説明

管理装置、通信方法、およびプログラム

【課題】
ネットワーク上のメトリックに主観的な尺度を用いる場合であっても、妥当性の高いメトリックを生成すること。
【解決手段】
本発明による管理装置は、ネットワーク上のノード間の通信を管理する管理装置であって、ネットワークに対して設定する設定メトリック情報と、前記ネットワーク上で行われる通信に関するネットワーク情報との相関値を計算する相関値計算部と、前記相関値に基づいて、前記ネットワーク上の新規メトリックを生成するメトリック生成部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワーク上で経路制御を行う管理装置、通信方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信ネットワークをはじめとしたICT(Information Communication Technology)インフラに対する要求条件は、多種多様化の一途を辿っている。
【0003】
特に、社会的な要求条件の重要度は以前よりも増加している。社会的な要求条件としては、例えば、ネットワーク上のあるリンクの信頼度を示す利用者からのアンケート結果、社会的に信用できるソースからの情報、などが挙げられる。一般的に、この社会的な要求条件には、数値化により客観的に評価することが難しく、主観的な尺度によって評価される条件が多く含まれている。例えば、上述のアンケート結果は、主観的な尺度の代表的な例といえる。
【0004】
上述したような社会的な要求条件をネットワーク上のメトリックとして経路制御を行う技術としては、非特許文献1や非特許文献2が挙げられる。
【0005】
非特許文献1には、セキュリティ度によって経路の優先度を設定することが記載されている。また、非特許文献2には、社会的な属性をメトリックとした通信システムのアーキテクチャが記載されている。
【0006】
また、社会的な要求条件をメトリックとして、経路制御を行う通信システムの構成例を、図14に示す。
【0007】
図14を参照すると、本発明に関連する通信システムは、管理ドメイン2101、管理ドメイン2102、管理ドメイン2103、管理ドメイン2104から構成されている。
【0008】
各管理ドメインは、それぞれ転送装置を有している。管理ドメイン2101は、転送装置2201を有している。管理ドメイン2102は、転送装置2202を有している。管理ドメイン2103は、転送装置2203を有している。また、管理ドメイン2104は、転送装置2204、転送装置2205、転送装置2206を備えている。
【0009】
各転送装置2201〜2206は、パケット転送の制御を行う。管理ドメイン2101〜2104は、経路制御ポリシーを共有するネットワークである。
【0010】
ここで、管理ドメイン2104内の転送装置2206から発するトラヒックを、管理ドメイン2101の転送装置2201へ送信する場合を考える。この場合、転送装置2206から転送装置2201へ到達する経路としては、以下の2通りの経路が存在する。(1)転送装置2206、転送装置2204、転送装置2202、転送装置2201の順に辿る経路と、(2)転送装置2206、転送装置2205、転送装置2203、転送装置2201の順に辿る経路の2通りである。
【0011】
転送装置2206では、転送装置2204と転送装置2205のそれぞれに設定されたLocal Preference属性を参照する。転送装置2206は、Local Preference属性が示す値の大きい方を経由する経路を優先度が高い経路であると判断して、転送処理を行う。
【0012】
図14の例では、転送装置2204へのリンクに対して100、転送装置2205へのリンクに対して200という値が設定されていると仮定する。この場合、転送装置2206から転送装置2201までの経路としては、転送装置2205を含む経路である(2)の経路が優先度の高い経路と判断される。従って、(2)の経路を利用した通信サービスが提供される。
【0013】
このLocal Preference属性は、非特許文献1、非特許文献2と同様に、その管理ドメインを運用している管理者によって、主観的に設定されることが一般的である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】森山敦文、石西洋、中村勝一、堀良彰、「複数メトリックを用いたルーティング方法の提案とその充足すべき条件に関する一考察」、新世代ネットワークワークショップ2010、新世代ネットワーク時限研究専門委員会(電子情報通信学会)、[2010年11月16日検索]、インターネット<URL:http://www.ieice.org/〜nwgn/file_ws10/10_Moriyama.pdf>
