説明

粉体材料中の磁性異物の検査装置およびその検査方法

【課題】 母材としての粉体材料の磁化を行い、その後、その磁化を打ち消すことにより、背景ノイズを低減し、粉体材料中の磁性異物の検出を的確に行うことができる粉体材料中の磁性異物の検査装置およびその検査方法を提供する。
【解決手段】 粉体材料中の磁性異物の検査装置において、粉体材料の状態でこの粉体材料に磁場を印加する水平帯磁用磁石4と、この水平帯磁用磁石4の下流に配置され、帯磁後の前記粉体材料を攪拌する攪拌機5と、この攪拌機5の下流に配置され、攪拌後の前記粉体材料中の磁性異物を検出するSQUID磁気検出装置8とを具備し、検査前の帯磁により強く磁化された粉体材料とその中に含まれる磁性異物を攪拌することにより、粉体材料の磁化を軽減させ、そのまま残留している磁性異物のみの磁化状態を的確に検出し、粉体材料中への磁性異物の存在を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体材料中の磁性異物の検査装置およびその検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICやLSI等の半導体装置の封止にはトランスファー成形ができる熱硬化性樹脂組成物が広く用いられている。熱硬化性樹脂組成物のなかでもエポキシ樹脂組成物は、通常各原料を所定量秤量したものを混合装置で予備混合し、次いで、単軸混練機、二軸混練機、加熱ロール、連続ニーダー等の加熱混練機を用いて溶融混練した後、粉砕機により粉砕し、タブレットマシンにより打錠するという製造工程を経て製造される。これらの工程においては、混合装置、加熱混練機、粉砕機等の製造装置が摩耗して、樹脂材料中に僅かながら鉄粉等の磁性体が異物として混入することがある(下記特許文献1参照)。
【0003】
また、セラミックスの成型プロセスにおいて原料となるセラミック用原料粉は、それ自体に不純物成分として鉄やニッケル等の磁性体元素が含有されている。つまり、このような原料物質は、原料粉の製造過程において、原料粉体を構成する成分に既に鉄等の固溶した磁性体元素が不純物として取り込まれていることが多い(下記特許文献2参照)。
【0004】
また、下地用の化粧品、例えば、粉おしろいを油脂にまぜたものである化粧品粉体(酸化鉄 1〜10%含有)内に磁性異物等が混入すると、化粧品としての信頼性を損なうといった問題があった。
【0005】
一方、従来の高感度磁気センサであるフラックスゲートの103 倍、ホール素子の106 倍の高感度を有するSQUID(超伝導量子干渉素子;Superconducting Quantum Interference Device)磁気検出装置(センサ)を用いる非破壊検査方法が提案されている(下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−128941号公報
【特許文献2】特開平10−268013号公報
【特許文献3】特開平07−077516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したような磁気的な検出方法では、化粧品粉体、半導体封止材などの固形物中の磁性異物を検査する際、母材が磁化されているために背景ノイズが大きくなり計測できないという問題があった。
【0008】
これまで、水平磁化方式やSQUIDグラジオメータの利用によって、少し帯磁する程度の母材に包含される磁性異物を検出することはできたが、母材が上記化粧品粉体や半導体封止材としての粉体の場合は、帯磁後に粉体である母材の磁化が非常に大きな勾配磁界の検出信号となるので、磁性異物信号の判定が困難であった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するために、母材としての粉体材料の磁化を行い、その後、母材としての粉体の磁化を打ち消すことにより、背景ノイズを低減し、粉体材料中の磁性異物の検出を的確に行うことができる粉体材料中の磁性異物の検査装置およびその検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕粉体材料中の磁性異物の検査装置において、粉体材料の状態でこの粉体材料に磁場を印加する帯磁用磁石と、この帯磁用磁石の下流に配置され、帯磁後の前記粉体材料を攪拌する攪拌手段と、この攪拌手段の下流に配置され、攪拌後の前記粉体材料中の磁性異物を検出するSQUID磁気検出装置とを具備することを特徴とする。
【0011】
〔2〕上記〔1〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記帯磁用磁石は、前記粉体材料に水平帯磁を行うように構成されていることを特徴とする。
