箱型電子部品と放熱板を有する電子機器
【課題】チューナ用電子回路において、電磁波からの遮蔽を確保しつつ効率的に電子部品の放熱を行い、かつ、その薄型化を図る。
【解決手段】ベース基板0400の上に箱型電子部品0410が設置されている。箱型電子部品の筐体0413の内部には従来技術の場合と同様、回路基板12が収納されている。回路基板上にはチューナ用集積回路0411を含む電子部品により電子回路が構成されている。しかし、従来技術の場合とは異なり放熱板設置前の状態では箱型電子部品は回路基板上部の全部又は一部が開口している(この開口部分0417を以下「窓」と呼ぶこととする)。この窓を介して、チューナ用集積回路0411の上部に放熱シート0415が圧着され、さらにその上に放熱板0416が圧着される。
【解決手段】ベース基板0400の上に箱型電子部品0410が設置されている。箱型電子部品の筐体0413の内部には従来技術の場合と同様、回路基板12が収納されている。回路基板上にはチューナ用集積回路0411を含む電子部品により電子回路が構成されている。しかし、従来技術の場合とは異なり放熱板設置前の状態では箱型電子部品は回路基板上部の全部又は一部が開口している(この開口部分0417を以下「窓」と呼ぶこととする)。この窓を介して、チューナ用集積回路0411の上部に放熱シート0415が圧着され、さらにその上に放熱板0416が圧着される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューナ用電子回路において電磁波からの遮蔽を確保しつつ効率的に電子部品の放熱を行い、かつ、その薄型化を図るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量薄型化が進められているテレビ、ビデオデッキ等の家電製品において大きな課題となっているのが機器の内部温度である。製品を薄型化すると必然的に部品の集積化が進むが、部品の集積化はすなわち熱発生源の集中化を意味すると同時に、熱を外部に逃すための経路の限定をも意味する。
【0003】
放熱が課題となる電子部品の中でもチューナ用電子部品は特に注意が必要である。チューナ用電子部品は、周囲のモータ等から発生する電磁ノイズの影響のないクリアな音声・映像信号を生成するために、また同時にチューナ用電子部品から発生するノイズを外部に漏らさないために、外部との電磁的遮蔽が可能なアルミケースなどに収納される。ところが、外部から遮蔽されたケース内部には熱がこもりやすく、放熱が大きな課題となる。
【0004】
チューナ用電子部品については、この電磁波遮蔽と放熱の相反する課題を解決するために様々な提案がなされている。特許文献1は、金属製ケースの蓋の一部に切れ込みを入れてこれをケース内側に折り曲げたうえで、その先端を内部基板上のICチップに圧着させることにより熱を外部に逃がす方法を提案している。特許文献2は、同様にケース蓋に切れ込みを入れる点は特許文献1と同様であるが、切れ込み部をバネ状に形成することによりICチップに対する圧着を万全にするための工夫が行われている。特許文献3は、チューナ用電子回路を電磁波遮蔽を優先すべき部分と放熱を優先すべき部分とに分けたうえで、前者はケース内部で完全に遮蔽された状態を維持しつつ、後者は外部に露出した基板上に配置しつつケース上蓋に連続して形成した爪に圧着させる方法を提案している。特許文献4は、ケース内部の回路基板に貫通孔を設け、この貫通孔を貫通して放熱シートを集積回路に圧着し、さらに放熱シートがケースに圧着されることで熱を外部に放熱させる方法を提案している。特許文献5は、放熱板をリベットにて基板に係止する方法を提案している。
【0005】
図1は、チューナ用電子部品をベース基板に設置する場合の従来技術の典型例の図である。ベース基板0100の上に箱型電子部品0110が設置されている。ベース基板上には、箱型電子部品の他に、集積回路0101やコンデンサ0102等のその他の電子部品が多数設置されている。箱型電子部品は、典型的には、チューナ用電子部品のことであり、箱型電子部品の箱又はケースである筐体0113の内部には回路基板0112が収納されている。回路基板上には、チューナ用集積回路0111を含む電子部品により電子回路が構成されている。筐体は蓋0114で覆われ、チューナ用電子回路が外部から電磁的に遮蔽される。蓋の上部には、放熱シート0115を挟むようにして放熱板0116が圧着される。
【0006】
図 2は、従来技術により放熱板がチューナ用電子部品に圧着された状態の図である。ベース基板0200上に箱型電子部品0210が設置されている。箱型電子部品の蓋0214の上には、放熱シート0215を挟むようにして放熱板16が圧着されている。
【0007】
図 3は、図2の箱型電子部品の断面図である。ベース基板0300の上に箱型電子部品0310が設置されている。箱型電子部品の筐体0313の内部には電子基板0312が収納され、その上下両面にはチューナ用集積回路0311及び0321が設置されている。筐体の上部には放熱シート0315を挟んで放熱板0316が圧着載置されている。図には描いていないが、放熱板は通常、放熱板からベース基板に下ろした足をビス止めするなどして固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−284650(図1)
【特許文献2】特開2002−190684(図1及び図3)
【特許文献3】特開2000−216582(図1)
【特許文献4】特開2006−166126(図1及び図6)
【特許文献5】特開平8‐88303(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1乃至4は、いずれもチューナ用電子回路における電磁波遮蔽と放熱の両立について一定の解決を与えるものである。しかし、電子機器に対する軽量薄型化の要求は近年一層強まってきており、これら文献において開示された技術ではその要求に応えられなくなってきている。図3を用いて説明した従来技術の例では、チューナ用集積回路とケース蓋との間に無駄な隙間0322がある。また、筐体の上蓋0314自体の厚みも薄型化の障害となっている。特許文献1、2又は4で提案されている技術はいずれもこれらの問題点を解決できていない。特許文献3にはこのような隙間はないものの、電磁波の影響の少ない集積回路についてのものであり、一般のチューナ用電子回路について解決を与えるものではない。特許文献5もこれらの問題に解決を与えるものではない。
