管継手
【課題】簡単な内部構造で樹脂管の接続を知覚により容易に確認でき、樹脂管接続後のシール性を損なうことなくこの樹脂管を容易に所定の接続状態まで挿入して強固に接続できる管継手を提供する。
【解決手段】継手本体5に設けた内筒3と外筒4との間隙Gに挿入する樹脂管2をロックリング7で引き抜き防止状態に接続し、かつ、内筒3の外周面3aに装着したシール部材8で密封接続する管継手である。この管継手は、樹脂管2をガイドする挿入ガイド10が内筒3と外筒4との間に装着され、この挿入ガイド10の外周に複数の弾性舌片35が設けられ、この弾性舌片35の外径を外筒4の内径より大きく設定されていると共に、外筒4の内径奥部に弾性舌片35で音・振動を発生させるための凹状収納部20が形成されている。
【解決手段】継手本体5に設けた内筒3と外筒4との間隙Gに挿入する樹脂管2をロックリング7で引き抜き防止状態に接続し、かつ、内筒3の外周面3aに装着したシール部材8で密封接続する管継手である。この管継手は、樹脂管2をガイドする挿入ガイド10が内筒3と外筒4との間に装着され、この挿入ガイド10の外周に複数の弾性舌片35が設けられ、この弾性舌片35の外径を外筒4の内径より大きく設定されていると共に、外筒4の内径奥部に弾性舌片35で音・振動を発生させるための凹状収納部20が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、住宅設備の給水や給湯用の配管に、架橋ポリエチレン管やポリブテン管等の樹脂管をワンタッチで接続するための管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅設備等の給水給湯配管は、架橋ポリエチレン管やポリブテン管などの樹脂管を用いて施工されることがほとんどであり、樹脂管を接続する場合、施工が容易であることからワンタッチ式の管継手が用いられることが多い。この種の管継手には、樹脂管の容易な挿入に加えて、施工管理等の点から管の挿入(接続)状態を確認できることも要求されてきている。挿入状態の確認は、主に目視によりおこなわれてきたが、配管作業を効率化するためにより知覚的に確認しやすくした管継手が知られている。
【0003】
このような管継手として、例えば、特許文献1の管継手が知られている。この管継手は、弾発的な締め付け力で締め付けるためのスリット付きの締付環体と、拡径片とを有し、拡径片は、締付環体の弾発力に抗してこの締付環体を拡径するようにスリットの端部に離脱可能に挟持されてパイプの先端部に当接して離脱するようになっている。この管継手にパイプが挿入されると、このパイプ端部により拡径片を離脱させた瞬間に締付環体がその弾発力により縮径してパイプを締付けると共にパチンという離脱音が発生する。作業者は、この離脱音によりパイプの挿入の完了を知覚できるようになっている。
【0004】
同文献2の管継手は、樹脂管の外周に位置し、継手入口側にフランジ、奥側に切り割りを有するスプリングホルダと、スプリングホルダに挿通されたサポートリングと、スプリングホルダの切り割りの内周への倒れこみを規制するガイドリングと、フランジとサポートリングとの間に圧縮状態で保持される伸張スプリングとを有する構造になっている。この管継手に樹脂管を挿入すると、この挿入によりガイドリングがスプリングホルダから外れ、切り割りが縮径してサポートリングがスプリングホルダから離脱し、これによりスプリングが伸張して止水用Oリングを介してロックリングを外筒のテーパ面に押し込んで縮径させることで樹脂管を保持するようになっている。このとき、スプリングの伸張に伴って衝撃音が生じ、作業者は、この音を知覚することで管挿入の完了を確認するようになっている。
【0005】
同文献3の継手は、端部側の舌片の外周面に係止突条が形成された保護カバーを有し、この保護カバーは、継手本体内部の内周面に設けられた係止溝に係止突条が係止した状態で継手本体に収容されている。この継手に接続管を挿入すると、菅端部が保護カバー奥端部に形成された係止フランジに当接し、この保護カバーを奥側に移動する力が作用する。このとき、係止突条が係止溝から離脱して継手本体の内周側に形成された衝突音発生溝に移動し、舌片の弾性復元力によって係止突条が衝突音発生溝に嵌りこむときに衝突音を発生するようになっている。
【0006】
同文献4の管継手においては、被接続パイプが差し込まれる円環状空隙室にパイプ誘導環体が設けられ、このパイプ誘導環体により被接続管を誘導案内するようになっている。この管継手において、パイプ誘導環体は管継手の空隙室の外方から差込まれて所定位置に装着される。
同文献5の樹脂管用ワンタッチ継手においては、継手本体内の内筒部にパイプ案内用の挿入ガイドが外嵌されている。この挿入リングには、継手本体内に装着されたロックリングの保持爪が仮着する段部が形成されている。挿入ガイドは、同文献4と同様に継手本体の組み込み後にこの継手本体の開口側から装入されて所定位置に仮着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3411546号公報
【特許文献2】特開2003−106490号公報
【特許文献3】特開2007−177992号公報
【特許文献4】特開2008−291886号公報
【特許文献5】特開2010−2022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の管継手は、パイプ端部により拡径片を離脱させた瞬間に締付環体がパイプを締付ける構造であり、この締付環体による締付け時にパイプが拘束されて挿入が停止する構造になっている。このため、この管継手は締付環体が縮径する空間が必要となり、管継手の径が大きいものとなる。
また、この管継手にはパイプを案内するための部品が備えられていないため、パイプの挿入端部によりシール用Oリングが傷付けられる可能性がある。これを回避するためにOリングのつぶし代を小さくしたり接着したりすると、Oリングによるシール性を確保できなくなることがある。
【0009】
同文献2の管継手は、伸張スプリング、スプリングホルダ、サポートリング、ガイドリングの4部品により衝撃音を発生させるようにしているため、部品点数が多く、内部構造が複雑化して生産コストも上昇していた。
【0010】
同文献3の継手についても、管挿入検知用の保護カバーである別部品が必要になり、更に、継手本体内部には、係止溝や衝突音発生溝を施す必要があるため、コア部を分離させるなどの部品点数が多い複雑な構造になっている。更に、同文献1と同様に、Oリングが接続管端部によって傷付けられやすく、しかも、管端部が斜め切りの状態であると、Oリングがこの管端部により部分的に溝から押出されてはみ出すおそれがあった。
【0011】
一方、同文献4においては、パイプ誘導環体を管継手の外方より差込むように装着する必要があるため所定位置への装着が困難になり、パイプ誘導環体を差込みすぎるなどの誤装着の危険性があった。このため、この種のパイプ誘導環体を管挿入の確認用として内部に装着する場合にも、外方より差込み装着した場合には適切な位置に装着されないおそれがある。
【0012】
同文献5においても、同文献4と同様に、組立後の継手本体の開口側から挿入ガイドを挿入しているため、仮着時に所定位置からずれる可能性がある。
更には、挿入ガイドの組込みを含む、継手全体の組立てを効率化する技術が求められていた。
【0013】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、簡単な内部構造で樹脂管の接続を知覚により容易に確認でき、樹脂管接続後のシール性を損なうことなくこの樹脂管を容易に所定の接続状態まで挿入して強固に接続できる管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、継手本体に設けた内筒と外筒との間隙に挿入する樹脂管をロックリングで引き抜き防止状態で接続し、かつ、内筒の外周面に装着したシール部材で密封接続する管継手であって、樹脂管をガイドする挿入ガイドを内外筒の間に装着し、この挿入ガイドの外周に複数の弾性舌片を設け、この弾性舌片の外径を外筒の内径より大きく設定すると共に、外筒の内径奥部には、弾性舌片で音・振動を発生させるための凹状収納部を形成した管継手である。
【0015】
請求項2に係る発明は、挿入ガイドは、外筒の開口側に装着したロックリングと、このロックリングに対向する位置に設けたシール部材との間に仮止め状態で装着されている管継手である。
【0016】
請求項3に係る発明は、弾性舌片の端部に設けた係止凸部を外筒の凹状収納部の始端位置に設けた内径凸部に係止させるようにした管継手である。
【0017】
請求項4に係る発明は、挿入ガイドが継手の奥まで届いた状態で弾性舌片の係止凸部の位置と凹状収納部の入り口との間に樹脂管の斜め切りを許容する距離を設けた管継手である。
【0018】
請求項5に係る発明は、継手本体に設けた内筒と外筒との間隙に挿入する樹脂管をロックリングで引き抜き防止状態で接続し、かつ、内筒の外周面に装着したシール部材で密封接続する管継手であって、樹脂管をガイドする挿入ガイドを内外筒の間に装着し、この挿入ガイドよりも継手奥側に環状のクリック部材を装着し、このクリック部材の外周に複数の弾性舌片を設け、この弾性舌片の外径を外筒の内径より大きく設定すると共に、外筒の内径奥部には、弾性舌片で音・振動を発生させるための凹状収納部を形成した管継手である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によると、樹脂管を挿入するときに挿入ガイド外周の複数の弾性舌片が凹状収納部に差し掛かった瞬間にその弾性で復元して衝撃的に凹状収納部の内面部位を叩いて音・振動を発生させることができ、このときの音を聴覚、振動を触覚により知覚することで樹脂管の接続を検知できる。このため、樹脂管の挿入状態を視覚以外の知覚によって確認しやすくなり、継手が直視しにくい場所に配設されているなどの施工環境が悪い場合でも、目視だけにたよることなく聴覚・触覚によっても樹脂管の挿入完了を確実に知ることができる。挿入ガイドには弾性舌片を一体に形成できることにより、部品点数を増加させることなく簡単な内部構造に設けることができる。この挿入ガイドのガイドにより樹脂管の端面がシール部材を傷付けることを防ぎ、シール性を損なうことなくこの樹脂管を所定の位置まで挿入して強固に接続できる。
【0020】
請求項2に係る発明によると、挿入ガイドをロックリングとシール部材との間に仮止め状態で保持することができるため、仮に、管継手が樹脂管を下方向に挿入する向きで配設されている場合でも、挿入ガイドが落下することを防いで樹脂管の挿入が完全におこなわれた場合のみに挿入ガイドを奥部まで到達させることで、樹脂管の挿入の可否を挿入ガイドの位置を目視することで容易に判定することもできる。
