説明

管組立体及び管組立体の製造方法

【課題】耐薬品性及びポンピング性能に優れ且つ接続強度を充分に向上できる管組立体及び管組立体の製造方法を提供すること。
【解決手段】管組立体10は、極性基を実質的に有しない樹脂を少なくとも表面に有する第1管状部材20と、極性基を有する樹脂を少なくとも表面に有する第2管状部材30と、を備え、第1管状部材20の内部空間S1と第2管状部材30の内部空間S2とが連通されている。第1管状部材20と第2管状部材30との接続部には、極性基を有する樹脂を少なくとも表面に有する介在部材40が介在し、この介在部材40及び第2管状部材30は、接着剤を介して接合され、介在部材40及び第1管状部材20は、互いに係合可能な係合構造41,26を有し、この係合構造41,26により互いに係合し、第1管状部材20の軸方向への相対移動を制限されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管組立体及び管組立体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
輸血セット、輸液セット等に設けられている点滴筒は、その液体流出口に可撓性のチューブが接続されて使用される。従来、点滴筒の材料には、ポリ塩化ビニルが用いられてきたが、ポリ塩化ビニル製の点滴筒は、耐薬品性が低いため特定の薬剤に侵されてしまう問題点を有している。また、ポリ塩化ビニル製の点滴筒は、ポンピング時に原型復元力が弱いという問題点も有している。そこで、点滴筒の材料は、耐薬品性及びポンピング性能に優れたポリプロピレン等のポリオレフィンの材料に切り換えつつある。
【0003】
しかし、耐薬品性及びポンピング性能に優れた材料の多くは、可撓性のチューブとの摩擦抵抗が低く、難接着性である。このため、かかる材料を点滴筒に用いると、チューブが強く引っ張られた場合等に、点滴筒から抜けるおそれがある。
【0004】
そこで、点滴筒及びチューブの接続強度を向上する技術が要請されている。これに関して、特許文献1には、点滴筒とチューブとの間に低融点部材を介在させ、この低融点部材を点滴筒及びチューブの各々に融着する技術が開示されている。また、特許文献2には、点滴筒の先端を内管及び外管を有する二重管構造にし、内管と外管との間隙にチューブの端部を押し広げながら挿入する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平2−80059号公報
【特許文献2】特開2002−39468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示されるような融着による接続強度の向上には限度がある。また、特許文献2に示される構造でも、接続強度の向上は不充分である。
【0006】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、耐薬品性及びポンピング性能に優れ且つ接続強度を充分に向上できる管組立体及び管組立体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、接着剤による接合及び構造的な係合を組み合わせて接続を行うことで、種々の素材からなる管状部材同士の接続強度を充分に向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0008】
(1) 極性基を実質的に有しない樹脂を少なくとも表面に有する第1管状部材と、極性基を有する樹脂を少なくとも表面に有する第2管状部材と、を備え、該第1管状部材の内部空間と該第2管状部材の内部空間とが連通されている管組立体であって、
前記第1管状部材と第2管状部材との接続部には、極性基を有する樹脂を少なくとも表面に有する介在部材が介在し、
前記介在部材及び前記第2管状部材は、接着剤を介して接合され、
前記介在部材及び前記第1管状部材は、互いに係合可能な係合構造を有し、該係合構造により互いに係合し、第1管状部材の軸方向への相対移動を制限されていることを特徴とする管組立体。
【0009】
(1)の発明によれば、第1管状部材は、極性基を実質的に有しない樹脂を少なくとも表面に有するため、耐薬品性及びポンピング性能に優れる。
その反面、第1管状部材は、接着剤では充分な接合強度が得られないところ、介在部材とともに係合構造を有するため、介在部材に強固に係合され第1管状部材の軸方向への相対移動が制限される。これにより、第1管状部材が軸方向に相対移動して介在部材から離脱することは高度に抑制される。
