説明

粉体塗料及びそれを用いた現像剤担持体の製造方法

【課題】 現像剤(トナー)に対する迅速帯電付与を可能するための、現像剤担持体表面に樹脂被覆層を形成する際に使用する粉体塗料の提供。
【解決手段】 基体の表面に樹脂被覆層を有する摩擦帯電部材の該樹脂被覆層の形成に用いる粉体塗料であって、表面に黒鉛粒子を有する樹脂粒子を含み、体積平均粒径が3μm〜30μmであり、体積抵抗値が10Ω・cm以下であることを特徴とする粉体塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体塗料及びそれを用いた現像剤担持体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被覆層表面の仕事関数測定曲線の傾きγが10cps/eV以上とする現像担持部材が開示されている。この仕事関数測定曲線の傾きγは、表面のグラファイト粒子の露出程度に対応しており、研磨処理方法を変えることにより制御できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−066680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者らが特許文献1に係る発明を検討したところ製造時の工数が多く、現像剤担持体の低コスト化に限界があるとの認識を得た。従って本発明の目的は、トナーを迅速に摩擦帯電させることのできる現像剤担持体の低コストで製造し得る粉体塗料の提供にある。また、本発明の他の目的は、当該粉体塗料を用いた高性能な現像剤担持体の製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはこれまでトナーに対して帯電付与の迅速化及び安定化を図ることのできる現像剤担持体について検討してきた。その結果、樹脂粒子の表面に黒鉛粒子を有し、且つ特定の範囲の体積平均粒径と特定の範囲の体積抵抗値を有する粉体塗料を静電塗工法により基体の表面に形成してなる現像剤担持体の使用が有効であることを見出した。
【0006】
即ち、本発明に係る粉体塗料は、基体の表面に樹脂被覆層を有する摩擦帯電部材の該樹脂被覆層の形成に用いる粉体塗料であって、表面に黒鉛粒子を有する樹脂粒子を含み、体積平均粒径が3μm〜30μmであり、体積抵抗値が10Ω・cm以下であることを特徴とする。また、本発明に係る現像剤担持体の製造方法は、帯電させた基体の表面に、上記の粉体塗料を、該基体を回転させながら静電塗工し、次いで該基体上の該粉体塗料を溶融させて樹脂被覆層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トナーへの帯電付与の迅速化を図ることができ、現像特性を向上させることができる現像剤担持体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の粉体塗料を構成する樹脂粒子の断面を示す概念図である。
【図2】スプレー塗工装置の模式図である。
【図3】スプレー塗工法で塗工して得られた樹脂被覆層表面の模式図である。
【図4】本実施形態に係わる静電塗工装置の概略構成図である。
【図5】本発明に係るスリーブ基体表面の説明図である。
【図6】規格化光電子収率Yと励起エネルギーeVの傾きγの関係の説明図である。
【図7】本発明に係る現像装置の説明図である。
【図8】本発明の実施例にて用いたスリーブゴーストの評価方法についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<粉体塗料>
本発明に係る摩擦帯電部材の製造に用いる粉体塗料は、樹脂成分と黒鉛粒子とを含む。図1に本発明の粉体塗料を構成する樹脂粒子の断面を示す。図1(a)〜(g)において、1は黒鉛粒子、2は樹脂成分を示す。図1(a)は黒鉛粒子が微粒化されて樹脂粒子の表面及び内部に均一に分散している構成を示す。図1(b)は微粒化された黒鉛粒子が樹脂粒子内部の表面近傍に局在している構成を示す。図1(c)は図1(a)と比較してやや大きめの黒鉛粒子が、樹脂粒子中で「海島構造」のような構成を示す。図2(d)は図1(c)の構成が更に顕著になり、樹脂成分と黒鉛粒子に二極化された構成である。図1(e)は、黒鉛粒子が樹脂成分中に層状に配列したような構成を有する。図1(f)は樹脂粒子表面に微粒子状の黒鉛粒子が物理的或いは化学的に固着した構成を示す。図1(g)は図1(f)と同様の構成であるが、粒径の異なる黒鉛粒子を二種以上用いたものである。本発明の粉体塗料は樹脂粒子の表面に少なくとも黒鉛粒子を有していることが特徴の一つであるが、図1(a)〜(g)のいずれの構成であってもよい。本発明の粉体塗料は、体積平均粒径が3μm〜30μmであることを特徴とする。体積平均粒径をこの範囲内に設定することで、静電塗工法による塗工の際に塗料の粒子が保持する電荷量が略均一化され、塗膜表面において塗料粒子が略細密状態で存在させることができ、その結果、基体表面に均一な樹脂被覆層を形成することができるようになる。体積平均粒径が3μm未満の場合、粒子同士が静電凝集を起こしやすいため、静電塗工時に塗工装置(静電塗工ガン)からの粉体塗料が一次粒子の状態で供給することが困難になってしまい、均一な樹脂被覆層を形成できなくなる。更に、樹脂粒子表面に黒鉛粒子を存在させることも難しくなり、所望の体積抵抗値に設定することが困難になるという弊害もある。体積平均粒径が30μmを超える場合は、静電塗工時に基体表面への均一塗工が困難となり、得られた樹脂被覆層の膜厚の均一性が不十分になったり、或いは樹脂被覆層の表面粗さが大きくなり過ぎたりするという弊害が発生してしまう。更に、本発明の粉体塗料は、体積抵抗値が10Ω・cm以下であることも特徴の一つである。体積抵抗値が10Ω・cmを超える場合は、黒鉛粒子の含有比率が少ない状態であり、このような粉体を用いて得られた現像担持体表面の樹脂被覆層には黒鉛粒子の露出量が少ない。よって、樹脂被覆層表面の仕事関数測定曲線の傾きγ値を大きくすることは困難であり、現像特性の向上を図ることが困難となる。
【0010】
樹脂粒子を構成する樹脂の具体例として、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂及びフェノール系樹脂が挙げられる。必要に応じて、これらの複数の成分が混合されたものや、共重合されたものを使用できる。熱硬化性樹脂が好ましい。また、それ自体が加熱により溶融及び/又は流動する樹脂成分に、少なくとも硬化剤を配合してなるものを粉体塗料の基材としてもよい。この場合、溶融及び/又は流動する樹脂成分の軟化温度は50℃〜150℃のものを使用することが好ましい。更には、黒鉛粒子の樹脂中での分散性を向上させるために分散剤を添加してもかまわない。エポキシ系樹脂成分としては、例えば、ビスフェノール類のグリシジルエーテル型固形エポキシ樹脂と、硬化剤としてイミダゾール類、ジシアンジアミド類または酸無水とが混合されたものを挙げることができる。この中でも、特に保存安定性と反応性のバランス面より、イミダゾール類が好適である。エポキシ系樹脂成分およびポリエステル系樹脂成分が組合わされた例としては、ビスフェノール類のグリシジルエーテル型固形エポキシ樹脂と、硬化剤としてカルボキシル基を含有するポリエステル樹脂とが混合されたものを挙げることができる。ウレタン系樹脂成分としては、例えば、水酸基を含有するポリエステル樹脂と、硬化剤としてイソシアネート類とが混合されたものを挙げられる。ポリエステル系樹脂成分としては、例えば、カルボキシル基を含有するポリエステル樹脂と、硬化剤としてグリシジルイソシアネート類とが混合されたものを挙げることができる。ポリエステル系樹脂成分およびエポキシ系樹脂成分が組合わされた例としては、カルボキシル基を含有するポリエステル樹脂と、硬化剤としてイソシアネート類とが混合されたものを挙げることができる。ポリエステル系樹脂成分およびアクリル系樹脂成分が組合わされた例として、水酸基およびカルボキシル基を含有するポリエステル樹脂と、硬化剤としてグリシジル基を含有するアクリル樹脂とが混合されたものを挙げることができる。アクリル系樹脂成分としては、例えば、グリシジル基を含有するアクリル樹脂と、硬化剤として2塩基酸とが混合されたものを挙げることができる。
