説明

粉体塗装ブース装置

【課題】色替時に側壁をエアブローした際、飛び散ったオーバースプレー粉が側壁へ再付着することを防止することができる粉体塗装ブース装置を提供する。
【解決手段】塗装ガン10の挿入用の開口部11を設けた側壁12を備え、側壁12に向けてエアーを噴出させる側壁ブロー部22を、側壁12に対して上から下に移動するように設けた。このため、側壁12の上部のオーバースプレー粉が側壁12の下部に再付着しても、後から側壁ブロー部22により清掃される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉体塗装ブース装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被塗物の出入口を設けた前壁および後壁と、前記被塗物の搬送用ハンガーが通過するコンベアスリットを設けた頂壁と、塗装ガン挿入用の開口部を設けた側壁と、排気装置に接続され、被塗物に付着しなかった粉体塗料(以下、オーバースプレー粉という)を吸引する吸引口を設けた床壁とを備えた粉体塗装ブース装置がある。このような粉体塗装ブース装置では、オーバースプレー粉を回収し、再使用するようになっている。
【0003】
ところが、塗装ガンと向かい合う側壁には、オーバースプレー粉が多く付着する。このため、色替時には、後の色の回収塗料に前の色の回収塗料が混じり変色すること(以下、コンタミという)がないようにオーバースプレー粉を清掃しなければならない。
【0004】
ブースの清掃時には、オペレータがブース内面を手動エアブロー装置で噴いたり、巾拭きしたりする。しかし、エアブローによる作業では、オペレータが吸い込むオーバースプレー粉の健康への影響が懸念される。また、オペレータが側壁にブロー装置を接触させて傷つけることもあった。
【0005】
そこで、従来から、ブース内面に付着したオーバースプレー粉を自動的に噴き飛ばすブース清掃装置が利用されている。例えば、特許文献1に開示されたブース清掃装置は、側壁と頂壁とに対面するゲート型に設けられており、ゲート外面からは側壁と頂壁とに向けてエアーを噴出させるようになっている。
【0006】
特許文献1のブース清掃装置は、ブースと別体であり、通常、保管場所に置かれる。オペレータが、ブースを清掃する場合、保管場所から装置をブース内に運び入れ、コンベアスリット内に敷設されているレールに懸架させる。そして、ブースの出入口を閉じた状態で、懸架された装置が入口側から出口側に向けて移動し、これに伴い、側壁と頂壁とが同時に清掃されるようになっている。このため、特許文献1のブース清掃装置を用いると、側壁や頂壁が傷つく恐れがなく、また、オペレータが自らブローする場所は大幅に減少する。
【0007】
【特許文献1】特許2771156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、側壁をエアブローした場合、塗装ガンに向かい合う側壁には多くのオーバースプレー粉が付着しているので、これらがブース内に飛散する。飛び散ったオーバースプレー粉は、粉体塗料が空気よりも重いため、沈降する。ところが、特許文献1のブース清掃装置では、装置を入口側から出口側に向けて移動させるため、側壁上部から飛び散ったオーバースプレー粉が側壁下部に再付着し易い。
【0009】
また、側壁下部に再付着したオーバースプレー粉は、既に装置が通過しているので、側壁にそのまま残る。このように側壁に再付着するオーバースプレー粉が多い場合、結局、オペレータは、清掃の仕上げに側壁を巾拭きする羽目になる。
【0010】
そこで、この発明の課題は、色替時に側壁をエアブローした際、飛び散ったオーバースプレー粉が側壁へ再付着することを防止することができる粉体塗装ブース装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するため、この発明は、塗装ガン挿入用の開口部を設けた側壁を備える粉体塗装ブース装置において、前記側壁に向けてエアーを噴出させる側壁ブロー部を、前記側壁に対して上から下に移動するように設けたことを特徴とする。
【0012】
この発明の構成によれば、側壁に付着したオーバースプレー粉は、前記側壁に向けてエアーを噴出させる側壁ブロー部を前記側壁に対して上から下に移動するように設けたので、側壁上部のオーバースプレー粉が側壁下部に再付着しても、後から側壁ブロー部により清掃される。このため、この発明に係る粉体塗装ブース装置は、飛び散ったオーバースプレー粉が側壁へ再付着することを効果的に防止することができる。
【0013】
