説明

米粒が結着した米菓の製造方法

【課題】米の形状を損なわず、柔らかく且つ米の風味の効いた米菓を製造できる米粒が結着した米菓の製造方法を提供すること。また、米の形状を損なわない米菓を容易に製造できる米粒が結着した米菓の製造方法を提供すること。
【解決手段】水浸漬した多量の米1に、少量の米粉とこの米粉以外の少量の増粘剤とを添加し混合して米1同士の粘着性を高め、この粘着性を高めた多量の米1を蒸した後所定形状の米塊体2に成形し、この成形した米塊体2を、0℃以下の状況下に3時間以下保持して急速に冷凍硬化させ、この硬化させた米塊体2から米菓生地3を調製し、この生地3をフライ又は焼成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の米粒が結着した米菓の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、多数の米(粒)が表出した形状を呈する米菓が市販されている。
【0003】
この種の米菓は、従来、主にもち米のみを使用して製造されるものが多く、一般には、蒸したもち米を型枠に充填しプレスすることで多数の米粒同士を接着(結着)させて米塊体を成形し、この米塊体を冷蔵庫で1〜2日固めてから切断して生地を得、この生地を乾燥した後にフライ又は焼き上げする製造方法が取られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述の従来製法で製造した米菓は、プレス後多数の米粒同士の接着が簡単にこわれてしまわないようにと、冷蔵庫に1〜2日もの長時間おいて固めるため、この工程中に蒸米自身が老化して食感が非常に硬いものとなってしまい、万人には受け入れられない商品となってしまっていた。
【0005】
また、食感を比較的柔らかめにしたものも見受けられるが、柔らかめなものは米粒同士の接着性が悪く、それ故、フライあるいは焼き上げの際や、流通過程で割れたり角が欠けたりするなどのこわれが非常に多いものとなっており、商品価値が低いものであった。
【0006】
また、一方、従来の製法では、例えば大型の方形状を呈する型枠に蒸したもち米を充填してプレスすることで、方形薄板状の米塊体を成形し、この米塊体を格子縞状(縦横二方向)に切断することで小型方形板状の米菓生地を得るようにしているが、このように米塊体を二方向に切断して生地を調製する方法においては、二方向切断時に生地が割れたり角が欠けたりしてしまうことが往々にしてあるという問題を有していた。
【0007】
本発明は、このような従来の米粒が結着した米菓の製造方法の欠点に注目し、これらを解決する製造方法を提供するものである。
【0008】
即ち、本発明は、米の形状を損なわず、柔らかく且つ米の風味の効いた米菓を製造することができる画期的な米粒が結着した米菓の製造方法を提供することを目的としている。
【0009】
また、本発明は、米の形状を損なわない米菓を容易に製造することができる画期的な米粒が結着した米菓の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
水浸漬した多量の米1に、少量の米粉とこの米粉以外の少量の増粘剤とを添加し混合して米1同士の粘着性を高め、この粘着性を高めた多量の米1を蒸した後所定形状の米塊体2に成形し、この成形した米塊体2を、0℃以下の状況下に3時間以下保持して急速に冷凍硬化させ、この硬化させた米塊体2から米菓生地3を調製し、この生地3をフライ又は焼成することを特徴とする米粒が結着した米菓の製造方法に係るものである。
【0012】
また、前記成形した米塊体2を、0℃以下の状況下に1時間以上2時間以下保持して急速に冷凍硬化させることを特徴とする請求項1記載の米粒が結着した米菓の製造方法に係るものである。
【0013】
また、水浸漬した多量の米1に、少量の米粉とこの米粉以外の少量の増粘剤とを添加し混合して米1同士の粘着性を高め、この粘着性を高めた多量の米1を、上部が開口する細長い箱型の蒸篭4に収容して蒸し、この蒸した米1を、上部が開口する細長い箱型であって前記蒸篭4と略同形状の成形型5に移し替えた後、この成形型5の上部開口部5A側から蒸した米1をプレスすることで細長い棒状の米塊体2に成形し、この棒状の米塊体2をこの米塊体2の長さ方向と直交する方向に切断して米菓生地3を形成し、この生地3をフライ又は焼成することを特徴とする米粒が結着した米菓の製造方法に係るものである。