【0011】
<黒鉛粒子>
本発明において、黒鉛粒子とは、有機物やカーボンブラック、スス、木炭、ピッチコークス、石油コークス等の無定形炭素を、無酸素下にて高温で焼成させて得られた粒子を指す。このような黒鉛粒子として、結晶性グラファイト(以下、単に「グラファイト」ともいう)、およびメソカーボンマイクロビーズ粒子またはバルクメソフェーズピッチ粒子を焼成して得られる黒鉛粒子が挙げられる。この内、グラファイトは、天然黒鉛と人造黒鉛の大別されるが、本発明ではいずれでも使用可能である。人造黒鉛は、ピッチコークスをタールピッチ等により固めて1200℃位で一度焼成してから黒鉛化炉に入れ、2300℃位の高温で処理することにより、炭素の結晶が成長して黒鉛に変化する。天然黒鉛は、長い間の天然の地熱と地下の高圧によって黒鉛化したものが地中により産出するものである。これらの黒鉛は、種々の優れた性質を有していることから工業的に広い用途を持っている。黒鉛は、暗灰色ないし黒色の光沢のある非常に柔らかい滑性のある結晶鉱物で、鉛筆等に利用され、その他耐熱性、化学的安定性、潤滑性、耐火性に優れるため、電気材料等に粉末や固体や塗料の形で利用されている。結晶構造は六方晶とその他菱面晶系に属するものがあり、層状構造を有している。電気的特性に関しては、炭素と炭素の結合の間に自由電子が存在し、電気の良導体となっている。更にグラファイトは、構造的な性質の一つである「劈開性」に見られるように結晶構造に異方性があり、これによって樹脂被覆層表面に出現させた場合、表面に潤滑性を付与させることも可能であることからも、好ましい材料である。また本発明では、黒鉛粒子として、メソカーボンマイクロビーズ粒子またはバルクメソフェーズピッチ粒子を焼成して得られた黒鉛粒子を使用することも可能である。該黒鉛粒子は、上記結晶性グラファイトとは、原材料および製造工程が異なる。そのため、黒鉛粒子は結晶性グラファイトより黒鉛化度は若干低い。しかし、結晶性グラファイトと同様の高導電性、高潤滑性を示す。更に、粒子の形状が結晶性グラファイトが燐片状又は針状の形状を有するのに対して、黒鉛粒子は、塊状又は概略球状である。更にまた、黒鉛粒子はそれ自身の硬度が結晶性グラファイトと比較して高い。従って、黒鉛粒子は樹脂被覆層中で均一に分散され易く、均一な表面粗さと耐摩耗性とを樹脂被覆層の表面に与える。加えて、黒鉛粒子自体の形状が、その高硬度ゆえに変化し難いため、使用に伴う樹脂被覆層の表面形状の変化を小さく抑えられる。また、現像剤担持体表面の樹脂被覆層中に黒鉛粒子を含有させることで、トナーのチャージアップを抑制でき、結晶性グラファイトを用いた場合よりもトナーへの摩擦帯電付与能を向上させることができる。通常、沸点が500℃以上の有機化合物は、常圧下、不活性気相中で加熱すれば固相または液相を経由して炭素化されるが、200℃付近までの温度で分解を始め、残留物中では環化が起き、ついで400℃までの間に芳香族化する。この温度を越すと、芳香族同士の重縮合がすすむ。中でも縮合多環芳香族やそれらの混合物であるピッチ類等のように、この温度で液状を示すものは、400℃以上で縮合多環芳香族の平面分子からなる液晶状態をつくる。この液晶のことをメソフェーズと呼ぶ。メソフェーズは500℃までの間で更に高分子化が進んで層状構造を作ったまま固化する。該層状構造は、選択的な配向性の高いものであり、高温処理で黒鉛化になりやすい性質を有している。従って、原材料としてメソカーボンマイクロビーズ粒子やバルクメソフェーズピッチ粒子のような光学的異方性を有し、単一の相からなる粒子を黒鉛化することで黒鉛粒子の結晶性を高め、かつ、塊状又は概略球状の形状を保持させ得る。上記の原材料の光学的異方性は、芳香族分子の積層から生じるものであり、その秩序性が黒鉛処理でさらに発達し、高い結晶性を有する黒鉛粒子が得られる。メソカーボンマイクロビーズ粒子を得る代表的な方法を以下に述べる。まず、石炭系重質油または石油系重質油を300℃〜500℃の温度で熱処理し、重縮合させて粗メソカーボンマイクロビーズ粒子を生成させる。次いで、反応生成物を濾過、静置沈降、遠心分離などの処理をしてメソカーボンマイクロビーズ粒子を分離する。その後、これをベンゼン、トルエン、キシレン等の溶剤で洗浄し、乾燥することによってメソカーボンマイクロビーズ粒子を得る。メソカーボンマイクロビーズ粒子を用いて黒鉛化する方法としては、まず乾燥を終えたメソカーボンマイクロビーズ粒子を、破壊させない程度の温和な力で機械的に一次分散させておくことが黒鉛化後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。この一次分散を終えたメソカーボンマイクロビーズ粒子は、不活性雰囲気下において200℃〜1500℃の温度で一次加熱処理され、炭化される。一次加熱処理を終えた炭化物は、やはり炭化物を破壊させない程度の温和な力で炭化物を機械的に分散させることが黒鉛化後の粒子の合一防止や均一な粒度を得るために好ましい。二次分散処理を終えた炭化物は、不活性雰囲気下において2000℃〜3500℃で二次加熱処理することにより所望の黒鉛粒子が得られる。バルクメソフェーズピッチ粒子を得る方法としては、例えば、コールタールピッチ等から溶剤分別によりβ−レジンを抽出し、これを水素添加、重質化処理を行うことによって得る方法がある。更に、この重質化処理後、微粉砕し、次いでベンゼンまたはトルエン等により溶剤可溶分を除去することで得ることもできる。得られたバルクメソフェーズピッチ粒子はキノリン可溶分が95質量%以上であることが好ましい。すなわち、キノリン可溶分が95質量%未満であるものは粒子内部が液相炭化しにくく、固相炭化するため粒子が破砕状のままとなり、球状のものが得られないことがある。バルクメソフェーズピッチ粒子を用いて黒鉛化する方法としては、先ず、バルクメソフェーズピッチ粒子を微粉砕して、これを空気中で200℃〜350℃で熱処理して、軽度に酸化処理する。この酸化処理によって、バルクメソフェーズピッチ粒子は表面のみ不融化され、次工程の黒鉛化熱処理時の溶融、融着が防止される。この酸化処理されたバルクメソフェーズピッチ粒子は酸素含有量が5質量%〜15質量%であることが好ましい。5質量%未満であると熱処理時の粒子同士の融着が促進されることがあり、また15質量%を超えると粒子内部まで酸化されてしまい、形状が破砕状のまま黒鉛化してしまい、球状のものが得られにくい場合がある。