説明

箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス

【課題】箱尺を用いた測量の安全性確保および測定誤差低減を図ることができる箱尺用ミラー・巻尺取付ボックスを提供する。
【解決手段】箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス10は、箱尺1の上端部を挿入するための箱尺挿入孔11aが底面に形成されるとともに巻尺3の補強部材3aを前面から裏面まで通すための巻尺通し溝11bが上面に形成された直方体形状の本体11と、本体11の裏面に取り付けられた、かつ、補強部材3aが本体11の巻尺通し溝11bを通された巻尺3を取り付けるための巻尺取付手段として機能する巻尺取付部材12と、本体11の前面に取り付けられた、かつ、ミラー2を取付角度調整可能に本体11に取り付けるためのミラー取付部材13とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測量用の箱尺に測距儀用のミラーおよび距離測定用の巻尺を取り付けるのに好適な箱尺用ミラー・巻尺取付ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、簡易な鉄塔敷地平面・縦断図を作成するときの現地での測量は、箱尺側作業員が箱尺(スタッフ)を地面に対して鉛直にかつ測量側作業員(測定者)に正対して立てるとともに距離測定用の巻尺のゼロ合せをし、測量側作業員がスコープで箱尺の目盛を読み取って高低測量を行うとともに巻尺を引っ張って距離測定を行っている。
【0003】
なお、下記の特許文献1には、箱尺にコの字形の取付台をネジで固定するとともに、ミラーを取り付けるアームをこの取付台にネジで固定するようにした、横断測量用の測距儀用ミラー台が開示されている。
【0004】
また、本出願人は、下記の特許文献2において、作業者の労力を軽減しつつ箱尺の水平状態を維持することを可能にするために、箱尺に取り付けるための保持具本体と、箱尺の長さ方向の軸に対する角度を変更可能な状態において保持具本体に放射状に吊り下げられている複数の支持脚とを有し、少なくとも3本の支持脚によって箱尺の水平状態を確保した状態において箱尺を支持するようにした箱尺保持具を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−12911号公報
【特許文献2】特開2008−175535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、箱尺側作業員は箱尺および巻尺の両方を管理して測量作業を行っているが、急斜面での測量作業のように箱尺側作業員が不安定な体勢にある場合には、巻尺が測量側作業員によって引っ張られるために安全性が確保されなかったり、箱尺を地面に対して鉛直にかつ測量側作業員に正対して立てることができずに測定誤差が生じたりするという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、箱尺を用いた測量の安全性確保および測定誤差低減を図ることができる箱尺用ミラー・巻尺取付ボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の箱尺用のミラー・巻尺取付ボックスは、測量用の箱尺(1)に測距儀用のミラー(2)および距離測定用の巻尺(3)を取り付けるための箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス(10)であって、前記箱尺の上端部を挿入するための箱尺挿入孔(11a)が底面に形成されるとともに前記巻尺の補強部材(3a)を前面から裏面まで通すための巻尺通し溝(11b)が上面に形成された直方体形状の本体(11)と、該本体の裏面に取り付けられた、かつ、前記補強部材が前記本体の前記巻尺通し溝を通された前記巻尺を取り付けるための巻尺取付手段(12;21)と、前記本体の前面に取り付けられた、かつ、前記ミラーを取付角度調整可能に該本体に取り付けるためのミラー取付手段(13)とを具備することを特徴とする。
ここで、前記巻尺取付手段が、L型形状の巻尺取付部材(12)であり、該巻尺取付部材が、底板と、該底板の裏面側の上面に該底板と一体的に設けられた側板とからなり、前記巻尺取付部材の前記底板の前面が、前記本体の裏面に固定されており、前記巻尺取付部材の前記側板の上面に、複数個の他の巻尺通し溝(12b)が該巻尺取付部材の長手方向に沿って形成されていてもよい。
前記巻尺取付手段が、クリップ(21)であってもよい。