【非特許文献2】新熊亮一、笠井裕之、山口和秦、Roy Yates、「ソーシャルメトリックに基づいた情報通信統合アーキテクチャの提案」、新世代ネットワークワークショップ2010、新世代ネットワーク時限研究専門委員会(電子情報通信学会)、[2010年11月16日検索]、インターネット<URL:http://www.ieice.org/〜nwgn/file_ws10/08_Shinkuma.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、非特許文献1、非特許文献2、および図14に示した通信システムにおいては、管理者が数値的な根拠のない主観的な尺度によって、ネットワーク上のメトリックや通信経路の優先度を設定しているため、妥当性が低いという課題があった。
【0016】
本発明の目的は、上述した課題を解決することが可能な、管理装置、通信システム、通信方法、およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による管理装置は、ネットワーク上のノード間の通信を管理する管理装置であって、ネットワークに対して設定する設定メトリック情報と、前記ネットワーク上で行われる通信に関するネットワーク情報との相関値を計算する相関値計算部と、前記相関値に基づいて、前記ネットワーク上の新規メトリックを生成するメトリック生成部と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明による通信方法は、ネットワークに対して設定する設定メトリック情報と、ネットワーク上で行われる通信に関するネットワーク情報との相関値を計算するステップと、前記相関値に基づいて、前記ネットワーク上の新規メトリックを生成するステップと、を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明によるプログラムは、ネットワークに対して設定する設定メトリック情報と、ネットワーク上で行われる通信に関するネットワーク情報との相関値を計算する処理と、前記相関値に基づいて、前記ネットワーク上の新規メトリックを生成する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ネットワーク上のメトリックに主観的な尺度を用いる場合であっても、妥当性の高いメトリックを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態による管理装置の構成を示す図である。
【図2】第2の実施形態による通信システムの構成を示す図である。
【図3】第2の実施形態による管理サーバの構成を示す図である。
【図4】第2の実施形態による参照情報構成テーブルを示す図である。
【図5】第2の実施形態によるリアルタイム情報の例を示す図である。
【図6】第2の実施形態による妥当性あり既存メトリック情報の例を示す図である。
【図7】第2の実施形態による設定メトリック情報の例を示す図である。
【図8】第2の実施形態による動作手順を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態による動作手順を示すフローチャートである。
【図10】第2の実施形態による動作手順を示すフローチャートである。
【図11】第2の実施形態による動作手順を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態による動作手順を示すフローチャートである。
【図13】第2の実施形態による動作手順を示すフローチャートである。
【図14】本発明に関連する通信システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0024】
(構成)
図1は、第1の実施形態による管理装置の構成を示している。図1によれば、管理装置1000は、相関値計算部1100、メトリック生成部1200を備えている。
【0025】
管理装置1000は、管理装置1000が属するネットワーク上に存在するノード間の通信を管理する。なお、ネットワークおよびノードは、図1では非表示としている。
【0026】
相関値計算部1100は、設定メトリック情報と、ネットワーク情報との相関値を計算する。ここで、設定メトリック情報とは、ネットワークに対して設定しようとするメトリックに関する情報である。ネットワーク情報とは、ネットワーク上で行われている通信に関する情報である。
【0027】
メトリック生成部1200は、相関値計算部1100が計算した相関値に基づいて、ネットワーク上の新規メトリックを生成する。
【0028】
(効果)
第1の実施形態によれば、ネットワークに対して設定しようとする設定メトリック情報と、ネットワーク上で行われている通信に関するネットワーク情報との相関値を計算し、その結果に基づいてネットワーク上の新規メトリックを生成している。
【0029】
上記の構成により、設定メトリック情報が、ネットワーク管理者の主観的な尺度や、数値化が困難な尺度に基づくものであったとしても、両者の相関値を計算することによって、設定メトリック情報の妥当性を判断することが可能となる。その結果、ネットワークに対して妥当性の高いメトリックを生成することが可能となる。
【0030】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0031】
(構成)
