説明

籐と芒草との編み製品及び籐と芒草との編み製品の製造方法

【課題】籐編み製品の風合いが保持されるとともに、地肌から美しい黒色に染色されており、使用中に美観が保持される籐と芒草との編み製品及びその製造方法の提供。
【解決手段】バスケット1が製造される場合、まず、籐芯2がスパイラル状に巻かれつつ、隣り合う籐芯2が芒芯3により編み止められて円筒状に形成される。次に、これが染色材中に浸漬されて、黒色に染色され、さらに、漆風黒色塗料が吹き付けられて、安定した濃い黒色に着色される。最後に、艶消し塗料が吹き付けられて艶消し処理が施され、バスケット1が得られる。バスケット1は、細部まで美しく黒色に着色されており、漆風黒色塗料の吹き付け処理により表面に被膜を有することで、塗料層の剥がれ落ちが防止されるので、美観が保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスケット、ランチョンマット、トレイ等の籐と芒草との編み製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バスケット、ランチョンマット、トレイ等の籐編み製品が製作される場合、まず、籐の皮が剥かれ、籐芯(丸芯とも言われる)と籐皮とに分けられる。そして、籐芯がスパイラル状に形作られ、それらが籐皮で巻かれながら留め付けられる。この籐編み製品は、従来はナチュラル色のもの又は漂白したものしか存在しなかった。それは、籐芯は染色が可能であるが、籐皮は琺瑯質であり、水を弾きやすいので、濃い色に染めることが不可能であったからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、インテリア・雑貨業界において、艶消し黒色(竹炭のような色)が流行しており、籐編み製品にもこの色を着色することで、和や洋に限定しない様々な生活シーンにマッチする高級感のある商品を創ることが望まれている。茶色に染めること関しては、本願出願人は、炭化を利用することにより可能にしているが、染色によって濃い黒色に染めることは出来なかった。スモークといわれる着色方法もあるが、くさい臭いを有し、茶色に着色され、黒色には着色されないので、商品としては不適切である。漆器塗りの材料としてよく用いられるカシュー塗料を吹き付けることも考えられるが、籐皮が琺瑯質で硬く、色の付着が不完全となるので、輸送時の衝撃及び使用中に、容易に剥げ落ちて見栄えが悪くなるという問題がある。
【0004】
籐を加工して得られる平芯及び竹(身の部分)を籐皮の代わりに用いることにすると、染色は容易にされ得るが、断面がフラットで盛り上がりに欠けるので美しくないという問題点がある。また、巻き付け作業を繰り返し行う間に強靱さ及び柔軟性が減じ、両端部が裂けるという問題が発生する。
【0005】
本発明の目的は、籐編み製品の風合いが保持されるとともに、地肌から美しい黒色に染色されており、使用中に美観が保持され得る籐と芒草との編み製品及びその製造方法の提供にある。本願出願人は、鋭意研究の結果、芒草の芯に当たる芒芯を上記籐皮の代わりに用いることにより、不可能であった濃い黒色の染色及び着色が可能となり、良好な風合いを有する籐と芒草との編み製品が得られることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る籐と芒草との編み製品は、
籐の籐芯からなる主材と、芒草の芒芯からなる副材とを備えており、隣り合う主材が副材によって編み止められており、主材及び副材が黒色を有する。
【0007】
好ましくは、主材及び副材が黒色に染色された後、黒色塗料によりさらに着色されて構成される。この黒色塗料としては漆風黒色塗料が好ましい。
【0008】
好ましくは艶消し塗料によって、艶消し処理が施されている。
【0009】
本発明に係る籐と芒草との編み製品の製造方法は、
(1)籐から籐芯が分離される工程、
(2 芒草から芒芯が分離される工程、
(3)籐芯が芒芯により編み止められる工程
(4)染色材に浸漬されて、黒色に染色される工程
及び
(5)漆風黒色塗料により1回又は2回以上、着色される工程
を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の籐と芒草との編み製品は、籐編み製品の風合いが保持されるとともに、地肌の細部まで美しい黒色に染色され、使用中に、万が一、表面の塗料層が剥がれても、美観が保持され得る。黒色塗料が吹き付けられた後は、その被膜により色落ちが防止される。
【0011】