【0012】
〔3〕上記〔1〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記帯磁用磁石は、粉体材料に垂直帯磁を行うように構成されていることを特徴とする。
【0013】
〔4〕上記〔1〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記粉体材料を封入した非磁性体からなる容器を搬送させるようにしたことを特徴とする。
【0014】
〔5〕上記〔4〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記容器がカプセル又は小袋であることを特徴とする。
【0015】
〔6〕上記〔5〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記カプセル又は小袋をベルトで搬送させるようにしたことを特徴とする。
【0016】
〔7〕上記〔5〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記カプセル又は小袋を気体で移送するチューブ内を搬送させるようにしたことを特徴とする。
【0017】
〔8〕上記〔7〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記チューブに枝管を形成し、この枝管に送風装置を配置し、前記カプセルには搬送用羽根と攪拌用羽根とを具備することを特徴とする。
【0018】
〔9〕上記〔1〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記粉体材料が化粧品粉体であることを特徴とする。
【0019】
〔10〕上記〔1〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記粉体材料が半導体装置の封止に用いる樹脂組成物であることを特徴とする。
【0020】
〔11〕上記〔10〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記樹脂組成物が、熱硬化性樹脂組成物であることを特徴とする。
【0021】
〔12〕上記〔1〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記磁性異物が鉄、ニッケル、若しくはコバルト、又は、鉄、ニッケル、若しくはコバルトの何れかを含有する合金であることを特徴とする。
【0022】
〔13〕上記〔1〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記帯磁用磁石が永久磁石であることを特徴とする。
【0023】
〔14〕上記〔1〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記帯磁用磁石が電磁石であることを特徴とする。
【0024】
〔15〕粉体材料中の磁性異物の検査方法において、粉体材料を封入した容器を用意する工程と、前記粉体材料に帯磁用磁石により磁場を印加する工程と、前記粉体材料の帯磁後にこの粉体材料を攪拌する工程と、前記粉体材料の攪拌後、SQUID磁気検出装置により前記粉体材料中の磁性異物を検出する工程とを施すことを特徴とする。
【0025】
〔16〕上記〔15〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査方法において、前記SQUID磁気検出装置の位置を固定させたまま、前記粉体材料をX方向に移動させることにより前記粉体材料の1次元走査を行うことを特徴とする。
【0026】
〔17〕上記〔15〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査方法において、前記SQUID磁気検出装置の位置を2次元的に移動させて前記粉体材料の2次元走査を行うことを特徴とする。
【0027】
〔18〕上記〔15〕記載の粉体材料中の磁性異物の検査方法において、前記粉体材料の移動方向に直交する方向に複数個のSQUID磁気検出装置を配置して、前記粉体材料の進行方向及び幅方向の検査も同時に行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0029】
(1)粉体材料中の磁性異物を母材の磁化に影響されず明確に検出することができる。
【0030】