図2は、第2の実施形態による通信システムの構成を示す図である。図2によれば、通信システムは、管理ドメイン101、管理ドメイン102、管理ドメイン103、管理ドメイン104を含んでいる。これら管理ドメインは、例えば、AS(Autonomous System)を用いることが考えられる。この場合には、管理ドメインは、企業ネットワークやインターネットサービスプロバイダネットワークが運用するネットワークに相当する。
【0032】
各管理ドメインの内部では、転送装置が相互に接続されている。管理ドメイン101は転送装置201を、管理ドメイン102は転送装置202を、管理ドメイン103は転送装置203を、それぞれ含んでいる。また、管理ドメイン104は、転送装置204、転送装置205、転送装置206を含んでいる。これらの転送装置としては、例えば、一般的なルータ等を用いることが考えられる。また、管理ドメイン101、102、103は、いずれも1つの転送装置を含んでいるが、転送装置は管理ドメイン104のように複数個設定されていても良い。
【0033】
さらに、管理ドメイン104は、管理サーバ301を含んでいる。図2の例では、管理サーバ301は管理ドメイン104に設置されているが、どの管理ドメインに設置されても良い。また、管理サーバとして集中管理する形態ではなく、各転送装置にその機能を搭載し、分散管理を行う形態を採用しても良い。
【0034】
管理サーバ301は、各種情報を管理するサーバである。また、管理サーバ301は、管理ドメイン104内の転送装置204、転送装置205、転送装置206に接続され、通信制御を行う。
【0035】
以下、この管理サーバ301について、詳細に説明する。図3を参照すると、管理サーバ301は、設定メトリック情報処理部401、相関値計算部402、相関値判定部403、メトリック生成部404、情報管理部405、通信制御部406を含んで構成される。
【0036】
まず、情報管理部405は、リアルタイムに変動する環境情報等を示すリアルタイム情報、妥当性の高い既存メトリック情報、通信システムに対して新しく設定しようとする設定メトリック情報、といった情報を管理する。以下、リアルタイム情報と、妥当性の高い既存メトリック情報とを総称する場合には、「参照情報」と呼称する。これらの情報について、図4、図5、図6、図7を用いて詳細に説明する。
【0037】
図4は、参照情報構成テーブル500の構成を示す図である。参照情報構成テーブル500は、情報管理部405が管理するテーブルである。参照情報構成テーブル500は、上述の通り、リアルタイム情報テーブル501、妥当性あり既存メトリック情報テーブル502、設定メトリック情報テーブル503から構成される。
【0038】
図5は、リアルタイム情報テーブル501に記憶されているリアルタイム情報の例を示している。リアルタイム情報とは、リアルタイムに変動する通信環境に関する情報を示している。具体的には、あるリンクを流れるトラヒック量、リンクの接続する装置の残電力量、リンクの存在する地域の天気の情報等が挙げられる。
【0039】
図5の例では、接続情報(リンク情報)に対して、数値化された情報が対応付けられている。リアルタイム情報501−1には、各リンクが接続する装置の残電力量が示されている。リアルタイム情報501−2には、各リンクのトラヒック流量が示されている。
【0040】
図6は、妥当性あり既存メトリック情報テーブル502に記憶されている情報の例を示している。妥当性がある既存メトリック情報とは、既存メトリックとしてネットワークで利用されている情報のうち、妥当性を有するメトリックを示している。つまり、妥当性がある既存メトリック情報とは、主観的な手段で決定されたメトリックではないといえる。より具体的には、あるノード間のホップ数や、リンクの帯域幅等が挙げられる。
【0041】
図6の例では、妥当性あり既存メトリック情報502−1には、各リンクのホップ数が、妥当性あり既存メトリック情報502−2には、各リンクの帯域幅が示されている。
【0042】
図7は、設定メトリック情報テーブル503に記憶されている情報の例を示している。設定メトリック情報とは、ネットワークに対して、新しくメトリックとして使用したい情報を示している。設定メトリック情報としては、上述したアンケート結果のような主観的な尺度のもの、もしくは客観的な数値化が困難な尺度を用いることが可能である。また、設定に根拠のない乱数や、リンク帯域幅のような客観的に数値化可能な尺度のものを用いても良い。
【0043】
主観的な尺度、もしくは客観的な数値化が困難な尺度の例としては、例えば、リンクのセキュリティ面の信頼度、リンクの他の利用者の善悪等の属性、リンクにオーバーレイしている論理ネットワークに関する属性等が挙げられる。設定メトリック情報は、これらの情報に関連する利用者のアンケート結果、社会的に信用できるソースからの情報等をもとに各リンクに対して数値が設定される。
【0044】
図7の例では、設定メトリック情報503−1には、各リンクに対して利用者のアンケート結果が対応付けられている。また、設定メトリック情報503−2には、各リンクのトラヒック流量が、実測値ではない値で対応付けられている。
【0045】
続いて、管理サーバ301の他の構成要素について説明する。個々の動作詳細については、後に詳しく説明する。