この発明の構成においては、前記側壁ブロー部を前記側壁に対して上から下に移動するように設けたので、噴き飛ばされたオーバースプレー粉は、上から下に押し流される。
【0014】
そこで、この発明の構成では、前記側壁よりも下方にブース内の大気を吸い込む吸引口を設けた構成を採用することが好ましい。この構成によれば、噴き飛ばされたオーバースプレー粉は、側壁ブロー部の押し流しにより吸引口側に流れるように勢いづけられる。また、ブース内には、吸引口の吸い込みに伴って上から下に流れる空気流が形成される。この空気流は、側壁ブロー部により噴き飛ばされたオーバースプレー粉を下方に運ぶ。したがって、噴き飛ばされたオーバースプレー粉は、側壁ブロー部よりも上方に舞い上がり難くなる。すなわち、噴き飛ばしたオーバースプレー粉は、効率よく吸引口に吸い込まれ、しかも、側壁ブロー部よりも上方に舞い上がり難いので、側壁のうち、ブロー済みの部分に殆ど再付着しない。
【0015】
また、この発明の構成においては、噴き飛ばされたオーバースプレー粉が、上から下に押し流されるので、前記側壁付近の床壁に溜まり易い。
【0016】
そこで、この発明の構成では、前記吸引口に向けてエアーを噴出させる床ブロー部を設けた構成を採用することが好ましい。この構成によれば、前記側壁ブロー部により噴き飛ばされたオーバースプレー粉は、床ブロー部の噴流により吸引口に向けて運ばれる。このため、噴き飛ばされたオーバースプレー粉は、より効率よく吸引口に吸い込まれる。
【0017】
床ブロー部は、側壁ブロー部と別体で設けた構成、または側壁ブロー部を利用した構成のいずれでもよい。
【0018】
例えば、ブースの床壁に上向きに開口する吸引口を設け、床壁上に吸引口に向けてエアーを噴出させる床ブロー部を設けた構成や、側壁ブロー部のブロー方向を変更させることにより床壁を吸引口側に向けてブローするように設けた構成を採用することができる。
【0019】
より具体的には、前記吸引口を設けた床壁を備え、前記床ブロー部を前記側壁ブロー部と一体に設け、前記側壁ブロー部が前記側壁に対して下動する間に、前記床ブロー部が前記床壁を前記吸引口側に向けて噴くようにした構成を採用することができる。この構成によれば、側壁ブロー部が下動する間に床ブロー部が側壁近くの床壁を噴くことにより、側壁付近の床壁に溜まったオーバースプレー粉が、吸引口側に噴き飛ばされ、そのまま吸引口に吸い込まれる。また、この構成では、側壁ブロー部と床ブローとを一体に設けるので、その分コストが低減される。勿論、この構成では、側壁ブロー部が上動する間にも床ブロー部で床壁を噴くようにしてもよい。
【0020】
なお、側壁ブロー部が常時ブース内にあると、塗装中にオーバースプレー粉が付着するという問題が生じる。側壁ブロー部にオーバースプレー粉が付着すると、清掃箇所が増え、また、このオーバースプレー粉が側壁に噴きつけられることも起こりうる。これらの問題を回避するためには、側壁ブロー部をブース外側に配置し、かつブース内外に対して進退させるように設けた構成を採用するとよい。
【0021】
この発明に係る粉体塗装ブース装置では、通常、前記被塗物の搬送用ハンガーが通過するコンベアスリットを設けた頂壁を備えた構成を採用することができる。この構成の場合には、塗装中、被塗物の上方に舞い上がったオーバースプレー粉が頂壁に付着し易い。そこで、この構成を採用する場合、前記頂壁に向けてエアーを噴出させる頂壁ブロー部を設け、前記頂壁ブロー部が前記頂壁を清掃した後に、前記側壁ブロー部が前記側壁を清掃する構成を採用することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、頂壁は、前記頂壁ブロー部により機械的にブローされる。しかし、頂壁から噴き飛ばされたオーバースプレー粉は、沈降時、側壁に再付着し易い。そこで、この構成では、前記頂壁ブロー部が前記頂壁を清掃した後に、前記側壁ブロー部が前記側壁を清掃するようにした。これにより、頂壁から噴き飛ばされたオーバースプレー粉は、側壁に再付着しても、後から側壁ブロー部により清掃される。また、頂壁と側壁が時間差をもってブローされる。このため、オーバースプレー粉がブース内で大量に飛散することが回避される。なお、頂壁ブロー部は、側壁ブロー部と別体で設けた構成、または側壁ブロー部を利用した構成のいずれでもよい。
【0023】
前記頂壁を備えた構成の場合、前記頂壁ブロー部をブース外側に配置し、前記頂壁をその側壁側が持ち上るように回動させて前記頂壁と前記側壁との間を開閉する天面開閉機構を設け、前記頂壁ブロー部が、前記の回動により前記頂壁と前記側壁との間に設けた開放部分から前記頂壁に沿って進退する構成を採用することが好ましい。
