成するナイロンの種類は、ナイロン6である。この織物テープの幅W1aは15mmであり、厚さd1は100μmであった。第一巻き付け工程における引張応力T1aは15Mpaとされた。第一巻き付け工程における平均ラッピング層数Laは、10とされた。
【0226】
第一巻き付け工程の後、第二巻き付け工程がなされた。第二巻き付け工程では、ゴムテープが巻き付けられた。このゴムテープとして、EPDMゴムが基材ゴムとされたゴムテープが用いられた。このゴムテープには、コーティング剤が設けられていない。このゴムテープとして、三ツ星ベルト社製の商品名「ネオ・ルーフィングE」を下記の幅W2aとなるように切断してなるテープが用いられた。このゴムテープの幅W2aは12.5mmとされ、このゴムテープの厚さd2aは1000μmであった。第二巻き付け工程において、巻き付けピッチP2aは5mmとされた。
【0227】
第二巻き付け工程の後に、硬化工程がなされた。この硬化工程では、第一加熱ステップの後に第二加熱ステップがなされた。第一加熱ステップは、温度が70℃とされ、時間が150分とされた。第二加熱ステップは、温度が130℃とされ、時間が30分とされた。
【0228】
次に、マンドレルが引き抜かれた。次に、ゴムテープ及び織物テープが除去され、実施例1aに係る硬化管状体を得た。実施例1aの仕様と評価結果が下記の表3に示される。
【0229】
[実施例2aから9a]
表3で示される仕様以外は実施例1aと同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表3で示される。
【0230】
[比較例1aから4a]
第二巻き付け工程がなされず、且つ、各仕様が表4に示される通りとされた。その他については実施例1aと同様にして、比較例1aから4aの硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表4に示される。
【0231】
なお、比較例2aでは、ラッピングテープとして、PETフィルムテープが用いられた。このPETフィルムテープとして、信越フィルム社製の商品名「PET−25K」が用いられた。比較例3aでは、ラッピングテープとして、一体化テープが用いられた。この一体化テープは、幅が15mmで且つ厚さが100μmであるナイロンタフタと、幅15mmで且つ厚さが30μmのPPフィルムテープとが、加熱及び圧着により一体化されたテープである。この一体化テープの厚みは、115μmである。比較例1aのPPフィルムテープは、実施例1のそれと同じである。比較例4aのPPフィルムテープは、幅及び厚さが実施例1のそれと異なる。
【0232】
[比較例5aから13a]
表4で示される仕様以外は実施例1aと同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表4に示される。
【0233】
【表3】
【0234】
【表4】
【0235】
実施例1a及び実施例6aは、マトリクス樹脂が若干不十分であるため、三点曲げ強度がやや低い。実施例2a、3a、4a、7a及び8aの結果は良好である。実施例5a及び9aは、第一加熱ステップの時間が長いため、生産性が良くない。
【0236】
比較例1a及び2aは、ラッピングテープが樹脂フィルムテープのみであるため、差(Z2−Z1)が小さい。比較例3aでは、一体化テープを用い、引張応力は高めに設定したが、差(Z2−Z1)は実施例よりも小さい。比較例3aでは、ラッピングの際にテープがよじれて、皺が発生した。
【0237】
従来製法の比較例4aでは、実施例と同様の軽量化を達成する目的で、ストレート層用プリプレグの使用量を減らした。その結果、順式フレックスFjが大きくなり、[1/(Fj×Wt)]が悪化した。また、比較例4aでは、三点曲げ強度が低い。
【0238】
比較例1aから5aでは、第一加熱ステップの時間が短い。このため比較例1aから5aでは、第二加熱ステップで気泡が熱膨張しやすく、ボイド率が高い。
【0239】
比較例6a及び8aでは、樹脂の硬化が不十分であり、三点曲げ強度が低い。
【0240】
比較例7a及び9aは、第一加熱ステップの時間が長く、生産性が悪い。
【0241】
比較例10aは、第一加熱ステップの温度が低く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0242】
比較例11aは、第二加熱ステップの温度が低く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0243】
比較例12aは、第一加熱ステップの温度が高く、ボイド率が高い。
【0244】
比較例13aは、第二加熱ステップの時間が短く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0245】
なお、A点、B点及びC点における三点曲げ強度は、表に示すT点の強度と同様の傾向となった。即ち、A点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2a、3a、4a、5a、7a、8a及び9a)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4a、5a、6a、8a、10a、11a、12a及び13a)のうちの最高値よりも大きかった。同様に、B点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2a、3a、4a、5a、7a、8a及び9a)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4a、5a、6a、8a、10a、11a、12a及び13a)のうちの最高値よりも大きかった。同様に、C点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2a、3a、4a、5a、7a、8a及び9a)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4a、5a、6a、8a、10a、11a、12a及び13a)のうちの最高値よりも大きかった。
【0246】
次に、織物テープのみを用いた実施例について説明する。
【0247】
[実施例1b]
図9で示すマンドレルに離型剤を塗布した後、このマンドレルに6枚のプリプレグを巻き付け、中間成形体を得た。これら6枚のプリプレグの構成は、図9で示された通りとされた。シートe1からe6のプリプレグ種類及びプリプレグ構成が、下記の表9で示されている。シートe1からe6は、いずれも東レ社製のプリプレグである。表9における「先端ply数」とは、チップ端位置Tpにおけるプリプレグの巻回数を示している。表9における「繊維角度」は、シャフト軸線方向に対する炭素繊維の配向角度である。各プリプレグにおいてマトリクス樹脂はエポキシ樹脂である。各プリプレグの品番及び炭素繊維の種類(品番)は表9で示す通りである。
【0248】
