説明

管継手移動防止具及びその方法

【課題】挿口管と受口管との管軸方向の相対移動を所定長さ許容しながら、移動防止体の水密性を維持することができる管継手移動防止具及びその方法を提供すること。
【解決手段】挿口部3の内周面の所定箇所26に固着される第1係合部材17、第1係合部材17に係合可能に受口部5の内周面の所定箇所27に固着される第2係合部材18から成り、両口部3,5の内周面に周方向に沿って設けられる移動防止体13と、両口部3,5の内周面に周方向に亘って対向する対向位置に配置され、移動防止体13を両口部3,5の内周面に向けて水密に被覆する筒状体14と、を備えており、各係合部材17,18は、互いに対する管軸方向の相対移動を、所定長さ許容可能に規制する規制部17,18cを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿口管の挿口部と、挿口部が挿入された受口管の受口部と、両口部の間をシールするシール部材と、を備えた管継手において、両口部の内周面に管軸方向に渡って架設され、両口部の管軸方向の相対移動を防止する管継手移動防止具及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の管継手移動防止具は、挿口部の内周面と受口部の内周面とに第1ロック部材(移動防止体)及び第2ロック部材(移動防止体)を固定するとともに、これら第1ロック部材と第2ロック部材とを継ぎ輪(筒状体)の外周面に設けられたシール部材によって密封し、既設流体管に対して地震等の不測の外力が作用すると、第1ロック部材と第2ロック部材とが継ぎ輪に形成された第1離脱規制面(移動防止体)に当接することで、挿口部と受口部とが互いに離脱してしまうことを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−113644号公報(第9頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、既設流体管に対して地震等の不測の外力が作用することで、第1ロック部材(移動防止体)と第2ロック部材(移動防止体)とが継ぎ輪(筒状体)に形成された第1離脱規制面(移動防止体)に当接すると、当接による衝撃等の影響を継ぎ輪に設けられたシール部材に与えてしまい、シール部材による第1ロック部材と第2ロック部材の水密性を維持することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、挿口管と受口管との管軸方向の相対移動を所定長さ許容しながら、移動防止体の水密性を維持することができる管継手移動防止具及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の管継手移動防止具は、
挿口管の挿口部と、該挿口部が挿入された受口管の受口部と、前記両口部の間をシールするシール部材と、を備えた管継手において、前記両口部の内周面に管軸方向に渡って架設され、前記両口部の管軸方向の相対移動を防止する管継手移動防止具であって、
前記挿口部の内周面の所定箇所に固着される第1係合部材、該第1係合部材に係合可能に前記受口部の内周面の所定箇所に固着される第2係合部材から成り、前記両口部の内周面に周方向に沿って設けられる移動防止体と、前記両口部の内周面に周方向に亘って対向する対向位置に配置され、前記移動防止体を前記両口部の内周面に向けて水密に被覆する筒状体と、を備えており、
前記各係合部材は、互いに対する管軸方向の相対移動を、所定長さ許容可能に規制する規制部を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、地震等の不測の外力によって挿口管と受口管とが管軸方向に相対移動しようとしても、移動防止体を構成する両係合部材の規制部により、第1係合部材が固着された挿口部と第2係合部材が固着された受口部とが管軸方向に所定長さの相対移動を許容できるばかりか、相対移動を許容する移動防止体を、別体の筒状体により水密に被覆することで、両口部が相対移動しても移動防止体の水密な被覆を維持することができる。
【0007】
本発明の管継手移動防止具は、
前記各係合部材は、溶接により固着されていることを特徴としている。