【0024】
この構成によれば、塗装中、オーバースプレー粉は、前記頂壁ブロー部をブース外側に配置したので、前記頂壁ブロー部に付着しない。また、頂壁は、前記頂壁をその側壁側が持ち上るように回動させて前記頂壁と前記側壁との間を開閉する天面開閉機構を設けたので、回動中心に対してその側壁側が持ち上り、コンベアスリット側が下がった傾斜状態に変位させられ、この状態で、頂壁と側壁との間に開放部分が設けられる。頂壁ブロー部は、この開放部分から前記頂壁に沿って進退するので、頂壁が進行方向下がりに傾斜した状態でブローすることになる。したがって、頂壁ブロー部の噴流は、頂壁に沿って流れることにより下向きの方向成分を与えられる。このため、頂壁に付着していたオーバースプレー粉は、下向きに沈降し易くなり、側壁に達し難い。
【0025】
しかし、側壁とコンベアスリットとの距離が離れている場合、その分、頂壁が幅広になる。これに伴い、頂壁ブロー部は、頂壁に沿って進退させる移動距離が大きくなるので、装置が大型化する。ここで、頂壁の側壁付近は、コンベアスリットとの距離が離れている場合、被塗物から距離があるため、オーバースプレー粉が殆ど付着しない。通常のコンタミ防止であれば、上記の未着部分をブローする必要はない。
【0026】
そこで、前記頂壁をコンベアスリット側に設けた第1天井部と側壁側に設けた第2天井部とから構成し、前記第1天井部をその側壁側が持ち上るように回動させて前記第1天井部と前記第2天井部との間を開閉する第1天面開閉機構を設け、前記頂壁ブロー部が、前記第1天井部と第2天井部との間に設けた開放部分から前記第1天井部に沿って進退する構成を採用することが好ましい。
【0027】
この構成によれば、前記頂壁をコンベアスリット側に設けた第1天井部と側壁側に設けた第2天井部とから構成したので、第2天井部は、上記の未着部分に対応させて設けられる。このため、第2天井部を清掃する必要がなく、第1天井部のみを清掃すればよい。この構成では、前記第1天井部をその側壁側が持ち上るように回動させて前記第1天井部と前記第2天井部との間を開閉する第1天面開閉機構を設けたので、前記第1天井部と第2天井部との間が開閉される。そして、前記頂壁ブロー部が、前記第1天井部と第2天井部との間の開放部分から前記第1天井部に沿って進退するようにした。これにより、前記頂壁ブロー部は、第1天井部に沿って進退するだけでよく、その分小型になる。
【0028】
また、前記頂壁を備えた構成の場合、前記頂壁を第1天井部と第2天井部とから構成し、記第2天井部を変位させて前記第1天井部と前記側壁との間を開閉する第2天面開閉機構を設け、前記側壁ブロー部が、前記第2天井部と前記側壁との間の開放部分から前記側壁に対して下動する構成を採用することが好ましい。
【0029】
この構成によれば、第2天面開閉機構が第2天井部を変位させることにより、第2天井部と側壁との間が開閉される。このため、この構成では、前記第1天井部が前記コンベアスリットと第2天井部との間を閉じ、前記第2天井部と前記側壁との間の開放している状態で、前記側壁ブロー部が前記の開放部分から前記側壁に対して下動する。この間、前記側壁ブロー部が生み出す上から下の空気流により、前記の開放部分からは、外気が緩やかに取り込まれる。前記の開放部分は側壁のほぼ上方に位置するため、外気の取り込みに伴い、上から下の空気流が側壁の近くで整い易い。この空気流により、側壁から噴き飛ばされたオーバースプレー粉は、下方に運ばれるので、ブース内に舞い上がり難くなる。特に、この構成と、前記吸引口を設けた構成とを組合せることにより、吸引口の吸い込み効果が外気の取り込みを勢いづける。したがって、上記の舞い上がり防止効果がより強まる。
【0030】
前記頂壁を第1天井部と第2天井部とから構成する場合、前記第1天井部と前記第2天井部が閉じ合っている状態で、両天井部が同一面を構成してもよいし、互いの一部が上下に重なるように構成してもよい。
【0031】
しかし、第1天井部を前記天面開閉機構により回動させる場合には、両天井間をぴったりと閉じ合わすことはできない。このため、オーバースプレー粉が頂壁の外側に侵入し易い。この問題を回避するには、互いの一部が上下に重なるように構成すればよいが、前記第1天井部と前記第2天井部が閉じ合った状態で、前記第2天井部の第1天井部側の外面縁が前記第1天井部に重なると、重ね目がコンベアスリット側に生じる。このため、コンベアスリット側から飛び散るオーバースプレー粉が前記の重ね目に目詰まりする。
【0032】