最後に酸化処理したバルクメソフェーズピッチ粒子を窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下にて2000℃〜3500℃で熱処理することにより所望の黒鉛粒子が得られる。上記いずれの原材料を用いた黒鉛粒子の生成方法においても、黒鉛粒子の最終焼成温度は2000℃〜3500℃、特には2300℃〜3200℃が好ましい。焼成温度を上記の範囲内とすることで、黒鉛粒子の黒鉛化が十分に進み導電性や潤滑性が良好となる。その結果、これを含む表面層を備えた現像剤担持体によるトナーの摩擦帯電時にトナーがチャージアップすることを抑制できる。また、黒鉛粒子の黒鉛化の程度が高くなりすぎることによる、黒鉛粒子の硬度の低下を抑制できる。前記のいずれの原材料から得られた黒鉛粒子であっても、いずれの製法で得られたかにかかわらず、分級により粒度分布をある程度均一にしておくことが、樹脂被覆層の表面形状を均一にするために好ましい。黒鉛粒子は体積平均粒径が0.5μm〜15μmであることが好ましい。これにより、表面に均一な粗さを付与する効果と帯電性能を高める効果が少なく、磁性現像剤への迅速且つ均一な帯電が十分となる。その結果、樹脂被覆層の摩耗、トナー汚染及びトナー融着が発生し難くなり、また、ゴーストや画像濃度低下を生じ難くすることができる。本発明の粉体塗料においては、黒鉛粒子の体積平均粒径は、樹脂粒子の体積平均粒径よりも小さいことが好ましい。樹脂粒子と黒鉛粒子との密着性が低下し難いため、成膜後に樹脂被覆層からの黒鉛粒子の脱離を抑制できるからである。また、粉体塗料中に占める黒鉛粒子の含有率は10wt%〜70wt%であることが好ましい。これによりトナーのチャージアップが抑制され、スリーブゴーストが発生しにくくなる。
【0012】
<導電性微粒子>
粉体塗料の体積抵抗値を調整するために、前記黒鉛粒子に加えて下記に挙げる導電性微粒子を更に粉体塗料に含有させてもよい。導電性微粒子としては金属の微粉末、導電性金属酸化物の微粒子、各種カーボンファイバー、導電性カーボンブラック、更には金属繊維等を挙げられる。特に、導電性カーボンブラック、とりわけ導電性のアモルファスカーボンは電気伝導性に優れ、高分子材料に充填され導電性を付与し、その添加量をコントロールすることで粉体塗料の体積抵抗値を制御できるため好ましい。
【0013】
<荷電制御剤>
成膜後の樹脂被覆層の帯電付与能をコントロールするために粉体塗料中に荷電制御剤を添加しても良い。負荷電性に制御する荷電制御剤としては、有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノおよびポリカルボン酸およびその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。正帯電に制御する荷電制御剤としては、ニグロシンおよび脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、およびこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物;イミダゾール化合物などがある。上記の荷電制御剤は、粉体塗料製造時に微粒子の形で添加することが好ましい。
【0014】
<固体潤滑剤>
成膜後の樹脂被覆層表面へのトナーの付着をより軽減化を図るために、粉体塗料に固体潤滑剤を混合させてもよい。固体潤滑剤の具体例としては、二硫化モリブデン、窒化硼素、フッ化グラファイト、銀−セレンニオブ、塩化カルシウム−グラファイト又は滑石が挙げられる。該固体潤滑剤についても、粉体塗料製造時に微粒子の形で添加することが好ましい。
【0015】
本発明に係る粉体塗料の製造に際しては、結着樹脂、黒鉛粒子及び上記したような他の構成材料を混合機により十分混合する。その後、加熱ロール等の熱混練機を用いて混練し、冷却固化後、粉砕、分級、必要に応じて表面形状調整等の表面処理を行なって粉体塗料を得る。この方法で得られた粉体塗料を構成する樹脂粒子は、前記図1(a)または図1(c)のような構成をとることが多い。また、黒鉛粒子の粒径や樹脂成分との混合条件等を制御することで、前記図1(b)、(d)或いは(e)の構成とすることも可能である。粉体塗料の製造に用いられる装置の例を以下に示す。混合機:ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(登録商標)(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製)。混練機:KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル。粉砕機:カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(登録商標)(ホソカワミクロン社製);lDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(登録商標)(8曹エンジニアリング社製)。分級機:スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日新エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、TSPセパレータ(登録商標)(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)。中でもエルボージェット等の多分割分級機を用いることがより好ましい。篩い装置:ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製)。
【0016】
本発明に係る粉体塗料を製造する方法としては、前記の方法で製造された粉体塗料(樹脂粒子)と黒鉛粒子を乾式混合し、粉体塗料(樹脂粒子)の表面近傍に黒鉛粒子を付着させる方法を挙げることができる。この方法を用いると、前記図2の(f)や(g)で示したように、樹脂粒子の表面に効率的に黒鉛粒子を存在させることができるため好ましい。乾式混合にはヘンシェルミキサー等の混合機を使用することもできる。この他には、高速回転する羽根により塗料を構成する樹脂粒子と黒鉛粒子をケーシングの内側に遠心力により押しつけ、圧縮力又は/及び摩擦力等の力により塗料粒子に機械的衝撃力を加える装置も使用できる。このような装置の具体例としては、メカノフージョンシステム(ホソカワミクロン社製)やハイブリダイゼーションシステム(登録商標)(奈良機械製作所製)等がある。
【0017】
次に、本発明に係る粉体塗料を用いた現像剤担持体の製造方法について説明する。図2に示すように、基体の両端にマスキングを施したうえで両端を回転可能なように支えながら回転台に直立させる。次いで、円筒管を一定速度で回転させつつ、基体とスプレーガンのノズル先端との距離を一定に保ち、スプレーガンを一定速度で上下に移動させつつ塗料を噴射させて基体表面に粉体塗料を塗工する。図4はこのようなスプレー塗工法を使用した塗工システムの例を示す。塗料槽中で攪拌翼で攪拌されている塗料は、塗料槽よりエアポンプ等のポンプ等によってガンステージ部の塗料溜に送られた後、塗料の一部はスプレーガンに接続されたホースへ吸引される。そして、残りの塗料は自重で塗料槽に戻っていく。上記方法により基体表面に塗工後、100℃〜200℃程度の高温に設定された通風式乾燥機等に放置させることで乾燥及び硬化を行ない、樹脂被覆層を形成させる。このような方法によって得られた樹脂被覆層の表面は、図3に示したように樹脂成分に覆われ、表面に存在している黒鉛粒子の比率が少なくなってしまう。このように、黒鉛粒子が表面に露出せず、高抵抗の樹脂で覆われてしまうと、トナーへの帯電付与を適切に行なうことが困難になり、現像特性が劣ることになる。そこで本発明では、樹脂粒子の表面に少なくとも黒鉛粒子を有し、特定の体積平均粒径及び体積抵抗値を有した粉体塗料を用いて、静電塗工法により基体表面に塗工を行なう。これにより、前述した問題を解消し、現像特性に優れた現像剤担持体が得られる。
