説明

米のような食品を調理するための方法及び装置

米4のような食品を調理するための装置17は、或る時間の間、沸騰水の影響下で食品4を加熱することにより実行される調理工程を実行するように構成される。装置17は、装置17の動作を制御するための手段23を有し、制御手段23は、調理工程において利用される総量の水5が徐々に食品4に供給され、該総量の水5の大部分の供給が、調理工程が既に実行されているときに実行されるように、装置17の構成要素を動作させるように構成される。好適には、調理工程は、総量の水5のうち比較的少ない部分を蒸気へと蒸発させ、該蒸気を食品4に供給し、該蒸気が食品4上で凝結することを可能とすることにより、開始される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米のような食品を調理するための方法であって、実際の調理工程が、或る時間の間、熱水の影響下で該食品を加熱することにより実行される方法に関する。更に、本発明は、米のような食品を調理するための装置であって、食品を収容するための空間、該空間に水を供給するための手段、熱を発生するための手段、及び該食品の調理工程を制御するための手段を有する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、とりわけ米のような穀物を調理する方法は一般に知られており、或る量の食品及び水で満たされるように構成された装置によって実行され得る。米を調理する目的のため、多くのタイプの炊飯器が入手可能であり、調理工程において必要な熱を供給するための電気加熱部と、調理工程を制御するための手段とを有する電気炊飯器を含む。従来の電気炊飯器の場合には、ユーザが或る量の米を調理したい場合には、ユーザは該炊飯器の空間を該量の米と適量の水とで満たし、次いで該炊飯器を起動させて米と水との混合物を或る時間の間加熱する。該炊飯器の動作の間、米と水との混合物は、水が沸騰を始めるまで加熱され、それによって水の沸点で米が連続的に加熱される。
【0003】
米が調理される時間を短縮する既知の方法によれば、米調理工程は高い温度で実行される。通常の状況においては、水の沸点は100℃であるが、熱力学の法則によれば、周囲の圧力が増大すると沸点は上昇する。これに鑑み、加圧された調理鍋として利用されるように適合された炊飯器が開発されてきた。通常、加圧型炊飯器は、鍋を閉じるための位置に鍋の蓋を堅固に押さえるための機構を有する。圧力は、調理工程の間、水の沸騰工程の間に起こる蒸気の形成に基づいて生じさせられる(該蒸気が鍋から脱出できないようにされているため)。このようにして、水の沸点は110乃至120℃まで上昇させられ、約2バールもの圧力が実現される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の炊飯器においては、米と水との混合物の加熱に約10分掛かり、実際の米調理工程には約20分掛かる。加圧型炊飯器においては、水が100乃至120℃の温度まで沸騰させられる場合、実際の米調理工程には約10分しか掛からない。このことは、米を調理するために必要とされる全体の時間が、著しく短縮されることを意味する。しかしながら、実際の調理工程を開始する目的のための、米と水との混合物の加熱は、依然として約10分掛かる。それ故、加圧型炊飯器においては、調理工程を開始するために必要とされる時間が、実際の調理工程を実行するために必要とされる時間と同じオーダーである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、食品、とりわけ米のような穀物を調理するための装置において、実際の調理工程を開始するために必要とされる時間を短縮するための手段を提供することにある。この目的は、食品を調理する方法であって、実際の調理工程は、或る期間の間熱水の影響下で食品を加熱することにより実行され、前記工程に利用される総量の水が徐々に前記食品に供給され、前記総量の水のうちの大部分の供給が、前記調理工程が行われているときに実行される方法を提供することにより達成される。
【0006】
本発明の範囲内において、調理されるべき食品は米であっても良いが、このことは必須ではなく、本発明は他のタイプの食品にも適用可能である。
【0007】
