説明

粉体塗料

【課題】本発明の目的は、柔軟で燃料バリア性に優れており、耐熱性・耐薬品性・耐油性等の特性を兼ね備えた塗膜を形成することができる粉体塗料を提供することである。
【解決手段】フッ素樹脂(A)10〜95重量%および架橋フッ素ゴム(B)90〜5重量%を含む粉体塗料であって、フッ素樹脂(A)が、融点120〜330℃の含フッ素エチレン性重合体(a)を含み、架橋フッ素ゴム(B)が、フッ素樹脂(A)および架橋剤(C)の存在下、少なくとも1種のフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)を溶融条件下にて動的に架橋処理したものである粉体塗料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂および架橋フッ素ゴムを含む粉体塗料に関する。また、本発明は、該粉体塗料からなる塗膜を形成するための塗膜形成方法に関する。さらに、基材と前記粉体塗料から形成される塗膜を含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂は、耐薬品性、耐食性等に優れるものであるので、化学薬品等の浸食から基材を保護する等の目的で、基材上にフッ素樹脂からなる膜を形成させる用途に用いられることがあり、その場合、基材の様々な形状に合わせて施工することができ、施工時に廃棄分が少なく、取り扱いが容易である等の点から、粉体塗料として用いることが多い。
【0003】
粉体塗料は、通常、静電粉体塗装、回転成形等の方法を用いて基材に塗布し、適宜加熱処理を行うことにより、塗膜を形成する。
【0004】
フッ素樹脂は、一般に、基材との接着性が低いため、フッ素樹脂の粉体塗料を塗装して得られる塗膜と基材との接着性を向上させるために、例えば、芳香族系樹脂を添加したフッ素樹脂を基材上に塗装して得られたプライマー層上に、さらにフッ素樹脂の粉体塗料を塗装して得られるコーティング製品が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、プライマーを用いると、プライマー中の不純物が時間とともに溶出したり、用途によって色、模様等の基材自体の表面外観を用いることができないことがあり、また、作業が煩雑になることがあるという問題があった。そこで、プライマーを用いなくても基材との接着力が優れた塗膜を得ることができるフッ素樹脂の粉体塗料が望まれていた。
【0005】
このような問題点を改善する粉体塗料として、融点が150〜260℃、融解ピークにおける融点の半価幅が30℃以上であるフッ素樹脂からなる粉体塗料が知られている(例えば、特許文献2参照)。この粉体塗料は、プライマー層の設置を行なわなくても、基材との接着性および表面平滑性が良好である塗膜を得ることができるものであるが、弾性率が大きく硬い塗膜であるため、応力を付加するとクラック等が発生するという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平8−300560号公報
【特許文献2】国際公開第2004/065504号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、基材との接着性に優れ、良好な表面平滑性を有し、かつ柔軟で耐熱性・耐薬品性・耐油性等の特性を兼ね備えた塗膜を形成することができる粉体塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、フッ素樹脂(A)10〜95重量%および架橋フッ素ゴム(B)90〜5重量%を含む粉体塗料であって、
フッ素樹脂(A)が、融点120〜330℃の含フッ素エチレン性重合体(a)を含み、架橋フッ素ゴム(B)が、フッ素樹脂(A)および架橋剤(C)の存在下、少なくとも1種のフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)を溶融条件下にて動的に架橋処理したものである粉体塗料に関する。
【0009】
フッ素樹脂(A)が、分子末端および/または分子側鎖に官能基を有する構造であることが好ましい。
【0010】
含フッ素エチレン性重合体(a)が、
(a−1)テトラフルオロエチレンおよびエチレンの共重合体、
(a−2)テトラフルオロエチレンと、下記の一般式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は、−CF3または−ORf2であり、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物の共重合体、
(a−3)テトラフルオロエチレン単位19〜90モル%、エチレン単位9〜80モル%、および下記一般式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は、−CF3または−ORf2であり、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表わす)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜72モル%からなる共重合体、
(a−4)ポリフッ化ビニリデン、および
(a−5)クロロトリフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンの共重合体
からなる群から選ばれる一つ以上の重合体であることが好ましい。
【0011】
架橋フッ素ゴム(B)のフッ素濃度が、68重量%以上であることが好ましい。
【0012】
フッ素ゴム(b−1)が、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴムであることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、前記粉体塗料からなる塗膜を形成するための塗膜形成方法であって、
前記粉体塗料を基材に塗布してフッ素樹脂(A)の融点以上である加熱温度で加熱処理を行う工程を有する塗膜形成方法に関する。
【0014】
さらに、本発明は、基材および、前記粉体塗料から形成される塗膜を含む積層体に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、特定のフッ素樹脂およびフッ素ゴムからなる粉体塗料により、基材との接着性に優れ、良好な表面平滑性を有し、かつ柔軟で耐熱性・耐薬品性・耐油性等の特性を兼ね備えた塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、フッ素樹脂(A)10〜95重量%および架橋フッ素ゴム(B)90〜5重量%を含む粉体塗料であって、
フッ素樹脂(A)が、融点120〜330℃の含フッ素エチレン性重合体(a)を含み、架橋フッ素ゴム(B)が、フッ素樹脂(A)および架橋剤(C)の存在下、少なくとも1種のフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)を溶融条件下にて動的に架橋処理したものである粉体塗料に関する。
【0017】
フッ素樹脂(A)としては、融点120〜330℃の含フッ素エチレン性重合体(a)を含むフッ素樹脂であればよい。含フッ素エチレン性重合体(a)の融点は、150〜310℃であることが好ましく、150〜290℃であることがより好ましい。含フッ素エチレン性重合体(a)の融点が、120℃未満であると、本発明の粉体塗料からなる塗膜の耐熱性が低下する傾向があり、330℃を超えると、本発明の粉体塗料からなる塗膜の加工時において、粉体塗料に含有される架橋フッ素ゴム(B)が熱劣化するおそれがある。