【0014】
また、前記蒸篭4に収容して蒸した米1を、この蒸篭4を反転させることで前記成形型5に移し替えすることを特徴とする請求項3記載の米粒が結着した米菓の製造方法に係るものである。
【0015】
また、前記細長い棒状に成形した米塊体2を、0℃以下の状況下に3時間以下保持して急速に冷凍硬化させ、この硬化させた棒状の米塊体2をこの米塊体2の長さ方向と直交する方向に切断して前記米菓生地3を形成することを特徴とする請求項3,4のいずれか1項に記載の米粒が結着した米菓の製造方法に係るものである。
【0016】
また、前記フライ又は焼成した生地3に、調味液6を噴霧若しくは滴下して付着させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の米粒が結着した米菓の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上述のように、多量の米に、少量の米粉とこの米粉以外の少量の増粘剤とを添加し混合するから、少量の米粉と増粘剤とにより米の粒状感を阻害することなく、米同士の粘着性を良好に高めることができ、これにより米の形状が損なわれない程度の加圧でこわれのない米塊体を成形できるので、米の形状が損なわれずに表出する見栄えの良い米菓を製造できることになる。
【0018】
また、特に請求項1記載の発明においては、短時間の冷凍によって米塊体を硬化させるため、米の老化が進まず、柔らかな食感で且つ米の風味も効いた万人向けのおいしい米菓を製造できることになる上、硬化時間を短時間とする構成でありながら、冷蔵ではなく冷凍硬化させるため、米同士の粘着性が高いこともあいまって、後の生地調製のための切断加工等を行うに十分な硬度を発揮する米塊体を調製できることとなるなど、極めて実用性に秀れた画期的な米粒が結着した米菓の製造方法となる。
【0019】
また、特に請求項3記載の発明においては、粘着性を高めた多量の米を、上部が開口する細長い箱型の蒸篭に収容して蒸し、この蒸した米を、上部が開口する細長い箱型であって前記蒸篭と略同形状の成形型に移し替えた後、この成形型の上部開口部側から蒸した米をプレスすることで細長い棒状の米塊体に成形するため、大型の型枠内に蒸した米を移して広範囲をプレス成形するような製法に比べて、細長く狭い範囲をプレスして成形するので、成形型内の多量の米を均一にプレスすることが容易にでき、これにより密度差の少ない良質な米塊体を成形できることとなり、しかも、成形される細長い棒状の米塊体は、この米塊体を米塊体の長さ方向と直交する一方向にだけ切断することで小型の米菓生地を形成することができるので、この生地調製工程において生地の割れや角欠けを著しく生じにくくなり、その上、米同士の粘着性が高いために、蒸篭から成形型に移し替えする際、蒸篭形となっている多量の蒸した米をこわすことなく蒸篭より抜き出すことができて略同形状の成形型に容易に移し替えできるので作業性にも秀れるなど、極めて実用性に秀れた画期的な米粒が結着した米菓の製造方法となる。
【0020】
また、請求項2記載の発明においては、食感が柔らかく且つ硬度も十分な米塊体が確実にできあがる一層実用性に秀れた構成の米粒が結着した米菓の製造方法となる。
【0021】
また、請求項4記載の発明においては、蒸篭に収容して蒸した米を、成形型に移し替えする作業を極めて容易に行うことができる一層実用性に秀れた米粒が結着した米菓の製造方法となる。
【0022】
また、請求項5記載の発明においては、成形した米塊体を短時間の冷凍によって硬化させるため、米の老化が進まず、柔らかな食感で且つ米の風味も効いた万人向けのおいしい米菓を製造可能となり、しかも硬化時間を短時間として柔らかさを維持する構成でありながら、冷凍によって急速に硬化させるため、米粉と増粘剤により米同士の粘着性が高いこともあいまって、後の切断加工を確実に行うことが可能な硬度を発揮する米塊体を調製できることとなるなど、一層実用性に秀れた米粒が結着した米菓の製造方法となる。
【0023】