(2)固形化する前の粉体の状態で磁化を行い、その後、一旦粉体を攪拌した後、SQUID磁気センサ(SQUIDグラジオメータ)で計測することにより、検査ステージにおける磁気ノイズを除去し、正確な磁性異物の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施例を示す粉体材料中の磁性異物の検査装置の模式図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す粉体材料中の磁性異物の検査装置に提供される帯磁前の粉体材料が封入される被検査物を示す図である。
【図3】本発明の第1実施例を示す粉体材料中の磁性異物の検査における被検査物の帯磁を示す図である。
【図4】本発明の第1実施例を示す粉体材料中の磁性異物の検査における被検査物中の粉体材料の攪拌を示す図である。
【図5】本発明の第1実施例を示す粉体材料中の磁性異物の検査における被検査物中の粉体材料の攪拌後の状態を示す図である。
【図6】本発明の第1実施例を示す粉体材料中の磁性異物の検査におけるSQUID磁気検出装置による被検査物中の粉体材料の検査の状態を示す図である。
【図7】本発明の第2実施例を示す気体搬送装置による被検査物の垂直帯磁の様子を示す図である。
【図8】本発明の第3実施例を示す気体搬送装置による被検査物の垂直帯磁及び攪拌の様子を示す図である。
【図9】本発明の実施例を示す粉体材料中の磁性異物の検査方法を示すフローチャートである。
【図10】本発明に係る粉体材料の実験装置の正面を示す模式図である。
【図11】本発明に係る粉体材料の実験装置の断面を示す模式図である。
【図12】本発明に係る化粧品粉体を水平帯磁した場合のSQUID磁気検出装置(グラジオメータ)による勾配磁界の信号出力結果を示す図である。
【図13】本発明に係る磁性異物が混入した化粧品粉体を水平帯磁した場合のSQUID磁気検出装置(グラジオメータ)による勾配磁界の信号出力結果を示す図である。
【図14】本発明に係る化粧品粉体を垂直帯磁した場合のSQUID磁気検出装置(グラジオメータ)による勾配磁界の信号出力結果を示す図である。
【図15】本発明に係る磁性異物が混入した化粧品粉体を垂直帯磁した場合のSQUID磁気検出装置(グラジオメータ)による勾配磁界の信号出力結果を示す図である。
【図16】本発明の粉体材料中の磁性異物の検査装置における2次元走査(X軸およびY軸方向走査)の平面模式図である。
【図17】本発明の粉体材料中の磁性異物の検査装置においてSQUID磁気検出装置を複数個用いた時の平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の粉体材料中の磁性異物の検査装置は、粉体材料の状態でこの粉体材料に磁場を印加する帯磁用磁石と、この帯磁用磁石の下流に配置され、帯磁後の前記粉体材料を攪拌する攪拌手段と、この攪拌手段の下流に配置され、攪拌後の前記粉体材料中の磁性異物を検出するSQUID磁気検出装置とを具備する。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0034】
図1は本発明の第1実施例を示す粉体材料中の磁性異物の検査装置の模式図、図2はその粉体材料中の磁性異物の検査装置に提供される帯磁前の粉体材料が封入される被検査物を示す図である。
【0035】
これらの図において、1は制御装置、2はコンベア、2Aはコンベア2の駆動側の電動機付き駆動プーリー、2Bはコンベア2の従動プーリー、3′はカプセル3A内に磁性異物3Cを含む粉体材料3Bが封入された着磁前の被検査物、4は着磁前の被検査物3′を長手方向に磁化させるための水平帯磁用磁石〔トンネル状(円筒状)の永久磁石〕、5は水平帯磁用磁石4の下流に配置される磁化された被検査物3を攪拌する攪拌手段としての攪拌機である。また、6は磁気シールド、7はSQUID冷却容器、8はSQUID磁気検出装置(SQUIDグラジオメータ又はSQUIDマグネトメータ)、9は検査ステージである。なお、磁気シールド6には電磁波の影響を避けるため、アルミニウムなど導電性の材料で構成した電磁シールドを設けるようにしてもよい。
【0036】
磁性異物3Cを含む粉体材料(固形化する前の粉体の状態あるいは仮に成形した粉体の状態にある材料)3Bがカプセル3A内にセットされた着磁前の被検査物3′は、長手方向に永久磁石のN極とS極が配置されたトンネル状の水平帯磁用磁石4内をコンベア2によって搬送され、図3に示すように、カプセル3A内の粉体材料3B及び磁性異物3Cが連続的に着磁される。そこで、粉体材料3B及び磁性異物3Cがともに着磁されたものを図4に示すように攪拌機5で攪拌する。すると、攪拌時に母材としての粉体材料3Bの磁化は相互に打ち消されるが、粉体材料3Bに比べて比較的大きい磁性異物3Cの磁化は残されることになる(図5参照)。この磁性異物3Cの磁化が残された被検査物3を検査ステージ9へと搬送し、図6に示すように、SQUID磁気検出装置8で計測すると、磁化されている磁性異物3Cの顕著な信号を得ることができる。