【0018】
含フッ素エチレン性重合体(a)としては、特に限定されるものではないが、例えば、
テトラフルオロエチレン(以下、TFEとする)、一般式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は、−CF3または−ORf2であり、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である)
で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物などのパーフルオロオレフィン、クロロトリフルオロエチレン(以下、CTFEとする)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、ビニリデンフルオライド(以下、VdFとする)、フッ化ビニル、一般式(2):
CH2=CX1(CF2n2 (2)
(式中、X1は、水素原子またはフッ素原子であり、X2は、水素原子、フッ素原子または塩素原子であり、nは、1〜10の整数である)
などのフルオロオレフィンなどをあげることができる。
【0019】
そして、含フッ素エチレン性重合体(a)は、上記含フッ素エチレン性単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位を有してもよく、このような単量体としては、上記フルオロオレフィン、パーフルオロオレフィン以外の非フッ素エチレン性単量体をあげることができる。
【0020】
非フッ素エチレン性単量体としては、例えば、エチレン、プロピレンまたはアルキルビニルエーテル類などをあげることができる。ここで、アルキルビニルエーテルは、炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルビニルエーテルをいう。
【0021】
これらの中でも、本発明の粉体塗料からなる塗膜の耐熱性・耐薬品性・耐油性が優れ、かつ塗膜形成性が容易になる点から、含フッ素エチレン性重合体(a)は、
(a−1)TEFおよびエチレンの共重合体(ETFE)、
(a−2)TFEと、下記の一般式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は、−CF3または−ORf2であり、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である)
で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物の共重合体(PFAまたはFEP)、
(a−3)TFE単位19〜90モル%、エチレン単位9〜80モル%、および下記一般式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は、−CF3または−ORf2であり、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表わす)
で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜72モル%からなる共重合体、
(a−4)ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、および
(a−5)CTFEおよびTFEの共重合体
のいずれかであることが好ましい。次に(a−1)〜(a−5)の好ましい含フッ素エチレン性重合体(a)について説明する。
【0022】
(a−1)ETFE
ETFEの場合、上述の作用効果に加えて柔軟性の点で好ましい。TFE単位とエチレン単位との含有モル比は20:80〜90:10が好ましく、62:38〜90:10がより好ましく、63:37〜80:20が特に好ましい。また、第3成分を含有していてもよく、第3成分としてはTFEおよびエチレンと共重合可能なものであればその種類は限定されない。第3成分としては、通常、下記式
CH2=CX3f3、CF2=CFRf3、CF2=CFORf3、CH2=C(Rf32
(式中、X3は水素原子またはフッ素原子、Rf3はフルオロアルキル基を表す)
で示されるモノマーが用いられ、これらの中でも、CH2=CX3f3で示される含フッ素ビニルモノマーがより好ましく、Rf3の炭素数が1〜8のモノマーが特に好ましい。
【0023】
前記式で示される含フッ素ビニルモノマーの具体例としては、1,1−ジヒドロパーフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロパーフルオロブテン−1、1,1,5−トリヒドロパーフルオロペンテン−1、1,1,7−トリヒドロパーフルオロへプテン−1、1,1,2−トリヒドロパーフルオロヘキセン−1、1,1,2−トリヒドロパーフルオロオクテン−1、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルビニルエーテル、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロペン、パーフルオロブテン−1、3,3,3−トリフルオロ−2−トリフルオロメチルプロペン−1、2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(CH2=CFCF2CF2CF2H)があげられる。
【0024】
第3成分の含有量は、含フッ素エチレン性重合体に対して0.1〜10モル%が好ましく、0.1〜5モル%がより好ましく、0.2〜4モル%が特に好ましい。
【0025】
(a−2)PFAまたはFEP
PFAまたはFEPの場合、上述の作用効果においてとりわけ耐熱性および耐薬品性が優れたものとなる点で好ましい。TFE単位90〜99モル%と一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜10モル%からなる含フッ素エチレン性重合体であることがより好ましい。また、TFEおよび一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物からなる含フッ素エチレン性重合体は、第3成分を含有していてもよく、第3成分としてはTFEおよび式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物と共重合可能なものであればその種類は限定されない。
【0026】
(a−3)TFE単位19〜90モル%、エチレン単位9〜80モル%、および一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜72モル%からなる共重合体
前記共重合体の場合、上述の作用効果に加えて柔軟性の点で好ましい。TFE単位19〜90モル%、エチレン単位9〜80モル%、および一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜72モル%からなる含フッ素エチレン性重合体であることがより好ましく、さらに好ましくはTFE単位20〜70モル%、エチレン単位20〜60モル%、および一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜60モル%からなる含フッ素エチレン性重合体である。
【0027】
