説明

管鋳造設備及び管鋳造方法

【課題】個別の鋳出しマークを有する管を遠心鋳造する設備において、使用する中子の個別管理を不要とすること。
【解決手段】筒状の金型をその軸心周りに高速で回転させる鋳造機1と、金型内に溶鉄を流し込む注湯機と、溶鉄が凝固してできた管を把持して金型から引き抜く引き抜き機と、管に凸の鋳出しマークを付けるための凹の鏡像マークを付けた中子5を、金型の端部に同心で嵌めて金型と一体で回転するように保持する中子保持機6とを備えた管鋳造設備において、中子保持機6に取り付ける造型後の中子に凹の鏡像マークを付加するマーキング装置7を設けた。
これにより、鋳造直前の中子に鏡像マークを付加できるので、中子自体の個別管理をしなくて済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管の鋳造設備と鋳造方法に関し、特に、鋳造した管に個別の鋳出しマークを表示する鋳造設備と鋳造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心力鋳造法によって管を製造する設備として、従来から図9に示すものが知られている。この設備は主に、鋳造機1と注湯機2、引き抜き機3、中子保持機6、中子搬送機4で構成されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
鋳造機1は、筒状の金型11を軸心が水平となるように支持し、軸心周りに高速で回転させるものであり、金型11を回転させる電動機13が据え付けられている。
注湯機2は、溶鉄を溜めた三角取鍋21を傾動させて、金型11内に溶鉄を流し込む(注湯する)装置であり、溶鉄を金型内まで流すための樋となるトラフ22を備えている。
【0004】
引き抜き機3は、溶鉄が凝固してできた管を把持して金型11から引き抜く機械であり、管の内面を把持するためのアーム31を備えている。
また、中子保持機6は、中子搬送機4が運んできた中子5を、金型11の端部に同心で嵌めて金型11と一体で回転するように保持する装置である。
【0005】
そして、中子搬送機4は、一回の鋳造で使用する数の中子を、鋳造サイクルに合わせて中子保持機6まで運ぶ機械であり、図9においては、中子を掴むためのハンド41を備えた搬送ロボットが記されている。(例えば、特許文献2参照)
【0006】
ここで、中子5は、砂を粘結材で固めて成形した物で、金型11内に流し込まれた溶鉄8が金型11の端部から流れ出るのを防ぐための「堰」となるとともに、管の端部形状を作る「型」の役割も果たしている。
【0007】
ところで、従来から、鋳造した管を管理するために、管の端部には、管の形式などを表示する鋳出しマークが付けられてきた。
この鋳出しマークは、管の型式のほか、製造年や製造者、鋳造ロット番号などが識別できるように、複数の文字や記号で構成されている。
【0008】
管の端部に凸の鋳出しマークを付けるために、管の端部の「型」となる中子に凹の鏡像マークが設けられている。
この鏡像マークは、中子を造型する際(つまり、砂を粘結材で固めて中子を成形する際)に使う造型用金型に、鋳出しマークと同じ形の凸マークを付しておくことで形成される。(例えば、特許文献3参照)
【0009】
このように、従来の管鋳造設備で製造した管には、鋳造ロット番号も鋳出しマークで表示されていたため、管の製造に関する情報の管理もロット毎の管理までは可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平08−141721号公報
【特許文献2】特開2003−290898号公報
【特許文献3】特開平09−10890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、製造した管の鋳造条件や検査結果といった履歴情報を、複数の管を1ロットとして、ロット毎に管理するのではなく、管一本毎に個別に記録・管理して欲しいとの要請がある。
そのような要請に応えて、管一本毎に異なる鋳出しマークを表示する場合、中子に一個毎に異なる凹の鏡像マークを付け、その上、鋳造する管に付すべきマークと使用する中子に付けたマークを整合させる必要がある。
そのため、中子を鋳造で使用する前に、その中子に付した鏡像マークを読み取って整合を確認するなど、中子自体の個別管理が必要であった。
【0012】
