説明

簡易浴槽用シート及びそのシートを用いた簡易浴槽

【課題】貯留槽への折り立て作業が簡単であるとともに、完全に展開することができ、使用後の排水、洗浄及び乾燥並びに折り畳んでの保管が容易で、しかも折り目からの破断の虞のない液体貯留槽用シート及びそのシートを用いた液体貯溜槽並びに簡易浴槽を提供する。
【解決手段】剛性を有する枠体2の内面形状に沿う立体形状に折り立てられるとともに枠体によって周囲から保持され、上面開口部より液体を受容して該液体の貯溜状態を維持する液体貯留槽用シート1であって、折り立てに際し折り曲げられる箇所に、折り目31〜37が、該箇所をその全長に亘って摘むとともに該摘んだ部分の全域を固着することにより形成された液体貯溜槽用シート1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば屋外において雨水や非常用飲料水を貯溜したり、また漁港や市場などで魚介類を生きたまま一時的に保管するべく海水や真水を貯溜したり、あるいは介護が必要な病人や老人の沐浴のために湯水を貯溜したりするのに好適な液体貯溜用シート及びそのシートを用いた液体貯溜槽並びに簡易浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体貯溜槽としては、例えば特開平2−45346号公報(特許文献1)に所載の無漏水の折り畳み箱や、特開2004−150069公報(特許文献2)に所載の組立式貯水タンクが知られている。
【0003】
特許文献1に所載の箱は、折り目を設けた防水性を有するシートにて形成し、使用時にはシートを折って簡単迅速に箱形容器に形成して水を輸送することができ、保管時には中央の折り目より偏平状に折り畳んで積み重ねることができるものである。
【0004】
一方、特許文献2に所載の貯水タンクは、組立ユニット材を用いて全体が所望形状の槽体を形成するとともにこの槽体内に複数個のフックを設け、このフックに袋状の防水シートの上縁部を掛止して槽体を液密構造にするとともに、組立ユニット材を共通化することにより槽体を一単位として所望個数の槽体を組み合わせることにより要求貯溜容量に応じた貯水タンクを構成することができるものである。
【0005】
また、それとは別に、簡易浴槽としては、例えば特開2001−231701号公報(特許文献3)に所載の沐浴湯水槽及びそれに用いる沐浴シートが知られている。この沐浴湯水槽は、洗面所などに設置されたシンクの凹部に沿うように折ることができる折れ線が設けられたシートからなり、乳児やペットをシンクに直接触れさせることなく沐浴させることができるようにして、シンクを使用の都度消毒する必要をなくしたものである。
【0006】
さらに、介護な必要な老人或いは病人などを安全且つ簡単な方法で入浴させることができるようにした簡易浴槽としては、例えば特開平10−295770号公報(特許文献4)に所載の簡易風呂や、特開2005−205003号公報(特許文献5)に所載の介護用浴槽、特開2003−19179号公報(特許文献6)に所載の車椅子用バスタブ、或いは特開平8−52190号公報(特許文献7)に所載の組立式介助用浴槽などが知られている。
【0007】
特許文献4に所載の簡易風呂は、内部に椅子を設置するとともに貯水を行い得るように上部を開放した耐水袋の外周にフレームを組み立て、フレームに耐水袋の上端外周を着脱自在に固定して耐水袋内への湯水の貯水状態を保持し得るようにしたものである。
【0008】
特許文献5に所載の介護用浴槽は、車椅子を収容可能な上方開口型の浴槽ケースと、この浴槽ケースの周側板と略同形の周側部を有する有底且つ上方が開口したシート材からなる内袋とからなるものである。
【0009】
特許文献6に所載の車椅子用バスタブは、折り畳み可能な浴槽フレームと、周囲に穴を設けてロープを通し、このロープを引き締めて絞ることにより四隅を内外の折り幅が異なるアコーデオン状にジグザグに折り曲げて浴槽フレーム内に浴槽として使用されるシートとからなるものである。
【0010】
特許文献7に所載の組立式介助用浴槽は、浴槽フレームと折線が形成された柔軟なシート部材からなる槽を有し、折線に沿って折り立てた槽が浴槽フレームの上部矩形状フレームと下部矩形状フレームの間に組み込まれ、槽底部下方に空間が形成され、支持杆の下端に走行手段を設けてなるものである。
【特許文献1】特開平2−45346号公報
【特許文献2】特開2004−150069公報
【特許文献3】特開2001−231701号公報
【特許文献4】特開平10−295770号公報
【特許文献5】特開2005−205003号公報