また、TFE、エチレンおよび一般式(1)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物からなる含フッ素エチレン性重合体は、追加成分を含有していてもよく、追加成分としては、2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(CH2=CFCF2CF2CF2H)などをあげることができる。
【0028】
追加成分の含有量は、含フッ素エチレン性重合体に対して0.1〜3モル%であることが好ましい。
【0029】
(a−4)PVDF
PVDFの場合、上述の作用効果に加えて、優れた力学物性の点で好ましい。
【0030】
(a−5)CTFEおよびTFEの共重合体
CTFEおよびTFEの共重合体の場合、CTFE単位を2〜98モル%、TFE単位を2〜98モル%含有することが好ましく、CTFE単位を10〜90モル%、TFE単位を10〜90モル%含有することがより好ましい。
【0031】
また、さらにCTFEおよびTFEと共重合可能な単量体単位を含むことができる。該共重合可能な単量体の添加量は、0.1〜10モル%であり、CTFE単位およびTFE単位は合計で90〜99.9モル%である。
【0032】
架橋フッ素ゴム(B)は、フッ素樹脂(A)および架橋剤(C)の存在下、少なくとも1種のフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)を溶融条件下にて動的に架橋処理したものである。
【0033】
フッ素ゴム(b−1)としては、パーフルオロフッ素ゴム、非パーフルオロフッ素ゴムなどがあげられる。
【0034】
パーフルオロフッ素ゴムとしては、TFE/PAVE系共重合体、TFE/ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPとする)/PAVE系共重合体などがあげられる。
【0035】
非パーフルオロフッ素ゴムとしては、たとえば、VdF系重合体、TFE/プロピレン系共重合体などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組合わせて用いることができる。
【0036】
また、前記パーフルオロフッ素ゴムや非パーフルオロフッ素ゴムとして例示したものは主モノマーの構成であり、架橋用モノマーや変性モノマー等を共重合したものも好適に用いることができる。架橋用モノマーや変性モノマーとしては、ヨウ素原子、臭素原子、二重結合を含むものなどの公知の架橋用モノマー、移動剤、公知のエチレン性不飽和化合物などの変性モノマーなどを使用することができる。
【0037】
前記VdF系重合体としては、具体的には、VdF/HFP系共重合体、VdF/TFE/HFP系共重合体、VdF/TFE/プロピレン系共重合体、VdF/エチレン/HFP系共重合体、VdF/TFE/PAVE系共重合体、VdF/PAVE系共重合体、VdF/CTFE系共重合体などをあげることができる。さらに具体的には、VdF25〜85モル%と、VdFと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体75〜15モル%とからなる含フッ素共重合体であることが好ましく、より好ましくは、VdF50〜80モル%と、VdFと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体50〜20モル%とからなる含フッ素共重合体である。
【0038】
ここで、VdFと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体としては、たとえば、TFE、CTFE、トリフルオロエチレン、HFP、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、PAVE、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどの非フッ素単量体があげられる。これらをそれぞれ単独で、または、任意に組み合わせて用いることができる。
【0039】
前記フッ素ゴムの中でも、耐熱性、塗膜形成性、圧縮永久ひずみ、コストの点から、VdF単位を含むフッ素ゴムであることが好ましく、塗膜形成性および圧縮永久ひずみが良好な点から、VdF単位とHFP単位と有するフッ素ゴムであることがより好ましい。
【0040】
また、VdF/HFP系フッ素ゴム、VdF/TFE/HFP系フッ素ゴム、TFE/プロピレン系フッ素ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムであることが好ましく、VdF/TFE/HFP系フッ素ゴムであることがより好ましい。
【0041】
本発明に使用されるフッ素ゴム(b−1)は、通常の乳化重合法により製造することができる。重合時の温度、時間などの重合条件としては、モノマーの種類や目的とするゴムにより適宜決定すればよい。また、後述するヨウ素移動重合法により重合することもできる。
【0042】
含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)としては、特に限定されるものではないが、少なくとも1種のエラストマー性ポリマーセグメントと、少なくとも1種の非エラストマー性ポリマーセグメントとからなり、かつエラストマー性ポリマーセグメントと非エラストマー性ポリマーセグメントのうち、少なくとも一方が含フッ素ポリマーセグメントであることが好ましい。
【0043】
エラストマー性ポリマーセグメントは、重合体に柔軟性を付与し、ガラス転移点が25℃以下が好ましく、より好ましくは0℃以下である。その構成単位としては、たとえば、TFE、CTFE、HFP、一般式(3):
CF2=CFO(CF2CFX4O)p−(CF2CF2CF2O)q−Rf4 (3)
(式中、X4は、フッ素原子または−CF3、Rf4は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、pは、0〜5の整数、qは、0〜5の整数である)
で表されるパーフルオロビニルエーテルなどのパーハロオレフィン;VdF、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体;エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどの非フッ素単量体などがあげられる。
【0044】
架橋部位を与える単量体としては、たとえば、一般式(4):
CX52=CX5−Rf5CHR16 (4)
(式中、X5は、水素原子、フッ素原子または−CH3、Rf5は、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基またはパーフルオロポリオキシアルキレン基、R1は、水素原子または−CH3、X6は、ヨウ素原子または臭素原子である)
で表されるヨウ素または臭素含有単量体、一般式(5):
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2n−X7 (5)
(式中、mは、0〜5の整数、nは、1〜3の整数、X7は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、臭素原子である)
で表される単量体で表されるような単量体などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。
【0045】
つぎに、非エラストマー性ポリマーセグメントの構成単位としては、TFE、CTFE、PAVE、HFP、一般式(6):
CF2=CF(CF2r8 (6)
