説明

管装置のための遠位脱離機構

【課題】患者の外部からアクセス可能な近位端と、畳まれた状態にあるインプラントの近位部分に係合するための少なくとも1つの特徴部を含む遠位端とを有する細長いコア要素を備える、拡張可能なインプラントを患者の脈管系内に送達するためのシステムを提供する。
【解決手段】システムは更に、インプラントの近位部分を覆い、かつ近位部分を畳まれた状態で保持するのに十分な内径及び長さを有する拡張リミッタと、拡張リミッタの近位方向への移動を可能にしてインプラントを解放するように、拡張リミッタに接続された遠位端と、患者の外部からアクセス可能な近位端と、を有する少なくとも1つの細長い部材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体血管内でのインプラントの送達、より詳細には、ステント及び他の拡張可能な脈管インプラントを選択的に解放するための機構に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈瘤、塞栓症、及び他の動静脈奇形等の脈管疾患及び欠陥は、これらが重要な組織の付近に存在し、又は奇形への容易なアクセスが得られない場合、特に処置が困難である。これら両方の困難因子は、特に脳動脈瘤に当てはまる。頭部血管を包囲する傷つきやすい脳組織及び制限されたアクセスにより、頭部脈管系の欠陥を外科的に処置することは非常に困難であり、また多くの場合、危険を伴う。
【0003】
代替的な処置としては、その遠位端が閉塞又は動脈瘤に配置される送達カテーテルを使用して展開されるステント及び塞栓コイル等の脈管閉塞装置が挙げられる。いくつかのタイプのステント送達システムが、例えば、Jones et al.による米国特許公開第2005/0049670号に開示されている。
【0004】
脳動脈瘤を処置する現在の好ましい手順では、塞栓コイル送達カテーテルの遠位端が、典型的には鼠径内の大腿動脈を通して患者の頭部脈管系ではない脈管系内に挿入され、頭蓋内の所定の送達部位へ案内される。例えばDiaz et al.による米国特許第6,063,100号及び6,179,857号に、塞栓コイルが適切に配置された後、流圧を用いて塞栓コイルを解放することを含む血管閉塞装置のための多数の送達技術が記載されている。
【0005】
多くの場合、塞栓コイルを移植する前に、最初にステント状脈管再建装置が送達カテーテルを使用して動脈瘤の真下に案内される。市販されている1つの再建製品は、例えば、Codman & Shurtleff,Inc.,325 Paramount Drive,Raynham,MassachusettsによるNavigate Tough Anatomy brochure Copyright 2009に記載されているようなCODMAN ENTERPRISE(登録商標)脈管再建装置及びシステムである。CODMAN ENTERPRISE(登録商標)装置は中央送達ワイヤにより保有され、当初は、シース型イントロデューサにより、畳まれた状態で送達ワイヤ上にて定位置に保持されている。一般に、例えば、同様にCodman & Shurtleffから市販され、Gore et al.により米国特許第5,662,622号に開示されているようなPROWLER(登録商標)SELECT(登録商標)Plusマイクロカテーテル等の送達カテーテルは、最初、その遠位先端部が動脈瘤の首部を僅かに越えるように経由脈管的に配置される。イントロデューサのテーパ形状の遠位先端部が送達カテーテルの近位ハブと接合された後、送達ワイヤが送達カテーテル内にて前進される。
【0006】
CODMAN ENTERPRISE(登録商標)装置は非常に可撓性であり、自己拡張型の閉鎖セル構造を有し、上記に引用したJones et al.による公開特許出願に説明されているステントと同様に、装置のフレア形状の各末端部に多数の放射線不透過性マーカーを有する。装置が適切に配置され、親血管に対して拡張された後、拡張した装置のセルの1つを通して1つ以上の塞栓コイル送達カテーテルを挿通し、次いで動脈瘤内に挿通して塞栓コイルを動脈瘤内に配置する。
【0007】
CODMAN ENTERPRISE(登録商標)装置は、部分的に展開され、送達カテーテルを中央送達ワイヤに対して注意深く操作することにより一旦再捕捉されて、送達カテーテルの遠位先端部を装置の近位部分上に保持すると共に、装置の遠位部分を拡張させてもよい。この行為は継続されて、装置の近位端の放射線不透過性マーカーを、送達ワイヤ内に形成された窪み内に捕捉する。しかしながら、送達カテーテルが窪みを僅かでも越えて引っ込められた場合、CODMAN ENTERPRISE(登録商標)装置は完全に拡張した状態となり、送達システムにより再捕捉又は再配置されることができない。
【0008】