次に、上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付けるテープ巻き付け工程がなされた。テープ巻き付け工程は、横手鉄工所製のラッピング機によりなされた。巻き付け工程において、巻き付け回数は1回とされた。テープ巻き付け工程は、一定の張力F1bを付与しつつなされた。張力F1bは、日本電産シンポ社製のロードセルにより測定された。これらの張力F1bに基づき、引張応力T1bが算出された。
【0249】
テープ巻き付け工程では、織物テープのみが巻き付けられた。この織物テープとして、キンキテープ社が販売する商品名「ナイロンタフタ」が用いられた。このナイロンタフタは、ナイロン繊維が平織りで織られた織物テープである。このナイロン繊維を構成するナイロンの種類は、ナイロン6である。この織物テープの幅W1bは15mmであり、厚さd1は100μmであった。テープ巻き付け工程における引張応力T1bは50Mpaとされた。平均ラッピング層数Laは2とされた。
【0250】
巻き付け工程の後に、硬化工程がなされた。この硬化工程では、第一加熱ステップの後に第二加熱ステップがなされた。第一加熱ステップは、温度が70℃とされ、時間が150分とされた。第二加熱ステップは、温度が130℃とされ、時間が30分とされた。
【0251】
次に、マンドレルが引き抜かれた。次に、織物テープが除去され、実施例1bに係る硬化管状体を得た。実施例1bの仕様と評価結果とが下記の表5で示される。
【0252】
[実施例2bから9b]
表5で示される仕様以外は実施例1bと同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表5で示される。
【0253】
[比較例1bから4b]
織物テープに代えて他のテープが用いられ、且つ、各仕様が表6に示される通りとされた。その他については実施例1bと同様にして、比較例1bから4bの硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表6に示される。
【0254】
なお、比較例2bでは、ラッピングテープとして、PETフィルムテープが用いられた。このPETフィルムテープとして、信越フィルム社製の商品名「PET−25K」が用いられた。比較例3bでは、ラッピングテープとして、一体化テープが用いられた。この一体化テープは、幅が15mmで且つ厚さが100μmであるナイロンタフタと、幅15mmで且つ厚さが30μmのPPフィルムテープとが、加熱及び圧着により一体化されたテープである。この一体化テープの厚みは、115μmである。比較例1bのPPフィルムテープは、実施例1のそれと同じである。比較例4bのPPフィルムテープは、幅及び厚さが実施例1のそれと異なる。
【0255】
[比較例5bから13b]
表6で示される仕様以外は実施例1bと同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果とが下記の表6に示される。
【0256】
【表5】
【0257】
【表6】
【0258】
実施例1b及び実施例6bは、マトリクス樹脂が若干不十分であるため、三点曲げ強度がやや低い。実施例2b、3b、4b、7b及び8bの結果は良好である。実施例5b及び9bは、第一加熱ステップの時間が長いため、生産性が良くない。
【0259】
比較例1b及び2bは、ラッピングテープが樹脂フィルムテープであるため、差(Z2−Z1)が小さい。比較例3bでは、一体化テープを用い、引張応力は高めに設定したが、差(Z2−Z1)は実施例よりも小さい。比較例3bでは、ラッピングの際にテープがよじれて、皺が発生した。
【0260】
従来製法の比較例4bでは、実施例と同様の軽量化を達成する目的で、ストレート層用プリプレグの使用量を減らした。その結果、順式フレックスFjが大きくなり、[1/(Fj×Wt)]が悪化した。また、比較例4bでは、三点曲げ強度が低い。
【0261】
比較例1bから5bでは、第一加熱ステップの時間が短い。このため比較例1bから5bでは、第二加熱ステップで気泡が熱膨張しやすく、ボイド率が高い。
【0262】
比較例6b及び8bでは、樹脂の硬化が不十分であり、三点曲げ強度が低い。
【0263】
比較例7b及び9bは、第一加熱ステップの時間が長く、生産性が悪い。
【0264】
比較例10bは、第一加熱ステップの温度が低く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0265】
比較例11bは、第二加熱ステップの温度が低く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0266】
比較例12bは、第一加熱ステップの温度が高く、ボイド率が高い。
【0267】
比較例13bは、第二加熱ステップの時間が短く、硬化が十分でない。このため、順式フレックスFjが大きい。
【0268】
なお、A点、B点及びC点における三点曲げ強度は、表に示すT点の強度と同様の傾向となった。即ち、A点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2b、3b、4b、5b、7b、8b及び9b)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4b、5b、6b、8b、10b、11b、12b及び13b)のうちの最高値よりも大きかった。同様に、B点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2b、3b、4b、5b、7b、8b及び9b)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4b、5b、6b、8b、10b、11b、12b及び13b)のうちの最高値よりも大きかった。同様に、C点の三点曲げ強度に関し、7個の実施例(実施例2b、3b、4b、5b、7b、8b及び9b)のうちの最低値は、8個の比較例(比較例4b、5b、6b、8b、10b、11b、12b及び13b)のうちの最高値よりも大きかった。
【0269】
【表7】
【0270】
【表8】
【0271】
【表9】
【0272】
このように、実施例は、比較例に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0273】
本発明は、ゴルフクラブシャフトをはじめとして、あらゆるFRP管状体に適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0274】
【図1】図1は、本発明の一実施形態で用いられうるマンドレル及びプリプレグを示す図である。
【図2】図2は、本発明における第一巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図3】図3は、本発明における第二巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図4】図4は、樹脂フィルムテープの断面図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施形態で用いられうるマンドレル及びプリプレグを示す図である。