【0037】
なお、本発明では、粉体材料3Bを容器(カプセル3A)に封入してコンベアにより搬送して処理するようにしたが、粉体材料3Bを受け皿やペーパー(敷紙)上にセットして搬送して処理するようにしてもよい。
【0038】
図7は本発明の第2実施例を示す気体搬送装置による被検査物の垂直帯磁の様子を示す図である。
【0039】
この図において、10は粉体材料3Bに磁性異物3Cが含まれた被検査物3′を気体により搬送する搬送用チューブ、11は着磁前の被検査物3′に帯磁を行う垂直帯磁用磁石(略U字状の永久磁石)である。
【0040】
上記第1実施例では被検査物3′を、図1に示すように、トンネル(円筒状)の永久磁石で水平帯磁で着磁したが、ここでは、着磁前の被検査物3′を搬送用チューブ10内を流れる気体によって搬送し、垂直帯磁用磁石11で着磁する。
【0041】
また、搬送用チューブ10内で帯磁された被検査物3は、搬送用チューブ10内に配置される軸流スクリュー12を有する攪拌装置13で攪拌処理を行うように構成している。
【0042】
本実施例では、被検査物としての磁性異物3Cを含む粉体材料3Bは、搬送用の送風機(図示なし)により、搬送用チューブ10内を搬送される。その後、磁化された被検査物3は軸流スクリュー12を有する攪拌装置13で攪拌されて検査ステージ(図示なし)へと搬送される。
【0043】
図8は本発明の第3実施例を示す気体搬送装置による被検査物の垂直帯磁及び攪拌の様子を示す図であり、図8(a)は帯磁処理部を示す図、図8(b)は攪拌処理部を示す図、図8(c)は磁性異物3Cを含む粉体材料3Bが封入されたカプセルの一例を示す模式図である。
【0044】
この図において、10はカプセル3A内に磁性異物3Cを含む粉体材料3Bが封入された被検査物3′を気体により搬送する搬送用チューブ、11は着磁前の被検査物3′に帯磁を行う垂直帯磁用磁石(略U字状の永久磁石)である。
【0045】
上記第3実施例では、磁性異物3Cが含まれた粉体材料3Bを被検査物3′として搬送用チューブ10に直接セットしたが、この実施例では、カプセル3A内に磁性異物3Cを含む粉体材料3Bが封入された被検査物3′を搬送用チューブ10内で搬送するように構成した。さらに、磁性異物3Cを含む粉体材料3Bが封入されるカプセル3Aは、蓋3Dと、後端部に形成される搬送用羽根3Eと、周辺部に軸方向に形成される攪拌用羽根3Fを有している。
【0046】
また、攪拌処理部においては、搬送用チューブ10の枝管14内に送風装置(ファン)15が配置される。
【0047】
カプセル3Aに磁性異物3Cを含む粉体材料3Bが封入される被検査物3′は搬送用の送風機(図示なし)により搬送用チューブ10内を搬送され、垂直帯磁用磁石11で帯磁される。その後、磁化された被検査物3は送風装置15を有する攪拌部で攪拌されて検査ステージ(図示なし)へと搬送される。つまり、帯磁後の被検査物3は枝管14に配置された送風装置15からの風をカプセル3Aの周辺部に軸方向形成される攪拌用羽根3Fで受けてカプセル3Aが回転することにより、カプセル3A内に封入された磁性異物3Cを含む粉体材料3Bが攪拌される。
【0048】
図9は本発明の粉体材料中の磁性異物の検査方法を示すフローチャートである。
【0049】
(1)まず、被検査物3′として磁性異物3Cを含む粉体材料3Bを準備する(ステップS1)。
【0050】
(2)着磁前の被検査物3′を搬送し、帯磁用磁石により磁場を印加する(ステップS2)。
【0051】
(3)着磁された被検査物3の粉体材料3Bを攪拌する(ステップS3)。
【0052】
(4)攪拌された被検査物3をSQUID磁気検出装置で走査し、粉体材料3B中の磁性異物3Cを検出する(ステップS4)。
【0053】
被検査物としての磁性異物3Cを含む粉体材料3Bは、カプセルや小袋に封入して、図1のようにコンベヤ2に載置して搬送したり、図8に示すように気体を流した搬送用チューブ10内を搬送して、各種の処理および検査を行うようにしている。また、被検査物としての磁性異物3Cを含む粉体材料3Bは、図7に示すように、カプセルや小袋に入れずにそのまま搬送用チューブ10内を搬送させることもがきる。
【0054】
以下、本発明に関する実験結果について説明する。
【0055】
図10は本発明の粉体材料中の磁性異物検査の実験装置の正面を示す模式図、図11は本発明の被検査物の実験装置の断面を示す模式図である。