さらには、ロックリングに対して挿入リングを予め仮組みし、この状態でロックリングとシール部材との間に挿入リングを配設するように仮止め装着することにより、挿入リングを全体の組立てと同時に確実に所定位置に配設でき、かつ、シール部材とロックリングとにより強固に挿入リングを支えてこの仮組み状態を維持できる。
【0021】
請求項3に係る発明によると、係止凸部が内径凸部に引っ掛かった状態になり、この状態から更に挿入する力を加えることでより深く曲げられた弾性舌片が内径凸部を乗り越えるときの速度が加速して音や振動をより大きく発生させることができるため、樹脂管の挿入の完了を検知しやすくなる。
【0022】
請求項4に係る発明によると、樹脂管が斜め切りされている場合でも、この樹脂管の端面に沿って傾斜することにより変形した挿入ガイドの長さ方向にずれた複数の弾性舌片を全て凹状収納部まで案内することができ、一部の弾性舌片が案内されないことを防いで音・振動を大きい状態に確保し、樹脂管の挿入の完了を検知しやすくなる。更に、樹脂管の斜め切り以外にも、挿入ガイドの挿入度合いの誤差を許容して確実に全ての弾性舌片を凹状収納部に収納できる。
【0023】
請求項5に係る発明によると、樹脂管を挿入するときにクリック部材外周の複数の弾性舌片が凹状収納部に差し掛かった瞬間にその弾性で復元して衝撃的に凹状収納部の内面部位を叩いて音・振動を発生させることができ、このときの音を聴覚、振動を触覚により知覚することで樹脂管の接続を検知できる。このため、樹脂管の挿入状態を視覚以外の知覚によって確認しやすくなり、継手が直視しにくい場所に配設されているなどの施工環境が悪い場合でも、目視だけにたよることなく聴覚・触覚によっても樹脂管の挿入完了を確実に知ることができる。クリック部材には弾性舌片を一体に形成できることにより簡単な構造に設けることができる。挿入ガイドが樹脂管をガイドするため、このガイドにより樹脂管の端面がシール部材を傷付けることを防ぎ、シール性を損なうことなくこの樹脂管を所定の位置まで挿入して強固に接続できる。しかも、挿入ガイドよりも継手奥側にクリック部材を装着していることで、クリック部材がシール部材を傷付けることが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明における管継手の実施形態を示した半截断面図である。
【図2】図1の管継手に樹脂管を挿入した状態を示す半截断面図である。
【図3】挿入ガイドを示す半截断面図である。
【図4】挿入ガイド装着前の状態を示す分解図である。
【図5】セミアセンブリの組込み状態を示した正面図である。
【図6】本発明の管継手の組込み前の状態を示す拡大正面図である。
【図7】本発明の管継手の組込み後の状態を示す拡大正面図である。
【図8】(a)は、挿入ガイドの斜視図である。(b)は、挿入ガイドの正面図である。(c)は(b)のA−A断面図である。
【図9】爪部の係止状態を示した要部拡大断面図である。
【図10】樹脂管の挿入開始状態を示す拡大断面図である。
【図11】図10の状態から更に樹脂管を挿入した状態を示す拡大断面図である。
【図12】図11の状態から更に樹脂管を挿入した状態を示す拡大断面図である。
【図13】図12の状態から更に樹脂管を挿入した状態を示す拡大断面図である。
【図14】樹脂管の挿入が完了した状態を示す拡大断面図である。
【図15】斜め切りの樹脂管を挿入した状態を示す拡大断面図である。
【図16】本発明における管継手の他の実施形態を示した要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明における管継手の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1においては、本発明における管継手の一実施形態を示した半截断面図を示しており、図2においては、樹脂管を挿入した状態、図10においては、樹脂管の挿入開始状態の拡大断面図を示している。
【0026】
図において、本発明における管継手本体1は、例えば、給水・給湯用の樹脂管2を抜け止め状態で接続可能になっており、内筒3、外筒4が設けられた継手本体5、キャップ6、ロックリング7、シール部材8を有し、この管継手本体1内には挿入ガイド10が装着されている。樹脂管2としては、例えば、架橋ポリエチレン管やポリブテン管等の管を用いることができ、更には、これ以外にも、金属強化ポリエチレン管等の各種の樹脂管、或は、銅管等の金属管を接続することも可能である。
【0027】
本実施形態における継手本体5には内筒3が一体に形成され、この継手本体5に対して外筒4が取付けられてこの内筒3と外筒4との間に間隙Gが形成され、この間隙Gに樹脂管2が挿入される。継手本体5は、例えば、銅合金などの金属、又はPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などの剛性の高い樹脂により筒状に形成され、通水用の流路口11を有している。内筒3は継手本体5の樹脂管2を接続する側に樹脂管2の内径に応じた適宜の外径に設けられている。なお、内筒3は、別部品として継手本体に装着するようにしてもよい。
【0028】
内筒3の外周面3aには装着溝12が形成され、この装着溝12には、例えば、EPDM等のゴム製のOリングからなるシール部材8が装着されている。この構造により、管継手本体1は、内筒3の外周面3aに装着したシール部材8で樹脂管2の内周を密封シールしながら接続する内周シール構造のワンタッチ継手になっている。装着溝12は、継手本体5の樹脂管2が抜け出す側である開口側と、この開口側よりも樹脂管2の挿入側との2ヶ所に形成され、各装着溝12、12にシール部材8、8がそれぞれ装着されている。これにより、シール部材8は、ロックリング7と対向する位置に配設される。
【0029】
継手本体5の外周囲には凹凸状の係合部14が形成され、この係合部14に外筒4が取付けられる。継手本体5における内筒3との他方側には雄ネジ部16が設けられ、この雄ネジ部16には図示しないヘッダーや接続部材、或はその他の外部の配管が接続可能になっている。継手本体5は、図示したような直線形状以外にも、例えば、チーズ形状やエルボ形状などであってもよい。
【0030】
外筒4は、例えば、非結晶性ナイロンやPPSU(ポリフェニルサルフォン樹脂)などの樹脂により透明或は半透明に設けられ、この外筒4の外部から樹脂管2や挿入ガイド10の挿入状態を透視可能になっている。
【0031】
外筒4の内径奥部には、後述する弾性舌片35の弾性力で打撃されることにより音・振動を発生させるための凹状収納部20が形成されており、この凹状収納部20は、管継手軸芯方向において、長さWにより形成されている。長さWは、挿入ガイド10が継手の奥まで届いた状態で弾性舌片35の係止凸部38が位置する場所が凹状収納部20の入り口20aよりも奥側までくるように形成され、これにより、係止凸部38の位置と凹状収納部20の入り口との間には、樹脂管2の斜め切りを許容する距離(空間)Lが形成可能になっている。この距離Lは、後述する樹脂管のずれ量Δを許容できる長さに設けられる。
凹状収納部20の入り口20a側には外筒4の内周面4aの内径よりも縮径した鍔状の内径凸部21が環状に形成され、この内径凸部21は、樹脂管2を管継手本体1に挿入したときの挿入完了時の樹脂管の端面2aの位置よりも継手奥部側に形成されている。
【0032】
外筒4の内周側の継手本体5への取り付け位置には、この継手本体5の係合部14とスナップ嵌合可能な係合部22が設けられ、また、この他端側の外周側には、凹凸状の係合段部23が設けられている。外筒4は、係合部14、22のスナップ嵌合により継手本体5に一体化され、嵌合後には外筒4と継手本体5とが相互に回転可能な状態となっている。図示しないが、外筒4の内周側の内径は、挿入ガイド10の外径の寸法と略同じ寸法に設けられている。外筒4の入口側内周には内向きのテーパ面25と、このテーパ面25になだらかにつながるR面26が形成されている。
【0033】
キャップ6は、たとえば、引張り弾性率が外筒4よりも高いポリアセタールなどの樹脂によりキャップ状に形成されている。このキャップ6の内周側には、外筒4の係合段部23にスナップ嵌合可能な係合段部27が形成されている。キャップ6は、係合段部23、27のスナップ嵌合により外筒4の開口側に取付けられ、取付け後には、キャップ6と外筒4とが相互に回転可能になる。キャップ6の端部側には内周方向に突設する環状突部28が形成され、外筒4の装着後には、この環状突部28によりロックリング7の抜け出しが防止される。キャップ6は、透明性を有する材料により形成することもできる。
【0034】
ロックリング7は、ステンレス鋼等により略環状に形成され、環状部30と、この環状部30の内径側の爪部31とを有している。爪部31は、環状部30から所定の傾斜角度で屈曲形成され、樹脂管2の表面に係止可能になっている。ロックリング7は、外筒4の開口側とキャップ6の内周部位との間に形成される空隙32に装着され、爪部31により樹脂管2の挿入をスムーズにしつつ、この爪部31が樹脂管2に係止して、樹脂管2に引抜き荷重が加わったときに引抜き阻止力を発揮して速やかにこの樹脂管2を引き抜き防止状態で接続可能になっている。
【0035】
図3における挿入ガイド10は、管継手本体1内に樹脂管2をガイドするために設けられ、内筒3と外筒4との間隙Gに装着される。挿入ガイド10は、例えば、弾性を有するポリアセタール等の硬質樹脂製からなり、その外周には、複数の弾性舌片35とテーパ面部36とが設けられている。
【0036】
弾性舌片35は、例えば、挿入ガイド10に対して4箇所に等間隔で形成され、挿入ガイド10の外周部位から外側に弓なりに反るように突き出して、外筒4の内径よりも大きく、外筒4の奥部に設けられた凹状収容部20の内径と同一か、やや大きい外径になるような寸法に設定されている。弾性舌片35の端部には係止凸部38が形成され、この係止凸部38は、凹状収納部20の始端位置に設けた内径凸部21に係止可能になっている。挿入ガイド10が樹脂管2に押されて間隙G内を奥方向に移動し、係止凸部38が内径凸部21に係止したときには、弾性舌片35には弾性エネルギーが蓄勢されるようになっている。弾性舌片35は、凹状収納部20に収納可能な大きさになっている。テーパ面部36は、挿入ガイド10の後端付近の外周に、挿入ガイド10の挿入方向から所定角度で傾斜して形成されている。
【0037】
挿入ガイド10には、弾性舌片35、テーパ面部36、これらの間に位置する外周部37により、その外周囲に装着凹部40が形成されている。挿入ガイド10は、後述するガイド面41側からロックリング7に内挿することにより、弾性舌片35が傾倒後に起立復帰し、ロックリング7の爪部31が装着凹部40に嵌め込まれた状態で、ロックリング7とシール部材8との間に仮止め状態で装着されている。この仮止め装着により、挿入ガイド10が管継手本体1から脱落することが防がれている。