【特許文献6】特開2003−19179号公報
【特許文献7】特開平8−52190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記したいずれの特許文献に所載の技術にあっても、特に大容量の貯水に供されるシートとしては満足のいくものではなかった。以下その点について詳述する。
【0012】
特許文献1に所載の箱に用いられるシートや特許文献3に所載の沐浴シート、及び特許文献7に所載のシート部材は、所定の形状を構成するように折り曲げる箇所に折り目が形成されたものであるが、その折り目は単なる折り目、すなわち、合成樹脂製シートの折り目形成技術において従来周知の熱罫線或いは加熱加圧成形による溝で構成された折り目に過ぎなかった。このような従来の折り目を有するシートにあっては、人が持ち運べる程度の水量の貯溜しか想定していない特許文献1の箱や、せいぜい洗面所のシンクの貯水容量に相当する程度の水量しか想定していない特許文献3の沐浴シートでは特に問題は生じないが、特許文献2や特許文献4〜7に見られるような数百リットルもの多量の水を貯溜する場合には、貯溜の都度大きな水圧がシートに負荷としてかかることから、また上記周知の技術で形成される折り目はその部分で局部的に肉薄となり必然的に機械的強度が低下してしまっていることから、使用(貯溜)を重ねていくうちにシートが折り目から破断する虞が多分にあった。また、湯水など温度の高いものを貯溜対象とした場合、シートは、通常、合成樹脂製であることから、上記した大きな水圧に加えて湯水から受け取る熱によって容易に軟化し、このことが上記折り目における破断をより促進させることとなっていた。そしてこのようなシートの破断は、特許文献1や特許文献3に見られるような比較的小容量のものにおいて発生してもそれほど大事には至らないが、介護を要する老人や病人の入浴に使用されるシートにおいて発生した場合は、湯水の量が上記したように大量であることから、湯水がシート外へ恰も鉄砲水の如く勢いよく一挙に流出する可能性が極めて高く、そのような流出事故が入浴中に発生すると、老人や病人がその衝撃で転倒するなどして大怪我を負ってしまう危険性があった。また、介護を要する入浴は、浴室以外の部屋で行われることが多いため、そのような部屋で流出事故が発生すると、その後処理がたいへんであるといった問題もあった。
【0013】
また、上記したような破断に至らずとも、特に大量の湯水の貯溜を繰り返し行っていくと、加温下で水圧が加えられることによってシートの折り目部分が徐々に伸ばされることとなり、これによって折り目が次第に薄れていき、やがてどの部分でシートを折ればよいか判りづらくなってうまく折ることができなくなってしまうといった問題もあった。
【0014】
一方、特許文献2、4及び5に所載のシートにあっては、予め所定の形状にシートが形成されているものであるから、上記したような折り目に起因する問題点はない。しかしながら、袋状など所定の立体形状に成形されているものであるため、保管時に小さく折り畳むことが困難であり、それ相応の保管スペースを必要とするといった問題があった。また、平面状に展開することが全くできないため、使用後の洗浄作業が行い辛く、しかも洗浄作業後に乾かすため干そうとしても上手く干すことができず、乾ききるまでに時間がかかるといった問題もあった。
【0015】
この点、特許文献6に所載のシートにあっては、完全に展開することができるため、そのような問題はないものの、四隅に内外の折り幅が異なるアコーデオン状部分を設けたものであるため、この部分の加工が実際には難しくコストも嵩むといった問題があった。しかも、アコーデオン状部分の溝内に湯垢が溜まり易いうえこの部分の洗浄が行い辛いため、衛生上好ましくないといった問題があった。
【0016】
本発明は上記従来の問題点を解決すべく創案されたものであり、貯留槽への折り立て作業が簡単であるとともに、完全に展開することができ、使用後の排水、洗浄及び乾燥並びに折り畳んでの保管が容易で、しかも折り目からの破断の虞のない液体貯留槽用シート及びそのシートを用いた液体貯溜槽並びに簡易浴槽を提供することを目的としている。尚、以下の本発明の説明において、特に断らない限り、単にシートとする記載は液体貯留槽用シートと同義である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明に係る液体貯留槽用シートは、剛性を有する枠体の内面形状に沿う立体形状に折り立てられるとともに該枠体によって周囲から保持され、上面開口部より液体を受容して該液体の貯溜状態を維持する液体貯留槽用シートであって、前記折り立てに際し折り曲げられる箇所に、折り目が、該箇所をその全長に亘って摘むとともに該摘んだ部分の全域を固着することにより形成されたことを特徴とするものである。
