説明

箸材の製造方法、箸材及び箸製品

【課題】本発明は、前記技術的課題を解決するために開発されたものであり、平板材を切断加工する際の歩留まりを向上し、高級感がありながら安価な箸製品として製品化することができる新規な箸材の製造方法、この製造方法によって製造される箸材及びこの箸材を半製品として製造される箸製品を提供することを目的とする。
【解決手段】蝦夷松の外周側部分の残材を原材とし、この原材を平板材に加工し、得られた平板材を所定のピッチで裁断することにより箸材を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箸材の製造方法、この製造方法によって製造される箸材及びこの箸材を半製品として製造される箸製品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば杉等の原木から柱材や板材が切り出されると、原木の外周縁部が残材として発生する。このような残材を有効利用する手段として、該残材を箸製品に製造するための箸材(半製品)に加工する箸材の製造装置が開発されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
特許文献1に記載の箸材の製造装置は、残材を平板状に加工した平板材を複数条の箸材に切断する垂直切断機構を備える。この垂直切断機構は、所定のピッチ(間隔)で平行に配置された複数の回転刃がモータによって回転駆動される構成を有する。又、各回転刃の外周部には、その全周にわたって鋸刃部が設けられている。
そして、特許文献1に記載の箸材の製造装置によれば、平板材をパレットに載せて搬送しながら、各回転刃の鋸刃部によって所定のピッチで移動方向に沿って切断することにより細長直方体形状の箸材を得る。その後、この細長直方体形状の箸材は先付け加工等の仕上加工が施され、種々の箸製品として製品化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−269908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の箸材の製造装置は、平板材を回転刃の鋸刃部で切削加工することにより箸材を製造していることに起因して、以下の点において問題があった。即ち、図14に示すように、複数の回転刃における鋸刃部が平板材100を切削すると、複数条の切削代101が必要となり、その分得られる箸材15の本数が減少する。又、複数条の切削代101は、切削屑となって飛散し、作業環境を著しく悪くするため、この切削屑を処理するためのブロアやダクトの設置が必要となる。ブロアやダクトを設置すると、装置全体が大型化する。更に、回転場の刃先である鋸刃部は非常に磨耗し易く、鋸刃部が磨耗すると、それぞれの切削代が不均一となり得られる箸材の幅に誤差が生じる。磨耗した鋸刃部の目立て作業は非常に煩雑な上、熟練を要する。
【0005】
本発明は、前記技術的課題を解決するために開発されたものであり、平板材を箸材に切断加工する際の歩留まりを向上し、高級感がありながら安価な箸製品として製品化することができる新規な箸材の製造方法、この製造方法によって製造される箸材及びこの箸材を半製品として製造される箸製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の箸材の製造方法(以下、本発明方法と称する。)は、蝦夷松の外周側部分の残材を原材とし、この原材を平板材に加工し、得られた平板材を所定のピッチで裁断することにより箸材を得ることを特徴とする。
又、本発明の箸材は、前記本発明方法によって製造されることを特徴とする。
更に、本発明の箸製品は、前記本発明の箸材を半製品として製造されることを特徴とする。
【0007】
本発明方法は、蝦夷松の外周側部分の残材を原材とする。蝦夷松(エゾマツ)とは、学術的にはマツ科トウヒ属の常緑針葉高木であるクロエゾマツを指すが、本発明方法においては、このクロエゾマツと共に近縁のアカエゾマツ等も含めて蝦夷松と称する。
蝦夷松から切り出した角材や柱材は、淡黄色で芯材に着色部分がなく、又、木目もまっすぐに通って美しいことから、現在、建築材料、家具、箱材、楽器及び碁盤など様々な用途に利用されている。その一方で、蝦夷松から角材や柱材を切り出した後に大量に発生する外周側部分の残材は、一部製紙用原料(パルプ材)として利用されているにすぎず、その殆どが破棄されているのが現状である。
【0008】
本発明方法においては、この蝦夷松の外周側部分の残材を原材とし、この原材を平板材に加工し、得られた平板材を所定のピッチで裁断することにより箸材を得る。
