説明

米の炊飯方法

【課題】米飯の食感を損なわずに歩留まりを向上させることのできる米の炊飯方法を提供する。
【解決手段】炊飯時、卵白、カリウム塩及び大豆多糖類を添加して米を炊飯する。更には、ナトリウム塩を併用して含み、炊飯時のpH3.0〜9.0の範囲となるように調整する。更に、冷凍する場合にはトレハロースを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯の食感を損なわずに歩留まりを向上させることのできる米の炊飯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、米飯の食感改良に卵白などのタンパク質や有機酸などが使用されることが知られている。例えば、炊飯を行う際、生米100重量部に対して、0.1〜10重量部の食用タンパク質単独又は0.01〜5重量部の有機酸を添加する食感の優れた米飯又は粥の製造法(特許文献1)により、食感の優れた米飯又は粥が得られるとされている。更には、有機酸、有機酸塩や無機酸塩を有効成分とする米飯用食感改良剤として、乳酸、酒石酸等の有機酸や、それらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩などの有機酸塩、カリウム、カルシウム、マグネシウムの硫酸塩、塩酸塩、ナトリウムの硫酸塩などが使用され、有機酸は、つや、てり、くずれ等の外観、味、食感等に対し向上効果があり、有機金属塩は、つや、てり等の外観の向上に対して効果があり、無機金属塩は、食感の向上効果があることが記載されている(特許文献2)。
【0003】
一方、米飯の歩留まりを向上させるためには、単純に炊飯する時に加える水の量を増やすことが考えられるが、単純に加水量を増やしても、炊飯後の米飯はベチャベチャとしてしまい、食感が悪くなる。また、米飯改良剤として、カルシウム塩とカリウム塩の併用に加えて、更に、ナトリウム塩を併用することにより、通常の炊飯方法で同量の生米を炊飯しても、この米飯改良剤が添加されていない通常の炊飯方法による場合と比較して、多めに米飯を炊きあげることが出来るとされているが(特許文献3)、炊きあがった米飯の食感は軟らかくなる傾向にあり、米飯の食感を損なわず、米飯の歩留まりを向上させる方法が望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−56989号公報
【特許文献2】特開昭62−220162号公報
【特許文献3】特開2001−238617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、米飯の食感を損なわず、米飯の歩留まりを向上させる米の炊飯方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、米を炊飯する際、卵白、カリウム塩及び大豆多糖類を添加しておき、更に好ましくはナトリウム塩を併用して炊飯することにより、米飯の食感を損なうことなく、米飯の歩留まりを向上させることが出来ることを見いだした。
【0007】
更には、炊飯時のpH3.0〜9.0の範囲となるように調整すると更に良好であり、更には、冷凍米飯を調製する際には炊飯時に更にトレハロースを併用するのが好ましいことが判った。
【0008】
本発明は以下の態様を有する;
項1.卵白、カリウム塩及び大豆多糖類を添加して炊飯することを特徴とする米の炊飯方法。
項2.更に、ナトリウム塩を併用する項1に記載の米の炊飯方法。
項3.炊飯時のpHを3.0〜9.0の範囲となるように調整する項1又は2に記載の米の炊飯方法。
項4.更に、トレハロースを添加する項1乃至3のいずれかに記載の米の炊飯方法。
項5.項1乃至4のいずれかに記載の方法により炊飯された米飯。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、米飯の食感を損なうことなく、米飯の歩留まりを向上させる米の炊飯方法を提供出来るようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る米の炊飯方法は、卵白、カリウム塩及び大豆多糖類を添加して炊飯することを特徴とする。
【0011】
本発明で使用する卵白は、卵白末、生卵白、凍結卵白などを使用することができるが、好ましくは、卵白末を使用する。卵白の添加量としては、生米に対して、0.5〜4.0重量%、好ましくは、1.0〜3.0重量%を挙げることができる。
【0012】
本発明で使用するカリウム塩としては、酸の種類が塩酸、炭酸、クエン酸、リン酸、グルコン酸、酒石酸といった、有機酸、無機酸であるカリウム塩であれば特に制限されない。本発明で用いるカリウム塩の一例として、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸一カリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、グルコン酸カリウム、酒石酸カリウム、DL−酒石酸水素カリウム、L−酒石酸水素カリウム、及び塩化カリウム等から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができる。
【0013】