そこで、前記第1天井部と前記第2天井部が閉じ合った状態で、前記第1天井部の第2天井部側の外面縁が前記第2天井部の内面に重なる構成を採用することが好ましい。この構成によれば、上記の重ね目は、側壁側に生じる。したがって、ンベアスリット側から飛び散るオーバースプレー粉が目詰まりし難い。
【0033】
なお、この発明の構成では、各部の作動を自動制御、例えば自動シーケンス制御で行う他、オペレータの手動制御で行うこともできる。
【発明の効果】
【0034】
上述のように、この発明によれば、前記側壁に向けてエアーを噴出させる側壁ブロー部を前記側壁に対して上から下に移動するように設けたので、側壁上部のオーバースプレー粉が側壁下部に再付着しても、後から側壁ブロー部により清掃される。したがって、この発明に係る粉体塗装ブース装置は、飛び散ったオーバースプレー粉が側壁へ再付着することを効果的に防止することができる。このため、オペレータが清掃の仕上げに側壁を布拭きする負担は、解消ないし軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、この発明の第1実施形態に係る粉体塗装ブース装置を添付図面に基づいて説明する。図1は、第1実施形態に係る粉体塗装ブース装置の縦断正面図を示している。図2は、粉体塗装ブース装置1の斜め上面視を、ブースの一部を切欠いた状態で概略的に示している。第1実施形態に係る粉体塗装ブース装置1は、被塗物2の出入口3、4を設けた前壁5および後壁6と、被塗物2の搬送用ハンガー7が通過するコンベアスリット8を設けた頂壁9と、塗装ガン10の挿入用の開口部11を設けた側壁12と、頂壁9に臨む床壁13とを備える。
【0036】
出入口3、4は開閉ドアから構成されている。搬送用ハンガー7に吊るされた被塗物2は、機枠14により中空に支持されたコンベア15により出入口3、4からブース内に出し入れされるようになっている。
【0037】
側壁12は、コンベア15に沿って機枠14に立てかけられた複数の側面パネル16により構成されている。各側面パネル16は、互いの間に空間sを空けた状態で同一面を構成するように並んでいる。塗装ガン10の挿入用の開口部11は、並びの中程の側面パネル16に設けられている。
【0038】
頂壁9は、機枠14により水平に支持された天井部9aと、天井部9aの側壁12側の側縁に設けられたラバー板9bとから構成されており、側壁12とコンベア15との間を閉じるように設けられている。天井部9aは、側壁12側が平面状とされ、湾曲面を介して、コンベアスリット8側に塗装ガン10に対して遮蔽するアングル部を有する。ラバー板9bは、上下方向に可撓性を備え、変形すると自然に水平に戻るようになっている。
【0039】
頂壁9に臨む床壁13には、ブース内の大気を吸い込む吸引口17が、コンベア15の下方に上向きで設けられている。吸引口17は、側壁12よりも下方に設けられており、ブース外の粉体塗料回収部に連通している。なお、この粉体塗装ブース装置1では、吸引口17における吸い込みエアーの風速が約20(m/s)に設定されている。
【0040】
この粉体塗装ブース装置1では、出入口3、4を構成する開閉ドア、天井部9a、側壁12、および床壁13が非導電性の樹脂製とされている。なお。これらは、金属製でもよい。
【0041】
側面パネル16間の空間sの外側には、複数のタイミングベルト18が、機枠14に立てかけられている。タイミングベルト18のベルト面には、側壁12の外側に沿うように中空管19が固定されている。中空管19の両端には、エアー供給パイプ20が接続されており、中空管19内にエアーが送り込まれるようになっている。中空管19は、各側面パネル16間の空間sからブース内に突出する中空支持部21を介して側壁ブロー部22に連通している。
【0042】
図3(a)は、中空管19、中空支持部21、および側壁ブロー部22の一部切欠いた状態で図1のA−A線の矢視を示している。図3(b)は、図1の側壁ブロー部22付近の拡大図を示している。側壁ブロー部22は、両端閉塞のエアチューブが用いられており、側壁12に沿って一連で概ね水平に設けられている。この側壁ブロー部22には、側壁12に対して斜め下方に向いた側面噴出口22aと、側壁12に対して反対側斜め上方に向いた上面噴出口22bとが全長に亘って一定間隔で設けられている。側面噴出口22aの側壁12に対する傾斜角は、例えば25度に設定することができる。この傾斜角は、側壁12の幅、長さに応じて変更すればよい。なお、側面噴出口22a、上面噴出口22bから噴出させるエアー圧は、側壁12等の有する粉体塗料の吸着性による。