この特定事項により、折り目の部分の強度が、単に熱罫線や加熱加圧により折り目が形成された従来のシートに比べて、格段に高いものとなるため、繰り返し使用しても折り目が消えることが一切なく、しかも折り目から破断する虞がない。また摘んだ部分に隙間ができないため、この部分に水垢や湯垢などが溜まる虞もない。
【0018】
上記シートは熱融着可能な合成樹脂製シートであってもよく、その場合は摘んだ部分の固着は熱融着によりなされたものとされる。
【0019】
この特定事項により、摘んだ部分においてシート素材同士が融着して一体化されることとなり、熱を受けて伸び易い合成樹脂製シートであっても、折り目の部分の強度が、単に熱罫線や加熱加圧により折り目が形成された従来のシートに比べて、格段に高いものとなるため、繰り返し使用しても折り目が消えることが一切なく、しかも折り目から破断する虞がない。また摘んだ部分に隙間ができないため、この部分に水垢や湯垢などが溜まる虞もない。
【0020】
また、上記シートは少なくとも貯留層内側となる面に熱融着可能で且つ非通水性を呈する合成樹脂層を形成してなる布製シートであってもよく、その場合は摘んだ部分の固着は熱融着によりなされたものとされる。
【0021】
この特定事項により、摘んだ部分においてシート素材表面の合成樹脂層同士が融着して一体化されることとなり、折り目の部分の強度が、単に熱罫線や加熱加圧により折り目が形成された従来のシートに比べて、格段に高いものとなるため、繰り返し使用しても折り目が消えることが一切なく、しかも折り目から破断する虞がない。また摘んだ部分に隙間ができないため、この部分に水垢や湯垢などが溜まる虞もない。さらに、シート素材が布であるため、合成樹脂製シートの場合とは異なり、熱の影響を受けて伸縮するといったことがなく、耐久性に優れている。
【0022】
また、上記シートは少なくとも一面に形成された合成樹脂層により非通水性が付与された布製シートであってもよく、その場合は摘んだ部分の固着は縫着によりなされたものとされる。
【0023】
この特定事項により、摘んだ部分においてシート素材同士が縫着により一体化されることとなり、折り目の部分の強度が、単に熱罫線や加熱加圧により折り目が形成された従来のシートに比べて、格段に高いものとなるため、繰り返し使用しても折り目が消えることが一切なく、しかも折り目から破断する虞がない。また広く一般に行われている縫製作業により行えるため製作コストを削減することができる。さらに、シート素材が布であるため、合成樹脂製シートの場合とは異なり、熱の影響を受けて伸縮するといったことがなく、耐久性に優れている。
【0024】
また、上記シートには、槽の底に対応する領域の任意の箇所に排水口が形成されるとともに、この排水口に、該シートと同材料からなり先端を貯溜面よりも高い位置まで掲げることが可能な長さを有する排水用ホースが接続されていてもよい。
【0025】
この特定事項により、液体又は湯水を貯溜中、排水用ホースの先端を貯溜面(液面)よりも高い位置に掲げておくだけで、特に排水口に栓をしなくとも貯溜状態を維持することができる。そして、排水する場合は、単に排水用ホースを槽の底面よりも低い位置に下げるだけで槽内の液圧(水圧)により全量がスムースに排水される。
【0026】
本発明に係る液体貯留槽は、組立及び分解が可能な剛性を有する枠体と、上記した液体貯溜槽用シートのいずれか一つとからなるものである。
【0027】
また、本発明に係る簡易浴槽は、組立及び分解が可能な剛性を有する枠体と、上記した液体貯留槽用シートのいずれか一つとからなるものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る貯留槽用シートは、折り目の部分の強度が、単に熱罫線や加熱加圧により折り目が形成された従来のシートに比べて、格段に高いものであるため、繰り返し使用しても折り目が消えることが一切ない。したがって、いつでも正しい位置でシートを折り立てることができる。
【0029】
また、折り目の部分の強度が高いため、折り目から破断する虞がない。したがって、特に簡易浴槽の場合、入浴中に湯水が流出する虞がなく、安全性に優れている。
【0030】
さらに、摘んだ部分に隙間ができないため、この部分に水垢や湯垢などが溜まる虞もない。したがって、使用後の洗浄が簡単であり衛生面でも優れている。
【0031】
