説明

管設置装置

【課題】地中が礫混じりの地中である場合でも、管を地中においてスムーズに推進させることができる地中への管設置装置を提供する。
【解決手段】管(先頭管6)と、管の内周面と水密を保った状態で管内を管の中心軸に沿った方向に移動可能に設けられた基板25と、基板の前面に設けられた掘削機械26と、基板の前面及び管の内面で囲まれた空間である掘削土砂取込空間内に水を供給する水供給機構75と、掘削土砂取込空間内に取り込まれた掘削土砂を掘削土砂取込空間外に排出する排泥機構76とを備えた管設置装置において、掘削機械で地中を掘削することにより基板25よりも前方の管の内側に入り込んだ礫を基板25に形成された礫取込用貫通孔91を介して基板の前面39fよりも後方側に取り込み可能でかつ取り込まれた礫を基板25よりも後方の管の内側に漏れないように収容する礫取込箱99を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管を地中に設置する管設置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管を地中に設置する管設置装置が知られている。例えば、先に地中に入れる先頭の管の先頭開口側の内側に、管の中心軸を回転中心としてビットを回転させることにより地中を掘削する回転掘削体を有した掘削機械を設置し、かつ、回転掘削体で掘削されない管の内側の角部付近の土を掘削するための噴射装置を設置した構成を備え、管を押圧するとともに、掘削機械及び高圧水で地中を掘削することにより、管を推進させて地中に設置する装置が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−83007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した管設置装置では、地中を掘削することにより先頭の管の内側に溜まる泥土は、排泥管等を用いて管の内側より管の外側に排出されるが、地中が礫混じりの地中である場合、泥土中の礫が排泥管内に溜まってしまって排泥効率が悪くなり、管を地中にスムーズに推進させることができなくなる可能性があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、地中が礫混じりの地中である場合でも、管を地中においてスムーズに推進させることができる地中への管設置装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、管と、管の内周面と水密を保った状態で管内を管の中心軸に沿った方向に移動可能に設けられた基板と、基板の前面に設けられた掘削機械と、基板の前面及び管の内面で囲まれた空間である掘削土砂取込空間内に水を供給する水供給機構と、掘削土砂取込空間内に取り込まれた掘削土砂を掘削土砂取込空間外に排出する排泥機構とを備え、掘削機械で管の先頭の前方に位置する地中を掘削しながら管を推進させて管を地中に形成された空洞部から地中に設置する管設置装置において、掘削機械で地中を掘削することにより基板よりも前方の管の内側に入り込んだ礫を基板に形成された礫取込用貫通孔を介して基板の前面よりも後方側に取り込み可能でかつ取り込まれた礫を基板よりも後方の管の内側に漏れないように収容する礫取込箱を備えたので、地中が礫混じりの地中である場合でも、礫が礫取込箱の礫取込空間内に取り込まれるので、泥土中の礫が排泥管内に溜まってしまうのを抑制でき、管を地中にスムーズに推進させることができる。
礫取込箱は、礫取込用貫通孔と連通するように基板に取付けられて基板の前面よりも後方に延長する礫取込可能空間を形成する礫取込用空間形成体と、礫取込用空間形成体の内周面と水密を保った状態で礫取込可能空間内を管の中心軸に沿った方向に移動可能なように設けられて礫取込箱の後端壁となる可動隔壁とを備え、さらに、可動隔壁を管の中心軸に沿った方向に移動させることにより礫取込用空間形成体の内周面と可動隔壁の前面とで区画された礫取込箱内の礫取込空間の容積を変化させる礫取込空間容積可変手段を備えたので、礫が礫取込空間内に堆積して礫取込空間内に礫を取り込めなくなるような事態を防止できて、かつ、礫取込空間の容積を大きくできて礫取込空間内に多くの礫を取り込めるようになるので、泥土中の礫が排泥管内に溜まってしまうのを長時間抑制でき、管を地中にスムーズに推進させることができるようになる。
礫取込箱内を吸引するための吸引手段を備えたので、礫取込空間内に泥土が溜まって礫を取り込めなくなるような事態を防止でき、礫取込空間内の礫取込スペースを確保できるので、泥土中の礫が排泥管内に溜まってしまうのを長時間抑制でき、管を地中にスムーズに推進させることができるようになる。
礫取込用貫通孔が、基板の下側に形成されたので、掘削土砂取込空間内に供給される泥水の流れの勢いで礫が礫取込箱の礫取込空間内に取り込まれやすくなる。
管及び基板が矩形状に形成され、礫取込用貫通孔が基板の下縁側の2つの角部を切り欠いて形成され、礫取込箱が断面L字状の長尺板と管の矩形断面の角部とで囲まれた断面矩形状の箱により形成されたので、礫取込箱を形成するための材料費を節約できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】管設置装置の断面図(実施形態1)。
【図2】先頭管の内部を示した斜視図(実施形態1)。
【図3】(a)は図1のA−A断面図、(b)は(a)のA−A断面図(実施形態1)。
【図4】地中への管の設置方法を示す図(実施形態1)。
【図5】曲管の形状、設置形態を示す斜視図(実施形態1)。
【図6】直管を設置する管設置方法により構築される支保工の例を示す断面図(実施形態1)。
【図7】曲管を設置する管設置方法により構築される支保工の例を示す断面図(実施形態1)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1乃至図7に基づいて、実施形態1による地中への管設置方法を実現するための管設置装置1の基本構成及び動作について説明する。
図1に示すように、管設置装置1は、管2と、掘削装置3と、推進装置4と、推進力伝達装置70と、礫取込手段90とを備える。尚、以下、図1における上側を管2や管設置装置1の先頭あるいは前側と定義し、図1における下側を管2や管設置装置1の後側と定義し、図1における左右側を管2や管設置装置1の左右側と定義し、図1の紙面と直交する方向の上下側を管2や管設置装置1の上下側と定義して説明する。図2に管2や管設置装置1の前側、後側、左側、右側、上側、下側を明記した。