本発明は、目的量の食品を調理するために必要とされる総量の水を該食品に一度に供給し、次いで得られた食品と水との混合物を加熱する従来の方法とは、異なる方法を提供する。その代わりに、水は食品に徐々に供給される。このようにして、総量の水のうちの比較的少ない部分のみを供給することによって実際の調理工程を開始することが可能となり、該総量のうちの大部分である残りの供給が調理工程の間に実行されるようにする。斯くして、本発明による方法を実行することにより、実際の調理工程が、従来の方法を実行するよりもかなり早く開始される。なぜなら、後者の方法とは異なり、食品と総量の水との混合物を加熱する必要がないからである。
【0008】
全体の調理工程の最も効果的な迅速化は、水が食品に供給される前に加熱されるときに実現される。調理工程が既に実行されているときに供給されている水を加熱することが特に有利である。なぜなら、この場合には、水の供給の結果としての調理工程の中断が回避されるからである。水の加熱が実際の調理工程と並行して実行される事実のため、
従来の実際の調理工程に先立つ水の加熱に比べて、多くの時間が節約される。
【0009】
実際の調理工程を開始するために必要とされる時間は、総量の水のうちの第1の部分が蒸気の形で食品に供給される場合に、著しく短縮され得る。一般に、蒸気を生成し該蒸気を食品上で凝結させることは、食品を約100℃にまで加熱する非常に高速な態様である。蒸気生成は2分よりも多い時間を必要とせず、蒸気の凝結の結果である食品の加熱工程には数秒しか掛からない。
【0010】
本発明による方法を実行する実用的な方法においては、前記食品は、或る量の前記食品を収容するための空間と、前記空間に水を供給するための水供給手段と、熱を生成するための熱生成手段と、を有する装置において調理される。上述したような装置が適用されるときには、実際の調理工程は、準備工程を実行することにより開始されても良く、前記準備工程の間に、前記水供給手段が前記装置の前記空間に存在する前記食品に水を供給するように動作させられ、この場合には、前記熱生成手段は、前記水の供給が蒸気の供給の形で実行されるようにするために前記水を加熱するように動作させられ、前記水供給手段はまた、前記実際の調理工程の間に前記装置の前記空間に存在する前記食品に水を供給するように動作させられても良く、この場合には、前記熱生成手段は、前記水の供給が熱水の供給の形で実行されるようにするために前記水を加熱するように動作させられる。
【0011】
上述したステップが実行される場合には、該装置の熱生成手段が動作させられ、食品が加熱されて実際の調理工程が開始されるように、蒸気が生成され食品へと供給される。続いて、食品を調理するために必要とされる水の残りが食品に供給され、該水は適切な温度にまで加熱され、それによって調理工程が連続的となり、より多くの水が追加されても妨害されない。蒸気が食品に供給されるときには調理工程は既に開始されており、実際の調理工程の時間の他に必要とされる余分な時間は、蒸気を生成するために必要とされる時間と同程度の長さである。該時間は長い必要はなく、例えば食品が米である場合には、70ミリリットルの水を基に生成された蒸気によって1キログラムの食品が加熱され得、パワーが一般的な1400Wである場合には2分よりも多い時間を必要としない。調理工程が開始された後、食品に供給される必要がある残りの量の水の加熱は調理工程の間に実行され、それにより、総量の水のうちの大部分であるこの量の水を加熱する処理は、余分な時間をもたらさない。
【0012】
好適には、適用される装置は加圧された装置である。換言すれば、前記或る量の前記食品を収容するための空間が、前記調理工程の間に前記空間内における圧力の増大を実現するために密閉されることが好適である。このようにして、調理時間の最大限の短縮が達成され得る。なぜなら、水の沸点は圧力の影響下において上昇し、そのため調理工程がより高い温度で実行されるからである。
【0013】
食品が最初に蒸気の影響下で加熱され次いで熱水の影響下で加熱される場合、後者の加熱工程の間に食品に熱水が供給され、蒸気の供給から水の供給への遷移が実行される。該遷移は、前記熱生成手段が動作させられるパワーレベルを減少させることにより、及び/又は前記装置の前記空間に存在する前記食品に供給される水が前記熱生成手段に関連する領域を通して流される質量流量を増大させることにより、生じさせられる。いずれの場合にも、該遷移は、食品に供給される水が熱を蓄積することを可能とされる程度を低減することにより生じ得る。