即ち、本発明方法においては、平板材を複数条に切断して箸材を得るにあたり、刃物を用いた裁断による切断手段を採用する。裁断とは、一般に、切断対象物(例えば、印刷や製本等の分野においては、印刷物や用紙等)を裁断機の刃物で切断する作業のことをいい、断裁と称されることもある。本発明方法において裁断とは、切断対象物としての平板材を裁断機の刃物で切断する作業のことを意味する。
【0009】
平板材に対する刃物を用いた裁断は、平板材に対し刃物が切り込む構成であるため、従来公知の鋸刃部を有する回転刃による切削と異なり、切削代が必要なく、その分得られる箸材の本数が増加する。又、切削屑も殆ど発生しないため、作業環境を良好な状態で維持することができる。更に、裁断に用いられる刃物は、鋸刃部を有する回転刃と比較して肉厚且つ剛直な作りが可能であり、長期間にわたって磨耗し難く、ランニングコストの点においても有益である。
なお、本発明方法においては、原材を平板材に加工する際にも刃物を用いた裁断による切断手段を採用することが好ましい。
【0010】
ところで、本発明方法においては、平板材を裁断に共する前に、当該平板材、又は当該平板材に加工する前の原材を煮沸することが好ましい。平板材又は原材を煮沸すると、水分を吸収して柔らかくなり、その後の裁断がより一層容易になる。又、煮沸により平板材や原材から余分な油分(マツヤニ)が抜け、最終的な箸製品の外観が美麗になるといった利点も生じる。
本発明方法において、原材として蝦夷松の外周側部分の残材を用いる理由は、以下の通りである。
【0011】
例えば、杉も建築材料等として多く利用されており、その残材は箸材の原材として供されているが、杉の残材を平板材に加工し、得られた平板材を裁断することにより箸材を得た場合、切断部位に割れやささくれが生じやすく、不良品が多くなったり、箸材或いは箸製品としての商品価値が下がったりするといった問題が生じる。
又、割れが生じやすい杉からなる平板材を裁断加工するにあたっては、裁断のピッチを大きくとる必要がある。そのため原材から得られる箸材の本数が少なくなる上、箸材が比較的太くなることから、この箸材を半製品として製造される箸製品も相対的に太くなり、手になじみにくいものとなる。
【0012】
更に、杉を原材とする箸材は非常に水分を吸収し易く、この箸材を繰り返しの使用を前提とする箸製品として製造するにあたっては、塗り加工等を施した塗り箸とする必要があり、その分製造コストが増加するといった問題が生じる。又、この箸材を割り箸等の使い捨てを前提とする箸製品として製造した場合にあっても、その使用中に箸先に水分が吸収されて湿っていくのはあまり気持ちの良いものではない。
一方、蝦夷松の木質は刃物に非常に良くなじみ、刃物が滑らか且つ容易に入ることから、裁断によって切断部位に割れやささくれが生じ難い。
そのため、裁断のピッチを狭くすることもできることから、原材から得られる箸材の本数が多くなる上、比較的細い箸材を得ることも可能となる。このような細い箸材を半製品として製造される箸製品は非常に手になじみやすいものとなる。
【0013】
又、蝦夷松を原材とする箸製品は使用中に水分を吸収し難く、繰り返しの使用を前提とする箸製品として製造するにあたり、必ずしも塗り加工等を施さなくても良いといった利点もある。
更に、蝦夷松は素材として美しく、この蝦夷松を原材とする箸製品は、杉を原材とする箸製品では到底得ることができない高級感を醸し出す。
加えて、前述の如く、現在、蝦夷松の残材は殆ど廃棄処分されており、その有効利用及び入手容易性の観点からも利益がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明方法によれば、平板材を切断加工して箸材を製造する際の歩留まりを向上することができる。又、蝦夷松の端材を原材とする本発明方法によって得られた本発明の箸材を箸半製品として製造される本発明の箸製品は、高級感がありながら安価な箸製品として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明方法を実施する箸材の製造装置の概略を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明方法を実施する箸材の製造装置の第一裁断部を示す正面図である。
【図3】図3(a)及び(b)は、本発明方法を実施する箸材の製造装置の第一裁断部を示す平面図である。
【図4】図4は、本発明方法を実施する箸材の製造装置の第二裁断部の概略を示す正面図である。
【図5】図5は、本発明方法を実施する箸材の製造装置の第二裁断部の概略を示す側面図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、本発明方法を実施する箸材の製造装置の第二刃物で平板材を裁断する状態を示す説明図である。
【図7】図7は、本発明方法の各工程を示す図である。