この特徴によれば、挿口部及び受口部に係合部材を固着するための加工等を予め施す必要がなく、両係合部材を容易且つ確実に固着することができる。
【0008】
本発明の管継手移動防止具は、
前記各係合部材は、前記内周面に周方向に沿って固着された突条を構成していることを特徴としている。
この特徴によれば、各係合部材が、内周面に周方向に沿って固着された突条を構成しているため、両口部を互いの突条に沿って周方向に相対移動させることができる。
【0009】
本発明の管継手移動防止具は、
前記各係合部材を構成する突条は、それぞれ、前記内周面に周方向に沿って複数条固着されており、前記第1係合部材を構成する隣接した突条同士の間隙と、前記第2係合部材を構成する隣接した突条同士の間隙とが、周方向に互いに異なる位置に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、一方の係合部材を構成する各々の突条が、他方の係合部材を構成する隣接した突条同士の間隙を渡り複数条の突条に対し、力を周方向に分散して係合することになるため、両口部に対し周方向の所定箇所に偏った外力が作用しても、当該箇所に位置する突条のみに偏荷重をかける虞がない。
【0010】
本発明の管継手移動防止具は、
前記係合部材の少なくとも一方は、前記両口管が相対移動することで前記両口部の前記所定箇所が破損する大きさの力よりも小さな力で破損可能な破損可能部を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、両口部を破損させてしまうことなく、破損した係合部材の交換作業を行うのみで、管継手を継続して使用することができる。
【0011】
本発明の管継手移動防止方法は、
挿口管の挿口部と、該挿口部が挿入された受口管の受口部と、前記両口部の間をシールするシール部材と、を備えた管継手において、前記両口部の内周面に管軸方向に渡って架設され、前記両口部の管軸方向の相対移動を防止する管継手移動防止方法であって、
前記挿口部の内周面に固着される第1係合部材、該第1係合部材に係合可能に前記受口部の内周面に固着される第2係合部材から成る移動防止体を、前記両口部の内周面に周方向に沿って設ける移動防止体設置工程と、
前記移動防止体を前記両口部の内周面に向けて水密に被覆する筒状体を、前記両口部の内周面に周方向に亘って対向する対向位置に設置する筒状体設置工程と、から構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、地震等の不測の外力によって挿口管と受口管とが管軸方向に相対移動しようとしても、移動防止体を構成する両係合部材の規制部により、第1係合部材が固着された挿口部と第2係合部材が固着された受口部とが管軸方向に所定長さの相対移動を許容できるばかりか、相対移動を許容する移動防止体を設置する工程と、この移動防止体を水密に被覆する筒状体を設置する工程とを分けて構成したので、作業を容易且つ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、実施例1における挿口部及び受口部の接続状態を示す拡大断面図であり、(b)は、挿口部及び受口部からモルタル層を除去した状態を示す拡大断面図である。
【図2】(a)は、分割された円弧状フレームの正面図であり、(b)は、図2(a)における円弧状フレームのA−A断面図である。
【図3】(a)は、両口部内に管継手移動防止具を架設した状態を示す断面図であり、(b)は、図3(a)におけるB−B断面図である。
【図4】挿口部及び受口部への移動防止体の取り付けを示す拡大断面図である。
【図5】挿口部と受口部とに渡って複数取り付けられた移動防止体を示す断面図である。
【図6】(a)は、挿口部と受口部とに渡って取り付けられた移動防止体を筒状体によって被覆する状態を示す一部拡大断面図であり、(b)は、筒状体によって水密に被覆された移動防止体を示す一部拡大断面図である。
【図7】実施例2における筒状体によって水密に被覆された移動防止体を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る管継手移動防止具を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1に係る管継手移動防止具につき、図1から図6を参照して説明する。以下、図1、図2(b)、図3(a)、図4〜図6の紙面左右側を管継手移動防止具の管軸方向側として説明する。図1(a)に示すように、本実施例における既設流体管の管継手1は、挿口管2の一端である挿口部3と、この挿口部3が挿入された受口管4の一端である受口部5と、両口部3,5の対向面を水密にシールしたシール部材6と、を主に備えており、挿口管2と受口管4とは、互いの管軸を略直線状に一致させて(図示せず)で接続されている。