そして、介在部材は、極性基を有する樹脂を表面に有するため、同じく極性基を有する樹脂を表面に有する第2管状部材に接着剤で強固に接合される。これにより、第2管状部材が介在部材から離脱することも高度に抑制される。
このように第1管状部材及び第2管状部材は、介在部材からの離脱をそれぞれ高度に抑制されているため、全体として接続強度を充分に向上できる。よって、第1管状部材及び第2管状部材が離反する方向に引っ張られる等の外力が生じた場合でも、第1管状部材及び第2管状部材が分離するような事態を抑制できる。
【0010】
(2) 前記第1管状部材の一端には、内径が細くなっている細径部が設けられ、
前記介在部材は、内管と、該内管の外周に間隙を介して設けられた外管と、該内管と該外管とを連結する連結部と、を有し、
前記第1管状部材に設けられた細径部が前記介在部材に設けられた内管内面に挿入された状態で前記第1管状部材及び前記介在部材が係合し、前記間隙に前記第2管状部材が挿入された状態で接続されることにより、前記第1管状部材と前記第2管状部材が連通していることを特徴とする(1)記載の管組立体。
【0011】
(2)の発明によれば、細径部が介在部材の内管内面に挿入されるとともに、内管と外管との間隙に第2管状部材が挿入されているため、第1管状部材と第2管状部材が高度の気密性を確保しながら連通される。これにより、第1管状部材及び第2管状部材を流通する流体(気体、液体、固体)の漏出を抑制でき、また流体への異物混入等が抑制され安全性を向上できる。
【0012】
(3) 前記連結部のうち前記間隙に臨む臨面には逃避穴が形成され、該逃避穴には前記接着剤が侵入可能であり、
前記第1管状部材の外面には、周方向に関して一部に突設された突条部が設けられ、該突条部が前記逃避穴に挿入されることで、前記第1管状部材及び前記第2管状部材の周方向への相対移動が制限されている(2)記載の管組立体。
【0013】
間隙に第2管状部材を挿入する際、間隙内で逃げ場を失った接着剤が第2管状部材の挿入を阻害する場合がある。かかる場合、第2管状部材と介在部材との接触面積が充分に確保できず、結果的に、第2管状部材と介在部材との接合強度や、第1管状部材及び第2管状部材の気密性が不充分になることが懸念される。
しかし(3)の発明によれば、第2管状部材を間隙の奥へと挿入するにつれ、間隙内の接着剤が逃避穴に侵入して間隙から逃避するため、第2管状部材の挿入が円滑化される。これにより、第2管状部材と介在部材との接触面積を所望の程度に確保できるため、第2管状部材と介在部材との接合強度や、第1管状部材及び第2管状部材の気密性をより向上できる。
【0014】
また、逃避穴に突条部が挿入され、第1管状部材及び第2管状部材の周方向への相対移動が制限されている。これにより、第1管状部材と介在部材とが相対的に回転し、接着剤の硬化を悪化したり、接着剤を剥離したり等の問題が解消されるので、接続強度をより向上でき、捻れや捩れ等の複雑な外力が負荷された場合においても離脱を抑制できる。
【0015】
(4) 前記係合構造は、前記第1管状部材に設けられた係合部と、前記介在部材に設けられた被係合部と、を有し、該係合部は前記第1管状部材の軸方向の一部に設けられた凹凸を有し、該被係合部は該凹凸に嵌合する構造であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の管組立体。
【0016】
(4)の発明によれば、第1管状部材と介在部材とが凹凸への嵌合により係合されているため、該係合は、破壊的な外力が負荷されない限り半永久的に維持され、優れた接続強度を長期間に亘って維持できる。
【0017】
(5) 前記第1管状部材が点滴筒、輸液回路、又は輸液バッグであり、前記第2管状部材がチューブであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の管組立体。
【0018】
(6) 前記接着剤がUV硬化接着剤であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の管組立体。
【0019】
(7) 極性基を実質的に有しない樹脂を少なくとも表面に有する第1管状部材と、極性基を有する樹脂を少なくとも表面に有する第2管状部材とを、該第1管状部材の内部空間と該第2管状部材の内部空間とが連通するように組み立てる管組立体の製造方法であって、
極性基を有する樹脂を少なくとも表面に有する介在部材を前記第1管状部材の一端に係合させ、軸方向に関する相対移動を制限する工程と、
