説明

管継手に対する接続管の挿入及び締付ナットの本締め方法、およびその方法に使用される印字用治具

【課題】 接続管に施す単一のマーキングによって締付ナット本締め前の接続管の挿入量の確認と締付ナット本締め後の締付完了の確認を可能にする、管継手に対する接続管の挿入及び締付ナットの本締め方法を提供する。
【解決手段】 接続管Pに、軸方向に延びる軸方向マーキング16と、周方向マーキング17とを有するL字状のマーキング18が施される。締付ナット2を継手本体1の雄ねじ11に仮締めした後に、接続管Pを軸方向マーキング16と周方向マーキング17が共に仮締め状態の締付ナット2で覆い隠されるまで継手本体1に挿入する。次いで、締付ナット2を、軸方向マーキング16が締付ナット2から露出し且つ周方向マーキング17が締付ナット2で覆い隠されたままの状態になるまで締め付けることで本締めを完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷熱空調機等の冷媒配管など金属製接続管の接続に用いられる管継手に対する接続管の挿入及び締付ナットの本締め方法、およびその方法に使用される印字用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の管継手として、先に本出願人により図6に示すようなフェルールを用いる形態の管継手を提案した(特願2004−375974)。図6における右半分は締付ナット32の仮締め状態図を、左半分は締付ナット32の本締め完了時の状態図をそれぞれ示している。この管継手は、筒状の継手本体31と、この継手本体31の雄ねじ31aに螺合される締付ナット32と、継手本体31に挿入される金属製の接続管Pを囲むような筒状をなす金属製のフェルール(締付リング)33と、継手本体31の内周に軸方向外方に向かって漸次拡がり状に形成したテーパ面35を有し、締付ナット32の螺進に伴ってフェルール33を縮径方向へ押圧する縮径手段とを備え、この縮径手段により押圧されたフェルール33が塑性変形しつつ縮径することで接続管Pの外周に対し気密状態に密着する形態で締め付ける構成としたものである(図6における左半分の状態図を参照)。この管継手によれば、バーナを使用するロウ付け接着に代わるものとして有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記管継手において、接続管Pを接続する際には、予め、継手本体31に対しフェルール33を挿入してセットする。次いで、図6における右半分に示すように、締付ナット32を継手本体31の雄ねじ31aに螺合させて仮締めする。このように仮締め後、手作業により接続管Pを継手本体31に挿入するが、この挿入は接続管Pの先端P1が継手本体31の内奥の管端ストッパー部36に当たったところで止める。この後、スパナなどの工具で締付ナット32を回転させて本締めすることでフェルール33を接続管Pに食込ませて接続管Pの抜止めとシールを行い(図6における左半分の状態図を参照)、接続作業を終えるというものである。
【0004】
しかしながら、図6における右半分に示すように接続管Pの先端P1が継手本体31の管端ストッパー部36に当たったところで止めるのは、接続管Pの先端P1が管端ストッパー部36に当たることによる手応えにより行われるが、これでは作業者が誤って判断することがあり、そればかりか、一旦、接続管Pの先端P1が継手本体31の管端ストッパー部36に当たるまで挿入してから締付ナット32を本締めするまでの間に、接続管P又は継手本体31が他物と当たるなど何等かの事情により接続管Pが継手本体31から少し抜け出しかけることがある。作業者はこれに気付かないまま締付ナット32を本締めしてしまうことがある。この結果、接続管Pの先端P1が継手本体31の管端ストッパー部36に達していない状態、すなわち挿入不足の状態で接続作業を終えてしまうという施工管理上好ましくない事態が起こることがあった。
【0005】