(式中、rは、1〜10の整数、X8は、フッ素原子または塩素原子である)
で表される化合物、パーフルオロ−2−ブテンなどのパーハロオレフィン;VdF、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、一般式(7):
CH2=CX9−(CF2s−X9 (7)
(式中、X9は、水素原子またはフッ素原子、sは、1〜10の整数)
で表される化合物、CH2=C(CF32などの部分フッ素化オレフィン;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、ビニルエーテル、カルボン酸ビニルエステル、アクリル酸などの非フッ素単量体などをあげることができる。
【0046】
また、これらの中でも、エラストマー性ポリマーセグメントが、TFE/VdF/HFPの共重合体であり、かつ非エラストマー性ポリマーセグメントが、TFE/エチレンの共重合体である含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)が好ましく、エラストマー性ポリマーセグメントが、TFE/VdF/HFP=0〜35/40〜90/5〜50モル%であり、かつ非エラストマー性ポリマーセグメントが、TFE/エチレン=20〜80/80〜20モル%である含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)がより好ましい。
【0047】
含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)は、1分子中にエラストマー性ポリマーセグメントと非エラストマー性ポリマーセグメントがブロックやグラフトの形態で結合した含フッ素多元セグメント化ポリマーであることが好ましく、含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)が、1個のエラストマー性ポリマーセグメントと、2個の非エラストマー性ポリマーセグメントからなり、かつそのうちの少なくとも一方は含フッ素ポリマーセグメントであるトリブロックポリマーからなることが好ましい。
【0048】
含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)としては、エラストマー性ポリマーセグメントと非エラストマー性ポリマーセグメントとをブロックやグラフトなどの形態でつなぎ、含フッ素多元セグメント化ポリマーとするべく、公知の種々の方法が採用できるが、なかでも特公昭58−4728号公報などに示されたブロック型の含フッ素多元セグメント化ポリマーの製法や、特開昭62−34324号公報に示されたグラフト型の含フッ素多元セグメント化ポリマーの製法などが好ましく採用できる。
【0049】
とりわけ、セグメント化率(ブロック化率)も高く、均質で規則的なセグメント化ポリマーが得られることから、特公昭58−4728号公報、高分子論文集(Vol.49、No.10、1992)記載のいわゆるヨウ素移動重合法で合成されたブロック型の含フッ素多元セグメント化ポリマーが好ましい。
【0050】
含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)の好ましい製造方法としては、フッ素ゴムの製造法として公知のヨウ素移動重合法をあげることができる。たとえば、実質的に無酸素下で、水媒体中で、ヨウ素化合物、好ましくはジヨウ素化合物の存在下に、前記パーハロオレフィンと、要すれば硬化部位を与える単量体を加圧下で撹拌しながらラジカル開始剤の存在下、乳化重合を行なう方法があげられる。使用するジヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、一般式(8)
2xBry (8)
(式中、xおよびyはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R2は炭素数1〜16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1〜3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)
で表される化合物を存在させることによって得られる。このようにして導入されるヨウ素または臭素が架橋点として機能する。
【0051】
式(8)で表される化合物としては、たとえば1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカン、1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨード−n−プロパン、CF2Br2、BrCF2CF2Br、CF3CFBrCF2Br、CFClBr2、BrCF2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF2CF2CF2Br、BrCF2CFBrOCF3、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン、1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン、1−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブタン、2−ブロモ−3−ヨードパーフルオロブタン、3−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、2−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2−ヨードエチル)および(2−ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合せて使用することもできる。
【0052】
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、ジヨードメタンなどを用いるのが好ましい。
【0053】
本発明で使用するラジカル重合開始剤は、従来から含フッ素エラストマーの重合に使用されているものと同じものであってよい。これらの開始剤には有機および無機の過酸化物ならびにアゾ化合物がある。典型的な開始剤として過硫酸塩類、過酸化カーボネート類、過酸化エステル類などがあり、好ましい開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)があげられる。APSは単独で使用してもよく、またサルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤と組み合わせて使用することもできる。
【0054】
乳化重合に使用される乳化剤としては、広範囲なものが使用可能であるが、重合中におこる乳化剤分子への連鎖移動反応を抑制する観点から、フルオロカーボン鎖、またはフルオロポリエーテル鎖を有するカルボン酸の塩類が望ましい。乳化剤の使用量は、添加された水の約0.05〜2重量%が好ましく、とくに0.2〜1.5重量%が好ましい。
【0055】
重合圧力は、広い範囲で変化させることができる。一般には、0.5〜5MPaの範囲である。重合圧力は、高い程重合速度が大きくなるため、生産性の向上の観点から、0.8MPa以上であることが好ましい。
【0056】