【0038】
挿入ガイド10を装着する場合には、図4において、装着凹部40に爪部31を嵌め込むようにしながら挿入ガイド10とロックリング7とを一体に仮組みし、これを矢印に示すようにキャップ6の外筒4との嵌め込み側から環状突部28側に挿入するように装着する。さらに、この状態のキャップ6に係合段部23、27を介して外筒4をスナップ嵌合により圧入することで、図5に示すような、いわゆるセミアセンブリの状態に組み込む。この状態において、外筒4と環状突部28との間には、ロックリング7の板厚以上の隙間xを設けている。これにより、ロックリング7と仮組された挿入ガイド10は、軸方向に若干移動可能な状態で配置されている。なお、弾性舌片35は、外筒4のテーパ面25には接していない。
【0039】
この仮組み状態に対して、図6に示すように係合部14、22をスナップ嵌合させるように継手本体5を圧入してこれらを一体化する。このとき、継手本体5に装着したシール部材8が挿入ガイド10に強く接触しながらこの挿入ガイド10を押し出しつつ組立てているため、この挿入ガイド10を強固にロックリング7で支える必要がある。
そのため、挿入ガイド10には上述したロックリング7との嵌合用の装着凹部40が設けられている。挿入ガイド10は、この装着凹部40に対してガイド面41側からロックリング7に差し込むことが可能になっており、この差し込み過程で弾性舌片35が傾倒した後に起立復帰することで逆方向への抜けが防止されている。
【0040】
具体的には、図8(a)、図8(b)、図8(c)に示した挿入ガイド10の弾性舌片35の端部35aとテーパ面部36で構成される装着凹部40にロックリング7の爪部31が係止することで、前記した一方向性の強固な嵌合ができるようになっている。このとき、ロックリング7の形状と装着凹部40との望ましい関係として、図9に示すようにロックリング7の厚さTに対して抜け防止方向の装着凹部40の深さDが十分に大きく、例えば、深さDはロックリング7の板厚の2〜3倍に設定している。深さDが3倍を超えた場合、弾性舌片35の傾倒が不十分となり、ロックリング7との係止作業や、樹脂管2の挿入時における挿入ガイド10の移動に支障を生ずるおそれがある。更に、ロックリング7と装着凹部40との厚さ方向のなす角度θを90°よりも小さくすることが重要である。このようにすることで、ロックリング7に対し、弾性舌片35に軸方向の力が加わった場合でも爪部31の装着凹部40からの抜け出しが防止されるため、挿入ガイド10のロックリング7に対する仮組み強度を強く維持できる。角度θが90°よりも大きい場合、同様の軸方向の力に対し、ロックリング7が弾性舌片35に対して滑って外れやすくなる傾向になる。
【0041】
そして、これらの組込み後には、図7の状態となる。前記したように、ロックリング7と挿入ガイド10とを予め仮組みし、これをキャップ6の内側から装着することにより、継手組立時における挿入ガイド10の継手内部方向への移動を規制でき、ロックリング7、挿入ガイド10、シール部材8をそれぞれ適切な位置に配置できる。
より詳細には、樹脂管挿入方向に傾斜したロックリング7の爪部31が、挿入ガイド10の外周の樹脂管挿入方向に傾斜形成している弾性舌片35に係止していることにより、継手組立時における挿入ガイド10を、ロックリング7の仮組みによるくさび作用を利用して支えることができ、「挿入ガイドとシール部材との動摩擦力」<「挿入ガイドとロックリングとの仮組み係止力」の関係により、シール部材8を押圧する際の摩擦力に抗して仮組み状態を維持することができる。
【0042】
このようにして挿入ガイド10とロックリング7との仮組みを強固にしていることで、この仮組み状態の挿入ガイド10とロックリング7との管継手本体1への組込みが可能になる。このため、例えば、管継手本体部分を先に組立て、この管継手本体に対してパイプ挿入口から差込むようにして所定位置に挿入ガイドを取付ける場合のように、挿入ガイドの押し込みすぎなどにより位置決めが困難になることがなく、管継手本体1への挿入ガイド10の取付けが容易になる。挿入ガイド10は、キャップ6の環状突部28の側面に支持されたロックリング7とシール部材8により、適切な位置に保持される。
【0043】
更には、上述した位置関係によって挿入ガイド10とロックリング7とを仮止めすれば、挿入ガイド10とシール部材8との位置関係を変更することも可能である。例えば、樹脂管2が非接続状態のとき、ロックリング7の爪部31がシール部材8の管挿入側の後方位置付近に対向配置される位置関係にすることもできる。また、ロックリング7の数を増やして装着することも可能であり、その場合、最も入り口側に配置されるロックリング7に対して挿入ガイドを仮止めし、この上から図示しないスペーサリング等を介してさらに別のロックリングを仮止め装着したものをキャップ6内に装着すればよい。この場合にも、ロックリングが1枚である場合と同様に、挿入ガイド10を管継手本体の所定位置に装着することができる。
【0044】
挿入ガイド10の内周側には、シール部材8を案内する円弧状のガイド面41と、このガイド面41に続いて円筒状の圧接面42が形成され、この圧接面42に続いてガイド面41との他端側に環状突起部43が内径側に突設するように形成されている。環状突起部43は、圧接面42との間に形成される傾斜面部44によってなだらかにつながっており、図示しないが、環状突起部43の内径は、樹脂管2の内径と略同じか、或はやや小さい径に設定されている。圧接面42の内径は、シール部材8の外径よりも小さく樹脂管2の内径よりも大きくなっており、この内径を環状突起部43の内径よりも大径とすることで、圧接面42によるシール部材8のつぶし代が環状突起部43によるつぶし代よりも小さくなるように設定されている。そのため、シール部材8は、圧接面42から大きな負荷を受けることがなく、なだらかに間隙Gに挿入される。挿入ガイド10の傾斜面部44は、テーパ面又はアール面の何れの態様であってもよい。
【0045】
挿入ガイド10のシール部材8との接触部位は、シール部材8と最初に接触するガイド面41、シール部材8を圧接する圧接面42、この圧接面42よりもより強く圧接可能な環状突起部43による三段階の面により構成されている。
これらのガイド面41、圧接面42、環状突起部43の各面を形成する場合には、例えば、シール部材8のつぶし代は通常15%から30%程度に設計されるが、樹脂管2やシール部材8の製作時の寸法公差等を考慮した場合、30%程度の大きめのつぶし代を設定した上で所定の寸法で形成することが望ましい。
【0046】
ここで、一般的な形状の挿入用ガイドを形成する際には、Oリングを設計する際の基準に従ってこのOリングを傷めることなく樹脂管を挿入できるようにするために、例えば、樹脂管の先端内周にJIS B 2401などで規定されている面取りを設けることが必要になっている。そのため、本来であれば、樹脂管を切断したあとにその先端内周に面取りを施してからこの樹脂管を挿入用として用いることが望ましいが、配管の作業現場の作業効率向上の点から、この規格を満足するような滑らかな面取りを施すことは通常は困難になっており、しかも、この面取り工程で新たなヒゲバリ等が生じた場合にはこのヒゲバリがシール部材とのシール面に挟まって却ってシール性を阻害する要因になることがある。このことから、作業現場では、ヒゲバリ等の発生を避けるために樹脂管を専用カッター等で切断して、この樹脂管をそのまま接続用として用いる場合がほとんどである。
【0047】
そこで、本実施形態においては、挿入ガイド10を上述した三段階の面からなる構成に設け、所定のつぶし代を発揮できる寸法に形成していることで、シール部材8による高いシール性を確保しつつ、樹脂管2を容易に挿入して接続できるようにしている。これによって、樹脂管2の挿入時には、挿入ガイド10により内筒3と外筒4との間の間隙Gにシール部材8を内径方向に押さえつつ樹脂管2を案内し、この樹脂管2をスムーズに接続することが可能になっている。
そして、樹脂管2の挿入の完了時には、管継手本体1は、拡径した弾性舌片35がその弾性力により外筒4の凹状収納部20に衝突して音・振動を発生するようになっている。
【0048】
次に、上述のように構成された管継手本体1に樹脂管2を挿入する場合の動作を説明する。
図10においては、樹脂管2の挿入開始の状態であって、樹脂管端面2aが管継手本体1に仮止め状態で装着された挿入ガイド10に当接した瞬間を示している。このとき、入口側のシール部材8は、挿入ガイド10の圧接面42により所定のつぶし代よりもやや緩い状態に圧縮されている。そのため、挿入ガイド10は、シール部材8の外径により支持され、管継手の軸心に対して自動調芯されて樹脂管2の端面2aとの芯ずれが防がれる。
【0049】
この状態から樹脂管2を挿入すると、樹脂管2の挿入に伴って環状突起部43がシール部材8を押圧するため、挿入ガイド10は樹脂管2の端面2aに強く押付けられながら管継手本体1の内部へ移動する。更に、樹脂管2が管継手本体1に挿入されると、挿入ガイド10のガイド面41に奥側のシール部材8が接触する。このとき、ガイド面41になだらかに続くように形成された圧接面42がシール部材8を緩く圧接するように設定されているため、シール部材8が容易に圧接面42に導かれる。
【0050】
続いて、弾性舌片35及び係止凸部38が外筒4のテーパ面25に接触し、樹脂管2の挿入に伴ってこのテーパ面25に続いて形成されたR面26に沿うようにこれらが変形しながら間隙G内に収納される。このとき、挿入ガイド10は、引き続きシール部材8に圧接しながら管継手本体1の内部に移動することで図11に示した状態まで樹脂管2が挿入される。
【0051】
そして、図12に示すように、環状突起部43が奥側のシール部材8に当接したときには、挿入ガイド10が樹脂管2の端面2aに押圧されて管継手本体1の内部に移動する。このとき、弾性舌片35は、外筒4の内周面4aにより縮径されて、径方向の弾性エネルギーが蓄勢され、この内周面4aに強く圧接した状態で管継手本体1の内部方向に移動しようとするため、仮に、管継手本体1が、樹脂管2を重力方向に挿入する向きに配設されている場合にも、挿入ガイド10が奥側のシールリング8を乗り越えた後に重力で樹脂管端面2aから離れて管継手本体1の奥側に落下することが防がれている。
【0052】
図13においては、樹脂管2を更に挿入し、挿入ガイド10の係止凸部38が外筒4の内径凸部21まで到達した状態を示している。このとき、挿入ガイド10は、4つ形成された係止凸部38のうち、少なくとも1つの係止凸部38が外筒4の内径凸部21に係止されることにより、更なる移動を規制される。この状態から樹脂管2の挿入が継続されると、挿入ガイド10が樹脂管2により押圧されることにより、上述の係止状態を保ったまま若干樹脂管2の挿入方向に移動する。これにより、残りの係止凸部38が内径凸部21に係止される。