中でも、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、グルコン酸カリウム、及び塩化カリウムから選ばれる1種又は2種以上、更に好ましくはグルコン酸カリウム及び又は塩化カリウムを使用するのが好ましく、更には、グルコン酸カリウムをカリウム塩の主成分として使用するのが好ましい。カリウム塩の添加量としては、生米に対して、カリウムの量として、0.05〜0.5重量%、好ましくは、0.075〜0.3重量%、更に好ましくは、0.1〜0.2重量%を挙げることができる。
【0014】
本発明で使用する大豆多糖類とは、大豆由来のラムノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、グルコース、ウロン酸の1種もしくは2種以上を含むものであればよいが、大豆のなかでも子葉由来のものが好ましい。本発明の大豆多糖類は、その分子量がどのようなものでも使用可能であるが、高分子であることが好ましく、平均分子量が数千〜数百万、具体的には5千〜100万であるのが好ましい。なお、この大豆多糖類の平均分子量は標準プルラン(昭和電工株式会社)を標準物質として0.1MのNaNO溶液中の粘度を測定する極限粘度法で求めた値である。かかる大豆多糖類は商業的に入手可能であり、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のSM−700,SM−900、SM−1200などを挙げることができる。大豆多糖類の添加量としては、生米に対して、0.01〜1.0重量%、好ましくは0.05〜0.6重量%、更に好ましくは、0.1〜0.3重量%を挙げることができる。
【0015】
本発明の米の炊飯方法では、卵白、カリウム塩及び大豆多糖類に加え、更にナトリウム塩を併用して、炊飯すると良い。ナトリウム塩を併用することにより、炊きあがった米飯のべたつきの軽減効果が更に向上するからである。
【0016】
使用するナトリウム塩としては、酸の種類が塩酸、炭酸、クエン酸、リン酸、グルコン酸、酒石酸といった、有機酸、無機酸であるナトリウム塩であれば特に制限されない。例えば、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどが挙げられる。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、グルコン酸ナトリウムから選択される1種又は2種以上が好ましく、更には、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、グルコン酸ナトリウムから選択される1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0017】
更に、本発明では、炊飯時のpHが3.0〜9.0、好ましくは、4.0〜7.0、より好ましくは、4.0〜 5.5に調整されたものであることが好ましい。当該pHの範囲に調整することで、食感に影響を与えることなく歩留まりを向上させることが出来る。なお、pHがアルカリ側になると、炊いた米飯の色が黄味を呈する傾向を示すので、外観も重視する場合は、酸性条件に設定する方が好ましい。具体的には、pHが3.0未満となると、製造した米飯に酸味が強くなりすぎる傾向がある。またpHが7.0を超えると、炊きあがった米飯が黄みがかる傾向があり、更にはpHが9.0を超えると米飯が更に黄味がかる上に食感が軟らかくなりすぎる傾向となる。
【0018】
なお、pHの調整方法としては、前記のカリウム塩やナトリウム塩の配合量で調整できるほか、公知のpH調整剤を使用することができる。例えば、リン酸、フィチン酸、クエン酸、乳酸、グルコン酸、アジピン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸等の有機酸やその塩を挙げることができ、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、DL−酒石酸水素カリウム、L−酒石酸水素カリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、ピロリン酸二水素二ナトリウム、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、イタコン酸、α−ケトグルタル酸(抽出物)、フィチン酸、食酢などが挙げられる。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、フマル酸一ナトリウム、クエン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウムから選択される1種又は2種以上を使用するのが好ましく、更に好ましくは、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、クエン酸、グルコン酸ナトリウムから選択される1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0019】
更に、米飯を冷凍流通させる場合には、冷凍耐性を付与させるために、炊飯時にトレハロースも併用して添加しておくことが好ましい。トレハロースの添加量としては、生米に対して、0.1〜10.0重量%、好ましくは、0.5〜5.0重量%、更に好ましくは、1.0〜3.0 重量%を挙げることができる。
【0020】