【0015】
これら本実施例における挿口管2と受口管4とは、内部において作業員等が作業可能な程度の内径を有する、比較的大径の既設流体管である。また、挿口管2と受口管4とはダクタイル鋳鉄等の金属材で構成されており、両口管2,4の内周面には、流体による両口管2,4の腐食を防止するためのモルタル層7,8が形成されている。
【0016】
更に、挿口部3の外周面には押輪9が配置されており、この押輪9に管軸方向に形成された挿通孔9aと受口部5の端部外面に形成された挿通孔5aとに挿通されたボルトナット11により、シール部材6を両口部3,5の対向する周面間に押圧保持している。
【0017】
次に、両口部3,5に渡って架設された管継手移動防止具12の構造について説明する。
【0018】
図1(b)及び図3(a)、図3(b)に示すように、前述のように構成された管継手1は、両口部3,5の端部における内周面のモルタル層7,8が除去されており、この両口部3,5のモルタル層7,8が除去された端部の内周面に渡って、本発明の管継手移動防止具12が架設されている。この管継手移動防止具12は、地震等の発生時に管継手1が不測の力を受けることによって、両口管2,4の管軸方向への相対移動を防止するために取り付けられている。
【0019】
この管継手移動防止具12は、両口部3,5のモルタル層7,8が除去された内周面に渡って取り付けられる移動防止体13と、移動防止体13を両口部3,5の内周面に向けて被覆する筒状体14と、から主に構成されている。
【0020】
図2(a)及び図2(b)に示すように、筒状体14は、周方向に2分割された円弧状フレーム25,25と、両円弧状フレーム25,25の周方向全周に渡って巻回された止水ゴム15と、によって構成されている。これら円弧状フレーム25は、同一構成につき、一方のみの構成について説明し、他方の構成の説明は省略する。尚、筒状体14の分割構造は、必ずしも周方向に2分割された分割構造に限られず、例えば、周方向に3分割以上の構造であってもよい。
【0021】
この円弧状フレーム25は、予め防錆処理が施されたスチール等の金属材によって構成されており、両口部3,5の内径よりも若干小径の外径に形成されている。また、円弧状フレーム25の管軸方向の両端部には、周方向の全周に亘って両口管2,4の外径方向に向けて立片25c,25cが立設されており、これら立片25c,25c間は、円弧状フレーム25の全周に渡って両口管2,4の外径方向に開口する凹溝25aに形成されている。円弧状フレーム25の周方向の両端縁部には、それぞれ両口管2,4の径方向を向いて雌螺子(図示せず)が形成された螺着孔25bが管軸方向に向けて2つ形成されており、両円弧状フレーム25,25の螺着孔25b,25b間で接続板16を接続することによって筒状を形成している(図3(b)参照)。
【0022】
更に、図3(a)及び図6(a)に示すように、筒状に形成された両円弧状フレーム25,25の凹溝25a内には、止水ゴム15が収納配置されている。この止水ゴム15の管軸方向側の両端部には、止水ゴム15の全周に亘って両口管2,4の外径方向に突出するリップ部15a,15aが形成されているとともに、両リップ部15a,15a間には、止水ゴム15の全周に亘って両口管2,4の外径方向に開口する凹溝15bが形成されている。
【0023】
一方、図4及び図5に示すように、移動防止体13は、挿口部3の内周面の所定箇所である固着部26に複数固着される第1係合部材17と、これら第1係合部材17に係合可能に受口部5の所定箇所である固着部27に複数固着される第2係合部材18と、から構成されている。
【0024】
