説明

管継手キャップ

【課題】継手カバーの装着したままの状態で、管継手と管の脱着を可能とすること。
【解決手段】内管と外管から成るチューブと、リリースプッシュを備えた継手に装着されるキャップ1であって、前記チューブに外挿される小径部2と、前記継手に装着される大径部3と、前記小径部と前記大径部とを接続する接続部4とを備え、前記リリースプッシュを軸方向に固定する爪部5を内周に形成した管継手キャップであって、前記継手は、その本体内周に前記リリースプッシュ及び該リリースプッシュを軸方向外側に付勢するチャックを備え、前記リリースプッシュが軸方向内側に押し込まれた状態において、前記チャックが開いて前記内管の軸方向の移動を許容し、前記リリースプッシュが軸方向外側に押し出された状態において、前記チャックが閉じて前記内管の軸方向移動を阻止する管継手キャップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水、エアー等の流体を流す管の継手部分を覆い、例えばアーク溶接からのスパッタからチューブの内芯を保護するためのキャップであって、キャップを装着したままチューブの脱着を簡単な操作で可能とする管継手キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アーク溶接装置のスパッタが飛来する環境下で使用される流体用のチューブとその継手には、スパッタに対する保護が施されている。例えば、特許文献1は、チューブ(内管)10と、この内管10の周りに外挿した保護用のチューブカバー(外管)13から成る二重管(図11参照)の継手に対して適用される継手カバー1(図8〜10参照)を開示している。
【0003】
継手カバー1は、外管13に挿着するための環状の装着部2と、継手20(図13参照)を被うための大径の被覆部3とからなり、これらの装着部2と被覆部3は環状の段差部からなる接続部4によって接続されている。装着部2の内周面30には、図9及び図10に示されているように、継手カバー1の中心軸対称位置に先端が尖った所定の突出高の4個の弾性突起31が装着部2の長さ方向に突出形成されている。
図11に示すように内管10の接続部10Aを延した状態にして外挿した外管13には、継手カバー1の被覆部3を内管10の接続側(接続端部10A側)に向けて、装着部2を外挿する。装着部2は、内周面30の各弾性突起31が弾性を有しかつ管軸方向に延びて設けられているため、外管13の外周上に良好に挿着する。しかる後、継手カバー1が外挿された状態(図12参照)で、その接続端部10Aは、図13に示すように、基管35の継手20に接続される。
【0004】
継手20は、図15に示す操作リング22が軸方向に押圧されることにより内装の環状バネが開いて挿入されるチューブ(内管)10の軸方向の移動を許容する構造であるので、これを軸方向に押圧してその口部36に内管10の接続端部10Aを差込むことによって抜け止め状に挿着することができる。
【0005】
内管10を継手20に接続した(図13参照)後、継手カバー1を継手20側へスライド移動させ、継手カバー1の被覆部3が継手20を覆う状態(図14参照)とする。この状態において、基管35内の通路は、操作リング22の口部36を介して内管10内の通路と連通した状態で固定され、かつ、継手カバー1は、内管10が外部に露出することのないように、内管の先端部分及び継手20を覆う状態となる。
【0006】
溶接処理においてはスパッタが飛来するが、外管13と継手カバー1がADC樹脂を30%含むポリ塩化ビニル樹脂よりなるため、カバーに付着したスパッタは付着することなく除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−43490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来の継手カバーでは、継手とチューブを接続する際、内管10を継手20に接続後、継手カバー1を継手20側へスライド移動させて、その被覆部3が継手20を覆う状態(図14参照)とするものであり、また、接続を解除する際には、まず、継手カバー1を上記と反対方向に移動させて継手20から後退させ、次に、操作リング22を軸方向に押圧し、内管10を継手20から抜くという手順を踏むことになる。そのため、チューブ10と基管35を頻繁に着脱させることが必要であるような場合、多数の管継手を同時に着脱させることが要される場合には、その作業に手間と時間がかかるという問題点があった。