また、請求項6記載の発明においては、生地の割れやこわれを生じることなく調味液を付着させて味付することが可能となる一層実用性に秀れた米粒が結着した米菓の製造方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0025】
水浸漬した多量の米1に、少量の米粉とこの米粉以外の少量の増粘剤とを添加し混合する。すると、米1の表面に米粉と増粘剤が付着して米1(粒)同士の粘着性が高まる。
【0026】
この米粉と増粘剤とは、混合しても米1の粒状感が阻害されることのない程度の少量とすることが好ましい。
【0027】
尚、米粉は増粘剤としての役割を持つものであるが、この米粉と共に、米粉以外の増粘剤を添加すると、米粉だけあるいは米粉以外の増粘剤だけを使用した場合より高い増粘作用を発揮するので、米粉,増粘剤共に少量で足りることになり、前記の条件を良好に満たすことになる。
【0028】
次いで、この粘着性を高めた多量の米1を蒸して柔らかくした後、例えばプレス等によって所定形状の米塊体2に成形する。
【0029】
この際、プレス等による成形のための加圧は、米1の形状が損なわれない程度の加圧で良く、この加圧力が弱くとも前記したように米1同士の粘着性が高いために米1同士が良好に決着したこわれのない米塊体2が成形されることになる。
【0030】
次いで、この成形した米塊体2を、0℃以下の状況下に3時間以下保持して急速に冷凍硬化させる。
【0031】
一般的な従来製法では、成形した米塊体を1日以上冷蔵しておいて硬化させるが、本発明では3時間以下という短時間の冷凍によって硬化させるため、米1の老化が進まず、米1の食感が柔らかいまま維持されることになる。また、硬化に要する時間が短時間ではあるものの、従来のように冷蔵とせずに冷凍によって急速に硬化させるため、米粉と増粘剤とによって米1同士の粘着性が高くなっていることもあいまって、後の米菓生地3調製のための切断加工等を行うにあたって十分な硬度を発揮することが確認されている。
【0032】
また、この冷凍時間は、米塊体2を切断可能な硬さとなるまでの最短時間にとどめることが米1の老化防止の観点から好ましく、例えば、成形した米塊体2を、0℃以下の状況下に1時間以上2時間以下保持して急速に冷凍硬化させるようにすると、食感が柔らかく且つ硬度も十分な米塊体2ができあがることが確認されている。
【0033】
次いで、この硬化させた米塊体2から切断するなどして米菓生地3を調製し、この生地3をフライ又は焼成する。
【0034】
このようにして製造した米菓7は、米の粒々感がそのまま残ると共に、角のかけや割れの無いものとなり、また、米1の老化が少ないために食感が柔らかく万人向けで且つ米の風味が効いたおいしいものとなった。
【0035】
従って、従来までの米粒の形状を残した米菓は、粒を残す為硬くなったり、又柔らかくても接着の条件が悪く破損してしまうものであったが、本発明の製法で製造した米菓7はこの問題点を解消している。
【0036】
また、例えば、前記粘着性を高めた多量の米1を、上部が開口する細長い箱型の蒸篭4に収容して蒸し、この蒸した米1を、上部が開口する細長い箱型であって前記蒸篭4と略同形状の成形型5に移し替えた後、この成形型5の上部開口部5A側から蒸した米1をプレスすることで細長い棒状の米塊体2に成形すると、大型の型枠内に蒸した米を移して広範囲をプレス成形するような製法に比べて、細長く狭い範囲をプレスして成形するので、成形型5内の多量の米1を均一にプレスすることが容易にでき、これにより密度差の少ない良質な米塊体2を成形できることとなる。
【0037】
また、細長い棒状の米塊体2が成形されるので、この米塊体2から米菓生地3を切り出す際には、米塊体2をこの米塊体2の長さ方向と直交する方向に切断することで小型の米菓生地3を調製できる。
【0038】
即ち、一般的な従来製法のように、大型の方形板状に成形した米塊体から米菓生地を切り出す場合には、縦方向と横方向の二方向に米塊体を切断して生地を切り出ししなければならず、この二方向切断によって生地が割れたり生地の角が欠け易いという問題があったが、本発明で成形する細長い棒状の米塊体2は、その長さ方向と直交する方向の一方向だけに切断すれば良いので、この一方向切断によれば、生地3の割れや角欠けを著しく生じにくくなる。