【図8】図8(a)〜(d)は、本発明方法を実施する箸材の製造装置の第一裁断工程を示す説明図である。
【図9】図9(a)〜(d)は、本発明方法により原材を箸材に加工する工程を示す説明図である。
【図10】図10(a)〜(d)は、本発明方法を実施する箸材の製造装置の第一裁断工程を示す説明図である。
【図11】図11(a)は本発明方法により原材を平板材に加工する工程を示す説明図、(b)は箸材の斜視図である。
【図12】図12(a)及び(b)は、原材を複数の平板材に加工する状態を示す説明図である。
【図13】図13(a)〜(c)は、原材のうち、端材を利用した箸材の製造工程を示す説明図である。
【図14】図14は、従来の箸材の製造装置を使用して平板材を切削により切断した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明方法の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明方法を実施する箸材15の製造装置Aの一例を示す概略図である。係る箸材の製造装置Aは、機台1に第一裁断部2及び第二裁断部5を備える。
第一裁断部2は、蝦夷松の外周側部分の残材からなる原材10を平板材11と端材17とに裁断する部分である(図9(a)及び(b)参照。図中二点鎖線は切断箇所を表す。)。
【0017】
図2に示すように、第一裁断部2は、機台1の載置面1aに置かれた原材10を、所定位置まで押し出すプッシャー21と、このプッシャー21で押された原材10を位置決めする位置決部材(奥行定規)22と、原材10を上方から下方に向けて裁断する平板帯状の第一刃物25とを備える。
【0018】
図3に示すように、前記第一刃物25には、一対の連結部材26が固定されており、第一刃物25と位置決部材22とは、当該連結部材26を介して機台1内に設けられた図示省略のクランク機構により、一体的に昇降運動するようになっている。
【0019】
図2に示すように、位置決部材22は、第一刃物25の下方に位置する。又、第一刃物25と位置決部材22との間には間隔K1が生じている。この間隔K1は、原材10の裁断ピッチ(得られる平板材11の厚みH(図9(c)参照))となる。図3に示すように、この間隔K1は、第一刃物25と位置決部材22との間に一対のスペーサ27を介在させることによって得られるものであり、前記一対のスペーサ27を適宜交換することにより、任意の距離に調整可能となっている。
ここで各スペーサ27の厚みを同等のものにすれば、位置決部材22に対して第一刃物25を平行に配置することができる(図3(b)参照)。一方、各スペーサ27の厚みを異ならせることにより、位置決部材22に対して第一刃物25を傾斜させることができる(図3(a)参照)。
【0020】
図2に示すように、第一刃物25の刃先は、下向きに設けられているとともに、位置決部材22側の面が傾斜する研ぎ面(刃表面)25aとなっており、反対側面は平坦面(刃裏面)となっている。
第二裁断部5は、前記第一裁断部2により裁断されて得られた平板材11を、幅方向に所定のピッチで長手方向に沿って裁断する部分である(図9(c)参照。図中実線Lは、切断箇所を示す。)
【0021】
図4に示すように、第二裁断部5は、機台1の載置面1aに載置された平板材11を、所定位置まで搬送する搬送手段51と、この搬送手段51で押された平板材11を位置決めする位置決部材(奥行定規)52と、平板材11を上方から下方に向けて裁断する第二刃物55とを備えている。
搬送手段51は、機台1の載置面1aに出退自在に設けられプッシャー又は送り爪等からなり、平板材11を位置決部材(奥行定規)52側に移動させるものである。
【0022】
図4に示すように、位置決部材52は、第二刃物55の下方に位置する。又、第二刃物55と位置決部材52との間には、間隔K2が生じている。この間隔K2は、平板材11の裁断ピッチP(図9(c)参照)となる。なお、この間隔K2は、第二刃物55と位置決部材52との間に一対のスペーサ53(図1参照)を介在させることによって得られるものであり、前記スペーサ53を適宜交換することにより、任意の距離に調整可能となっている。
【0023】
第二刃物55の刃先は、下向きに設けられているとともに、位置決部材52側の面が傾斜する刃表面55aとなっており、反対側面は平坦面(刃裏面)となっている。
第二刃物55と位置決部材52とは、図5に示すクランク機構60により一体的に昇降運動する。具体的には、第二刃物55には、一対の連結部材57が固定されており、この一対の連結部材57がクランク機構60に連結されている。そして、このクランク機構60により、第二刃物55及び位置決部材52は、水平な状態を維持したまま平板材11の長手方向に移動しながら下降する(図6(a)〜(c)参照)。