前記本体の前記箱尺挿入孔に挿入された前記箱尺の上端部を該本体の側面側、前面側および裏面側からネジ込み固定するための第1乃至第3の固定ネジ(141〜143)をさらに具備し、前記本体の側面、前面および裏面に前記第1乃至第3の固定ネジと螺合するネジ溝がそれぞれ形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の箱尺用ミラー・巻尺取付ボックスは、測量用の箱尺に測距儀用のミラーおよび距離測定用の巻尺を容易に取り付けることができるため、箱尺側作業員が不安定な体勢にある場合でも箱尺を用いた測量の安全性確保および測定誤差低減を図ることができるとともに、測量作業の時間短縮を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例による箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス10の構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は背面図である。
【図2】図1に示した箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス10の使用方法について説明するための図であり、(a)は箱尺1の上端部に箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス10を取り付けた状態を示す正面図であり、(b)は箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス10に巻尺3を取り付けた状態を示す上面図である。
【図3】図2に示した巻尺3に取り付けられている補強部材3aについて説明するための図である。
【図4】図1に示した巻尺取付部材12の代わりに用いるクリップ21を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の目的を、巻尺の補強部材を本体の前面から裏面まで本体の巻尺通し溝に通したのちに巻尺をゼロ合せするように巻尺取付部材の巻尺通し溝を利用して巻尺取付部材の側板に必要回数だけ巻いて、巻尺を巻尺取付部材に取り付けることにより実現した。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の箱尺用ミラー・巻尺取付ボックスの実施例について図面を参照して説明する。
本発明の箱尺用ミラー・巻尺取付ボックスは、図3に示すように距離測定用の巻尺3の端部に長さ10〜15cm程度の補強部材3aが取り付けられていることに着目して、補強部材3aを利用して巻尺3を箱尺用ミラー・巻尺取付ボックスに取り付けることを特徴とする。
【0013】
そのため、本発明の一実施例による箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス10は、図1(a)〜(c)に示すように、本体11と、巻尺取付部材12と、ミラー取付部材13と、第1乃至第3の固定ネジ141〜143とを具備する。
【0014】
ここで、本体11は、横7cm程度、縦5cm程度および奥行き3cm程度の直方体形状をしている。
本体11の底面には、箱尺1の上端部を挿入するための箱尺挿入孔11aが形成されている(図2(a)参照)。
本体11の上面の図示右側端部には、巻尺3の補強部材3aを本体11の前面から裏面まで通すための巻尺通し溝11bが形成されている(図2(b)参照)。
【0015】
巻尺取付部材12はL型形状(側面から見たときの形状がL型)をしている。すなわち、巻尺取付部材12は、底板と、底板の裏面側の上面に底板と一体的に設けられた側板とからなる。
巻尺取付部材12の底板の前面は、本体11の裏面の巻尺通し溝11bよりも左側に固定されており、巻尺取付部材12の側板の上面には、4個の巻尺通し溝12bが巻尺取付部材12の長手方向(すなわち、本体11の長手方向(横方向))に沿って等間隔に形成されている(図1(a),(c)および図2(b)参照)。
【0016】
ミラー取付部材13は、測距儀用のミラー2の右端部および左端部を取付角度調整可能に(すなわち、地面に対するミラー面の角度を調整可能に)支持して、ミラー2を本体11に取り付けるためのものである。
【0017】
第1乃至第3の固定ネジ141〜143は、本体11の箱尺挿入孔11aに挿入された箱尺1の上端部を本体11の左側面側、前面側および裏面側からネジ(二枚羽)込み固定するためのものである(図2(b)参照)。
そのため、本体11の左側面には、第1の固定ネジ141と螺合するネジ溝が形成されており、本体11の前面には、第2の固定ネジ142と螺合するネジ溝が形成されており、本体11の裏面には、第3の固定ネジ143と螺合するネジ溝が形成されている。
【0018】
次に、箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス10の使用方法について、図2(a),(b)を参照して説明する。
