粉体混練方法および装置、並びに粉体塊成方法
【課題】乾燥した粉体とバインダーとを混練する横型ニーダやパドルミキサ等の横長型の混練装置において、粉体の供給量が増減しても、混練物の粒度や嵩密度等の性状を適正な範囲に確保することを可能とする粉体混練方法を提供する。
【解決手段】乾燥した粉体とバインダーとを混練する横長型の混練装置を使用した粉体混練方法であって、前記混練装置への前記バインダーの添加位置を長手方向に可変とし、前記粉体の供給量が増減した際に、前記混練装置内の前記粉体の滞留量が一定になるように制御し、且つ、前記粉体に対する前記バインダーの添加割合が、前記粉体の供給量増減の前後で一定となるようにバインダーの添加量を調整すると共に、前記バインダーの添加位置を、前記粉体の供給量が増加すれば前記混練装置の上流側に、前記粉体の供給量が減少すれば前記混練装置の下流側に、前記粉体の供給量の増減割合に比例して変更する。
【解決手段】乾燥した粉体とバインダーとを混練する横長型の混練装置を使用した粉体混練方法であって、前記混練装置への前記バインダーの添加位置を長手方向に可変とし、前記粉体の供給量が増減した際に、前記混練装置内の前記粉体の滞留量が一定になるように制御し、且つ、前記粉体に対する前記バインダーの添加割合が、前記粉体の供給量増減の前後で一定となるようにバインダーの添加量を調整すると共に、前記バインダーの添加位置を、前記粉体の供給量が増加すれば前記混練装置の上流側に、前記粉体の供給量が減少すれば前記混練装置の下流側に、前記粉体の供給量の増減割合に比例して変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥した粉体とバインダーとを混練する横型ニーダやパドルミキサ等の横長型の混練装置を用いた混練方法、混錬装置、および混錬後の粉体を塊成する方法に関するものである。特には、コークス事前処理用石炭を流動床乾燥分級機で乾燥した際に生じる微粉炭を、ロール塊成機に投入して横溝状や波板状等の板状に塊成化する前段階の、横型ニーダやパドルミキサ等の横長型の混練装置を用いた微粉炭とバインダーの混練方法および装置、並びに混錬後の粉体を塊成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水分を含む粉体を1000℃等の高温で熱処理する場合、熱処理時の熱量を低減するためには、事前に粉体を乾燥することが有効ある。しかし、水分を含む粉体の乾燥が進むと、搬送の際に発塵するという問題が発生する傾向がある。このような乾燥処理に、室炉式コークス炉に装入する石炭原料の事前処理方法がある。コークス事前処理用の石炭を乾燥すると、コークス化する際の乾留熱量を低減できるだけでなく、石炭のコークス炉への装入密度が増加してコークス品質や生産量を増加させることができる。
粘結性の低い非微粘結炭の配合割合を増加しても、コークス品質を高炉操業に必要なレベルまで向上させることができれば、コークスの原料コストを低減でき、安価なコークスを製造できる。世界的に良質な粘結炭は不足傾向にあることからも、非微粘結炭の配合割合を高めることは非常に重要である。これらの効果を狙って、コークス原料となる石炭を事前処理にて乾燥させることでコークス炉装入時の嵩密度を増加させて、コークス品質及び生産量を増加することが可能な調湿炭装入法が多くのコークス炉で実施されている。
しかし、石炭の乾燥度を高めていくと、石炭をコークス炉に搬送する際や装入する際に、発塵やキャリーオーバーが激しくなるという問題が発生する。これは乾燥により擬似粒子が崩壊し、発塵し易い微粉が増加するためである。このため、調湿炭装入法では、石炭水分を5質量%(水分質量/石炭質量-wet ×100)程度までしか乾燥できない。
そこで、石炭乾燥時に問題となる発塵性微粉を事前に分離して、横長型の混練装置内で当該発塵性微粉にバインダーを添加して混練して擬似粒子化させたり、更に混練した物(以下、混練物と記す)をロール成型機でブリケットやポケット型等に成型、あるいは、ロール塊成機で横溝状や波板状等の板状に塊成化して、分級後に残った粗粒石炭と混合してコークス炉に装入することで、発塵やキャリーオーバーを抑制できる石炭事前処理方法が提案されている。ここで、発塵性微粉を分離する手段としては振動篩等があるが、流動床乾燥分級機が一般的である。当該分級機とは、流動床に連続的にコークス用石炭を供給し、下方から100〜300℃程度の熱風を供給して石炭を乾燥しながら、発塵性微粉を分級して分離するものであり、分級する微粉の粒径は流動床上部の分級部のガス流速で調整することが可能である。