また、完全に展開することができるため、使用後簡単に干すことができるとともに、コンパクトに折り畳むことができ、保管スペースをとることがなく、取扱性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0033】
図1は本発明に係る液体貯留槽用シートを展開した状態を示す外面側(槽の外側となる面側)から見た斜視図、図2は図1に示すシートに排水用ホースを設けたものの図1相当図、図3は折り目を示し図1及び図2におけるIII−III線に沿う断面図、図4は排水ホースの接続部分を示し図2におけるIV−IV線に沿う断面図、図5乃至図7はシートの折り立て工程を示す斜視図、図8は簡易浴槽を示す分解斜視図、図9は貯溜状態にある簡易浴槽を示す斜視図、図10は簡易浴槽の前面を開放した状態を示す斜視図である。
【0034】
このシート1は、剛性を有する枠体2(図8乃至図10参照)の内面形状に沿う立体形状、ここでは直方体形状に折り立てられる(図5乃至図8参照)とともに、枠体2によって周囲から保持され、上面開口部より液体を受容して液体の貯溜状態を維持するもの(図9参照)である。
【0035】
前記折り立てに際し折り曲げられる箇所には折り目31〜37がそれぞれ設けられている。図1及び図2に示すシートでは、その中央部であって枠体2の底面の周辺のうち3辺に対応する部位に3本の折り目31,32,33が、また枠体の底面の四隅に対応する位置とシートの四隅とを結ぶ線上に折り目34,35,36,37が設けられている。ここで、シート1の中央部において折り目が3本しか設けられていないのは、図10に示すように、入浴者の出入りの便を考慮して前面を開放する場合に、シート1表面が極力平滑となるようにして入浴者がシート1に足を引っ掛けたりしないようにするためである。このような配慮が必要でなければ、この部分にも折り目を設けてもよいことは勿論である。
【0036】
上記折り目31〜37は、図3に示すように、折り曲げられる箇所をその全長に亘って摘むとともに摘んだ部分の全域を固着することにより形成されている。折り目31〜37がこのように形成されたことにより、折り目31〜37の部分の強度が、単に熱罫線や加熱加圧により折り目が形成された従来のシートに比べて、格段に高いものとなるため、繰り返し使用しても折り目31〜37が消えることが一切なく、しかも折り目31〜37から破断する虞がない。また摘んだ部分に隙間ができないため、この部分に水垢や湯垢などが溜まる虞もない。
【0037】
尚、折り目は、シート1の折る箇所すべてに設ける必要はなく、少なくとも折り立て作業時の目安となる箇所に設けられていればよい。
【0038】
上記シートとしては熱融着可能な合成樹脂製シートが好適に用いられる。その場合、折り目31〜37を形成するのにあたって行われる上記摘んだ部分の固着は熱融着によりなされる。これによって、摘んだ部分においてシート素材同士が融着して一体化されることとなり、熱を受けて伸び易い合成樹脂製シートであっても、折り目31〜37の部分の強度が、単に熱罫線や加熱加圧により折り目が形成された従来のシートに比べて、格段に高いものとなるため、繰り返し使用しても折り目31〜37が消えることが一切なく、しかも折り目31〜37から破断する虞がない。また摘んだ部分に隙間ができないため、この部分に水垢や湯垢などが溜まる虞もない。
【0039】
上記合成樹脂製シートとしては、例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ナイロン、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニルアルコール共重合体、アイオノマーなどをはじめ、上記熱融着が可能なものであれば任意である。
【0040】
また、シート1は、上記したような合成樹脂製のもの以外に、少なくとも貯留層内側となる面に熱融着可能で且つ非通水性を呈する合成樹脂層を形成してなる布製シートであってもよい。その場合は摘んだ部分の固着は熱融着によりなされたものとされる。ここで形成される合成樹脂層の素材としては、上記列挙した各種合成樹脂が挙げられる。このような構成の液体貯留槽用シートにあっては、摘んだ部分においてシート素材表面の合成樹脂層同士が融着して一体化されることとなり、折り目の部分の強度が、単に熱罫線や加熱加圧により折り目が形成された従来のシートに比べて、格段に高いものとなるため、繰り返し使用しても折り目が消えることが一切なく、しかも折り目から破断する虞がない。また摘んだ部分に隙間ができないため、この部分に水垢や湯垢などが溜まる虞もない。さらに、シート素材が布であるため、合成樹脂製シートの場合とは異なり、熱の影響を受けて伸縮するといったことがなく、耐久性に優れている。