【0010】
また、図3の放熱板は通常放熱板からベース基板に下ろした足をビス止めするなどして固定されると述べたが、そのビス止め部分を放熱板及びベース基板上で確保するためにこれらの部品が必要以上に大きくなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者はかかる課題に鑑み、近年における軽量薄型化の要求を満たし、同時に電磁波遮蔽と放熱の両立をも適えることのできる技術を完成させたものである。
【0012】
請求項1に記載の第1発明は、ベース基板と、ベース基板上に配置される箱型電子部品と、放熱板と、からなる電子機器であって、前記箱型電子部品は、電子回路が構成された回路基板と、回路基板を収納する箱型の筐体と、回路基板の一面と対向する筐体の面に設けられる窓と、前記一面に配置された電子部品上に配置される放熱シートと、を有し、前記放熱板は、前記窓を介して前記放熱シートに圧着されている電子機器、に関する。
【0013】
請求項2に記載の第2発明は、前記放熱板は、前記ベース基板に対して固定され、前記ベース基板上に配置される他の電子部品をも覆い、他の電子部品から発生する熱をも放熱するように構成されている請求項1に記載の電子機器、に関する。
【0014】
請求項3に記載の第3発明は、前記放熱板は、前記ベース基板から前記箱型電子部品を貫通するリベットにて前記ベース基板に対して固定されている請求項2に記載の電子機器、に関する。
【0015】
請求項4に記載の第4発明は、前記箱型電子部品内の前記回路基板に配置される電子部品の発熱量は、窓側に配置される電子部品の発熱総量がこの裏側に配置される電子部品の発熱総量よりも大きい請求項1から3のいずれか一に記載の電子機器、に関する。
【発明の効果】
【0016】
第1発明によれば、第一に、箱型電子部品を実装する電子機器を、近似の厳しい軽量薄型化のニーズに対応させることが可能となる。第二に、従来技術の箱型電子部品がケースを介して間接的に放熱板に熱を伝えていたのに対し、第1発明の箱型電子部品は放熱が必要な部品から放熱シートを介して直接放熱板に熱を伝えるため、放熱効率が大幅に改善されている。第三に、回路基板の上部を全て開口させた場合にはケース上蓋を完全に廃止することができ、部品数の削減と作業工程の簡略化が実現できる。
【0017】
第2発明によれば、箱型電子部品内部の部品のみならずベース基板上のその他の電子部品の放熱も一つの放熱板で同時に行うことが可能な第1発明の電子機器が提供される。
【0018】
第3発明によれば、放熱板が簡易に安定的に固定された第2発明の電子機器が提供される。
【0019】
第4発明によれば、発熱量の多い電子部品を放熱板側に配置して放熱効率を確保しつつも小さい回路基板内に多数の電子部品を収納したコンパクトな第1乃至第3発明の電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】チューナ用電子部品をベース基板に設置する場合の従来技術の典型例の図。
【図2】従来技術により放熱板がチューナ用電子部品に圧着された状態の図。
【図3】図2の箱型電子部品の断面図。
【図4】実施例1において、箱型電子部品上に放熱板を設置する手順を表す図。
【図5】実施例1において放熱板がチューナ用電子部品に圧着された状態の図。
【図6】実施例1の電子機器の箱型電子部品辺りの断面図。
【図7】実施例2の電子機器の概略を表す図。
【図8】実施例2の電子機器で放熱板が設置された状態を表す図。
【図9】実施例3の電子機器の概略を表す図。
【図10】実施例3の電子機器において、放熱板がリベットにより固定された状態を表す図。
【図11】実施例3の電子装置に設置されたリベットを中心とした断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施例1は第1発明に関する。以下同様に、実施例n(nは2から4の整数)は第n発明に関する。
【実施例1】
【0022】
<実施例1の概念>
図 4は、実施例1において、箱型電子部品上に放熱板を設置する手順を表す図である。図中の矢印は、部品の設置方向を示すものである。この点は、本明細書中の他の図面においても同様である。ベース基板0400の上に箱型電子部品0410が設置されている。箱型電子部品の筐体0413の内部には従来技術の場合と同様、回路基板0412が収納されている。回路基板上にはチューナ用集積回路0411を含む電子部品により電子回路が構成されている。しかし、従来技術の場合とは異なり放熱板設置前の状態では箱型電子部品は回路基板上部の全部又は一部が開口している(この開口部分0417を以下「窓」と呼ぶこととする)。この窓を介して、チューナ用集積回路0411の上部に放熱シート0415が圧着され、さらにその上に放熱板0416が圧着される。なお、実施例1の箱型電子部品の筐体は従来技術のものよりも高さが低く形成されている。これは、蓋と回路基板との間の空間を必要としないこと、及び、蓋そのものが不要であることが理由である。
【0023】
図 5の上図は、実施例1において放熱板がチューナ用電子部品に圧着された状態の図である。ベース基板0500上に箱型電子部品0510が設置されている。箱型電子部品のチューナ用集積回路の上に直接、放熱シート(図には描かれていない)を挟んで放熱板0516が圧着されている。
【0024】
下図は、比較のために図2の従来技術の例を再掲したものである。実施例1の電子機器は従来のものよりも大幅に薄型化が実現されている。これは、既に述べたとおり、実施例1の箱型電子部品では、蓋と回路基板との間の空間が不要であること、及び、蓋そのものが不要であることが理由となっている。
【0025】
図 6の左図は、実施例1の電子機器の箱型電子部品辺りの断面図である。左図において、図3で説明した従来技術との相違点を述べると、箱型電子部品0610の筐体0613上部は開口しており、回路基板0612上面に配置されたチューナ用集積回路0611に直接放熱シート0615が載置され、それらの上には放熱板0616が載置されている。右図は比較のために図3で説明した従来技術の場合の断面図を再掲したものである。実施例1の電子機器では、筐体の蓋、及び、蓋とチューナ用集積回路の間の空間の厚みがないために、従来技術の場合と比較して薄型化が実現できていることが分かる。