本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたもので、上記のようなフェルールを用いる形態の管継手において、接続管に特殊形状のマーキングを施すことにより継手本体に対する接続管の所定挿入量を目視で容易に確認できて挿入不足を防止でき、またそのマーキングによって締付ナットを所定深さにまで締め付けたか否かの本締め完了の確認をも可能にし、つまり単一のマーキングによって締付ナットの本締め前と本締め後の双方の確認を可能にする管継手に対する接続管の挿入及び締付ナットの本締め方法、およびその方法に使用される印字用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の対象とする管継手は、金属製の接続管の一端部が挿入される受口部およびこの受口部の内奥に設けられた管端ストッパー部を有する継手本体と、前記接続管の外周に遊嵌され且つ前記継手本体の受口部の外周に設けた雄ねじにねじ込み結合される締付ナットと、前記継手本体の受口部の内部に配され、前記接続管の外周に嵌合する円筒形状のフェルールと、を備えている。前記受口部の内周には、前記フェルールの先端側部の当接により該先端部に縮径作用を加えるテーパ面が軸方向外方に向かって漸次拡がり状に形成されている。前記締付ナットの内周には、前記雄ねじに螺合する雌ねじと、この雌ねじの軸方向外端側に設けられるフェルール押圧段部とが形成され、前記フェルール押圧段部が前記締付ナットの本締めによる螺進に伴って前記フェルールの後端部を軸方向内方へ押し込むことで該フェルールの先端側部が前記テーパ面と前記接続管外周との隙間に食い込んで前記接続管外周と前記テーパ面に気密状態に密着するようにしてある。
本発明は、このような管継手に対する接続管の挿入及び締付ナットの本締め方法であって、前記接続管の一端部に、軸方向に延びる軸方向マーキングと、この軸方向マーキングの先端部から直角に周方向に延びる周方向マーキングとを有するL字状のマーキングとを、前記軸方向マーキングと周方向マーキングが前記締付ナットの仮締め状態で且つ前記接続管の一端部の先端が前記管端ストッパー部に当接するときに前記締付ナットで覆い隠され、且つ、前記締付ナットの本締め完了時に前記軸方向マーキングが前記締付ナットから露出し且つ前記周方向マーキングが前記締付ナットで覆い隠されたままの状態となるように施しておき、次いで、予め前記フェルールを前記受口部内に挿入するとともに前記締付ナットを前記雄ねじに仮締めした後に、前記接続管を前記軸方向マーキングと周方向マーキングが共に仮締め状態の締付ナットで覆い隠されるまで継手本体に挿入し、次いで、前記締付ナットを、前記軸方向マーキングが前記締付ナットから露出し且つ前記周方向マーキングが前記締付ナットで覆い隠されたままの状態になるまで本締めすることに特徴を有するものである。
【0007】
本発明の印字用治具は、上記管継手に対する接続管の挿入及び締付ナットの本締め方法に使用されるものであって、断面溝形状の鞘と、この鞘の溝内にはめ込まれて枢軸回りに回動可能に枢着され、前記軸方向マーキングに対応する縦孔と前記周方向マーキングに対応する横孔からなるL字状の貫通孔を有するゲージ板と、前記鞘に付設され、前記接続管の先端に当てがう突片とを備えてなることに特徴を有するものである。
この場合において、前記ゲージ板の板厚は、前記継手本体の前記雄ねじの軸方向内端から径方向外方へ張出した段部と、本締め完了時の前記締付ナットの先端との間の隙間(隙間が零の場合を含む)よりも大きく設定したものとすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の対象の管継手によれば、締付ナットを継手本体に本締めすることによりフェルール押圧段部がフェルールの後端部を軸方向内方へ押し込んで該フェルールの先端側部がテーパ面と接続管外周との隙間に食い込むようにしてあり、この食い込みにより接続管が継手本体から抜け止めされる状態に接続される。また、フェルールが継手本体のテーパ面と接続管の外周との隙間に食い込んで接続管の外周とテーパ面にそれぞれ気密状に密着するようにしてあるため継手本体と接続管の隙間がシールされる。
【0009】
本発明の方法によれば、接続管の一端部に、軸方向に延びる軸方向マーキングと、この軸方向マーキングの先端部から直角に周方向に延びる周方向マーキングとを有するL字状のマーキングが施されており、軸方向マーキングと周方向マーキングは締付ナットの仮締め状態で且つ接続管の一端部の先端が管端ストッパー部に当接しているときに仮締め状態の締付ナットで覆い隠され、且つ、締付ナットの本締め完了時に軸方向マーキングが締付ナットから露出し且つ周方向マーキングが締付ナットで覆い隠されたままの状態となるように設定してある。したがって、接続管を継手本体に挿入するときに、接続管の先端が管端ストッパー部に当接するまで挿入されたか否かは軸方向マーキングと周方向マーキングの両方が仮締め状態の締付ナットで覆い隠されているか否かを目視で確認することで容易に知り得ることができる。仮に、その接続管の挿入後において何等かの事情により接続管が少し抜けかけていると、マーキングの一部又は全体が締付ナットから出て見えるため、これに容易に気付いて再挿入を促すことになり、したがって接続管が少しでも抜けかけている状態で締付ナットが本締めされるという問題を解消できる。