【0039】
また、蒸篭4から成形型5への米1の移し替えは、上記したように米1同士の粘着性が高いために蒸篭4形となっている多量の蒸した米1をこわすことなく蒸篭4より抜き出すことができ、そしてこの抜き出した多量の蒸し米1を蒸篭4と略同形状の成形型5に容易に移し替えすることができるので、作業性に秀れる。
【0040】
また、例えば、前記蒸篭4に収容して蒸した米1を、この蒸篭4を反転させることで前記成形型5に移し替えすることとすれば、蒸篭4から略同形状をなす成形型5への移し替え作業を極めて容易に行うことができる。
【0041】
また、例えば、生地3をフライ又は焼成した後、生地3に味付を行っても良く、この際、例えば、前記フライ又は焼成した生地3に、調味液6を噴霧若しくは滴下して付着させることとすれば、生地3のこわれを生じることなく調味液6を付着させることが可能となる。即ち、一般的な従来製法では、フライ又は焼成した生地を調味液に浸してから振り切って余分な調味液を除去するという味付方法が取られており、この方法であると振り切り時の衝撃で生地がこわれてしまうことが多く、技術的に非常に難しい工程であったが、上記のように調味液6を噴霧若しくは滴下して付着させることで、生地3をこわすことなく味付が行われる。
【実施例】
【0042】
本発明の具体的な実施例について図1の工程説明面に基づいて説明する。
【0043】
多量のもち米1を水洗い後、水浸漬し、その後水切りを行う。
【0044】
次いで、前処理として水切りした浸漬米1に、増粘剤として使用可能な米粉と、この米粉以外の増粘剤とを添加し、混合(混和)する。本実施例では、米粉として増粘作用の強いもち米粉を採用し、また米粉以外の増粘剤として食用可能なプルランを採用する。尚、米1はうるち米を採用しても良い。また、米粉はもち米粉以外の米粉を採用しても良いし、米粉以外の増粘剤もプルラン以外の増粘剤を採用しても良い。
【0045】
また、この際、もち米1を98.5%、もち米粉を0.9%、プルランを0.6%の比率で混合し、この混合したもの10kgを図2に示すような回転ドラム8に入れて約2分間回し、もち米1の表面に満遍なく米粉とプルランとが付着して粘りが出るようにする。このような混合比とすると、米粉や増粘剤によってもち米1の粒状感が損なわれることなく混合されることが確認されている。
【0046】
また、この際、若干水を加え混合した米1の水分が44%になるように調製する。水分を加えることにより、もち米粉とプルランが米1の表面に良好に付着し、米1同士の粘着性が著しく向上する。
【0047】
次いで、この前処理によって粘着性を高めた多量の米1を蒸して柔らかくする。
【0048】
具体的には、図3に示すような底に金網を張った細長い木製の箱型枠(蒸篭4)を複数個(図面では一個だけ図示)用意し、この複数の蒸篭4に各々2.0kgずつ詰めて米1の表出上面を蒸篭4の上縁に合わせて平らにし、この複数の蒸篭4に順次下から蒸気をあて25分程蒸しを行う。図中の点線矢印は蒸気を示している。蒸し後少し冷まし品温75〜80℃とする。また、本実施例では、蒸篭4内に敷布を敷くことなく直接米1を蒸篭4内に詰めた場合を示している。
【0049】
次いで、この蒸した米1を平面視形状が前記蒸篭4と略同等の大きさ・形状であって、且つ高さを蒸篭4よりも低くしたステンレス製の細長い型枠(成形型5)に開け替える。
【0050】
具体的には、単に、蒸篭4に収容して蒸した米1を、この蒸篭4を反転させることで前記成形型5に移し替えする。
【0051】
また、この際、米1同士の粘着性が高いために、蒸篭4形となっている多量の蒸し米1は、蒸篭4から抜き出す際にこわれにくく、そのため蒸篭4内に特に敷布を敷いておかずとも容易に抜き出すことができる。
【0052】
蒸した米1を成形型5に移し替えると、図4に示すように成形型5は蒸篭4より高さがないため、成形型5の上部開口部5Aより蒸篭4によって角形に成形された部分が上方に突出した状態になる。
【0053】