自己拡張型及び機械的拡張型ステントの両方のための多数の周知のステント送達システムが、例えばRavenscroftにより米国特許第5,702,418号に記載されている。ステントの部分的展開及び後退は、当初は適切な位置で展開されなかったステントの回収を可能にするための重要な基準と見なされる。
【0009】
脆弱な、傷をつけない内側シース及びより強力な外側シースを有する送達システムが、Vrba et al.により米国特許第6,254,609号に開示されている。内側及び外側シースを使用する他の送達システムが、Ruetschにより米国特許第7,175,650号に開示されている。
【0010】
よじれに抵抗しながら腔内インプラントを配置する代替的な機械的脱離システムが、Hijlkema et al.により米国特許公開第2010/0063573号に記載されている。摺動可能な外側シースは、インプラントを覆う前進位置と、インプラントを露出する後退位置とを有する。一態様において、カテーテル先端部の近位端又はスタビライザーの遠位端の少なくとも一方が結合区画を形成し、前記結合区画は、外側シースが結合区画を越えて近位方向に引っ込められた際に、インプラントの一部分に解放可能に係合する。各結合区画は、フレア形状の係合表面、又はボトルネック形状を有するポケットを有する係合形状を有する。別の態様では、シースが前進位置にある際、1つ以上の可撓性指部を有する内側管状部材がインプラントに係合する。再び、外側シースが後退されてインプラントを展開する。
【0011】
ステント状の、概して展開できない装置も、塞栓症及びアテローム性動脈硬化症から生じる疾患の処置に使用される。塞栓症は血塊、コレステロール含有プラーク、細菌塊及び他のデブリによる突然の血管の閉塞である。血管を閉塞する血塊は、血栓と称されている。塞栓性閉塞が脳内で生じた場合、発作、特に急性虚血発作と称される神経機能の突然の損失をもたらし得る。
【0012】
塞栓性発作及びアテローム硬化型沈着物を処置するための多数の装置が、例えば、Engelson et al.による米国特許第5,972,019号に記載されている。他の、より最近の神経学的装置には、Codman & Shurtleff,Inc.のMicrus Revasc(商標)、Microtherapeutics,Inc.d/b/a ev3 NeurovascularのSolitaire(商標)装置、及びConcentric Medical製のTrevo(商標)及びMerci Retreiver(商標)装置が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、挿入中に可撓性を維持して脈管奇形を処置し、更に、送達カテーテルの後退により解放されるインプラントを分離する、改良されたインプラント送達システムを有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、インプラント送達システムの高い可撓性を維持すると共に、送達カテーテルの後退とは独立してインプラントの解放を制御することである。
【0015】
本発明の別の目的は、送達カテーテルが後退された後、インプラントの後退可能性を確実にすることにある。
【0016】
本発明は、患者の外部からアクセス可能な近位端と、畳まれた状態にあるインプラントの近位部分に係合するための少なくとも1つの特徴部を含む遠位端とを有する細長いコア要素を備える、拡張可能なインプラントを患者の脈管系内に送達するためのシステムを特徴付ける。システムは更に、インプラントの近位部分を覆い、かつ近位部分を畳まれた状態で保持するのに十分な内径及び長さを有する拡張リミッタと、拡張リミッタの近位方向の移動を可能にしてインプラントを解放するように、拡張リミッタに接続された遠位端と、患者の外部からアクセス可能な近位端と、を有する少なくとも1つの細長い部材とを備える。
【0017】
いくつかの実施形態において、システムは更に、コア要素、畳まれた状態にあるインプラント、及び拡張リミッタを収容するのに十分大きい内径を有する送達カテーテルを備える。係合特徴部は、所定の実施形態では、コア要素からの突出部であり、別の実施形態では、所望の際にインプラントの解放を援助するようにコア要素に対して後退可能である。いくつかの実施形態において、拡張リミッタは略円筒形であり、別の実施形態では、重なり合う縁を有する。
【0018】
所定の実施形態において、コア要素は金属から形成され、係合特徴部に近接した中実ワイヤを含む。いくつかの実施形態において、部材はワイヤ等のフィラメントである。別の実施形態では、コア要素及び部材はハイポチューブから形成され、一実施形態では、係合特徴部はハイポチューブ内に後退可能である。
【0019】
