説明

箸及び箸の洗浄装置

【課題】本発明は、洗浄水中で直立状態を維持して十分に洗浄水に浸すことができる箸、及び、この箸を一度に大量に洗浄しても十分な洗浄効果を得られる洗浄方法を提供するものである。
【解決手段】本発明は、箸の持ち手側の端の内部に重しが埋め込み、この箸を洗浄槽に投入し、底部で振動を発生させた洗浄槽の中で箸を振動させることで汚れを分離させ、また、洗浄槽内で回転水流を起こして水流による洗浄力を高めた箸の洗浄方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水中で箸の先端が鉛直上方向を向いたまま直立した状態を維持することができる箸と、この箸を直立状態のまま洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、学校給食等で使用された箸の洗浄は、一度に大量の洗浄水中に箸を一定時間浸しておき、箸に付着した油汚れ等をふやかしてから、手もみ洗いや機械洗浄が行われていた。
しかし、学校給食等で使用されている箸は、軽くて洗浄水の水面に横たわった状態で浮いてしまうか、重くて洗浄槽の底に横たわった状態で沈んでしまうものが多かった。
軽くて洗浄水の水面に横たわった状態で浮いてしまう箸は、洗浄水中で十分にふやかすことができないという問題がある。
また、特に、気泡を発生させて箸を洗浄する機械洗浄による場合、洗浄水中で横たわった状態で浮いたり沈んだりすると、箸が重なり合ってしまうため、箸全体に気泡が行き渡らず、洗浄むらが生じてしまい、効果的に洗浄することができないという問題があった。
このようなことから、特開2010−187968号公報には、箸の内部に空洞部分を設けることで、洗浄水中で起立した状態で浮くことが出来る中空箸が開示されている。
前記の中空箸を洗浄水中に浸した際、箸が起立した状態で洗浄水中で浮くため、上記問題点を解消できる。
また、一度に大量の箸を洗浄水中に投入して洗浄することもできる。
特に、気泡を発生させて洗浄する超音波洗浄による場合は、箸が洗浄水中で起立した状態で浮いていることで箸同士に重なり合わずに適度な隙間が生じることから、気泡が箸全体に行き渡り、箸を効果的に洗浄することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−187968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記の中空箸は、洗浄水中で浮いてしまうため、洗浄水中に浸っていない部分の汚れは十分にふやけることはない。
そうすると、その部分の汚れは除去されないという問題がある。
また、前記の中空箸は、洗浄水中で起立した状態で浮かせるために、中空箸の内部に空洞部分を設けているが、中空箸の内部に空洞部分を設けた程度では十分な浮力は得られないため、洗浄水中で起立した状態で浮くという効果については、実現可能性の点から疑わしい。
仮に、洗浄水中で起立した状態で浮いたとしても、洗浄水中に大量に箸が投入されれば、単に、起立しているというだけでは洗浄効果は減少してしまう。
また、内部に空洞部分を設けた構造であるがゆえに、箸自体の強度が脆くなり、長期間の使用に耐えられない。
そこで、本発明は、これらの課題を解決するため、洗浄水中で直立状態を維持して十分に洗浄水に浸すことができる箸、及び、この箸を直立状態のまま効果的に洗浄することができる洗浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明者は、次の技術的手段を講じている。
【0006】
請求項1に係る発明は、箸の持ち手側の端部に、箸を洗浄水中に直立状態のまま完全に沈めるための重しが取り付けられていることを特徴とする箸である。
【0007】
本発明は、箸の持ち手側の端部に重しが取り付けられていることで、直立状態を維持したまま洗浄水中に完全に沈む箸である。
箸が洗浄水中に完全に沈んで箸に付着した汚れがふやけることで、箸に付着した汚れが落ちやすくなる。
箸の持ち手側の端部に取り付ける重しは、金属製のものを箸の持ち手側の端部の外周に巻きつけたり被せても良いし、箸の持ち手部分のみを先端側の部材とは異なる材質からなる部材として先端側に連結させた構造にしても良い。
また、重しは、箸の持ち手側の端部に埋め込むこともできる。