各々の第1係合部材17は、円弧状フレーム25と同様に予め防錆処理の施されたスチール等の金属材によって構成されているとともに、挿口部3の周方向に延びる円弧状に形成されており、モルタル層7が除去された挿口部3の内周面の固着部26に溶接部19を介して固着されている。また、複数の第1係合部材17は、それぞれモルタル層7が除去された挿口部3の内周面に周方向に沿って当接配置されており、隣り合う第1係合部材17間には、間隙20が形成されている。これら間隙20の周方向の寸法は、各第2係合部材18の周方向の寸法よりも短寸に形成されている。
【0025】
更に、挿口部3の内周面と当接している複数の第1係合部材17の管軸方向の両端部には、作業者等によって溶接が施されており、これら溶接が施された箇所が溶接部19,19を構成して複数の第1係合部材17を挿口部3の内周面の固着部26に固着している。前述のように複数の第1係合部材17は、挿口部3の内周面に溶接されることによって、挿口部3の内周面において周方向に沿って両口部3,5の内径方向に突設された突条を構成している。
【0026】
次に、複数の第2係合部材18は、第1係合部材17と同様に、予め防錆処理の施されたスチール等の金属材によって構成されているとともに、両口部3,5の周方向に向けて延びる円弧状に形成されており、モルタル層8が除去された受口部5の内周面に溶接部21を介して固着されている。
【0027】
具体的には、各々複数の第2係合部材18は、両口部3,5の径方向を向く固着片18aと、固着片18aの両口部3,5の内径方向側端部から管軸方向の挿口管2離脱方向に向けて延設された延設片18bと、延設片18bの管軸方向の挿口管2離脱方向側端部から両口部3,5の外径方向に向けて延設された規制片18cと、から構成され、両口部3,5の外径方向を向く断面視略コ字形状に形成されている。
【0028】
各第2係合部材18は、それぞれモルタル層8が除去された受口部5の内周面に周方向に沿って固着片18aの外径側端部が当接配置されており、隣り合う第2係合部材18間には、間隙22が形成されている。これら間隙22の周方向の寸法は、各第1係合部材17の周方向の寸法よりも短寸に形成されているとともに、各第2係合部材18は、間隙22が間隙20と周方向に互いに異なる位置に形成されるように受口部5の内周面に固着片18aの外径側端部が当接配置される。
【0029】
固着片18aと延設片18bと規制片18cとで囲まれた空間は、後述するように第2係合部材18が受口部5の内周面に固着されることで、第1係合部材17が収容配置される凹溝18dを形成している。尚、規制片18cの延設片18bから両口部3,5の外径方向への延設長さは、固着片18aの延設片18bから両口部3,5の外径方向への延設長さよりも短寸に形成されているので、固着片18aが受口部5の内周面に固着された状態で規制片18cが挿口部3の内周面に当接してしまうことを防止している。
【0030】
受口部5の内周面と当接している複数の第2係合部材18の固着片18aの外径側端部には、作業者等によって管軸方向の挿口管2挿入方向側から溶接が施されており、これら溶接が施された箇所が溶接部21を構成して複数の第2係合部材18を受口部5の内周面に固着している。前述のように複数の第2係合部材18は、受口部5の内周面に溶接されることによって、受口部5の内周面において周方向に沿って両口部3,5の内径方向に突設された突条を構成している。
【0031】
次に、前述のように構成された管継手移動防止具12を両口部3,5に渡って架設させる取付方法について説明する。
【0032】
先ず、図1(a)及び図1(b)に示すように、移動防止体設置工程として、複数の第1係合部材17を挿口部3の内周面の固着部26に沿って固着するとともに、第2係合部材18を受口部5の内周面の固着部27沿って固着する。具体的には、先ず、両口部3,5の端部におけるモルタル層7,8を剥離除去する。
【0033】
そして、図3(b)及び図4に示すように、第1係合部材17を挿口部3の内周面に沿って間隙20を形成させながら当接配置させた後に、第1係合部材17の管軸方向の両端部と挿口部3の内周面の固着部26との間に溶接によって溶接部19,19を形成し、第1係合部材17を挿口部3の内周面に固着させる。この後、挿口部3の内周面の全周に亘って防錆塗料を塗布する。
【0034】