【0053】
この係合状態において、更に樹脂管2の挿入を継続しようとすると、挿入ガイド10の移動が規制されているため、作業者はより強い力で樹脂管2を挿入しようとする。このとき、係止凸部38が内径凸部21を乗り越えようとして中心側に曲げ変形し、弾性舌片35に弾性エネルギーが蓄勢されつつ挿入ガイド10が移動し、このとき挿入荷重は若干増加した状態となる。
【0054】
この状態から挿入を継続し、係止凸部38が内径凸部21を乗り越えると、その瞬間に挿入荷重が低下すると共に、開放された各係止凸部38が蓄勢された弾性エネルギーにより拡径し、元の状態あるいは、やや縮径された状態まで復元する。このとき、係止凸部38が凹状収容部20に衝撃的に衝突することで振動・音が発生する。この場合、少なくとも音が発生すればよく、振動が生じればなおよい。その際、挿入ガイド10は勢いよく継手奥側に移動するため、弾性舌片35が一斉に拡径し、効果的に音(振動)を発生することができる。
【0055】
なお、内径凸部21は、その内径が外筒の内周面4aよりも小さいことから、弾性舌片35を更に縮径して、径方向の弾性エネルギーを増加させる機能を有する。この機能のみを必要とする管継手においては、上述した係止凸部38と内径凸部21との係合状態は必要なく、外筒の内周面4aから内径凸部21を傾斜面や曲面で接続し、円滑に弾性舌片35を縮径するようにしてもよい。
【0056】
図14においては、樹脂管2の挿入を完了した状態を示しており、このとき係止凸部38が凹状収納部20に収納される。この場合、挿入ガイド10が継手の奥まで届いたときに弾性舌片35の係止凸部38の位置と凹状収納部20の入り口20aとの間に樹脂管2の斜め切りを許容する距離Lを設けているので、この距離Lにより後述する斜め切りの樹脂管50を接続する場合でも、その端面50aの長さ方向のずれを吸収して確実に係止凸部38を凹状収納部20に収納できる。また、距離Lを設けていることにより係止凸部38が凹状収納部20に衝突したときにこれらの間に空間部位が形成されるため、この空間部位により係止凸部38による衝突音を反響させることができ、衝突音(振動)をより大きく発生させることができる。
【0057】
図15においては、管継手本体1に対して、端面50aが管軸に対して垂直に切断されていない斜め切りの樹脂管50を挿入する状態を示している。この樹脂管50は、図において、端面上部側と端面下部側との間に管軸方向のずれ量Δによる寸法差が生じており、この樹脂管50を管継手本体1に挿入した場合には端面下部側が先行して挿入されることになる。
【0058】
しかし、このときには端面下部側において、環状突起部43がシール部材8に引っ掛かってこのシール部材8を圧接した状態になるため、挿入ガイド10に樹脂管50が当接し、挿入ガイド10が樹脂管50によって押圧された状態が維持される。このとき、ずれ量Δの分だけ遅れて挿入されている端面上部側においては、挿入ガイド10が端面50aに沿うように変形してその変形状態が維持されるため、端面下部側と同様に挿入ガイド10が樹脂管50により押圧された状態が確保される。
【0059】
樹脂管50が更に押し込まれた際にも、環状突起部43が完全にシール部材8を乗り越えるまでは、前記と同様にして挿入ガイド10に樹脂管50が押付けられた状態が常に維持されるため、挿入ガイド10と端面50aとが離間することが防がれる。これによって、斜め切りの樹脂管50を挿入する場合でも、端面50aが完全にシール部材8を通過するまではこの端面50aのエッジ部位がシール部材8に接触することが防がれるため、このシール部材8が挿入ガイド10と端面50aとの間に挟みこまれたり端面50aにより傷ついたりすることが防止される。樹脂管50の接続後には、前述した距離Lによりずれ量Δが許容されることによって、係止凸部38が凹状収納部20内に収納される。
【0060】
一方、ずれ量Δが許容範囲内に収まっていない場合には、凹状収容部20まで到達しない係止凸部38が生じ、音の発生が不十分となることで、作業者に接続が不十分であることを認識させることができる。
【0061】
なお、環状突起部を有することの無い挿入用ガイド、例えば、内周側がストレート状の挿入用ガイドを使用した場合には、斜め切りの樹脂管を挿入する際にこの挿入用ガイドがシール部材に圧接して乗り越えようとするときに、シール部材全体が樹脂管の挿入方向に押圧されてしまうため、継手内に遅れて挿入される側では挿入用ガイドと樹脂管端面との間に隙間が生じ、樹脂管端面のエッジ部分が直接シール部材に接触することになる。その際、樹脂管における先行して挿入される側では既にシール部材が樹脂管の内面に入り込んでいるため、遅れて挿入される側ではシール部材がその装着溝から搾り出された状態になり、樹脂管のエッジ部分に引っ掛かり易くなる。そのため、シール部材が内筒と樹脂管との間からはみ出したり樹脂管のエッジ部分に傷付けられて漏水を引き起こすことにつながる。
一方、前述したとおり、本発明における管継手は、環状突起部43によって挿入ガイド10と樹脂管端面とを常に接触した状態に保持できるため、シール部材8の装着溝12への装着状態が維持されて漏水を確実に防ぐことが可能になっている。
【0062】
本発明の管継手は、上述したように樹脂管2をガイドする挿入ガイド10を内筒3と外筒4との間隙Gに装着し、この挿入ガイド10の外周に複数の弾性舌片35を設け、この弾性舌片35の外径を外筒4の内径より大きく設定すると共に、外筒4の内径奥部に弾性舌片35で音・振動を発生させるための凹状収納部20を形成しているので、管継手本体1の内部に挿入ガイド10以外の部品をあらたに追加したり内部構造を複雑化したりすることなく挿入ガイド10で樹脂管2を案内して、シール部材8を傷付けたりすることなく樹脂管2を所定の位置まで確実に挿入してシール部材8によるシール性を確保でき、樹脂管2の挿入を完了したときには音・振動を発生させることで、このときの音を聴覚、振動を触覚により知覚することで挿入の完了を簡単に確認できる。
【0063】
しかも、弾性舌片35の端部に設けた係止凸部38を外筒4の凹状収納部20の始端位置に設けた内径凸部21に係止させて弾性舌片の弾性エネルギーを蓄勢するようにしているので、弾性舌片35をより深く曲げることで蓄勢する弾性エネルギーをより大きくでき、係止凸部38が凹状収納部20に衝突したときの音や振動をより大きくして確実に樹脂管2の挿入完了を検知できる。
【0064】
図16においては、本発明における管継手の他の実施形態を示している。なお、この実施形態において、前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
この実施形態における管継手本体60は、挿入ガイド61と、この挿入ガイド61と別体の環状のクリック部材62とを有し、挿入ガイド61を内筒3と外筒4との間隙Gに装着し、挿入ガイド61よりも継手奥側にクリック部材62を装着したものである。クリック部材62の外周には複数の弾性舌片35が設けられ、この弾性舌片35の外径が外筒4の内径より大きく設定されていると共に、外筒4の内径奥部には弾性舌片35で音・振動を発生させるための凹状収納部20が形成されている。
【0065】
これらの挿入ガイド61、クリック部材62は、前述した挿入ガイド10と同様に、例えば、弾性を有するポリアセタール等の硬質樹脂によって形成されている。管継手本体60を組立てる際には、外筒4の内周に形成された係止凹部63に弾性舌片35を係止させるようにしてクリック部材62を予め継手奥側に装着し、これに続いて挿入ガイド61を装着する。
【0066】
管継手本体60の場合にも、前記実施形態と同様に樹脂管2の挿入完了時に弾性舌片35が凹状収納部20に衝突することで音・振動が発生し、これを知覚することで樹脂管2の接続完了を検知できる。また、樹脂管2の挿入状態を外筒4の外部から透視することも可能である。
このように、樹脂管2をガイドする機能を有する挿入ガイド61と、音・振動を発生させる機能を有するクリック部材62とを分けて構成することも可能である。
【0067】
以上、本発明における管継手の実施形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【0068】
これにより、継手本体に設けた内筒と外筒との間隙に樹脂管を挿入し、この樹脂管をロックリングで引き抜きを防止しながらシール部材で密封接続する構造の管継手であれば各種の内部構造に設けることができ、例えば、継手本体に外筒を一体に形成し、この継手本体に別体に設けた内筒を嵌合等の適宜の固着手段で固着することもできる。また、ロックリングを増やして樹脂管の抜け止め効果を高めるなどの変更も可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 管継手本体
2 樹脂管
3 内筒
3a 外周面
4 外筒
5 継手本体
7 ロックリング
8 シール部材
10 挿入ガイド
20 凹状収納部
20a 入り口
21 内径凸部
35 弾性舌片
38 係止凸部
G 間隙
L 距離
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、住宅設備の給水や給湯用の配管に、架橋ポリエチレン管やポリブテン管等の樹脂管をワンタッチで接続するための管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅設備等の給水給湯配管は、架橋ポリエチレン管やポリブテン管などの樹脂管を用いて施工されることがほとんどであり、樹脂管を接続する場合、施工が容易であることからワンタッチ式の管継手が用いられることが多い。この種の管継手には、樹脂管の容易な挿入に加えて、施工管理等の点から管の挿入(接続)状態を確認できることも要求されてきている。挿入状態の確認は、主に目視によりおこなわれてきたが、配管作業を効率化するためにより知覚的に確認しやすくした管継手が知られている。
【0003】
このような管継手として、例えば、特許文献1の管継手が知られている。この管継手は、弾発的な締め付け力で締め付けるためのスリット付きの締付環体と、拡径片とを有し、拡径片は、締付環体の弾発力に抗してこの締付環体を拡径するようにスリットの端部に離脱可能に挟持されてパイプの先端部に当接して離脱するようになっている。この管継手にパイプが挿入されると、このパイプ端部により拡径片を離脱させた瞬間に締付環体がその弾発力により縮径してパイプを締付けると共にパチンという離脱音が発生する。作業者は、この離脱音によりパイプの挿入の完了を知覚できるようになっている。
【0004】