【0014】
本発明による方法は、該方法を実行するための装置の構成要素を動作させるように構成された、前記装置の動作を制御するための手段を持つ装置において実行されることを意図される。前記装置は更に、前記食品を収容するための空間と、前記空間に水を供給するための水供給手段と、熱を生成するための熱生成手段と、を有し、前記制御手段は最初に、前記食品を収容するための空間に水を供給するように前記水供給手段を動作させつつ、前記水の供給が蒸気の供給の形で実行されるようにするために前記水を蒸気へと加熱させるように前記熱生成手段を動作させ、次いで、前記食品を収容するための空間に水を供給するように前記水供給手段を動作させつつ、前記水の供給が熱水の供給の形で実行されるようにするために前記水を蒸気へと加熱させるように前記熱生成手段を動作させるように構成されても良い。食品上での蒸気の凝結の影響下で食品を迅速に加熱する目的のために最初に食品に蒸気を供給し、次いで斯くして開始された実際の調理工程の間食品に熱水を供給することは、食品を調理するために必要とされる全体の時間を比較的短くし、それによって本発明の目的が達成される。
【0015】
蒸気の供給から熱水の供給への遷移を実現する目的のため、前記装置の制御手段は、調理工程の間種々のパワーレベルで前記熱生成手段を動作させるように構成されても良く、ここで最初のパワーレベルが後続するパワーレベルよりも高い。加えて、又は代替として、前記制御手段は、前記水が前記熱生成手段に関連する領域を通して流される質量流量を制御するように構成されても良く、最初の質量流量が後続する質量流量よりも低い。
【0016】
本発明による装置は、加圧された調理装置を必ずしも必要とするものではないが、該装置において食品を調理するために必要な時間の望ましい短縮の観点で言えば、このことは好適な選択肢である。
【0017】
本発明の範囲内において、該装置の熱生成手段の種々の実用的な実施例が実現可能である。例えば、食品を収容するための空間に供給される水を加熱するための流水加熱器が適用されても良く、該空間に関連した少なくとも1つの付加的な加熱器が適用されても良い。また、熱生成手段が該空間に関連した熱ブロックを有することも可能であり、該熱ブロックは、該空間に供給される水を加熱し、該空間の内容を加熱する、組み合わせられた機能を持っても良い。
【0018】
実用的な実施例においては、本発明による装置は、貯水槽と、前記食品を収容するための空間の方向に前記貯水槽から水を送り出すための手段とを有する。斯かる場合においては、該装置のユーザは、所望量の調理されるべき食品で該装置の該空間を満たし、少なくとも適量の水で貯水槽を満たし、食品を調理する目的のために該装置の動作を開始する必要があるのみであり、ユーザからのいずれの更なる動作の必要もなく、調理工程は該装置により自動的に実行される。
【0019】
本発明の上述した及びその他の態様は、本発明による炊飯器の以下の2つの実施例の説明を参照しながら説明され明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】最新技術による加圧型炊飯器の斜視図を模式的に示す。
【図2】図1に示された炊飯器の幾つかの構成要素を図式的に示す。
【図3】本発明の第1の好適な実施例による炊飯器の幾つかの構成要素を図式的に示す。
【図4】本発明の第2の好適な実施例による炊飯器の幾つかの構成要素を図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は以下、図面を参照しながら、より詳細に説明され、図面において同一の又は類似する部分は、同一の参照番号により示される。
【0022】
本発明による炊飯器の2つの実施例の詳細な説明の前に、加圧型炊飯器の一般的な特徴が図1及び図2に基づいて説明される。図1は、最新技術による加圧型炊飯器1を示し、図2は、炊飯器1の幾つかの構成要素を示す。
【0023】