【0056】
これらの図において、21はコンベアフレーム、22はコンベアフレーム21にセットされた台座、23はその台座22上に載置された化粧品粉体24が封入された留め具25付き小袋であり、この小袋23の表面には磁性異物26がセットされている。27はSQUID磁気検出装置である。ここで、台座22の高さは10mm、小袋23の高さは約4mm、SQUID磁気検出装置27のコンベアフレーム21からの高さは22.5mmである。
【0057】
測定条件としては、感度はMed・High、入力範囲は±10V、LPF(−24dB)…20Hzを用いており、サンプリングレートは1msecond、データポイントは10,000(10seconds)、測定基準位置は素子直下付近、被検査物の搬送速度は6.0m/min(≒100mm/sec)、中心の磁界は約0.2Tのリングマグネットを用いて水平帯磁を行った。また、試料は化粧品粉体(酸化鉄 5.0%含有)で、そこに含まれに磁性異物はSUJ−2(高炭素クロム鋼),直径0.5,0.8mm球である。
【0058】
なお、ここでは、SQUID磁気検出装置27の位置を固定させたまま、粉体材料24を封入した小袋23をX方向に移動させることにより、粉体材料の1次元走査を行うように構成している。
【0059】
図12は化粧品粉体を水平帯磁した場合のSQUID磁気検出装置(SQUIDグラジオメータ)による勾配磁界の信号出力結果を示す図であり、図12(a)は攪拌前の水平帯磁を加えた状態の結果、図12(b)は水平帯磁後に攪拌された状態の結果である。
【0060】
化粧品粉体24が封入された磁性異物26がセットされていない小袋23を図3に示すように水平帯磁し、図10及び図11に示す実験装置に配置する。攪拌前の化粧品粉体は磁化されているため、図12(a)に示すように、全体的に大きな勾配磁界(Gradient Magnetic Field)の検出信号が得られるが、図12(b)に示すように、攪拌後は勾配磁界の検出信号が殆ど見受けられない。これは、磁化されていた化粧品粉体24が攪拌によって互いに磁化を打ち消し合ったことを示している。
【0061】
図13は磁性異物が混入した化粧品粉体を水平帯磁した場合のSQUID磁気検出装置(SQUIDグラジオメータ)による勾配磁界の信号出力結果を示す図であり、図13(a)は磁性異物として直径0.8mmの鋼球を混入させた時の攪拌後の状態の結果であり、図13(b)は磁性異物として直径0.5mmの鋼球を混入させた時の攪拌後の状態の結果である。
【0062】
化粧品粉体24が封入された磁性異物26がセットされた小袋23を図3に示すように水平帯磁し、図10及び図11に示す実験装置に配置する。磁性異物26として直径0.8mmの鋼球が含まれる化粧品粉体24を攪拌し、SQUID磁気検出装置(SQUIDグラジオメータ)27により検査すると、図13(a)に示すように、鋼球のみが磁化されているため、大きな勾配磁界の信号が得られる。また、磁性異物26としての直径0.5mmの鋼球が含まれる化粧品粉体24を攪拌し、その攪拌後の鋼球が含まれる化粧品粉体24をSQUID磁気検出装置(SQUIDグラジオメータ)27で検査すると、図13(b)に示すように、直径0.5mmの鋼球に対応した勾配磁界の信号が得られる。なお、直径0.8mmの鋼球の場合に比べると、その勾配磁界の信号の大きさは1/5程度となっている。
【0063】
図14は化粧品粉体を垂直帯磁した場合のSQUID磁気検出装置(SQUIDグラジオメータ)による勾配磁界の信号出力結果を示す図であり、図14(a)は攪拌前の垂直帯磁を加えた状態の結果であり、図14(b)は垂直帯磁後に攪拌された状態の結果である。
【0064】
化粧品粉体24が封入された磁性異物26がセットされていない小袋23を図7および図8に示すように垂直帯磁し、図10及び図11に示す実験装置に配置する。攪拌前の化粧品粉体24は磁化されているため、図14(a)に示すように、全体的に大きな勾配磁界の検出信号が得られるが、図14(b)に示すように、攪拌後は勾配磁界の検出信号が殆ど見受けられない。これは、磁化されていた化粧品粉体24が攪拌によって互いに磁化を打ち消し合ったことを示している。
【0065】
図15は磁性異物が混入した化粧品粉体を垂直帯磁した場合のSQUID磁気検出装置(SQUIDグラジオメータ)による勾配磁界の信号出力結果を示す図であり、図15(a)は磁性異物として直径0.8mmの鋼球を混入させた時の攪拌後の状態の結果であり、図15(b)は磁性異物として直径0.5mmの鋼球を混入させた時の攪拌後の状態の結果である。
【0066】