第1係合部材17の挿口部3の内周面の固着部26への固着の後、第2係合部材18を受口部5の内周面の固着部27に沿って間隙22を形成させながら固着片18aの外径側端部を当接配置させた後に、固着片18aの管軸方向の挿口管2挿入方向側端部と受口部5の内周面との間に溶接によって溶接部21を形成し、第2係合部材18を受口部5の内周面に固着させる。このとき、第1係合部材17は、第2係合部材18に形成された凹溝18d内に収納配置される。更に、受口部5の内周面全周に亘って防錆塗料を塗布する。
【0035】
図5に示すように、これら両係合部材17,18の固着を両口部3,5の内周面全周に亘って行うことで、移動防止体13を両口部3,5の内周面に周方向に沿って設ける。
【0036】
次に、筒状体設置工程として、筒状体14によって移動防止体13を両口部3,5の内周面に向けて水密に被覆する。具体的には、図6(a)及び図6(b)に示すように、2つの円弧状フレーム25を、凹溝25aに止水ゴム15を収納配置した状態で、複数の移動防止体13を被覆するようにして両口部3,5内に配置する。このとき、移動防止体13は、止水ゴム15の管軸方向を向く一対のリップ部15a,15aと凹溝15bとで形成される空間内に配置される。
【0037】
そして、両円弧状フレーム25,25を油圧ジャッキ等を用いて両口管2,4の外径方向に向けて押圧し、止水ゴム15を両口部3,5の内周面に向けて当接させ、移動防止体13を止水ゴム15によって水密に被覆する。このとき、両円弧状フレーム25,25を接続板16を介して接続し、筒状体14として構成させる。
【0038】
尚、前述のように移動防止体13を止水ゴム15によって水密に被覆すると、図6(b)に示すように、リップ部15a,15aが両口部3,5の内周面に向けて押圧変形される。このとき、円弧状フレーム25の管軸方向の挿口管2挿入方向側の立片25cと規制片18cが対向配置されるとともに、円弧状フレーム25の管軸方向の挿口管2離脱方向側の立片25cと固着片18aとが対向配置される。
【0039】
このように両口部3,5に亘って管継手移動防止具12が架設されることで、両口管2,4の管軸方向の相対移動が防止されるようになる。具体的には、例えば、地震等の不測の外力により両口管2,4に管軸方向に離脱する相対移動が発生すると、第1係合部材17が凹溝18d内を管軸方向に相対移動し、規制片18cに当接する。
【0040】
つまり、本実施例の管継手移動防止具12は、第1係合部材17の凹溝18d内での移動長さ分両口部3,5の管軸方向の相対移動を許容しながら、第1係合部材17が第2係合部材18の規制片18cに当接することで、凹溝18d内の移動可能長さを超える両口部3,5の管軸方向の相対移動を規制しており、第1係合部材17と規制片18cとで本発明における規制部を構成している。
【0041】
また、立片25c,25cが両口部3,5の内周面に向けて近接配置されていることで、両口部3,5が管軸方向に相対移動することによって、規制片18cと固着片18aとが立片25c,25cと止水ゴム15のリップ部15aを介して係合するようになっているため、両口部3,5が管軸方向に相対移動することに伴い筒状体14が管軸方向に移動してしまうことが規制されている。
【0042】
また、図5及び図6(b)に示すように、第1係合部材17は、両口部3,5の周方向の略全周に亘って凹溝18d内に収納配置されていることで、両口管2,4は、周方向に互いに回動可能となっている。このため、本実施例における管継手移動防止具12は、地震等の不測の外力によって両口管2,4に周方向に相対回動する力がはたらいても、第1係合部材17が第2係合部材18の内部である凹溝18d内に沿って周方向相対移動することによって、両口管2,4を周方向に相対回動させることができる。
【0043】
以上、本実施例1における管継手移動防止具12は、挿口部3の内周面の固着部26に固着される第1係合部材17、第1係合部材17に係合可能に受口部5の内周面の固着部27に固着される第2係合部材18から成り、両口部3,5の内周面に周方向に沿って設けられる移動防止体13と、両口部3,5の内周面に周方向に亘って対向する対向位置に配置され、移動防止体13を両口部3,5の内周面に向けて水密に被覆する筒状体14と、を備えており、各係合部材17,18は、互いに対する管軸方向の相対移動を、所定長さ許容可能に規制する第1係合部材17及び規制片18cを備えているので、地震等の不測の外力によって挿口管2と受口管4とが管軸方向に相対移動しようとしても、移動防止体13を構成する両係合部材17,18の第1係合部材17と規制片18cとにより、第1係合部材17が固着された挿口部3と第2係合部材18が固着された受口部5とが管軸方向に所定長さの相対移動を許容できるばかりか、相対移動を許容する移動防止体13を、別体の筒状体14により水密に被覆することで、両口部3,5が相対移動しても移動防止体13の水密な被覆を維持することができる。