【0010】
また、締付ナットの本締めが正常になされているか否かの判別は、軸方向マーキングが締付ナットから露出し且つ周方向マーキングが締付ナットで覆い隠されているか否かを目視することで容易に確認でき、軸方向マーキングの一部が締付ナットに隠れたままである場合は未だ締付不足であることを認識でき、この場合は再締付けを促すため、締付不足のまま作業を終えることを防止できる。
このように、接続管に単一のL字状のマーキングを施すという簡単な手段で、接続管の先端が管端ストッパー部に当接するまで挿入されたか否か、および締付ナットの本締めが正常になされているか否かの双方の確認を容易に行うことができるという利点がある。
【0011】
上記構成の印字用治具によれば、鞘からゲージ板を鞘に対し直角になるよう引き出し、突片を接続管の先端に当てがい、該ゲージ板を接続管の外面に沿って該接続管の長手方向に配置したうえで、フェルトペンなどにより貫通孔を通して接続管の外面に印字することにより所定のマーキングを容易に施すことができる。
ゲージ板の板厚は、継手本体の雄ねじの軸方向内端から径方向外方へ張出した段部と、本締め完了時の締付ナットの先端との間の隙間よりも大きく設定しておくと、締付ナットの本締め完了時に、該ゲージ板を継手本体の段部と締付ナットの先端との間に差し込むことを試みて、その差込みが不可能であれば締付ナットが正常に締め込まれたことを確認でき、その差込みが可能であれば締付不足であることを知り得て再締付けを促すことができ、この点でも締付不足を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の好適な実施例を図面に基づき説明する。図1は本発明の対象とする管継手を接続管の挿入前の状態で示す半欠截断面図、図2は同管継手を接続管の挿入後および締付ナットの本締め完了時の状態を示す半欠截断面図、図3は同管継手に挿入される接続管のマーキングに使用される印字用治具の平面図、図4は図3の印字用治具の使用状態を示す平面図、図5は図4におけるX方向から見た側面図である。
【0013】
図1において、本発明の対象とする管継手は、継手本体1、締付ナット2、およびフェルール3を備える。この管継手により接続される接続管Pは銅管やステンレス管等からなり、この所定箇所には後述するように所定のマーキング18が施される。
【0014】
図1、図2に示すように、継手本体1は筒状に形成され、これの少なくとも一端部に接続管Pの一端部が挿入される受口部4を開口する。この受口部4の内周に、その軸方向内側から外側に向かって順に、環状の管端ストッパー部5と、この管端ストッパー部5の軸方向外側部から軸方向外方へ真直ぐに形成される第1のストレート面6と、この第1のストレート面6の軸方向外側端から軸方向外方に向かって漸次拡がりに形成される第1のテーパ面7と、この第1のテーパ面7の軸方外方端に連続して軸方向外方へ真直ぐにかつ前記第1のストレート面6より大きい内径に形成される第2のストレート面8と、受口部4の軸方向外側開口端の内周であって第2のストレート面8の軸方向外側端から軸方向外方に向かって漸次拡がりに形成される第2のテーパ面9とが備えられている。第2のテーパ面9の傾斜角度は第1のテーパ面7よりも大きく設定されている。継手本体1の外周における軸方向中間位置にはスパナ等工具が掛けられる多角形の工具受け部10が張り出し形成され、受口部7の外周に対応する位置には雄ねじ11が形成されている。
【0015】
締付ナット2は、これの先端側の内周に継手本体1の雄ねじ11に螺合する雌ねじ12と、この雌ねじ12の軸方向後端側に軸心と直交するよう径方向内方に向けて設けられるフェルール押圧段部13と、このフェルール押圧段部13の内径部から軸方向後方へ真直ぐに形成されるストレート面14とが備えられている。
【0016】
フェルール3は、継手本体1の第2のストレート面8の内径より少し小さい外径寸法を有し、かつ接続管Pの外径よりも少し大きい内径寸法を有する円筒形状に形成される。フェルール3の先端側部3aの外周は先窄まり状のテーパ面15に形成され、後端部3bは断面円形に形成されている。このフェルール3は真鍮やステンレスなど金属製であって、ステンレス製のフェルール3は銅管又はステンレス管からなる接続管Pに対応でき、真鍮製のフェルール3は銅管からなる接続管Pに対応できる。