また、管の鋳造計画(予定)に基づいて、見込みで中子を準備しておく場合、設備の故障などによって鋳造計画が変更されたときに、見込みで中子に付したマークが、管に付すべきマークと整合しなくなり、使用できない中子が生じるという問題もあった。
【0013】
本発明は、中子自体の個別管理をしなくても、中子に付したマークと管に付すべきマークとの不整合が発生することを防ぎ、併せて、鋳造設備のトラブルによる中子の損失発生も防ぐことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の管鋳造設備は、筒状の金型をその軸心周りに高速で回転させる鋳造機と、金型内に溶鉄を流し込む注湯機と、溶鉄が凝固してできた管を把持して金型から引き抜く引き抜き機と、管に凸の鋳出しマークを付けるために凹の鏡像マークを付けた中子を、金型の端部に同心で嵌めて金型と一体で回転するように保持する中子保持機とを備え、鋳出しマークを付けた管を遠心鋳造法によって製造する管鋳造設備において、前記中子保持機に取り付ける造型後の中子に凹の鏡像マークを鋳造サイクルに合わせて付加するマーキング装置を設けた。
この発明によれば、鏡像マークを、造型後の中子に付すことが出来るため、中子に付すマークを管に付すべきマークと整合させ易い。
【0015】
また、前記マーキング装置を、造型後の中子から一回の鋳造で使用する数の中子を取り込んで中子保持機まで運ぶ中子搬送機の中子搬送経路の途中に設けることができる。
これにより、鏡像マークを、鋳造設備の中で(鋳造で使用する直前の)中子に付すことになるため、中子に付したマークと管に付すべきマークとの不整合が発生しないから、その付した中子マーク表示を読み取って整合を図る必要がない。
【0016】
そして、本発明の管鋳造方法は、管に凸の鋳出しマークを付けるために凹の鏡像マークを付けた中子を、筒状の金型の端部に同心で嵌めて、金型と一体で回転するように中子保持機で中子を保持し、その金型を軸心周りに高速で回転させ、金型内に溶鉄を流し込み、溶鉄が凝固してできた管を把持して金型から抜き出して、鋳出しマークが付いた管を遠心鋳造法によって製造する管鋳造方法において、造型後の中子から一回の鋳造で使用する数の中子を取り込んで前記中子保持機まで搬送する途中で、マーキング装置を使って、鋳造サイクルに合わせて凹の鏡像マークをその中子に付けることとした。
これにより、中子に付したマークと管に付すべきマークとの不整合が発生しにくいから、その付した中子マーク表示を読み取って整合を図る必要がない。
【0017】
また、前記マーキング装置によって中子に付加される鏡像マークm’の位置を、中子の造型時に付けた鏡像マークmの位置を基準として決めることができる。
これにより、鏡像マーク同士が重なることがない。
さらに、前記マーキング装置による中子への鏡像マークの付加を、管の鋳造中に、次の管の鋳造で使用する中子に行うことができる。
これにより、搬送途中の中子に鏡像マークの付加を行っても、鋳造サイクルに悪影響を与えない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の管鋳造設備及び鋳造方法は、鋳造直前の中子に鏡像マークを付すことにしたので、中子自体の個別管理をしなくて済み、併せて、鋳造設備のトラブルによる中子の損失発生を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る第1実施形態を表す要部説明図であり、(a)はロボットが中子を掴んで鋳造機側に取り込む状態を表している。(b)は、ロボットが、掴んだ中子を中子台まで運び、マーキング装置が、その中子に鏡像マークを刻んでいる状態を表している。(c)は、ロボットが、鏡像マークを刻んだ後の中子を掴んで鋳造機に向けて搬送している状態を表している。
【図2】中子の斜視図である。
【図3】本発明に係るマーキング装置の説明図である。
【図4】同、端子進退装置の説明図である。
【図5】鏡像マークと鋳出しマークの説明図であり、(a)は中子の平面図で、(b)はその中子を使用して鋳造した管の端面図である。
【図6】本発明に係る第2実施形態を表す要部説明図であり、(a)は中子を取り込んでコンベア入口に載せる状態を表している。(b)は中子を、コンベアでマーキング装置まで運び、マーキング装置で中子に鏡像マークを刻んでいる状態を表している。(c)は、中子を、ロボットが掴んで鋳造機に搬送している状態を表している。
【図7】本発明に係る第3実施形態を表す要部説明図である。