【0044】
また、各係合部材17,18は、溶接により固着されているので、挿口部3及び受口部5に係合部材17,18を固着するための加工等を予め施す必要がなく、両係合部材17,18を容易且つ確実に固着することができる。
【0045】
また、各係合部材17,18が、内周面に周方向に沿って固着された突条を構成しているため、両口部3,5を互いの突条に沿って周方向に相対移動させることができる。
【0046】
また、各係合部材17,18を構成する突条は、それぞれ、内周面に周方向に沿って複数条固着されており、第1係合部材17を構成する隣接した突条同士の間隙20と、第2係合部材18を構成する隣接した突条同士の間隙22とが、周方向に互いに異なる位置に形成されているので、一方の係合部材17,18を構成する各々の突条が、他方の係合部材18,17を構成する隣接した突条同士の間隙20,22を渡り複数条の突条に対し、力を周方向に分散して係合することになるため、両口部3,5に対し周方向の所定箇所に偏った外力が作用しても、当該箇所に位置する突条のみに偏荷重をかける虞がない。
【0047】
また、管継手移動防止方法は、挿口部3の内周面に固着される第1係合部材17、第1係合部材17に係合可能に受口部5の内周面に固着される第2係合部材18から成る移動防止体13を、両口部3,5の内周面に周方向に沿って設ける移動防止体設置工程と、移動防止体13を両口部3,5の内周面に向けて水密に被覆する筒状体14を、両口部3,5の内周面に周方向に亘って対向する対向位置に設置する筒状体設置工程と、から構成されているので、地震等の不測の外力によって挿口管2と受口管4とが管軸方向に相対移動しようとしても、移動防止体13を構成する両係合部材17,18の第1係合部材17及び規制片18cにより、第1係合部材17が固着された挿口部3と第2係合部材18が固着された受口部5とが管軸方向に所定長さの相対移動を許容できるばかりか、相対移動を許容する移動防止体13を設置する工程と、この移動防止体13を水密に被覆する筒状体14を設置する工程とを分けて構成したので、作業を容易且つ確実に行うことができる。
【実施例2】
【0048】
次に、実施例2に係る管継手移動防止具につき、図7を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。以下、図7の紙面左右側を管継手移動防止具の管軸方向側として説明する。
【0049】
第2実施例として、地震等の不測の外力による両口部3,5を管軸方向に相対移動させる力が想定以上に強い場合には、第2係合部材18’の規制片28が管軸方向に塑性変形ないしは破断するようになっている。
【0050】
具体的には、図7に示すように、本実施例2における規制片28は、管軸方向に幅薄に形成されており、両係合部材17,18’が両口部3,5を管軸方向に相対移動させる力によって破損するよりも小さな力で破損する程度の強度に構成されている。このため、両固着部26,27が両口部3,5を管軸方向に相対移動させる力によって破損してしまう前に規制片28が破損することで、両固着部26,27が破損してしまうことを防止している。つまり、第2係合部材18’の規制片28は、本発明における破損可能部を構成している。
【0051】
尚、本実施例では規制片28を破損可能部として構成したが、固着部26との固着箇所を除く第1係合部材を破損可能部として構成し、両固着部26,27が両口部3,5を管軸方向に相対移動させる力によって破損してしまう前に前記第1係合部材を破損させ、両固着部26,27が破損してしまうことを防止してもよい。更に尚、第2係合部材に破損可能部を構成する場合には、規制片28の他、延設片または固着部27との固着箇所を除く固着片を破損可能部として構成してもよい。
【0052】
