説明

管継手

【課題】相手側管継手の傾斜を吸収しながら接続する構造においても、耐久性を低下させることのない管継手を提供する。
【解決手段】管継手本体11の軸心に対して相手側管継手20が傾斜した状態で挿入された場合でも、管継手本体11の揺動及び径方向の移動により、管継手本体11を相手側管継手20の傾斜に追従するように傾斜させたまま結合することができる。これにより、相手側管継手20の傾斜を矯正する負荷を増大させることがないので、相手側管継手20のガイドピン22の摩耗や変形に対する耐久性を向上させることができる。また、管継手本体11自体の揺動及び径方向の移動は可撓管11bの撓みによって吸収されるので、管継手本体11内の流体流通構造が管継手本体11の動作の影響を受けることがなく、シール性の低下による流体漏洩や早期破損に対する耐久性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種設備等の配管接続用に用いられ、相手側管継手の傾斜を吸収しながら配管接続を可能とする管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管継手としては、軸方向一端側に相手側管継手が着脱自在に接続された管継手本体を備え、管継手本体の軸方向他端側をハウジングによって揺動自在に支持することにより、接続時に相手側管継手が傾斜している場合でも、管継手本体の揺動によって傾斜を吸収しながら接続を可能とするようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この管継手では、管継手本体の他端とハウジングにそれぞれ設けた球面部を互いに摺動自在に当接させ、各球面部にそれぞれ設けた流通口の連通範囲で各球面部を摺動させることにより、管継手本体の揺動を許容しながら流通口を介して流体を流通させるようにしている。
【0003】
また、他の管継手として、図8乃至図10に示すように、管継手本体1を径方向に移動自在に支持する可動ブロック2と、可動ブロック2に取付けられた挿入口部材3とを備え、挿入口部材3の挿入口3aの一端側を外側に向かってテーパ状に拡開するように形成し、ガイドピン4に内蔵された相手側管継手5を挿入口部材3の挿入口3aに挿入することにより、挿入口3a内の管継手本体1と相手側管継手5とを接続するようにしたものもある。この管継手では、ガイドピン4が球面ブッシュ6によって揺動自在に支持されており、図8に示すように管継手本体1の軸方向に対して相手側管継手5が傾斜している状態でも、図9に示すようにテーパ状の挿入口3aの内面によって相手側管継手5が案内されるとともに、可動ブロック2が管継手本体1の径方向に移動して相手側管継手5の傾斜が矯正され、図10に示すように相手側管継手5の軸心と管継手本体1の軸心とが一致するように接続される。
【特許文献1】実開平7−38882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前者の管継手の構造では、管継手本体の傾斜を吸収する各球面部が流体と接しており、しかも結合推力を受けながら各球面部が摺動するため、摺動部分のシール性が低下しやすく、流体漏洩や早期破損に対する耐久性に劣るという問題点があった。
【0005】
また、後者の管継手の構造では、吸収する傾斜角度が大きくなるにしたがって相手側管継手5の傾斜を矯正する負荷が増大するため、過大な結合力を必要とする場合があり、挿入口部材3及びガイドピン4の摩耗や変形に対する耐久性に劣るという問題点があった。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、相手側管継手の傾斜を吸収しながら接続する構造においても、耐久性を低下させることのない管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、相手側管継手の傾斜を吸収しながら相手側管継手と接続可能に構成された管継手において、軸方向一端側に相手側管継手が着脱自在に接続され、軸方向他端側に可撓管が接続される管継手本体と、任意の取付対象物に固定され、内部に管継手本体を収容するハウジングと、管継手本体をハウジングに対して揺動自在に支持する第1の支持部と、第1の支持部をハウジングに対して管継手本体の径方向に移動自在に支持する第2の支持部とを備えている。
【0008】