本発明はまた、自己拡張型材料から形成され、かつ少なくとも近位部分上に放射線不透過性マーカー等の複数の拡大部を有する拡張可能なインプラントを備える、拡張可能なインプラントを患者の脈管系内に送達するためのシステムも特徴付ける。システムは更に、患者の外部からアクセス可能な近位端と、放射線不透過性マーカー又は他の拡大部を受容するための凹部を画定する中実コアワイヤ、及び畳まれた状態にあるインプラントの近位部分に係合するための少なくとも1つの特徴部と、を含む遠位端と、を有する細長いコア要素を備える。拡張リミッタは、インプラントの近位部分を覆い、かつ近位部分を畳まれた状態で保持するのに十分な内径及び長さを有し、システムはまた、拡張リミッタが近位方向に牽引されること可能にしてインプラントを解放するように、拡張リミッタに接続された遠位端と、患者の外部からアクセス可能な近位端と、を有する少なくとも1つのフィラメントを備える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下に、図面を参照して本発明の好ましい実施形態をより詳細に説明する。
【図1】イントロデューサシースを有する先行技術によるインプラント送達システムの遠位部分の概略側面部分断面図。
【図2】本発明による送達システムの概略側面図。
【図3】図2の送達システムの断面図。
【図4】図2及び3のシステム内のコア要素の断面図。
【図4A】ハイポチューブ内に固定されている中実コアワイヤを示す、図4の部分Aの拡大図。
【図4B】ポリマージャケット又はスリーブ押出物で封じ込められているハイポチューブ内の螺旋状切込みを示す、図4の部分Bの拡大図。
【図5】本発明によるフィン型係合特徴部及び拡張リミッタにより捕捉されたインプラントの近位部分の概略部分断面平面図。
【図6】図2及び3の複雑な形状の拡張リミッタの側面図。
【図6A】図6の拡張リミッタの展開平面図。
【図7】図5の中実かつ円筒形の拡張リミッタの側面図。
【図8】中間の複雑さを有する拡張リミッタの展開平面図。
【図9】部分的展開のために、さもなくば完全に拡張されるステントの近位部分を保持している図2及び3のシステムの概略部分断面図。
【図10】完全展開のために、拡張リミッタが近位方向に牽引されてステントを解放した後の、図9の図と同様の図。
【図11】係合特徴部として機能する一対のニチノールワイヤを有する、本発明による送達システムの別の実施形態の遠位部分の概略側面図。
【図12】湾曲したニチノール係合ワイヤを有する、本発明による更なる別の実施形態の遠位部分の概略側面図。
【図13】遠位保持位置にある、重なり合うワイヤメッシュから形成された、代替的な拡張リミッタの部分斜視図。
【図14】拡張リミッタが近位解放位置へ牽引されている、図13の図と同様の図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、患者の脈管系内への拡張可能なインプラントの送達のためのシステムにより達成することができ、ここで用語「脈管系」は、ヒト又は他の動物内の任意の導管又は管網状組織を含むように、その最も広い意味にて使用される。本発明による送達システムは、患者の外部からアクセス可能な近位端、及び畳まれた状態にあるインプラントの近位部分に係合するための少なくとも1つの特徴部を含む遠位端とを有する細長いコア要素を備える。システムは更に、インプラントの近位部分を覆い、かつ近位部分を畳まれた状態で保持するのに十分な内径及び長さを有する拡張リミッタと、完全な展開及び脱離を所望する場合、拡張リミッタの近位方向の移動を可能にしてインプラントを解放するように、拡張リミッタに接続された遠位端と、患者の外部からアクセス可能な近位端と、を有する少なくとも1つの細長い部材とを備える。
【0022】
上述したように、両方ともCodman & Shurtleff,Inc.から市販されている、CODMAN ENTERPRISE(登録商標)脈管再建システム20内に、送達のために搭載されている周知のCODMAN ENTERPRISE(登録商標)脈管再建装置10が、比較により図1に概略的に示されている。装置10は、自己拡張型金属から形成され、かつ近位部分12及び遠位部分14を有し、近位部分12及び遠位部分14のそれぞれは4つの放射線不透過性マーカーを保有し、前記マーカーは、ワイヤ22の誘導遠位先端部区画24の後方の金属製送達ワイヤ22内に形成された凹部内に保たれている。
【0023】
先行技術によるシステム20は更に、高分子材料から形成され、かつ遠位端34で終結するテーパ形状の遠位区画32を有するイントロデューサシース30を備える。テーパ形状の遠位区画32は、例えば、上述したようなPROWLER(登録商標)SELECT(登録商標)Plusマイクロカテーテル等の送達カテーテルの近位端においてハブと接合される。送達カテーテルの内径は、イントロデューサ30の内径と実質的に同一であるため、装置10は畳まれた状態で維持される。しかしながら、送達ワイヤ22を収容するカテーテルの遠位端が、近位部分12を越えて引っ込められると直ぐに、装置10は完全に展開され、システム20から完全に分離して回収できない。
【0024】