前記ヨウ素移動重合法で含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)のエラストマー性ポリマーセグメントを製造した場合、その数平均分子量は、得られる含フッ素多元セグメント化ポリマー全体へ柔軟性の付与、弾性の付与、機械的物性の付与の点から、3,000〜750,000であることが好ましく、5,000〜300,000であることがより好ましい。
【0057】
このようにして得られるエラストマー性ポリマーセグメントの末端部分はパーハロ型となっており、非エラストマー性ポリマーセグメントのブロック共重合の開始点となるヨウ素原子を有している。
【0058】
ついで、非エラストマー性ポリマーセグメントのエラストマー性ポリマーセグメントへのブロック共重合は、エラストマー性ポリマーセグメントの乳化重合に引き続き、単量体を非エラストマー性ポリマーセグメント用に変えることにより行なうことができる。
【0059】
得られる非エラストマー性ポリマーセグメントの数平均分子量は、耐熱性の付与、機械的物性の付与の点から、1,000〜1,200,000が好ましく、より好ましくは3,000〜600,000である。
【0060】
また、含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)には、非エラストマー性ポリマーセグメントが結合していないエラストマー性ポリマーセグメントのみのポリマー分子は、含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)中のセグメントとポリマー分子との合計量に対し20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%以下である。
【0061】
架橋フッ素ゴム(B)のフッ素濃度は、68重量%以上であることが好ましく、68〜75重量%であることがより好ましく、69〜74重量%であることがさらに好ましく、70〜73重量%であることが特に好ましい。フッ素濃度が68重量%未満であると得られる本発明の粉体塗料からなる塗膜の機械物性および耐熱性が低下する傾向がある。
【0062】
架橋剤(C)は、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)の種類や溶融混練条件に応じて、適宜選択することができる。
【0063】
本発明で用いられる架橋系は、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)に架橋性基(キュアサイト)が含まれる場合は、キュアサイトの種類によって、または本発明の粉体塗料からなる塗膜の用途により適宜選択すればよい。
【0064】
架橋系としては、ポリオール架橋系、有機過酸化物架橋系およびポリアミン架橋系のいずれも採用できる。
【0065】
ここで、ポリオール架橋系により架橋してなる場合は、架橋点に炭素−酸素結合を有しており、圧縮永久歪みが小さく、成形性も良い、という特徴がある点で好適である。
【0066】
有機過酸化物架橋系により架橋してなる場合は、架橋点に炭素−炭素結合を有しているので、架橋点に炭素−酸素結合を有するポリオール架橋系および炭素−窒素二重結合を有するポリアミン架橋系に比べて、耐薬品性および耐スチーム性に優れているという特徴がある。
【0067】
ポリアミン架橋により架橋してなる場合は、架橋点に炭素−窒素二重結合を有しているものであり、動的機械特性に優れているという特徴がある。しかし、ポリオール架橋系または有機過酸化物架橋系架橋剤を用いて架橋してなる場合に比べて、圧縮永久歪みが大きくなる傾向がある。
【0068】
したがって、本発明では、ポリオール架橋系または有機過酸化物架橋系の架橋剤を用いることが好ましく、ポリオール架橋系の架橋剤を用いることがより好ましい。
【0069】
本発明における架橋剤は、有機過酸化物、ポリアミン化合物およびポリヒドロキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0070】
ポリアミン化合物としては、たとえば、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどのポリアミン化合物があげられる。これらの中でも、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0071】
ポリヒドロキシ化合物としては、従来、フッ素ゴムの架橋剤として知られている化合物を用いることができ、特に、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。
【0072】
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、たとえば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’―ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールAなどがあげられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析した場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。
【0073】
有機過酸化物としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどをあげることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3が好ましい。
【0074】
これらの中でも、得られる塗膜などの圧縮永久歪みが小さく、塗膜形成性に優れているという点から、ポリヒドロキシ化合物が好ましく、耐熱性が優れることからポリヒドロキシ芳香族化合物がより好ましく、ビスフェノールAFがさらに好ましい。
【0075】
また、ポリオール架橋系においては、ポリオール系架橋剤と併用して、通常、架橋促進剤を用いる。架橋促進剤を用いると、フッ素ゴム主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の形成を促進することにより架橋反応を促進することができる。
【0076】
ポリオール架橋系の架橋促進剤としては、一般にオニウム化合物が用いられる。オニウム化合物としては特に限定されず、たとえば、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、1官能性アミン化合物などがあげられ、これらの中でも第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩が好ましい。
【0077】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、たとえば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8―ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド(以下、DBU−Bとする)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7―ウンデセニウムクロライド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライドなどがあげられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、DBU−Bが好ましい。
【0078】