これにより、管継手本体の軸心に対して相手側管継手が傾斜した状態で挿入された場合でも、管継手本体の揺動及び径方向の移動により、管継手本体を相手側管継手の傾斜に追従するように傾斜させたまま結合することが可能となる。その際、管継手本体自体の揺動及び径方向の移動は可撓管の撓みによって吸収される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、管継手本体の軸心に対して相手側管継手が傾斜した状態で挿入された場合でも、管継手本体を相手側管継手の傾斜に追従するように傾斜させたまま結合することができるので、相手側管継手の傾斜を矯正する負荷を増大させることがなく、相手側管継手の摩耗や変形に対する耐久性を向上させることができる。この場合、管継手本体自体の揺動及び径方向の移動は可撓管の撓みによって吸収されるので、管継手本体内の流体流通構造が管継手本体の動作の影響を受けることがなく、シール性の低下による流体漏洩や早期破損に対する耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1乃至図7は本発明の一実施形態を示すもので、図1は管継手の側面断面図図2は相手側管継手の一部断面側面図、図3は管継手の要部側面断面図、図4乃至図7は管継手の結合動作を示す一部断面側面図である。
【0011】
本実施形態の管継手10は、相手側管継手20が着脱自在に接続される管継手本体11と、内部に管継手本体11を収容するハウジング12と、管継手本体11をハウジング12に対して揺動自在に支持ずる第1の支持部13と、第1の支持部13をハウジング12に対して管継手本体11の径方向に移動自在に支持ずる第2の支持部14と、管継手本体11を揺動方向の所定の向きに戻るように案内し、第1の支持部13を移動方向の所定位置に戻るように案内するガイド部材15と、相手側管継手20が挿入される挿入口部材16とを備えている。
【0012】
管継手本体11は、軸方向一端側に相手側管継手20と結合する雄型の結合部11aを有し、軸方向他端側には図示しない外部の配管や機器等に連通する可撓管11bが接続されている。管継手本体11には内部の流路を開閉する弁体11cが設けられ、弁体11cはスプリング11dによって弁座11eに押圧されている。弁体11cの先端部は結合部11aの外部に突出しており、弁体11cの先端部を押圧することにより、弁体11cが弁座11eから後退して流路が開放されるようになっている。また、スプリング11dは管継手本体11内の係止部材11fを介して止め輪11gに係止しており、係止部材11fには流体流通孔11hが設けられている。
【0013】
ハウジング12は、軸方向両端を開口した円筒状の部材からなり、その軸方向一端側を外部の取付対象物30に固定されている。ハウジング12内には第2の支持部14が軸方向に移動自在に設けられ、ハウジング12の内周面には第2の支持部14の移動を規制するストッパ12aが設けられている。
【0014】
第1の支持部13は内部に管継手本体11を挿通する円筒状の部材からなり、管継手本体11の軸方向所定位置に設けられた凸球面状の球面部材13aを凹球面状の受け部材13bによって摺動自在に支持している。即ち、管継手本体11は第1の支持部13によって球面部材13aを中心に揺動自在に支持されている。第1の支持部13の軸方向一端側にはフランジ13cが設けられ、フランジ13cは第2の支持部14の軸方向一端面に摺動自在に係止している。また、管継手本体11の結合部11aの基端側とフランジ13cとの間にはゴム製のカバー13dが設けられ、カバー13dによって管継手本体11と第1の支持部13との隙間が覆われている。
【0015】
第2の支持部14は、ハウジング12の内周面に軸方向に摺動自在に設けられた環状部材からなり、その中央の開口部14aに第1の支持部13を径方向に移動自在に挿通している。第2の支持部14は付勢手段としてのコイル状のスプリング14bによってハウジング12の軸方向一端側に付勢されており、ハウジング12のストッパ12aによって軸方向所定位置で移動を規制されるようになっている。また、第2の支持部14の内周縁には、ガイド部材15がハウジング12の軸方向一端側に向かって当接する当接部14cが設けられ、当接部14cは開口部14aの中心に向かって傾斜したテーパ状に形成されている。
【0016】
ガイド部材15は、第1の支持部13の外周面に軸方向に摺動自在に設けられた環状部材からなり、その外周縁は第2の支持部14の当接部14cに当接するようにテーパ状に形成されている。ガイド部材15は付勢手段としてのコイル状のスプリング15aによってハウジング12の軸方向一端側に付勢されており、スプリング15aは管継手本体11の外周面に固定されたフランジ状の係止部材15bに係止している。
【0017】
挿入口部材16は、相手側管継手20が挿入される挿入口16aを有し、ハウジング12の軸方向一端側に設けられている。挿入口16aの一端側は外側に向かってテーパ状に拡開するように形成され、挿入口16aの他端側は同一内径で軸方向に延びるように形成されている。この場合、挿入口16aの他端側の内径寸法D1 は、管継手本体11の揺動及び移動範囲内で管継手本体11と相手側管継手20とが結合可能な大きさになっている。
【0018】
相手側管継手20は、前記管継手10が着脱自在に接続される管継手本体21と、管継手本体21を内蔵したガイドピン22とを備えている。
【0019】