炊飯器1の2つの主要な構成要素は、適切な量の米4及び水5のための空間3を持つボウル2と、ボウル2の開口側をカバーして空間3を密閉するための蓋6と、である。図1に示されるようなボウル2に対する蓋6の位置は、空間3を密閉するための位置である。当該位置(閉じ位置とも呼ばれる)に蓋6が固定されたままに維持する目的のため、炊飯器1は、蓋ロック機構7を備える。とりわけ、該機構7は、ボウル2に配置された第1の要素8と、蓋6に配置された第2の要素9とを有し、要素8及び9は、合わせられたときに互いに係合するように構成される。要素8及び9の係合された構成は、図1に示される。図示された例において、蓋ロック機構7は、要素8及び9の係合を解放するための機構(図示されていない)を起動する目的のため、炊飯器1のユーザにより押下されても良いボタン10を有する。
【0024】
有利にも、蓋ロック機構7の要素8及び9は、図1に示すように、細長い形状を持ち、炊飯器1の外周に対して突出し、それにより要素8及び9は、ユーザにより把持され得るハンドルとしての機能をも持っても良い。既に言及された構成要素の他に、炊飯器1は更に、ボウル2に配置され且つユーザによるボウル2又は炊飯器1全体の取り扱いを容易化するように働くハンドル11、蓋6の上に配置され且つユーザにより蓋6の取り扱いを容易化するように働くノブ12、及び調理工程に関するユーザからの入力を受信するように働くユニット13のような構成要素を有する。例えば、ユニット13は、オン/オフスイッチと、調理工程のパラメータをユーザが調節するためのノブを有する。更に、炊飯器1は電気機器であるから、炊飯器1は電気コード14及びプラグ15を有する。
【0025】
図2を参照すると、炊飯器1は、ボウル2の底部に配置された加熱部16を有することに留意されたい。炊飯器1が動作させられるときには、加熱部16は、米4を調理するために必要な熱を供給する。
【0026】
ユーザが或る量の米4を炊飯器1によって調理することを決めた場合、以下の動作がとられる。最初に、ユーザは当該量の米4と適量の水5をボウル2に入れる。続いて、ユーザは炊飯器1の蓋6を閉じ位置にし、要素8及び9が合わさるようなボウル2上の位置に蓋6を置くことにより、蓋ロック機構の要素8及び9が互いに係合するようにする。この時点で、調理工程が開始される。必要であれば、ユーザは調理器1の設定を調節し、次いで調理器1を加熱部16がスイッチオンされる起動状態にする。
【0027】
加熱部16により生成される熱の影響の下、米4及び水5が加熱される。特定の時点において、水5が沸騰を始め、調理工程が実行される温度が、水5の沸点の温度に対応することとなる。しかしながら当該温度は、炊飯器1内の圧力が約1バールである通常の周囲圧力よりも高いため、通常の温度である100℃よりも高い。このことは、空間3が蓋6により密閉されているために、水5の沸騰の結果として得られる蒸気がボウル2の空間3内に閉じ込められるという事実による。例えば、該圧力は約2バールの値にまで上昇し得、その結果、米4が約110乃至120℃の温度で調理される。
【0028】
高い温度に基づき、調理工程は、通常の周囲圧力の下で実行される調理工程よりも短い時間しか要しない。通常、米4及び水5の混合物を加熱して、水5が沸騰する実際の調理工程を開始することは、約10分を要する。通常の温度である100℃で沸騰している水5の影響下で米4を調理することは約20分を要し、110乃至120℃の上昇させられた温度で沸騰している水5の影響下で米4を調理することは約10分を要し、約30分の全体に対して約10分の時間削減が実現される。炊飯器1内で約3バールの圧力が実現される場合には、斯かる圧力では沸騰している水の影響下で米4を調理することは約5分を要するので、時間削減は約15分にもなり得る。
【0029】
最新技術による炊飯器1と同様に、本発明による炊飯器は、空間3を持つボウル2と、空間3を密閉する蓋6とを有する。しかしながら、最新技術による炊飯器1と本発明による炊飯器との間には幾つかの重要な違いがあり、図3及び4に基づいて本発明による炊飯器の2つの実施例の以下の説明から明らかとなるであろう。
【0030】
図3は、本発明の第1の好適な実施例による炊飯器17の構成要素を示す。ボウル2、蓋6及びボウル2の底部に配置された加熱要素16に加えて、炊飯器17は、貯水槽18と、貯水槽18からボウル2の空間3へと水5を導く導管19とを有する。導管19において種々の構成要素、とりわけボウル2の方向に貯水槽18から水5を送り出すためのポンプ20と、水5を加熱するための流水加熱器21と、貯水槽18が空である場合であっても調理工程の間ボウル2の空間3における超過気圧が維持されるようにする一方向弁22と、が配置される。更に、炊飯器17はマイクロコントローラ23を有し、該マイクロコントローラ23は図3におけるブロックとして図式的に示され、炊飯器17の種々の構成要素の動作を制御するように働く。炊飯器17の種々の構成要素、とりわけ加熱要素16、ポンプ20及び流水加熱器21に対する、マイクロコントローラ23からの制御信号の送信は、図3において破線により図式的に示される。