例えば、端部の中芯部分に埋め込んだり、持ち手側の端部が細い場合は、箸の軸方向の真ん中辺りまで箸の軸方向に沿って重しを埋め込んでも良い。
いずれにしても、箸の持ち手側の端部が鉛直下方向に向き、箸の先細側が鉛直上方向に向いた状態で、洗浄水中で箸が直立状態を維持できればよく、重しの重量及び埋め込む範囲は適宜選択できる。
【0008】
請求項2に係る発明は、箸の持ち手側の端の中芯部分に、箸を洗浄水中に直立状態のまま完全に沈めるための重しが埋め込まれていることを特徴とする箸である。
【0009】
本発明は、重しが箸の持ち手側の端の内部に埋め込まれたものである。
例えば、端部の中芯部分に埋め込んだり、持ち手側の端部が細い場合は、箸の軸方向の真ん中辺りまで箸の軸方向に沿って重しを埋め込んでも良い。
いずれにしても、箸の持ち手側の端部が鉛直下方向に向き、箸の先細側が鉛直上方向に向いた状態で、洗浄水中で箸が直立状態を維持できればよく、重しの重量及び埋め込む範囲は適宜選択できる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の箸を洗浄する洗浄装置において、洗浄水を溜めて箸を洗浄する洗浄槽の底部に、振動発生手段が設けられていることを特徴とする箸の洗浄装置である。
【0011】
本発明は、直立状態を維持したまま洗浄水中に完全に沈む箸を洗浄する洗浄装置において、洗浄槽の底部に振動発生手段を設けて、洗浄槽に沈んでいる箸を振動させて洗浄する洗浄装置である。
請求項1または請求項2に記載の箸は、洗浄槽の底部に箸の持ち手側の端部が接した状態で洗浄水中に完全に沈んでいるため、洗浄槽の底部で振動を発生させることで、箸が上下に振動する。
これにより、箸に付着した汚れが分離して洗浄効果が高まり、洗浄時間の短縮が期待できる。
振動発生手段は、例えば、洗浄槽の底部にバイブレーターを取り付け、バイブレーターが振動することで、洗浄槽自体を振動させたり、洗浄槽内の底部に振動板を設けて、振動板自体を振動させても良い。
振動板自体を振動させる方法として、例えば、振動板の下からシャフトの上下運動を利用して振動板が上下に振動するようにしても良いし、振動板の裏面にバイブレーターを取り付け、バイブレーターが振動することで振動板を振動させても良い。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の振動発生手段は、洗浄槽の底部の裏面側にバイブレーターが取り付けられていることを特徴とする箸の洗浄装置である。
【0013】
本発明は、バイブレーターの振動により、洗浄槽に沈んでいる箸を上下に振動させるものである。
これにより、箸に付着した汚れが分離して洗浄効果が高まり、洗浄時間の短縮が期待できる。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項3に記載の振動発生手段は、洗浄槽内の底面に上下に振動する振動板が設けられていることを特徴とする箸の洗浄装置である。
【0015】
本発明は、洗浄槽内の底部に振動板を設けて、振動板自体が振動することで、洗浄槽に沈んでいる箸を上下に振動させるものである。
これにより、箸に付着した汚れが分離して洗浄効果が高まり、洗浄時間の短縮が期待できる。
【0016】
請求項6に係る発明は、洗浄槽内の底面に、孔径3〜5mmの複数の貫通孔が設けられた底板が取り付けられており、洗浄槽内の底面と底板との間に空気を送り込んで底板の貫通孔から洗浄槽内に気泡を発生させることを特徴とする洗浄装置である。
【0017】
本発明は、洗浄槽内で気泡を発生させて箸を洗浄する洗浄装置において、洗浄槽の底面に、孔径3〜5mmの複数の貫通孔が設けられた底板を取り付け、底板と洗浄槽内の底面との間に空気を送り込むことで底板の貫通孔から気泡を発生させるものである。
洗浄槽の側面側から気泡を発生させるのではなく、底板に設けられた貫通孔から鉛直上方向に気泡が発生するため、洗浄槽内にむら無く気泡を発生させて箸を洗浄させることができ、洗浄むらが生じない。
気泡が鉛直上方向に勢い良く上昇するため、箸から汚れを分離させる力が強く、洗浄力が向上する。
これにより、箸に付着した汚れが分離して洗浄効果が高まり、洗浄時間の短縮が期待できる。
【0018】