【0008】
管2は、図5;図7に示すような、円弧を描くように曲がって延長するように形成された曲管(管の中心軸が曲線である管)、あるいは、図6に示すような、真っ直ぐに延長する管(管の中心軸が直線である管(以下、直管という))であって、管の中心軸と直交する面で管を切断した場合の断面形状が矩形状の管により形成される。管2としては例えば鋼製の管が用いられる。管2の大きさは、例えば、管の長さ(前後長さ)が1.5m、左右幅が1.2m、上下幅が0.7mである。
そして、図5;図7に示すように、複数の曲管が順次連結されて地中10に設置されることによって円弧を描くように曲がって延長する支保工11が地中10に構築されたり、図6に示すように、複数の直管が順次連結されて地中10に設置されることによって真っ直ぐに延長する支保工11が地中10に構築される。
図5に示すように、実施形態1の管設置装置1及び管設置方法によって地中に構築される支保工11は、先頭に位置される管2(以下、先頭管という)と後続の複数の管2(以下、後続管という)とにより形成される。即ち、支保工11は、先頭に位置される曲管である先頭管6と先頭管6の後に続くように設けられる後続の複数の曲管である後続管7とにより形成される連続する曲管67によって構築される。
支保工11としては、図7(a)に示すように、地中10に形成された一方の空洞部100と他方の空洞部100との間に跨るように複数の管2としての複数の曲管を連続させて構築される支保工11や、図7(b)に示すように、地中10に形成された空洞部100から出発して当該空洞部100に戻るように複数の管2としての複数の曲管を連続させて構築される支保工11や、図6に示すように、一方の空洞部100と他方の空洞部100との間に跨るように複数の管2としての複数の直管を連続させて設置して構築される支保工11などがある。
【0009】
以下、図1乃至図3を参照して管設置装置1の構成について説明する。
先頭管6は、管の先端側に案内刃部を備えた構成であり、例えば、図1に示すように、管6xと、管6xの先端に設けられた案内刃部として機能する案内刃管9とで形成される。案内刃管9は、管の一方の開口端縁13が鋭利に形成された刃部14を備えた管である。
先頭管6は、案内刃管9の他方の開口端部と管6xの先端の開口端部8とが接続されて形成される。この場合、例えば、案内刃管9の管の外径寸法が管6xの管の外径寸法よりも大きく、案内刃管9の他方の開口端面15側には、開口端面15における管の内周面側が削られて、段差が設けられることで、管6xの先端の開口端部8を嵌め込む嵌合孔16が形成された構成とする。そして、案内刃管9の他方の開口部17に設けられた嵌合孔16内に管6xの先端の開口端部8を嵌め込み、かつ、これら両者が、ボルト接合,溶接などの図外の接続手段によって接続されることで、案内刃管9の他方の開口端部と管6xの先端の開口端部8とが接続された構成とする。このように、案内刃管9の他方の開口部17に設けられた嵌合孔16内に管6xの先端の開口端部8を嵌め込んで、案内刃管9が管6xの先端開口端面18を覆うように取付けられた構成としたことで、管6xの推進の際に、管6xの先端開口端面18が地中10の抵抗を受けず、推進抵抗を少なくできる。また、管6xの先端の開口端部8を嵌め込む嵌合孔16が形成された構成としたことで、管6xの先端に容易に案内刃管9を設置でき、先頭管6を形成するための管6xと案内刃管9との組み立てを容易とすることができる。この場合、先頭管6の矩形外周面において管6xと案内刃管9との間で段差が生じるが、この段差は、空洞部100の出発口や到達口に設けられた図外の水密性能維持部材により当該空洞部100の出発口や到達口と管2の矩形外周面との間の止水性能を維持できる程度に小さく(例えば、1cm程度)形成される。
【0010】
尚、案内刃管9と管6xとの外径寸法を同径とし、案内刃管9の他方の開口端面と管6xの先端開口端面18とを突き合わせた状態でこれらの境界部分を全周溶接、又は、点溶接することで先頭管6を形成してもよい。
また、管の先端側が案内刃管9として機能する案内刃部に形成された管を先頭管6として用いてもよい。
このようにすれば、先頭管6の矩形外周面の段差を小さくできるか、段差が生じないので、空洞部100の出発口や到達口に設けられた図外の水密性能維持部材により当該空洞部100の出発口や到達口と管2の矩形外周面との間の止水性能を良好に維持できる。
【0011】
先頭管6の管の内面20において、管の延長方向(管の中心軸に沿った方向)の中央部よりも先頭側の位置には、管側推進力受け部21が設けられる。管側推進力受け部21は、後述する掘削装置3に設けられた基板25を介して推進装置4からの推進力を受けて先頭管6を推進させる。管側推進力受け部21は、先頭管6の断面(先頭管の中心軸と直交する面で先頭管を切断した場合の断面)の内面を一周した矩形形状に対応した矩形枠外周寸法に形成された矩形枠体22により形成され、矩形枠体22の外周面23と先頭管6の管の内周面20aとが対応するように設置された状態で矩形枠体22が先頭管6の管の内周面20aに溶接、ボルト・ナットなどの図外の接続手段により固定される。
【0012】
掘削装置3は、基板25と、掘削機械26と、駆動源27と、水供給機構75と、排泥機構76とを備える。
基板25は、先頭管6の中心軸と基板25の中心軸とが一致するように配置され、先頭管6の内周面20aと水密を保った状態で先頭管6内を先頭管6の中心軸に沿った前後方向に移動可能に設けられる。基板25は、先頭管6の断面の内面を一周した矩形形状に対応した矩形板30により形成される。当該矩形板30の大きさは、先頭管6の断面の内面を一周した矩形の寸法よりも小さく、かつ、上記管側推進力受け部21を形成する矩形枠体22の矩形枠内周寸法よりも大きい。即ち、基板25を形成する矩形板30の前面39fにおける矩形周縁面33と、上記管側推進力受け部21を形成する矩形枠体22の枠後面32とが対向するように形成される。尚、基板25を形成する矩形板30の前面39fにおける矩形周縁面33と管側推進力受け部21を形成する矩形枠体22の枠後面32との間には例えば弾性体により形成された水密性能維持部材(パッキン)35が設けられる。水密性能維持部材35は、例えば、基板25を形成する矩形板30の前面39fにおける矩形周縁面33、又は、管側推進力受け部21を形成する矩形枠体22の枠後面32に取付けられる矩形枠体36により形成される。したがって、基板25に伝達された推進力が水密性能維持部材35を介して管側推進力受け部21に伝達されることにより、管2と掘削機械26とが一緒に推進する。