【0009】
本発明は、以上の問題点を解決することを課題として、継手カバーを移動させることなく、管継手と管の着脱が容易にできる継手カバーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の継手キャップは、内管と外管から成るチューブと、リリースプッシュを備えた継手に装着されるキャップであって、前記チューブに外挿される小径部と、前記継手に装着される大径部と、前記小径部と前記大径部とを接続する接続部とを備え、前記リリースプッシュを軸方向に固定する爪部を内周に形成したことを特徴とする。
【0011】
本発明の継手キャップは、上記の特徴に加えて、前記継手は、その内周に前記リリースプッシュ及び該リリースプッシュを軸方向外側に付勢するチャックを備え、前記リリースプッシュが軸方向内側に押し込まれた状態において、前記チャックが開いて前記内管の軸方向の移動を許容し、前記リリースプッシュが軸方向外側に押し出された状態において、前記チャックが閉じて前記内管の軸方向の移動を阻止するものであることを特徴とする。
【0012】
本発明の継手キャップは、上記の特徴に加えて、前記外管及び前記キャップは、環境特性に優れた材料から成ることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の耐スパッタ管継手キャップは、上記の特徴に加えて、前記外管及び前記キャップは、大気中では不燃性に近い難燃性と耐熱性を備えた材料から成ることを特徴とする。
【0014】
本発明の耐スパッタ管継手キャップは、上記の特徴に加えて、前記難燃性と耐熱性を備えた材料は、ノンハロゲン及びノンリンの環境特性に優れた複合材料であることを特徴とする。
【0015】
本発明の耐スパッタ管継手キャップは、上記の特徴に加えて、前記内管は、プラスチックチューブであることを特徴とする。
【0016】
本発明の耐スパッタ管継手キャップは、上記の特徴に加えて、前記内管は、ナイロン12を主原料とするソフトナイロンエラストマーから成る内層と、該内層の外側にソフトウレタンから成る外層を備えることを特徴とする。
【0017】
更に、本発明の管継手は、上記の管継手キャップが装着されたことを特徴とする。
更に、本発明の管継手は、上記の管継手キャップの一部を切断して装着されたY型管継手であることを特徴とする。
【0018】
更に、本発明の管継手は、上記の管継手キャップの一部を切断して装着された多連管継手。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、継手カバーの装着により管継手とチューブの接続箇所を保護する管継手において、継手カバーを継手本体に着脱することなく管継手とチューブの着脱が可能となるので、着脱作業を容易かつ短時間にできる。また、Y型管継手や多連管継手に対しても、専用部品を用意する要なく、同一の継手カバーを用いることができるので経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は本発明の実施例1のキャップ1の正面図、(b)は同じく側断面図、(c)は(a)の正面図内の○部内の拡大図、(d)は(b)の側面図内の○部内の拡大図である。
【図2】(a)は、図1に示したキャップ1が装着される管継手20の側面図、(b)は同じく(キャップ側からの)正面図である。
【図3】実施例1に用いられたチューブの軸に直交した断面図である。
【図4】実施例1のキャップ1が装着された管継手20とチューブが連結された状態を示す軸に沿った一部断面図である。
【図5】図4の一部断面図内の○部内の拡大図である。
【図6】本発明の実施例2を示す。
【図7】(a)は実施例2に用いられるキャップ1の正面図を、(b)は同じく側面図を示す。
【図8】従来例の継手カバーの斜視図である。
【図9】図9に示された従来例の継手カバーの装着部2のX−X線断面図である。
【図10】従来例の継手カバーの側断面図である。
【図11】従来例の二重管の斜視図である。
【図12】従来例の二重管に継手カバー1の装着部2を外挿した状態を示す斜視図である。
【図13】図12に示す状態の内管10の接続端部10Aを継手21の口部36に差し込んだ状態を示す斜視図である。
【図14】従来例の継手カバーが継手とチューブの接続箇所を覆った状態を示す斜視図である。