【0026】
<実施例1の構成>
実施例1の電子機器の構成を再び図4を用いて説明する。実施例1の電子機器は、ベース基板0400と、箱型電子部品0410と、放熱板0416とを有する。箱型電子部品は、回路基板0412と、筐体0413と、窓0417と、放熱シート0415とを有する。以下、それぞれの構成について説明する。
【0027】
「ベース基板」は箱型電子部品を含む多数の電子部品を搭載するための電子基板であって、それら電子部品により構成される様々な電子回路を実装するものである。箱型電子部品により実現される音声又は映像の受信回路の他に、例えば、映像信号を生成する描画用電子回路や、スピーカを鳴らすための増幅回路等がこのベース基板上で構成される。
【0028】
「箱型電子部品」は、回路基板が箱型のケースに収められた電子部品である。既に述べたとおり、チューナ用電子部品はその典型であり、ケースに収める目的は内部の回路基板を電磁波等の影響から遮蔽したり、振動に弱い部品を衝撃等から守ったりするためである。
【0029】
「放熱板」は、電子部品等から発生した熱を放熱するための板である。図4等に描かれた文字通り板状のもののほか、放熱のための面積を増やすために表面にひだが多数形成されたものや、板が折り曲げられたものや、軽量薄型化という目的からは少し外れるが、送風ファンや水冷用のシンクもこれに含まれる。放熱板の素材は、鉄やアルミなどの金属とするのが一般的であるが、熱伝導特性の高い他の素材でも構わない。
【0030】
「回路基板」は箱型電子部品内部でチューナ用電子回路等の電子回路を構成するための小型の基板である。回路基板は通常平らな板状であり、その一面又は両面に電子部品が配置される。
【0031】
「筐体」は箱型電子部品の外殻となる箱であり、内部に回路基板を収納可能に構成される。図3の筐体は長方形の側面及び底面を有する箱であるが、これに限られない。但し、薄型化という目的にそぐわない形状は好ましくない。筐体を形成する素材は、チューナ用電子部品であれば電磁波遮蔽性が高く軽量なアルミが多用されるが、その他の金属や導電性の樹脂などでもよい。
【0032】
「窓」は、筐体に形成された開口部であり、チューナ用集積回路等の電子部品上に放熱シート及び放熱板を圧着させるためのスペースを設けるためのものである。図4の例では、回路基板全体に対して開口しているが、放熱が必要な電子部品に放熱シート等を圧着させるという目的からすれば、回路基板上部全体が露出している必要はない。放熱が必要な電子部品の上部だけを開口したような形状の窓でもよい。そうすることにより電磁波の遮蔽性は若干高くなる。その場合には、開口部以外の部分はいわば穴のあいた蓋のようなものであり、蓋をなくしたことによる薄型化の効果が薄れるようにも思える。しかし、放熱が必要な電子部品以外は小型であることが多く、そのような蓋を設けたとしても大型の電子部品を避けて設置が可能であり、薄型化の障害になることは少ない。
【0033】
「放熱シート」は放熱が必要な電子部品と放熱板の間に圧着して設置する。放熱板を電子部品の上に直接載置しない理由はいくつかある。第一に、硬いもの同士を密着させても完全に密着することはなく、電子部品と放熱板との間で熱伝導が効率よく行われにくい。しかし、両者の間に柔らかい素材を挟めば両者を間接的に密着させて熱伝導性を高めることができる。第二に、放熱板が受けた衝撃が電子部品に伝わって電子部品を毀損させる事態を避けなければならないが、両者の間に柔らかい素材を挟めば放熱板が受けた衝撃が直接電子部品に伝わることがなく、電子部品を衝撃から守ることができる。第三に、高さの異なる複数の電子部品の放熱をひとつの放熱板で行おうとする場合には、その高さの違いを放熱シートの厚さで調整することができる。
【0034】
放熱シートの素材は柔らかく、粘着性があり、かつ、熱伝導性の高いものが好適である。一般的にはシリコンが多用される。その他、アクリルやグラファイトなどを使用することができる。
【0035】
放熱板は、前記窓を介して前記放熱シートに圧着される。放熱板を圧着して固定する方法はさまざまである。放熱シート自体の粘着力で固定させる方法もあれば、放熱シートと放熱板及び電子回路の圧着面に接着剤を利用する方法もある。接着剤を利用する場合には、接着剤自体の熱伝導性に注意を要する。また、放熱板からベース基板上に足をおろしてビス止めする方法もある。
【0036】
放熱板と箱型電子部品の筐体との間には若干の隙間を残すのがよい。この隙間がないと、放熱板、放熱シート及びチューナ用集積回路の圧着が十分行われないおそれがあるからである。この隙間があっても電磁波の遮蔽性は従来技術の場合と比べてほとんど遜色がない。なぜなら、筐体の上部は電磁波遮蔽性のある放熱板で覆われており、隙間から侵入可能な電磁波は限られているからである。
【0037】
<実施例1の効果>
実施例1によれば、第一に、箱型電子部品を実装する電子機器を、近似の厳しい軽量薄型化のニーズに対応させることが可能となる。第二に、従来技術の箱型電子部品がケースを介して間接的に放熱板に熱を伝えていたのに対し、実施例1の箱型電子部品は放熱が必要な部品から放熱シートを介して直接放熱板に熱を伝えるため、放熱効率が大幅に改善されている。第三に、回路基板の上部を全て開口させた場合にはケース上蓋を完全に廃止することができ、部品数の削減と作業工程の簡略化が実現できる。
【実施例2】
【0038】
<実施例2の概念>
図7は、実施例2の電子機器の概略を表す図である。実施例1の電子機器では、放熱板は箱型電子部品内部の電子部品のみを冷却するものであった。実施例2の電子機器は、放熱板は箱型電子部品内部の電子部品だけでなく、ベース基板上にあって放熱が必要な他の電子部品の放熱も併せて行うことを特徴とする。図 8は、実施例2の電子機器で放熱板が設置された状態を表す図である。
【0039】
<実施例2の構成>