本発明の籐と芒草との編み製品の製造方法によれば、籐編み製品の風合いが保持されるとともに、地肌から美しい黒色に染色されており、使用中に、表面の塗料層が剥がれても美観が保持される籐と芒草との編み製品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る籐と芒草との編み製品であるバスケット1が示された斜視図である。バスケット1は円筒状で黒色を有しており、本体1aと蓋部1bとを有しており、小物入れとして用いられる。このバスケット1は、スパイラル状に巻かれた籐芯2が、芒芯3により編み止められた構造を有する。図1においては、この構造が理解され易いように、芒芯3の一部が省略されている。
【0014】
図2は、芒芯3の材料である芒草4が示された斜視図である。芒草4は、琺瑯質の表皮5を有しており、内部には芒芯3を有する。芒芯3は琺瑯質の表皮6で覆われている。芒芯3はかまぼこ状に盛り上がった表面部3aと、平面状の裏面部3bとを有する。裏面部3bは、中央部に溝部3cを有している。表面部3aは美しい繊維質であり、両端部には筋状の凹部3dを有する。表皮5及び表皮6は琺瑯質であるので、染色は困難であるが、表皮6を剥かれた芒芯3は、安定した染色が可能である。バスケット1においては、芒芯3の表面部3aを外側に向けて、籐芯2が編み留められる。
【0015】
図3は、図1のバスケット1の製造方法が示されたフローチャートである。まず、籐の皮が剥かれて、籐芯2が分離される(STEP1)。次に、芒草4の表皮5及び芒芯3の表皮6が剥かれて、芒芯3が分離される(STEP2)。分離された籐芯2がスパイラル状に巻かれつつ、隣り合う籐芯2が芒芯3により編み止められて円筒状の本体1a及び蓋部1bが形成される(STEP3)。そして、形成された本体1a及び蓋部1bが、沸騰している染色材中に浸漬されて、黒色に染色される(STEP4)。黒色に染色された後、乾燥させられた本体1a及び蓋部1bに、漆風黒色塗料が3回吹き付けられて、さらに着色される(STEP5)。最後に、艶消し塗料が吹き付けられて、艶消し処理が施される(STEP6)。
【0016】
籐皮も芒芯3と同様にかまぼこ状の表面を有するので、籐芯が籐皮により編み留められた場合、美しい外観を呈するが、厚みがあるため、籐芯を巻き留めるときに隙間が空く。そのため背引きという加工方法により、籐皮の山型の表面を削った状態で編み留めに用いられている。これに対し、本実施形態に係る芒芯3の表面部3aは水分を含むと柔軟かつ強靱になり、籐芯2間を締め付けながら巻き留めていくことが出来るので、フィットして隙間が生じない。そして、背引きが不要であるので、芒芯3の表面部3aの盛り上がった形状がそのまま表れ、筋状の美しい繊維質が表れる。これは籐芯2の繊維質とよく似ているので、美しい外観を有することになる。
【0017】
編み上げたバスケット1に直接、塗料を吹き付けると、塗料が細部まで浸透するのは困難であり、輸送時の衝撃、使用時の網目のずれ等により、籐芯2及び芒芯3の地肌が見えてしまうことも考えられるので、本実施形態においては、漆風黒色塗料の吹き付け前に、バスケット1を染色している。芒芯3が用いられることで、黒色染料が芒芯3の中まで浸透するので、バスケット1は籐芯2及び芒芯3ともに、地肌から美しく黒色に染色される。
【0018】
STEP5の漆風黒色塗料の吹き付け処理により、バスケット1の風合いがさらに増すが、この漆風黒色塗料層の付着は完全であるので、色落ちすることがなく、バスケット1の使用中、美観が保持される。漆風黒色塗料層による被膜により水が弾かれるので、汚れが防止され、清潔感が維持される。また、無臭であるので、食器、食品等が収納され得、台所での使用が可能となる。さらに、この塗料にはカビ及び虫食いが防止される効果もある。
【0019】
なお、本実施形態においては、黒色に染色された本体1a及び蓋部1bに、漆風黒色塗料が3回吹き付けられて着色される場合につき説明しているが、吹き付けの回数は3回に限定されるものではなく、また、吹き付けではなく、塗布により着色されることにしてもよい。そして、漆風黒色塗料の吹き付け処理が施されなくても、バスケット1は地肌から染色されているので、表面の塗料層が剥がれ落ちた場合において美観が保持され得るが、前述した利点を有するので、漆風黒色塗料の吹き付け処理が施されるのが好ましい。また、黒色塗料としては漆風黒色塗料に限定されないが、前述した利点を有するので、漆風黒色塗料を用いるのが好ましい。さらに、艶消し処理によって、竹炭の風合いが付与されるので、艶消し処理が施されるのが好ましい。
【0020】
図4は、本発明の他の実施形態に係る籐と芒草との編み製品であるランチョンマット11が示された斜視図である。ランチョンマット11は、角板状で黒色を有している。このランチョンマット11は、スパイラル状に巻かれた籐芯12が、芒芯13により編み止められた構造を有する。