【0003】
これらのうち、特にロール塊成機で横溝状や波板状の板状に塊成する手法は、発塵性の低減に加えて、更に塊成物の偏析も抑制し、コークス炉内での装入密度を適正な範囲に制御することが可能であることを本発明者等は見出し、提案している(特許文献4)。
【0004】
コークス用の石炭を流動床乾燥分級機等で分級する場合、石炭水分や石炭粒度等で、分離する微粉の量が変動する。このため、前述の石炭事前処理方法において、微粉の処理量が増減すると、バインダー添加割合を一定にしても、微粉とバインダーの混練状態が変化し、さまざまな問題が発生していた。
例えば、微粉の処理量が増加した場合、混練物の微粉へのバインダーの分散が不充分となり、部分的にバインダー過多となった混練物が搬送ラインに付着して操業の障害となり、バインダー不足となった混練物は擬似粒子化が不充分で発塵していた。その混練物を塊成しても、バインダー過多となった混練物では塊成時に混練物がホッパやロールに付着して操業の障害となり、バインダー不足となった混練物では塊成物の強度や歩留が低下し、コークス炉への搬送過程で塊成物が崩壊し、発塵やキャリーオーバーが激しくなるという課題があった。
【0005】
また、微粉の処理量が減少した場合(バインダー量は変わらず)、混練物の微粉へのバインダーの分散が過剰となり、擬似粒子が崩壊して発塵していた。その混練物を塊成しても混練物の嵩密度が低下しているため、塊成物が緻密にならず強度や歩留が低下し、コークス炉への搬送過程で塊成物が崩壊し、発塵やキャリーオーバーが増加するという課題があった。従って、微粉の処理量が増減しても、混練物の擬似粒子化(以降、粒度で評価する)や嵩密度等の性状を安定化させるための対策が必要であった。
【0006】
例えば、特許文献1には、混練装置から排出された混練物の嵩密度を測定して、ファジィ推論にて混練装置の滞留量(占積率)を増減させて調整し、混練物の性状を安定化する手法が開示されている。
また、微粉炭を混錬してコークス炉装入用の疑似造粒物を製造する方法として、特許文献2には、パドルが内蔵された横型の混練装置を用いて、粉体の温度(70、150℃)と処理量(20、40t/Hr)に応じて混練装置のバインダー添加位置を3段階(領域I、II、III )で断続的に調整する擬似造粒物の安定化製造方法が開示されている。具体的には、微粉炭の投入量が20t/hで一定の場合、温度が70→150℃に高くなるとバインダーの投入位置を領域Iから下流側の領域III に移動し、温度が150℃一定の場合、微粉炭の投入量が20→40t/hに増加するとバインダーの投入位置を領域III から上流側の領域IIに移動する手法である。
なお、粉体の供給量が増減した場合の塊成方法については、供給量に応じて、ロール押圧力を調整する手法が考えられるが、塊成機の運転が難しい上に設備費が増加してしまう。従って、供給量が増減しても、ロール押圧力は一定とし、供給量の増減割合に比例してロール回転数を調整し、ロール間ギャップが一定になるようにスクリューフィーダーの回転数を制御する手法が有効であることを本発明者等は見出し、提案している(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−47266号公報
【特許文献2】特開2007−297537号公報
【特許文献3】特開2008−132537号公報
【特許文献4】特開2007−284557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1に記載の方法を、バインダーを用いて粉体を混練する方法に適用した場合には、処理量が大きく増減するケースには適用できないという問題を有していた。すなわち、粉体とバインダーを撹拌羽根で混練する通常の混練装置には、適正な滞留量(占積率)があり、占積率が低すぎると、混練装置底面の影響が大きく撹拌羽根の混練作用を発揮できない上に、バインダーがシャフトや撹拌羽根に付着して混練装置の運転を阻害してしまい、逆に、占積率が高すぎると、撹拌した際に羽根高さを超える粉体が発生し撹拌羽根の混練作用を充分に発揮できないまま排出されてしまうという問題を有しているからである。