以上、本実施例2における管継手移動防止具12は、係合部材17,18’の少なくとも一方は、両口管2,4が相対移動することで両口部3,5の固着部26,27が破損する大きさの力よりも小さな力で破損可能な規制片28を備えているので、両口部3,5を破損させてしまうことなく、破損した係合部材17,18’の交換作業を行うのみで、管継手1を継続して使用することができる。
【0053】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0054】
例えば、実施例2では、両係合部材17,18’をスチール材によって構成し、両口管2,4に想定を超える外力がはたらいた場合に、両溶接部19,21が両口部3,5を管軸方向に相対移動させる力によって破損してしまう前に規制片28が破損するように構成したが、第2係合部材を比較的高い延伸性を有する金属材によって構成し、両口管2,4に想定を超える外力がはたらいた場合に、前記第2係合部材が両口部3,5を管軸方向に相対移動させる力によって延伸するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 管継手
2 挿口管
3 挿口部
4 受口管
5 受口部
6 シール部材
12 管継手移動防止具
13 移動防止体
14 筒状体
15 止水ゴム
17 第1係合部材(規制部)
18,18’ 第2係合部材
18c 規制片(規制部)
19 溶接部
20 間隙
21 溶接部
22 間隙
25 円弧状フレーム
26,27 固着部(内周面の所定箇所)
28 規制片(破損可能部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿口管の挿口部と、該挿口部が挿入された受口管の受口部と、前記両口部の間をシールするシール部材と、を備えた管継手において、前記両口部の内周面に管軸方向に渡って架設され、前記両口部の管軸方向の相対移動を防止する管継手移動防止具であって、
前記挿口部の内周面の所定箇所に固着される第1係合部材、該第1係合部材に係合可能に前記受口部の内周面の所定箇所に固着される第2係合部材から成り、前記両口部の内周面に周方向に沿って設けられる移動防止体と、前記両口部の内周面に周方向に亘って対向する対向位置に配置され、前記移動防止体を前記両口部の内周面に向けて水密に被覆する筒状体と、を備えており、
前記各係合部材は、互いに対する管軸方向の相対移動を、所定長さ許容可能に規制する規制部を備えていることを特徴とする管継手移動防止具。
【請求項2】
前記各係合部材は、溶接により固着されていることを特徴とする請求項1に記載の管継手移動防止具。
【請求項3】
前記各係合部材は、前記内周面に周方向に沿って固着された突条を構成していることを特徴とする請求項1または2に記載の管継手移動防止具。
【請求項4】
前記各係合部材を構成する突条は、それぞれ、前記内周面に周方向に沿って複数条固着されており、前記第1係合部材を構成する隣接した突条同士の間隙と、前記第2係合部材を構成する隣接した突条同士の間隙とが、周方向に互いに異なる位置に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の管継手移動防止具。
【請求項5】
前記係合部材の少なくとも一方は、前記両口管が相対移動することで前記両口部の前記所定箇所が破損する大きさの力よりも小さな力で破損可能な破損可能部を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の管継手移動防止具。
【請求項6】
挿口管の挿口部と、該挿口部が挿入された受口管の受口部と、前記両口部の間をシールするシール部材と、を備えた管継手において、前記両口部の内周面に管軸方向に渡って架設され、前記両口部の管軸方向の相対移動を防止する管継手移動防止方法であって、
前記挿口部の内周面に固着される第1係合部材、該第1係合部材に係合可能に前記受口部の内周面に固着される第2係合部材から成る移動防止体を、前記両口部の内周面に周方向に沿って設ける移動防止体設置工程と、
前記移動防止体を前記両口部の内周面に向けて水密に被覆する筒状体を、前記両口部の内周面に周方向に亘って対向する対向位置に設置する筒状体設置工程と、から構成されていることを特徴とする管継手移動防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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