請求項7に係る発明は、洗浄水を溜めて箸を洗浄する洗浄槽に、洗浄槽の側面付近に設けられ、洗浄槽内に洗浄水を給水する給水口と、洗浄槽内の洗浄水量が一定量を超えた場合に、洗浄水を水面部分の汚れとともに排出するオーバーフロー口と、洗浄槽の底面の中心位置に洗浄槽中の洗浄水を排水する排水口とが設けられ、給水口から洗浄水を給水し、排水口から洗浄水を排水して、洗浄槽内の洗浄水が回転する水流を発生させることを特徴とする箸の洗浄装置である。
【0019】
本発明は、給水口から給水される洗浄水が排水口へ流れるまでの水流を利用して箸を洗浄する装置である。
排水口が洗浄槽の底面の中心位置に設けられることで、洗浄水は回転しながら排水される。
この排水時の回転水流に逆らわないように洗浄水が給水される位置に給水口を設ける。
これにより、洗浄槽内では回転水流が発生する。
箸が洗浄水中で直立した状態であれば、洗浄槽内で回転水流を発生させることで、水流に乗った箸同士が接触する際に汚れが除去される。
排水口から排水された洗浄水は、ポンプ等で吸い上げ、再度給水口から給水する。
これにより、洗浄水を繰り返し利用できる。
また、洗浄水の水面には汚れが浮き上がってくるため、オーバーフロー口から水面部分の汚れとともに洗浄水を排出する。
このようにして、清潔な洗浄水で繰り返し洗浄することができ、洗浄効果が高まり、洗浄時間の短縮が期待できる。
【0020】
請求項8に係る発明は、請求項1または2に記載の箸を、請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の洗浄装置で振動させて洗浄することを特徴とする箸の洗浄方法である。
【0021】
本発明は、請求項1または2に記載の箸を、振動によって洗浄する方法である。
【0022】
請求項9に係る発明は、請求項1または2に記載の箸を、請求項6の洗浄装置で気泡によって洗浄することを特徴とする請求項8に記載の箸の洗浄方法である。
【0023】
本発明は、請求項1または2に記載の箸を、気泡によって洗浄する方法である。
【0024】
請求項10に係る発明は、請求項1または2に記載の箸を、請求項7の洗浄装置で回転水流によって洗浄することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の箸の洗浄方法である。
【0025】
本発明は、請求項1または2に記載の箸を、回転水流によって洗浄する方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明は以下の効果を奏する。
【0027】
1)洗浄水中で完全に沈むことで、箸を十分に洗浄水に浸すことができる。これにより、箸に付着した汚れをふやかすことができ、汚れを完全に除去することができる。
【0028】
2)簡便な構造であるため、大量生産が容易である。
【0029】
3)十分な強度があるため、一度に大量に使用されて過酷な使用環境にある学校給食などでも、長期間の使用に耐え得る。
【0030】
4)箸に直接振動を与えることで、箸に付着した汚れを分離し、洗浄効果を高めることができ、洗浄時間の短縮が期待できる。
【0031】
5)洗浄水に水流を与えることで、より洗浄効果を高めることができ、洗浄時間の短縮が期待できる。
【0032】
6)箸の向きを揃えて回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】箸の持ち手側の端部に重しを埋め込んだ状態を示す概略図である。
【図2】洗浄槽の底部裏面に振動発生手段を備えた洗浄装置の概略断面図である。
【図3】回転水流を発生させた洗浄槽内の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0035】
図1は、箸の持ち手側の端部に重しを埋め込んだ状態を示す概略図である。
箸1の持ち手側の端の内部に鉛2(重し)を埋め込む。
箸の太さに合わせて重しの重量、材質、形状、埋め込み範囲を適宜変更することができる。
【0036】
図2は、洗浄槽の底部裏面に振動発生手段を備えた洗浄装置の概略断面図である。
振動発生手段は、バイブレーター3が組み込まれていて、バイブレーター3の振動によって洗浄槽4の底部が振動し、洗浄槽4内に沈んでいる箸1が上下に振動する。
振動している箸1同士の接触によっても、箸に付着した汚れが除去される。
洗浄槽4の底面の中心位置に洗浄水を排水する排水口5が設けられている。