従って、バインダーを用いて粉体を混練する方法において、占積率を変化させることにより混練物の性状を一定に保つことには限界があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の方法においては、粉体処理量が断続的に変化した場合に、断続的にバインダーの投入位置を変更しており、増減する粉体の処理量が、断続的な設定値から外れる場合は想定していない。しかしながら、コークス用の原料石炭を流動床乾燥分級機で分級する実際の操業における微粉の発生量は、原料石炭の流動床乾燥分級機への投入量や水分が大きく増減することがあるため、大きく変動することがあり、微粉の混練処理量は2、3段階の変動には止まらず、場合によっては定常操業処理量の1/数〜数倍にも変動することがあった。そのため、特許文献2に記載の方法では、増減する粉体の処理量が設定値から外れた場合に、混練物の粒度や嵩密度等の性状が不安定になるという問題を有していた。その理由は、粉体の処理量が設定値から外れて変動した場合には、バインダー添加割合が所定値からずれてしまうからである。バインダー添加割合は混練及び塊成に大きく影響するため、粉体の処理量が増減してもバインダー添加割合は一定となるよう調整することが重要であるが、特許文献2に記載の方法では、処理量の増減が2、3段階の想定される設定値を外れると、混練物の性状が不安定化する問題を抱えていた。
【0010】
また、上述のように混練機内の占積率を一定に保つことが混練物の性状の安定化には大事であるが、特許文献2には、微粉炭の処理量が増加した場合に、占積率(微粉炭レベル)を一定に保つため、混練機内の微粉炭の移動速度を上昇させることが開示されている。
特許文献2には、微粉炭の移動速度の調整手段は具体的には記載されていないが、パドルを内蔵する混練装置において移動速度を変更するには、パドルの回転数を変更する事が一般的であると考えられる。
しかしながら、発明者等が検討した結果、パドルの回転数を変更するとパドルの遠心力と重力のバランスが崩れ、適正な混練状態を維持できなくなることが判った。パドルの回転数が高すぎると遠心力が過大となりパドルの混練作用を発揮できず、回転数が低すぎるとパドルが粉体を持ち上げる混練作用が発揮できないからと思われる。
【0011】
更にまた、特許文献2に開示されている手法は、粉体の温度が100℃以上の場合もあるため、水分や100℃程度で蒸発する軽質な揮発分を含む安価なタール滓や精製前の粗タールをバインダーとして使用することは想定していないと考えられる。なぜならば、100℃以上の粉体を混練または塊成しても、水分や軽質な揮発分が蒸発し、擬似粒子が崩壊するのみならず、搬送設備や集塵設備に水分や揮発分が付着して操業障害となるからである。
【0012】
本発明は、前述の従来技術の問題点を解決し、流動床乾燥分級機によりコークス事前処理用石炭が乾燥及び分級された際に発生する微粉炭を、ロール塊成機に投入して横溝状や波板状等の板状に塊成化する前段階の、内部に攪拌羽根を備えた横長型の混練装置を用いた微粉炭とバインダーの混練において、処理量が増減しても、混練物の粒度や嵩密度等の性状を安定化させ、搬送や装入時の発塵やキャリーオーバーを抑制することができる粉体とバインダーの混練方法および混練装置、並びに混錬した粉体を塊成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、鋭意検討の結果、流動床乾燥分級機によりコークス事前処理用石炭が乾燥及び分級された際に発生する微粉炭を、内部に攪拌羽根を備えた横型の混練装置を用いてバインダーと混練する際に、処理量(微粉炭の混練装置への投入流量)が増減しても、(A)バインダーの添加割合を一定に保つこと、(B)混練装置内の滞留量(占積率)を一定に保つこと、(C)攪拌羽根の回転数を一定に保つこと、(D)処理量の増減に応じてバインダー添加位置を調整すること、の(A)〜(D)の全てを満たすことで、混練物の粒度や嵩密度等の性状を安定化させ、搬送や装入時の発塵やキャリーオーバーを抑制できることを見出して、発明を為すに至った。
また、上記(A)〜(C)を満たすことでタール滓や精製前の粗タールをバインダーとして使用しても、問題無く使用できることが判った。
【0014】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)コークス事前処理用石炭を流動床乾燥分級機にて微粉と粗粒に分級した微粉炭を、撹拌羽根を内蔵する横長型の混練装置に供給すると共に、当該混練装置にバインダーを添加して、両者を混練する粉体混練方法であって、