【0046】
設定メトリック情報処理部401は、ネットワーク管理者が設定しようとする設定メトリック情報の数値化と正規化を行う。
【0047】
相関値計算部402は、設定メトリック情報と、参照情報との相関値を計算する。なお、相関値としては、一般的な相関係数により相関性を算出しても良いし、他の方法によって相関性または関連性を求めて相関値とすることも可能である。
【0048】
相関値判定部403は、相関値計算部402で計算した相関値の正負・大小等の相関状況に応じた処理分岐のための判定を行う。
【0049】
メトリック生成部404は、相関値判定部403の判定結果に基づいて、ネットワークに設定するメトリックを生成する。
【0050】
通信制御部406は、メトリック生成部404で生成したメトリックに基づいて、管理サーバ301が属する管理ドメインおよびネットワーク内の通信制御を行う。
【0051】
(動作)
続いて、図8から図13を用いて、第2の実施形態の動作について説明する。
【0052】
図8は、第2の実施形態の全体的な動作を示すフローチャートである。
【0053】
始めに、設定メトリック情報処理部401は、管理者が設定しようとする設定メトリック情報の処理を行う(ステップS100)。
【0054】
ステップS100の詳細な動作について、図9を用いて説明する。まず、設定メトリック情報処理部401は、メトリックとして使用したい情報(設定メトリック情報)を、その関連する情報に基づいて、ネットワーク上の各リンクに対するメトリック数値を設定する(ステップS101)。上述の通り、設定メトリック情報の例としては、リンクのセキュリティ面の信頼度等が、また関連する情報の例としては、利用者によるアンケート結果等が挙げられる。
【0055】
続いて、設定メトリック情報処理部401は、ステップS101で設定したメトリック数値が、すべて0から1の範囲に収まるように、正規化処理を行う(ステップS102)。具体的には、各リンクのメトリック値から最大値を抽出して、全メトリックをその最大値で割った値で設定しなおす。その結果、最大値であったメトリック値が1となり、その他のメトリック値が0以上1未満の値に再設定される。
【0056】
次に、相関値計算部402は、以降の処理を1回だけ行うように、ループ処理を行うか否かの判定処理を行う。具体的には、設定メトリック情報が最初の関連情報であるかどうかを判定する(ステップS200)。最初の関連情報であった場合には、ステップS300の処理を行う。最初の関連情報でない場合には、ステップS600の処理を行う。
【0057】
続いて、相関値計算部402は、参照情報の処理を行う(ステップS300)。ステップS300の詳細について、図10を用いて説明する。
【0058】
まず、相関値計算部402は、情報管理部405にて収集管理している参照情報を、順番に1つずつ抽出する(ステップS301)。
【0059】
相関値計算部402は、ステップS301で抽出した参照情報のメトリック値が、すべて0から1の範囲に収まるように、正規化処理を行う(ステップS302)。具体的には、各リンクの参照情報値(メトリック値)から最大値を抽出して、全メトリック値を、その最大値で割った値に設定しなおす。その結果、最大値であったメトリック値が1となり、その他のメトリック値が0以上1未満の値に再設定される。その後、相関値計算部402は、ステップS302で生成したメトリック値を情報管理部405へ保存する(ステップS303)。
【0060】
次に、相関値計算部402は、参照可能な参照情報の有無を判断する(ステップS400)。全参照情報の参照が終了しておらず、まだ参照情報が残っている場合には、ステップS300の処理を再度実行する。参照情報の参照が終了した場合には、ステップS500へ移行する。
【0061】
相関値計算部402は、設定メトリック情報と、参照情報との相関値を計算する(ステップS500)。以下、ステップS500について、図11を用いて説明する。
【0062】
図11を参照すると、相関値計算部402は、まずステップS102で生成した設定メトリック値と、ステップS302で生成した参照情報のメトリック値との相関値を計算する(ステップS501)。
【0063】
続いて、相関値計算部402は、ステップS501で生成した相関値が、正の相関が高いか否かの判定を行う(ステップS502)。この判定は、相関値と閾値との大小関係を判定することで行われる。なお、閾値は、適度な値を固定的に設定する、あるいは、動的に制御して設定することが可能である。また、過去の履歴を参照して、経験値に基づいた設定を行うことも可能である。ステップS502で正の相関が高いと判断された場合はステップS503へ、正の相関が高くないと判断された場合はステップS504へ、それぞれ移行する。
【0064】
正の相関が高い場合、相関値計算部402は、ステップS501で計算した相関値を正相関の参照情報として情報管理部405へ保存する(ステップS503)。
【0065】