基板25の前面39fの中央部には、掘削機械26の支持部40の一端が固定される。
即ち、基板25は、推進装置4からの推進力を受けて掘削機械26及び先頭管6を前方に推進させる機能と、基板25の前面39f及び先頭管6の内面20で囲まれた空間である掘削土砂取込空間69aと基板25の後面39及び先頭管6の内面20で囲まれた空間69bとを水密に仕切る隔壁としての機能とを備える。
また、基板25の中央部には後述する耐圧ホース56を貫通させる貫通孔38a、及び、掘削土砂取込空間69aと空間69bとを連通させるための礫取込用貫通孔91が形成される。
そして、後述するように、基板25の前面39fには掘削機械26が設けられ、基板の後面39には礫取込手段90、水供給管75c、排泥管76b、推進力伝達棒状体71が設けられる。
【0013】
掘削機械26は、支持部40と、回転部41とを備える。
支持部40は、1つの支柱42と2つの分岐支柱43とが組合されたT字状の中空支柱により形成される。支柱42の一端部には例えば図外の取付フランジが設けられ、この取付フランジがボルト及びナットのような固定具などによって基板25の前面39fの中央に着脱可能に固定されることによって支柱42の一端が基板25の前面39fの中央に固定され、支柱42が基板25の前面39fに対して直交する方向に延長する。2つの分岐支柱43は、支柱42の先端部(他端部)より支柱42の延長方向と直交する一直線上において互いに離れる方向に延長する。即ち、支持部40のT字状の中空路と貫通孔38aとが連通するように支柱42の一端が基板25に固定される。分岐支柱43の先端には、それぞれモータマウント44を備える。
【0014】
回転部41は、回転機構部45と、回転掘削体46とを備える。
回転機構部45は、例えばモータ47により構成される。各モータマウント44;44には、モータ47のケーシング48が固定される。
2つのモータ47;47の回転軸49;49は、支柱42の先端部より支柱の延長方向と直交する一直線上において互いに離れる方向に延長する。
回転掘削体46は、一端開口他端閉塞の筐体50と、筐体50の外周面51に設けられた複数の掘削ビット(掘削刃)52とを備える。
【0015】
モータ47は、例えば、流体圧により作動するモータ、あるいは、電気で作動するモータを用いる。例えば油圧モータ(以下、油圧モータ47とする)を用いる場合、駆動源27としての油圧源55と油圧モータ47のケーシング48内とが圧油供給路56a及び油帰還路56bを形成する耐圧ホース56で繋がれる。即ち、耐圧ホース56は貫通孔38a及び支持部40のT字状の中空路を介して油圧モータ47のケーシング48に接続される。油圧モータ47は、耐圧ホース56を介してケーシング48内に供給される圧油によって回転軸49が回転するように構成される。
【0016】
例えば、回転掘削体46の筐体50の他端閉塞内面(筐体の内底面)53の中心と回転軸49の回転中心とが一致するように、筐体50の他端閉塞内面53と油圧モータ47により回転する回転軸49の先端に設けられた連結板54とがねじ等の連結具57により連結される。
即ち、2つの回転掘削体46が2つの回転軸49;49に共通の1つの回転中心線Lを回転中心として回転するように構成される。つまり、先頭管6の推進方向と直交する回転中心線Lを回転中心として回転する2つの回転掘削体46;46を備える。このような2つの回転掘削体46;46を備えた構成は、ツインヘッダと呼ばれる。先頭管6の推進方向と直交する回転中心線Lを回転中心として回転する2つの回転掘削体46;46を備えた所謂ツインヘッダを用いた場合、推進方向と直交する面内における回転掘削体46の掘削幅を大きくできるので、掘削幅に応じた矩形幅の管2を容易に地中10に設置できるようになる。
【0017】
尚、回転掘削体46;46の前後位置は、管側推進力受け部21の設置位置を前後に変えることにより適宜調整すればよい。
例えば、図1に示すように、掘削ビット52の先端80と案内刃管9の刃先81とが案内刃管9の中心軸と直交する1つの平面上に位置するように回転掘削体46;46を設置したり、図示しないが、掘削ビット52の先端80が案内刃管9の刃先81よりも前方側に突出するように回転掘削体46;46を設置したり、掘削ビット52の先端80が先頭管6内に位置するように回転掘削体46;46を設置する。
【0018】
掘削ビット52の先端80を案内刃管9の刃先81よりも前方側に突出させて回転掘削体46;46の掘削動作を行えば、案内刃管9の刃先よりも前方に位置する地盤を掘削ビット52により確実に掘削できるので、案内刃管9の刃先81が硬質の地盤に衝突して先頭管6を推進できなくなるような事態を少なくできる。例えば、回転中心軸Lと案内刃管9の刃先81とが同一平面上に位置するように、掘削ビット52の先端80を案内刃管9の刃先81よりも前方側に突出させて回転掘削体46;46による掘削動作を行えば、案内刃管9の刃先よりも前方に位置する地盤を掘削ビット52によりさらに確実に掘削できるようになり、管2をより推進させやすくなるので、管2の設置作業をよりスムーズに行える。
【0019】
また、掘削ビット52の先端80を先頭管6内に位置させた状態で先頭管6の推進動作及び回転掘削体46;46の掘削動作を行えば、地中10に突刺された案内刃管9の刃先の内側に入り込んだ地中部分のみが掘削ビット52により掘削されるので、地中10の余掘り部分が少なくなり、地盤沈下等、地中10に与える影響を少なくすることができる。
【0020】
回転掘削体46;46の間には固定掘削体77を備える。
固定掘削体77は、分岐支柱43よりも前方に突出するように2つの分岐支柱43;43の境界部分の前方外周面に溶接又はボルト、ナット等の固定手段によって固定状態に取付けられる。