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、たとえば、テトラブチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロライド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(BTPPC)が好ましい。
【0079】
また、架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
【0080】
有機過酸化物架橋促進剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルフタルアミド、N,N,N’,N’−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどがあげられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0081】
架橋剤(C)の配合量としては、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜5重量部である。架橋剤(C)が、0.1重量部未満であると、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)の架橋が充分に進行せず、得られる塗膜の耐熱性および耐油性が低下する傾向があり、10重量部をこえると、得られる粉体塗料の塗膜形成性が低下する傾向がある。
【0082】
架橋促進剤の配合量としては、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)100重量部に対して、0.01〜8重量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜5重量部である。架橋促進剤が、0.01重量部未満であると、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)の架橋が充分に進行せず、得られる塗膜の耐熱性および耐油性が低下する傾向があり、8重量部をこえると、得られる粉体塗料の塗膜形成性が低下する傾向がある。
【0083】
本発明で用いる架橋フッ素ゴム(B)は、フッ素樹脂(A)および架橋剤(C)の存在下、少なくとも1種のフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)を溶融条件下にて動的に架橋処理したものである。
【0084】
ここで、動的に架橋処理するとは、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、押出機等を使用して、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)を溶融混練と同時に動的に架橋させることをいう。これらの中でも、高剪断力を加えることができる点で、二軸押出機等の押出機であることが好ましい。動的に架橋処理することで、フッ素樹脂(A)と架橋フッ素ゴム(B)の相構造を制御することができる。
【0085】
また、溶融条件下とは、フッ素樹脂(A)、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)が溶融する温度下を意味する。溶融する温度は、それぞれフッ素樹脂(A)およびフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)のガラス転移温度および/または融点により異なるが、120〜330℃であることが好ましく、130〜320℃であることがより好ましい。温度が、120℃未満であると、フッ素樹脂(A)とフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)の間の分散が粗大化する傾向があり、330℃をこえると、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)が熱劣化する傾向がある。
【0086】
得られた粉体塗料は、フッ素樹脂(A)が連続相を形成し、かつ架橋フッ素ゴム(B)が分散相を形成する構造、またはフッ素樹脂(A)と架橋フッ素ゴム(B)が共連続を形成する構造を有することができるが、その中でも、フッ素樹脂(A)が連続相を形成し、かつ架橋フッ素ゴム(B)が分散相を形成する構造を有することが好ましい。
【0087】
フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)が、分散当初マトリックスを形成していた場合でも、架橋反応の進行に伴い、フッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)が架橋フッ素ゴム(B)となることで溶融粘度が上昇し、架橋フッ素ゴム(B)が分散相になる、またはフッ素樹脂(A)との共連続相を形成するものである。
【0088】
また、粉体塗料は、フッ素樹脂(A)が連続相を形成し、かつ架橋フッ素ゴム(B)が分散相を形成する構造の一部に、フッ素樹脂(A)と架橋フッ素ゴム(B)との共連続構造を含んでいても良い。
【0089】
このような構造を形成すると、本発明の粉体塗料は、優れた燃料バリア性、耐熱性、耐薬品性および耐油性を示す塗膜を提供することができると共に、良好な塗膜形成性を有することとなる。その際、架橋フッ素ゴム(B)の平均分散粒子径は、0.01〜30μmであることが好ましく、0.1〜20μmであることがより好ましく、0.1〜10μmであることがさらに好ましい。平均分散粒子径が、0.01μm未満であると、流動性が低下する傾向があり、30μmをこえると、得られる塗膜の強度が低下する傾向がある。
【0090】
本発明の粉体塗料において、フッ素樹脂(A)と架橋フッ素ゴム(B)との組成比は、フッ素樹脂(A)10〜95重量%、架橋フッ素ゴム(B)90〜5重量%であることが好ましく、フッ素樹脂(A)20〜90重量%、架橋フッ素ゴム(B)80〜10重量%であることがより好ましい。フッ素樹脂(A)が10重量%未満であると、得られる塗膜の燃料バリア性が悪化し、塗膜形成性が低下する傾向があり、95重量%をこえると、得られる塗膜の強度が低下する傾向がある。
【0091】
本発明の粉体塗料の製造方法としては特に限定されず、架橋フッ素ゴム(B)は、フッ素樹脂(A)および架橋剤(C)の存在下、少なくとも1種のフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)を溶融条件下にて動的に架橋処理することにより得られた重合体組成物を粉砕して製造することができる。粉砕方法としては、通常用いられる方法であればよく、ピンミル、インペラーミル等の粉砕機を用いて粉砕する方法などをあげることができる。
【0092】
粉体塗料の粒径としては特に限定されず、一般に、得られる塗膜と基材との接着性の点から小さいことが好ましいが、厚膜化のためには大きいことが好ましい。本発明の粉体塗料は、得られる塗膜と基材との接着性に優れるので、粉体塗料の粒径は、目的とする塗膜の厚みに応じて適宜決定するものであってよいが、例えば、1〜100μmが好ましく、2〜50μmであることがより好ましい。
【0093】
また、本発明の粉体塗料には、必要に応じて、有機顔料、無機顔料、帯電防止剤、流動性付与剤等を配合することができる。
【0094】
また、本発明は、前記粉体塗料からなる塗膜を形成するための塗膜形成方法であって、
前記粉体塗料を基材に塗布してフッ素樹脂(A)の融点以上である加熱温度で加熱処理を行う工程を有する塗膜形成方法に関する。
