説明

管状容器

【課題】液体の検体を収容する、シール栓を有する管状容器において、シール栓を剥がしたときに、容器開口に検体の膜が形成されることを防止する。
【解決手段】容器(採血管)10の端面20において、管の内周に向けて突出する凸部26を設ける。容器の開口18に膜が形成されると、この膜には凸部26によって、不均一な張力が働き、この結果、膜が安定的に維持されず破れる。これにより、膜の形成が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管形状を有し検体を収容する容器に関し、特に、管形状の一端の開口をシール栓によって封止する管状容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一端が開放した管形状を有し、検体を収容する容器が知られている。この管状容器の開放端の開口を封止するために、シール栓を用いるタイプのものが知られている。このような管状容器の一例として採血管がある。シール栓により封止される採血管が下記特許文献1に記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−45262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血液等の液体の検体を収容し、シール栓で封止された管状容器は、輸送中の振動や傾けられることにより、そのシール栓の内面に検体が付着することがある。この状態で開栓すると、容器の開口に液膜が生じる場合がある。この液膜が、分注機や分析機において検体を抽出するとき、液面と誤認識されて、検体の抽出が適切にされない状態を引き起こす可能性がある。
【0005】
本発明は、シール栓を開栓する際に、容器開口の液膜発生を抑制する管状容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の管状容器は、容器の開口をシール栓により封止する管状容器であって、前記開口の端面において、管の内周面に凸部が形成される。
【0007】
凸部は、管の内周面に沿って配列されてもよい。
【0008】
また凸部は、その周方向の幅が、開口から容器の奥に向かうにつれて増加するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
凸部により、液膜内に発生する張力が不均一となって、液膜が不安定となり、その発生が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。本実施形態においては、シール栓タイプの管状容器として採血管を例に挙げて説明する。図1および図2は、採血管10の概観を示す斜視図であり、図1はシール栓12が管の開口部に貼付された状態、図2はシール栓を剥がして開栓した状態を示す図である。
【0011】
採血管10は、円管形状であって、底部が閉じた本体14と、本体14の管の開放側の端に形成された管口部16を含む。本体14と管口部16は一体に形成されることが好ましい。管口部16は略円環形状であり、その内周が開口18を規定している。また、管口部16は端面20を有し、この端面にシール栓12が貼付される。シール栓12は、樹脂、金属またはこれらが積層された変形可能なシートを所定の形状に裁断して形成されたものとでき、接着剤によって管口部の端面20に貼付されて、採血管10を封止する。また、シール栓12の形状は、管口部16の外径とほぼ等しい円形部22に、半径方向外側に延びる舌部24が付加されものである。開栓するときには、舌部24を把持して上方に引き上げるようにしてシール栓12を剥がす。
【0012】
管口部16の内周面には、管の内側に向いて突出した凸部26が周方向に配列されている。この凸部26の図中の上側の端面は、管口部16の円環形状の部分の端面と同一面となっている。凸部26の一つは、採血管の軸線に直交する断面において、台形および長方形等の四角形断面を有する。また、断面形状を三角形とすることもでき、さらには多角形のみならず曲線の縁を有する形状としてもよい。さらに、個々の凸部26の形状が異なってもよい。また、凸部26の配列の間隔は、この実施形態においては、凸部26の幅と、凸部26の間に形成される凹部の幅がほぼ等しくされているが、これに限らない。また、個々の凹部の幅は等しくなくてもよい。また、凸部26は、1個のみ設けられていてもよい。
【0013】
また、凸部26は、採血管10の開放端の端面20における断面形状を維持したまま、採血管の奥に向けて所定の長さ延びている。
【0014】
シール栓12が採血管を封止しているとき、シール栓12の内面に検体が付着していると、シール栓12を剥がすときに、検体が管口部16の内側、つまり開口18に膜を張ろうとする。しかし、凸部26を設けたことにより、膜内に生じる張力が不均一となって、膜が切れやすくなり、膜が安定的に維持されずに破れる。これにより、採血管の開口における膜の形成が抑制される。
【0015】
図3は、管口部の他の例を示す図である。本体の形状およびこの管口部と本体との関係は図1および2に示す採血管10と同様であるので、説明を省略する。図3に示される管口部28は、内周面に形成される凸部の形状が前述のものと異なっている。採血管の端面となる管口部28の端面においては、円環部分から内側に延びる凸部30を有しており、前述の管口部16と同様である。図示する例では、凸部30の、採血管の軸線に直交する断面の形状は四角形である。この四角形の、周方向の幅が採血管の開口から奥に進むに従って大きくなっている。つまり、図3に示すように、開口における周方向の幅aは、徐々に拡がり幅bとなっている。したがって、凸部30の先端の形状は、台形形状となっている。この結果、凸部30の側面は、採血管軸線を含む平面に対して、斜めに配置される。
【0016】
この、凸部側面の斜めの配置により、膜に対し、局所的に採血管軸線方向の力が作用し、膜の形成が阻害される。
【0017】
管口部28の内周面を内側から見ると、一つ一つの凸部30の先端は台形となり、これが連続して歯車の歯のような形状となる。また、連続する台形に替えて正弦波状等の波形状とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の管状容器の例としての採血管を示す図であり、特にシール栓により封止された状態を示す図である。
【図2】本実施形態の管状容器の例としての採血管を示す図であり、シール栓を剥がし、開栓された状態を示す図である。
【図3】管状容器の管口部の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
10 採血管、12 シール栓、14 本体、16,28 管口部、18 開口、20 端面、22 円形部、24 舌部、26,30 凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール栓により開口を封止される管状容器であって、容器の開口の端面において管内周面に凸部が形成された、管状容器。
【請求項2】
請求項1に記載の管状容器であって、前記凸部が管内周面の周方向に配列された、管状容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の管状容器であって、容器の開口から奥に向かって、前記凸部の周方向の幅が増加する、管状容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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