固定掘削体77は、例えば、上下間の中央部が案内刃管9の刃先81側に膨出する湾曲形状に形成され、この湾曲面の左右幅間の中心が湾曲面の周方向に沿って連続する鋭利な刃形状となるように形成された構成である。
このように、固定掘削体77は、上下間の中央部が案内刃管9の刃先81側に膨出する湾曲形状に形成された構成としたので、先頭管6が推進する際の地盤の抵抗を減らすことができ、先頭管6をよりスムーズに推進させることができるようになる。
【0021】
上記固定掘削体77が設けられていない場合には、掘削された土砂が回転掘削体46;46の間に詰まってしまう可能性があるが、回転掘削体46;46の間に固定掘削体77を設けた場合には、固定掘削体77が、先頭管6の推進により地盤に衝突することによって、地盤を削ったり、衝突した地盤部分にある土砂や岩を左右に振り分けて左右の回転掘削体46:46に仕向けたりするといった役割を果たすので、先頭管6をよりスムーズに推進させることができるようになる。
例えば、図1に示すように、固定掘削体77の上下間の中央と回転掘削体46の掘削ビット52と案内刃管9の刃先81とが先頭管6の中心軸と直交する同一平面上に位置するように構成される。
このように固定掘削体77の上下間の中央と回転掘削体46の掘削ビット52と案内刃管9の刃先81とが先頭管6の中心軸と直交する同一平面上に位置するように構成した場合は、上述したような、固定掘削体77が掘削に先立って地盤にひび割れを誘発させることにより掘削しやすくなるといった効果が得られるとともに、固定掘削体77が地盤に衝突してしまって先頭管6が推進しなくなるといったことも防止できる。
【0022】
尚、固定掘削体77の上下間の中央が回転掘削体46の掘削ビット52と案内刃管9の刃先81よりも後方又は前方に位置するように構成してもよい。
固定掘削体77の上下間の中央が回転掘削体46の掘削ビット52と案内刃管9の刃先81よりも前方に位置するように構成された場合、固定掘削体77が掘削に先立って地盤にひび割れを誘発させることにより掘削しやすくなるといった効果も得られる。
逆に、固定掘削体77の上下間の中央が回転掘削体46の掘削ビット52と案内刃管9の刃先81よりも後方に位置するように構成された場合は、地盤が硬質の場合において掘削ビット52や案内刃管9の刃先81よりも先に固定掘削体77が地盤に衝突してしまって先頭管6が推進しなくなるといったことを防止できる。
【0023】
また、固定掘削体77の先端形状は、先頭管6の推進により地盤に衝突することによって、地盤を削ったり、衝突した地盤部分にある土砂や岩を左右に振り分けて左右の回転掘削体46:46に仕向けたり、掘削に先立って地盤にひび割れを誘発させて掘削しやすいようにするという役割を達成できる形状に形成されていればよい。例えば、上述したように前方先端が鋭利な刃先状に形成されたものでもよいし、前方先端が面状に形成されたものでもよく、地盤の地質によって、地盤を掘削して崩しやすい形状のものを選択すればよい。
【0024】
また、回転掘削体46の筐体50は案内刃管9の左右の内面と接触しないように案内刃管9の左右の内面から離れて設置されるので、筐体50と案内刃管9の左右の内面との間の地盤が掘削されにくい可能性がある。
そこで、先頭管6の中央側に位置される掘削ビット52を筐体50の中心軸(中心線L)と直交する方向に延長するように設け、かつ、図1乃至図3に示すように、先頭管6の左側に位置される掘削ビット52a(52)をできるだけ案内刃管9の左の内面に近付く位置まで先頭管6の左側に延長させて設け、さらに、先頭管6の右側に位置される掘削ビット52b(52)をできるだけ案内刃管9の右の内面に近付く位置まで先頭管6の右側に延長させて設けることによって、先頭管6の左右側に位置される掘削ビット52a;52bで先頭管6の左右の角部に位置する地盤をより効果的に掘削できるようにした。
【0025】
水供給機構75は、水貯留タンク75aと、基板25の前面39fと後面39とに貫通する水供給孔75bと、例えば蛇腹管や鋼管等により構成された水供給管75cと、送水用のポンプ75d、連結管75eとを備える。
基板25の前面39fと先頭管6の内面20とで囲まれた掘削土砂取込空間69a内に水供給管75cの一端開口が連通するように、例えば、水供給孔75bの内側に水供給管75cの一端がねじ嵌合されることによって水供給孔75bと水供給管75cの一端とが結合される。そして、水供給管75cの他端開口と送水用のポンプ75dの吐出口とが連通可能に連結され、送水用のポンプ75dの吸込口と水貯留タンク75aとが連結管75eにより連通可能に連結される。
【0026】
排泥機構76は、基板25の前面39fと後面39とに貫通する排泥孔76aと、例えば蛇腹管や鋼管等により構成された排泥管76bと、排泥用のポンプ76cと、排泥タンク76dと、連結管76eとを備える。
掘削土砂取込空間69a内に排泥管76bの一端開口が連通するように、例えば、排泥孔76aの内側に排泥管76bの一端がねじ嵌合されることによって排泥孔76aと排泥管76bの一端とが結合される。つまり、排泥管76bは、基板25の前面39f及び先頭管の内面20で囲まれた空間である掘削土砂取込空間69a内に取り込まれた掘削土砂を掘削土砂取込空間69a外に排出するための管である。
そして、排泥管76bの他端開口と排泥用のポンプ76cの吸込口とが連通可能に連結され、排泥用のポンプ76cの吐出口と排泥タンク76dとが連結管76eにより連通可能に連結される。
【0027】
尚、水貯留タンク75a及び排泥タンク76dは、水貯留タンク75aと排泥タンク76dとが一体となった集合タンク75Xにより構成される。即ち、集合タンク75Xの内部に仕切体75wを設けて集合タンク75Xの内部を2つの領域に区切り、一方の領域を水貯留タンク75aとして使用し、他方の領域を排泥タンク76dとして使用する。