【0041】
また、上記シートとしては、少なくとも一面に形成された合成樹脂層により非通水性が付与された布製シートであってもよい。その場合、摘んだ部分の固着は縫着によりなされたものとされる。これによって、摘んだ部分においてシート素材同士が縫着により一体化されることとなり、折り目の部分の強度が、単に熱罫線や加熱加圧により折り目が形成された従来のシートに比べて、格段に高いものとなるため、繰り返し使用しても折り目が消えることが一切なく、しかも折り目から破断する虞がない。また広く一般に行われている縫製作業により行えるため製作コストを削減することができる。さらに、シート素材が布であるため、合成樹脂製シートの場合とは異なり、熱の影響を受けて伸縮するといったことがなく、耐久性に優れている。
【0042】
以上説明したシート1にあっては、図1及び図2に示すように、折り立てた際にシートの重合部分を相互に固定するための係止部材4がシート1の外面側の適所に複数設けられている。通常、これら係止部材4としては面ファスナーが好適に用いられるが、合成樹脂製又は金属製のホックでもよい。
【0043】
また、シート1の外周縁には、それぞれ各縁の中央部において枠体掛止片5が突設されている。これら枠体掛止片5は、図8乃至図10に示すように、枠体2の上縁に引っ掛けられるものである。
【0044】
図2に示すシート1は、上記したシート1に排水用ホース6を設けたものである。この排水用ホース6は、シート1の中央に形成された排水口7(図4乃至図9参照)にその基端部が接続されており、その長さは、先端を貯溜面よりも高い位置まで掲げることが可能な長さとされたものである。また、この排水用ホース6は、シート1と同材料からなる。
【0045】
シート1の排水口7への取付は、図4に示すように、排水用ホース6の基端部61をシート1の内面側に挿入するとともに排水口7の周縁部に広げ、この広げられた基端部61からシート1の内面にかけてシート1と同材料のリング状の固着シート9を重合したうえで、これら固着シート9、基端部61及びシート1の三者を一体的に熱圧着することにより行われる。図4中、符号Vはこの熱圧着により生じた凹溝を示す。尚、排水口7の形成位置をシート1の中央としているのは、水の重みでシート1の中央が撓み、ここに水が集中することから、排水時にすべての水が排水口7に導かれ、シート1上に残ることがないからである。
【0046】
次に、上記のシート1を用いた簡易浴槽について説明する。
【0047】
この簡易浴槽は、図8乃至図10に示すように、組立及び分解が可能な剛性を有する枠体2と、上記シート1とからなるものである。
【0048】
枠体2は、本実施の形態にあっては、複数本のパイプを直方体状に組み立てるとともに、上面以外に補強シート1を設けたものである。尚、枠体2はこのような形態のものに限定されず、例えば前記特許文献2や特許文献5に見られるようなパネルを複数枚組み合わせてなるものであってもよい。また、形状は直方体形状である必要はなく、五角柱形状や六角柱形状などの多角柱形状であっても、あるいは円柱形状や楕円柱形状であってもよい。
【0049】
シート1は、上記枠体2の内面形状に沿う立体形状に折り立てられるとともに枠体2によって周囲から保持される。以下、シート1を折り立てて槽を構成する手順について図5乃至図7を、また簡易浴槽を組み立てる手順について図8及び図9をそれぞれ参照して説明する。
【0050】
まず、シート1の周縁部をシート中央部の周囲に配された折り目31〜33に沿って折り立てるとともに、四隅において重合し合う部分を、シート1の四隅から中央部に向かって延びる折り目34〜37に沿って折り重ねる(図5及び図6参照)。
【0051】
次に、上記折り重ねた部分8を、折り立てられたシート1の外面に添わせるとともに、前記した係止部材(面ファスナー)4によりその外面に係止させ、さらにその上にもう一方の折り重ねた部分8を添わせて対応する係止部材4により係止させる。この作業を槽の前面側と後面側のそれぞれについて行う。これにより槽10が折り上がる(図7参照)。
【0052】
このようにしてできた槽10を枠体2内に収納するとともに、排水用ホース6を枠体2の下側を潜らせて枠体2の外側に引き出し、次いでシート1の枠体掛止片5をそれぞれ枠体2の上縁に引っ掛け、これら引っ掛けた部分に上から固定クリップ11を嵌着し、枠体掛止片5をそれぞれ枠体2の上縁に固定する。これで枠体2への槽10の固定が完了し、簡易浴槽が完成する。完了したら、図9に示すように、排水用ホース6の先端を掲げて直近に位置する枠体2の上縁に引っ掛けるとともに上記固定クリップ11を利用して固定する。この後、槽10内に湯水を貯溜し、入浴に供する。