排水口5から排水された洗浄水は、ポンプ6によって、洗浄槽4の側面付近に設けられた給水口7から洗浄槽4内に給水される。
洗浄槽4内の洗浄水量が一定量を超えた場合は、オーバーフロー口8から水面部分の汚れとともに洗浄水が排出される。
【0037】
図3は、回転水流を発生させた洗浄槽内の概略平面図である。
洗浄水は、洗浄槽4内で回転水流を発生させながら洗浄槽4の底面の中心位置に設けられた排水口5から排水される。
排水口5から排水された洗浄水は、ポンプ6で吸い上げ、回転水流に逆らわないように給水口7から給水される。
洗浄槽4内で発生した回転水流に流されながら箸1同士が接触し、箸1に付着した汚れが除去される。
回転水流に流された箸1が洗浄槽4内を回転することで、より洗浄効果が高まる。
洗浄水の水面には汚れが浮き上がってくるため、オーバーフロー口8から水面部分の汚れとともに洗浄水を排出する。
このようにして、清潔な洗浄水で繰り返し洗浄することができ、洗浄効果が高まり、洗浄時間の短縮が期待できる。
【0038】
洗浄後は、箸1を直立状態のまま回収することで、箸1の向きを揃えて回収することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 箸
2 鉛
3 バイブレーター
4 洗浄槽
5 排水口
6 ポンプ
7 給水口
8 オーバーフロー口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箸の持ち手側の端部に、箸を洗浄水中に直立状態のまま完全に沈めるための重しが取り付けられていることを特徴とする箸。
【請求項2】
箸の持ち手側の端の中芯部分に、箸を洗浄水中に直立状態のまま完全に沈めるための重しが埋め込まれていることを特徴とする箸。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の箸を洗浄する洗浄装置において、洗浄水を溜めて箸を洗浄する洗浄槽の底部に、振動発生手段が設けられていることを特徴とする箸の洗浄装置。
【請求項4】
請求項3に記載の振動発生手段は、洗浄槽の底部の裏面側にバイブレーターが取り付けられていることを特徴とする箸の洗浄装置。
【請求項5】
請求項3に記載の振動発生手段は、洗浄槽内の底面に上下に振動する振動板が設けられていることを特徴とする箸の洗浄装置。
【請求項6】
洗浄槽内の底面に、孔径3〜5mmの複数の貫通孔が設けられた底板が取り付けられており、洗浄槽内の底面と底板との間に空気を送り込んで底板の貫通孔から洗浄槽内に気泡を発生させることを特徴とする洗浄装置。
【請求項7】
洗浄水を溜めて箸を洗浄する洗浄槽に、
洗浄槽の側面付近に設けられ、洗浄槽内に洗浄水を給水する給水口と、
洗浄槽内の洗浄水量が一定量を超えた場合に、洗浄水を水面部分の汚れとともに排出するオーバーフロー口と、
洗浄槽の底面の中心位置に洗浄槽中の洗浄水を排水する排水口と
が設けられ、
給水口から洗浄水を給水し、排水口から洗浄水を排水して、洗浄槽内の洗浄水が回転する水流を発生させる
ことを特徴とする箸の洗浄装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の箸を、請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の洗浄装置で振動させて洗浄することを特徴とする箸の洗浄方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の箸を、請求項6の洗浄装置で気泡によって洗浄することを特徴とする請求項8に記載の箸の洗浄方法。
【請求項10】
請求項1または2に記載の箸を、請求項7の洗浄装置で回転水流によって洗浄することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の箸の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−161393(P2012−161393A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22416(P2011−22416)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(505062271)
【Fターム(参考)】