【0018】
以下、本発明で使用される静電塗工装置について説明する。図4は本実施形態に係わる静電塗工装置の概略構成図である。図4において、4は粉体塗料3を収容するホッパーである。ホッパー4内の粉体塗料3は、コンプレッサ5aから供給される塗料インジェクションエア、及びコンプレッサ5bから供給される吐出(搬送)エアによって、配管6を通って静電塗工ガン7へ搬送される。塗料インジェクションエアは、ホッパー4内からの粉体塗料3の送り出しに供している。また、吐出(搬送)エアによって、配管6内での粉体塗料3の滞留防止及び静電塗工ガン7からの吐出時の粉体塗料3を解砕する。なお、上記塗料インジェクションエア量及び吐出(搬送)エア量によって静電塗工ガン7へ搬送される粉体塗料3の量を規定することができる。装置全体に供給される全エア量(コンプレッサ5a及びコンプレッサ5bから供給されるエア量の総和)は20m/hour〜80m/hourが好ましい。塗工するサンプルの表面積、塗工膜厚、或いは塗工スピードにもよるが、塗料インジェクションエア量は全エア量の1%〜50%、吐出(搬送)エア量は、99%〜50%の範囲であればほぼ均一に塗工できる。また、ホッパー4はアルミニウム製又はポリプロピレン等の樹脂製のものが使用できるが、内面は粉体塗料3が付着し難いように、テフロン(登録商標)コート或いは鏡面加工等の処理を施してあるものが好ましい。静電塗工ガン7へ搬送された粉体塗料3は、電源ユニット8より直流バイアスが印加された放電電極を具備した先端ノズル9よりスリーブ基体10表面に向かって吐出されることによって、塗工が行なわれる。なおスリーブ基体10は、両端にマスキング冶具11を施し、更に両端を回転可能なように支えながら回転台に直立させる。次いで、円筒管を一定速度で回転させた状態でスリーブ基体10と静電塗工ガン7の先端ノズル9との距離を一定に保ち、静電塗工ガン7を一定速度で上下に移動させつつ粉体塗料3を噴射させて塗工を行なう。マスキング治具11としては、スリーブ基体表面との導通を確保するため、アルミニウム等の金属製であることが好ましい。放電電極への印加バイアスは、電圧が絶対値で1kV〜100kV、電流が10μA〜60μAの範囲で適宜設定すれば良い。この範囲に電圧値、電流値を設定すると、粉体塗料3のスリーブ基体10への付着効率が良好となる。また、スリーブ基体10の回転速度および塗工速度の目安は各々100rpm〜1000rpm、1mm/s〜100mm/sである。静電塗工後、スリーブ基体10を装置より取り外し、乾燥機等の高温環境下にてスリーブ基体10表面に塗工された粉体塗料3を溶融、硬化させて成膜化を行ない、その後冷却工程を経ることで本発明に係る現像剤担持体が得られる。ここで、成膜化の際の温度設定は、100℃〜200℃が好ましい。樹脂の溶融による成膜化や被覆層の硬化が十分に行なわ、得られた樹脂被覆層の強度が良好となる。また、樹脂の粘度の低下により、黒鉛粒子が樹脂によって被覆されることを抑制できる。このようにして本発明に係る粉体塗料が静電塗工法によって基体に塗工すると、図5(a)に示したように、粉体塗料3がその界面を保持した状態で複数個積み重なった状態で存在している。その後、高温下に放置することで塗料を構成している粉体中の樹脂成分を溶融、硬化させることで成膜される。この時、図5(b)に示したように、黒鉛粒子が表面に存在したままで樹脂が溶解するため、成膜後の樹脂被覆層表面には黒鉛粒子が露出した状態を維持することができる。このようにして得られた現像剤担持体は、樹脂被覆層の表面研磨等の処理を行なわなくとも被覆層表面での黒鉛粒子の露出性を高めることができる。そして、樹脂被覆層表面の光電子分光測定で得られた仕事関数測定曲線における、規格化光電子収率Yと励起エネルギーeVの傾き(γ=Y/eV)を大きくすることができる。そのため、該現像剤担持体を用いた現像装置或いは画像形成装置は、スリーブゴーストやドット再現性等の画質を向上させることができ、終始良好な現像性を得ることができるようになる。ここで、γは、樹脂被覆層に対する黒鉛粒子の質量比をG(wt%)としたとき、0.5G+5より大きいこと、そして、Gは10〜70であることが好ましい。
【0019】
得られた現像剤担持体表面の樹脂被覆層の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で0.2μm〜3.5μm、特には0.4μm〜2.5μmが好ましい。現像剤が十分に搬送されるため、現像剤不足による画像濃度の低下を抑制できる。また、現像剤の過剰な帯電による飛び散り、ブロッチの発生等を抑制できる。
【0020】
<現像装置>
本発明に係る現像装置について説明する。図7(a)に一例として、磁性一成分系現像剤(トナー)を用いた現像装置の模式図を示す。図7(a)において感光ドラム501は、矢印B方向に回転する。現像スリーブ508は、現像容器503に供給された磁性トナー粒子を有する磁性一成分現像剤を担持して、矢印A方向に回転することによって、現像スリーブ508と感光ドラム501とが対向している現像領域Dに現像剤を搬送する。現像剤担持体510においては、磁性一成分現像剤を現像スリーブ508上に磁気的に吸引かつ保持するため、現像スリーブ508内に磁石(マグネットローラ)509が配置されている。なお、現像スリーブ508は、基体である金属円筒管506上に樹脂被覆層507が被覆形成されている。現像容器503内へ、現像剤補給容器(不図示)から現像剤供給部材(スクリューなど)512を経由して磁性一成分現像剤が送り込まれてくる。現像容器503は、第一室514と第二室515に分割されており、第一室514に送り込まれた磁性一成分現像剤は攪拌搬送部材505により現像容器503および仕切り部材504により形成される隙間を通過して第二室515に送られる。磁性一成分現像剤はマグネットローラ509による磁力の作用により現像スリーブ508上に担持される。第二室515中には現像剤が滞留するのを防止するための攪拌部材511が設けられている。磁性一成分現像剤は、磁性トナー粒子相互間および現像スリーブ508上の樹脂被覆層507との摩擦により,感光ドラム501上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。強磁性金属製の磁性規制ブレード502は、現像領域Dに搬送される現像剤の層厚を規制するために、現像スリーブ508の表面から約50μm〜500μmの間隙を有して現像スリーブ508に対向するように現像容器503に装着されている。マグネットローラ509の磁極N1からの磁力線が磁性規制ブレード502に集中することにより、現像スリーブ508上に磁性一成分現像剤の薄層が形成される。なお、この磁性規制ブレード502に替えて非磁性の規制ブレードを使用することもできる。