つまり、最初に一定量の水を集合タンク75X内に満たしておき、送水用のポンプ75dを駆動して掘削土砂取込空間69a内に水を圧送すると、掘削土砂取込空間69a内に圧送された水と掘削機械26により掘削された土砂とが混ざって泥水となる。そして、排泥用のポンプ76cを駆動することにより、掘削土砂取込空間69a内の泥水が排泥タンク76dに排出される。排泥タンク76dに排出された泥水中の泥が排泥タンク76dの底に沈殿するとともに、仕切体75wを越えて水貯留タンク75aに入り込んだ泥水が再び送水用のポンプ75dによって掘削土砂取込空間69a内に圧送される。即ち、泥水を循環させて掘削土砂取込空間69a内に供給できるようになるので、水の使用量を減らすことができる。また、水よりも比重が大きい泥水を掘削土砂取込空間69a内に供給できるので、地盤及び地下水の圧力に抵抗できて、地盤及び地下水の圧力と掘削土砂取込空間69a内の圧力とを均等にしやすくなるので、地盤沈下等、地中10に与える影響を少なくすることができる。また、掘削土砂取込空間69a内が泥水化するので、排泥をスムーズに行えるようになり、掘削しやすくなる。
【0028】
また、水供給孔75bと水供給管75cの一端との結合構造、排泥孔76aと排泥管76bの一端との結合構造は、次のような結合構造であってもよい。基板の後面39に孔(水供給孔75b、排泥孔76a)に連通する図外の管部を形成しておいて、当該管部の開口端面と管(水供給管75c、排泥管76b)の一端開口端面とを互いに突き合わせた状態で環状ジョイント部材を当該突合せ部分に被せることにより管部と管とを結合したり、管の一端開口を介して管内に管部を嵌め込んだ状態で管の一端開口部の外周面を環状クリップ部材で締め付けることにより管部と管とを結合する。
尚、最初から泥水を集合タンク75X内に満たしておき、送水用のポンプ75dを駆動して掘削土砂取込空間69a内と集合タンク75X内との間で泥水を循環させるようにしてもよい。
【0029】
推進装置4は、例えば、油圧ジャッキ62により構成される。油圧ジャッキ62のピストンロッド63の先端には押圧板64が設けられる。
【0030】
推進力伝達装置70は、推進力伝達棒状体71と、推進力伝達用の当て材72と、上述の基板25と、上述の水密性能維持部材35と、上述の管側推進力受け部21とを備える。
推進力伝達棒状体71は、一端71aから他端71bまでの長さが基板25の後面39と先頭管6の後端面102eとの間の最短距離よりも長い寸法の棒状体71xと、棒状体71xの他端71b側より突出させた傾き防止部71cとを備える。棒状体71xは例えばH形鋼を用い、傾き防止部71cは例えば棒状体71xを形成するH形鋼に溶接又はボルトなどの接続手段で結合された鋼材を用いる。尚、傾き防止部71cは、先頭管6の左内側面6aや右内側面6bに面接触する面を有した面体71dを備える。
推進力伝達棒状体71は、棒状体71xの中心軸が先頭管6の中心軸と同一方向を向くように設置され、かつ、面体71dの面と先頭管6の左内側面6aや右内側面6bとが面接触するように、一端71aと基板25の後面39とが溶接又はボルトなどの接続手段で結合される。
即ち、左の推進力伝達棒状体71Aの棒状体71xの中心軸が先頭管6の中心軸と同一方向を向くように設置され、かつ、左の推進力伝達棒状体71Aの面体71dの面と先頭管6の左内側面6aとが面接触するように、左の推進力伝達棒状体71Aの棒状体71xの一端71aと基板25の後面39とが溶接又はボルトなどの接続手段で結合される。また、右の推進力伝達棒状体71Bの棒状体71xの中心軸が先頭管6の中心軸と同一方向を向くように設置され、かつ、右の推進力伝達棒状体71Bの面体71dの面と先頭管6の右内側面6bとが面接触するように、右の推進力伝達棒状体71Bの棒状体71xの一端71aと基板25の後面39とが溶接又はボルトなどの接続手段で結合される。
左右の推進力伝達棒状体71A;71Bの一端71a;71aは、基板25の上下縁間の中央部に結合される。
【0031】
そして、当て材72を、先頭管6の後端面102eより後方に突出する左右の推進力伝達棒状体71A;71Bの他端71b;71b間に跨るように設置して他端71b;71bに図外のボルトや万力装置などで連結し、当て材72における先頭管6の中心軸が位置する部分を油圧ジャッキ62の押圧板64で押圧することにより、油圧ジャッキ62による押圧力が、当て材72、左右の推進力伝達棒状体71A;71B、基板25、管側推進力受け部21を介して先頭管6及び回転掘削体46;46に伝達されるので、案内刃管9及び先頭管6が前方に推進するとともに回転掘削体46;46が前方に推進する。
即ち、一方の推進力伝達棒状体である左の推進力伝達棒状体71Aを基板25の後面39の左側縁側における上下縁間の中央部に結合するとともに、他方の推進力伝達棒状体である右の推進力伝達棒状体71Bを基板25の後面39の右側縁側における上下縁間の中央部に結合し、これら左右の推進力伝達棒状体71A;71Bを油圧ジャッキ62で押圧して管2を推進させる構成としたので、管2の左右に均等に押圧力を加えることができるようになる。
【0032】
図3に示すように、礫取込手段90は、掘削土砂取込空間69aと空間69bとを仕切る隔壁として機能する基板25の前面39fよりも後方に礫を取り込むための手段であり、礫取込用貫通孔91と、礫取込用空間形成体92と、礫取込空間容積可変手段93と、吸引手段94とを備える。
【0033】
礫取込用貫通孔91は、基板25の前面39fと後面39とに跨って貫通するように基板25に形成された掘削土砂取込空間69aと空間69bとを連通させる貫通孔により構成される。礫取込用貫通孔91は、例えば、基板25の下縁25x側に1つ以上設けられる。
【0034】
礫取込用空間形成体92は、基板25の後面39に礫取込用貫通孔91を介して掘削土砂取込空間69aと連通するように設けられた空間形成体であり、例えば、礫取込用貫通孔91と同じ径の内径寸法を有した両端開口の筒体により形成される。そして、例えば、礫取込用空間形成体92の筒の一端開口と礫取込用貫通孔91とが一致するように取込用空間形成体92の筒の一端開口端面92aと基板25の後面39とが突き合わされた状態で両者が溶接等の固定手段で固定されることにより、掘削土砂取込空間69aから礫を取り込み可能な礫取込可能空間95が形成される。
【0035】