前記介在部材及び第2管状部材を、接着剤を介して接合する工程と、を有することを特徴とする管組立体の製造方法。
【0020】
(7)の発明は、(1)に記載の管組立体を製造方法として展開したものである。よって、(7)の発明によれば、(1)の発明と同様の効果が得られる。なお、上記の2工程の順序は特に限定されないし、2工程を同時に行ってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1管状部材は、極性基を実質的に有しない樹脂を少なくとも表面に有するため、耐薬品性及びポンピング性能に優れる。
その反面、第1管状部材は、接着剤では充分な接合強度が得られないところ、介在部材とともに係合構造を有するため、介在部材に強固に係合され第1管状部材の軸方向への相対移動が制限される。これにより、第1管状部材が軸方向に相対移動して介在部材から離脱することは高度に抑制される。
そして、介在部材は、極性基を有する樹脂を表面に有するため、同じく極性基を有する樹脂を表面に有する第2管状部材に接着剤で強固に接合される。これにより、第2管状部材が介在部材から離脱することも高度に抑制される。
このように第1管状部材及び第2管状部材は、介在部材からの離脱をそれぞれ高度に抑制されているため、全体として接続強度を充分に向上できる。よって、第1管状部材及び第2管状部材が離反する方向に引っ張られる等の外力が生じた場合でも、第1管状部材及び第2管状部材が分離するような事態を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る管組立体10の分解斜視図(a)及び部分透過斜視図(b)である。図2は管組立体10の部分拡大断面図である。図3は図2の管組立体10のIII−III線断面図であり、図4は図2の管組立体10のIV−IV線断面図である。また、図5(a)は介在部材40の底面図、(b)は(a)のb−b線断面図、(c)は介在部材40の上面図であり、図6は介在部材40の全体斜視図である。
【0024】
本実施形態の管組立体10は、第1管状部材20及び第2管状部材30を備え、第1管状部材20の内部空間S1と第2管状部材30の内部空間S2とが連通されている。これにより、第1管状部材20内の流体が第2管状部材30へと流通可能である。
【0025】
第1管状部材20は、極性基を実質的に有しない樹脂(以下、非極性樹脂とも称する)を少なくとも表面に有する一方、第2管状部材30は、極性基を有する樹脂(以下、極性樹脂とも称する)を少なくとも表面に有する。このため、第1管状部材20と第2管状部材30とを接着剤で強固に接合することは困難である。
【0026】
そこで本発明では、第1管状部材20と第2管状部材30との接続部Cに介在部材40が介在し、この介在部材40を介して第1管状部材20と第2管状部材30との接続がなされる。ここで、介在部材40は極性樹脂を少なくとも表面に有するため、介在部材40及び第2管状部材30は接着剤ABを介して強固に接合できている(図3参照)。一方、第1管状部材20及び介在部材40は、互いに係合可能な係合構造(後述の鍔部26、内管41)を有し、この係合構造により互いに係合することで、第1管状部材20の軸方向(図2における左右方向)への相対移動が制限されている。これにより、第1管状部材20及び第2管状部材30は、介在部材40からの離脱をそれぞれ高度に抑制されることになる。
【0027】
なお、本明細書における「接続部」とは、第1管状部材及び第2管状部材のうち、接続に直接又は間接に関与する部位すべてを包含する概念であり、必ずしも第1管状部材と第2管状部材との間の部位に限定されるものではない。例えば、後述の外管43は、第2管状部材30の外側に位置しているが、第1管状部材20と第2管状部材30との接続に関与しているため、接続部に介在する。
【0028】
次に、本実施形態の具体的態様を説明する。
【0029】
本実施形態における第1管状部材20は、図1に示されるように筒状の第1本体21を有し、この第1本体21の一端は蓋23で被覆されている。第1本体21の他端は縮径部24によって外径が小さくなり、更に縮径部24の先には内径が細くなっている細径部25が配置されている。この細径部25の外面には外周方向へと突出する鍔部26が設けられ、これにより第1管状部材20の軸方向の一部に凹凸が設けられている。第2管状部材30は、可撓性を有する筒状(チューブ状)に構成されており、その一端が介在部材40に接着され、他端が留置針等の患者の体内に流通する医療機器に接続される。また、第2管状部材の途中には三方活栓等の部材が配置されることもある。