【0095】
加熱処理を行う工程は、粉体塗料を基材に塗布することと、加熱処理を同時に行う塗装方法であってもよいし、粉体塗料を基材に塗布したのち加熱処理を行う塗装方法であってもよい。
【0096】
塗布と加熱処理を同時に行う塗装方法としては、例えば、回転成形方法等の粉体塗料を基材に塗布しながら加熱処理を行う方法、浸漬流動塗装方法等の熱した基材を粉体塗料に浸漬する方法等があげられる。
【0097】
粉体塗料を基材に塗布したのち加熱処理を行う塗装方法としては、例えば、静電粉体塗装方法等があげられる。
【0098】
また、本発明においては、粉体塗料から得られる塗膜と基材との間にプライマー層が介在させてもよい。
【0099】
加熱処理の温度としては、フッ素樹脂(A)の融点以上、分解温度以下で行うことが好ましいが、例えば、120〜350℃であることが好ましく、130〜340℃であることがより好ましい。フッ素樹脂(A)の融点未満であると、得られる塗膜と基材との接着性が不充分である傾向があり、フッ素樹脂(A)の分解温度を超えると、粉体塗料中のフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)が熱劣化してしまう傾向がある。
【0100】
基材としては、前記加熱温度において耐熱性を有するものであれば特に限定されず、例えば、有機材料、無機材料、金属材料等からなるものがあげられる。
【0101】
有機材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成ゴム等のうち、耐熱性を有するものがあげられる。
【0102】
熱可塑性樹脂としては、例えば、前記フッ素樹脂以外のフッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂(PPO)等のポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、塩化ビニル系樹脂、エチレン/ビニルアルコール樹脂、セルロース系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂(PES)、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、変性ポリオレフィン樹脂等があげられる。変性ポリオレフィン樹脂としては、例えばエポキシ変性ポリオレフィン樹脂等があげられる。
【0103】
熱硬化性樹脂としては、例えば、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等があげられる。
【0104】
合成ゴムとしては、例えば、ニトリル/ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、クロロプレン/アクリロゴム、エチレン/プロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、多硫化ゴム、塩素化ポリエチレンゴム等があげられる。
【0105】
無機材料としては特に限定されず、例えば、石英;結晶化ガラス、発泡ガラス、熱線反射ガラス、熱線吸収ガラス、複層ガラス等のガラス系材料;タイル、セラミック、レンガ等の窯業系基材;天然石;コンクリート系基材又はセメント系基材;単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等のシリコン等があげられる。
【0106】
金属材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、チタン、モリブデン、マグネシウム、マンガン、銅、銀、鉛、クロム、ベリリウム、タングステン、コバルト等の金属、これら金属の化合物、これら金属のうち2種以上からなる合金類等があげられる。
【0107】
金属材料からなる基材は、腐蝕防止等を目的として、金属表面への電気メッキ、溶融メッキ、クロマイジング、シリコナイジング、カロライジング、シェラダイジング、溶射等によるその他の金属による被覆、リン酸塩処理によるリン酸塩被膜の形成、陽極酸化や加熱酸化による金属酸化物の形成、電気化学的防食処理等を行ったものであってもよい。
【0108】
前記基材は、塗膜との接着性を向上させることを目的として、サンドブラスト、ショットブラスト、グリッドブラスト、ホーニング、ペーパースクラッチ、ワイヤースクラッチ、ヘアーライン処理等の表面粗面化処理を行ったものであってもよい。
【0109】
また、本発明は、基材および、前記粉体塗料から形成される塗膜を含む積層体に関する。
【0110】
本発明の積層体は、基材と、塗膜と、さらに、前記塗膜上に他の層を有するものであってもよい。上記他の層としては特に限定されず、例えば、有機材料、無機材料、金属材料等からなるものがあげられ、これらの1種または2種以上を用いるものであってよい。
【0111】
本発明の積層体の用途としては、基材を薬液等の浸食から保護するための被覆、基材表面に非粘着性を付与するための被覆等があげられる。
【0112】
基材を薬液等の浸食から保護するための被覆としては特に限定されず、例えば、バルブ、タンク、ダイヤフラム、ウェハーキャリアー、ウェハー設置台等の半導体製造装置・半導体製造装置用部品;チューブ、ホース、継ぎ手等の配管材料;化学・医療用器具;パイプ、バルブ、継ぎ手、ポンプ、タンク等の耐食ライニング等の用途があげられる。前記半導体製造装置・半導体製造装置用部品は、半導体製造装置および/または半導体製造装置を構成する部品である。前記配管材料は、上記半導体製造装置・半導体製造装置用部品として用いるものであってもよい。前記薬液としては、フッ酸等の高腐食性薬液等があげられる。
【0113】
基材表面に非粘着性を付与するための被覆としては特に限定されず、例えば、ガステーブル、レンジフード、換気扇ボディー、換気扇ファン、厨房用壁材、オーブン内壁、オーブンボディー、オーブントースター内壁およびボディー、電子レンジボディーおよび内壁、フライパン、ホットプレート、炊飯器内釜、ケーキ型、ボール、ホームベーカリー用品、パン金型、鍋、もちつき器、ガス給湯器ボディー、浄水器ボディー、食器乾燥機の内外装、ジャーおよびポットのインナー、卓上天ぷら鍋、キッチンナイフ、漬物桶等の調理・台所関連商品;アイロン、照明器の傘および外装、洗濯機の内外装、衣料乾燥機の内外装、扇風機のファン、エアコンの室外機外装、温風ヒーターの内外装およびファン、オーディオパネル等の家電製品;プリント基板等の電子部品;オフィスオートメーション(OA)機器用ロール、OA機器用ベルト等の摺動材料;ブラインド、パーティション、スチール家具、装飾具、サニタリー内装、トイレタリー内装等のインテリア製品;外壁材、屋根材、フェンス、門扉、郵便ポスト、雨樋、天幕、シャッター、ガードレール、道路標識、船舶内装、屋外広告物、物干し竿、給水タンク、燃料タンク、車輌、モニュメント、オブジェ等の屋外商品等の用途があげられる。
【実施例】
【0114】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0115】
<表面粗さ>
実施例または比較例で得られた塗膜につき、JIS B0601に準じて、表面粗さ測定器((株)ミツトヨ製)を使用して表面粗さを測定した。
【0116】
<接着強度>
実施例または比較例で得られた基材と塗膜からなる積層体を使用して、当該塗膜上に本発明の粉体塗料を加熱処理後の膜厚が1mmとなるように盛りおきした後、220℃で1時間加熱した。得られた積層体の塗膜に2cm幅に切れ目をいれ、塗膜端を一部剥離した後、引張試験機を使用して剥離強度を測定し、その最大強度を接着強度とした。