現像スリーブ508上に形成される磁性一成分現像剤の薄層の厚みは、現像領域Dにおける現像スリーブ508と感光ドラム501との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。本発明に係る粉体塗料を用いて形成した樹脂被覆層を基体表面に有する現像剤担持体は、以上の様な磁性一成分現像剤の薄層により静電潜像を現像する、非接触型の現像装置に組み込むのが特に有効である。しかし、現像領域Dにおいて磁性現像剤層の厚みが現像スリーブ508と感光ドラム501との間の最小間隙以上の厚みである、いわゆる接触型現像装置にも使用することができる。なお、以下の説明では非接触型の現像装置を例にとって行なう。現像スリーブ508に担持された磁性トナーを有する磁性一成分現像剤を飛翔させるため、現像スリーブ508にはバイアス手段としての現像バイアス電源513により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときは、静電潜像の画像部(現像剤が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像スリーブ508に印加するのが好ましい。現像された画像の濃度を高め、かつ階調性を向上させるためには、現像スリーブ508に交番バイアス電圧を印加し、現像領域Dに向きが交互に反転する振動電界を形成してもよい。この場合には、上記した現像画像部の電位と背景部の電位との中間の値を有する直流電圧成分を重畳した交番バイアス電圧を現像スリーブ508に印加するのが好ましい。図7(a)においては現像スリーブ508上の磁性一成分現像剤の層厚を規制する現像剤層厚規制部材として、現像スリーブから離間されて配置された磁性ブレードの例を示した。また、図7(b)に示したように、ゴム弾性あるいは金属弾性を有する材料からなる弾性板を有する弾性規制ブレード516を現像スリーブ508に対して、磁性一成分現像剤を介して接触あるいは圧接させても良い。特にこの形態を有する系でも、耐摩耗性および帯電付与能の面で格段の効果を得ることができる。なお、現像スリーブ508に対する弾性規制ブレード516の当接圧力は、線圧5g/cm〜50g/cmであることが、磁性一成分現像剤の規制を安定化させ、磁性現像剤層の厚みを好適にさせることができる点で好ましい。
【0021】
<現像剤>
本願実施例の現像装置で用いられる現像剤(トナー)について説明する。現像剤(トナー)は、重量平均粒径が4μm〜11μmであることが好ましい。このようなものを使用すれば、トナーの帯電量或いは画質及び画像濃度等がバランスのとれたものとなる。ここで、トナー粒子の粒径測定装置としては、コールターカウンターTA−II型、或いはコールターマルチサイザーII又はコールターマルチサイザーIII(いずれもべックマン・コールター社製)が挙げられる。電解液として1級塩化ナトリウムを用いて、約1%NaCl水溶液を調製するか、或いはISOTON−II(「ISOTON」は登録商標)(べックマン・コールター社製)を用いる。測定方法としては、前記電解水溶液100ml〜150ml中に分散剤として、界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を、0.1ml〜5ml加え、さらに測定試料を2mg〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1分〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、測定試料の体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。この結果より、体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径(D4)(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求める。チャンネルは、2.00μm〜2.52μm未満;2.52μm〜3.17μm未満;3.17μm〜4.00μm未満;4.00μm〜5.04μm未満;5.04μm〜6.35μm未満;6.35μm〜8.00μm未満;8.00μm〜10.08μm未満;10.08μm〜12.70μm未満;12.70μm〜16.00μm未満;16.00μm〜20.20μm未満;20.20μm〜25.40μm未満;25.40μm〜32.00μm未満;32.00μm〜40.30μm未満の計13チャンネルとする。
【0022】
現像剤(トナー)の結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能であり、例えばビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。中でも特にビニル系樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。現像剤(トナー)には帯電特性を向上させる目的で、荷電制御剤をトナー粒子に配合(内添)、またはトナー粒子と混合(外添)して用いることができる。これは、荷電制御剤によって、現像システムに応じた最適の荷電量コントロールが可能となるためである。正の荷電制御剤の具体例としては、ニグロシン、トリアミノトリフェニルメタン系染料及び脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレード、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレートが挙げられる。これらは単独あるいは2種類以上組み合わせて用いてもよい。負の荷電制御剤の具体例は、有機金属化合物、キレート化合物が有効である。その例としてはアルミニウムアセチルアセトナート、鉄(II)アセチルアセトナート、3,5−ジターシャリーブチルサリチル酸クロム等があり、特にアセチルアセトン金属錯体、モノアゾ金属錯体、ナフトエ酸あるいはサリチル酸系の金属錯体または塩が挙げられる。現像剤が、磁性現像剤の場合、用い得る磁性材料の具体例としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄;Fe、Co、Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、Vのような金属との合金、およびこれらの混合物等が挙げられる。このような磁性材料に、着色剤としての役目を兼用させて使用してもかまわない。着色剤としては、任意の適当な顔料または染料が挙げられる。
【0023】
現像剤(トナー)には離型剤を使用することが好ましい。離型剤の具体例としては低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、カルナバワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類等が挙げられる。
【0024】