【0030】
介在部材40は内管41を有し、この内管41の長さは細径部25の凹部(鍔部26と後述の突条部28との間の部位)と同等又はそれより小さく構成されている。また、介在部材40は可撓性を有する部材から構成される。このため、内管41の内面411に細径部25が挿入されると、内管41が細径部25の凹部に嵌合し、第1管状部材20の軸方向への相対移動を制限する。このように、鍔部26及び突条部28は係合部を構成し、内管41は被係合部を構成する。
【0031】
細径部25の外径が装着前の内管41の内径よりも大きくなるにつれ、装着時には内管41が細径部25にきつく密着して係合する一方、過大になると内管41を細径部25に装着する作業が困難になる。そこで、細径部25の外径は内管41の内径と同等又はそれより若干大きいことが好ましい。なお本実施形態では、先端方向(図2における右方向)に向けて外径が順次縮まるテーパ部27が鍔部26の先に設けられているため、介在部材40の装着作業が容易化されている。
【0032】
内管41の外周には間隙Gを介して外管43が設けられ、この外管43は連結部45で内管41と連結されている。ここで、内管41の外径は第2管状部材30の第2本体31の内径と同等に構成されるとともに、間隙Gは第2管状部材30の第2本体31の肉厚より若干大きい幅に構成され、内管41の外面413に接着剤ABが配置されている。このため、間隙Gに挿入された第2管状部材30の第2本体31は内管外面413及び外管内面431の両側から接着剤ABを介して挟まれ、第2管状部材30と介在部材40とが強固に接合されている。
【0033】
なお、本実施形態では、接着剤ABの配置される箇所が、第2管状部材30の第2本体31と、内管外面413及び外管内面431の双方との間であるが、これに限られず、第2管状部材30の第2本体31と、内管外面413及び外管内面431の一方との間にのみであってもよい。このように、接着剤による接合箇所は、介在部材及び第2管状部材の当接面の一部又は全部であってよい。
【0034】
接続強度を更に向上できる点で、上述の鍔部26は、図2に示されるように、内管41の肉厚と略同じ高さだけ突出することが好ましい。鍔部26の突出高さが内管41の肉厚よりも過剰になると、鍔部26で広げられた第2本体31の細径部25への密着が不充分になって接続強度が低下し得る。また、鍔部26の突出高さが内管41の肉厚よりも過小になると、内管41が細径部25の凹部から外方へとはみ出し、外力を受けやすくなる結果、接続強度が不充分になり得る。
【0035】
ここで、図5及び6に示されるように、連結部45のうち間隙Gに臨む臨面48には逃避穴46が形成されている。この逃避穴46には、第2本体31の挿入時に押し込まれた接着剤ABが侵入し、第2本体31は所望の位置(本実施形態では間隙Gの最奥部)にまで挿入されている。
【0036】
逃避穴46は臨面48から背面47へと貫通している。一方、第1管状部材20の外面には、周方向に関して一部に突設された突条部28が設けられており、この突条部28が背面47側から逃避穴46に挿入されることで、第1管状部材20及び第2管状部材30の周方向への相対移動が制限されている。本実施形態の突条部28は細径部25の基端に位置するため、鍔部26と貫通孔29との間の間隙Gが細径部25の基端近傍にまで形成され、第2管状部材30と介在部材40との接合面積を充分に確保できる。
【0037】
突条部28は、細径部25を中心として略均等間隔(本実施形態では約180°間隔)で放射線状に突設されるとともに、逃避穴46は細径部25に対応して介在部材40の中央から放射線状に形成され(本実施形態では約90°間隔)、各々が細径部25よりも若干大きい寸法を有する。これにより、間隙Gから押し出された接着剤ABは、突条部28が挿入された逃避穴46内の隙間、及び突条部28が挿入されない逃避穴46に侵入して各隙間を充填し、第1管状部材20と介在部材40との接続を補強する(図4)。
【0038】
なお、本実施形態では、突条部28よりも逃避穴46を多数設けているため、突条部28が挿入されない逃避穴46も存在するが、これに限られず、突条部28及び逃避穴46が同数であってもよい。また、本実施形態では、逃避穴が臨面48から背面47へと貫通しているが、第2本体31を間隙G内の所望の位置にまで挿入できる程度に接着剤ABが逃避する限りにおいて、背面47へと貫通しなくともよい。この場合、突条部28が挿入される穴を背面47側に、逃避穴46とは別に設けることが好ましい。