同文献2の管継手は、樹脂管の外周に位置し、継手入口側にフランジ、奥側に切り割りを有するスプリングホルダと、スプリングホルダに挿通されたサポートリングと、スプリングホルダの切り割りの内周への倒れこみを規制するガイドリングと、フランジとサポートリングとの間に圧縮状態で保持される伸張スプリングとを有する構造になっている。この管継手に樹脂管を挿入すると、この挿入によりガイドリングがスプリングホルダから外れ、切り割りが縮径してサポートリングがスプリングホルダから離脱し、これによりスプリングが伸張して止水用Oリングを介してロックリングを外筒のテーパ面に押し込んで縮径させることで樹脂管を保持するようになっている。このとき、スプリングの伸張に伴って衝撃音が生じ、作業者は、この音を知覚することで管挿入の完了を確認するようになっている。
【0005】
同文献3の継手は、端部側の舌片の外周面に係止突条が形成された保護カバーを有し、この保護カバーは、継手本体内部の内周面に設けられた係止溝に係止突条が係止した状態で継手本体に収容されている。この継手に接続管を挿入すると、菅端部が保護カバー奥端部に形成された係止フランジに当接し、この保護カバーを奥側に移動する力が作用する。このとき、係止突条が係止溝から離脱して継手本体の内周側に形成された衝突音発生溝に移動し、舌片の弾性復元力によって係止突条が衝突音発生溝に嵌りこむときに衝突音を発生するようになっている。
【0006】
同文献4の管継手においては、被接続パイプが差し込まれる円環状空隙室にパイプ誘導環体が設けられ、このパイプ誘導環体により被接続管を誘導案内するようになっている。この管継手において、パイプ誘導環体は管継手の空隙室の外方から差込まれて所定位置に装着される。
同文献5の樹脂管用ワンタッチ継手においては、継手本体内の内筒部にパイプ案内用の挿入ガイドが外嵌されている。この挿入リングには、継手本体内に装着されたロックリングの保持爪が仮着する段部が形成されている。挿入ガイドは、同文献4と同様に継手本体の組み込み後にこの継手本体の開口側から装入されて所定位置に仮着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3411546号公報
【特許文献2】特開2003−106490号公報
【特許文献3】特開2007−177992号公報
【特許文献4】特開2008−291886号公報
【特許文献5】特開2010−2022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の管継手は、パイプ端部により拡径片を離脱させた瞬間に締付環体がパイプを締付ける構造であり、この締付環体による締付け時にパイプが拘束されて挿入が停止する構造になっている。このため、この管継手は締付環体が縮径する空間が必要となり、管継手の径が大きいものとなる。
また、この管継手にはパイプを案内するための部品が備えられていないため、パイプの挿入端部によりシール用Oリングが傷付けられる可能性がある。これを回避するためにOリングのつぶし代を小さくしたり接着したりすると、Oリングによるシール性を確保できなくなることがある。
【0009】
同文献2の管継手は、伸張スプリング、スプリングホルダ、サポートリング、ガイドリングの4部品により衝撃音を発生させるようにしているため、部品点数が多く、内部構造が複雑化して生産コストも上昇していた。
【0010】
同文献3の継手についても、管挿入検知用の保護カバーである別部品が必要になり、更に、継手本体内部には、係止溝や衝突音発生溝を施す必要があるため、コア部を分離させるなどの部品点数が多い複雑な構造になっている。更に、同文献1と同様に、Oリングが接続管端部によって傷付けられやすく、しかも、管端部が斜め切りの状態であると、Oリングがこの管端部により部分的に溝から押出されてはみ出すおそれがあった。
【0011】
一方、同文献4においては、パイプ誘導環体を管継手の外方より差込むように装着する必要があるため所定位置への装着が困難になり、パイプ誘導環体を差込みすぎるなどの誤装着の危険性があった。このため、この種のパイプ誘導環体を管挿入の確認用として内部に装着する場合にも、外方より差込み装着した場合には適切な位置に装着されないおそれがある。
【0012】
同文献5においても、同文献4と同様に、組立後の継手本体の開口側から挿入ガイドを挿入しているため、仮着時に所定位置からずれる可能性がある。
更には、挿入ガイドの組込みを含む、継手全体の組立てを効率化する技術が求められていた。
【0013】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、簡単な内部構造で樹脂管の接続を知覚により容易に確認でき、樹脂管接続後のシール性を損なうことなくこの樹脂管を容易に所定の接続状態まで挿入して強固に接続できる管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、継手本体に設けた内筒と外筒との間隙に挿入する樹脂管をロックリングで引き抜き防止状態で接続し、かつ、内筒の外周面に装着したシール部材で密封接続する管継手であって、樹脂管をガイドする挿入ガイドを内外筒の間に装着し、この挿入ガイドの外周に複数の弾性舌片を設け、この弾性舌片の外径を外筒の内径より大きく設定すると共に、外筒の内径奥部には、弾性舌片で音・振動を発生させるための凹状収納部を形成した管継手である。
【0015】
請求項2に係る発明は、挿入ガイドは、外筒の開口側に装着したロックリングと、このロックリングに対向する位置に設けたシール部材との間に仮止め状態で装着されている管継手である。
【0016】
請求項3に係る発明は、弾性舌片の端部に設けた係止凸部を外筒の凹状収納部の始端位置に設けた内径凸部に係止させるようにした管継手である。
【0017】
請求項4に係る発明は、挿入ガイドが継手の奥まで届いた状態で弾性舌片の係止凸部の位置と凹状収納部の入り口との間に樹脂管の斜め切りを許容する距離を設けた管継手である。
【0018】
請求項5に係る発明は、継手本体に設けた内筒と外筒との間隙に挿入する樹脂管をロックリングで引き抜き防止状態で接続し、かつ、内筒の外周面に装着したシール部材で密封接続する管継手であって、樹脂管をガイドする挿入ガイドを内外筒の間に装着し、この挿入ガイドよりも継手奥側に環状のクリック部材を装着し、このクリック部材の外周に複数の弾性舌片を設け、この弾性舌片の外径を外筒の内径より大きく設定すると共に、外筒の内径奥部には、弾性舌片で音・振動を発生させるための凹状収納部を形成した管継手である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によると、樹脂管を挿入するときに挿入ガイド外周の複数の弾性舌片が凹状収納部に差し掛かった瞬間にその弾性で復元して衝撃的に凹状収納部の内面部位を叩いて音・振動を発生させることができ、このときの音を聴覚、振動を触覚により知覚することで樹脂管の接続を検知できる。このため、樹脂管の挿入状態を視覚以外の知覚によって確認しやすくなり、継手が直視しにくい場所に配設されているなどの施工環境が悪い場合でも、目視だけにたよることなく聴覚・触覚によっても樹脂管の挿入完了を確実に知ることができる。挿入ガイドには弾性舌片を一体に形成できることにより、部品点数を増加させることなく簡単な内部構造に設けることができる。この挿入ガイドのガイドにより樹脂管の端面がシール部材を傷付けることを防ぎ、シール性を損なうことなくこの樹脂管を所定の位置まで挿入して強固に接続できる。
【0020】
請求項2に係る発明によると、挿入ガイドをロックリングとシール部材との間に仮止め状態で保持することができるため、仮に、管継手が樹脂管を下方向に挿入する向きで配設されている場合でも、挿入ガイドが落下することを防いで樹脂管の挿入が完全におこなわれた場合のみに挿入ガイドを奥部まで到達させることで、樹脂管の挿入の可否を挿入ガイドの位置を目視することで容易に判定することもできる。
さらには、ロックリングに対して挿入リングを予め仮組みし、この状態でロックリングとシール部材との間に挿入リングを配設するように仮止め装着することにより、挿入リングを全体の組立てと同時に確実に所定位置に配設でき、かつ、シール部材とロックリングとにより強固に挿入リングを支えてこの仮組み状態を維持できる。
【0021】
請求項3に係る発明によると、係止凸部が内径凸部に引っ掛かった状態になり、この状態から更に挿入する力を加えることでより深く曲げられた弾性舌片が内径凸部を乗り越えるときの速度が加速して音や振動をより大きく発生させることができるため、樹脂管の挿入の完了を検知しやすくなる。
【0022】
請求項4に係る発明によると、樹脂管が斜め切りされている場合でも、この樹脂管の端面に沿って傾斜することにより変形した挿入ガイドの長さ方向にずれた複数の弾性舌片を全て凹状収納部まで案内することができ、一部の弾性舌片が案内されないことを防いで音・振動を大きい状態に確保し、樹脂管の挿入の完了を検知しやすくなる。更に、樹脂管の斜め切り以外にも、挿入ガイドの挿入度合いの誤差を許容して確実に全ての弾性舌片を凹状収納部に収納できる。
【0023】
請求項5に係る発明によると、樹脂管を挿入するときにクリック部材外周の複数の弾性舌片が凹状収納部に差し掛かった瞬間にその弾性で復元して衝撃的に凹状収納部の内面部位を叩いて音・振動を発生させることができ、このときの音を聴覚、振動を触覚により知覚することで樹脂管の接続を検知できる。このため、樹脂管の挿入状態を視覚以外の知覚によって確認しやすくなり、継手が直視しにくい場所に配設されているなどの施工環境が悪い場合でも、目視だけにたよることなく聴覚・触覚によっても樹脂管の挿入完了を確実に知ることができる。クリック部材には弾性舌片を一体に形成できることにより簡単な構造に設けることができる。挿入ガイドが樹脂管をガイドするため、このガイドにより樹脂管の端面がシール部材を傷付けることを防ぎ、シール性を損なうことなくこの樹脂管を所定の位置まで挿入して強固に接続できる。しかも、挿入ガイドよりも継手奥側にクリック部材を装着していることで、クリック部材がシール部材を傷付けることが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明における管継手の実施形態を示した半截断面図である。
【図2】図1の管継手に樹脂管を挿入した状態を示す半截断面図である。
【図3】挿入ガイドを示す半截断面図である。
【図4】挿入ガイド装着前の状態を示す分解図である。
【図5】セミアセンブリの組込み状態を示した正面図である。
【図6】本発明の管継手の組込み前の状態を示す拡大正面図である。
【図7】本発明の管継手の組込み後の状態を示す拡大正面図である。
【図8】(a)は、挿入ガイドの斜視図である。(b)は、挿入ガイドの正面図である。(c)は(b)のA−A断面図である。