現像剤(トナー)には、環境安定性、帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上及びクリーニング性向上のために、シリカ微粉体、酸化チタン、アルミナ等の無機微粉体を外添すること、即ち現像剤表面近傍に存在していることが好ましい。特にこの中でも、シリカ微粉体が好ましい。更に、上記無機微粉体以外の外添剤を更に加えて用いても良い。例えば、ポリフッ化エチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンの如き滑剤、中でもポリフッ化ビニリデン、或いは酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、ケイ酸ストロンチウム等の研磨剤がある。現像剤は以下の手順を経て製造できる。即ち、結着樹脂、着色剤としての顔料又は染料、磁性体、離型剤、その他の添加剤等を混合機により混合した後、熱混練機を用いて溶融して樹脂類を相溶させる。次いで、そこに、離型剤、顔料、染料、磁性体を分散又は溶解せしめ、冷却固化後、粉砕及び分級を行なってトナー粒子を得る。さらに、必要に応じて所望の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合機により充分に混合し、現像剤(トナー)を得る。係るトナーは種々の方法で、球形化処理、表面平滑化処理を施して用いると、転写性が良好となり好ましい。このような方法としては攪拌羽根またはブレード及びライナー又はケーシングを有する装置を用いてトナーをブレードとライナーの間の微小間隙を通過させる際に機械的な力により表面を平滑化又は球形化する方法がある。他には、温水中にトナーを懸濁させ球形化する方法や、熱気流中にトナーを曝し球形化する方法がある。また、球状のトナーを直接作る方法としては、水中にトナー結着樹脂となる単量体を主成分とする混合物を懸濁させ、重合してトナー化する方法がある。一般的な方法としては、重合性単量体、着色剤、重合開始剤等を均一に溶解又は分散させ単量体組成物とする。その後、この単量体組成物を分散安定剤を含有する連続層、例えば水相中に適当な攪拌機を用いて適度な粒径に分散し、さらに重合反応を行なわせ、所望の粒径を有する現像剤を得る方法である。
【0025】
[実施例]
次に、具体的実施例をもって、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。以下の配合における部数は、特にことわらない限りすべて質量部である。まず、本発明に係わる諸物性値の測定方法について説明する。
【0026】
(1)粉体塗料及び黒鉛粒子の粒径
レーザー回折型粒度分布計のコールターLS−130型或いはLS−230型粒度分布計(ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。測定方法としては、水系モジュールを用い、測定溶媒としてはイオン交換水を使用した。イオン交換水にて粒度分布計の測定系内を約5分間洗浄し、消泡剤として測定系内に亜硫酸ナトリウムを10mg〜25mg加えて、バックグラウンドファンクションを実行した。次にイオン交換水50ml中に界面活性剤3滴〜4滴を加え、更に測定試料を5mg〜25mg加えた。試料を懸濁した懸濁液は超音波分散器で1分間〜3分間分散処理して試料液を調製した。前記測定装置の測定系内に当該試料液を徐々に加えて、装置の画面上のPIDSが45%〜55%になるように測定系内の試料濃度を調整して測定した。そして、体積分布から算出した体積平均粒径を求めた。
【0027】
(2)粉体塗料の体積抵抗値
粉体測定システム MCP−PD41((株)ダイアインスツルメンツ製)を用いて、10MPa加圧下で実施した。なお、抵抗値の測定は、ロレスターGP又はハイレスターUP(「ハイレスター」は登録商標)(共に三菱化学(株)製)を使用し、四探針法にて行なった。
【0028】
(3)仕事関数測定曲線における規格化光電子収率Yと励起エネルギーeVの傾きγ
光電子分光装置(商品名;AC−2;理研計器(株)社製)を用いて下記の条件にて測定した。
照射エネルギー:4.2eV〜6.2eV、光量:200nW、計数時間:10秒、
陽極電圧:2900V、べき乗:0.5。
【0029】
上記条件での測定により得られた仕事関数測定曲線の例を図6に示す。図6において、横軸は励起エネルギー、縦軸は放出された光電子の個数の0.5乗の値(規格化光量子収率)Yを示す。一般的に、励起エネルギー値がある閾値を超えると急激に光電子の放出、即ち規格化光量子収率が多くなり、仕事関数測定曲線が急速に立ち上がる。この時の規格化光量子収率のベースラインをGとし、仕事関数測定曲線が急速に立ち上がった後の、曲線を線形近似して得られた直線をLとする。本願にて規定するγ値は、この直線Gと直線Lの傾きと定義した。
【0030】
(4)現像剤担持体表面の樹脂被覆層の算術表面粗さ(Ra)
樹脂被覆層表面の算術平均粗さRaの測定は日本工業規格(JIS)B0601(2001)に基づき行なった。測定には、小坂研究所社製、サーフコーダーSE−3500(商品名)を用いた。測定条件は、カットオフを0.8mm、評価長さを8mm、送り速度を0.5mm/sとした。測定箇所は、周方向に0°、120°及び240°の各々について、軸方向中央部、両端から50mmの3点の計9箇所とした。Raは各測定箇所のRaの算術平均値とした。
【0031】
<粉体塗料M−1の製造例>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 40部
(EPICLON AM−020−P 大日本インキ(株)製)
(「EPICLON」は登録商標)
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂 60部
(ファインディック M−8700 大日本インキ(株)製)
(「FINE DIC\フアインディック」は登録商標)
エポキシ樹脂硬化剤 0.3部
(キュアゾールC11Z 四国化成工業(株)製)
(「キュアゾール」は登録商標)
上記材料をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株)製)を用いて攪拌混合させた後、PCM混練機(池貝鉄工所社製)を用い、100℃設定下において混練した。得られた混練物を粗砕し、ターボミル(ターボ工業社製)にて微粉砕を実施後、エルボージェット(日鉄鉱業社製)により分級を行ない、体積平均粒径が8.7μmの樹脂粒子(J−1)を得た。一方、コールタールピッチから溶剤分別によりβ−レジンを抽出し、これを水素添加、重質化処理を行なった。次いでトルエンにより溶剤可溶分を除去してメソフェーズピッチを得た。得られたバルクメソフェーズピッチを微粉砕し、空気中において約800℃で酸化処理した後、窒素雰囲気下中にて3000℃で焼成し黒鉛化させ、更に分級して体積平均粒径1.8μmの黒鉛粒子(B−1)を得た。上記の樹脂粒子J−1:100部と黒鉛粒子B−1:33部とをヘンシェルミキサーにて混合して粉体塗料M−1を得た。粉体塗料M−1の体積平均粒径は9.0μm、体積抵抗値は3.5Ω・cmであった。
【0032】
<粉体塗料M−2の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、樹脂類と一緒に50部の黒鉛粒子B−1を混練し、得られた混練物を粗砕、微粉砕および分級して粉体塗料M−2を得た。粉体塗料M−2の体積平均粒径は8.5μm、体積抵抗値は0.8Ω・cmであった。
【0033】