【0043】
上記の側壁ブロー部22は、塗装中、ラバー板9bの上方に配置されている。モータ23が駆動されると、タイミングベルト18が送り動作を行い、中空管19が下動し、これと一体の側壁ブロー部22も下動する。この下動により、側壁ブロー部22は、ラバー板9bを押し下げてブース内に進出し、床壁13の近くまで移動した後、上動に転じ、ラバー板9bを押し上げてブース外に退出し、ラバー板9bの上方に復帰する。側壁ブロー部22の下動速度は、例えば、毎分2mに設定することができ、上動速度は、例えば、毎分3mに設定することができる。なお、側壁ブロー部22は、側面噴出口22aが側壁12に対して斜め下方にエアーを噴出させるため、側壁12の下端まで下動させる必要はない。
【0044】
側壁ブロー部22の下動時には、中空管19にエアーが供給される。このエアーは、中空支持部21を通って側壁ブロー部22に入り、側面噴出口22aと、上面噴出口22bとから噴出される。これにより、側壁ブロー部22は、側壁12に対して上から下に移動しながら、側面噴出口22aから側壁12に向けてエアーを噴出させ、側壁12を清掃する。また、側壁ブロー部22は、図3(b)において2点鎖線で示すように、ラバー板9bを押し下げてしばらくの間、上面噴出口22bから頂壁9に向けてエアーを噴出させ、頂壁9を清掃する。すなわち、側壁ブロー部22は、頂壁ブロー部として機能するようになっている。
【0045】
側壁ブロー部22の下動時には、吸引口17がブース内の大気を吸い込むようになっている。これにより、側壁ブロー部22により噴き飛ばされたオーバースプレー粉は、大部分が吸引口17に吸い込まれる。したがって、床壁13の清掃は、オペレータによる布拭きで済ますことができる。
【0046】
上記の粉体塗装ブース装置1では、側壁ブロー部22が下動時にのみ側壁12を清掃するようになっているが、上動時にも側壁ブロー部22からエアーを噴出させてもよい。この場合、吸引口17からの吸い込みは、側壁ブロー部22の上動時にも行えばよい。また、側壁12の全面を清掃する必要がない場合には、側壁ブロー部22の全長等を必要な範囲に適合させればよい。
【0047】
また、粉体塗装ブース装置1では、頂壁9のうち、天井部9aの側壁12側が平面状とされ、湾曲面を介してコンベアスリット8側が塗装ガン10に対して遮蔽するアングル部となっているため、側壁ブロー部22の上面噴出口22bからのエアーにより噴き飛ばされたオーバースプレー粉は、湾曲面を滑って下方に向かう。このため、オーバースプレー粉の噴き溜まりが防止される。また、コンベアスリット8の下方に吸引口17を設けたので、頂壁9から噴き飛ばされたオーバースプレー粉が速やかに吸引口17に吸い込まれる。
【0048】
この発明の第2実施形態を図4に基づいて説明する。なお、以下においては、第1実施形に係る粉体塗装ブース装置1との相違点のみを述べ、同一と考えることができる構成には同符号を付してその説明を省略する。図4に示すように、第2実施形態に係る粉体塗装ブース装置は、側壁ブロー部22と一体に吸引口17側に向けてエアーを噴出させる床ブロー部22cが設けられたものである。床ブロー部22cは、側面噴出口22aの反対側に設けられており、床壁13を吸引口17側に向けて斜め下方に噴く噴出口から構成されている。このため、床ブロー部22cは、側壁ブロー部22が側壁12に対して側面噴出口22aよりエアーを噴出させる間、吸引口17側に向けて斜め下方にエアーを噴出させるようになっている。また、タイミングベルト18は、側壁ブロー部22が側壁12の下端直上まで下動するように設けられている。これにより、床ブロー部22cは、側壁ブロー部22が側壁12の下端直上まで下動する間に、床壁13に溜まったオーバースプレー粉を十分に噴き飛ばすことができる。なお、側壁12の下端部は、側面噴出口22aのエアーも効率よく吸引口17側に流れるように湾曲状とされている。
【0049】
この発明の第3実施形態を図5に基づいて説明する。この第3実施形態では、側壁12の下端と床壁13との間に、吸引口17側に向けてエアーを噴出させる床ブロー部30が設けられている。具体的には、床ブロー部30は、吸引口17の両側方に配置されており、吸引口17が吸い込み中の間、一定間隔で吸引口17に向けてエアーを噴出させるようになっている。このため、床壁13に舞い降りたオーバースプレー粉は、速やかに吸引口17に運ばれる。
【0050】