【0039】
本実施形態の突条部28には第1管状部材20の周方向に延びる貫通孔29が形成され(図2)、この貫通孔29にも接着剤ABが侵入している(図4)。これにより、接着剤ABがより複雑に逃避穴46に係合するため、逃避穴46への突条部28の挿入状態がより安定になり、第1管状部材20と介在部材40との接続をより補強できる。貫通孔29の大きさ及び個数は、突条部28の強度低下による接続強度の低下と、貫通孔29への接着剤ABの侵入量増加による接続強度の上昇とを考慮して適宜設定されてよい。
【0040】
背面47は縮径部24の外面と略対称な形状(本実施形態では曲面)を有する。これにより、背面47は縮径部24に沿って配置され、その隙間が小さいため、S1及びS2の気密性を向上できる。本実施形態では、図2に示されるように、背面47と縮径部24との間の僅かな隙間が逃避穴46に収まりきらない接着剤ABで充填されているため、S1及びS2の気密性が更に向上されている。
【0041】
[素材]
前述のように、第1管状部材20は、極性基を実質的に有しない樹脂を少なくとも表面に有する。具体的に使用できる非極性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、又はこれらの共重合体等が挙げられ、柔軟性に優れて割れにくく、また耐薬品性及びポンピング性能に優れる点でポリプロピレンが好ましい。これらの樹脂を用いることでダイオキシン発生等の環境負荷を軽減できる。かかる効果を十全化するためには、第1管状部材20の表面のみならず、第1管状部材20全体を非極性樹脂で構成することが好ましい。なお、本明細書において「極性基を実質的に有しない」とは、表面処理等により若干量の極性基を表面に形成するような迂回態様を包含する趣旨である。
【0042】
一方、第2管状部材30及び介在部材40は、極性基を有する樹脂を少なくとも表面に有する。具体的に使用できる極性樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等が挙げられ、接着剤による高い接合強度が得られる点ではポリ塩化ビニルが好ましい。
【0043】
上記の極性樹脂は、第2管状部材30及び介在部材40の表面のみに配置し、他の非表面部分は非極性樹脂や金属等で構成してもよい。なお、上記の極性樹脂を用いず、非極性樹脂の表面に周知の表面処理により極性基を生じさせてもよい。また、第1管状部材20及び介在部材40の素材は互いに同一でも異なっていてもよいが、異なっている場合には充分な接合強度を確保できる接着剤の種類が制限されるため、同一であることが好ましい。
【0044】
接着剤は、第1管状部材20及び介在部材40の素材に応じて、溶剤型、熱硬化型、UV硬化型等の従来周知の材料から適宜設定されてよい。ただし、硬化工程による管組立体10の劣化を最小限に抑制できる点では、UV硬化接着剤が好ましい。この場合、UVを充分に透過して効率的に硬化がなされるよう、少なくとも第2管状部材30及び介在部材40の外管43は透明に構成されることが好ましく、より好ましくは管組立体10全体が透明に構成される。
【0045】
[用途]
管組立体10は、内部空間S1,S2で流体を流通することを利用するあらゆる用途に使用できる。特に限定されるものではないが、第1管状部材20が点滴筒、輸液回路、又は輸液バッグであり、第2管状部材30がチューブである管組立体10は、高度の安全性が要求される医療器具として大変有用である。この場合の流体は、生理食塩水や各種薬液であってよい。
【0046】
[製造方法]
(態様1)
以上の管組立体10の製造方法の一態様を図7に基づいて説明する。まず、介在部材40を第1管状部材20の一端に係合させ、第1管状部材20の軸方向に関する相対移動を制限する。具体的には、内管41の内面411にテーパ部27を背面47側から押圧することにより、可撓性を有する介在部材40の内管41の内面411が広がり、細径部25に挿入可能となる。挿入後、介在部材40の内管41の内面411は細径部25の径へと縮むことで、細径部の凹部と内管41が嵌合される。
【0047】
次に、未硬化の接着剤ABを内管41の外面413又は外管43の内面431に塗布する。本態様では、挿入工程の簡便性の観点で、介在部材40を第1管状部材20に係合させた後、未硬化の接着剤ABを塗布しているが(図7(b))、これに限られず挿入前に未硬化の接着剤ABを予め塗布してもよい。また、接着剤の塗布箇所は、介在部材40の内管41の外面413、外管43の内面431、又は第2管状部材30の内面のいずれであってもよく、これらの複数の箇所であってもよい。