正の相関が高くない場合には、相関値計算部401は、ステップS501で計算した相関値が、負の相関が高いか否かの判定を行う(ステップS504)。この判定は、相関値と閾値との大小関係を判定することで行われる。なお、閾値は、適度な値を固定的に設定する、あるいは、動的に制御して設定することが可能である。また、過去の履歴を参照して、経験値に基づいた設定を行うことも可能である。ステップS504で負の相関が高いと判断された場合はステップS505へ、負の相関が高くないと判断された場合はステップS506へ、それぞれ移行する。
【0066】
負の相関が高い場合、相関値計算部402は、ステップS501で計算した相関値を負相関の参照情報として情報管理部405へ保存する(ステップS505)。
【0067】
負の相関が高くない場合には、相関値計算部401は、設定メトリック情報と参照情報とが、正相関も負相関も高くなく、無相関であると判断する。よって、相関値計算部401は、ステップS501で計算した相関値を無相関の参照情報として情報管理部へ保存する(ステップS506)。
【0068】
次に、相関値計算部402は、すべての参照情報の参照が終了したか否かを確認する(ステップS600)。まだ参照情報が残っている場合には、ステップS100の処理へ戻って実行する。すべての参照情報の参照を終了した場合には、ステップS700へ以降する。
【0069】
ステップS700では、相関値判定部403が、設定メトリック情報と参照情報との相関判定を行う。続いて、ステップS800では、メトリック生成部404が、ステップS700で行った相関判定に基づいて、新規メトリックの生成を行い、処理を終了する。以降、図12、図13を用いて、ステップS700とステップS800の動作について詳細に説明する。
【0070】
図12、図13は、いずれもステップS700とステップS800の動作を示すフローチャートであり、動作詳細が異なっている。第2の実施形態においては、図12および図13の双方を適用することが可能である。
【0071】
まず、図12に示すステップS700とステップS800の動作について説明する。
【0072】
相関値判定部403は、ステップS500で計算した相関値が、正相関と負相関のどちらが強いのかを判定する(ステップS701)。具体的には、ステップS500において情報管理部405に記憶した相関値の正負によって判定を行う。相関値が正相関の場合には、ステップS702に移行し、相関値が負相関の場合には、ステップS703に移行する。なお、相関値が0であった場合には、正相関と判断する。
【0073】
ステップS701で正相関が強いと判断された場合には、相関値判定部403は、正相関が十分に高いか否かの判定を行う(ステップS702)。この判定は、相関値と閾値との大小関係を判定することで行われる。なお、閾値は、適度な値を固定的に設定する、あるいは、動的に制御して設定することが可能である。また、過去の履歴を参照して、経験値に基づいた設定を行うことも可能である。ステップS703で正の相関が十分高いと判断された場合はステップS801へ、正の相関が十分高くないと判断された場合はステップS704へ、それぞれ移行する。
【0074】
ステップS701で負相関が強いと判断された場合には、相関値判定部403は、負相関が十分に高いか否かの判定を行う(ステップS703)。この判定は、相関値と閾値との大小関係を判定することで行われる。なお、閾値は、適度な値を固定的に設定する、あるいは、動的に制御して設定することが可能である。また、過去の履歴を参照して、経験値に基づいた設定を行うことも可能である。ステップS703で負の相関が十分高いと判断された場合はステップS802へ、負の相関が十分高くないと判断された場合はステップS704へ、それぞれ移行する。
【0075】
ステップS702で正相関が十分高くないと判断された場合、もしくは、ステップS703で負相関が十分高くないと判断された場合には、相関値判断部403は、無相関という度合いが十分に高いか否かの判定を行う(ステップS704)。より具体的には、相関値の絶対値が閾値以下、または閾値未満であった場合には、無相関が十分高いと考え、ステップS803に移行する。一方、相関値の絶対値が閾値より大きかった場合、または閾値以上の場合には、無相関が十分高くないと考え、ステップS804に移行する。なお、閾値は、適度な値を固定的に設定する、あるいは、動的に制御して設定することが可能である。また、過去の履歴を参照して、経験値に基づいた設定を行うことも可能である。
【0076】
続いて、メトリック生成処理S800の詳細について説明する。メトリック生成処理S800は、S801からS804までの4つの処理で構成される。
【0077】
メトリック生成部404は、ステップS702で相関値の正相関が十分高いと判断された場合に、ステップS801を実行する。メトリック生成部404は、情報管理部405に記憶されている情報のうち、正相関が十分高いと分類された参照情報のメトリックを用いて、各リンクに対してメトリックの平均値を計算する。メトリック生成部404は、計算した結果を、新規メトリック情報として利用する。
【0078】