本発明方法を実施する箸材15の製造装置Aは以上の構成からなる。次に、係る箸材15の製造装置Aを使用した、本発明方法の実施の形態について説明する。
【0024】
<割り箸を製造する場合の実施の形態>
箸製品として割り箸を製造する場合の実施の形態について説明する。
割り箸半製品としての箸材15の製造工程を図7に示す。係る箸材の製造工程においては、煮沸処理工程、第一裁断工程、第二裁断工程、及び加工仕上工程を順に実施する。
煮沸処理工程とは、一旦乾燥されている原材10を煮沸器で煮沸処理する工程である。この煮沸器の容器内には水が貯留されており、係る容器内に原材10を投入し、容器内の水を沸騰させることにより原材10を煮沸処理する。この煮沸処理により、原材10は水分を吸収することとなる。このように煮沸処理することにより、原材10を柔らかくすることができる。又、この工程により原材10に含まれる余分な油分(マツヤニ)が抜ける。
【0025】
次に、煮沸処理された原材10を裁断装置Aの第一裁断部2に搬送する。第一裁断部2において、プッシャー21が搬送された原材10を位置決部材22に当接するまで移動させる。このとき、原材10は、平坦面10aが前面となるように配置され(図8(a)参照)、円弧状の外側面10b側をプッシャー21が押圧する。そして、原材10の平坦面10aが位置決部材22に当接し位置決めされる(図8(b)参照)。なお、本実施の形態において原材10は、その幅方向を立てた状態で位置決めされているが、長さ方向を立てた状態で位置決めしても良い。箸製品として割り箸を製造する本実施の形態において、第一刃物25は、位置決部材22に対して傾斜した状態(図3(a)に示す状態)となっている。
【0026】
原材10が位置決めされた後、第一刃物25及び位置決部材22が下降し、第一刃物25は原材10を全長にわったって裁断する(図8(c)、図9(a)及び(b)参照)。蝦夷松の外周側部分の残材からなる原材10は刃物になじみやすいことから、第一刃物25は比較的容易に入る。又、予め原材10は煮沸処理されて材質が柔らかくなっており、しかも原材10の板目に沿って第一刃物25が切り込むため、この原材10の裁断に際して、第一刃物25は原材10を容易に裁断することができる。
【0027】
更に、第一刃物25は、刃表面25aが外側(位置決部材22側)を向いているため、第一刃物25に裁断された平板材11は、刃表面25aに案内されて、搬送面1a上に倒れる(図8(d)参照)。
得られた平板材11は、第二裁断部5に部に搬送される。この搬送に際し、本実施の形態においては、コンベアにより平板材11を自動的に搬送しているが、作業者が人為的に行ってもよい。
【0028】
次に、平板材11の搬送方向後端となる幅方向の一端は、搬送手段51により後方から押され、平板材11の幅方向の他端が位置決部材52に当接する(図4参照)。これにより、平板材11が位置決めされる。
平板材11が位置決めされた後に、第二刃物55及び位置決部材52が下降する。係る第二刃物55は平板材11に対し、斜め上方向から入り込んで裁断していく(図5及び図6(a)〜(c)参照)。即ち、第二刃物55は下降するとともに平板材11に対して長手方向に相対移動する。
【0029】
本実施の形態において、平板材11は板目と交差する方向に裁断される。通常、平板材11を板目と交差する方向に裁断するのは、板目に沿って裁断する場合に比べて困難であるが、平板材11の素材である蝦夷松は刃物となじみやすいため第二刃物55は比較的容易に入る。又、平板材11は、前記原材10に対する煮沸処理によって材質が柔らかくなっているので、板目と交差する方向であっても第二刃物55は平板材11に容易に切り込んで、平板材11をスムーズに裁断することができる。このようにして得られた箸材15は、第二刃物55の刃表55aにより案内されて適宜排出される。
【0030】
平板材11を裁断した第二刃物55は位置決部材52と共に上昇する。位置決部材52が再び平板材11を位置決めした後、第二刃物55が下降して、平板材11を裁断する。このように、第二刃物55が昇降運動を繰り返すことにより、その第二刃物55の運動に連動して平板材11は、順次所定のピッチPで裁断されていき、複数本の箸材15を得ることができる(図9(c)参照)。従って、平板材11の厚みHが当該箸材15の幅L1に相当し、裁断ピッチPが当該箸材15の厚みL2に相当する。なお、平板材11の両端部16は、ばら箸用の箸材15の製造に供することができる。
最後に、得られた箸材15が加工仕上工程において適宜加工されることにより箸製品としての割り箸ができあがる(図9(d)参照)。
【0031】
<ばら箸を製造する場合の実施の形態>
