説明

管状部材

【課題】等級の異同を容易に確認することができる管状部材を提供する。
【解決手段】管状部材1aは、先端側の内周面に、より小径の環状部材が嵌合される。該内周面に嵌合部2を備えると共に、嵌合部2に視覚により識別可能な形状4を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端部により小径の他の管状部材が嵌合される針基、カテーテルのコネクター等の管状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
医療器具等の分野において液体を流通するために用いられる管状部材では、先端側の内周面に設けられた嵌合部に、より小径の他の管状部材が嵌合されることにより、互いに径の異なる2つの管状部材が接合されることがある。
【0003】
例えば、針基は、先端側の内周面に設けられた嵌合部に、外周面に接着剤を塗布した針管が嵌合されることにより、該接着剤を介して該針管と接合される(例えば特許文献1参照)。また、カテーテル等のチューブのコネクタは、先端側の内周面に設けられた嵌合部に、外周面に接着剤を塗布したチューブが嵌合されることにより、該接着剤を介して該チューブと接合される。
【0004】
ここで、前記針管やチューブは微細な外径を備えるものが多く、例えば、注射針の針管では0.7〜0.9mm(22〜20G(ゲージ))、静脈留置針の針管では0.80〜0.97mm(22〜20G(ゲージ))である。また、吸引カテーテルのチューブ外径は2.0〜3.33mm(6〜10Fr.(フレンチサイズ))である。
【0005】
一方、前記針管やチューブが嵌合される針基やコネクタの内周面も、前記外径に対応する径を備えている。
【0006】
前記針基やコネクタのような管状部材は、その内周面の径をゲージまたはフレンチサイズ等の等級で表すことにより区別されるが、各等級の間で外径の差が小さいため、目視ではもちろんカメラ等の機器を用いても区別することが難しい。そこで、注射針や静脈留置針では、所定のカラーコードにより針基を色分けすることにより、前記等級毎に区別できるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭55−78344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、製品として外部に現れない管状部材では前記色分けがなされていないので、製造工程においてより小径の管状部材を嵌合する際に、等級の異なる部材が混在すると確認することができないという不都合がある。前記製品として外部に現れない管状部材としては、例えば、誤穿刺防止を目的とした翼状針の内針基等を挙げることができる。前記内針基は、特定の等級の内針に対し、対応する等級のものでないときには、接着不良により脱落したり、詰まったりして不良品が発生する。
【0009】
そこで、本発明は、かかる不都合を解消して、等級の異同を容易に確認することができる管状部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、前記管状部材に等級に応じて異なる外形を付与し、該外形により視覚的に識別可能とすることが考えられる。しかし、前記管状部材は、製品に組み込まれる場合があり、その場合は他の部材との干渉等を避けるため、その外形は等級によらず同一であることが好ましく、等級に応じて異なる外形とすることには難がある。
【0011】
そこで、本発明は、先端側の内周面に、より小径の環状部材が嵌合される管状部材において、該内周面に嵌合部を備えると共に、該嵌合部に視覚により識別可能な形状を付与してなることを特徴とする。
【0012】
本発明の管状部材によれば、前記識別可能な形状が付与されているので、異なる等級のものが混在していても、目視或いはカメラ等により視覚的に識別することができる。また、本発明の管状部材によれば、前記形状は該管状部材の内周面に設けられた前記嵌合部に設けられるので、該管状部材の外形を変えることなく、該管状部材を識別することができる。
【0013】
本発明の管状部材において、前記識別可能な形状は、前記嵌合部の先端部に備えられた断面視多角形状の角筒部、複数のリブ、ローレット形状、該嵌合部の先端面に備えられた溝部からなる群から選択される1種の形状とすることができる。本発明の管状部材は、等級毎に前記形状を異なるものとしてもよい。また、本発明の管状部材は、前記形状が前記嵌合部の先端部に備えられた前記角筒部であるときには、等級毎に多角形の頂角の数を変えてもよく、前記形状が前記嵌合部の先端部に備えられた前記リブであるときには、等級毎に該リブの数を変えてもよい。さらに、本発明の管状部材は、前記形状が前記嵌合部の先端面に備えられた前記溝部であるときには、等級毎に該溝部の数を変えてもよい。