実施例2の電子機器は、その放熱板が、前記ベース基板に対して固定され、前記ベース基板上に配置される他の電子部品をも覆い、他の電子部品から発生する熱をも放熱するように構成される。図7を再び用いて説明する。ベース基板0700の上には箱型電子部品0710が設置されている。箱型電子部品内部の回路基板0712上には熱を発生するチューナ用集積回路0711が2個設置されている。一方、ベース基板上にも熱を発生する集積回路0701が設置されている。これら集積回路の上部には放熱シート0715がそれぞれ圧着され、さらにその上には放熱板0716が圧着載置される。
【0040】
放熱板は放熱が必要な電子部品を全て覆い隠すような形状に形成される。そして、そのようなものであれば、図のような矩形である必要はなく、放熱を行うに十分な大きさを持てばよい。放熱板のその他の特性は実施例1のそれと同様である。
【0041】
<実施例2の効果>
実施例2によれば、箱型電子部品内部の部品のみならずベース基板上のその他の電子部品の放熱も一つの放熱板で同時に行うことが可能な電子機器が提供される。
【実施例3】
【0042】
<実施例3の概念>
図9は、実施例3の電子機器の概略を表す図である。実施例1又は2の電子機器では、放熱板は放熱シートの粘着力や、接着剤や、ビス止めなどで固定するものであった。実施例3の電子機器は、リベットを用いてより簡単に放熱板を固定するものである。図 10は、実施例3の電子機器において、放熱板がリベットにより固定された状態を表す図である。
【0043】
<実施例3の構成>
実施例3の電子機器は、その放熱板が、前記ベース基板から前記箱型電子部品を貫通するリベットにて前記ベース基板に対して固定される実施例2の電子機器である。図9を用いて具体的に説明する。ベース基板0900上には箱型電子部品0910が設置されており、箱型電子部品内部には回路基板0912が収納されている。回路基板には穴0918が開けられており、図には描かれていないが、この穴はその下の筐体及びベース基板をも貫通するように開けられている。一方、放熱板0916にも穴0919が開けられており、これらの穴を貫通するようにリベット0920が取り付けられる。リベットは、前記穴の直径よりもやや小さい直径を有する「軸」と、その軸の一端に形成された前記穴よりも十分大きい直径を有する「頭」とからなる。リベットはこれらの穴に通された後、反対側(図ではベース基板の裏側)でかしめるなどして、放熱板とベース基板とを挟むように固定する。
【0044】
図 11は、実施例3の電子装置に設置されたリベットを中心とした断面図である。ベース基板1100上に箱型電子部品1110が設置されている。箱型電子部品の筐体1113内部には回路基板1112が収納され、回路基板上には、チューナ用集積回路1111及び1121がその上下両面に配置されている。回路基板上側のチューナ用集積回路の上には放熱シート1115が載置され、それらの上には放熱板1116が載置されている。放熱板、回路基板、筐体及びベース基板には穴が開けられており、リベット1120がそれらの穴に通されたのちにかしめられ、これにより、放熱板、回路基板、筐体及びベース基板はリベットの二つの頭に挟まれるように圧着固定されている。
【0045】
リベットは、複数用いてもよいが、図9の例では1個で十分である。すなわち、放熱板は放熱シート0915を挟んで電子部品0901及び0911によっても支持されているから、リベットにより1か所を締め付ければ全体として安定的に固定される。
【0046】
リベットの頭の形状は各種あり、半球形の丸リベット、平たい円錐形の皿リベット、円盤状の平リベットなどがある。薄型化という目的を徹底するならば、放熱板の穴にはリベットの頭が没するような溝を形成するとよい。図11は、そのような溝が放熱板及びベース基板に形成された一例を示している。
【0047】
リベットの材質はアルミニウムや真ちゅうなどの金属でもよいが、磁性の小さいプラスチックが好適である。プラスチックの場合には片側を熱で溶かしたり、キャップを係止するなどして固定する。
【0048】
<実施例3の効果>
実施例3によれば、放熱板が簡易に安定的に固定された実施例2の電子機器が提供される。
【実施例4】
【0049】
<実施例4の概念>
図11を再び用いて、実施例4の概略を説明する。既に述べたとおり、箱型電子部品内部の回路基板は、小さい面積を有効に利用して多数の電子部品を配置するためにその両面が使用されることが多い。実施例4の電子機器は、回路基板の窓側の面に発熱量の大きい電子部品を配置することにより、電子部品の放熱を適切に行うことができる電子機器である。すなわち、回路基板1112上側の電子部品1111は発熱量が相対的に大きい電子部品であり、下側の電子部品1121は発熱量が相対的に小さい電子部品である。
【0050】
<実施例4の構成>
実施例4の電子機器は、前記箱型電子部品内の前記回路基板に配置される電子部品の発熱量は、窓側に配置される電子部品の発熱総量がこの裏側に配置される電子部品の発熱総量よりも大きい電子機器である。どの電子部品がより多くの熱を発生するかは回路特性から計算可能であり、また、温度測定も可能であるから、どの電子部品を窓側に配置するかを決定するのは容易である。問題は小さい回路基板内での配線であるが、これは基板内部を多層構造として配線を基板内において立体的に形成することで実現可能である。
【0051】
<実施例4の効果>
実施例4によれば、発熱量の多い電子部品を放熱板側に配置して放熱効率を確保しつつも小さい回路基板内に多数の電子部品を収納したコンパクトな電子機器が提供される。
【符号の説明】
【0052】
0400 ベース基板
0410 箱型電子部品
0411 チューナ用集積回路
0412 回路基板
0413 筐体
0414 蓋
0415 放熱シート
0416 放熱板
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューナ用電子回路において電磁波からの遮蔽を確保しつつ効率的に電子部品の放熱を行い、かつ、その薄型化を図るための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量薄型化が進められているテレビ、ビデオデッキ等の家電製品において大きな課題となっているのが機器の内部温度である。製品を薄型化すると必然的に部品の集積化が進むが、部品の集積化はすなわち熱発生源の集中化を意味すると同時に、熱を外部に逃すための経路の限定をも意味する。
【0003】