【0117】
<柔軟性>
実施例で得られた塗膜のA硬度を、JIS−K6301に準じて測定した。また、比較例で得られた塗膜のD硬度を、JIS−K6253に準じて測定した。
【0118】
製造例1
フッ素ゴム(VdF50モル%、TFE20モル%およびHFP30モル%からなる3元系ゴム;100℃におけるムーニー粘度=88)100重量部に、架橋剤として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(ダイキン工業(株)製「ビスフェノールAF」)2.0重量部、架橋促進剤としてベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(BTPPC、北興化学工業(株)製)1.0重量部、酸化マグネシウム(キョーワマグ150 協和化学工業(株))3重量部を添加し、8インチオープンロールを用いて混練し、フッ素ゴム組成物を得た。
【0119】
次に、該フッ素ゴム組成物10重量部、ならびに反応性官能基を有するTFE/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE:エチレン:ヘキサフルオロプロピレン=46.5:44.0:9.5モル%;融点194.3℃;分子末端に有するカルボニルジオキシ基の主鎖炭素106個当たりの個数255個)90重量部を、二軸押出機(φ=15mm、L/D=60)に供給して、シリンダー温度260℃およびスクリュー回転数300rpmの条件下に溶融混練し、熱可塑性重合体組成物(X−1)のペレットを製造した。その後、該ペレットを粉砕機にて粉砕することにより熱可塑性重合体組成物(X−1)の粉体塗料を製造した。得られた粉体塗料の平均粒子径は、26μmであった。
【0120】
製造例2
フッ素ゴム組成物を30重量部、反応性官能基を有するTFE/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体を70重量部に変更し、製造例1と同様の方法にて熱可塑性重合体組成物(X−2)の粉体塗料を製造した。得られた粉体塗料の平均粒子径は、32μmであった。
【0121】
製造例3
フッ素ゴム組成物を50重量部、反応性官能基を有するTFE/エチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体を50重量部に変更し、製造例1と同様の方法にて熱可塑性重合体組成物(X−3)の粉体塗料を製造した。得られた粉体塗料の平均粒子径は、37μmであった。
【0122】
実施例1
SUS製基材の表面に、アルミナエメリー(♯80/♯100=1/1)を用いて表面粗さ(Ra)=1〜2μmとなるようブラスト処理を行った。その後、当該基材上に、加熱処理後の膜厚が50μmとなるように熱可塑性重合体組成物(X−1)の粉体塗料を静電塗装し、280℃にて30分間加熱処理を行った。得られた塗膜の表面粗さ、接着強度、柔軟性を表1に示す。
【0123】
実施例2
熱可塑性重合体組成物(X−1)を熱可塑性重合体組成物(X−2)に変更した以外は、実施例1と同様にして静電塗装および加熱処理を行った。得られた塗膜の表面粗さ、接着強度、柔軟性を表1に示す。
【0124】
実施例3
熱可塑性重合体組成物(X−1)を熱可塑性重合体組成物(X−3)に変更した以外は、実施例1と同様にして静電塗装および加熱処理を行った。得られた塗膜の表面粗さ、接着強度、柔軟性を表1に示す。
【0125】
比較例1
フッ素樹脂(ダイキン工業(株)製「ネオフロンETFE EP610」)のパウダーをローラーコンパクターにて圧縮した後、粉砕機を使用して、平均粒子径30μmになるように粉砕し、粉体塗料を製造した。
【0126】
次に、SUS製基材の表面に、アルミナエメリー(♯80/♯100=1/1)を用いて表面粗さ(Ra)=1〜2μmとなるようブラスト処理を行った。その後、当該基材上に、加熱処理後の膜厚が50μmとなるように、上記フッ素樹脂の粉体塗料を静電塗装し、280℃にて30分間加熱処理を行った。得られた塗膜の表面粗さ、接着強度、柔軟性を表1に示す。
【0127】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂(A)10〜95重量%および架橋フッ素ゴム(B)90〜5重量%を含む粉体塗料であって、
フッ素樹脂(A)が、融点120〜330℃の含フッ素エチレン性重合体(a)を含み、架橋フッ素ゴム(B)が、フッ素樹脂(A)および架橋剤(C)の存在下、少なくとも1種のフッ素ゴム(b−1)または含フッ素熱可塑性エラストマー(b−2)を溶融条件下にて動的に架橋処理したものである粉体塗料。
【請求項2】
フッ素樹脂(A)が、分子末端および/または分子側鎖に官能基を有する構造である請求項1記載の粉体塗料。
【請求項3】
含フッ素エチレン性重合体(a)が、
(a−1)テトラフルオロエチレンおよびエチレンの共重合体、
(a−2)テトラフルオロエチレンと、下記の一般式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は、−CF3または−ORf2であり、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物の共重合体、
(a−3)テトラフルオロエチレン単位19〜90モル%、エチレン単位9〜80モル%、および下記一般式(1):
CF2=CF−Rf1 (1)
(式中、Rf1は、−CF3または−ORf2であり、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表わす)で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物単位1〜72モル%からなる共重合体、
(a−4)ポリフッ化ビニリデン、および
(a−5)クロロトリフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンの共重合体
からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体である請求項1または2記載の粉体塗料。
【請求項4】
架橋フッ素ゴム(B)のフッ素濃度が、68重量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の粉体塗料。
【請求項5】
フッ素ゴム(b−1)が、ビニリデンフルオライド/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴムである請求項1〜4のいずれかに記載の粉体塗料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の粉体塗料からなる塗膜を形成するための塗膜形成方法であって、
前記粉体塗料を基材に塗布してフッ素樹脂(A)の融点以上である加熱温度で加熱処理を行う工程を有する塗膜形成方法。
【請求項7】
基材および、請求項1〜5のいずれかに記載の粉体塗料から形成される塗膜を含む積層体。

【公開番号】特開2008−120900(P2008−120900A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305181(P2006−305181)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】