化粧品粉体24が封入された磁性異物26がセットされた小袋23を図7及び図8に示すように垂直帯磁し、図10及び図11に示す実験装置に配置する。磁性異物26として直径0.8mmの鋼球が含まれる化粧品粉体24を攪拌し、SQUID磁気検出装置(SQUIDグラジオメータ)27で検査すると、図15(a)に示すように、鋼球のみが磁化されているため大きな勾配磁界の信号が得られるが、図15(b)に示すように、磁性異物26として直径0.5mmの鋼球が含まれる化粧品粉体24を攪拌し、その攪拌後の鋼球が含まれる化粧品粉体24をSQUID磁気検出装置(SQUIDグラジオメータ)27で検査すると、直径0.5mmの鋼球に対応した勾配磁界の信号が得られる。なお、直径0.5mmの鋼球の場合は、直径0.8mmの鋼球に比べると、その勾配磁界信号の大きさは約1/10程度である。
【0067】
このように、水平帯磁又は垂直帯磁によって全体的に磁化していた化粧品粉体24は、攪拌によって互いに磁化を打ち消し合うことにより帯磁しなくなっており、検査時における磁気ノイズが低減していることがわかる。
【0068】
図16は本発明の粉体材料中の磁性異物の検査装置における2次元走査(X軸およびY軸方向走査)の平面模式図である。
【0069】
この図において、31はコンベア、32はコンベア31上に載置された被検査物であり、この被検査物32は粉体材料33とその中に混入した磁性異物34からなる。35はSQUID磁気検出装置であり、このSQUID磁気検出装置35はコンベア31のX軸方向のみならず、Y軸方向へも移動可能であり、2次元走査を行わせることができる。
【0070】
図17は本発明の粉体材料中の磁性異物の検査装置においてSQUID磁気検出装置を複数個用いた時の平面模式図である。
【0071】
この図において、41はコンベア、42〜45はコンベア41の上方に固定される複数個のSQUID磁気検出装置、46はコンベア41上に載置された被検査物であり、この被検査物46は粉体材料47とその中に混入した磁性異物48〜50からなる。
【0072】
この図に示すように、被検査物46の移動方向に直交する方向に複数個のSQUID磁気検出装置(SQUIDグラジオメータ)42〜45を配置するようにしたので、被検査物46中の磁性異物48〜50を的確に検査することができる。つまり、被検査物46の進行方向(X軸方向)のみならず、被検査物46の幅方向(Y軸方向)への2次元走査を一度に実施することができる。
【0073】
このように、着磁後の被検査物32,46の移動方向に直交する方向の走査も行うようにすることにより、被検査物32,46のどの位置に磁性異物が存在しても的確に検査することができる。
【0074】
上記したように、本発明のSQUID磁気検出装置を用いて走査を行ったところ磁性異物による勾配磁界のみが顕著に現れ、磁性異物が存在することが大方の位置情報を含めて的確に計測される。つまり、攪拌により粉体材料の磁化は打ち消されて磁性異物の磁化されたものがSQUID磁気検出装置により検出される。
【0075】
なお、上記した説明では、SQUID磁気検出装置として典型的なSQUIDグラジオメータを用いたが、SQUIDマグネトメータを用いるようにしてもよい。
【0076】
また、磁性異物としては、鉄、ニッケル、若しくはコバルト、又は、鉄、ニッケル、若しくはコバルトの何れかを含有する合金などを的確に検出することができる。
【0077】
さらに、粉体材料としては、化粧品粉体に限らず、半導体装置の封止材としの樹脂組成物であったり、就中、熱硬化性樹脂組成物であってもよい。特に、半導体装置の封止材に磁性異物が混入すると、半導体パッケージ内のピンや配線間をショートさせて、電気的不良の原因となる。特に、近年は半導体パッケージは極端に小型化、薄型化が進んでおり、微細な磁性異物が含まれていると電気的不良を招く原因となる。これを解決するためには、本発明の粉体材料中の磁性異物の検査装置及び方法は有効であり好適である。
【0078】
また、セラミックスの成型プロセスにおいて原料となるセラミック用原料粉などの検査にも好適である。特に、セラミック用原料粉への磁性異物の混入により、セラミック部材の絶縁性が劣化して信頼性が失われることになるが、そのような場合にも本発明の粉体材料中の磁性異物の検査装置は好適である。
【0079】
また、粉体材料を封入する容器としては、カプセルや小袋などを用いることができ、その搬送方法としては、ベルトコンベアや気体で移送するチューブによってもよい。
【0080】