メトリック生成部404は、ステップS703で相関値の負相関が十分高いとされた場合に、ステップS802を実行する。メトリック生成部404は、情報管理部405に記憶されている情報のうち、負相関が十分高いと分類された参照情報のメトリックを用いて、各リンクに対してメトリックの平均値を計算する。計算したメトリックの平均値は、0から1の間に分布している。メトリック生成部404は、これらを、0.5を中心として逆相に変換して、新規メトリック情報として利用する。0.5を中心とした逆相変換とは、例えば、0.25は0.75へ変換され、0.62は0.38に変換される。
【0079】
メトリック生成部404は、ステップS704で相関値の無相関の度合いが十分高いと判断された場合に、ステップS803を実行する。設定メトリックが、参照情報との相関性が低いことから、メトリック生成部404は、初期設定した(これまで用いてきた)メトリックと参照情報との相関性が相対的に高いと判断する。よって、メトリック生成部404は、初期設定のメトリックをそのまま新規メトリックとして利用する。
【0080】
メトリック生成部404は、ステップS704で相関値の無相関の度合いが高くないと判断された場合に、ステップS804を実行する。つまり、ステップS804は、相関値が、正相関、負相関、無相関のいずれのケースにも当てはまらない場合、つまり、設定メトリック情報が、すべての参照情報に対して相関性がない場合に実行される。メトリック生成部404は、すべての参照情報の各リンクのメトリック値を計算し、その結果を新規メトリック情報として利用する。
【0081】
次に、図13に示すステップS700とステップS800の動作について説明する。図12に示すステップS700では、相関値の正負を判断した後、閾値を用いて相関値の大小を判断し、処理を行っていた。一方、図13に示すステップS700とステップS800では、まず相関値の大小を判断した後、正負、もしくは無相関であるかを判定する。なお、基本的な処理内容には変更はないため、以下では動作概要のみ説明する。
【0082】
まず、相関値判定部403は、ステップS500で計算した相関値の絶対値を計算する。相関値判定部403は、計算した絶対値が、閾値以上であるか否かを判定する(ステップS705)。相関値の絶対値が閾値以上である場合には、ステップS706に移行する。相関値の絶対値が閾値未満である場合には、ステップS707に移行する。
【0083】
ステップS705で相関値の絶対値が閾値以上であった場合、相関値判定部403は、相関値の正負を判定する(ステップS706)。相関値が正であった場合には、ステップS801を実行する。相関値が負であった場合には、ステップS802を実行する。
【0084】
ステップS705で相関値の絶対値が閾値未満であった場合、相関値判定部403は、相関値の無相関の度合いを判定する(ステップS707)。相関値の無相関の度合いが十分高いと判断された場合には、ステップS803を実行する。相関値の無相関の度合いが高くないと判断された場合には、ステップS804を実行する。なお、ステップS707の動作は、図12におけるステップS704とほぼ同様であるため、説明は省略する。
【0085】
ステップS800を構成する各ステップS801、ステップS802、ステップS803、ステップS804の処理は、それぞれ図12と同様であるため、説明は省略する。
【0086】
(効果)
第2の実施形態によれば、ネットワークに対して設定しようとする設定メトリック情報と、ネットワーク上で行われている通信の情報である参照情報との相関値を計算し、その結果に基づいてネットワーク上の新規メトリックを生成している。
【0087】
上記の構成により、設定メトリック情報が、ネットワーク管理者の主観的な尺度や、数値化が困難な尺度に基づくものであったとしても、両者の相関値を計算することによって、設定メトリック情報の妥当性を判断することが可能となる。その結果、ネットワークに対して妥当性の高いメトリックを生成することが可能となる。従って、ユーザの多種多様なニーズに対応可能な通信サービスを提供することが可能となる。
【0088】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0089】
(構成)
第2の実施形態では、管理サーバが、ある1つの管理ドメイン内に設置される構成であった。一方、第3の実施形態では、管理サーバは、集中管理的に制御せずに、各転送装置に分散して設置される。
【0090】
この場合、転送装置が、それぞれの隣接する転送装置と情報交換を行いつつ、設定メトリック情報や参照情報の管理制御を行う。
【0091】
なお、管理サーバ内の構成要素およびそれらの機能は、第2の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0092】
(効果)
第3の実施形態によれば、管理情報を一括に集中管理せずに済むため、全体的な処理遅延の軽減(制御信号処理の高速化)、及び、管理サーバの一点障害の回避(ロバスト性の向上)といったメリットを創出することができ、より効率的な通信システムを構築することができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上の実施形態にのみ限定されず、その他各種の付加変更が可能である。また、管理サーバ、転送装置は、その有する機能をハードウェア的に実現することは勿論、コンピュータとプログラムとで実現することが可能である。プログラムは、磁気ディスクや半導体メモリ等のコンピュータ可読記録媒体に記録されて提供され、コンピュータの立ち上げ時などにコンピュータに読み取られ、そのコンピュータの動作を制御することにより、そのコンピュータを上述の各実施形態における管理サーバ、転送装置として機能させ、前述した処理を行わせる。