【0019】
まず、箱尺側作業員は、箱尺1の上端部を本体11の箱尺挿入孔11aに挿入したのち、第1乃至第3の固定ネジ141〜143で本体11の左側面側、前面側および裏面側から箱尺1の上端部をネジ込み固定することによって、図2(a)に示すように箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス10を箱尺1に取り付ける。
【0020】
その後、箱尺側作業員は、巻尺3を縦にして(すなわち、目盛が横方向から見えるようにして)、図2(b)に示すように巻尺3の補強部材3aを本体11の前面から裏面に向けて本体11の巻尺通し溝11bに通したのちに本体11の右側面から左側面に向けて本体11の裏面と巻尺取付部材12の側板との間を通す。続いて、箱尺側作業員は、巻尺3の目盛“0”が本体11の表面上にくるように(すなわち、巻尺3をゼロ合せするように)、巻尺取付部材12の巻尺通し溝12bを利用して巻尺3の補強部材3aを巻尺取付部材12の側板に必要回数だけ巻いて、巻尺3を巻尺取付部材12に取り付ける。
なお、図2(b)は、巻尺取付部材12の左端の巻尺通し溝12bを利用して巻尺3の補強部材3aを巻尺取付部材12の側板に1回だけ巻いた状態を示す。
【0021】
その後、箱尺側作業員は、箱尺1を地面に対して鉛直に立てたのち、ミラー2の取付角度調整を行う。
【0022】
以上の説明では、巻尺3を巻尺取付部材12に取り付けたが、巻尺取付部材12の代わりに図4に示すようなクリップ21を本体11の裏面に取り付けて、巻尺3の補強部材3aを本体11の前面から裏面に向けて本体11の巻尺通し溝11bに通したのち、巻尺3の目盛“0”が本体11の表面上にくるように巻尺3の補強部材3aをクリップ21で挟んで、巻尺3を巻尺取付部材12に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 箱尺
2 ミラー
3 巻尺
3a 補強部材
10 箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス
11 本体
11a 箱尺挿入孔
11b 巻尺通し溝
12 巻尺取付部材
12b 巻尺通し溝
13 ミラー取付部材
141〜143 第1乃至第3の固定ネジ
21 クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測量用の箱尺(1)に測距儀用のミラー(2)および距離測定用の巻尺(3)を取り付けるための箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス(10)であって、
前記箱尺の上端部を挿入するための箱尺挿入孔(11a)が底面に形成されるとともに前記巻尺の補強部材(3a)を前面から裏面まで通すための巻尺通し溝(11b)が上面に形成された直方体形状の本体(11)と、
該本体の裏面に取り付けられた、かつ、前記補強部材が前記本体の前記巻尺通し溝を通された前記巻尺を取り付けるための巻尺取付手段(12;21)と、
前記本体の前面に取り付けられた、かつ、前記ミラーを取付角度調整可能に該本体に取り付けるためのミラー取付手段(13)と、
を具備することを特徴とする、箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス。
【請求項2】
前記巻尺取付手段が、L型形状の巻尺取付部材(12)であり、
該巻尺取付部材が、底板と、該底板の裏面側の上面に該底板と一体的に設けられた側板とからなり、
前記巻尺取付部材の前記底板の前面が、前記本体の裏面に固定されており、
前記巻尺取付部材の前記側板の上面に、複数個の他の巻尺通し溝(12b)が該巻尺取付部材の長手方向に沿って形成されている、
ことを特徴とする、請求項1記載の箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス。
【請求項3】
前記巻尺取付手段が、クリップ(21)であることを特徴とする、請求項1記載の箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス。
【請求項4】
前記本体の前記箱尺挿入孔に挿入された前記箱尺の上端部を該本体の側面側、前面側および裏面側からネジ込み固定するための第1乃至第3の固定ネジ(141〜143)をさらに具備し、
前記本体の側面、前面および裏面に前記第1乃至第3の固定ネジと螺合するネジ溝がそれぞれ形成されている、
ことを特徴とする、請求項1乃至3いずれかに記載の箱尺用ミラー・巻尺取付ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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