<粉体塗料M−3の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、樹脂類と一緒に7部の導電性カーボンブラック(Vulcan XC−72(Cabot Corporation製))(「VULCAN」は登録商標)を加えた。それ以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして体積平均粒径が8.6μmの樹脂粒子(J−3)を得た。100部の樹脂粒子(J−3)と33部の黒鉛粒子B−1とをヘンシェルミキサーにて混合して粉体塗料M−3を得た。粉体塗料M−3の体積平均粒径は8.7μm、体積抵抗値は2.2Ω・cmであった。
【0034】
<粉体塗料M−4の製造例>
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 45部
(EPICLON 2050 大日本インキ(株)製)
カルボキシル基含有ポリエステル樹脂 55部
(ファインディック M−8830 大日本インキ(株)製)
エポキシ樹脂硬化剤 0.5部
(キュアゾールC17Z 四国化成工業(株)製)
上記材料を用い、粉体塗料M−1の製造例と同様にして体積平均粒径が9.8μmの樹脂粒子(J−4)を得た。一方、粉体塗料M−1の製造例において、黒鉛粒子B−1の製造時における粉砕及び分級条件を変更して体積平均粒径が0.3μmの黒鉛粒子B−2を作製した。100部の樹脂粒子J−4と33部の黒鉛粒子B−2とをヘンシェルミキサーにて混合して粉体塗料M−4を得た。粉体塗料M−4の体積平均粒径は9.7μm、体積抵抗値は7.5Ω・cmであった。
【0035】
<粉体塗料M−5の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、黒鉛粒子B−1の製造時における粉砕及び分級条件を変更して体積平均粒径が20.0μmの黒鉛粒子B−3を作製した。100部の樹脂粒子J−4と33部の黒鉛粒子B−3とをヘンシェルミキサーにて混合させて粉体塗料M−5を得た。粉体塗料M−5の体積平均粒径は15.5μm、体積抵抗値は11.5Ω・cmであった。
【0036】
<粉体塗料M−6の製造例>
粉体塗料M−3の製造例において、カーボンブラックの添加量を6部、黒鉛粒子B−1の添加量を12部とした。それ以外は粉体塗料M−3の製造例と同様にして樹脂粒子J−6及び粉体塗料M−6を得た。粉体塗料M−6の体積平均粒径は8.5μm、体積抵抗値5.0×10Ω・cmであった。
【0037】
<粉体塗料M−7の製造例>
粉体塗料M−2の製造例において、黒鉛粒子B−1の添加量を200部とした以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料M−7を得た。粉体塗料M−7の体積平均粒径は9.3μm、体積抵抗値は1.1×10−1Ω・cmであった。
【0038】
<粉体塗料M−8の製造例>
黒鉛粒子の原材料としてのコークスとタールピッチの混合物をタールピッチの軟化点以上の温度で練り込み、押出し成型し、窒素雰囲気下において1000℃で一次焼成を行なって炭化させた。続いてコールタールピッチを含浸させた後、窒素雰囲気下において2700℃で二次焼成を行ない黒鉛化し、更に粉砕及び分級して体積平均粒径2.3μmの黒鉛粒子B−4を得た。前記粉体塗料M−1の製造例にて記載した100部の樹脂粒子J−1と33部の黒鉛粒子B−4とをヘンシェルミキサーにて混合して粉体塗料M−8を得た。粉体塗料M−8の体積平均粒径は9.2μm、体積抵抗値は4.4Ω・cmであった。
【0039】
<粉体塗料m−1の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、樹脂粒子J−1の製造時の粉砕及び分級条件を変更して、体積平均粒径が2.5μmの樹脂粒子K−1を得た。それ以外は粉体塗料M−1の製造例と同様にして粉体塗料m−1を得た。粉体塗料m−1の体積平均粒径は2.7μm、体積抵抗値は6.9×10Ω・cmであった。
【0040】
<粉体塗料m−2の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、樹脂粒子J−1の製造時の粉砕及び分級条件を変更して、体積平均粒径が33.8μmの樹脂粒子K−2を得た。それ以外は粉体塗料M−1の製造例と同じ方法で粉体塗料m−2を得た。粉体塗料m−2の体積平均粒径は33.6μm、体積抵抗値は3.1×10Ω・cmであった。
【0041】
<粉体塗料m−3の製造例>
粉体塗料M−1の製造例において、100部の樹脂粒子J−1と2部の黒鉛粒子B−1とをヘンシェルミキサーにて混合させて粉体塗料m−3を得た。粉体塗料m−3の体積平均粒径は8.7μm、体積抵抗値は8.5×10Ω・cmであった。
【0042】
<粉体塗料m−4の製造例>
粉体塗料M−2の製造例において、黒鉛粒子B−1の代わりに導電性カーボンブラック(商品名:Vulcan XC−72)を使用した。それ以外は粉体塗料M−2の製造例同じ方法にて粉体塗料m−4を得た。粉体塗料m−4の体積平均粒径は8.3μm、体積抵抗値は4.8Ω・cmであった。
【0043】
<現像スリーブS−1の製造例>
図4に示した静電塗工装置を用いて、スリーブ基体表面に樹脂被覆層を有する現像剤担持体の製造を行なった。まず、スリーブ基体10として外径20mmφ、中心線平均粗さRa=0.3μmの研削加工したアルミニウム製円筒管を用意した。また、図4のホッパー4中に粉体塗料M−1を入れ、装置全体のエア供給量を40m/時間とし、コンプレッサ5aより4m/時間の塗料インジェクションエアと36m/時間の吐出(搬送)エアを供給して静電塗工ガン7に粉体塗料M−1を搬送した。そして、電源ユニット8より静電塗工ガン7にある先端ノズル9部の放電電極に対して直流バイアス(電圧:−40kV、電流:20μA)を印加して、スリーブ基体10表面に粉体塗料M−1を塗工した。この時、先端ノズル9とスリーブ基体10表面の距離は80mm、塗工速度(静電塗工ガン7の移動速度)は30mm/s、スリーブ基体10の回転速度は700rpmで行なった。塗工終了後、スリーブサンプルを150℃設定の恒温槽に30分間放置させることで粉体塗料中の樹脂成分を溶融/硬化させて成膜化し、その後空冷して現像剤担持体(現像スリーブ)S−1を作製した。
【0044】
<現像スリーブS−2〜S−8及びS−1´〜S−4´の製造例>
粉体塗料M−2〜M−8、m−1〜m−4を用いた以外は現像スリーブS−1の製造例と同様にして現像スリーブS−2〜S−8及びS−1´〜S−4´を製造した。
【0045】
<現像スリーブS−5´製造例>
粉体塗料M−2の製造例において、粉体塗料M−2を作製する際に使用した材料及び樹脂被覆層に凹凸付与するための粒子として、5部のMBX−8(積水化成品工業社製)をメチルエチルケトンに分散し、更に固形分を25%に調整して塗工液とした。この塗工液を、図2(a)及び(b)に示したスプレー塗工装置を用いて、スリーブ基体(外径20mmφ、A3サイズ、中心線平均粗さRa=0.3μmの研削加工したアルミニウム製円筒管を使用)表面に塗工を行なった。この時、塗工ガン先端とスリーブ基体表面の距離は50mm、塗工速度(静電塗工ガン7の移動速度)は30mm/s、スリーブ基体10の回転速度は700rpmで行なった。塗工終了後、スリーブサンプルを150℃設定の恒温槽に30分間静置し、塗料中の溶剤成分の除去及び樹脂成分の硬化を行ない、その後空冷して現像スリーブS−5´を得た。
【0046】
上記現像スリーブS−1〜S−8およびS−1´〜S−5´の物性値を表1に示す。
【0047】
<負帯電性の磁性一成分現像剤Tの製造例>
プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA 70mol%
エチレンオキサイド付加ビスフェノールA 33mol%
テレフタル酸 28mol%
トリメリット酸 30mol%
アジピン酸 38mol%
上記原料を5リットル4口フラスコに仕込み、還流冷却器、水分離装置、Nガス導入管、温度計及び撹拌装置を付し、フラスコ内にNガスを導入しながら180℃で縮重合反応を行い、反応終了後、水洗し、脱水、乾燥工程を経て、ポリエステル樹脂を得た。次いで、下記の材料をヘンシェルミキサーでよく混合した後、温度130℃に設定したPCM混練機(池貝鉄工所社製)にて混練した。
・上記ポリエステル樹脂 :100部、
・平均粒径0.2μmの球状磁性体 :85部、
・アゾ系鉄錯体化合物(負帯電性荷電制御剤、保土谷化学工業社製、商品名:T−77)
:2部、
・低分子量エチレンープロピレン共重合体(三洋化成社製、商品名:ビスコール550−P) :4部。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、トナー製造用粉体原料である粉体原料A(粗粉砕物)を得た。そして、該粉体原料AをPJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製)を用いて微粉砕を行なった。更に該微粉砕粉を、エルボージェット(日鉄鉱業社製)により分級を行なうことで超微粉および粗粉を同時に分級除去して、重量平均粒子径(D)が7.5μmであるトナー粒子を得た。このトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンおよびジメチルシリコーンオイルで処理した負帯電性の1.2部及びチタン酸ストロンチウム0.8部を加えてヘンシェルミキサーにて混合し、負帯電性磁性一成分現像剤Tを得た。なお、上記疎水性シリカ微粉末のBET値は300m/gである。
【実施例1】
【0048】
現像スリーブS−1にマグネットローラを装着してフランジを嵌合し、図7(a)に示したような構成の現像装置を有する複写機(商品名iR2870;キヤノン(株)社製)に装着した。上記磁性一成分現像剤Tを用いて、温度23℃、湿度50%RHの環境、温度23℃、湿度5%RHの環境、及び温度32℃、湿度85%RHの環境の各々で1枚/7秒の間欠モードにて、印字比率が5%の文字パターンの画像を2万枚出力した。そして、後述する各評価項目について、初期の評価は、上記文字パターンの画像を10枚出力した後に行なった。また、耐久評価は2万枚の画像出力の終了直後に実施した。評価結果を表1に示す。
【0049】
(1)画像濃度
画像比率5.5%であるテストパターン上の直径5mmのソリッド画像の反射濃度を、反射濃度計(商品名:RD918;マクベス社製)を用いて測定し、10点の平均値をとって画像濃度とした。
【0050】
(2)カブリ
適正画像におけるベタ白画像の反射率を測定し、更に未使用の転写紙の反射率を測定し、(ベタ白画像の反射率の最悪値−未使用転写紙の反射率の平均値)をカブリ濃度とし、以下の基準により評価した。反射率の測定はTC−6DS(東京電色製)により、ランダムに10点について測定を行なった。
【0051】
A:1.0%以下(目視ではカブリは認められない)
B:1.0%〜2.0%(注視しなければカブリは認められない)
C:2.0%〜3.0%(カブリはあるものの実用上問題なし)
D:3.0%以上(カブリが目立ちNGレベル)
(3)画質
耐久評価の初期及び耐久最後の出力画像をルーペまたは目視により観察し、下記基準により評価した。
【0052】
A:倍率が10倍のルーペで見ても飛び散りのない鮮明な画像である
B:目視する限り鮮明な画像である
C:若干飛び散りが見られるものの実用上問題ない
D:飛び散り以外に文字のカスレが目立つ。NGレベル
(4)スリーブゴースト
幅x長さlの帯状ベタ黒部(図8(a)を画出した後、幅y(但し、y>x)長さlのハーフトーン(図8(b)を画出する。このハーフトーン画像の画像濃度を、図8(c)に示す領域ア、イ、ウの各々で画像濃度を測定し、濃度差(濃淡の程度)をスリーブゴーストの有無、およびその程度を下記の基準により評価した。
【0053】
A:濃度差が見られない(濃度差が0.02未満)、
B:領域イ、ウにて軽微な濃度差が見られる(濃度差が0.02以上0.04未満)、
C:領域ア〜ウの各々で若干の濃度差が見られる(濃度差が0.04以上007未満)、
D:顕著な濃度差が見られる(濃度差が0.07以上)。
【0054】
なお、領域ア、イ、ウの定義は以下の通りである。
・領域ア:画像形成開始点から現像スリーブ1回転の長さz以降の部分;
・領域イ:画像形成開始点から現像スリーブ1回転の長さzまででベタ黒画像を画出した部分と重なる部分;
・領域ウ:画像形成開始点から現像スリーブ1回転の長さzまででハーフトーンのみを画出しした部分。
【0055】
<実施例2〜8、比較例1〜5>
それぞれ現像剤担持体S−2〜S−8又はS−1´〜S−5´を用いて、実施例1と同様の画像評価方法にて、画像評価を行なった。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【符号の説明】
【0057】
1 黒鉛粒子
2 樹脂成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の表面に樹脂被覆層を有する摩擦帯電部材の該樹脂被覆層の形成に用いる粉体塗料であって、表面に黒鉛粒子を有する樹脂粒子を含み、体積平均粒径が3μm〜30μmであり、体積抵抗値が10Ω・cm以下であることを特徴とする粉体塗料。
【請求項2】
前記黒鉛粒子の体積平均粒径が0.5μm〜15μmである請求項1に記載の粉体塗料。
【請求項3】
前記黒鉛粒子の体積平均粒径は、樹脂粒子の体積平均粒径よりも小さい請求項1または2に記載の粉体塗料。
【請求項4】
導電性微粒子を更に含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の粉体塗料。
【請求項5】
前記黒鉛粒子の該粉体塗料に対する含有率が10wt%〜70wt%である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の粉体塗料。
【請求項6】
帯電させた基体の表面に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉体塗料を、該基体を回転させながら静電塗工し、次いで塗工された該粉体塗料を溶融させて樹脂被覆層を形成する工程を含むことを特徴とする現像剤担持体の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂被覆層の光電子分光測定で得られた仕事関数測定曲線において、規格化光電子収率Yと励起エネルギーeVの傾きをγ(=Y/eV)、樹脂被覆層における黒鉛粒子の含有率をG(wt%)とした時、式(1)及び式(2)を満たす請求項6に記載の現像剤担持体の製造方法:
γ > 0.5G + 5 (1)
10 ≦ G ≦ 70 (2)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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