前記混練装置に内蔵される撹拌羽根の回転数を一定に保つと共に、前記混練装置内の混練物の滞留量が一定になるように制御し、
且つ、前記バインダーの添加位置を前記混練装置の長手方向に可変とし、前記粉体の供給量が増減した際に、前記微粉炭に対する前記バインダーの添加割合が、前記粉体の供給量増減の前後で一定となるようにバインダーの添加量を調整すると共に、前記バインダーの添加位置を、前記粉体の供給量が増加すれば前記混練装置の上流側に、前記粉体の供給量が減少すれば前記混練装置の下流側に、前記粉体の供給量の増減割合に比例して変更することを特徴とする粉体混練方法。
(2)前記バインダーは、水分及び固形分を含むタール精製前の粗タールを含むことを特徴とする(1)記載の粉体混練方法。
(3)前記バインダーの添加位置を前記混練装置の長手方向に可変とする手段が、バインダー添加ノズルを前記混練装置の長手方向に移動させる機構を設けたことによるものであることを特徴とする(1)又は(2)記載の粉体混練方法。
(4)前記バインダーの添加位置を前記混練装置の長手方向に可変とする手段が、バインダー添加ノズルを前記混練装置の長手方向に4段以上位置を変えて設け、バインダーを添加する前記バインダー添加ノズルを切り替えることによるものであることを特徴とする(1)又は(2)記載の粉体混練方法。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の粉体混練方法にて混練した粉体を、ロール塊成機に投入して板状に塊成することを特徴とする粉体塊成方法。
【0015】
(6)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の粉体混練方法に使用する粉体混練装置であって、上方が開放または密閉され、水平方向に延びる筒体と、該筒体の上流側に設置された粉体供給部と、筒体の下流側に設置された粉体排出部と、前記粉体供給部と前記粉体排出部の間であって筒体内を水平方向に伸びる回転軸に取り付けられた撹拌羽根を備えた混練部と、撹拌羽根が取り付けられた回転軸を回転させる駆動装置と、前記混練部にバインダーを供給するバインダー添加ノズルと、前記粉体供給部に粉体を供給する粉体供給装置と、バインダー添加ノズルにバインダーを供給するバインダー供給装置とを備え、且つ、粉体の供給量が増減した際に、前記混練装置内の粉体の滞留量が一定となるようにする制御手段と、前記粉体に対する前記バインダーの添加割合が、前記粉体の供給量増減の前後で一定となるようにバインダーの添加量を調整するフィードフォワード制御装置とを備え、且つ、前記バインダー添加ノズルは、前記混練装置の長手方向に複数設けられてバインダーを投入するノズルが切り替えられる機構を有するか、又は、前記混練装置の長手方向に移動可能となる機構を有するものであり、前記粉体の供給量増減の際に、前記粉体の供給量が増加すれば前記混練装置の上流側に、前記粉体の供給量が減少すれば前記混練装置の下流側に、前記粉体の供給量の増減割合に比例して前記バインダー添加ノズルの長手方向の添加位置が変更できることを特徴とする粉体混練装置。
なお、本発明に用いる横長型の混練装置とは、重力とは垂直な方向に設置したシャフト(回転軸)に撹拌羽根を備え、当該シャフトを回転させて粉体とバインダーとを混練することを特徴とする横型ニーダやパドルミキサ等の横長型の混練装置であり、長手方向とは、シャフトの延在する方向をいう。また、上流側とは粉体を供給する側を、下流側とは混練物を排出する側をそれぞれいうものとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、流動床乾燥分級機によりコークス事前処理用石炭が乾燥及び分級された際に発生する微粉炭を、ロール塊成機に投入して横溝状や波板状等の板状に塊成化する前段階の、内部に攪拌羽根を備えた横長型の混練装置を用いた微粉炭とバインダーの混練において、粉体(微粉炭)の処理量が増減しても、混練物の粒度や嵩密度等の性状を安定化させることが可能となり、後工程への搬送や装入時の発塵やキャリーオーバーを抑制することが可能となる。これにより、室炉式コークス炉への搬送や装入時の発塵やキャリーオーバーを抑制しつつ、コークス炉への石炭の装入密度を増加してコークス品質の向上や生産量を増加させることが期待できる。