その後、荒熱を3分程取ってから、図5に示すように、プレス機等を利用してこの成形型5の上部開口部5A側から、この上部開口部5Aより突出している米1の表面(上面)部分の全体を30秒程押圧して細長い角形棒状の米塊体2に成形する。図中符号9はプレス機のプレス作動部である。このプレス作動部9は、図面奥行方向に長さを有すると共に、成形型5の上部開口部5Aと略同形状を呈する帯板状のものとしており、このプレス作動部9が上部開口部5Aより突出している米1の上面部分全体を一度にプレスできるようにしている。
【0054】
また、この成形は、粒の形が損なわれない程度の加圧力でプレスする。
【0055】
尚、本実施例の成形型5は、横幅60mm×高さ幅30mm×長さ(奥行)幅1200mm程度のもの採用している。
【0056】
次いで、この成形した角形棒状の米塊体2を、0℃以下の状況下で急速に冷却する。
【0057】
具体的には、庫内温度を−2〜−10℃に設定した冷凍庫に米塊体2を入れて、およそ1.5〜2時間急速に冷凍する。この工程により米塊体2の品温は2〜3℃となる。この冷凍時間は、米塊体2を切断可能な硬さとなるまでの最短時間にとどめる。また、冷凍時間が1.5〜2時間程であるため、米1の老化はさほど進まず、芯まで硬くならずに柔らかさを保ったまま硬化する。
【0058】
次いで、この冷凍により品温を下げ、硬化して切断が可能となった棒状の米塊体2を成形型5から取り出し、この米塊体2をこの米塊体2の長さ方向と直交する方向に切断して略方形板状の米菓生地3を形成する。
【0059】
具体的には、前記したように、急速冷凍により柔らかさを保ったまま硬化した米塊体2は、通常の切断方法では切断しにくい硬さであるため、水切り機10を用いて3.5mm厚に切断する。
【0060】
本実施例の水切り機10は、図6に示すように、丸刃(板)10Aが一方向に往復可動するように設けられると共に、丸刃10Aに臨設状態に導水管10Bが設けられた構成となっていて、丸刃10Aの刃先に導水管10Bから水を滴下しながら切断(水切り製法)できるようになっている。
【0061】
この際の水の供給量は、丸刃10Aを少し濡らす程度(例えば、間欠的に滴がたれる程度)で良く、この水切り製法により米塊体2を良好に切断可能である。
【0062】
また、図面では、棒状の米塊体2を三体並べて切断することで、生地3の生産効率を高めた場合を示している。
【0063】
次いで、切断した生地3を図示省略の金網に移し、一回目の乾燥(第一乾燥)を行う。室温を60〜80℃として約1.5時間乾燥させ、水分含有量が17〜19%(重量比)程度、好ましくは水分18〜18.5%(重量比)の生地3に調製する。
【0064】
次いで、生地3を冷やし、1〜2日(本実施例では24時間)調湿(ねかせ)する。このねかせによって生地3中の水分の均一化を図る。
【0065】
次いで、生地3をあみかごに入れて回転させながら、揚げ(フライ)前乾燥(第二乾燥)を行う。室温を65〜70℃として約2時間乾燥させ、水分含有量が10〜12%(重量比)程度、好ましくは水分11.5%(重量比)の生地3を得る。この後のフライによる膨化力を高め且つ柔らかくするには、通常のもち揚製品より水分を5〜6%(重量比)強く取ることが必要であることが確認されている。
【0066】
次いで、こうして調製した生地3をフライする。
【0067】
すると、浮きもよくこんがりと焼き色が付き且つ米1の形状を損なわない素揚げ生地3Aが得られた。しかも、米粒の状態だと油を吸いにくいため、含油率20〜22%(重量比)と通常の揚げものより5〜15%(重量比)少なく、油っぽさがなくなっている。
【0068】
次いで、この揚げ生地3Aを、40℃程度に冷却した後、揚げ生地3Aに調味液6を付着させる(味付を行う。)。
【0069】
具体的には、この揚げ生地3Aを重ならないよう図示省略の金網に広げ、図7(a)に示すように上下に設けた噴霧ノズル11(図面では下方の噴霧ノズル11を省略している。)から醤油調味液6を約10%(重量比)噴霧する。すると、米の風味も強く、醤油の香りのする米菓7が得られた。図8(a)は、調味液6を噴霧することで揚げ生地3Aの表面全面にうすく且つ満遍なく調味液6をかけた米菓7を示している。また、噴霧により落下した調味液6は、こして回収し再利用が可能である。
【0070】