【図8】本発明に係る中子の供給操作のフロー図である。
【図9】従来の管鋳造設備の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施形態を、図面に基づいて説明する。
まず、第1の実施形態について、主に図1〜図5を使って説明する。なお、鋳造機や注湯機、引き抜き機など、既述の従来技術と共通するものについては、同じ符号を付して説明を省略する。
【0021】
図1は第1の実施形態を表す説明図であり、(a)はロボット42が、その末節先端に設けたハンド41で中子5’を掴んで鋳造機1側に取り込む状態を表している。ハンド41には複数の可動フィンガ411が付いていて、可動フィンガ411の間隔を狭めて中子を挟み、掴む構造となっている。(b)は、ロボット42が、掴んだ中子を中子台71まで運び、マーキング装置7が、その中子に鏡像マークを刻んでいる状態を表している。(c)は、ロボット42が、鏡像マークを刻んだ後の中子5をハンド41で掴んで鋳造機1に向けて搬送している状態を表している。
【0022】
本実施形態では、中子搬送機4は、一台の多関節ロボット42のみで構成されている。このロボット42が、鋳造に使用可能な複数の中子5’から一回の鋳造で使用する個数(ここでは一個)だけを取り込み、マーキング装置7まで運ぶ。そこで中子に鏡像マークが刻まれた後、その中子をロボット42が、中子保持機6まで搬送する。
中子保持機6は、ロボット42から受け取った中子を金型11の端部にセットする。
【0023】
ここで、中子5の金型11へのセット動作を詳しく説明すると、まず、中子保持機6の中子装着座61が上を向いた状態(図示省略)で、ロボット42が、把持した中子5を中子装着座61の上に載せる。そして、可動フィンガ411の間隔を広げて把持を解き、中子からハンド41を離す。
【0024】
次に、中子保持機6が中子を装着したまま旋回し、中子装着座61が水平方向(横)を向いて金型11の端部を臨む状態になる。この時、中子5は、中子装着座61と一体的に動き、旋回を終えたときには、中子5の軸心が、金型11の軸心とほぼ一致している。
【0025】
中子装着座61は、その姿勢のまま、金型11の端部に中子5が完全に嵌め込まれるまで、金型の軸方向に沿って水平に移動する。
これで、金型11への中子5のセットを終える。
【0026】
図2は、ロボット42で取り込む中子5’の斜視図である。
この図に示すように、中子は円筒状の本体の一端にフランジ状の鍔部を有する物であり、造型後の中子5’には、鍔部の片面(彫刻面51)に凹の鏡像マークmが既に付いている。
【0027】
この鏡像マークmは、管の型式、製造年や製造者、鋳造ロット番号などを表示する鋳出しマークを管に付けるためのもので、中子の造型用金型に鋳出しマークと同じ形の凸マークを付しておくことで形成されている。
また、この中子5’の表面のうち、鋳造時に溶鉄と接触する部分(彫刻面51や鏡像マークmも含む)には、焼き付けを防止するための塗型剤がコーティングされている。
【0028】
図3は、マーキング装置7を側面から見た説明図である。
マーキング装置7は、彫刻機本体70と、その下から伸びる彫刻アーム74と、そのアーム先端に設けた端子進退装置72と、その進退装置によって高速で進退を繰り返す彫刻端子73とから構成されている。
【0029】
彫刻端子73を前後左右に移動させるために、彫刻機本体70には、水平に伸びるネジ軸(図示省略)が前後と左右方向に平面視で直交するように一軸ずつ設けられていて、各軸の駆動はコンピュータにより数値制御されている。
【0030】
彫刻端子73は、耐摩耗性能を有する金属で出来ており、図4に示すように、釘のように、細く尖った針状部分と後端の円盤部73aで形成されている。
【0031】
端子進退装置72は、径が異なる2本の円柱を円錐面で繋げた外形をしており、その円柱の芯を刳り貫いて形成した円孔に、彫刻端子73とコイルばね75が挿入されている。円孔は、彫刻端子の円盤部73aが軸方向に液密に摺動するようにあけられた大径部分と、彫刻端子の針状部分が挿通される小径部分からなっている。大径部分では、針状部分がコイルばね75の中に通されており、このコイルばねによって、彫刻端子73は、常時後退する(引っ込む)方向に付勢されている。
【0032】
彫刻端子73の後端(円盤部73a)にエア圧を付加すると、円盤部73aがエア圧に押され、コイルばね75の付勢に打ち勝って、彫刻端子73が前進する(突き出る)。