また、当該混練物をロール塊成機で板状に塊成することで、発塵性微粉の発生をより低減できるため、発塵やキャリーオーバーの更なる低減が可能となるのみならず、石炭密度を更に増加できるため、コークス品質や生産量を更に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る粉体混練方法を用いた塊成物の製造方法のフローの1例を示した図である。
【図2】粉体とバインダーの混練状態のイメージを示した図であり、(a)は混練初期、(b)は混練不足、(c)は最適混練、(d)は混練過多の状態をそれぞれ示す。
【図3】本発明の粉体混練装置を示した模式図であり、(a)は混練装置の長手方向に垂直な断面図、(b)は側面断面図、(c)は平面断面図をそれぞれ示す。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る粉体供給量に対する混練物の嵩密度と混練物の0.3mm以下の粒子割合との関係を示した図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係る粉体供給量に対する塊成物の落下強度と歩留との関係を示した図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る粉体供給量に対する混練物の嵩密度と混練物の0.3mm以下の粒子割合との関係を示した図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る粉体供給量に対する塊成物の落下強度と歩留との関係を示した図である。
【図8】本発明の第三の実施形態に係る粉体供給量比に対する混練物の嵩密度と混練物の0.3mm以下の粒子割合との関係を示した図である。
【図9】本発明の第三の実施形態に係る粉体供給量比に対する塊成物の落下強度と歩留を示した図である。
【図10】比較例1に係る粉体供給量比に対する混練物の嵩密度と混練物の0.3mm以下の粒子割合との関係を示した図である。
【図11】比較例1に係る粉体供給量比に対する塊成物の落下強度と歩留との関係を示した図である。
【図12】比較例3に係る粉体供給量比に対する混練物の嵩密度と混練物の0.3mm以下の粒子割合との関係を示した図である。
【図13】比較例3に係る粉体供給量比に対する塊成物の落下強度と歩留との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る流動床乾燥分級機処理後の微粉炭(以降、「粉体」とも言う)の混練および塊成化フローを示した図である。粉体を流動床乾燥分級機や振動篩等にて微粉と粗粒に分級した後、分級された微粉の粉体は、粉体ホッパ1に供給され、レベル検知器2で粉体ホッパ内の粉体量を管理しながら、粉体供給装置3で所定量の粉体が混練装置6の粉体供給部15を介して混練装置に供給される。
【0019】
レベル検知器2の種類はマイクロ波レベル計や静電容量式レベル計等があるが、粉体性状や設備費等を勘案し、適宜選定すれば良い。また、粉体の嵩密度の変動が大きければレベル検知器ではなく、ロードセル等で粉体ホッパ1の質量を測定し、ホッパ内の粉体量を管理する方が望ましい。
【0020】
粉体供給装置3はロータリ・バルブが安価で一般的であるが、スクリュー・コンベアやテーブル・フィーダ等の他の供給装置を使用しても構わない。
【0021】
粉体を擬似粒子化させると共に塊成物の歩留や強度等の品質を向上させるためのバインダーは、バインダーホッパ4に供給され、レベル検知器2’でバインダーホッパ内のバインダー量を管理しながら、バインダー供給装置5で所定量のバインダーをバインダー添加ノズル7を介して混練装置6に供給される。バインダーとしてはコークス品質向上、コークス製造量増加及び副産物処理の観点から、タールを使用することが好ましいが、これに限る必要はなく、適宜選定すれば良い。また、タールを使用する場合、水分及び固形分を含むタール滓やタール精製前の粗タールを使用する事が副産物処理及びコスト低減の観点から好ましい。
【0022】
レベル検知器2’の種類はマイクロ波レベル計やフロー式レベル計等があるが、バインダー性状や設備費等を勘案し、適宜選定すれば良い。また、バインダーの嵩密度の変動が大きければレベル検知器ではなく、ロードセル等でバインダーホッパ4の質量を測定し、ホッパ内のバインダー量を管理する方が望ましい。
【0023】