【0017】
次に、接続管Pの挿入から締付ナット2の本締めまでの方法について説明する。
先ず、予め、図1、及び図2における右半分に示すように、継手本体1の受口部4内にフェルール3をこれの先端側部3aから挿入するとともに、手締めにより締付ナット2の雌ねじ12を継手本体1の雄ねじ11に螺合させて仮締めする。その際、フェルール3の先端側部3aの外周に先窄まり状のテーパ面15を形成しているので、受口部4内から第1のテーパ面7に亘って挿入し易い。この仮締め状態では、フェルール3は先端側部3aの最先端を継手本体1の第1のテーパ面7に当接するとともに、後端部3bを受口部4から後方外部へ突出する。また締付ナット2のフェルール押圧段部13がフェルール3の断面円形の後端部3bの円周一部に線接触状態に当接する。締付ナット2の先端2aは継手本体1の雄ねじ11の軸方向内端から径方向外方へ張出した段部10aよりも後方に離間した位置にある。
【0018】
一方、締付ナット2の仮締め前又は後に、図1に示すように、接続管Pの外周面の先端P1から所定距離を置いた一定箇所には、軸方向に延びる軸方向マーキング16と、この軸方向マーキング16の先端16aから直角に周方向に延びる周方向マーキング17とを有するL字状のマーキング18が施される。
軸方向マーキング16の後端16bと接続管Pの先端P1との間の距離Aは、仮締め状態の締付ナット2の後端2bと継手本体1の管端ストッパー部5との間の間隔B以下に設定する。周方向マーキング17の後端17bと接続管Pの先端P1との間の距離Cは、後述する図2における左半分に示すごとき本締め完了状態における締付ナット2の後端2bとの間の間隔D以下に設定する。軸方向マーキング16の先端16aは周方向マーキング17の後端17bと一致する。軸方向マーキング16の先端16aから後端16bまでの長さは、締付ナット2の仮締め状態時における先端2aの存在位置(図2の右半分状態図を参照)から本締め後における先端2aの移動位置(図2の左半分状態図を参照)までの距離、つまり締付ナット2の本締め量に等しい。なお、図1、図2中、符号17aは周方向マーキング17の前端を示す。
【0019】
L字状のマーキング18は、図3に示すような印字用治具19と図外のフェルトペンなどを用いて接続管Pに施す。印字用治具19は、或る接続管Pの管径に応じた寸法位置に軸方向マーキング16に対応する縦孔20aと周方向マーキング17に対応する横孔20bからなるL字状の貫通孔20を設けた一枚のゲージ板21、または図3のように数種の接続管Pの各管径に応じる貫通孔20をそれぞれ設けた複数枚のゲージ板21と、断面溝形状の鞘22からなり、ゲージ板21は鞘22の溝内にはめ込まれ、ゲージ板21の一端部が鞘22の一端部に枢軸23回りに回動可能に枢着されている。
【0020】
鞘22の枢軸23を有する一端側の溝開口端部には、使用に際し図5に示すように接続管Pの先端P1に当てがう突片24を付設している。縦孔20aの後端と突片24との間の距離Eは、軸方向マーキング16の後端16bと接続管Pの先端P1との間の距離A、すなわち仮締め状態の締付ナット2の後端2bと継手本体1の管端ストッパー部5との間の間隔B以下に設定している。横孔20bの後端と突片24との間の距離Fは、周方向マーキング17の後端17bと接続管Pの先端P1との間の距離C、すなわち本締め完了状態の締付ナット2の後端2bとの間の間隔D以下に設定している。
締付ナット2の正常な本締め完了状態が、締付ナット2の先端2aが継手本体1の段部10aの少し手前に達してその間に隙間が生じるように設定されている場合、ゲージ板21の板厚は、継手本体1の段部10aと、本締め完了時の締付ナット2の先端2aとの間の隙間よりも大きく設定している。
【0021】
鞘22に対しゲージ板21は枢軸23回りに出し入れされるが、鞘22の背部にはゲージ板21の一部を露出させる切欠25を設けて、その切欠25に指先を入れてゲージ板21を鞘22から押し出しやすくしている。
【0022】
この印字用治具19を用いて接続管Pにマーキング18を施すには、図4、図5に示すように鞘22からゲージ板21を鞘22に対し直角になるよう引き出し、突片24を接続管Pの先端P1に当てがい、該ゲージ板21を接続管Pの外面に沿って該接続管Pの長手方向に配置し、フェルトペンなどにより貫通孔20を通して接続管Pの外面にマーキング18を印字する。
【0023】