【図15】従来例の基管35に設けられた継手21と操作リング22を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態は、水等の流体を流すために内管に耐水性に優れ、かつ、管の細化や硬化の不安のない柔軟性のある材料を用い、その外被には難燃性の大気中では不燃性に近い難燃性能を備えた耐熱性の高い保護カバーを用いた複合管の継手部分に適用して、例えばアーク溶接からのスパッタから内管と継手を保護する耐スパッタキャップである。以下、本発明に係る耐スパッタキャップの実施例を説明する。
【実施例】
【0022】
[実施例1]
図1(a)は実施例1に用いられるキャップ1の(継手側からの)正面図であり、図1(b)は同じく側断面図である。図1(c)は、図1(a)の○部内の拡大図であり、図1(d)は、図1(b)の○部内の拡大図である。また、図2(a)は、キャップ1が装着される管継手の側面図であり、図2(b)は、その(キャップ側からの)正面図である。
【0023】
キャップ1は、チューブの保護カバーを装着するための装着部2と、これより大径の被覆部3と、これらの両部間に段差部4を有する。キャップ1は、まず、図2に示す管継手20の本体21とプッシュリング22を覆うように装着される。プッシュリング22が挿入されるキャップ1の内側の位置に、図1(c)及び(d)に示すように、爪5が形成されている。そのため、キャップ1の内側にプッシュリング22が一旦挿入されると、プッシュリング22の後退を爪5が阻止するように作用するので、キャップ1は、大きな外力が作用しない限り、継手20から簡単には脱落することがないように固定される。
【0024】
実施例1において用いたチューブは、図3に示すように、最内層11にナイロン12(PA12)を主原料とするソフトナイロンエラストマーを用い、その外側を囲む層12にソフトウレタンを用いることにより、柔軟性に富み、耐屈曲疲労性と耐水性に優れ、かつ、管の細化や硬化の不安のない内管10を形成し、外被(外管)13には、例えばノンハロゲン・ノンリンのため環境特性に優れ、大気中では不燃性に近い難燃性能を備えて耐熱性の高い保護カバーを用いた複合材料を用いる。もっとも、使用するチューブは、上記のものに限定されるものではない。
【0025】
図4は、管継手20に固定されたキャップ1の装着部2にチューブが装着された状態の軸に沿った一部断面図であり、図5は、図4の一部断面図内の○部を拡大して示す。
【0026】
使用されるチューブは、キャップ1の装着部2への装着作業に先立って、(図示しない)シースストリッパーを用いて、端部近くの外被13に切り込みを入れ、接続端側の外被を除去して内管10を露出するように加工する。内管の露出長さは、継手本体20内で内管10を受ける段23の位置から、固定されたキャップ1内で外被13を受ける段6の位置までの長さ(図4に示した長さl)とするが、これより若干長くても短くてもよい。
【0027】
以上のように加工されたチューブを、継手20に固定されたキャップ1の装着部2の開口から挿入する。その際に、内管10の先端(接続端部)がチャック24を押し上げ、更にゴムから成るパッキング25内を摺動して、キャップ1内の段23まで(又はその近傍まで)進入すると、チャック24の逆止作用により、内管10が継手本体21内に固定され、この時、チューブの外被13は、キャップ1の装着部2内の段6まで(又はその近傍まで)進入した状態となっている。こうして、図4に示すように、キャップ1を装着した継手本体21にチューブが固定された状態となる。この状態では、パッキング25のシール作用により、チューブ内を流れる水等の流体が外部に漏れ出ることはない。
【0028】
次に、継手20からチューブを解放する際の手順を説明する。図4に示された状態において、キャップ1を軸方向に継手20側に向けて押すと、プッシュリング22が同じ軸方向に押し込まれ、その先端22Aがチャック24を軸方向に押して内管10の表面から離脱させることにより、チャック24の逆止作用を解除する。これにより、チューブを容易に継手本体21及びキャップ1から取り外すことができる。
【0029】
以上のとおり、管継手20とチューブ10,13の接続及び解除を、キャップ1を継手本体21に装着したまま行なうことができるので、着脱作業を容易かつ短時間に行なうことができる。
【0030】
[実施例2]
図6は、実施例2に関するものであって、本発明のキャップをY型の継手に装着した状態を示す。また、図7(a)及び(b)は、この実施例2において用いられるキャップ1'を示す。
【0031】