【0031】
炊飯器17により或る量の米4を調理する目的のため、ユーザは当該量の米4をボウル2に入れ、貯水槽18を水5で満たす。続いて、ユーザは蓋6を閉じ位置に動かし、蓋6をボウル2に付ける。調理工程が開始されても良い旨の信号をユーザが供給すると、マイクロコントローラ23が起動され、以下に説明される態様で、加熱要素16、ポンプ20及び流水加熱器21を操作する。
【0032】
最初に、貯水槽18から水を送り出すためにポンプ20が起動され、所与のポンプ速度で蒸気が形成される程度まで熱を生成するために流水加熱器21が起動され、該蒸気は一方向弁22を通過してボウル2の空間3に入る。空間3の中では、米4が該蒸気の影響の下で加熱され、実際の調理工程が開始され、ここで第1の量の熱水が、蒸気の凝結に基づいて得られる。
【0033】
第2に、実際の調理工程の間、或る期間の間調理工程の進行を維持し、該工程において適量の水を利用するために、熱水5がボウル2の空間3に供給される。流水加熱器21において蒸気の形成が生じる第1の状況に関して、蒸気の供給から熱水の供給への遷移を実現するため、流水加熱器21のパワーは減少され、及び/又は、ポンプ速度が増大される。とりわけ、ポンプ20及び流水加熱器21は、水5が約2乃至3バールの圧力において約120乃至135℃の温度まで加熱されるように動作させられる。加熱要素16は調理工程の間ボウル2を加熱するように動作させられるが、調理工程の後に米4を保温するためにも利用されても良い。
【0034】
本発明による炊飯器17においては、炊飯器17の起動から調理工程の終了までの時間は、約7乃至12分まで短くなり得る。米4の量が約1kgであり、パワーが1400Wである場合には、米4の加熱及び実際の調理工程の開始の工程は約2分よりも長い時間を要さず、実際の調理工程は5乃至10分よりも長い時間を要さない。これらの状況においては、蒸気の生成は、流水加熱器21において総量70mlの水を蒸発させることにより実行されても良く、これにより米4を加熱するために十分な蒸気が得られる。既に述べたように、このことは約2分を要する。3000Wのパワーにおいては、米4の加熱は約1分で実行され得、米4を炊かれた状態にまでするために必要とされる時間の更なる削減が実現され得る。実際の調理工程の間に流水加熱器21により加熱されボウル2の空間3へと供給される水5の総量は約1リットルであっても良く、該量は1kgの米4を調理するために適切な量であることは、留意されたい。
【0035】
図4は、本発明の第2の好適な実施例による炊飯器24を示す。本発明の第1の好適な実施例による炊飯器17とは異なり、加熱要素16及び流水加熱器21の代わりに、本発明の第2の好適な実施例による炊飯器24は、ボウル2の底部に配置された熱ブロック25を有する。実際には、加熱要素16の機能と流水加熱器21の機能とが、熱ブロック25へと結合される。最初に、熱ブロック25が加熱され、それにより熱ブロック25を通過する水5が第1の状態において蒸気へと加熱され、第2の状態において沸点まで加熱され得る。この点において、熱ブロック25は、流水加熱器21のように機能する。調理工程の後、熱せられた熱ブロック25は、本発明の第1の好適な実施例による炊飯器17における加熱要素16のように、米4を保温する機能を持つ。
【0036】
熱ブロック25が利用される場合には、該構成要素は必ずしもボウル2の底部に配置されなくとも良い。その代わり、熱ブロック25は他の位置に配置されても良く、一方で、調理工程の後に米4を保温する目的のために、例えばPTC加熱器のような少なくとも1つの別個の加熱構成要素が、ボウル2の底部又は直立壁に配置されても良い。いずれの場合においても、水5を加熱し蒸気を生成する目的のために、少なくとも1つの適切な加熱器が適用されることが重要である。適切な加熱器の例は、加熱コイル及び誘導加熱器である。
【0037】