【図6】図6は、本発明における第一巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図7】図7は、本発明における第二巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図8】図8は、ゴムテープの断面図である。
【図9】図9は、本発明の他の実施形態で用いられうるマンドレル及びプリプレグを示す図である。
【図10】図10は、本発明におけるテープ巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。
【図11】図11は、本発明におけるテープ巻き付け工程の他の例を示す一部断面斜視図である。
【図12】図12は、三点曲げ強度の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0275】
2・・・マンドレル
4・・・プリプレグ
6・・・中間成形体
8・・・織物テープ
10・・・樹脂フィルムテープ
12・・・織物被覆体
s1、s2、s3、s4、s5、s6・・・切断されたプリプレグシート
2a・・・マンドレル
4a・・・プリプレグ
6a・・・中間成形体
8a・・・織物テープ
10a・・・ゴムテープ
12a・・・織物被覆体
h1、h2、h3、h4、h5、h6・・・切断されたプリプレグシート
2b・・・マンドレル
4b・・・プリプレグ
6b・・・中間成形体
8b・・・織物テープ
10b・・・織物テープ
12b・・・織物被覆体
e1、e2、e3、e4、e5、e6・・・切断されたプリプレグシート
20・・・シャフト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体を得る工程と、
上記中間成形体の外周面に、張力を付与しつつラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程と、
上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、
上記硬化工程の後に上記マンドレルの引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含み、
上記ラッピングテープとして織物テープが用いられており、
上記硬化工程が、
70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱する第一加熱ステップと、
上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱する第二加熱ステップとを含む繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項2】
上記テープ巻き付け工程が、
上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後に樹脂フィルムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項3】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1が5(Mpa)以上150(Mpa)以下である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1とされ、上記第二巻き付け工程において上記樹脂フィルムテープに付与される引張応力がT2とされるとき、比(T1/T2)が0.1以上0.95以下である請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
上記樹脂フィルムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
上記中間成形体の繊維含有率がZ1(質量%)であり、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)であるとき、差(Z2−Z1)が3質量%以上25質量%以下である請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項7】
上記テープ巻き付け工程が、
上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後にゴムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項8】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1aが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1aとされ、上記第二巻き付け工程において上記ゴムテープに付与される引張応力がT2aとされるとき、比(T2a/T1a)が0.1以上である請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
上記ゴムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている請求項7に記載の製造方法。
【請求項11】
上記ラッピングテープが織物テープのみである請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項12】
上記テープ巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1bが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
上記テープ巻き付け工程において巻き付けられた上記織物テープのラッピング層数L1が、管状体のチップ端位置Tp1から管状体のバット端位置Bt1までの全ての点において1層以上である請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体を得る工程と、
上記中間成形体の外側に、張力を付与しつつラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程と、
上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、
上記硬化工程の後に上記マンドレルの引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含み、
上記ラッピングテープとして織物テープが用いられており、更に、上記ラッピングテープとして、樹脂フィルムテープ又はゴムテープが用いられており、
上記中間成形体の繊維含有率がZ1(質量%)であり、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)であるとき、差(Z2−Z1)が3質量%以上25質量%以下であり、
上記硬化工程が、
70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱される第一加熱ステップと、