【0094】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0095】
(付記1)
ネットワーク上のノード間の通信を管理する管理装置であって、
ネットワークに対して設定する設定メトリック情報と、前記ネットワーク上で行われる通信に関するネットワーク情報との相関値を計算する相関値計算部と、
前記相関値に基づいて、前記ネットワーク上の新規メトリックを生成するメトリック生成部と、
を備えることを特徴とする管理装置。
【0096】
(付記2)
前記管理装置は、さらに、
前記生成した新規メトリックに基づいて、前記ネットワーク上の通信制御を行う通信制御部を備えることを特徴とする付記1に記載の管理装置。
【0097】
(付記3)
前記メトリック生成部は、
前記相関値の絶対値と、前記相関値の正負とに基づいて、前記新規メトリックを生成することを特徴とする付記1または2に記載の管理装置。
【0098】
(付記4)
前記メトリック生成部は、
前記相関値が正であり、かつ前記相関値の絶対値が第1の閾値以上である場合に、前記相関値に基づいて新規メトリックを生成し、
前記相関値が負であり、かつ前記相関値の絶対値が第2の閾値以上である場合に、前記相関値の逆相に基づいて新規メトリックを生成することを特徴とする付記3に記載の管理装置。
【0099】
(付記5)
前記メトリック生成部は、
前記相関値の絶対値が第1の閾値または第2の閾値未満かつ前記相関値の絶対値が第3の閾値以上である場合に、前記情報管理部に設定された既存のメトリックを新規メトリックとして使用し、
前記相関値の絶対値が第1の閾値または第2の閾値未満かつ前記相関値の絶対値が第3の閾値未満である場合に、前記ネットワーク情報の平均値を新規メトリックとして生成することを特徴とする付記3または4に記載の管理装置。
【0100】
(付記6)
ネットワークに対して設定する設定メトリック情報と、ネットワーク上で行われる通信に関するネットワーク情報との相関値を計算するステップと、
前記相関値に基づいて、前記ネットワーク上の新規メトリックを生成するステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。
【0101】
(付記7)
前記通信方法は、さらに、
前記生成した新規メトリックに基づいて、前記ネットワーク上の通信制御を行うステップを含むことを特徴とする付記6に記載の通信方法。
【0102】
(付記8)
前記新規メトリックを生成するステップは、
前記相関値の絶対値と、前記相関値の正負とに基づいて、前記新規メトリックを生成することを特徴とする付記6または7に記載の通信方法。
【0103】
(付記9)
前記新規メトリックを生成するステップは、
前記相関値が正であり、かつ前記相関値の絶対値が第1の閾値以上である場合に、前記相関値に基づいて新規メトリックを生成し、
前記相関値が負であり、かつ前記相関値の絶対値が第2の閾値以上である場合に、前記相関値の逆相に基づいて新規メトリックを生成することを特徴とする付記8に記載の通信方法。
【0104】
(付記10)
前記新規メトリックを生成するステップは、
前記相関値の絶対値が第1の閾値または第2の閾値未満かつ前記相関値の絶対値が第3の閾値以上である場合に、前記情報管理部に設定された既存のメトリックを新規メトリックとして使用し、
前記相関値の絶対値が第1の閾値または第2の閾値未満かつ前記相関値の絶対値が第3の閾値未満である場合に、前記ネットワーク情報の平均値を新規メトリックとして生成することを特徴とする付記8または9に記載の通信方法。
【0105】
(付記11)
ネットワークに対して設定する設定メトリック情報と、ネットワーク上で行われる通信に関するネットワーク情報との相関値を計算する処理と、
前記相関値に基づいて、前記ネットワーク上の新規メトリックを生成する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【0106】
(付記12)
前記プログラムは、さらに、
前記生成した新規メトリックに基づいて、前記ネットワーク上の通信制御を行う処理を含むことを特徴とする付記11に記載のプログラム。
【0107】
(付記13)
前記新規メトリックを生成する処理は、
前記相関値の絶対値と、前記相関値の正負とに基づいて、前記新規メトリックを生成することを特徴とする付記11または12に記載のプログラム。
【0108】
(付記14)
前記新規メトリックを生成する処理は、
前記相関値が正であり、かつ前記相関値の絶対値が第1の閾値以上である場合に、前記相関値に基づいて新規メトリックを生成し、