【0014】
また、本発明の管状部材において、前記嵌合部は基端側から先端側に向かって次第に拡径するテーパ部を備えていてもよい。本発明の管状部材がテーパ部を備えているとき、前記識別可能な形状は、前記テーパ部の途中に設けられた周状の段部とすることができる。前記周状の段部は、前記テーパ部の表面から突出して形成された突部でもよく、前記テーパ部に形成された溝部でもよい。
【0015】
本発明の管状部材は、前記形状が前記テーパ部に備えられた前記周状の段部であるときに、等級毎に該段部の数を変えてもよい。また、本発明の管状部材は、等級毎に前記形状を異なるものとするときに、前記周状の段部を、前記角筒部、リブ、ローレット形状、溝部と組み合わせることにより、等級毎に異なる形状の1つとして用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明の管状部材の第1の実施形態を示す断面図、(b)は(a)の正面図。
【図2】(a)は本発明の管状部材の第2の実施形態を示す断面図、(b)は(a)の正面図。
【図3】(a)は本発明の管状部材の第3の実施形態を示す断面図、(b)は(a)の正面図。
【図4】(a)は本発明の管状部材の第4の実施形態を示す断面図、(b)は(a)の正面図。
【図5】(a)は本発明の管状部材の第5の実施形態を示す断面図、(b)は(a)の正面図。
【図6】(a)は本発明の管状部材の第5の実施形態の変形例を示す断面図、(b)は(a)の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0018】
本実施形態の管状部材は、誤穿刺防止を目的とした翼状針の内針基であり、先端側の内周面に内針が嵌合されて接合された状態で、外針及び外針基に内挿される。前記内針基は、製品として外部に現れないのでカラーコードによる色分けがなされていない。この結果、製造工程において、特定のゲージの内針が嵌合されるときに、該内針に対応するゲージ以外の他のゲージの内針基が混在していると、その識別が困難になる。
【0019】
そこで、図1(a)に示すように、本実施形態の管状部材は、先端側(矢示方向)の内周面に、より小径の管状部材としての図示しない内針が嵌合される内針基1aであって、該内周面に嵌合部2を備えている。嵌合部2は基端側のテーパ部3とテーパ部3の先端側に連接する角筒部4とを備えている。前記内針は、外周面に接着剤が塗布された状態でテーパ部3に嵌合され、テーパ部3は接着剤溜まりを兼ねている。内針基1aは、先端側から目視またはカメラで見たときに、図1(b)に示すように角筒部4が正六角形状の断面形状であることにより識別することができる。
【0020】
また、図1では、断面形状が正六角形状の角筒部4を示しているが、角筒部4の断面形状は正八角形状、正十角形状等、他の多角形状であってもよい。この場合、例えば内針の外径が22Gであれば正六角形状、21Gであれば正八角形状、20Gであれば正十角形状というように、角筒部4の断面形状における多角形の頂角の数をゲージの等級に応じて異なるようにしてもよい。
【0021】
また、図2(a)に示すように、図1に示す角筒部4に代えて、複数のリブ5を備える内針基1bとしてもよい。内針基1bは、先端側から目視またはカメラで見たときに、図2(b)に示すようにリブ5の数が4個であることにより識別することができる。
【0022】
また、図2では、リブ5の数が4個である例を示しているが、リブ5の数は6個、8個等であってもよい。この場合、例えば内針の外径が22Gであれば4個、21Gであれば6個、20Gであれば8個というように、リブ5の数をゲージの等級に応じて異なるようにしてもよい。
【0023】
また、図3(a)に示すように、図1に示す角筒部4に代えて、ローレット形状6を備える内針基1cとしてもよい。内針基1cは、先端側から目視またはカメラで見たときに、図3(b)に示すようにローレット形状6により識別することができる。
【0024】