次に、箸製品としてばら箸を製造する場合の実施の形態について説明する。ばら箸とは、単体(一本)の箸が2本一組で一膳になった卵中(ランチュウ)などと称される箸製品を意味する。
第一裁断工程の前に、原材10を煮沸器で煮沸する煮沸処理工程を行うのは、前述の割り箸を製造する場合と同様である。
煮沸処理工程の後、原材10は、第一裁断工程に供され、図10に示すように、原材10を平板材11に裁断する。
【0032】
具体的には、第一刃物25を位置決部材22に対して平行に配置して間隔K1を同等に設定する(図4(b)参照)。次に、煮沸された原材10をプッシャー21が所定位置まで移動させ(図10(a)参照)、原材10を位置決部材22に当接させて位置決めする(図10(b)参照)。
更に、第一刃物25が下降して原材10を裁断する(図10(c)参照)。原材10は、プッシャー21によって押し出されながら、第一刃物25によって裁断される。裁断された平板材11は、機台1の載置面1a上に倒れる(図10(d)参照)。
次に、第二裁断部5において、平板材11が所定位置に位置決めされた後に、第二刃物55が平板材11を所定のピッチで裁断していく(図11(a)参照。図中実線L3は、切断箇所を表す。)。前記同様に第二裁断刃は平板材11に容易に切り込んでスムーズに裁断することができる。
【0033】
以上の箸材の製造装置Aにより、箸材15が得られる。従って、平板材11の厚みHが当該箸材15の幅W1に相当し、裁断ピッチPが当該箸材15の厚みW2に相当する。箸材15は、加工仕上工程において先付け加工等が施され、先細状の箸(ばら箸)を得ることができる(図11(b)参照)。
係るばら箸は、2本を一対として帯紙によって束ねるか、或いは箸袋内に収容することにより一膳の箸として製品化される。なお、箸材15は、必ずしも先付け加工等を行う必要はなく、箸材15をそのまま箸製品として使用することも可能である。
【0034】
本発明方法を実施する箸材の製造装置Aによれば、刃物が原材10や平板材11を裁断する構成であるため、切削屑が発生することはなく、切削屑を処理するためのブロアやダクト等の処理装置が不要となる。
又、原材10や平板材11の裁断に際して、切削代が不要となり、その分、得られる箸材15の本数が増加することとなる。例えば、幅長さが100mmあたりの平板材11に対し、従来の鋸刃部を有する回転刃による切削では15.3本程度の箸材15しか得られなかったが、本発明方法を実施する本実施の形態によれば18.8本の箸材15が得られることとなる。これより歩留りが向上し、原材10を無駄なく有効に利用することができる。しかも、鋸刃部を有する回転刃を使用しないため、鋸刃部の目立てが不要となり、メンテナンスを簡単に行える。
【0035】
なお、図12に示すように、原材10から平板材11を切り出した残りの端材17は、別の平板材11が切り出せる厚みがある限り、繰り返し切断される。所定の厚みの平板材11が切り出せなくなった残りの端材17は、図13(a)〜(c)に示すように、ばら箸用の箸材15を製造するための平板材11として供することができる。この端材17は、原材10における最も木目の細かい部分であることから、特に硬くて品質の良い箸を製造することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 機台
2 第一裁断部
5 第二裁断部
10 原材
11 平板材
15 箸材
17 端材
21 プッシャー
22 位置決部材
25 第一刃物
27 スペーサ
51 搬送手段
52 位置決部材
53 スペーサ
55 第二刃物
A 箸材の製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蝦夷松の外周側部分の残材を原材とし、この原材を平板材に加工し、得られた平板材を所定のピッチで裁断することにより箸材を得ることを特徴とする箸材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の箸材の製造方法において、前記原材を所定のピッチで裁断することにより平板材に加工する箸材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の箸材の製造方法において、前記原材又は平板材を煮沸する工程を更に包含する箸材の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の箸材の製造方法によって製造されることを特徴とする箸材。
【請求項5】
請求項4に記載の箸材を半製品として製造されることを特徴とする箸製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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