例えば、図3(b)に示すように、矩形状の基板25の下縁25x側の2つの角部を切り欠いて礫取込用貫通孔91を形成し、先頭管6の矩形断面の角部6gを礫取込用空間形成体92の一部として利用すれば、礫取込用空間形成体92の材料費を節約できる。つまり、この場合、一方の長尺平板部の一方の長辺縁と他方の長尺平板部の他方の長辺縁とが繋がって一方の長尺平板部と他方の長尺平板部とのなす角度が直角な断面L字状の長尺板92dを用いることができる。そして、一方の長尺平板部の他方の長辺縁と先頭管6の内面20を形成する側内面20xとを突き合わせ、他方の長尺平板部の一方の長辺縁と先頭管6の内面20を形成する下内面20yとを突き合わせ、長尺板の長手方向の一端面92b(図3(a)参照)と礫取込用貫通孔91の切り欠き部の縁部に相当する基板25の後面39とを突き合わせた状態で、これら突き合わされた部材同士を溶接等の固定手段で固定して礫取込可能空間95を形成することにより、先頭管6を礫取込用空間形成体92の一部として利用できるので、礫取込用空間形成体92の材料費を節約できる。
即ち、先頭管6及び基板25が矩形状に形成され、礫取込用貫通孔91が基板25の下縁25x側の2つの角部を切り欠いて形成され、後述する礫取込箱99が断面L字状の長尺板と管6の矩形断面の角部6gと後述する可動隔壁98とで囲まれた断面矩形状の箱により形成される。
【0036】
礫取込空間容積可変手段93は、例えば、油圧シリンダー装置97と、油圧シリンダー装置97のピストンロッド97aの先端に設けられた可動隔壁98と、油圧シリンダー装置97の油圧を制御する制御装置65とを備える。97bは油圧シリンダー装置97のシリンダー97cを先頭管6に固定する固定具である。65aは制御装置65と油圧シリンダー装置97とを接続する制御線である。尚、図では1つの可動隔壁98に2つの油圧シリンダー装置97;97を設けた構成を例示しているが、油圧シリンダー装置97は可動隔壁98の大きさに応じて1つ以上設ければよい。
可動隔壁98は、例えば礫取込用空間形成体92の内周面で囲まれた断面形状と同じ大きさの板により形成される。可動隔壁98を構成する板の外周面には当該外周面を取り囲むように図外のパッキンのような水密性能維持部材が設けられる。当該水密性能維持部材は、例えば、可動隔壁98を構成する板の外周面に当該外周面を一周するように形成された溝内に内周部側が装着される環状のものが用いられる。当該可動隔壁98の中心軸と礫取込用空間形成体92の筒の中心軸とが一致するように可動隔壁98が配置される。
以上により、ピストンロッド97aの前後移動に伴い、可動隔壁98の外周面と礫取込用空間形成体92の筒の内周面との水密が水密性能維持部材により維持された状態で可動隔壁98が礫取込用空間形成体92の筒内を前後移動可能に構成される。
よって、礫取込用空間形成体92の筒の内周面92eと可動隔壁98の前面98aとで区画される礫取込空間99Aを有した礫取込箱99が構成され、ピストンロッド97aの前後移動させることにより礫取込箱99の礫取込空間99Aの容積を変更できる。
【0037】
吸引手段94は、礫取込箱99内の泥土を礫取込箱99外に吸引するための手段であり、可動隔壁98の前面98aと後面98bとに跨って貫通するように可動隔壁98に形成された吸引用貫通孔94aと、吸引管94bと、吸引用のポンプ94cとを備える。
吸引用貫通孔94aには礫取込防止用の柵94dが設けられる。吸引用貫通孔94aと吸引管94bの一端開口とが連通可能に連結され、吸引管94bの他端開口と吸引用のポンプ94cの吸込口とが連通可能に連結され、吸引用のポンプ94cの吐出口と吸引タンク76dとが連結管76fにより連通可能に連結される。
【0038】
即ち、管設置装置1は、掘削機械26で地中10を掘削することにより基板25よりも前方の先頭管6の内側に入り込んだ礫を基板25に形成された礫取込用貫通孔91を介して基板25の前面39fよりも後方側に取り込み可能な礫取込箱99を備え、礫取込箱99は、礫取込用貫通孔91と連通するように基板25に取付けられて基板25の前面39fよりも後方に延長する礫取込可能空間95を形成する礫取込用空間形成体92と、礫取込用空間形成体92の内周面92eと水密を保った状態で礫取込用空間92内を先頭管6の中心軸に沿った方向に移動可能なように設けられて礫取込箱99の後端壁となる可動隔壁98とを備える。
さらに、管設置装置1は、可動隔壁98を先頭管6の中心軸に沿った方向に移動させることにより礫取込用空間形成体92の内周面92eと可動隔壁98の前面98aとで区画された礫取込箱99内の礫取込空間99Aの容積を変化させる礫取込空間容積可変手段93と、礫取込箱99内の泥土を礫取込箱99外に吸引するための吸引手段94とを備える。
【0039】
次に、図4を参照して管設置装置1による地中10への管2の設置方法を説明する。
掘削機械26と推進力伝達棒状体71と水供給管75cと排泥管76bとが取付けられた基板25を先頭管6の内側に設置する。つまり、基板25を形成する矩形板30の前面39fにおける矩形周縁面33が、先頭管6の内側に管側推進力受け部21を形成する矩形枠体22の枠後面32に水密性能維持部材35を介して突き付けられた状態となるように設置する。これにより、管2を、地中10に形成された空洞部100から地中10に設置する場合に、先に地中10に入れる先頭管6の先頭開口6t側の内側に掘削機械26が設置される。
そして、当て材72を、先頭管6の後端面102eより後方に突出する左右の推進力伝達棒状体71A;71Bの他端71b;71b間に跨るように設置する。また、掘削機械26の耐圧ホース56の他端を油圧源55に接続する。そして、先頭管6の先端の案内刃管9の刃先81を地中面101に押し付けた状態で油圧ジャッキ62を設置し、縮退したピストンロッド63の先端に設けられた押圧板64を当て材72における先頭管6の中心軸が位置する部分に位置させる。
そして、送水用のポンプ75dを駆動して掘削土砂取込空間69a内に泥水を供給し、掘削土砂取込空間69a内と集合タンク75X内との間で泥水を循環させるとともに、制御装置65による制御によって、油圧源55から油圧モータ47に圧油を供給して回転掘削体46を回転させながら、油圧ジャッキ62のピストンロッド63を伸ばして当て材72における後続管7の中心軸が位置する部分を押圧すると、推進力伝達装置70を介して先頭管6に伝達される推進力と回転掘削体46の回転に伴う地盤掘削とによって先頭管6が前方に推進し、先頭管6が地中10に設置される。尚、65bは制御装置65と油圧源55とを接続する制御線、65cは制御装置65と油圧ジャッキ62とを接続する制御線である(図1参照)。
【0040】