放熱が課題となる電子部品の中でもチューナ用電子部品は特に注意が必要である。チューナ用電子部品は、周囲のモータ等から発生する電磁ノイズの影響のないクリアな音声・映像信号を生成するために、また同時にチューナ用電子部品から発生するノイズを外部に漏らさないために、外部との電磁的遮蔽が可能なアルミケースなどに収納される。ところが、外部から遮蔽されたケース内部には熱がこもりやすく、放熱が大きな課題となる。
【0004】
チューナ用電子部品については、この電磁波遮蔽と放熱の相反する課題を解決するために様々な提案がなされている。特許文献1は、金属製ケースの蓋の一部に切れ込みを入れてこれをケース内側に折り曲げたうえで、その先端を内部基板上のICチップに圧着させることにより熱を外部に逃がす方法を提案している。特許文献2は、同様にケース蓋に切れ込みを入れる点は特許文献1と同様であるが、切れ込み部をバネ状に形成することによりICチップに対する圧着を万全にするための工夫が行われている。特許文献3は、チューナ用電子回路を電磁波遮蔽を優先すべき部分と放熱を優先すべき部分とに分けたうえで、前者はケース内部で完全に遮蔽された状態を維持しつつ、後者は外部に露出した基板上に配置しつつケース上蓋に連続して形成した爪に圧着させる方法を提案している。特許文献4は、ケース内部の回路基板に貫通孔を設け、この貫通孔を貫通して放熱シートを集積回路に圧着し、さらに放熱シートがケースに圧着されることで熱を外部に放熱させる方法を提案している。特許文献5は、放熱板をリベットにて基板に係止する方法を提案している。
【0005】
図1は、チューナ用電子部品をベース基板に設置する場合の従来技術の典型例の図である。ベース基板0100の上に箱型電子部品0110が設置されている。ベース基板上には、箱型電子部品の他に、集積回路0101やコンデンサ0102等のその他の電子部品が多数設置されている。箱型電子部品は、典型的には、チューナ用電子部品のことであり、箱型電子部品の箱又はケースである筐体0113の内部には回路基板0112が収納されている。回路基板上には、チューナ用集積回路0111を含む電子部品により電子回路が構成されている。筐体は蓋0114で覆われ、チューナ用電子回路が外部から電磁的に遮蔽される。蓋の上部には、放熱シート0115を挟むようにして放熱板0116が圧着される。
【0006】
図 2は、従来技術により放熱板がチューナ用電子部品に圧着された状態の図である。ベース基板0200上に箱型電子部品0210が設置されている。箱型電子部品の蓋0214の上には、放熱シート0215を挟むようにして放熱板16が圧着されている。
【0007】
図 3は、図2の箱型電子部品の断面図である。ベース基板0300の上に箱型電子部品0310が設置されている。箱型電子部品の筐体0313の内部には電子基板0312が収納され、その上下両面にはチューナ用集積回路0311及び0321が設置されている。筐体の上部には放熱シート0315を挟んで放熱板0316が圧着載置されている。図には描いていないが、放熱板は通常、放熱板からベース基板に下ろした足をビス止めするなどして固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−284650(図1)
【特許文献2】特開2002−190684(図1及び図3)
【特許文献3】特開2000−216582(図1)
【特許文献4】特開2006−166126(図1及び図6)
【特許文献5】特開平8‐88303(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1乃至4は、いずれもチューナ用電子回路における電磁波遮蔽と放熱の両立について一定の解決を与えるものである。しかし、電子機器に対する軽量薄型化の要求は近年一層強まってきており、これら文献において開示された技術ではその要求に応えられなくなってきている。図3を用いて説明した従来技術の例では、チューナ用集積回路とケース蓋との間に無駄な隙間0322がある。また、筐体の上蓋0314自体の厚みも薄型化の障害となっている。特許文献1、2又は4で提案されている技術はいずれもこれらの問題点を解決できていない。特許文献3にはこのような隙間はないものの、電磁波の影響の少ない集積回路についてのものであり、一般のチューナ用電子回路について解決を与えるものではない。特許文献5もこれらの問題に解決を与えるものではない。
【0010】
また、図3の放熱板は通常放熱板からベース基板に下ろした足をビス止めするなどして固定されると述べたが、そのビス止め部分を放熱板及びベース基板上で確保するためにこれらの部品が必要以上に大きくなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者はかかる課題に鑑み、近年における軽量薄型化の要求を満たし、同時に電磁波遮蔽と放熱の両立をも適えることのできる技術を完成させたものである。
【0012】
請求項1に記載の第1発明は、ベース基板と、ベース基板上に配置される箱型電子部品と、放熱板と、からなる電子機器であって、前記箱型電子部品は、電子回路が構成された回路基板と、回路基板を収納する箱型の筐体と、回路基板の一面と対向する筐体の面に設けられる窓と、前記一面に配置された電子部品上に配置される放熱シートと、を有し、前記放熱板は、前記窓を介して前記放熱シートに圧着されている電子機器、に関する。
【0013】
請求項2に記載の第2発明は、前記放熱板は、前記ベース基板に対して固定され、前記ベース基板上に配置される他の電子部品をも覆い、他の電子部品から発生する熱をも放熱するように構成されている請求項1に記載の電子機器、に関する。
【0014】
請求項3に記載の第3発明は、前記放熱板は、前記ベース基板から前記箱型電子部品を貫通するリベットにて前記ベース基板に対して固定されている請求項2に記載の電子機器、に関する。
【0015】
請求項4に記載の第4発明は、前記箱型電子部品内の前記回路基板に配置される電子部品の発熱量は、窓側に配置される電子部品の発熱総量がこの裏側に配置される電子部品の発熱総量よりも大きい請求項1から3のいずれか一に記載の電子機器、に関する。
【発明の効果】
【0016】