エア配管のバルブを開放するなどして、円盤部73aにかかるエア圧を落とすと、コイルばね75の付勢が勝って、彫刻端子73が後退する(引っ込む)。
【0033】
マーキングを行うときは、エア圧の切り替えサイクルを早めて、彫刻端子73の進退(突き引き)が、200〜300回/秒程度の高サイクルで行われるようになっている。
【0034】
中子にマーキングを行うときは、中子5をフランジ状の鍔部を下にして中子台71に載せ、その鍔部の上面(彫刻面51)に、彫刻端子73の先を向けてセットする。
マーキング装置の昇降ネジ軸76を回して彫刻機本体70を下降させ、高速で進退する彫刻端子73の先端を彫刻面51に当て、微少な窪み(ドット)を彫る。(図3参照)
そのまま、彫刻端子73を彫刻面51に沿って動かしていくと、無数のドットが繋がって、溝ができる。(図4参照)
この時の彫刻端子73の動きを、コンピュータにより数値制御することで、溝の伸びる方向が制御され、凹の鏡像マークm’を描くことができる。
【0035】
図5(a)は中子保持機に装着する中子5の平面図である。
この図に示すように、中子5には、マーキング装置7で刻まれた鏡像マークm’が、造型時に付けられた鏡像マークmと干渉しない位置に付けられている。
鏡像マークm’は、鏡像マークmと同様、鋳出しマークを管に表示するために凹の記号や鏡映文字を中子に付けるものであるが、中子造型時に既に決まっている履歴情報を鋳出しマークとして表示するための鏡像マークmとは異なり、鋳造日や鋳造番号、鋳造機番号など鋳造時に決まる履歴情報を鋳出しマークとして表示するためのものである。
【0036】
造型時に付けられた鏡像マークmの位置に、マーキング装置7で鏡像マークm’を重ねて刻まないため、すなわち、マーク位置の干渉を防ぐために、ロボット42が中子5’を取り込む際に、鏡像マークmの位置を基準として中子5’の周方向の位置決めをしておく。
これは、ロボットを使って中子5’を取り込んでマーキング装置7まで搬送すると、取り込んでからマーキング装置に搬入するまでの中子の周方向の位置ずれが、ほぼ一定となり、予測できるため、それを考慮して、取り込み時の中子の周方向位置を決めておけば、マーク位置の干渉を防ぐことができるからである。
【0037】
図5(a)に示す凹の鏡像マークm、m’を付した中子5を使って鋳造した管の端部には、同図(b)に示す凸の鋳出しマークM、M’が形成されている。
【0038】
ここで、第1実施形態における中子供給操作の具体的な流れを、図8に沿って説明する。
まず、管の鋳造を終えると、中子保持機6に装着していた中子が、鋳造した管と共に鋳造設備から搬出され、中子が無くなった中子装着座61が上を向いた状態となる(準備状態)。
次に、鏡像マークm’を刻んで中子台71に置かれている中子5を、ロボット42が中子装着座61に載せて装着する(供給操作I)。
そして、彫刻前の中子5’をロボット42が取り込んで、空いた中子台71に載せる(供給操作II)。
続いて、中子台71に載せた中子に、マーキング装置7で鏡像マークm’を刻む(供給操作III)。
供給操作IIIを終えた時に、上述の準備状態になっていれば、再び供給操作Iに進み、以後、鋳造設備が停止するまで同様の操作を繰り返す。
ここで、供給操作IIとIIIは、一回前(直前)に彫刻した中子を使う管の鋳造動作中に行い、供給操作III(鏡像マークm’の彫刻)は、次の鋳造で使用する中子に行っている。
【0039】
このように、中子台71への取り込み(供給操作II)や、中子彫刻(供給操作III)、中子装着座61への装着(供給操作I)といった中子の供給操作は、鋳造サイクルに合わせて行う。すなわち、鏡像マークm、m’を刻んだ中子5の供給ピッチが、管の鋳造ピッチに合う様に、中子の取り込みから彫刻、中子装着座61への装着を行っている。
【0040】
次に、第2の実施形態について、主に図6を使って説明する。
なお、鋳造機やロボット、中子保持機、マーキング装置など、既述の技術と共通するものについては、同じ符号を付して説明を省略する。
【0041】
図6は、第2の実施形態を表す説明図であり、(a)は鋳造に使用できる中子5’をその供給先の鋳造機の台数分ずつ取り込んで、コンベア43の入り口に載せる状態を表している。(b)は、コンベアベルト上に載せた中子が、コンベア43によってマーキング装置7の処理位置まで運ばれ、マーキング装置7によって鏡像マークが刻まれている状態を表している。(c)は、鏡像マークを刻んだ後の中子5を、ロボット42がハンド41で掴み、中子保持機6に向けて搬送している状態を表している。