先頭管6の後端面102eを残して先頭管6が地中10に設置された後、図4(b)に示すように、先頭管6の後端面102eに後続管7を溶接、又は、ボルト等の固定具により接続し、さらに、図4(c)に示すように、先頭の推進力伝達棒状体71の他端71bと後続の推進力伝達棒状体71の一端71aとをボルト、又は、溶接により結合することにより、先頭の推進力伝達棒状体71の後ろに後続の推進力伝達棒状体71を継ぎ足すとともに、また、耐圧ホース56の他端に図外の延長耐圧ホースを継ぎ足し、水供給管75cの他端に図外の延長水供給管を継ぎ足し、排泥管76bの他端に図外の延長排泥管を継ぎ足していく。
そして、図4(d)に示すように、当て材72を、後続管7の後端縁より後方に突出する左右の推進力伝達棒状体71A;71Bの他端71b;71b間に跨るように設置して、当て材72における後続管7の中心軸が位置する部分を油圧ジャッキ62のピストンロッド63で押圧しながら、回転掘削体46;46を回転駆動することにより、回転掘削体46が掘削を行いながら先頭管6が推進し、後続管7が地中に設置される。
尚、回転掘削体46;46が地中10を掘削した土砂は掘削土砂取込空間69a内で水と混ざって泥水となって排泥タンク76dに排出される。
以後、同様に、前の後続管7の後端縁に後の後続管7を順次連結して地中10に設置していくことで、支保工11を構築できる。
【0041】
支保工11を構築した後は、掘削始点となった出発側の空洞部100内に掘削機械26を引き戻して回収する。実施形態1によれば、推進力伝達棒状体71を継ぎ足していくことから、掘削機械26を回収する際には、最後尾の推進力伝達棒状体71側から推進力伝達棒状体71の1個長さ分ずつ空洞部100内に引き戻して、最後尾側から先頭まで順番に推進力伝達棒状体71を取り外していくことにより、掘削機械26を容易に回収できるようになる。この場合、推進装置4の一例である油圧ジャッキ62を掘削始点となる空洞部100内にのみ設置すればよいので、装置コストを低減できる。
尚、到達側の空洞部100内に掘削機械26を押し出して回収するようしてもよい。
例えば、先頭管6を到達側の空洞部100に押し出して管側推進力受け部21を除去してから、到達側の空洞部100内に掘削機械26、基板25、推進力伝達棒状体71を押し出して回収する。この場合、掘削機械26を掘削始点となった空洞部100内に引き戻す作業よりも掘削機械26を到達側の空洞部100内に押し出す作業の方が容易となるので、掘削機械26の回収作業が容易となる。
図7(b)のように、地中10に形成された1つの空洞部100から出発して当該空洞部100に戻るように支保工11を構築する場合には、掘削機械26が1つの空洞部100の到達口に到達したならば掘削機械26を到達口から当該空洞部100内に押し出すようにして回収すれば、掘削機械26の回収作業が容易となるとともに、油圧ジャッキ62を当該1つの空洞部100内にのみ設置すればよいので装置コストも低減できる。
【0042】
次に礫取込手段90の動作を説明する。
例えば、掘削機械26を駆動させて先頭管6を推進させる前に、可動隔壁98の前面98aを、推進力が水密性能維持部材35を介して管側推進力受け部21に伝達されるように設置された基板25の前面39fよりも後方に位置させておくことにより、掘削土砂取込空間69aと連通して基板25の前面39fよりも後方に延長する礫取込箱99の礫取込空間99Aが形成される。
そして、掘削が進むにつれ掘削された礫が礫取込空間99A内に移動する。この場合、掘削土砂取込空間69a内の泥土を排泥管76bを介して排泥用のポンプ76cで吸引することにより、掘削土砂取込空間69a内に泥土の流れができ、礫が取込箱99の礫取込空間99A内に移動しやすくなるとともに、礫取込空間99A内の泥土が吸引用のポンプ94cで吸引されるので、礫取込空間99A内に礫を効率的に取り込めるようになる。
そして、礫取込空間99A内に礫が入りきらなくなると、礫が排泥用のポンプ76cに繋がれた排泥管76b内に入り込んでポンプ76cで吸引する排泥量が少なくなるため、排泥量が少なくなったことを確認した場合、油圧シリンダー装置97のピストンロッド97aを縮退させて可動隔壁98を後方に移動させて、礫取込空間99Aの容積を大きくすることによって、新たな礫取込空間99Aを確保することができ、礫取込空間99A内に礫を取り込めるようになる。この場合、可動隔壁98を徐々に後方に移動させることにより、礫も徐々に後方に移動させやすくなるので、礫が礫取込空間99A内に堆積して礫取込空間99A内に礫を取り込めなくなるような事態を防止できる。
このように、礫取込手段90を備えたことで、掘削土砂取込空間69a内の泥土を排泥するための排泥管76b内に礫が挿入して礫が当該排泥管76b内を閉塞してしまうような事態を防止できる。
尚、水供給量と排泥量と吸引量との関係は、理論的には水供給量=排泥量+吸引量となるようにすればよいが、実際には排泥量+吸引量よりも水供給量を多めにする方が排泥及び吸引しやすくなるので好ましい。
【0043】
先頭管6と後続管7とに跨るような長い礫取込用空間形成体92を用いる場合には、先頭管6の後端に後続管7を繋げる前に礫取込用空間形成体92を基板25に取付けておくと、先頭管6の後端に後続管7を繋げる作業の際において後続管7を上方から先頭管6の後端に設置する場合に礫取込用空間形成体92が邪魔になるので、後続管7を礫取込用空間形成体92の後方から先頭管6の後端に移動させなくてはならず、先頭管6の後方にスペースが必要になり、作業が困難になる可能性がある。そこで、この場合は、礫取込用貫通孔91を塞いだ状態で先頭管6を推進させ、先頭管6の後端に後続管7を接続する作業を行う際に一緒に、礫取込用貫通孔91を開放する作業と礫取込用貫通孔91と礫取込用空間形成体92とが連通するように礫取込用空間形成体92を基板25の後面39に連結する作業を行うことが好ましい。
【0044】
実施形態1によれば、礫取込手段90を備えたので、地中10が礫混じりの地中である場合でも、礫が礫取込箱99の礫取込空間99A内に取り込まれるので、泥土中の礫が排泥管76b内に溜まってしまうのを抑制でき、管を地中にスムーズに推進させることができるようになる。