第1発明によれば、第一に、箱型電子部品を実装する電子機器を、近似の厳しい軽量薄型化のニーズに対応させることが可能となる。第二に、従来技術の箱型電子部品がケースを介して間接的に放熱板に熱を伝えていたのに対し、第1発明の箱型電子部品は放熱が必要な部品から放熱シートを介して直接放熱板に熱を伝えるため、放熱効率が大幅に改善されている。第三に、回路基板の上部を全て開口させた場合にはケース上蓋を完全に廃止することができ、部品数の削減と作業工程の簡略化が実現できる。
【0017】
第2発明によれば、箱型電子部品内部の部品のみならずベース基板上のその他の電子部品の放熱も一つの放熱板で同時に行うことが可能な第1発明の電子機器が提供される。
【0018】
第3発明によれば、放熱板が簡易に安定的に固定された第2発明の電子機器が提供される。
【0019】
第4発明によれば、発熱量の多い電子部品を放熱板側に配置して放熱効率を確保しつつも小さい回路基板内に多数の電子部品を収納したコンパクトな第1乃至第3発明の電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】チューナ用電子部品をベース基板に設置する場合の従来技術の典型例の図。
【図2】従来技術により放熱板がチューナ用電子部品に圧着された状態の図。
【図3】図2の箱型電子部品の断面図。
【図4】実施例1において、箱型電子部品上に放熱板を設置する手順を表す図。
【図5】実施例1において放熱板がチューナ用電子部品に圧着された状態の図。
【図6】実施例1の電子機器の箱型電子部品辺りの断面図。
【図7】実施例2の電子機器の概略を表す図。
【図8】実施例2の電子機器で放熱板が設置された状態を表す図。
【図9】実施例3の電子機器の概略を表す図。
【図10】実施例3の電子機器において、放熱板がリベットにより固定された状態を表す図。
【図11】実施例3の電子装置に設置されたリベットを中心とした断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施例1は第1発明に関する。以下同様に、実施例n(nは2から4の整数)は第n発明に関する。
【実施例1】
【0022】
<実施例1の概念>
図 4は、実施例1において、箱型電子部品上に放熱板を設置する手順を表す図である。図中の矢印は、部品の設置方向を示すものである。この点は、本明細書中の他の図面においても同様である。ベース基板0400の上に箱型電子部品0410が設置されている。箱型電子部品の筐体0413の内部には従来技術の場合と同様、回路基板0412が収納されている。回路基板上にはチューナ用集積回路0411を含む電子部品により電子回路が構成されている。しかし、従来技術の場合とは異なり放熱板設置前の状態では箱型電子部品は回路基板上部の全部又は一部が開口している(この開口部分0417を以下「窓」と呼ぶこととする)。この窓を介して、チューナ用集積回路0411の上部に放熱シート0415が圧着され、さらにその上に放熱板0416が圧着される。なお、実施例1の箱型電子部品の筐体は従来技術のものよりも高さが低く形成されている。これは、蓋と回路基板との間の空間を必要としないこと、及び、蓋そのものが不要であることが理由である。
【0023】
図 5の上図は、実施例1において放熱板がチューナ用電子部品に圧着された状態の図である。ベース基板0500上に箱型電子部品0510が設置されている。箱型電子部品のチューナ用集積回路の上に直接、放熱シート(図には描かれていない)を挟んで放熱板0516が圧着されている。
【0024】
下図は、比較のために図2の従来技術の例を再掲したものである。実施例1の電子機器は従来のものよりも大幅に薄型化が実現されている。これは、既に述べたとおり、実施例1の箱型電子部品では、蓋と回路基板との間の空間が不要であること、及び、蓋そのものが不要であることが理由となっている。
【0025】
図 6の左図は、実施例1の電子機器の箱型電子部品辺りの断面図である。左図において、図3で説明した従来技術との相違点を述べると、箱型電子部品0610の筐体0613上部は開口しており、回路基板0612上面に配置されたチューナ用集積回路0611に直接放熱シート0615が載置され、それらの上には放熱板0616が載置されている。右図は比較のために図3で説明した従来技術の場合の断面図を再掲したものである。実施例1の電子機器では、筐体の蓋、及び、蓋とチューナ用集積回路の間の空間の厚みがないために、従来技術の場合と比較して薄型化が実現できていることが分かる。
【0026】
<実施例1の構成>
実施例1の電子機器の構成を再び図4を用いて説明する。実施例1の電子機器は、ベース基板0400と、箱型電子部品0410と、放熱板0416とを有する。箱型電子部品は、回路基板0412と、筐体0413と、窓0417と、放熱シート0415とを有する。以下、それぞれの構成について説明する。
【0027】
「ベース基板」は箱型電子部品を含む多数の電子部品を搭載するための電子基板であって、それら電子部品により構成される様々な電子回路を実装するものである。箱型電子部品により実現される音声又は映像の受信回路の他に、例えば、映像信号を生成する描画用電子回路や、スピーカを鳴らすための増幅回路等がこのベース基板上で構成される。
【0028】
「箱型電子部品」は、回路基板が箱型のケースに収められた電子部品である。既に述べたとおり、チューナ用電子部品はその典型であり、ケースに収める目的は内部の回路基板を電磁波等の影響から遮蔽したり、振動に弱い部品を衝撃等から守ったりするためである。
【0029】
「放熱板」は、電子部品等から発生した熱を放熱するための板である。図4等に描かれた文字通り板状のもののほか、放熱のための面積を増やすために表面にひだが多数形成されたものや、板が折り曲げられたものや、軽量薄型化という目的からは少し外れるが、送風ファンや水冷用のシンクもこれに含まれる。放熱板の素材は、鉄やアルミなどの金属とするのが一般的であるが、熱伝導特性の高い他の素材でも構わない。
【0030】
「回路基板」は箱型電子部品内部でチューナ用電子回路等の電子回路を構成するための小型の基板である。回路基板は通常平らな板状であり、その一面又は両面に電子部品が配置される。
【0031】
「筐体」は箱型電子部品の外殻となる箱であり、内部に回路基板を収納可能に構成される。図3の筐体は長方形の側面及び底面を有する箱であるが、これに限られない。但し、薄型化という目的にそぐわない形状は好ましくない。筐体を形成する素材は、チューナ用電子部品であれば電磁波遮蔽性が高く軽量なアルミが多用されるが、その他の金属や導電性の樹脂などでもよい。