次いで、上記のように締付ナット2を仮締めした後は、マーキング18の施された接続管Pの先端P1を仮締め状態の締付ナット2から継手本体1の受口部4内に挿入する。このとき、接続管Pの先端P1が締付ナット2、フェルール3、第1のストレート面6を順に通過して管端ストッパー部5に当たるまで挿入するが、接続管Pの先端P1が管端ストッパー部5に当たっているか否かは、軸方向マーキング16と周方向マーキング17の両方が仮締め状態の締付ナット2で覆い隠されているか否かを目視で確認することで容易に知り得ることができる。
【0024】
接続管Pの挿入後は締付ナット2が本締めされる。本締めは、継手本体1の工具受け部10にスパナ等工具を掛けて該継手本体1を回り止め状態にしたうえで、別の工具で締付ナット2を締付け方向に回転させることにより、図2における左半分に示すように締付ナット2の先端2aが継手本体1の段部10aに当接するか、または該段部10aの少し手前に達するまで螺進させる。その際、締付ナット2の先端2aが継手本体1の段部10aに当接するか、または該段部10aの少し手前に達するまで螺進すると同時に、フェルール押圧段部13が受口部4の外側端面4aに当接するようにすることもできる。
【0025】
締付ナット2の本締めにより、後述するように接続管Pがフェルール3を介して確実な抜止め状態にかつシール状態になるが、締付ナット2が正常に本締めされているか否かは、軸方向マーキング16が締付ナット2から露出し且つ周方向マーキング17が締付ナット2で覆い隠されているか否かを目視すること容易に確認でき、軸方向マーキング16の一部が締付ナット2に隠れているようでは未だ締付不足であることを知り得るため、再締付けを促して締付不足のまま作業を終えることを防止できる。
また、締付ナット2が正常に本締めされているか否かは印字用治具19のゲージ板21によっても確認することができる。すなわち、締付ナット2の本締め後、ゲージ板21を継手本体1の段部10aと締付ナット2の先端2aとの間に差し込むことを試みて、その差込みが不可能であれば締付ナット2が正常に締め込まれたことを確認でき、その差込みが可能であれば締付不足であることを知り得て再締付けを促すことができ、締付不足を解消できる。
【0026】
上記締付ナット2の本締めに伴い、フェルール押圧段部13によりフェルール3の後端部3bが軸方向内方へ押し込まれることで、該フェルール3が軸方向内方へ推進され、該フェルール3の先端側部3aが第1のテーパ面7により径方向内方に押圧されて縮径変形を加えられながら第1のテーパ面7と接続管Pの外周との隙間に楔状に食い込んで行って接続管Pの外周と第1のテーパ面7にそれぞれ気密状態に密着する。また、そのようにフェルール3の先端側部3aが第1のテーパ面7と接続管Pの外周との隙間に楔状に食い込み終える直前にフェルール3の後端部3bが第2のテーパ面9により径方向内方に押圧されて縮径変形を加えられながら接続管Pの外周に気密状態に密着する状態となる。
【0027】
また、締付ナット2のフェルール押圧段部13はフェルール3の後端部3bに対し線状接触して滑り易く、つまりフェルール3の後端部3bに対し空回りしながら該フェルール3を押し込むので、締付ナット3の回転力がフェルール3を介して接続管Pに伝わり難くなり、締付ナット2の締め付け時に接続管Pが共回りするのをよく防止できる。
【0028】
このように締付ナット2の本締めによりフェルール3の先端側部3aが縮径変形しながら第1のテーパ面7と接続管Pの外周との隙間に食い込むことにより、接続管Pが継手本体1の受口部4から抜け出るのを阻止される状態に接続される。同時に、フェルール3の先端側部3aが第1のテーパ面7と接続管Pの外周との隙間に食い込んで行って接続管Pの外周と第1のテーパ面7にそれぞれ気密状態に密着することにより、フェルール3の内周と接続管Pの外周との間の隙間が気密状にシールされるとともに、フェルール3の外周と継手本体1の第1のテーパ面7との間の隙間が気密状にシールされる状態が得られる。また、フェルール3の断面円形の後端部3bの内周が接続管Pの外周に気密状に密着するとともに、該後端部3bの外周が第2のテーパ面9に気密状に密着するシール状態が得られ、前記フェルール3の先端側部3aによるシールと共に二重シールされる状態が得られる。
【0029】
本発明は、上記継手本体1が図示例のソケットタイプ以外に、エルボあるいはT型等である場合にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の対象とする管継手を接続管の挿入前の状態で示す半欠截断面図である。