完全を期すため、図4と同様に図3においても、ボウル2の空間への蒸気及び/又は水の供給は、矢印により示される。
【0038】
本発明の範囲は以上に議論された例に限定されるものではなく、添付される請求項に定義された本発明の範囲から逸脱することなく幾つかの修正及び変更が可能であることは、当業者には明らかであろう。本発明は図面及び記載において図示され説明されたが、斯かる図示及び説明は単に例示又は実例であり、限定するものではない。本発明は、開示された実施例に限定されるものではない。
【0039】
本発明による装置17及び24の図示された例においては、食品4の調理工程は、約1バールである通常の周囲圧力よりも高い圧力で実行される。このようにして、実際の調理工程、即ち沸騰する水の影響下で食品4が調理される工程の、時間の短縮が得られる。しかしながら、圧力を与えることは必須ではない。蒸気を生成し食品4に蒸気を供給することによって調理工程が比較的早く開始されるという事実のため、最新技術によるいずれの装置と比べても、時間短縮は依然として可能である。
【0040】
完全を期すため、本発明による装置17及び24は、米4を調理することを主に意図された炊飯器17及び24であっても良いことに留意されたい。しかしながら、このことは、本発明は他の種類の食品の場合に適用できないことを意味するものではない。
【0041】
有利にも、実用的な実施例においては、本発明による装置17及び24は、ボウル2の空間3に広がっている圧力が危険なほどに高くなることを防ぐための手段を有する。とりわけ、斯かる手段は、圧力を軽減するように構成されても良く、例えば圧力軽減弁を有しても良い。図3及び4において、斯かる弁はブロックとして図式的に示され、参照番号26により示されている。本発明の範囲内で、いずれの適切な手段が適用されても良く、該手段がマイクロコントローラ23に結合されたセンサを有することも可能である。
【0042】
図面、説明及び添付される請求項を読むことにより、請求される本発明を実施化する当業者によって、開示された実施例に対する変形が理解され実行され得る。請求項において、「有する(comprising)」なる語は他のステップ又は要素を除外するものではなく、「1つの(a又はan)」なる不定冠詞は複数を除外するものではない。単一のプロセッサ又はその他のユニットが、請求項に列記された幾つかのアイテムの機能を実行しても良い。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に利用されることができないことを示すものではない。請求項におけるいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0043】
以上において、或る時間の間、沸騰水の影響下で食品4を加熱することにより実行される調理工程を実行するように構成された、米4のような食品を調理するための装置17、24が開示された。装置17、24は、装置17、24の動作を制御するための手段23を有し、制御手段23は、調理工程において利用される総量の水5が徐々に食品4に供給され、該総量の水5の大部分の供給が、調理工程が既に実行されているときに実行されるように、装置17、24の構成要素を動作させるように構成される。好適には、調理工程は、総量の水5のうち比較的少ない部分を蒸気へと蒸発させ、該蒸気を食品4に供給し、該蒸気が食品4上で凝結することを可能とすることにより、開始される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米のような食品を調理する方法であって、実際の調理工程は、或る期間の間熱水の影響下で前記食品を加熱することにより実行され、前記工程に利用される総量の水が徐々に前記食品に供給され、前記総量の水のうちの大部分の供給が、前記調理工程が行われているときに実行される方法。
【請求項2】