また、図4(a)に示すように、図1に示す角筒部4に代えて、嵌合部2の先端面2aに複数の溝部7を備える内針基1dとしてもよい。内針基1dは、先端側から目視またはカメラで見たときに、図4(b)に示すように溝部7の数が4個であることにより識別することができる。
【0025】
また、図4では、溝部7の数が4個である例を示しているが、溝部7の数は5個、6個等であってもよい。この場合、例えば内針の外径が22Gであれば4個、21Gであれば5個、20Gであれば6個というように、溝部7の数をゲージの等級に応じて異なるようにしてもよい。
【0026】
また、内針基1dでは、図4(b)に示すように円弧状の溝部7を備えているが、溝部の形状は円弧状に限らず、先端面2aに放射状に形成されたものであってもよい。
【0027】
さらに、図5(a)に示すように、図1に示す角筒部4に代えて、テーパ部3の途中に表面から突出する周状突部8からなる段部を備える内針基1eとしてもよい。内針基1eは、先端側から目視またはカメラで見たときに、図5(b)に示すようにテーパ部3の途中に周状突部8が存することにより識別することができる。
【0028】
また、図5では、周状突部8の数が1個である例を示しているが、周状突部8の数は2個、3個等であってもよい。この場合、例えば内針の外径が22Gであれば1個、21Gであれば2個、20Gであれば3個というように、周状突部8の数をゲージの等級に応じて異なるようにしてもよい。
【0029】
また、図6(a)、(b)に示すように、図5に示す周状突部8に代えて周状溝部9を備える内針基1fとしてもよく、内針基1eと同一の作用効果を得ることができる。
【0030】
また、本実施形態では、ゲージの等級に応じて、角筒部4の断面形状における多角形の頂角の数、リブ5の数、溝部7の数、周状突部8または周状溝部9の数を異なるようにしているが、嵌合部2に設けられる形状を異なるようにしてもよい。この場合、例えば内針の外径が22Gであれば角筒部4、21Gであればローレット形状6、20Gであれば周状突部8というようにすることができる。
【0031】
また、周状突部8または周状溝部9は、角筒部4、リブ5、ローレット形状6、溝部7と組み合わせて用いてもよい。このようにすることにより、さらに多種多様な識別を可能とすることができる。
【0032】
尚、本実施形態では、嵌合部2にテーパ部3を備える場合について説明しているが、内針基1e,1fの場合を除き、テーパ部3は備えられていなくてもよい。また、本実施形態では、管状部材が内針基1a〜1fである場合について説明しているが、該管状部材は、先端側の内周面に、より小径の環状部材が嵌合される嵌合部を備えるものであれば、ルアーテーパ部を有する注射針、患者の体表に留置される留置針、あるいは吸引カテーテルのチューブのコネクタ等の他の管状部材であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1a,1b,1c,1d,1e,1f…内針基、 2…嵌合部、 3…テーパ部、 4…角筒部、 5…リブ、 6…ローレット形状、 7…溝部、 8…周状突部、 9…周状溝部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側の内周面に、より小径の環状部材が嵌合される管状部材において、該内周面を嵌合部とすると共に、該嵌合部に視覚により識別可能な形状を付与してなることを特徴とする管状部材。
【請求項2】
請求項1記載の管状部材において、前記識別可能な形状は、前記嵌合部の先端部に備えられた断面視多角形状の角筒部、複数のリブ、ローレット形状、該嵌合部の先端面に備えられた溝部からなる群から選択される1種の形状であることを特徴とする管状部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の管状部材において、前記嵌合部は基端側から先端側に向かって次第に拡径するテーパ部を備えることを特徴とする管状部材。
【請求項4】
請求項3記載の管状部材において、前記識別可能な形状は、前記テーパ部の途中に設けられた周状の段部であることを特徴とする管状部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−92397(P2011−92397A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248830(P2009−248830)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】