また、粉体材料への磁化は、配置及び保守が容易であるため、図3、図7及び図8に示すように、主に永久磁石により行うようが、これに代えて、搬送装置(コンベア)の脇に、磁路を形成しておき、その磁路に励磁コイルを巻回して電磁石を構成するようにしてもよい。かかる電磁石の場合は励磁コイルに流す励磁電流を調整することにより、被検査物に印加する磁場の強さを任意に調整することができ、SQUID磁気検出装置の性能と相まって、精度が高くなるように調整することができる利点がある。
【0081】
さらに、粉体材料を封入する容器の攪拌手段は、通常、搬送されてくる被検査物を攪拌機によって攪拌させるが、これに代えて、粉体材料を封入する容器をロボットハンド(図示なし)により把持して攪拌させ、その攪拌後に再びベルトコンベアへ戻すようにしてもよい。要するに、粉体材料を十分に攪拌させ、粉体材料の磁化を打ち消すようにすることが肝要である。
【0082】
また、検査ステージでは、SQUID磁気検出装置の位置を固定させたまま、粉体材料をX方向に移動させることにより粉体材料の1次元走査を行ったり、SQUID磁気検出装置の位置を2次元的に移動させて2次元走査を行わせたり、粉体材料の移動方向に直交する方向に複数個のSQUID磁気検出装置を配置して、粉体材料の進行方向及び幅方向の検査も同時に行うように構成することができる。
【0083】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の粉体材料中の磁性異物の検査装置およびその検査方法は、粉体材料中に混入している磁性異物の信号判定を的確に行うことができるツールとして利用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 制御装置
2,31,41 コンベア
2A 電動機付き駆動プーリー
2B 従動プーリー
3 着磁後の被検査物
3′ 着磁前の被検査物
3A カプセル
3B,33,47 粉体材料
3C,26,34,48〜50 磁性異物
3D 蓋
3E 搬送用羽根
3F 攪拌用羽根
4 水平帯磁用磁石(トンネル状の永久磁石)
5 攪拌手段(攪拌機)
6 磁気シールド
7 SQUID冷却容器
8,27,35,42〜45 SQUID磁気検出装置(SQUIDグラジオメータ又はSQUIDマグネトメータ)
9 検査ステージ
10 搬送用チューブ
11 垂直帯磁用磁石(略U字状の永久磁石)
12 軸流スクリュー
13 攪拌装置
14 枝管
15 送風装置(ファン)
21 コンベアフレーム
22 台座
23 小袋
24 化粧品粉体
25 留め具
32,46 被検査物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)粉体材料の状態で該粉体材料に磁場を印加する帯磁用磁石と、
(b)該帯磁用磁石の下流に配置され、帯磁後の前記粉体材料を攪拌する攪拌手段と、
(c)該攪拌手段の下流に配置され、攪拌後の前記粉体材料中の磁性異物を検出するSQUID磁気検出装置とを具備することを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記帯磁用磁石は、前記粉体材料に水平帯磁を行うように構成されていることを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査装置。
【請求項3】
請求項1記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記帯磁用磁石は、粉体材料に垂直帯磁を行うように構成されていることを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査装置。
【請求項4】
請求項1記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記粉体材料を封入した非磁性体からなる容器を搬送させるようにしたことを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査装置。
【請求項5】
請求項4記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記容器がカプセル又は袋であることを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査装置。
【請求項6】
請求項5記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記カプセル又は袋をベルトで搬送させるようにしたことを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査装置。
【請求項7】