この発明の第4実施形態を図6に基づいて説明する。図6に示すように、第4実施形態では、側壁12の下端と床壁13との間に、ブース内側に向けて開放するダクト40が設けられている。ダクト40の内面には、吸引口41が開口している。また、床ブロー部42は、床壁13上に設けられており、両側のダクト40に向けて同時にエアーを噴出させるように設けられている。このように、吸引口41および床ブロー部42は、種々の形態に設けることができる。
【0051】
この発明の第5実施形態を図7〜図9に基づいて説明する。図7は、第5実施形態に係る粉体塗装ブース装置の縦断正面図を示している。この第5実施形態に係る粉体塗装ブース装置50は、コンベアスリット8と側壁12との間の距離が拡大されている。このため、頂壁51が、コンベアスリット8側に設けた第1天井部51aと側壁12側に設けた第2天井部51bとから構成されている。第2天井部51bの上方には、側壁ブロー部22が配置されている。
【0052】
第2天井部51bは、頂壁51のうち、オーバースプレー粉が付着する恐れが少ない領域に応じてコンベアスリット8に沿うように設けられている。第2天井部51bの幅は、例えば、150mm程度に設けられる。なお、第2天井部51bの幅は、コンベアスリット8と側壁12との間の距離等、粉体塗装ブース装置50の内部空間の広がりに応じて適宜変更することができる。
【0053】
第1天井部51aと第2天井部51bが閉じ合った状態で、互いの一部がコンベアスリット8に沿って上下に重なるように設けられている。具体的には、第1天井部51aの第2天井部側の外面縁51cが第2天井部51bの内面に重なるように設けられており、第1天井部51aと第2天井部51bの重ね目は、側壁12側に生じている。
【0054】
第1天井部51aには、その側壁12側が持ち上るように回動させて第1天井部51aと第2天井部51bとの間を開閉する第1天面開閉機構が設けられている。一方、第2天井部51bには、これを第1天井部51a、側壁12に対して変位させることにより第1天井部51aと側壁12との間を開閉する第2天面開閉機構が設けられている。以下、第1および第2天面開閉機構について説明する。
【0055】
(第1天面開閉機構)
図8は、頂壁51の外面のうち、第1および第2天面開閉機構の付近を拡大して示す。図9(a)は、図7の第1および第2天面開閉機構付近を拡大して示しており、図9(b)は、図9(a)の状態から第1および第2天面開閉機構が作動した状態を示している。第1天井部51aの外面には、コンベアスリット8側の上方付近に回動軸部52が設けられている。この回動軸部52により、第1天井部51aは機枠14に対して軸支されている。また、第1天井部51aの外面には、第2天井部51bの近くに回動リンク53を介して伸縮装置54が連結されている。伸縮装置54の全長が縮むと、第1天井部51aは、回動軸部52を回動中心として軸回りに回動され、回動軸部52に対してその側壁12側が持ち上げられる。これに伴い、第1天井部51aは、コンベアスリット8側が回動軸部52に対して下がった傾斜状態に変位させられる。
【0056】
(第2天面開閉機構)
一方、第2天井部51bの外面には、幅方向中心付近に回動軸部55が設けられている。回動軸部55は、ブラケット56に対して軸支されており、ブラケット56は、機枠14に固定されている。また、第2天井部51bの外面には、第1天井部51aの近くに回動リンク57を介して伸縮装置58が連結されている。
伸縮装置58の全長が縮むと、第2天井部51bは、回動軸部55回りに回動され、回動軸部55に対してその第1天井部51a側が持ち上げられる。これに伴い、第2天井部51bは、側壁12側が回動軸部55に対して下がった傾斜状態に変位させられる。
【0057】
第1および第2天面開閉機構は、互いに連動し合って、第1天井部51aと第2天井部51bの間、および第1天井部51aと側壁12との間を開閉するようになっている。すなわち、第1天井部51aと第2天井部51bは、互いが閉じ合った状態で、第1天井部51aの第2天井部側の外面縁51cが第2天井部51bの内面に重なっている。このため、第1天面開閉機構の作動は、必ず第2天面開閉機構により、第2天井部51bの第1天井部51a側が持ち上げられた状態で行う必要がある。
【0058】
具体的には、先ず、第2天面開閉機構により、第2天井部51bが回動され、上記の傾斜状態となる。これにより、第1天井部51aと側壁12との間が開放され、第2天井部51bと第1天井部51aとの重なりが解消される。この状態で、第1天面開閉機構により、第1天井部51aが回動され、第1天井部51aと第2天井部51bの間が開放される。なお、第1天井部51aの持ち上げ角は概ね25度程度に設定されているが、これに限定されない。
【0059】