前記相関値が負であり、かつ前記相関値の絶対値が第2の閾値以上である場合に、前記相関値の逆相に基づいて新規メトリックを生成することを特徴とする付記13に記載のプログラム。
【0109】
(付記15)
前記新規メトリックを生成する処理は、
前記相関値の絶対値が第1の閾値または第2の閾値未満かつ前記相関値の絶対値が第3の閾値以上である場合に、前記情報管理部に設定された既存のメトリックを新規メトリックとして使用し、
前記相関値の絶対値が第1の閾値または第2の閾値未満かつ前記相関値の絶対値が第3の閾値未満である場合に、前記ネットワーク情報の平均値を新規メトリックとして生成することを特徴とする付記13または14に記載のプログラム。
【符号の説明】
【0110】
101、102、103、104、2101、2102、2103、2104 管理ドメイン
201、202、203、204、205、206、2201、2202、2203、2204、2205、2206 転送装置
301 管理サーバ
401 設定メトリック情報処理部
402、1100 相関値計算部
403 相関値判定部
404、1200 メトリック生成部
405 情報管理部
406 通信制御部
500 参照情報構成テーブル
501 リアルタイム情報テーブル
502 妥当性あり既存メトリック情報テーブル
503 設定メトリック情報テーブル
1000 管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク上のノード間の通信を管理する管理装置であって、
ネットワークに対して設定する設定メトリック情報と、前記ネットワーク上で行われる通信に関するネットワーク情報との相関値を計算する相関値計算部と、
前記相関値に基づいて、前記ネットワーク上の新規メトリックを生成するメトリック生成部と、
を備えることを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記管理装置は、さらに、
前記生成した新規メトリックに基づいて、前記ネットワーク上の通信制御を行う通信制御部を備えることを特徴とする付記1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記メトリック生成部は、
前記相関値の絶対値と、前記相関値の正負とに基づいて、前記新規メトリックを生成することを特徴とする付記1または2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記メトリック生成部は、
前記相関値が正であり、かつ前記相関値の絶対値が第1の閾値以上である場合に、前記相関値に基づいて新規メトリックを生成し、
前記相関値が負であり、かつ前記相関値の絶対値が第2の閾値以上である場合に、前記相関値の逆相に基づいて新規メトリックを生成することを特徴とする付記3に記載の管理装置。
【請求項5】
前記メトリック生成部は、
前記相関値の絶対値が第1の閾値または第2の閾値未満かつ前記相関値の絶対値が第3の閾値以上である場合に、前記情報管理部に設定された既存のメトリックを新規メトリックとして使用し、
前記相関値の絶対値が第1の閾値または第2の閾値未満かつ前記相関値の絶対値が第3の閾値未満である場合に、前記ネットワーク情報の平均値を新規メトリックとして生成することを特徴とする付記3または4に記載の管理装置。
【請求項6】
ネットワークに対して設定する設定メトリック情報と、ネットワーク上で行われる通信に関するネットワーク情報との相関値を計算するステップと、
前記相関値に基づいて、前記ネットワーク上の新規メトリックを生成するステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項7】
前記通信方法は、さらに、
前記生成した新規メトリックに基づいて、前記ネットワーク上の通信制御を行うステップを含むことを特徴とする付記6に記載の通信方法。
【請求項8】
前記新規メトリックを生成するステップは、
前記相関値の絶対値と、前記相関値の正負とに基づいて、前記新規メトリックを生成することを特徴とする付記6または7に記載の通信方法。
【請求項9】
前記新規メトリックを生成するステップは、
前記相関値が正であり、かつ前記相関値の絶対値が第1の閾値以上である場合に、前記相関値に基づいて新規メトリックを生成し、
前記相関値が負であり、かつ前記相関値の絶対値が第2の閾値以上である場合に、前記相関値の逆相に基づいて新規メトリックを生成することを特徴とする付記8に記載の通信方法。
【請求項10】
ネットワークに対して設定する設定メトリック情報と、ネットワーク上で行われる通信に関するネットワーク情報との相関値を計算する処理と、
前記相関値に基づいて、前記ネットワーク上の新規メトリックを生成する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−119982(P2012−119982A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268546(P2010−268546)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】