請求項5記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記カプセル又は袋を気体で移送するチューブ内を搬送させるようにしたことを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査装置。
【請求項8】
請求項7記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記チューブに枝管を形成し、該枝管に送風装置を配置し、前記カプセルには搬送用羽根と攪拌用羽根とを具備することを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査装置。
【請求項9】
請求項1記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記粉体材料が化粧品粉体であることを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査装置。
【請求項10】
請求項1記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記粉体材料が半導体装置の封止に用いる樹脂組成物であることを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査装置。
【請求項11】
請求項10記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記樹脂組成物が、熱硬化性樹脂組成物であることを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査装置。
【請求項12】
請求項1記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記磁性異物が鉄、ニッケル、若しくはコバルト、又は、鉄、ニッケル、若しくはコバルトの何れかを含有する合金であることを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査装置。
【請求項13】
請求項1記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記帯磁用磁石が永久磁石であることを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査装置。
【請求項14】
請求項1記載の粉体材料中の磁性異物の検査装置において、前記帯磁用磁石が電磁石であることを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査装置。
【請求項15】
(a)粉体材料を封入した容器を用意する工程と、
(b)前記粉体材料に帯磁用磁石により磁場を印加する工程と、
(c)前記粉体材料の帯磁後に該粉体材料を攪拌する工程と、
(d)前記粉体材料の攪拌後、SQUID磁気検出装置により前記粉体材料中の磁性異物を検出する工程とを施すことを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査方法。
【請求項16】
請求項15記載の粉体材料中の磁性異物の検査方法において、前記SQUID磁気検出装置の位置を固定させたまま、前記粉体材料をX方向に移動させることにより前記粉体材料の1次元走査を行うことを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査方法。
【請求項17】
請求項15記載の粉体材料中の磁性異物の検査方法において、前記SQUID磁気検出装置の位置を2次元的に移動させて前記粉体材料の2次元走査を行うことを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査方法。
【請求項18】
請求項15記載の粉体材料中の磁性異物の検査方法において、前記粉体材料の移動方向に直交する方向に複数個のSQUID磁気検出装置を配置して、前記粉体材料の進行方向及び幅方向の検査も同時に行うことを特徴とする粉体材料中の磁性異物の検査方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−237081(P2010−237081A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86374(P2009−86374)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【出願人】(598159997)アドバンスフードテック株式会社 (14)
【Fターム(参考)】