逆に、第1天井部51aと第2天井部51bの間を閉じる場合、先に、第1天面開閉機構により、第1天井部51aが逆方向に回動される。その後、第1天井部51aと側壁12との間を閉じる場合には、第2天面開閉機構により、第2天井部51bが逆方向に回動される。
【0060】
粉体塗装ブース装置50には、第1および第2天面開閉機構の他に、第1天井部51aを清掃するための頂壁ブロー部60が、側壁ブロー部22とは別体に設けられている。
【0061】
具体的には、伸縮装置61が、機枠14に対して第1天井部51aの持ち上げ角に対応する(すなわち、粉体塗装ブース装置50では約25度)傾斜をもって機枠14に取り付けられている。伸縮装置61の先端には、エアー供給パイプ62に接続されたエアチューブ63が設けられている。エアチューブ63は、第1天井部51aの略全長に亘って沿うように設けられている。エアチューブ63には、長さ方向に一定間隔でエルボ管64の上端部が接合されている。エルボ管64は、伸縮装置61と平行するように第1天井部51a側に向けて曲がっている。エルボ管64の下端部には、頂壁ブロー部60が接合されている。
【0062】
頂壁ブロー部60は、中空パイプが用いられており、ブース外側の第2天井部51bの上方に配置されている。頂壁ブロー部60は、第1天井部51aの略全長に亘って沿うように設けられており、その全長に亘って一定間隔で第1天井部51aに向けてエアーを噴出させる噴出口65が設けられている。エアー供給パイプ62からエアチューブ63に供給されたエアーは、エルボ管64を通って頂壁ブロー部60内に入り、噴出口65から噴出するようになっている。
【0063】
頂壁ブロー部60は、第1および第2天面開閉機構により第1天井部51aと第2天井部51bとの間が開放された状態で、この開放部分に臨むように配置されている。そして、この開放部分から、頂壁ブロー部60は、伸縮装置61の伸縮に応じて前記の開放部分から第1天井部51aに沿って進退する。この間、頂壁ブロー部60は、第1天井部51aに向けてエアーを噴出させ、第1天井部51aを清掃する。この間には、吸引口17の吸い込みも実施される。
【0064】
この粉体塗装ブース装置50では、頂壁ブロー部60が上記のように第1天井部51aを清掃した後、側壁ブロー部22が側壁12を清掃するようになっている。すなわち、頂壁ブロー部60が、第1天井部51aと第2天井部51bの間の開放部分からブース外に退出した後、この開放部分が第1天面開閉機構により閉じられる。この間、吸引口17の吸い込みが継続される。次に、第1天井部51aと側壁12との間が開放された状態で、第2天井部51bの上方に配置されている側壁ブロー部22が側壁12に対して下動し、側壁12を清掃するようになっている。
【0065】
この発明の第6実施形態を図10に基づいて説明する。図10(a)は、第6実施形態に係る粉体塗装ブース装置の頂壁付近の縦断正面を拡大して示している。この第6実施形態に係る粉体塗装ブース装置70は、上記第5実施形態に係る粉体塗装ブース装置50において、頂壁の構造を上記第1実施形態に係る粉体塗装ブース装置1の頂壁と同様のものに置換したことを特徴とする。
【0066】
具体的には、粉体塗装ブース装置70の頂壁99は、天井部9aと、天井部9aの側壁12側の側縁に設けられたラバー板9bとから構成されている。天井部9aには、回動軸部72と伸縮装置73とからなる天面開閉機構が設けられている。
【0067】
図10(b)は、図10(a)の状態から天面開閉機構が作動した状態を示す。伸縮装置73の全長が伸縮すると、頂壁99は、回動軸部72回りで側壁12側が持ち上がるように回動される。これにより、頂壁99と側壁12との間に開放部分が設けられる。頂壁ブロー部60は、前記の開放部分に臨むように側壁12の上方に配置されている。これに応じて、頂壁ブロー部60を頂壁99に沿って進退させる伸縮装置74は、伸縮量の大きいものに変更されている。
【0068】
上記の変更により、粉体塗装ブース装置70では、伸縮装置74が機枠14よりも外側に突出している。このため、粉体塗装ブース装置70は、比較的大きな設置スペースを要するものとなっている。しかし、粉体塗装ブース装置70は、上記第5実施形態に係る粉体塗装ブース装置50よりも天面開閉機構が単純化される分、低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】第1実施形態に係る粉体塗装ブース装置の縦断正面図
【図2】同上の頂壁を一部切欠いて示す概略全体斜視図