前記水は前記食品に供給される前に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記総量の水のうち第1の部分は、蒸気の形で前記食品に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記食品は、或る量の前記食品を収容するための空間と、前記空間に水を供給するための水供給手段と、熱を生成するための熱生成手段と、を有する装置において調理され、前記実際の調理工程は、準備工程を実行することにより開始され、前記準備工程の間に、前記水供給手段が前記装置の前記空間に存在する前記食品に水を供給するように動作させられ、前記熱生成手段は、前記水の供給が蒸気の供給の形で実行されるようにするために前記水を加熱するように動作させられ、前記水供給手段はまた、前記実際の調理工程の間に前記装置の前記空間に存在する前記食品に水を供給するように動作させられ、前記熱生成手段は、前記水の供給が熱水の供給の形で実行されるようにするために前記水を加熱するように動作させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記或る量の前記食品を収容するための空間は、前記調理工程の間に前記空間内における圧力の増大を実現するために密閉される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記熱生成手段が動作させられるパワーレベルを減少させることにより、蒸気の供給から熱水の供給への遷移が生じさせられる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記装置の前記空間に存在する前記食品に供給される水が前記熱生成手段に関連する領域を通して流される質量流量を増大させることにより、蒸気の供給から熱水の供給への遷移が生じさせられる、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
米のような食品を調理するための装置であって、前記装置は、前記装置の動作を制御するための制御手段を有し、前記制御手段は、請求項1に記載の方法を実行するための前記装置の構成要素を動作させるように構成される装置。
【請求項9】
前記食品を収容するための空間と、前記空間に水を供給するための水供給手段と、熱を生成するための熱生成手段と、を有し、前記制御手段は最初に、前記食品を収容するための空間に水を供給するように前記水供給手段を動作させつつ、前記水の供給が蒸気の供給の形で実行されるようにするために前記水を蒸気へと加熱させるように前記熱生成手段を動作させ、次いで、前記食品を収容するための空間に水を供給するように前記水供給手段を動作させつつ、前記水の供給が熱水の供給の形で実行されるようにするために前記水を蒸気へと加熱させるように前記熱生成手段を動作させるように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記食品を収容するための空間は密閉可能である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記制御手段は、調理工程の間種々のパワーレベルで前記熱生成手段を動作させるように構成され、最初のパワーレベルが後続するパワーレベルよりも高い、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記水が前記熱生成手段に関連する領域を通して流される質量流量を制御するように構成され、最初の質量流量が後続する質量流量よりも低い、請求項12に記載の装置。
【請求項13】
前記熱生成手段は、前記食品を収容するための空間に供給される前記水を加熱するための流水加熱器と、前記空間に関連する少なくとも1つの更なる加熱器とを有する、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記熱生成手段は、前記食品を収容するための空間に関連する熱ブロックを有する、請求項9に記載の装置。
【請求項15】
貯水槽と、前記食品を収容するための空間の方向に前記貯水槽から水を送り出すための手段とを有する、請求項9に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−535055(P2010−535055A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518794(P2010−518794)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/IB2008/052991
【国際公開番号】WO2009/016566
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】