実施例2に用いられるキャップ1'は、実施例1に用いられるキャップ1と基本的に同じものを使用することができるが、二つの管が平行する側(図6において左側)に用いられるキャップ1'は、互いの干渉を避けるように、図7(a)及び(b)に示すように、被覆部3の一部を切断して断面7を露出させて用いる。
【0032】
実施例2では、実施例1に使用するキャップを利用することができるので、Y型の管継手用の専用部品を製作する必要がなく経済的である。
【0033】
以上のとおり、実施例2ではY型管継手を対象とし、図7(a)及び(b)にはキャップ1の一側を切断した例を示したが、必要であれば両側を切断して、多数の管を連結する多連管を連結する管継手にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、水、エアー等の流体だけでなく、粉体等を運送する場合、内部に各種のケーブル、光ファイバ等を収納する場合等にも、また、アーク溶接からのスパッタからの保護だけでなく、火災等による高熱からの保護が必要とされる場合の管継手に広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 キャップ(継手カバー)
1' キャップ
2 装着部
3 被覆部
4 段差部
5 爪
6 段
10 内管
10A 内管の接続端部
11 内管の内層
12 内管の外層
13 外管(外被)
20 管継手
21 継手本体
22 プッシュリング
22A プッシュリングの先端(接続端)
23 段
24 チャック
25 パッキング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管と外管から成るチューブと、リリースプッシュを備えた継手に装着されるキャップであって、
前記チューブに外挿される小径部と、
前記継手に装着される大径部と、
前記小径部と前記大径部とを接続する接続部とを備え、
前記リリースプッシュを軸方向に固定する爪部を内周に形成したことを特徴とする管継手キャップ。
【請求項2】
請求項1に記載されたキャップにおいて、
前記継手は、その内周に前記リリースプッシュ及び該リリースプッシュを軸方向外側に付勢するチャックを備え、
前記リリースプッシュが軸方向内側に押し込まれた状態において、前記チャックが開いて前記内管の軸方向の移動を許容し、前記リリースプッシュが軸方向外側に押し出された状態において、前記チャックが閉じて前記内管の軸方向の移動を阻止するものであることを特徴とする管継手キャップ。
【請求項3】
請求項2に記載されたキャップにおいて、
前記外管及び前記キャップは、環境特性に優れた材料から成ることを特徴とする管継手キャップ。
【請求項4】
請求項2に記載されたキャップにおいて、
前記外管及び前記キャップは、大気中では不燃性に近い難燃性と耐熱性を備えた材料から成ることを特徴とする耐スパッタ管継手キャップ。
【請求項5】
請求項4に記載された耐スパッタキャップにおいて、
前記難燃性と耐熱性を備えた材料は、ノンハロゲン及びノンリンの環境特性に優れた複合材料であることを特徴とする耐スパッタ管継手キャップ。
【請求項6】
請求項4又は5に記載された耐スパッタキャップにおいて、
前記内管は、プラスチックチューブであることを特徴とする耐スパッタ管継手キャップ。
【請求項7】
請求項4又は5に記載された耐スパッタキャップにおいて、
前記内管は、ナイロン12を主原料とするソフトナイロンエラストマーから成る内層と、該内層の外側にソフトウレタンから成る外層を備えることを特徴とする耐スパッタ管継手キャップ。
【請求項8】
請求項1から7に記載された管継手キャップが装着されたことを特徴とする管継手。
【請求項9】
請求項1から7に記載された管継手キャップの一部を切断して装着されたことを特徴とするY型管継手。
【請求項10】
請求項1から7に記載された管継手キャップの一部を切断して装着されたことを特徴とする多連管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−33145(P2011−33145A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180874(P2009−180874)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(593075418)株式会社アオイ (17)
【Fターム(参考)】