本発明による改良された送達システム100の1つの構造は、インプラントと外側イントロデューサシース又は送達カテーテルとを有さずに図2の側面図及び3の断面図に示されているが、システム100は、上述したように脳動脈瘤を処置するために、図1の装置10及びイントロデューサ30と適合可能な寸法を有することが好ましい。本発明の記載において、用語「送達カテーテル」は、細長いコア要素が、実質的に畳まれた状態にある拡張可能なインプラントを保有すると共に、その内部を前進し得るルーメンを有する任意のイントロデューサ、シース、カテーテル、マイクロカテーテル、又は他の細長い装置を含むように、その最も広い意味にて使用される。
【0025】
図2及び3のシステム100は、コア要素102と、遠位端106及び近位端108を有する拡張リミッタ104とを含む。図4の断面図にも示すコア要素102は、遠位先端部112を有する中実コアワイヤ遠位区画110、小径区画114、中径区画116、小径区画118、大径区画120、小径区画124と126との間のインプラント係合特徴部122、及び近位端区画128を含む。この構造では、係合特徴部122は上部突出部150及び下部突出部152を有し、これらは全体で、一次元に沿って拡張リミッタ104のほぼ全内径に広がる。
【0026】
送達カテーテルが引っ込められた後の同様のシステム100aの概略部分切除平面図が図5に示され、インプラント10aの近位部分12aが、拡張リミッタ104aによって、コア要素102aの遠位コアワイヤ110aに対して凹部126a内に包含されている。固着されたフィン状係合特徴部150aが、圧縮された金属ストラット162を通して径方向外側に突出し、放射線不透過性ワイヤ包み等のインプラント10aの1つ以上の拡大部160に接して位置していてもよい。インプラント10aの遠位部分(図示せず)は拡張されており、ストラット162及び拡大部160上に遠位方向の牽引力を付与するが、少なくとも1つの係合特徴部150aは、拡張リミッタ104aが近位方向に牽引されるまで、インプラント10aがコア要素102aに対して遠位方向に軸線移動することを防止する。
【0027】
図2〜4のコア要素102は更に、この構造ではハイポチューブ130及びポリマージャケット又はスリーブ132を含み、図4Aにおいて、中実ワイヤ末端部区画128は僅かにより細い部分129を有し、前記部分はハイポチューブ130の遠位部分内で溶接されている。図4Bに示すように、ハイポチューブ130の拡張区画134は、ジャケット132により完全に覆われ又は封じ込められている螺旋状スロット136を有して、コア要素102の全体の可撓性を高めると共に、コア要素102が送達カテーテルに対して前進又は後退された際の摩擦係合を最小限にする。
【0028】
図2〜4において、コア要素102のハイポチューブ130は2つのスロット140及び142を画定して、図2及び3に示すように、それぞれ細長い部材144及び146を受容する。部材144及び146の遠位端は、好ましくは対称的な離間関係にて拡張リミッタ104の近位端108に固定される一方、部材144及び146の近位端は、ハイポチューブ130の中心ルーメン内を通過し、下記により詳細に記載するように、所望により拡張リミッタ104を近位方向に牽引してインプラントを解放するように、ハイポチューブ130の近位端を越えて少なくとも数センチメートル延び、又は別様にユーザーがアクセス可能であることが好ましい。引金、プルノブ、又は他の作動機構を部材144及び146に接続して、所望の際に拡張リミッタ104上に十分な牽引力を付与してもよい。
【0029】
脳動脈瘤を処置するための1つの構造において、遠位コアワイヤ110は、およそ0.046cm(0.018インチ)〜0.051cm(0.020インチ)の初期直径を有するニチノールワイヤ等の生体適合性材料から形成され、これを次いで選択的に研削又は別様に機械加工してインプラント係合特徴部122を形成し、前記特徴部は、およそ0.051cm(0.02インチ)の長さに沿って実質的に完全な初期ワイヤ直径に広がり、かつおよそ0.0076cm(0.003インチ)の厚さを有する突出部150及び152を有し、このコアワイヤの直径の様々な変化は上述されている。小径区画は、直径が0.0076cm(0.003インチ)ほどに細くてもよい。ハイポチューブ130は、十分なよじれ耐性を有する、およそ220cmの長さとおよそ0.041cm(0.016インチ)の外径とを有する適合性材料、好ましくはニチノール又は他の合金から形成されている。脱離部材144及び146は、直径0.0051cm(0.002インチ)のワイヤから形成され、それらの遠位端において拡張リミッタ104の近位端108に溶接されている。ポリマージャケット132は、ポリアミド等の、低摩擦の耐久性材料が好ましい。
【0030】