【図9】爪部の係止状態を示した要部拡大断面図である。
【図10】樹脂管の挿入開始状態を示す拡大断面図である。
【図11】図10の状態から更に樹脂管を挿入した状態を示す拡大断面図である。
【図12】図11の状態から更に樹脂管を挿入した状態を示す拡大断面図である。
【図13】図12の状態から更に樹脂管を挿入した状態を示す拡大断面図である。
【図14】樹脂管の挿入が完了した状態を示す拡大断面図である。
【図15】斜め切りの樹脂管を挿入した状態を示す拡大断面図である。
【図16】本発明における管継手の他の実施形態を示した要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明における管継手の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1においては、本発明における管継手の一実施形態を示した半截断面図を示しており、図2においては、樹脂管を挿入した状態、図10においては、樹脂管の挿入開始状態の拡大断面図を示している。
【0026】
図において、本発明における管継手本体1は、例えば、給水・給湯用の樹脂管2を抜け止め状態で接続可能になっており、内筒3、外筒4が設けられた継手本体5、キャップ6、ロックリング7、シール部材8を有し、この管継手本体1内には挿入ガイド10が装着されている。樹脂管2としては、例えば、架橋ポリエチレン管やポリブテン管等の管を用いることができ、更には、これ以外にも、金属強化ポリエチレン管等の各種の樹脂管、或は、銅管等の金属管を接続することも可能である。
【0027】
本実施形態における継手本体5には内筒3が一体に形成され、この継手本体5に対して外筒4が取付けられてこの内筒3と外筒4との間に間隙Gが形成され、この間隙Gに樹脂管2が挿入される。継手本体5は、例えば、銅合金などの金属、又はPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などの剛性の高い樹脂により筒状に形成され、通水用の流路口11を有している。内筒3は継手本体5の樹脂管2を接続する側に樹脂管2の内径に応じた適宜の外径に設けられている。なお、内筒3は、別部品として継手本体に装着するようにしてもよい。
【0028】
内筒3の外周面3aには装着溝12が形成され、この装着溝12には、例えば、EPDM等のゴム製のOリングからなるシール部材8が装着されている。この構造により、管継手本体1は、内筒3の外周面3aに装着したシール部材8で樹脂管2の内周を密封シールしながら接続する内周シール構造のワンタッチ継手になっている。装着溝12は、継手本体5の樹脂管2が抜け出す側である開口側と、この開口側よりも樹脂管2の挿入側との2ヶ所に形成され、各装着溝12、12にシール部材8、8がそれぞれ装着されている。これにより、シール部材8は、ロックリング7と対向する位置に配設される。
【0029】
継手本体5の外周囲には凹凸状の係合部14が形成され、この係合部14に外筒4が取付けられる。継手本体5における内筒3との他方側には雄ネジ部16が設けられ、この雄ネジ部16には図示しないヘッダーや接続部材、或はその他の外部の配管が接続可能になっている。継手本体5は、図示したような直線形状以外にも、例えば、チーズ形状やエルボ形状などであってもよい。
【0030】
外筒4は、例えば、非結晶性ナイロンやPPSU(ポリフェニルサルフォン樹脂)などの樹脂により透明或は半透明に設けられ、この外筒4の外部から樹脂管2や挿入ガイド10の挿入状態を透視可能になっている。
【0031】
外筒4の内径奥部には、後述する弾性舌片35の弾性力で打撃されることにより音・振動を発生させるための凹状収納部20が形成されており、この凹状収納部20は、管継手軸芯方向において、長さWにより形成されている。長さWは、挿入ガイド10が継手の奥まで届いた状態で弾性舌片35の係止凸部38が位置する場所が凹状収納部20の入り口20aよりも奥側までくるように形成され、これにより、係止凸部38の位置と凹状収納部20の入り口との間には、樹脂管2の斜め切りを許容する距離(空間)Lが形成可能になっている。この距離Lは、後述する樹脂管のずれ量Δを許容できる長さに設けられる。
凹状収納部20の入り口20a側には外筒4の内周面4aの内径よりも縮径した鍔状の内径凸部21が環状に形成され、この内径凸部21は、樹脂管2を管継手本体1に挿入したときの挿入完了時の樹脂管の端面2aの位置よりも継手奥部側に形成されている。
【0032】
外筒4の内周側の継手本体5への取り付け位置には、この継手本体5の係合部14とスナップ嵌合可能な係合部22が設けられ、また、この他端側の外周側には、凹凸状の係合段部23が設けられている。外筒4は、係合部14、22のスナップ嵌合により継手本体5に一体化され、嵌合後には外筒4と継手本体5とが相互に回転可能な状態となっている。図示しないが、外筒4の内周側の内径は、挿入ガイド10の外径の寸法と略同じ寸法に設けられている。外筒4の入口側内周には内向きのテーパ面25と、このテーパ面25になだらかにつながるR面26が形成されている。
【0033】
キャップ6は、たとえば、引張り弾性率が外筒4よりも高いポリアセタールなどの樹脂によりキャップ状に形成されている。このキャップ6の内周側には、外筒4の係合段部23にスナップ嵌合可能な係合段部27が形成されている。キャップ6は、係合段部23、27のスナップ嵌合により外筒4の開口側に取付けられ、取付け後には、キャップ6と外筒4とが相互に回転可能になる。キャップ6の端部側には内周方向に突設する環状突部28が形成され、外筒4の装着後には、この環状突部28によりロックリング7の抜け出しが防止される。キャップ6は、透明性を有する材料により形成することもできる。
【0034】
ロックリング7は、ステンレス鋼等により略環状に形成され、環状部30と、この環状部30の内径側の爪部31とを有している。爪部31は、環状部30から所定の傾斜角度で屈曲形成され、樹脂管2の表面に係止可能になっている。ロックリング7は、外筒4の開口側とキャップ6の内周部位との間に形成される空隙32に装着され、爪部31により樹脂管2の挿入をスムーズにしつつ、この爪部31が樹脂管2に係止して、樹脂管2に引抜き荷重が加わったときに引抜き阻止力を発揮して速やかにこの樹脂管2を引き抜き防止状態で接続可能になっている。
【0035】
図3における挿入ガイド10は、管継手本体1内に樹脂管2をガイドするために設けられ、内筒3と外筒4との間隙Gに装着される。挿入ガイド10は、例えば、弾性を有するポリアセタール等の硬質樹脂製からなり、その外周には、複数の弾性舌片35とテーパ面部36とが設けられている。
【0036】
弾性舌片35は、例えば、挿入ガイド10に対して4箇所に等間隔で形成され、挿入ガイド10の外周部位から外側に弓なりに反るように突き出して、外筒4の内径よりも大きく、外筒4の奥部に設けられた凹状収容部20の内径と同一か、やや大きい外径になるような寸法に設定されている。弾性舌片35の端部には係止凸部38が形成され、この係止凸部38は、凹状収納部20の始端位置に設けた内径凸部21に係止可能になっている。挿入ガイド10が樹脂管2に押されて間隙G内を奥方向に移動し、係止凸部38が内径凸部21に係止したときには、弾性舌片35には弾性エネルギーが蓄勢されるようになっている。弾性舌片35は、凹状収納部20に収納可能な大きさになっている。テーパ面部36は、挿入ガイド10の後端付近の外周に、挿入ガイド10の挿入方向から所定角度で傾斜して形成されている。
【0037】
挿入ガイド10には、弾性舌片35、テーパ面部36、これらの間に位置する外周部37により、その外周囲に装着凹部40が形成されている。挿入ガイド10は、後述するガイド面41側からロックリング7に内挿することにより、弾性舌片35が傾倒後に起立復帰し、ロックリング7の爪部31が装着凹部40に嵌め込まれた状態で、ロックリング7とシール部材8との間に仮止め状態で装着されている。この仮止め装着により、挿入ガイド10が管継手本体1から脱落することが防がれている。
【0038】
挿入ガイド10を装着する場合には、図4において、装着凹部40に爪部31を嵌め込むようにしながら挿入ガイド10とロックリング7とを一体に仮組みし、これを矢印に示すようにキャップ6の外筒4との嵌め込み側から環状突部28側に挿入するように装着する。さらに、この状態のキャップ6に係合段部23、27を介して外筒4をスナップ嵌合により圧入することで、図5に示すような、いわゆるセミアセンブリの状態に組み込む。この状態において、外筒4と環状突部28との間には、ロックリング7の板厚以上の隙間xを設けている。これにより、ロックリング7と仮組された挿入ガイド10は、軸方向に若干移動可能な状態で配置されている。なお、弾性舌片35は、外筒4のテーパ面25には接していない。
【0039】
この仮組み状態に対して、図6に示すように係合部14、22をスナップ嵌合させるように継手本体5を圧入してこれらを一体化する。このとき、継手本体5に装着したシール部材8が挿入ガイド10に強く接触しながらこの挿入ガイド10を押し出しつつ組立てているため、この挿入ガイド10を強固にロックリング7で支える必要がある。
そのため、挿入ガイド10には上述したロックリング7との嵌合用の装着凹部40が設けられている。挿入ガイド10は、この装着凹部40に対してガイド面41側からロックリング7に差し込むことが可能になっており、この差し込み過程で弾性舌片35が傾倒した後に起立復帰することで逆方向への抜けが防止されている。
【0040】
具体的には、図8(a)、図8(b)、図8(c)に示した挿入ガイド10の弾性舌片35の端部35aとテーパ面部36で構成される装着凹部40にロックリング7の爪部31が係止することで、前記した一方向性の強固な嵌合ができるようになっている。このとき、ロックリング7の形状と装着凹部40との望ましい関係として、図9に示すようにロックリング7の厚さTに対して抜け防止方向の装着凹部40の深さDが十分に大きく、例えば、深さDはロックリング7の板厚の2〜3倍に設定している。深さDが3倍を超えた場合、弾性舌片35の傾倒が不十分となり、ロックリング7との係止作業や、樹脂管2の挿入時における挿入ガイド10の移動に支障を生ずるおそれがある。更に、ロックリング7と装着凹部40との厚さ方向のなす角度θを90°よりも小さくすることが重要である。このようにすることで、ロックリング7に対し、弾性舌片35に軸方向の力が加わった場合でも爪部31の装着凹部40からの抜け出しが防止されるため、挿入ガイド10のロックリング7に対する仮組み強度を強く維持できる。角度θが90°よりも大きい場合、同様の軸方向の力に対し、ロックリング7が弾性舌片35に対して滑って外れやすくなる傾向になる。