【図2】同管継手を接続管の挿入後および締付ナットの本締め完了時の状態を示す半欠截断面図である。
【図3】同管継手に挿入される接続管のマーキングに使用される印字用治具の平面図である。
【図4】図3の印字用治具の使用状態を示す平面図である。
【図5】図4におけるX方向から見た側面図である。
【図6】先行技術例の管継手の半欠截断面図である。
【符号の説明】
【0031】
P 接続管
1 継手本体
2 締付ナット
3 フェルール
3a フェルールの先端側部
3b フェルールの後端部
4 受口部
5 管端ストッパー部
7 テーパ面
10a 段部
11 雄ねじ
12 雌ねじ
13 フェルール押圧段部
15 フェルールのテーパ面
16 軸方向マーキング
17 周方向マーキング
18 マーキング
19 印字用治具
20 貫通孔
20a 縦孔
20b 横孔
21 ゲージ板
22 鞘
23 枢軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の接続管の一端部が挿入される受口部およびこの受口部の内奥に設けられた管端ストッパー部を有する継手本体と、前記接続管の外周に遊嵌され且つ前記継手本体の受口部の外周に設けた雄ねじにねじ込み結合される締付ナットと、前記継手本体の受口部の内部に配され、前記接続管の外周に嵌合する円筒形状のフェルールと、を備えており、
前記受口部の内周に、前記フェルールの先端側部の当接により該先端部に縮径作用を加えるテーパ面が軸方向外方に向かって漸次拡がり状に形成されており、
前記締付ナットの内周に、前記雄ねじに螺合する雌ねじと、この雌ねじの軸方向外端側に設けられるフェルール押圧段部とが形成され、前記フェルール押圧段部が前記締付ナットの本締めによる螺進に伴って前記フェルールの後端部を軸方向内方へ押し込むことで該フェルールの先端側部が前記テーパ面と前記接続管外周との隙間に食い込んで前記接続管外周と前記テーパ面に気密状態に密着するようにしてある管継手に対する接続管の挿入及び締付ナットの本締め方法であって、
前記接続管の一端部に、軸方向に延びる軸方向マーキングと、この軸方向マーキングの先端部から直角に周方向に延びる周方向マーキングとを有するL字状のマーキングとを、前記軸方向マーキングと周方向マーキングが前記締付ナットの仮締め状態で且つ前記接続管の一端部の先端が前記管端ストッパー部に当接するときに前記締付ナットで覆い隠され、且つ、前記締付ナットの本締め完了時に前記軸方向マーキングが前記締付ナットから露出し且つ前記周方向マーキングが前記締付ナットで覆い隠されたままの状態となるように施しておき、
次いで、予め前記フェルールを前記受口部内に挿入するとともに前記締付ナットを前記雄ねじに仮締めした後に、前記接続管を前記軸方向マーキングと周方向マーキングが共に仮締め状態の締付ナットで覆い隠されるまで継手本体に挿入し、
次いで、前記締付ナットを、前記軸方向マーキングが前記締付ナットから露出し且つ前記周方向マーキングが前記締付ナットで覆い隠されたままの状態になるまで本締めすることを特徴とする、管継手に対する接続管の挿入及び締付ナットの本締め方法。
【請求項2】
請求項1に記載の管継手に対する接続管の挿入及び締付ナットの本締め方法に使用される印字用治具であって、断面溝形状の鞘と、この鞘の溝内にはめ込まれて枢軸回りに回動可能に枢着され、前記軸方向マーキングに対応する縦孔と前記周方向マーキングに対応する横孔からなるL字状の貫通孔を有するゲージ板と、前記鞘に付設され、前記接続管の先端に当てがう突片とを備えてなることを特徴とする、管継手に対する接続管の挿入及び締付ナットの本締め方法に使用される印字用治具。
【請求項3】
前記ゲージ板の板厚が、前記継手本体の前記雄ねじの軸方向内端から径方向外方へ張出した段部と、本締め完了時の前記締付ナットの先端との間の隙間よりも大きく設定している、請求項2記載の管継手に対する接続管の挿入及び締付ナットの本締め方法に使用される印字用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−258220(P2006−258220A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78347(P2005−78347)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000119830)因幡電機産業株式会社 (147)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】