また、図7の(b)に示すように、調味液6を滴下ノズル12から滴下して付着させる手法を採用しても良い。図8(b)は、調味液6を滴下することで揚げ生地3Aの表面にまだらに付着させ濃淡を出した米菓7を示している。
【0071】
更に、塩味を付けることもできる。この場合は、同様に金網上で塩を振りかけることにより、こわれのない製品をつくる事ができた。
【0072】
味付後、乾燥させ、乾燥後に30℃程度まで冷却して完成となる。
【0073】
完成後、包装工程へと移り製品とする。
【0074】
以上のようにして完成した本実施例の米菓7は、米1の粒々感がそのまま残り、角のかけや割れのないものができあがった。また、食感が柔らかく万人向けな醤油味のものができた。よって、米1粒の形状を損なわない米菓7の製造が可能であることを確認した。
【0075】
従来までの米の形状を残した米菓は、粒を残す為硬くなったり、又接着の条件が悪いと破損してしまうといった問題があったが、本実施例の製法による米菓7はこれらを解消している。
【0076】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施例の工程説明図である。
【図2】本実施例の米粉と増粘剤を添加した米を回転ドラムに入れようとする様子を示した説明斜視図である。
【図3】本実施例の蒸篭に米を詰めて蒸した様子を示す米を一部省略した説明斜視図である。
【図4】本実施例の蒸した米を成形型に移し替えた状態を示す説明斜視図である。
【図5】本実施例の成形型でプレス成形する様子を示した説明図である。
【図6】本実施例の水切り機により成形した米塊体を切断する様子を示した説明図である。
【図7】本実施例の揚げ生地への味付の様子を示した説明図である。
【図8】本実施例により完成した米菓を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0078】
1 米
2 米塊体
3 生地
4 蒸篭
5 成形型
5A 上部開口部
6 調味液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水浸漬した多量の米に、少量の米粉とこの米粉以外の少量の増粘剤とを添加し混合して米同士の粘着性を高め、この粘着性を高めた多量の米を蒸した後所定形状の米塊体に成形し、この成形した米塊体を、0℃以下の状況下に3時間以下保持して急速に冷凍硬化させ、この硬化させた米塊体から米菓生地を調製し、この生地をフライ又は焼成することを特徴とする米粒が結着した米菓の製造方法。
【請求項2】
前記成形した米塊体を、0℃以下の状況下に1時間以上2時間以下保持して急速に冷凍硬化させることを特徴とする請求項1記載の米粒が結着した米菓の製造方法。
【請求項3】
水浸漬した多量の米に、少量の米粉とこの米粉以外の少量の増粘剤とを添加し混合して米同士の粘着性を高め、この粘着性を高めた多量の米を、上部が開口する細長い箱型の蒸篭に収容して蒸し、この蒸した米を、上部が開口する細長い箱型であって前記蒸篭と略同形状の成形型に移し替えた後、この成形型の上部開口部側から蒸した米をプレスすることで細長い棒状の米塊体に成形し、この棒状の米塊体をこの米塊体の長さ方向と直交する方向に切断して米菓生地を形成し、この生地をフライ又は焼成することを特徴とする米粒が結着した米菓の製造方法。
【請求項4】
前記蒸篭に収容して蒸した米を、この蒸篭を反転させることで前記成形型に移し替えすることを特徴とする請求項3記載の米粒が結着した米菓の製造方法。
【請求項5】
前記細長い棒状に成形した米塊体を、0℃以下の状況下に3時間以下保持して急速に冷凍硬化させ、この硬化させた棒状の米塊体をこの米塊体の長さ方向と直交する方向に切断して前記米菓生地を形成することを特徴とする請求項3,4のいずれか1項に記載の米粒が結着した米菓の製造方法。
【請求項6】
前記フライ又は焼成した生地に、調味液を噴霧若しくは滴下して付着させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の米粒が結着した米菓の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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