拡張リミッタ104は、図6にて側面図、図6Aにて開放平面図で示され、0度〜360度の基準地点が60度の増分で示されて、開口部172及び174等の、リミッタ104内に切削された様々な開口部を複雑な形状の一例として示しており、これらの開口部はリミッタ104の重量を低減する。直径およそ4mm〜5mmに拡張し、14mm〜37mm(0.55インチ〜1.46インチ)の長さを有するインプラントを用いて脳動脈瘤を処置するための1つの構造において、リミッタ104はニチノールから形成されて、およそ0.284cm(0.112インチ)の全長LL、0.051cm(0.020インチ)の外径、及び0.046cm(0.018インチ)の内径を有する。換言すれば、いくつかの構造において、長さLLのリミッタ104の長さはインプラントの長さの25パーセント未満であり、インプラント全長の10パーセント〜20パーセントのみであり得る。
【0031】
図5の拡張リミッタ104aは、図7にて中実の壁を有する円筒として側面図で示されている。少数の開口部又は切り抜きを有する拡張リミッタ104bの更なる他の構成を、図8の展開平面図に示す。
【0032】
図9及び10において、送達システム100の遠位部分は、送達カテーテル(これらの図では示さず)が少なくとも係合特徴部122の僅かに近位方向に引っ込められた後のステント10bの展開の異なる段階にて示されている。図9は、ステント10bの近位部分12bが拡張リミッタ104と係合特徴部122のフィン状突出部150及び152とにより尚捕捉されている一方、ステント10bの残りの部分がリミッタ遠位端106を越えて、ステントの完全直径SDに急速に達成するまで遠位方向に拡張している所を示す。所望される度に、ステント10bは送達カテーテルをシステム100に対して前進させることにより完全に再捕捉されることができる。
【0033】
外科医がステント10bの配置に完全に満足した後、部材140及び142に牽引力を適用してリミッタ104を図10に示した位置に移動し、それによりリミッタ104の遠位端106は現在、特徴部122の近位方向にある。近位部分12bは、ステント10bがその全長に沿ってその完全直径SDまで拡張するように、径方向外側へ拡張する。次いで、システム100の残りの部分が引っ込められ、ステント10bをその完全展開位置に残留させる。
【0034】
図11の送達システム200は、本発明による代替的構造である。細長いコア要素202は、この構造ではハイポチューブから形成されている遠位区画204と、この構造では同様にハイポチューブであり、かつ円筒形の拡張リミッタ222に溶接されている近位送達区画206とを有する。細長いコア要素202は更に、一対のニチノールワイヤ208及び210を含み、これらの遠位端は、溶接接合部又はプラグ等のアンカー212によって遠位区画204に固定されている。ワイヤ208及び210は係合屈曲部214及び216を含み、これらは通常、この構造では拡張リミッタ222内に画定されているスロット218及び220内にそれぞれ延びる。他の構造では、リミッタ222は屈曲部214及び216と解放可能に噛み合うことができる1つ以上の環状チャネル又は他のタイプの凹部を画定し、更なる他の構造では、リミッタ222はそのようないずれの噛み合い可能な特徴部も有さない。しかしながら、下記に記載するように、展開が所望されるまで、ワイヤ208及び210に力を適用することなく遠位区画204を近位区画206と結合させる機構を有することが好ましい。
【0035】
インプラントの近位部分がリミッタ222内に保たれ、かつ屈曲部216及び218により係合された状態で、システム200が外科医又は他の操作者により使用されてインプラントを血管網状組織又は他の脈管系内に送達する間、操作者は最初にシステム200を脈管系内に配置し、次いで送達カテーテルをコア要素202に対して近位方向に引っ込めて、インプラントを部分的に展開する。次いで、典型的には蛍光透視法を使用してインプラントを可視化し、所望の度に送達カテーテルを前進させてインプラントを畳み、次いでシステム200の位置を移動し、送達カテーテルを再度引っ込めることによりインプラントを再配置することができる。部分的に展開されたインプラントが容認できる位置にある場合、操作者はワイヤ208及び210の近位端(図示せず)に牽引力を適用して、インプラントを自由に浮動させた後、近位送達区画206上にて後方へ僅かに牽引して、インプラントを拡張リミッタ222から解放する。インプラントは完全に展開した状態となり、システム200が患者から除去される。
【0036】
図12の本発明による更なる他の送達システム300は、後退可能かつ除去可能な係合特徴部301を有し、前記特徴部301は、細長いコア要素302の小径領域内の通路304を通過する遠位突出部303を有する。1つの構造において、少なくとも係合特徴部301の遠位部分303は熱成形ニチノールワイヤであり、特徴部301に牽引力が適用されて少なくとも通路304を通過し、好ましくは肩308を越えるように遠位部分303を引っ込めるまで、インプラントは遠位突出部303により単独で保たれる。他の構造では、システム300に拡張リミッタが加えられて、完全展開が所望されるまで、インプラントの近位区画を更に制御する。