【0042】
本実施形態では、中子搬送機4は、一台の多関節ロボット42とコンベア43で構成されている。この中子搬送機4が、一回の鋳造で使用する数の中子を、鋳造サイクルに合わせて中子保持機まで運ぶ。
【0043】
コンベア43は、ベルトに載せた中子を移動させる装置で、2基の回転ドラムが環状のコンベアベルトに内接し、そのドラムの回転によってベルトが回わり、ベルト上の中子が移動する仕組みとなっている。
このコンベア43が、コンベアベルトの入り口側に載せた中子5’を、マーキング装置7の彫刻(マーキング)が可能な位置(彫刻位置)まで運び、彫刻(マーキング)が済んでから、ロボット42の把持位置(出口側)まで運搬する。
また、コンベアで運んでいる間にベルト上の中子の位置がずれるのを防ぐために、コンベアベルトの表面には、突出するストッパ431が複数設けられている。
【0044】
造型時に付けられた鏡像マークmの位置に、マーキング装置7で鏡像マークm’を重ねて刻まないため、すなわち、マーク位置の干渉を防ぐために、コンベア43の入り口に中子5’を載せるときは、中子5’の周方向の位置決めを行う。
これは、コンベア搬送中の中子は、ストッパ431で拘束され、入り口からマーキング装置7まで運ばれる間に、周方向の位置がずれる(つまり、搬送中の中子が軸心周りに微小角度回転する)ことがないので、コンベアの入り口で中子の周方向の位置を、鏡像マークの干渉が起こらない位置に決めれば、鏡像マークmの位置に重ねて鏡像マークm’を彫ることがないからである。
【0045】
コンベア43は、鋳造サイクルに合わせて間欠運転を行っており、管を一本鋳造する毎に、中子を一個ずつ、入り口からマーキング装置7に送るように運転が制御されている。
【0046】
マーキング装置7に中子が送られてくると、その彫刻面51に彫刻端子73によって鏡像マークmが彫られる。
マーキング装置による彫刻動作は、前述の第1実施形態における彫刻動作と同じであるから、説明は省略する。
マーキング装置の彫刻処理を終えた中子5は、ロボットのハンド41に掴まれて、中子保持機6まで搬送される。
【0047】
その後の中子5の金型11へのセット動作は、前述の第一実施形態におけるセット動作と同じである。
【0048】
ここで、第2実施形態における中子供給操作の具体的な流れを、図8に沿って説明する。
まず、管の鋳造を終えると、中子保持機6に装着していた中子が、鋳造した管と共に鋳造設備から搬出され、中子が無くなった中子装着座61が上を向いた状態となる(準備状態)。
次に、鏡像マークm’を刻んでベルトコンベア出口側に置かれている中子5を、ロボット42が掴んで中子装着座61に載せる(供給操作I)。
そして、彫刻前の中子5’を作業者が取り込んでベルトコンベアの入り口に載せ、ベルトコンベアがマーキング装置7の彫刻位置まで中子を運ぶ(供給操作II)。
続いて、彫刻位置の中子に、マーキング装置7で鏡像マークm’を刻み、刻み終えた中子をベルトコンベアが出口側へ搬送する(供給操作III)。
供給操作IIIを終えた時に、上述の準備状態になっていれば、再び供給操作Iに進み、以後、鋳造設備が停止するまで同様の操作を繰り返す。
ここで、供給操作IIとIIIは、一回前(直前)に彫刻した中子を使う管の鋳造動作中に行い、供給操作III(鏡像マークm’の彫刻)は、次の鋳造で使用する中子に行っている。
【0049】
このように、中子台71への取り込み(供給操作II)や、中子彫刻(供給操作III)、中子装着座61への装着(供給操作I)といった中子の供給操作は、鋳造サイクルに合わせて行う。すなわち、鏡像マークm、m’を刻んだ中子5の供給ピッチが、管の鋳造ピッチに合う様に、中子の取り込みから彫刻、中子装着座61への装着を行っている。
【0050】
次に、第3の実施形態について、図7と図8を使って説明する。
図7は第3の実施形態に係る管鋳造設備の要部説明図である。
この実施形態では、使用可能な複数の中子5’から一回の鋳造に使う数(ここでは1個)の中子を、機械を使わず作業者の手によって取り込んで、マーキング装置の中子台71に載せ、彫刻(マーキング)が終了したら、その中子を再び作業者の手によって運び、上を向いている中子装着座61に載せて装着する。
【0051】
具体的な作業の流れを図8に沿って説明する。