上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱される第二加熱ステップとを含む繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載された製造方法により製造された管状体。
【請求項16】
ボイド率Rbが0.5%以下である請求項15に記載の管状体。
【請求項1】
マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体を得る工程と、
上記中間成形体の外周面に、張力を付与しつつラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程と、
上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、
上記硬化工程の後に上記マンドレルの引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含み、
上記ラッピングテープとして織物テープが用いられており、
上記硬化工程が、
70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱する第一加熱ステップと、
上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱する第二加熱ステップとを含む繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項2】
上記テープ巻き付け工程が、
上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後に樹脂フィルムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項3】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1が5(Mpa)以上150(Mpa)以下である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1とされ、上記第二巻き付け工程において上記樹脂フィルムテープに付与される引張応力がT2とされるとき、比(T1/T2)が0.1以上0.95以下である請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
上記樹脂フィルムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
上記中間成形体の繊維含有率がZ1(質量%)であり、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)であるとき、差(Z2−Z1)が3質量%以上25質量%以下である請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項7】
上記テープ巻き付け工程が、
上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付ける第一巻き付け工程と、この第一巻き付け工程の後にゴムテープを巻き付ける第二巻き付け工程とを含む請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項8】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1aが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
上記第一巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力がT1aとされ、上記第二巻き付け工程において上記ゴムテープに付与される引張応力がT2aとされるとき、比(T2a/T1a)が0.1以上である請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
上記ゴムテープの内面に、シリコン系又はフッ素系のコーティング材が設けられている請求項7に記載の製造方法。
【請求項11】
上記ラッピングテープが織物テープのみである請求項1に記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項12】
上記テープ巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1bが5(Mpa)以上150(Mpa)以下である請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
上記テープ巻き付け工程において巻き付けられた上記織物テープのラッピング層数L1が、管状体のチップ端位置Tp1から管状体のバット端位置Bt1までの全ての点において1層以上である請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体を得る工程と、
上記中間成形体の外側に、張力を付与しつつラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程と、
上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、
上記硬化工程の後に上記マンドレルの引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含み、
上記ラッピングテープとして織物テープが用いられており、更に、上記ラッピングテープとして、樹脂フィルムテープ又はゴムテープが用いられており、
上記中間成形体の繊維含有率がZ1(質量%)であり、上記硬化管状体の繊維含有率がZ2(質量%)であるとき、差(Z2−Z1)が3質量%以上25質量%以下であり、
上記硬化工程が、
70℃以上90℃以下の温度で120分以上4320分以下の時間に亘って加熱される第一加熱ステップと、
上記第一加熱ステップの後になされ、120℃以上200℃以下の温度で10分以上60分以下の時間に亘って加熱される第二加熱ステップとを含む繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載された製造方法により製造された管状体。
【請求項16】
ボイド率Rbが0.5%以下である請求項15に記載の管状体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−120189(P2010−120189A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293794(P2008−293794)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)
【Fターム(参考)】
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