管継手本体21は、軸方向一端側に前記管継手10と接続される雌型の結合部21aを有し、軸方向他端側には図示しない配管に接続される配管接続部21bが設けられている。管継手本体21には内部の流路を開閉する弁体21cが設けられ、弁体21cはスプリング21dによって弁座21eに押圧されている。弁体21cの先端部は結合部21aの外部に突出しており、弁体21cの先端部を押圧することにより、弁体21cが弁座21eから後退して流路が開放されるようになっている。スプリング21dは管継手本体21内の係止部材21fを介して止め輪21gに係止しており、係止部材21fには流体流通孔21hが設けられている。また、結合部21aは管継手10の結合部11aとほぼ同等の内径を有し、その内周面には環状のゴムからなるシール部材21hが設けられている。
【0020】
ガイドピン22は、先端が半紡錘形の円柱状部材からなり、その基端側には管継手本体21の配管接続部21bが突出している。ガイドピン22の基端側にはフランジ状の取付部22aが設けられ、取付部22aは外部の他の取付対象物40に固定されている。また、ガイドピン22の外径寸法D2 は、挿入口部材16の内径寸法D1 よりも小さく、管継手本体11の揺動及び移動範囲内で管継手本体11と相手側管継手20とが結合可能な大きさになっている。
【0021】
前記管継手10及び相手側管継手20では、図3(a) に示すように各管継手本体11,21が結合されると、図3(b) に示すように各弁体11c,21cが先端部同士を当接させて弁座11e,21eからそれぞれ後退し、各管継手本体11,21内の流路が互いに連通するようになっている。
【0022】
以上のように構成された管継手10及び相手側管継手20は、相手側管継手20のガイドピン22を管継手10の挿入口16aに挿入することにより、互いに管継手本体11,21が結合し、各管継手本体11,21内の流路が連通するように接続される。その際、図4に示すように相手側管継手20が管継手10の軸心に対して傾斜した状態で挿入された場合、相手側管継手20が傾斜したままでは各管継手本体11,21の軸心の向きが一致しないため、図5に示すように管継手10の結合部11aが相手側管継手20の結合部21aの縁部に当接する。このとき、各結合部11a,21aの当接により管継手本体11が第1の支持部13に対して揺動するとともに、第1の支持部13と共に径方向に移動し、管継手本体11の動作は可撓管11bの撓みによって許容される。このような動作の過程で管継手本体11が相手側管継手20の傾斜に追従するように傾斜し、その結果、図6に示すように管継手10の管継手本体11の軸心の向きが相手側管継手20の管継手本体21の軸心の向きと一致し、各管継手本体11,21が軸心を傾斜させたまま結合する。この後、更に相手側管継手20を管継手10側に押圧することにより、図7に示すように第2の支持部14がスプリング14bに抗してハウジング12の軸方向他端側に移動し、スプリング14bの付勢力によって各管継手本体11,21の結合状態が保持される。
【0023】
また、管継手10及び相手側管継手20の結合を解除した状態では、第2の支持部14のテーパ状の当接部14aにスプリング14bの付勢力によって当接するガイド部材15の案内により、第1の支持部13がハウジング12の径方向中央側に戻るとともに、ハウジング12の軸心と同一の向きに戻り、管継手本体11がハウジング12に対して調心された状態で保持される。
【0024】
このように、本実施形態の管継手10によれば、可撓管11bに接続された管継手本体11を第1の支持部13によって軸方向所定位置を中心に揺動自在に支持するとともに、第2の支持部14によって径方向に移動自在に支持するようにしたので、管継手本体11の軸心に対して相手側管継手20が傾斜した状態で挿入された場合でも、管継手本体11の揺動及び径方向の移動により、管継手本体11を相手側管継手20の傾斜に追従するように傾斜させたまま結合することができる。これにより、相手側管継手20の傾斜を矯正する負荷を増大させることがないので、相手側管継手20のガイドピン22の摩耗や変形に対する耐久性を向上させることができる。また、管継手本体11自体の揺動及び径方向の移動は可撓管11bの撓みによって吸収されるので、管継手本体11内の流体流通構造が管継手本体11の動作の影響を受けることがなく、シール性の低下による流体漏洩や早期破損に対する耐久性を向上させることができる。
【0025】
また、管継手本体11を揺動方向の所定の向きに戻るように付勢し、第1の支持部13を移動方向の所定位置に戻るように付勢するスプリング15aを備えているので、管継手10及び相手側管継手20の結合を解除した状態においては、管継手本体11をハウジング12に対して調心された状態で保持することができ、相手側管継手20の結合を常に円滑に行うことができる。
【0026】