まず、管の鋳造を終えると、中子保持機6に装着していた中子が、鋳造した管と共に鋳造設備から搬出され、中子が無くなった中子装着座61が上を向いた状態となる(準備状態)。
次に、鏡像マークm’を刻んで中子台71に置かれている中子5を、作業者が中子装着座61に載せて装着する(供給操作I)。中子装着座61への中子装着以降の中子保持機の動作については、既述の各実施形態と同じである。
そして、彫刻前の中子5’を一回の鋳造で使う数(ここでは1個)だけ作業者が取り込んで、空いた中子台71に載せる(供給操作II)。
続いて、中子台71に載せた中子に、マーキング装置7で鏡像マークm’を刻む(供給操作III)。このマーキング装置による彫刻動作は、既述の第1の実施形態における彫刻動作と同じである。
供給操作IIIを終えた時に、上述の準備状態になっていれば、再び供給操作Iに進み、以後、鋳造設備が停止するまで同様の操作を繰り返す。
ここで、供給操作IIとIIIは、一回前(直前)に彫刻した中子を使う管の鋳造動作中に行い、供給操作III(鏡像マークm’の彫刻)は、次の鋳造で使用する中子に行っている。
【0052】
このように、中子台71への取り込み(供給操作II)や、中子彫刻(供給操作III)、中子装着座61への装着(供給操作I)といった中子の供給作業は、鋳造サイクルに合わせて行う。すなわち、鏡像マークm、m’を刻んだ中子5の供給ピッチが、管の鋳造ピッチに合う様に、中子の取り込みから彫刻、中子装着座61への装着を行っている。
【0053】
なお、各実施形態ともマーキング装置として、彫刻端子でドットを付ける方式のものを挙げたが、他に、レーザーで中子表面を焼き崩す方式のものやエンドミルなどの切削工具で中子表面を削る方式のもの等も、マーキング装置として採用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 鋳造機
2 注湯機
3 引き抜き機
4 中子搬送機
5、5’ 中子
6 中子保持機
7 マーキング装置
8 溶鉄
11 金型
42 ロボット
43 コンベア
51 彫刻面
73 彫刻端子
M、M’ 鋳出しマーク
m、m’ 鏡像マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の金型をその軸心周りに高速で回転させる鋳造機と、金型内に溶鉄を流し込む注湯機と、溶鉄が凝固してできた管を把持して金型から引き抜く引き抜き機と、管に凸の鋳出しマークを付けるために凹の鏡像マークを付けた中子を、金型の端部に同心で嵌めて金型と一体で回転するように保持する中子保持機とを備え、鋳出しマークを付けた管を遠心鋳造法によって製造する管鋳造設備において、
前記中子保持機に取り付ける造型後の中子に凹の鏡像マークを鋳造サイクルに合わせて付加するマーキング装置を設けたことを特徴とする管鋳造設備。
【請求項2】
前記マーキング装置を、造型後の中子から一回の鋳造で使用する数の中子を取り込んで中子保持機まで運ぶ中子搬送機の中子搬送経路の途中に設けたことを特徴とする請求項1に記載の管鋳造設備。
【請求項3】
管に凸の鋳出しマークを付けるために凹の鏡像マークを付けた中子を、筒状の金型の端部に同心で嵌めて、金型と一体で回転するように中子保持機で中子を保持し、その金型を軸心周りに高速で回転させ、金型内に溶鉄を流し込み、溶鉄が凝固してできた管を把持して金型から抜き出して、鋳出しマークが付いた管を遠心鋳造法によって製造する管鋳造方法において、
造型後の中子から一回の鋳造で使用する数の中子を取り込んで前記中子保持機まで搬送する途中で、マーキング装置を使って、鋳造サイクルに合わせて凹の鏡像マークをその中子に付けることを特徴とする管鋳造方法。
【請求項4】
前記マーキング装置によって中子に付加される鏡像マーク(m’)の位置を、中子の造型時に付けた鏡像マーク(m)の位置を基準として決めることを特徴とする請求項3に記載の管鋳造方法。
【請求項5】
前記マーキング装置による中子への鏡像マークの付加を、管の鋳造中に、次の管の鋳造で使用する中子に行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の管鋳造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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