【0048】
次に、介在部材40及び第2管状部材30を、接着剤ABを介して接合する。具体的には、第2管状部材30を27側から間隙Gの奥側へと、所望の位置にまで挿入する。ここで第2管状部材30を間隙Gの奥へと挿入するにつれ、間隙G内の接着剤ABが逃避穴46に侵入して間隙Gから逃避するため、挿入が円滑になされる。間隙Gから逃避した接着剤ABは、その量に応じて、貫通孔29、縮径部24と背面47との隙間に広がる。その後、接着剤ABを硬化することで介在部材40及び第2管状部材30が接合される。硬化方式は接着剤ABのタイプに応じて適宜選択すればよく、接着剤ABがUV硬化接着剤であれば、UVを照射すればよい。
【0049】
なお、図7の態様では、第1管状部材20に介在部材40を係合した後に、第2管状部材30を介在部材40の間隙に挿入し接合を行っているため、接続部C内の種々の隙間が接着剤ABで充填され、内部空間S1,S2の気密性をより向上できる。ただし、これに限られず、介在部材40の間隙Gに第2管状部材30を挿入した後、第2管状部材30及び介在部材40の複合体を第1管状部材20に装着してもよい。この場合、接着剤ABの硬化は、第2管状部材30及び介在部材40の複合体の第1管状部材20への装着前又は装着後のいずれに行ってもよいが、逃避穴46に接着剤ABが侵入している場合には、突条部28を逃避穴46に容易に挿入できるよう装着後に行うことが望まれる。
【0050】
(態様2)
管組立体10の製造方法の別態様を図8に基づいて説明する。まず、介在部材40の内管41の内面411若しくは背面47、又は第1管状部材20の外面の1箇所以上に、硬化型の接着剤(例えばUV接着剤)を塗布する(図8(a))。
【0051】
次に、介在部材40を第1管状部材20の一端に係合させ、第1管状部材20の軸方向に関する相対移動を制限する。具体的には、内管41の内面411にテーパ部27を背面47側から挿入し、細径部25の凹部に内管41を嵌合させる(図8(b))。
【0052】
続いて、第1管状部材20と係合させた介在部材40の内管41の外面413若しくは外管43の内面431、又は第2管状部材30の内面の1箇所以上にシクロヘキサノン等の溶剤型接着剤を塗布する。硬化型の接着剤と同様に、溶剤型接着剤は、極性基を有する樹脂からなる介在部材40及び第2管状部材30を強固に接着することができる。
【0053】
次に、介在部材40及び第2管状部材30を、接着剤ABを介して接合する。具体的には、第2管状部材30を27側から間隙Gの奥側へと、所望の位置にまで挿入する。
【0054】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0055】
例えば、前記実施形態では、介在部材40を内管41、外管43、及び連結部45で構成したが、外管43及び連結部45は必須ではない。即ち、介在部材を内管41のみで構成してもよいし、内管41及び外管43のみ(内管41と外管43とは分離している)で構成してもよい。
【0056】
また、前記実施形態では、内管41を細径部25の凹部に嵌合して第1管状部材20と介在部材40とを係合する構成としたが、これに限られず、細径部25の外周及び内管41の内周にねじ山を設け、内管41を細径部25に螺合してもよい。ただし、螺合による係合の場合には、第1管状部材20及び介在部材40が相対的に回転することによる螺合の解消を抑制するための構造(例えば、突条部28と逃避穴46)が必須である。
【0057】
前記実施形態では、細径部25の外面に内管41が係合され、内管41の外側に第2管状部材30が配置された構成としたが、これに限られず、第1管状部材の内側に介在部材が係合され、介在部材の内側に第2管状部材が配置される構成であってもよい。ただし、第1管状部材への介在部材の係合作業の容易性の観点では、前記実施形態の方が好ましい。
【0058】
また、前記実施形態では、内管41及び外管43をいずれも筒状体に構成したが、これに限られず、複数の部分円弧柱体を互いに隙間をあけて設けてもよい。また、逃避穴46には必ずしも接着剤ABが侵入していなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る管組立体の分解斜視図(a)及び部分透過斜視図(b)である。
【図2】図1の管組立体の部分拡大断面図である。