【0037】
図13及び14の本発明による尚更なる送達システム400は、中実又はワイヤメッシュ等の開放材料からなる湾曲したシートから形成されている拡張リミッタ402を備え、前記リミッタ402は、重なり合う側縁を有する。拡張リミッタ402は、細長いコア要素404上の特徴部403に対して、図13に示されるインプラント係合位置及び図14に示されるインプラント解放位置に配置される。この構造では、特徴部403は、小径区画405の遠位方向の、要素404の大径区画である。送達中、インプラント上の放射線不透過性マーカー等の近位拡大部は小径区画405内に包含され、拡張リミッタ402により定位置に保たれる。細長い部材406は、その遠位端408においてリミッタ402の近位縁に取り付けられて、完全なインプラント展開が所望される際、リミッタ402が近位方向に牽引されることを可能にする。
【0038】
医師はまた、ステント又は他のインプラント状装置を脱離させずに、急性虚血発作又は他の脈管疾患の処置において本発明の送達システムを使用することを選択することができる。送達システムは脈管系内を案内されて、インプラントが送達システムに取り付けられた状態を維持しながら、血栓又は他の塞栓を拡張インプラントのストラット内にからませることによりこれらを移動させ及び回収することができる。1つの手順において、完全に畳まれたステントを有する送達システムを血栓内を通して前進させた後、送達カテーテルを引っ込めてステントの殆どを拡張させ、ステントのストラットがそれ自身を血栓内に強制的に移動するようにする。次いで、送達システムを係合した血栓と共に引っ込める。
【0039】
塞栓又はプラークの血管壁に対する接着が強すぎ、除去できない状況下では、医師はステントを完全に展開し、脱離させて血管腔を開放させたまま保つように決定することができる。本発明による送達システムは、所望される時及び場合にのみ完全なステント展開及び脱離を可能にすることにより、医師が利用できる選択肢を増加させる。
【0040】
したがって、本発明の基礎となる新規な特徴を、本発明の好ましい実施形態に適用されるように図示し、説明し、指摘したが、当業者は、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、例示された装置の形と詳細並びにその操作の様々な省略、代用及び変更を行うことができることを理解するであろう。例えば、本発明の範囲内と同様の結果を得るために、実質的に同じ方法で、実質的に同じ機能を行う要素及び/又は工程の全ての組み合わせが明確に意図される。ある記載された実施形態の要素を別の実施形態の要素に置換することも十分意図され、想到される。また、図面は必ずしも縮尺通りではないが、実際には単に概念的なものである。したがって、本明細書に付属する特許請求の範囲の記載のみに基づいて限定がなされるものとする。
【0041】
本明細書に引用される全ての発行済み特許、係属中の特許出願、刊行物、論文、書籍、又は任意の他の参照文献は、その全文が参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0042】
〔実施の態様〕
(1) 拡張可能なインプラントを患者の脈管系に送達するためのシステムであって、
前記患者の外部からアクセス可能な近位端と、畳まれた状態にある前記インプラントの近位部分に係合するための少なくとも1つの特徴部を含む遠位端とを有する細長いコア要素と、
前記インプラントの前記近位部分を覆い、かつ前記近位部分を前記畳まれた状態で保持するのに十分な内径及び長さを有する拡張リミッタと、
前記拡張リミッタの近位方向の移動を可能にして前記インプラントを解放するように、前記拡張リミッタに接続された遠位端と、前記患者の外部からアクセス可能な近位端と、を有する少なくとも1つの細長い部材と、を備える、システム。
(2) 更に、前記コア要素、前記畳まれた状態にある前記インプラント、及び前記拡張リミッタを収容するのに十分大きい内径を有する送達カテーテルを備える、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記特徴部が前記コア要素からの突出部である、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記特徴部が、前記インプラントの解放を援助するように前記コア要素に対して後退可能である、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記拡張リミッタが実質的に円筒形である、実施態様1に記載のシステム。
(6) 前記拡張リミッタが、重なり合う側縁を有する、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記コア要素が金属から形成されている、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記コア要素が、前記特徴部に近接した中実ワイヤを含む、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記部材がフィラメントである、実施態様1に記載のシステム。