【0032】
「窓」は、筐体に形成された開口部であり、チューナ用集積回路等の電子部品上に放熱シート及び放熱板を圧着させるためのスペースを設けるためのものである。図4の例では、回路基板全体に対して開口しているが、放熱が必要な電子部品に放熱シート等を圧着させるという目的からすれば、回路基板上部全体が露出している必要はない。放熱が必要な電子部品の上部だけを開口したような形状の窓でもよい。そうすることにより電磁波の遮蔽性は若干高くなる。その場合には、開口部以外の部分はいわば穴のあいた蓋のようなものであり、蓋をなくしたことによる薄型化の効果が薄れるようにも思える。しかし、放熱が必要な電子部品以外は小型であることが多く、そのような蓋を設けたとしても大型の電子部品を避けて設置が可能であり、薄型化の障害になることは少ない。
【0033】
「放熱シート」は放熱が必要な電子部品と放熱板の間に圧着して設置する。放熱板を電子部品の上に直接載置しない理由はいくつかある。第一に、硬いもの同士を密着させても完全に密着することはなく、電子部品と放熱板との間で熱伝導が効率よく行われにくい。しかし、両者の間に柔らかい素材を挟めば両者を間接的に密着させて熱伝導性を高めることができる。第二に、放熱板が受けた衝撃が電子部品に伝わって電子部品を毀損させる事態を避けなければならないが、両者の間に柔らかい素材を挟めば放熱板が受けた衝撃が直接電子部品に伝わることがなく、電子部品を衝撃から守ることができる。第三に、高さの異なる複数の電子部品の放熱をひとつの放熱板で行おうとする場合には、その高さの違いを放熱シートの厚さで調整することができる。
【0034】
放熱シートの素材は柔らかく、粘着性があり、かつ、熱伝導性の高いものが好適である。一般的にはシリコンが多用される。その他、アクリルやグラファイトなどを使用することができる。
【0035】
放熱板は、前記窓を介して前記放熱シートに圧着される。放熱板を圧着して固定する方法はさまざまである。放熱シート自体の粘着力で固定させる方法もあれば、放熱シートと放熱板及び電子回路の圧着面に接着剤を利用する方法もある。接着剤を利用する場合には、接着剤自体の熱伝導性に注意を要する。また、放熱板からベース基板上に足をおろしてビス止めする方法もある。
【0036】
放熱板と箱型電子部品の筐体との間には若干の隙間を残すのがよい。この隙間がないと、放熱板、放熱シート及びチューナ用集積回路の圧着が十分行われないおそれがあるからである。この隙間があっても電磁波の遮蔽性は従来技術の場合と比べてほとんど遜色がない。なぜなら、筐体の上部は電磁波遮蔽性のある放熱板で覆われており、隙間から侵入可能な電磁波は限られているからである。
【0037】
<実施例1の効果>
実施例1によれば、第一に、箱型電子部品を実装する電子機器を、近似の厳しい軽量薄型化のニーズに対応させることが可能となる。第二に、従来技術の箱型電子部品がケースを介して間接的に放熱板に熱を伝えていたのに対し、実施例1の箱型電子部品は放熱が必要な部品から放熱シートを介して直接放熱板に熱を伝えるため、放熱効率が大幅に改善されている。第三に、回路基板の上部を全て開口させた場合にはケース上蓋を完全に廃止することができ、部品数の削減と作業工程の簡略化が実現できる。
【実施例2】
【0038】
<実施例2の概念>
図7は、実施例2の電子機器の概略を表す図である。実施例1の電子機器では、放熱板は箱型電子部品内部の電子部品のみを冷却するものであった。実施例2の電子機器は、放熱板は箱型電子部品内部の電子部品だけでなく、ベース基板上にあって放熱が必要な他の電子部品の放熱も併せて行うことを特徴とする。図 8は、実施例2の電子機器で放熱板が設置された状態を表す図である。
【0039】
<実施例2の構成>
実施例2の電子機器は、その放熱板が、前記ベース基板に対して固定され、前記ベース基板上に配置される他の電子部品をも覆い、他の電子部品から発生する熱をも放熱するように構成される。図7を再び用いて説明する。ベース基板0700の上には箱型電子部品0710が設置されている。箱型電子部品内部の回路基板0712上には熱を発生するチューナ用集積回路0711が2個設置されている。一方、ベース基板上にも熱を発生する集積回路0701が設置されている。これら集積回路の上部には放熱シート0715がそれぞれ圧着され、さらにその上には放熱板0716が圧着載置される。
【0040】
放熱板は放熱が必要な電子部品を全て覆い隠すような形状に形成される。そして、そのようなものであれば、図のような矩形である必要はなく、放熱を行うに十分な大きさを持てばよい。放熱板のその他の特性は実施例1のそれと同様である。
【0041】
<実施例2の効果>
実施例2によれば、箱型電子部品内部の部品のみならずベース基板上のその他の電子部品の放熱も一つの放熱板で同時に行うことが可能な電子機器が提供される。
【実施例3】
【0042】
<実施例3の概念>
図9は、実施例3の電子機器の概略を表す図である。実施例1又は2の電子機器では、放熱板は放熱シートの粘着力や、接着剤や、ビス止めなどで固定するものであった。実施例3の電子機器は、リベットを用いてより簡単に放熱板を固定するものである。図 10は、実施例3の電子機器において、放熱板がリベットにより固定された状態を表す図である。
【0043】
<実施例3の構成>
実施例3の電子機器は、その放熱板が、前記ベース基板から前記箱型電子部品を貫通するリベットにて前記ベース基板に対して固定される実施例2の電子機器である。図9を用いて具体的に説明する。ベース基板0900上には箱型電子部品0910が設置されており、箱型電子部品内部には回路基板0912が収納されている。回路基板には穴0918が開けられており、図には描かれていないが、この穴はその下の筐体及びベース基板をも貫通するように開けられている。一方、放熱板0916にも穴0919が開けられており、これらの穴を貫通するようにリベット0920が取り付けられる。リベットは、前記穴の直径よりもやや小さい直径を有する「軸」と、その軸の一端に形成された前記穴よりも十分大きい直径を有する「頭」とからなる。リベットはこれらの穴に通された後、反対側(図ではベース基板の裏側)でかしめるなどして、放熱板とベース基板とを挟むように固定する。