【0041】
そして、これらの組込み後には、図7の状態となる。前記したように、ロックリング7と挿入ガイド10とを予め仮組みし、これをキャップ6の内側から装着することにより、継手組立時における挿入ガイド10の継手内部方向への移動を規制でき、ロックリング7、挿入ガイド10、シール部材8をそれぞれ適切な位置に配置できる。
より詳細には、樹脂管挿入方向に傾斜したロックリング7の爪部31が、挿入ガイド10の外周の樹脂管挿入方向に傾斜形成している弾性舌片35に係止していることにより、継手組立時における挿入ガイド10を、ロックリング7の仮組みによるくさび作用を利用して支えることができ、「挿入ガイドとシール部材との動摩擦力」<「挿入ガイドとロックリングとの仮組み係止力」の関係により、シール部材8を押圧する際の摩擦力に抗して仮組み状態を維持することができる。
【0042】
このようにして挿入ガイド10とロックリング7との仮組みを強固にしていることで、この仮組み状態の挿入ガイド10とロックリング7との管継手本体1への組込みが可能になる。このため、例えば、管継手本体部分を先に組立て、この管継手本体に対してパイプ挿入口から差込むようにして所定位置に挿入ガイドを取付ける場合のように、挿入ガイドの押し込みすぎなどにより位置決めが困難になることがなく、管継手本体1への挿入ガイド10の取付けが容易になる。挿入ガイド10は、キャップ6の環状突部28の側面に支持されたロックリング7とシール部材8により、適切な位置に保持される。
【0043】
更には、上述した位置関係によって挿入ガイド10とロックリング7とを仮止めすれば、挿入ガイド10とシール部材8との位置関係を変更することも可能である。例えば、樹脂管2が非接続状態のとき、ロックリング7の爪部31がシール部材8の管挿入側の後方位置付近に対向配置される位置関係にすることもできる。また、ロックリング7の数を増やして装着することも可能であり、その場合、最も入り口側に配置されるロックリング7に対して挿入ガイドを仮止めし、この上から図示しないスペーサリング等を介してさらに別のロックリングを仮止め装着したものをキャップ6内に装着すればよい。この場合にも、ロックリングが1枚である場合と同様に、挿入ガイド10を管継手本体の所定位置に装着することができる。
【0044】
挿入ガイド10の内周側には、シール部材8を案内する円弧状のガイド面41と、このガイド面41に続いて円筒状の圧接面42が形成され、この圧接面42に続いてガイド面41との他端側に環状突起部43が内径側に突設するように形成されている。環状突起部43は、圧接面42との間に形成される傾斜面部44によってなだらかにつながっており、図示しないが、環状突起部43の内径は、樹脂管2の内径と略同じか、或はやや小さい径に設定されている。圧接面42の内径は、シール部材8の外径よりも小さく樹脂管2の内径よりも大きくなっており、この内径を環状突起部43の内径よりも大径とすることで、圧接面42によるシール部材8のつぶし代が環状突起部43によるつぶし代よりも小さくなるように設定されている。そのため、シール部材8は、圧接面42から大きな負荷を受けることがなく、なだらかに間隙Gに挿入される。挿入ガイド10の傾斜面部44は、テーパ面又はアール面の何れの態様であってもよい。
【0045】
挿入ガイド10のシール部材8との接触部位は、シール部材8と最初に接触するガイド面41、シール部材8を圧接する圧接面42、この圧接面42よりもより強く圧接可能な環状突起部43による三段階の面により構成されている。
これらのガイド面41、圧接面42、環状突起部43の各面を形成する場合には、例えば、シール部材8のつぶし代は通常15%から30%程度に設計されるが、樹脂管2やシール部材8の製作時の寸法公差等を考慮した場合、30%程度の大きめのつぶし代を設定した上で所定の寸法で形成することが望ましい。
【0046】
ここで、一般的な形状の挿入用ガイドを形成する際には、Oリングを設計する際の基準に従ってこのOリングを傷めることなく樹脂管を挿入できるようにするために、例えば、樹脂管の先端内周にJIS B 2401などで規定されている面取りを設けることが必要になっている。そのため、本来であれば、樹脂管を切断したあとにその先端内周に面取りを施してからこの樹脂管を挿入用として用いることが望ましいが、配管の作業現場の作業効率向上の点から、この規格を満足するような滑らかな面取りを施すことは通常は困難になっており、しかも、この面取り工程で新たなヒゲバリ等が生じた場合にはこのヒゲバリがシール部材とのシール面に挟まって却ってシール性を阻害する要因になることがある。このことから、作業現場では、ヒゲバリ等の発生を避けるために樹脂管を専用カッター等で切断して、この樹脂管をそのまま接続用として用いる場合がほとんどである。
【0047】
そこで、本実施形態においては、挿入ガイド10を上述した三段階の面からなる構成に設け、所定のつぶし代を発揮できる寸法に形成していることで、シール部材8による高いシール性を確保しつつ、樹脂管2を容易に挿入して接続できるようにしている。これによって、樹脂管2の挿入時には、挿入ガイド10により内筒3と外筒4との間の間隙Gにシール部材8を内径方向に押さえつつ樹脂管2を案内し、この樹脂管2をスムーズに接続することが可能になっている。
そして、樹脂管2の挿入の完了時には、管継手本体1は、拡径した弾性舌片35がその弾性力により外筒4の凹状収納部20に衝突して音・振動を発生するようになっている。
【0048】
次に、上述のように構成された管継手本体1に樹脂管2を挿入する場合の動作を説明する。
図10においては、樹脂管2の挿入開始の状態であって、樹脂管端面2aが管継手本体1に仮止め状態で装着された挿入ガイド10に当接した瞬間を示している。このとき、入口側のシール部材8は、挿入ガイド10の圧接面42により所定のつぶし代よりもやや緩い状態に圧縮されている。そのため、挿入ガイド10は、シール部材8の外径により支持され、管継手の軸心に対して自動調芯されて樹脂管2の端面2aとの芯ずれが防がれる。
【0049】
この状態から樹脂管2を挿入すると、樹脂管2の挿入に伴って環状突起部43がシール部材8を押圧するため、挿入ガイド10は樹脂管2の端面2aに強く押付けられながら管継手本体1の内部へ移動する。更に、樹脂管2が管継手本体1に挿入されると、挿入ガイド10のガイド面41に奥側のシール部材8が接触する。このとき、ガイド面41になだらかに続くように形成された圧接面42がシール部材8を緩く圧接するように設定されているため、シール部材8が容易に圧接面42に導かれる。
【0050】
続いて、弾性舌片35及び係止凸部38が外筒4のテーパ面25に接触し、樹脂管2の挿入に伴ってこのテーパ面25に続いて形成されたR面26に沿うようにこれらが変形しながら間隙G内に収納される。このとき、挿入ガイド10は、引き続きシール部材8に圧接しながら管継手本体1の内部に移動することで図11に示した状態まで樹脂管2が挿入される。
【0051】
そして、図12に示すように、環状突起部43が奥側のシール部材8に当接したときには、挿入ガイド10が樹脂管2の端面2aに押圧されて管継手本体1の内部に移動する。このとき、弾性舌片35は、外筒4の内周面4aにより縮径されて、径方向の弾性エネルギーが蓄勢され、この内周面4aに強く圧接した状態で管継手本体1の内部方向に移動しようとするため、仮に、管継手本体1が、樹脂管2を重力方向に挿入する向きに配設されている場合にも、挿入ガイド10が奥側のシールリング8を乗り越えた後に重力で樹脂管端面2aから離れて管継手本体1の奥側に落下することが防がれている。
【0052】
図13においては、樹脂管2を更に挿入し、挿入ガイド10の係止凸部38が外筒4の内径凸部21まで到達した状態を示している。このとき、挿入ガイド10は、4つ形成された係止凸部38のうち、少なくとも1つの係止凸部38が外筒4の内径凸部21に係止されることにより、更なる移動を規制される。この状態から樹脂管2の挿入が継続されると、挿入ガイド10が樹脂管2により押圧されることにより、上述の係止状態を保ったまま若干樹脂管2の挿入方向に移動する。これにより、残りの係止凸部38が内径凸部21に係止される。
【0053】
この係合状態において、更に樹脂管2の挿入を継続しようとすると、挿入ガイド10の移動が規制されているため、作業者はより強い力で樹脂管2を挿入しようとする。このとき、係止凸部38が内径凸部21を乗り越えようとして中心側に曲げ変形し、弾性舌片35に弾性エネルギーが蓄勢されつつ挿入ガイド10が移動し、このとき挿入荷重は若干増加した状態となる。
【0054】
この状態から挿入を継続し、係止凸部38が内径凸部21を乗り越えると、その瞬間に挿入荷重が低下すると共に、開放された各係止凸部38が蓄勢された弾性エネルギーにより拡径し、元の状態あるいは、やや縮径された状態まで復元する。このとき、係止凸部38が凹状収容部20に衝撃的に衝突することで振動・音が発生する。この場合、少なくとも音が発生すればよく、振動が生じればなおよい。その際、挿入ガイド10は勢いよく継手奥側に移動するため、弾性舌片35が一斉に拡径し、効果的に音(振動)を発生することができる。
【0055】
なお、内径凸部21は、その内径が外筒の内周面4aよりも小さいことから、弾性舌片35を更に縮径して、径方向の弾性エネルギーを増加させる機能を有する。この機能のみを必要とする管継手においては、上述した係止凸部38と内径凸部21との係合状態は必要なく、外筒の内周面4aから内径凸部21を傾斜面や曲面で接続し、円滑に弾性舌片35を縮径するようにしてもよい。
【0056】
図14においては、樹脂管2の挿入を完了した状態を示しており、このとき係止凸部38が凹状収納部20に収納される。この場合、挿入ガイド10が継手の奥まで届いたときに弾性舌片35の係止凸部38の位置と凹状収納部20の入り口20aとの間に樹脂管2の斜め切りを許容する距離Lを設けているので、この距離Lにより後述する斜め切りの樹脂管50を接続する場合でも、その端面50aの長さ方向のずれを吸収して確実に係止凸部38を凹状収納部20に収納できる。また、距離Lを設けていることにより係止凸部38が凹状収納部20に衝突したときにこれらの間に空間部位が形成されるため、この空間部位により係止凸部38による衝突音を反響させることができ、衝突音(振動)をより大きく発生させることができる。
【0057】
図15においては、管継手本体1に対して、端面50aが管軸に対して垂直に切断されていない斜め切りの樹脂管50を挿入する状態を示している。この樹脂管50は、図において、端面上部側と端面下部側との間に管軸方向のずれ量Δによる寸法差が生じており、この樹脂管50を管継手本体1に挿入した場合には端面下部側が先行して挿入されることになる。
【0058】