(10) 前記フィラメントがワイヤである、実施態様9に記載のシステム。
【0043】
(11) 前記コア要素及び前記部材がハイポチューブから形成されている、実施態様1に記載のシステム。
(12) 前記特徴部が、前記インプラントの解放を援助するように前記ハイポチューブ内に後退可能である、実施態様11に記載のシステム。
(13) 拡張可能なインプラントを患者の脈管系に送達するためのシステムであって、
自己拡張型材料から形成され、かつ少なくとも近位部分上に複数の拡大部を有する拡張可能なインプラントと、
前記患者の外部からアクセス可能な近位端と、前記拡大部を受容するための凹部、及び畳まれた状態にある前記インプラントの前記近位部分に係合するための少なくとも1つの特徴部を含む遠位端と、を有する細長いコア要素と、
前記インプラントの前記近位部分を覆い、かつ前記近位部分を前記畳まれた状態で保持するのに十分な内径及び長さを有する拡張リミッタと、
前記拡張リミッタが近位方向に牽引されることを可能にして前記インプラントを解放するように、前記拡張リミッタに接続された遠位端と、前記患者の外部からアクセス可能な近位端と、を有する少なくとも1つの部材と、を備える、システム。
(14) 更に、前記コア要素、前記畳まれた状態にある前記インプラント、及び前記拡張リミッタを収容するのに十分大きい内径を有する送達カテーテルを備える、実施態様13に記載のシステム。
(15) 前記インプラント上の前記拡大部が放射線不透過性マーカーを含む、実施態様13に記載のシステム。
(16) 前記拡張リミッタの長さが、前記インプラントの長さの半分未満である、実施態様13に記載のシステム。
(17) 拡張可能なインプラントを患者の脈管系に送達するためのシステムであって、
自己拡張型材料から形成され、かつ少なくとも近位部分上に複数の放射線不透過性マーカーを有する拡張可能なインプラントと、
前記患者の外部からアクセス可能な近位端と、前記放射線不透過性マーカーを受容するための凹部を画定する中実コアワイヤ、及び畳まれた状態にある前記インプラントの前記近位部分に係合するための少なくとも1つの特徴部を含む遠位端と、を有する細長いコア要素と、
前記インプラントの前記近位部分を覆い、かつ前記近位部分を前記畳まれた状態で保持するのに十分な内径及び長さを有する拡張リミッタと、
前記拡張リミッタが近位方向に牽引されることを可能にして前記インプラントを解放するように、前記拡張リミッタに接続された遠位端と、前記患者の外部からアクセス可能な近位端と、を有する少なくとも1つのフィラメントと、を備える、システム。
(18) 更に、前記コアワイヤ、前記畳まれた状態にある前記インプラント、及び前記拡張リミッタを収容するのに十分大きい内径を有する送達カテーテルを備える、実施態様17に記載のシステム。
(19) 前記拡張リミッタの長さが、前記インプラントの長さの半分未満である、実施態様18に記載のシステム。
(20) 前記特徴部が前記コア要素からの突出部である、実施態様19に記載のシステム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張可能なインプラントを患者の脈管系に送達するためのシステムであって、
前記患者の外部からアクセス可能な近位端と、畳まれた状態にある前記インプラントの近位部分に係合するための少なくとも1つの特徴部を含む遠位端とを有する細長いコア要素と、
前記インプラントの前記近位部分を覆い、かつ前記近位部分を前記畳まれた状態で保持するのに十分な内径及び長さを有する拡張リミッタと、
前記拡張リミッタの近位方向の移動を可能にして前記インプラントを解放するように、前記拡張リミッタに接続された遠位端と、前記患者の外部からアクセス可能な近位端と、を有する少なくとも1つの細長い部材と、を備える、システム。
【請求項2】
更に、前記コア要素、前記畳まれた状態にある前記インプラント、及び前記拡張リミッタを収容するのに十分大きい内径を有する送達カテーテルを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記特徴部が前記コア要素からの突出部である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記特徴部が、前記インプラントの解放を援助するように前記コア要素に対して後退可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記拡張リミッタが実質的に円筒形である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記拡張リミッタが、重なり合う側縁を