更に、スプリング15aによって第2の支持部14のテーパ状の当接部14aに当接することにより、管継手本体11を揺動方向の所定の向きに戻るように案内し、第1の支持部13を移動方向の所定位置に戻るように案内するガイド部材15を備えているので、ガイド部材15によって管継手本体11の調心機能をより高めることができる。
【0027】
また、第2の支持部14をハウジング12に対して管継手本体11の軸方向に移動自在に設けるとともに、第2の支持部14をスプリング14bによって管継手本体11の軸方向一端側に付勢するようにしたので、スプリング14bの付勢力によって各管継手本体11,21の結合状態を確実に保持することができ、接続信頼性の向上を図ることができる。この場合、各管継手本体11,21の結合時にも第2の支持部14によって管継手本体11を軸方向に移動させることができるので、管継手本体11を相手側管継手20の傾斜に追従させやすくすることができるという利点もある。
【0028】
更に、相手側管継手20が挿入される挿入口部材16を備え、挿入口部材16の挿入口16aの一端側を外側に向かってテーパ状に拡開するように形成するとともに、挿入口16aの他端側を管継手本体11の揺動及び径方向の移動範囲内で管継手本体11と相手側管継手20とが結合可能な内径に形成したので、挿入口16aによって相手側管継手20を管継手本体11と結合可能な位置まで案内することができる。これにより、相手側管継手20との位置ずれが大きい場合でも容易に接続することができるとともに、管継手本体11と相手側管継手20とが傾斜して結合するので、挿入口16aの内径寸法D1 とガイドピン22の外径寸法D2 との差を大きめにすることができ、ガイドピン22の挿入をより円滑に行うことができる。この場合、従来例で示した可動ブロックのように、ハウジング12を取付対象物30に対して径方向に移動自在に支持するようにすれば、相手側管継手20との位置ずれをハウジング12の移動により吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態を示す管継手の側面断面図
【図2】相手側管継手の一部断面側面図
【図3】管継手の要部側面断面図
【図4】管継手の結合動作を示す一部断面側面図
【図5】管継手の結合動作を示す一部断面側面図
【図6】管継手の結合動作を示す一部断面側面図
【図7】管継手の結合動作を示す一部断面側面図
【図8】従来の管継手の結合動作を示す一部断面側面図
【図9】従来の管継手の結合動作を示す一部断面側面図
【図10】従来の管継手の結合動作を示す一部断面側面図
【符号の説明】
【0030】
10…管継手、11…管継手本体、12…ハウジング、13…第1の支持部、14…第2の支持部、14a…当接部、14b…スプリング、15…ガイド部材、15a…スプリング、16…挿入口部材、16a…挿入口、20…相手側管継手、30…取付対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側管継手の傾斜を吸収しながら相手側管継手と接続可能に構成された管継手において、
軸方向一端側に相手側管継手が着脱自在に接続され、軸方向他端側に可撓管が接続される管継手本体と、
任意の取付対象物に固定され、内部に管継手本体を収容するハウジングと、
管継手本体をハウジングに対して揺動自在に支持する第1の支持部と、
第1の支持部をハウジングに対して管継手本体の径方向に移動自在に支持する第2の支持部とを備えた
ことを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記管継手本体を揺動方向の所定の向きに戻るように付勢し、第1の支持部を移動方向の所定位置に戻るように付勢する付勢手段を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の管継手。
【請求項3】
前記付勢手段によって付勢され、第2の支持部に設けたテーパ状の当接部に当接することにより、管継手本体を揺動方向の所定の向きに戻るように案内し、第1の支持部を移動方向の所定位置に戻るように案内するガイド部材を備えた
ことを特徴とする請求項2記載の管継手。
【請求項4】
前記第2の支持部をハウジングに対して管継手本体の軸方向に移動自在に設けるとともに、
第2の支持部を管継手本体の軸方向一端側に付勢する付勢手段を備えた
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の管継手。
【請求項5】
前記相手側管継手が挿入される挿入口を有し、挿入口の一端側を外側に向かってテーパ状に拡開するように形成するとともに、挿入口の他端側を管継手本体の揺動及び径方向の移動範囲内で管継手本体と相手側管継手とが結合可能な内径に形成した
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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