しかし、このときには端面下部側において、環状突起部43がシール部材8に引っ掛かってこのシール部材8を圧接した状態になるため、挿入ガイド10に樹脂管50が当接し、挿入ガイド10が樹脂管50によって押圧された状態が維持される。このとき、ずれ量Δの分だけ遅れて挿入されている端面上部側においては、挿入ガイド10が端面50aに沿うように変形してその変形状態が維持されるため、端面下部側と同様に挿入ガイド10が樹脂管50により押圧された状態が確保される。
【0059】
樹脂管50が更に押し込まれた際にも、環状突起部43が完全にシール部材8を乗り越えるまでは、前記と同様にして挿入ガイド10に樹脂管50が押付けられた状態が常に維持されるため、挿入ガイド10と端面50aとが離間することが防がれる。これによって、斜め切りの樹脂管50を挿入する場合でも、端面50aが完全にシール部材8を通過するまではこの端面50aのエッジ部位がシール部材8に接触することが防がれるため、このシール部材8が挿入ガイド10と端面50aとの間に挟みこまれたり端面50aにより傷ついたりすることが防止される。樹脂管50の接続後には、前述した距離Lによりずれ量Δが許容されることによって、係止凸部38が凹状収納部20内に収納される。
【0060】
一方、ずれ量Δが許容範囲内に収まっていない場合には、凹状収容部20まで到達しない係止凸部38が生じ、音の発生が不十分となることで、作業者に接続が不十分であることを認識させることができる。
【0061】
なお、環状突起部を有することの無い挿入用ガイド、例えば、内周側がストレート状の挿入用ガイドを使用した場合には、斜め切りの樹脂管を挿入する際にこの挿入用ガイドがシール部材に圧接して乗り越えようとするときに、シール部材全体が樹脂管の挿入方向に押圧されてしまうため、継手内に遅れて挿入される側では挿入用ガイドと樹脂管端面との間に隙間が生じ、樹脂管端面のエッジ部分が直接シール部材に接触することになる。その際、樹脂管における先行して挿入される側では既にシール部材が樹脂管の内面に入り込んでいるため、遅れて挿入される側ではシール部材がその装着溝から搾り出された状態になり、樹脂管のエッジ部分に引っ掛かり易くなる。そのため、シール部材が内筒と樹脂管との間からはみ出したり樹脂管のエッジ部分に傷付けられて漏水を引き起こすことにつながる。
一方、前述したとおり、本発明における管継手は、環状突起部43によって挿入ガイド10と樹脂管端面とを常に接触した状態に保持できるため、シール部材8の装着溝12への装着状態が維持されて漏水を確実に防ぐことが可能になっている。
【0062】
本発明の管継手は、上述したように樹脂管2をガイドする挿入ガイド10を内筒3と外筒4との間隙Gに装着し、この挿入ガイド10の外周に複数の弾性舌片35を設け、この弾性舌片35の外径を外筒4の内径より大きく設定すると共に、外筒4の内径奥部に弾性舌片35で音・振動を発生させるための凹状収納部20を形成しているので、管継手本体1の内部に挿入ガイド10以外の部品をあらたに追加したり内部構造を複雑化したりすることなく挿入ガイド10で樹脂管2を案内して、シール部材8を傷付けたりすることなく樹脂管2を所定の位置まで確実に挿入してシール部材8によるシール性を確保でき、樹脂管2の挿入を完了したときには音・振動を発生させることで、このときの音を聴覚、振動を触覚により知覚することで挿入の完了を簡単に確認できる。
【0063】
しかも、弾性舌片35の端部に設けた係止凸部38を外筒4の凹状収納部20の始端位置に設けた内径凸部21に係止させて弾性舌片の弾性エネルギーを蓄勢するようにしているので、弾性舌片35をより深く曲げることで蓄勢する弾性エネルギーをより大きくでき、係止凸部38が凹状収納部20に衝突したときの音や振動をより大きくして確実に樹脂管2の挿入完了を検知できる。
【0064】
図16においては、本発明における管継手の他の実施形態を示している。なお、この実施形態において、前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
この実施形態における管継手本体60は、挿入ガイド61と、この挿入ガイド61と別体の環状のクリック部材62とを有し、挿入ガイド61を内筒3と外筒4との間隙Gに装着し、挿入ガイド61よりも継手奥側にクリック部材62を装着したものである。クリック部材62の外周には複数の弾性舌片35が設けられ、この弾性舌片35の外径が外筒4の内径より大きく設定されていると共に、外筒4の内径奥部には弾性舌片35で音・振動を発生させるための凹状収納部20が形成されている。
【0065】
これらの挿入ガイド61、クリック部材62は、前述した挿入ガイド10と同様に、例えば、弾性を有するポリアセタール等の硬質樹脂によって形成されている。管継手本体60を組立てる際には、外筒4の内周に形成された係止凹部63に弾性舌片35を係止させるようにしてクリック部材62を予め継手奥側に装着し、これに続いて挿入ガイド61を装着する。
【0066】
管継手本体60の場合にも、前記実施形態と同様に樹脂管2の挿入完了時に弾性舌片35が凹状収納部20に衝突することで音・振動が発生し、これを知覚することで樹脂管2の接続完了を検知できる。また、樹脂管2の挿入状態を外筒4の外部から透視することも可能である。
このように、樹脂管2をガイドする機能を有する挿入ガイド61と、音・振動を発生させる機能を有するクリック部材62とを分けて構成することも可能である。
【0067】
以上、本発明における管継手の実施形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【0068】
これにより、継手本体に設けた内筒と外筒との間隙に樹脂管を挿入し、この樹脂管をロックリングで引き抜きを防止しながらシール部材で密封接続する構造の管継手であれば各種の内部構造に設けることができ、例えば、継手本体に外筒を一体に形成し、この継手本体に別体に設けた内筒を嵌合等の適宜の固着手段で固着することもできる。また、ロックリングを増やして樹脂管の抜け止め効果を高めるなどの変更も可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 管継手本体
2 樹脂管
3 内筒
3a 外周面
4 外筒
5 継手本体
7 ロックリング
8 シール部材
10 挿入ガイド
20 凹状収納部
20a 入り口
21 内径凸部
35 弾性舌片
38 係止凸部
G 間隙
L 距離
【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手本体に設けた内筒と外筒との間隙に挿入する樹脂管をロックリングで引き抜き防止状態で接続し、かつ、前記内筒の外周面に装着したシール部材で密封接続する管継手であって、前記樹脂管をガイドする挿入ガイドを前記内外筒の間に装着し、この挿入ガイドの外周に複数の弾性舌片を設け、この弾性舌片の外径を前記外筒の内径より大きく設定すると共に、前記外筒の内径奥部には、前記弾性舌片で音・振動を発生させるための凹状収納部を形成したことを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記挿入ガイドは、外筒の開口側に装着したロックリングと、このロックリングに対向する位置に設けた前記シール部材との間に仮止め状態で装着されている請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記弾性舌片の端部に設けた係止凸部を前記外筒の凹状収納部の始端位置に設けた内径凸部に係止させるようにした請求項1又は2に記載の管継手。
【請求項4】
前記挿入ガイドが継手の奥まで届いた状態で前記弾性舌片の係止凸部の位置と前記凹状収納部の入り口との間に樹脂管の斜め切りを許容する距離を設けた請求項1乃至3の何れか1項に記載の管継手。
【請求項5】
継手本体に設けた内筒と外筒との間隙に挿入する樹脂管をロックリングで引き抜き防止状態で接続し、かつ、前記内筒の外周面に装着したシール部材で密封接続する管継手であって、前記樹脂管をガイドする挿入ガイドを前記内外筒の間に装着し、この挿入ガイドよりも継手奥側に環状のクリック部材を装着し、このクリック部材の外周に複数の弾性舌片を設け、この弾性舌片の外径を前記外筒の内径より大きく設定すると共に、前記外筒の内径奥部には、前記弾性舌片で音・振動を発生させるための凹状収納部を形成したことを特徴とする管継手。
【請求項1】
継手本体に設けた内筒と外筒との間隙に挿入する樹脂管をロックリングで引き抜き防止状態で接続し、かつ、前記内筒の外周面に装着したシール部材で密封接続する管継手であって、前記樹脂管をガイドする挿入ガイドを前記内外筒の間に装着し、この挿入ガイドの外周に複数の弾性舌片を設け、この弾性舌片の外径を前記外筒の内径より大きく設定すると共に、前記外筒の内径奥部には、前記弾性舌片で音・振動を発生させるための凹状収納部を形成したことを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記挿入ガイドは、外筒の開口側に装着したロックリングと、このロックリングに対向する位置に設けた前記シール部材との間に仮止め状態で装着されている請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記弾性舌片の端部に設けた係止凸部を前記外筒の凹状収納部の始端位置に設けた内径凸部に係止させるようにした請求項1又は2に記載の管継手。
【請求項4】
前記挿入ガイドが継手の奥まで届いた状態で前記弾性舌片の係止凸部の位置と前記凹状収納部の入り口との間に樹脂管の斜め切りを許容する距離を設けた請求項1乃至3の何れか1項に記載の管継手。
【請求項5】
継手本体に設けた内筒と外筒との間隙に挿入する樹脂管をロックリングで引き抜き防止状態で接続し、かつ、前記内筒の外周面に装着したシール部材で密封接続する管継手であって、前記樹脂管をガイドする挿入ガイドを前記内外筒の間に装着し、この挿入ガイドよりも継手奥側に環状のクリック部材を装着し、このクリック部材の外周に複数の弾性舌片を設け、この弾性舌片の外径を前記外筒の内径より大きく設定すると共に、前記外筒の内径奥部には、前記弾性舌片で音・振動を発生させるための凹状収納部を形成したことを特徴とする管継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−72895(P2012−72895A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78789(P2011−78789)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】
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