なお、本発明では、炊飯時に、卵白、カリウム塩及び大豆多糖類、必要に応じてナトリウム塩、pH調整剤、トレハロースを別々に添加しても良いが、一剤化して添加することも可能である。その形状として、粉末状、フレーク状、粒状、ペースト状、液状等いずれの形態でも用いることが出来る。一剤化製剤の製造方法としては、従来公知の方法をとることができる。例えば、前記原料を粉体混合したり、原料を水に撹拌分散させたり、ホモゲナイズ分散させたりすることにより調製することができる。また、一剤化する際、必要に応じて、種々の食品や食品添加物を添加することが出来る。例えば、ショ糖、果糖、ぶどう糖、麦芽糖、デンプン糖化物、還元デンプン水飴、デキストリン、サイクロデキストリン、トレハロース等の糖類、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール類、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ソーマチン等の高甘味度甘味料、デンプン、調味料、香料、色素類等を添加することができる。
【0021】
また、本発明は前記炊飯方法により炊飯された米飯に関する。即ち、炊飯時に、卵白、カリウム塩及び大豆多糖類を含み、必要に応じてナトリウム塩、トレハロースを添加して炊飯した米飯は、米飯の食感を損なわずに歩留まりを向上させることができる。具体的には、従来の加水量よりも15重量%程度まで多く水を加えて炊飯しても、ベチャベチャした食感とならず、通常の加水量で炊飯した米飯と同様の食感を得ることが出来る。更に、pHを前記範囲に調整することにより、歩留まりを向上させ、外観(色)、食感において良好な米飯を製造することが出来る。
【0022】
本発明における米飯とは、原料となる米を精白した、うるち米、もち米、玄米などを炊飯したもので、白飯のみならず、赤飯、おこわ、ピラフ、パエリアといった、野菜、肉類、豆類などの他の食品具材と共に炊飯された米飯も含まれる。更には、米の他に、麦、粟、稗などの炊飯方法にも適用でき、更には、米と麦を半々にして炊いた飯など、米とその他の穀類を組み合わせて炊飯した飯にも適用可能である。また、米飯を乾燥、加熱、チルド、冷凍、レトルト処理等の2次加工を行ってもよい。なお、前述のとおり、冷凍する際は、卵白、カリウム塩及び大豆多糖類、必要に応じてナトリウム塩に加えて、トレハロースを添加して炊飯するのが好ましい。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「重量%」、「部」は「重量部」を示し、文中「*」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製を示す。
【0024】
実施例1
下記表1の処方通り標準品、ブランク品については水に、テストについては、表2に掲げる配合の米飯用添加剤をそれぞれ添加し攪拌溶解した水に、1時間浸漬し、炊飯器により炊飯した後、15分間蒸らし、炊飯後の重量を測定し、食感について官能評価を行った。結果を表3に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
最終歩留りは、(加水率)×(加熱歩留り)で算出している。
【0029】
表3について、歩留まりについては、最終歩留まりが高くなるほど、歩留まり向上効果が高く、また、官能評価については、標準品に近い食感になれば良好である。
【0030】
炊飯処方の水の添加量を増やしたブランク品、比1〜2,実1〜11のいずれも、一定の歩留まり向上効果が見られたが、カリウム塩を添加しない比1〜2は、食感が軟らかく、また粘り気も多かった。また、比3は炊飯できなかった。
【0031】
それに対して、卵白末、大豆多糖類及びカリウム塩を添加した、実1〜11について、食感もほぼ標準品に近づき良好であるが、ナトリウム塩を添加した実3〜11がなお良好であった。また、ナトリウム塩の中でも、リン酸塩(リン酸2水素ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム)のみを添加している実3、実4に比べて、フマル酸ナトリウムやグルタミン酸ナトリウムを併用した実5〜11が、塩味が軽減されており更に良好であった。
【0032】
また、実1〜11のいずれも、pHが3〜9の範囲であり、一定の歩留まり向上効果と、標準品に近い食感が得られる。但し、pHが4以下の実9は、食感は良好だがやや酸味が感じられ、pHが7を超えた実4は外観が黄みがかってくるため、酸味や外観を考慮すると、pHは4〜7の範囲がより好ましい。
【0033】
更に、得られた実1〜11の米飯を急速凍結後、500ワットの電子レンジにて100gあたり2分間加熱して解凍したが、凍結前と同様の食感であり、良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、米飯の食感を損なわず、米飯の歩留まりを向上させる米の炊飯方法を提供できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵白、カリウム塩及び大豆多糖類を添加して炊飯することを特徴とする米の炊飯方法。
【請求項2】
更に、ナトリウム塩を併用する請求項1に記載の米の炊飯方法。
【請求項3】
炊飯時のpHを3.0〜9.0の範囲となるように調整する請求項1又は2に記載の米の炊飯方法。
【請求項4】
更に、トレハロースを添加する請求項1乃至3のいずれかに記載の米の炊飯方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の方法により炊飯された米飯。