また、礫取込空間容積可変手段93を備えたので、礫が礫取込空間99A内に堆積して礫取込空間99A内に礫を取り込めなくなるような事態を防止できて、かつ、礫取込空間99Aの容積を大きくできて礫取込空間99A内に多くの礫を取り込めるようになるので、泥土中の礫が排泥管76b内に溜まってしまうのを長時間抑制でき、管を地中にスムーズに推進させることができるようになる。
さらに、吸引手段94を備えたので、礫が礫取込箱99の礫取込空間99A内に泥土が溜まって礫を取り込めなくなるような事態を防止でき、礫取込空間99A内の礫取込スペースを確保できるので、泥土中の礫が排泥管76b内に溜まってしまうのを長時間抑制でき、管を地中にスムーズに推進させることができるようになる。
また、礫取込用貫通孔91を基板25の下縁25x側に設けたことにより、掘削土砂取込空間69a内に供給される泥水の流れの勢いで礫が礫取込箱99の礫取込空間99A内に取り込まれやすくなる。
さらに、矩形状の基板25の下縁25x側の2つの角部を切り欠いて礫取込用貫通孔91を形成し、断面L字状の長尺板と管6の矩形断面の角部6gとを用いて礫取込箱99を形成したので、礫取込箱99を形成するための材料費を節約できるとともに、掘削土砂取込空間69a内に供給される泥水の流れの勢いで礫が取り込まれやすい礫取込箱99を形成できる。
また、排泥管76bの径は大きくする方が排泥効率を良くできるが、実施形態1では、礫取込箱99を備えたことで排泥管76b内への礫の進入を少なくできるので、排泥管76bの径を大きくすることができ、排泥効率を良くできる。
【0045】
尚、礫取込手段90としては、礫取込空間容積可変手段93及び吸引手段94のうちのいずれか一方を備えない構成としてもよい。
また、礫取込手段90としては、礫取込空間容積可変手段93及び吸引手段94を備えず、礫取込用空間形成体92の他端開口を閉塞して礫取込箱99を形成した構成であってもよい。この場合、礫取込用箱99内に泥土が充満して礫取込用箱99内に礫が取り込まれにくくなる可能性があるので、予め、礫取込用箱99の礫取込空間99Aの容積を大きくしておくことが好ましい。
尚、礫取込用箱99は、掘削土砂取込空間69a内に入り込んだ礫を基板25に形成された礫取込用貫通孔91を介して基板25の前面39fよりも後方側に取り込み可能でかつ取り込まれた礫を基板25よりも後方の先頭管6の内側である空間69bに漏れないように収容する箱である。
【0046】
また、回転掘削体46を1つ又は3つ以上備えた掘削機械26を用いてもよい。また、掘削機械26は、回転掘削体46;46の地中側に接する筐体50の側面に掘削ビット52を設けて、回転掘削体46;46が管2の開口端部8内を掘削できれば、先頭管6の推進方向と交差する回転中心線を回転中心として回転する回転掘削体46を備えたものでもよい。
【0047】
また、先に地中に入れる管の後端に後続管を連結しないようにし、地中に形成された空洞部から先に地中に入れる管のみを地中に設置して当該先に地中に入れる管のみによる支保工を形成するようにしてもよい。
【0048】
本発明における礫取込手段90は、掘削機械として管2の中心軸を回転中心とする回転掘削機等を備えた管設置装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0049】
2 管、6 先頭管(管)、7 後続管(管)、10 地中、20 先頭管の内面、
20a 先頭管の内周面、25 基板、26 掘削機械、39f 基板の前面、
69a 掘削土砂取込空間,76b 排泥管、
90 礫取込手段、91 礫取込用貫通孔、
92 礫取込用空形成体、92e 礫取込用空形成体の内周面、
93 礫取込空間容積可変手段、94 吸引手段、95 礫取込可能空間、
98 可動隔壁、98a 可動隔壁の前面、99 礫取込箱、99A 礫取込空間、
100 空洞部、L 回転中心線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管と、管の内周面と水密を保った状態で管内を管の中心軸に沿った方向に移動可能に設けられた基板と、基板の前面に設けられた掘削機械と、基板の前面及び管の内面で囲まれた空間である掘削土砂取込空間内に水を供給する水供給機構と、掘削土砂取込空間内に取り込まれた掘削土砂を掘削土砂取込空間外に排出する排泥機構とを備え、掘削機械で管の先頭の前方に位置する地中を掘削しながら管を推進させて管を地中に形成された空洞部から地中に設置する管設置装置において、
掘削機械で地中を掘削することにより基板よりも前方の管の内側に入り込んだ礫を基板に形成された礫取込用貫通孔を介して基板の前面よりも後方側に取り込み可能でかつ取り込まれた礫を基板よりも後方の管の内側に漏れないように収容する礫取込箱を備えたことを特徴とする管設置装置。
【請求項2】
礫取込箱は、礫取込用貫通孔と連通するように基板に取付けられて基板の前面よりも後方に延長する礫取込可能空間を形成する礫取込用空間形成体と、礫取込用空間形成体の内周面と水密を保った状態で礫取込可能空間内を管の中心軸に沿った方向に移動可能なように設けられて礫取込箱の後端壁となる可動隔壁とを備え、
さらに、可動隔壁を管の中心軸に沿った方向に移動させることにより礫取込用空間形成体の内周面と可動隔壁の前面とで区画された礫取込箱内の礫取込空間の容積を変化させる礫取込空間容積可変手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の管設置装置。
【請求項3】
礫取込箱内を吸引するための吸引手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の管設置装置。
【請求項4】
礫取込用貫通孔が、基板の下側に形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の管設置装置。
【請求項5】
管及び基板が矩形状に形成され、礫取込用貫通孔が基板の下縁側の2つの角部を切り欠いて形成され、礫取込箱が断面L字状の長尺板と管の矩形断面の角部とで囲まれた断面矩形状の箱により形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の管設置装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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