【図3】図2の管組立体のIII−III線断面図である。
【図4】図2の管組立体のIV−IV線断面図である。
【図5】前記実施形態に係る管組立体を構成する介在部材の底面図(a)、(a)のb−b線断面図(b)、介在部材の上面図(c)である。
【図6】図5の介在部材の全体斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る管組立体の製造方法の手順を示す図である。
【図8】本発明の別の実施形態に係る管組立体の製造方法の手順を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
10 管組立体
20 第1管状部材
25 細径部
26 鍔部(係合構造、係合部)
28 突条部(係合部)
30 第2管状部材
40 介在部材
41 内管(係合構造、被係合部)
43 外管
45 連結部
46 逃避穴
48 臨面
411 内管内面
AB 接着剤
G 間隙
S1 第1管状部材の内部空間
S2 第2管状部材の内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性基を実質的に有しない樹脂を少なくとも表面に有する第1管状部材と、極性基を有する樹脂を少なくとも表面に有する第2管状部材と、を備え、該第1管状部材の内部空間と該第2管状部材の内部空間とが連通されている管組立体であって、
前記第1管状部材と第2管状部材との接続部には、極性基を有する樹脂を少なくとも表面に有する介在部材が介在し、
前記介在部材及び前記第2管状部材は、接着剤を介して接合され、
前記介在部材及び前記第1管状部材は、互いに係合可能な係合構造を有し、該係合構造により互いに係合し、第1管状部材の軸方向への相対移動を制限されていることを特徴とする管組立体。
【請求項2】
前記第1管状部材の一端には、内径が細くなっている細径部が設けられ、
前記介在部材は、内管と、該内管の外周に間隙を介して設けられた外管と、該内管と該外管とを連結する連結部と、を有し、
前記第1管状部材に設けられた細径部が前記介在部材に設けられた内管内面に挿入された状態で前記第1管状部材及び前記介在部材が係合し、前記間隙に前記第2管状部材が挿入された状態で接続されることにより、前記第1管状部材と前記第2管状部材が連通していることを特徴とする請求項1記載の管組立体。
【請求項3】
前記連結部のうち前記間隙に臨む臨面には逃避穴が形成され、該逃避穴には前記接着剤が侵入可能であり、
前記第1管状部材の外面には、周方向に関して一部に突設された突条部が設けられ、該突条部が前記逃避穴に挿入されることで、前記第1管状部材及び前記第2管状部材の周方向への相対移動が制限されている請求項2記載の管組立体。
【請求項4】
前記係合構造は、前記第1管状部材に設けられた係合部と、前記介在部材に設けられた被係合部と、を有し、該係合部は前記第1管状部材の軸方向の一部に設けられた凹凸を有し、該被係合部は該凹凸に嵌合する構造であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の管組立体。
【請求項5】
前記第1管状部材が点滴筒、輸液回路、又は輸液バッグであり、前記第2管状部材がチューブであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の管組立体。
【請求項6】
前記接着剤がUV硬化接着剤であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の管組立体。
【請求項7】
極性基を実質的に有しない樹脂を少なくとも表面に有する第1管状部材と、極性基を有する樹脂を少なくとも表面に有する第2管状部材とを、該第1管状部材の内部空間と該第2管状部材の内部空間とが連通するように組み立てる管組立体の製造方法であって、
極性基を有する樹脂を少なくとも表面に有する介在部材を前記第1管状部材の一端に係合させ、軸方向に関する相対移動を制限する工程と、
前記介在部材及び第2管状部材を、接着剤を介して接合する工程と、を有することを特徴とする管組立体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−51470(P2010−51470A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218474(P2008−218474)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】