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記コア要素が金属から形成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記コア要素が、前記特徴部に近接した中実ワイヤを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記部材がフィラメントである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記フィラメントがワイヤである、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記コア要素及び前記部材がハイポチューブから形成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記特徴部が、前記インプラントの解放を援助するように前記ハイポチューブ内に後退可能である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
拡張可能なインプラントを患者の脈管系に送達するためのシステムであって、
自己拡張型材料から形成され、かつ少なくとも近位部分上に複数の拡大部を有する拡張可能なインプラントと、
前記患者の外部からアクセス可能な近位端と、前記拡大部を受容するための凹部、及び畳まれた状態にある前記インプラントの前記近位部分に係合するための少なくとも1つの特徴部を含む遠位端と、を有する細長いコア要素と、
前記インプラントの前記近位部分を覆い、かつ前記近位部分を前記畳まれた状態で保持するのに十分な内径及び長さを有する拡張リミッタと、
前記拡張リミッタが近位方向に牽引されることを可能にして前記インプラントを解放するように、前記拡張リミッタに接続された遠位端と、前記患者の外部からアクセス可能な近位端と、を有する少なくとも1つの部材と、を備える、システム。
【請求項14】
更に、前記コア要素、前記畳まれた状態にある前記インプラント、及び前記拡張リミッタを収容するのに十分大きい内径を有する送達カテーテルを備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記インプラント上の前記拡大部が放射線不透過性マーカーを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記拡張リミッタの長さが、前記インプラントの長さの半分未満である、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
拡張可能なインプラントを患者の脈管系に送達するためのシステムであって、
自己拡張型材料から形成され、かつ少なくとも近位部分上に複数の放射線不透過性マーカーを有する拡張可能なインプラントと、
前記患者の外部からアクセス可能な近位端と、前記放射線不透過性マーカーを受容するための凹部を画定する中実コアワイヤ、及び畳まれた状態にある前記インプラントの前記近位部分に係合するための少なくとも1つの特徴部を含む遠位端と、を有する細長いコア要素と、
前記インプラントの前記近位部分を覆い、かつ前記近位部分を前記畳まれた状態で保持するのに十分な内径及び長さを有する拡張リミッタと、
前記拡張リミッタが近位方向に牽引されることを可能にして前記インプラントを解放するように、前記拡張リミッタに接続された遠位端と、前記患者の外部からアクセス可能な近位端と、を有する少なくとも1つのフィラメントと、を備える、システム。
【請求項18】
更に、前記コアワイヤ、前記畳まれた状態にある前記インプラント、及び前記拡張リミッタを収容するのに十分大きい内径を有する送達カテーテルを備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記拡張リミッタの長さが、前記インプラントの長さの半分未満である、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記特徴部が前記コア要素からの突出部である、請求項19に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−71002(P2013−71002A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−211987(P2012−211987)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【出願人】(500140415)コドマン・アンド・シャートレフ・インコーポレイテッド (34)
【氏名又は名称原語表記】Codman & Shurtleff, Inc.
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham, Massachusetts 02767−0350, U.S.A.
【Fターム(参考)】