【0021】
このランチョンマット11は、図1のバスケット1と同様にして製造される。籐芯12がスパイラル状に巻かれつつ、隣り合う籐芯12が芒芯13により編み止められて角板状に形成される。次に、これが染色材中に浸漬されて、黒色に染色され、さらに、漆風黒色塗料が吹き付けられて、安定した濃い黒色に着色される。最後に、艶消し塗料が吹き付けられて、艶消し処理が施される。
【0022】
以上のようにして製造されたランチョンマット11は、籐芯12が芒芯13により編み止められており、籐芯12が籐皮により編み止められている場合のランチョンマットより良好な風合いを有する。そして、芒芯13が用いられることで、ランチョンマット11は細部まで美しく黒色に着色されており、漆風黒色塗料層により、色落ちが防止されているので、美観が保持される。
【0023】
図5は、本発明のさらに他の実施形態に係る籐と芒草との編み製品であるトレイ21が示された斜視図である。トレイ21は、丸盆状で黒色を有する。このトレイ21は、スパイラル状に巻かれた籐芯22が、芒芯23により編み止められた構造を有する。
【0024】
このトレイ21は、図1のバスケット1と同様にして製造される。籐芯22がスパイラル状に巻かれつつ、隣り合う籐芯22が芒芯23により編み止められて丸盆状に形成される。次に、これが染色材中に浸漬されて、黒色に染色され、さらに、漆風黒色塗料が吹き付けられて、安定した濃い黒色に着色される。最後に、艶消し塗料が吹き付けられて、艶消し処理が施される。
【0025】
以上のようにして製造されたトレイ21は、籐芯22が芒芯23により編み止められており、籐芯22が籐皮により編み止められている場合のトレイより良好な風合いを有する。そして、芒芯23が用いられることで、トレイ21は細部まで美しく黒色に着色されており、漆風黒色塗料層により、色落ちが防止されているので、美観が保持される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、バスケット、ランチョンマット、トレイ等の各種の籐と芒草との編み製品及びその製造方法に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る籐と芒草との編み製品であるバスケットが示された斜視図である。
【図2】図2は、芒草が示された斜視図である。
【図3】図3は、図1のバスケットの製造方法が示されたフローチャートである。
【図4】図4は、本発明の他の実施形態に係る籐と芒草との編み製品であるランチョンマットが示された斜視図である。
【図5】図5は、本発明のさらに他の実施形態に係る籐と芒草との編み製品であるトレイが示された斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1・・・バスケット
2・・・籐芯
3・・・芒芯
3a・・・表面部
3b・・・裏面部
3c・・・溝部
3d・・・凹部
4・・・芒草
5・・・表皮
6・・・表皮
11・・・ランチョンマット
12・・・籐芯
13・・・芒芯
21・・・トレイ
22・・・籐芯
23・・・芒芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
籐の籐芯からなる主材と、芒草の芒芯からなる副材とを備えており、隣り合う主材が副材によって編み止められており、主材及び副材が黒色を有する籐と芒草との編み製品。
【請求項2】
上記主材及び副材が黒色に染色された後、黒色塗料によりさらに着色されて構成される請求項1に記載の籐と芒草との編み製品。
【請求項3】
上記黒色塗料が漆風黒色塗料である請求項2に記載の籐と芒草との編み製品。
【請求項4】
艶消し塗料によって、艶消し処理が施されている、請求項1から3のいずれかに記載の籐と芒草との編み製品。
【請求項5】
籐から籐芯が分離される工程と、
芒草から芒芯が分離される工程と、
上記籐芯が上記芒芯により編み止められる工程と、
染色材に浸漬されて、黒色に染色される工程と、
漆風黒色塗料により1回又は2回以上、着色される工程と
を含む籐と芒草との編み製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−291382(P2006−291382A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111814(P2005−111814)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(304016480)株式会社創元舎 (3)
【Fターム(参考)】