【0044】
図 11は、実施例3の電子装置に設置されたリベットを中心とした断面図である。ベース基板1100上に箱型電子部品1110が設置されている。箱型電子部品の筐体1113内部には回路基板1112が収納され、回路基板上には、チューナ用集積回路1111及び1121がその上下両面に配置されている。回路基板上側のチューナ用集積回路の上には放熱シート1115が載置され、それらの上には放熱板1116が載置されている。放熱板、回路基板、筐体及びベース基板には穴が開けられており、リベット1120がそれらの穴に通されたのちにかしめられ、これにより、放熱板、回路基板、筐体及びベース基板はリベットの二つの頭に挟まれるように圧着固定されている。
【0045】
リベットは、複数用いてもよいが、図9の例では1個で十分である。すなわち、放熱板は放熱シート0915を挟んで電子部品0901及び0911によっても支持されているから、リベットにより1か所を締め付ければ全体として安定的に固定される。
【0046】
リベットの頭の形状は各種あり、半球形の丸リベット、平たい円錐形の皿リベット、円盤状の平リベットなどがある。薄型化という目的を徹底するならば、放熱板の穴にはリベットの頭が没するような溝を形成するとよい。図11は、そのような溝が放熱板及びベース基板に形成された一例を示している。
【0047】
リベットの材質はアルミニウムや真ちゅうなどの金属でもよいが、磁性の小さいプラスチックが好適である。プラスチックの場合には片側を熱で溶かしたり、キャップを係止するなどして固定する。
【0048】
<実施例3の効果>
実施例3によれば、放熱板が簡易に安定的に固定された実施例2の電子機器が提供される。
【実施例4】
【0049】
<実施例4の概念>
図11を再び用いて、実施例4の概略を説明する。既に述べたとおり、箱型電子部品内部の回路基板は、小さい面積を有効に利用して多数の電子部品を配置するためにその両面が使用されることが多い。実施例4の電子機器は、回路基板の窓側の面に発熱量の大きい電子部品を配置することにより、電子部品の放熱を適切に行うことができる電子機器である。すなわち、回路基板1112上側の電子部品1111は発熱量が相対的に大きい電子部品であり、下側の電子部品1121は発熱量が相対的に小さい電子部品である。
【0050】
<実施例4の構成>
実施例4の電子機器は、前記箱型電子部品内の前記回路基板に配置される電子部品の発熱量は、窓側に配置される電子部品の発熱総量がこの裏側に配置される電子部品の発熱総量よりも大きい電子機器である。どの電子部品がより多くの熱を発生するかは回路特性から計算可能であり、また、温度測定も可能であるから、どの電子部品を窓側に配置するかを決定するのは容易である。問題は小さい回路基板内での配線であるが、これは基板内部を多層構造として配線を基板内において立体的に形成することで実現可能である。
【0051】
<実施例4の効果>
実施例4によれば、発熱量の多い電子部品を放熱板側に配置して放熱効率を確保しつつも小さい回路基板内に多数の電子部品を収納したコンパクトな電子機器が提供される。
【符号の説明】
【0052】
0400 ベース基板
0410 箱型電子部品
0411 チューナ用集積回路
0412 回路基板
0413 筐体
0414 蓋
0415 放熱シート
0416 放熱板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、
ベース基板上に配置される箱型電子部品と、
放熱板と、
からなる電子機器であって、
前記箱型電子部品は、
電子回路が構成された回路基板と、
回路基板を収納する箱型の筐体と、
回路基板の一面と対向する筐体の面に設けられる窓と、
前記一面に配置された電子部品上に配置される放熱シートと、
を有し、
前記放熱板は、前記窓を介して前記放熱シートに圧着されている電子機器。
【請求項2】
前記放熱板は、前記ベース基板に対して固定され、前記ベース基板上に配置される他の電子部品をも覆い、他の電子部品から発生する熱をも放熱するように構成されている請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記放熱板は、前記ベース基板から前記箱型電子部品を貫通するリベットにて前記ベース基板に対して固定されている請求項2に記載の電子機器
【請求項4】
前記箱型電子部品内の前記回路基板に配置される電子部品の発熱量は、窓側に配置される電子部品の発熱総量がこの裏側に配置される電子部品の発熱総量よりも大きい請求項1から3のいずれか一に記載の電子機器。
【請求項1】
ベース基板と、
ベース基板上に配置される箱型電子部品と、
放熱板と、
からなる電子機器であって、
前記箱型電子部品は、
電子回路が構成された回路基板と、
回路基板を収納する箱型の筐体と、
回路基板の一面と対向する筐体の面に設けられる窓と、
前記一面に配置された電子部品上に配置される放熱シートと、
を有し、
前記放熱板は、前記窓を介して前記放熱シートに圧着されている電子機器。
【請求項2】
前記放熱板は、前記ベース基板に対して固定され、前記ベース基板上に配置される他の電子部品をも覆い、他の電子部品から発生する熱をも放熱するように構成されている請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記放熱板は、前記ベース基板から前記箱型電子部品を貫通するリベットにて前記ベース基板に対して固定されている請求項2に記載の電子機器
【請求項4】
前記箱型電子部品内の前記回路基板に配置される電子部品の発熱量は、窓側に配置される電子部品の発熱総量がこの裏側に配置される電子部品の発熱総量よりも大きい請求項1から3のいずれか一に記載の電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−238888(P2011−238888A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111523(P2010−111523)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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