【図3】(a)は、図1のA−A線の一部切欠き平面図、図3(b)は、図1の側壁ブロー部の部分拡大縦断正面図
【図4】第2実施形態に係る粉体塗装ブース装置の床壁付近の部分拡大縦断正面図
【図5】第3実施形態に係る粉体塗装ブース装置の床壁付近の部分拡大縦断正面図
【図6】第4実施形態に係る粉体塗装ブース装置の床壁付近の部分拡大縦断正面図
【図7】第5実施形態に係る粉体塗装ブース装置の縦断正面図
【図8】第5実施形態に係る粉体塗装ブース装置の外面のうち、第1および第2天面開閉機構付近の部分拡大平面図
【図9】(a)は、図7の第1および第2天面開閉機構付近の部分拡大図、図9(b)は、図9(a)の状態から第1および第2天面開閉機構が作動した様子を示す部分拡大図
【図10】(a)は、第6実施形態に係る粉体塗装ブース装置の天面開閉機構付近の部分拡大図、図10(b)は、図10(a)の状態から天面開閉機構が作動した様子を示す部分拡大図
【符号の説明】
【0070】
1、50、70 粉体塗装ブース装置
7 搬送用ハンガー
8 コンベアスリット
9、51、99 頂壁
10 塗装ガン
12 側壁
17 吸引口
22 側壁ブロー部
22c、30、42 床ブロー部
51a 第1天井部
51b 第2天井部
60 頂壁ブロー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装ガン挿入用の開口部を設けた側壁を備える粉体塗装ブース装置において、前記側壁に向けてエアーを噴出させる側壁ブロー部を、前記側壁に対して上から下に移動するように設けたことを特徴とする粉体塗装ブース装置。
【請求項2】
前記側壁よりも下方にブース内の大気を吸い込む吸引口を設けたことを特徴とする請求項1に記載の粉体塗装ブース装置。
【請求項3】
前記吸引口側に向けてエアーを噴出させる床ブロー部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の粉体塗装ブース装置。
【請求項4】
前記吸引口を設けた床壁を備え、前記床ブロー部を前記側壁ブロー部と一体に設け、前記側壁ブロー部が前記側壁に対して下動する間に、前記床ブロー部が前記床壁を前記吸引口側に向けて噴くようにしたことを特徴とする請求項3に記載の粉体塗装ブース装置。
【請求項5】
前記側壁ブロー部をブース外側に配置し、かつブース内外に対して進退させるように設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の粉体塗装ブース装置。
【請求項6】
被塗物の搬送用ハンガーが通過するコンベアスリットを設けた頂壁を備え、前記頂壁に向けてエアーを噴出させる頂壁ブロー部を設け、前記頂壁ブロー部が前記頂壁を清掃した後に、前記側壁ブロー部が前記側壁を清掃することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の粉体塗装ブース装置。
【請求項7】
前記頂壁ブロー部をブース外側に配置し、前記頂壁をその側壁側が持ち上るように回動させて前記頂壁と前記側壁との間を開閉する天面開閉機構を設け、前記頂壁ブロー部が、前記の回動により前記頂壁と前記側壁との間に設けた開放部分から前記頂壁に沿って進退することを特徴とする請求項6に記載の粉体塗装ブース装置。
【請求項8】
前記頂壁をコンベアスリット側に設けた第1天井部と側壁側に設けた第2天井部とから構成し、前記第1天井部をその側壁側が持ち上るように回動させて前記第1天井部と前記第2天井部との間を開閉する第1天面開閉機構を設け、前記頂壁ブロー部が、前記第1天井部と第2天井部との間に設けた開放部分から前記第1天井部に沿って進退することを特徴とする請求項6に記載の粉体塗装ブース装置。
【請求項9】
前記頂壁をコンベアスリット側に設けた第1天井部と側壁側に設けた第2天井部とから構成し、前記第2天井部を変位させて前記第1天井部と前記側壁との間を開閉する第2天面開閉機構を設け、前記側壁ブロー部が、前記第2天井部と前記側壁との間の開放部分から前記側壁に対して下動することを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の粉体塗装ブース装置。
【請求項10】
前記第1天井部と前記第2天井部が閉じ合った状態で、前記第1天井部の第2天井部側の外面縁が前記第2天井部の内面に重なることを特徴とする請求項8または9に記載の粉体塗装ブース装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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