【0053】
ここで、湯水Wを貯溜中、排水用ホース6は、図9に示すように、その先端62が貯溜面(液面)よりも高い位置に掲げられているので、特に排水口7に栓をしなくとも貯溜状態を維持することができる。そして、排水する場合は、単に排水用ホース6を槽10の底面よりも低い位置に下げるだけで槽10内の水圧により全量がスムースに排水される。
【0054】
尚、入浴者が槽10内に跨いで入ることのできない者である場合は、枠体2の前面及び槽10の前面を前方に開けば、ここから造作無く出入りすることができる。図8及び図9において、符号12は枠体2の前面を係止するための掛け金を示す。
【0055】
以上、簡易浴槽について説明したが、例えば雨水を一時的に貯溜するために使用される液体貯留槽についても上記簡易浴槽と同様である。また、槽10は、排水用ホース6を持たない図1に示すようなシート1で構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る液体貯留槽用シートを展開した状態を示す外面側(槽の外側となる面側)から見た斜視図である。
【図2】図1に示すシートに排水用ホースを設けたものの図1相当図である。
【図3】シートに設けた折り目を示し図1及び図2におけるIII−III線に沿う断面図である。
【図4】排水ホースの接続部分を示し図2におけるIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】シートの折り立て工程を示す斜視図である。
【図6】シートの折り立て工程を示す斜視図である。
【図7】シートの折り立て工程を示す斜視図である。
【図8】簡易浴槽を示す分解斜視図である。
【図9】貯溜状態にある簡易浴槽を示す斜視図である。
【図10】簡易浴槽の前面を開放した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 液体貯留槽用シート
2 枠体
31〜37 折り目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性を有する枠体の内面形状に沿う立体形状に折り立てられるとともに該枠体によって周囲から保持され、上面開口部より液体を受容して該液体の貯溜状態を維持する液体貯留槽用シートであって、
前記折り立てに際し折り曲げられる箇所に、折り目が、該箇所をその全長に亘って摘むとともに該摘んだ部分の全域を固着することにより形成されたことを特徴とする液体貯溜槽用シート。
【請求項2】
前記シートは熱融着可能な合成樹脂製シートであって、前記摘んだ部分の固着は熱融着によりなされたものである請求項1に記載の液体貯溜槽用シート。
【請求項3】
前記シートは少なくとも貯留層内側となる面に熱融着可能で且つ非通水性を呈する合成樹脂層を形成してなる布製シートであって、前記摘んだ部分の固着は熱融着によりなされたものである請求項1に記載の液体貯溜槽用シート。
【請求項4】
前記シートは少なくとも一面に形成された合成樹脂層により非通水性が付与された布製シートであって、前記摘んだ部分の固着は縫着によりなされたものである請求項1に記載の液体貯溜槽用シート。
【請求項5】
前記シートにおいて槽の底に対応する領域の任意の箇所に排水口が形成されるとともに、この排水口に、該シートと同材料からなり先端を貯溜面よりも高い位置まで掲げることが可能な長さを有する排水用ホースが接続された請求項1乃至4のいずれか一つに記載の液体貯留槽用シート。
【請求項6】
組立及び分解が可能な剛性を有する枠体と、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の液体貯溜槽用シートとからなる液体貯留槽。
【請求項7】
組立及び分解が可能な剛性を有する枠体と、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の液体貯溜槽用シートとからなる簡易浴槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−269341(P2007−269341A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95302(P2006−95302)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(506108620)株式会社 ナンワ (3)
【Fターム(参考)】