バインダー供給装置5は、バインダーが粉体の場合は前述の粉体供給装置3と同じで良い。バインダーが液体の場合はポンプが安価で一般的であるが、流量調節弁等を使用した他の供給法でも構わない。当該バインダーはバインダー添加ノズル7を用いて混練装置6に供給される。バインダー添加ノズル7は単管でも良いが、バインダーが液体の場合は、粉体に液体バインダーをより均一に分散させるために、噴霧することが望ましい。その噴霧方法は液体バインダーを加圧して直接ノズルで噴霧しても、2流体ノズルで気体と合わせて噴霧しても構わず、液体バインダーの噴霧性等により適宜選定すれば良い。
【0024】
また、バインダー供給ノズルは混練装置6の長手方向におけるバインダー添加位置を調整できる構造とする。具体的には、混練装置6の筒体6aが天井のない開放系であれば、バインダー配管をフレキシブルホース等の可動し得る配管とし、バインダー添加ノズル7を混練装置の長手方向にレールを設け台車などで移動できる構造とすれば良い。バインダー添加ノズルの位置を調整するための台車を動かす手段は、手動で調整しても、油圧シリンダー等で自動で調整しても、どちらでも構わない。混練装置6の筒体6aが天井のある密閉系であれば、バインダー添加ノズル7を混練装置の長手方向の4段以上の異なる位置に設置して、条件に応じて使用するノズルを選択し、バルブを開閉することで使用するノズルを切り替えて調整すれば良い。一般的な横長型混練機の長手サイズからすると、バインダーの均一分散のためには5段以上とすることがより好ましい。
【0025】
本発明に用いるバインダーと粉体の混練装置6は、回分式のものでも連続式のものでも構わないが、連続的に粉体を処理する場合には、連続式の方が望ましい。連続式の混練装置にも、パドルミキサやピンミキサ等の様々な形式があるが、一般的に横型ニーダと呼ばれる重力とは垂直な方向に設置したシャフト17に撹拌羽根9を備えた横長型の混練装置が投資対効果の観点から望ましい。撹拌羽根9にも、棒状、羽根状、スクリュー状等、様々な形式があるが、それぞれの用途や粉体性状を勘案し、混練試験等を行い、適宜選定すれば良い。
【0026】
当該混練装置は長手方向に、供給搬送部11、混練部10、排出部12に分類される。当該供給搬送部11は粉体供給装置3から排出される粉体を混練装置に供給するための開口部15と、粉体を混練部10に搬送するためのスクリュー16を備えている。当該排出部12は混練した粉体を混練装置から排出するための開口部15とスクリュー16を備えている。当該混練部10は、粉体とバインダーを混練するための撹拌羽根9を備え、バインダー添加ノズル7の位置から排出部12までの部分である。粉体にバインダーが添加され、駆動装置Mにより回転軸17を回転させて撹拌羽根9を回転させることで粉体とバインダーの混練が開始される。従って、バインダー添加ノズル7の位置の変化に伴い、当該供給搬送部11と混練部10の範囲は変化する。
【0027】
また、図1または図3(b)に示すように、排出部12の上流側に堰13を上下可動に設け、後述するように混練装置内の粉体の滞留量(占積率)を調整することができる。なお、滞留量(占積率)を一定に保つようにするための調整法は、堰13の高さを調整する方法のみならず、混練機6の長手方向の傾斜を調整する手法、排出部12の位置または開度を調整する方法等があり、適宜選定すれば良い。
堰13の高さを調整する方法は堰の高さを上下に調整して混練機内の粉体の滞留量を調整する方法であるが、予め粉体処理量と堰の高さと滞留量の関係を調査しておき、粉体処理量の増減に合わせて堰の高さを調整しても良いし、滞留量を重量やレベル計で測定しながら堰の高さを自動で調整しても良い。また、堰の高さの変更法は電動モータでも人力でも構わない。
【0028】
上記の混練機6の長手方向の傾斜を調整する手法は、混練機6における排出部12または粉体を供給する開口部15の付近を油圧装置等で上下させて、混練機6自体を傾斜させ、粉体の排出を促進ないし抑制して混練機内の粉体の滞留量を調整する方法であるが、予め粉体処理量と傾斜と滞留量の関係を調査しておき、粉体処理量の増減に合わせて傾斜を調整しても良いし、滞留量を重量やレベル計で測定しながら傾斜を自動で調整しても良い。
【0029】
上記の排出部12の位置または開度を調整する方法は、排出部の開口に、開口を覆うよう混練装置の長手方向或は周方向に移動する扉体(図示せず)を設け、この扉体を移動させることにより、排出部12の位置または開度を調整して混練機内の粉体の滞留量を調整する方法であるが、予め粉体処理量と当該位置または開度と滞留量の関係を調査しておき、粉体処理量の増減に合わせて当該位置または開度を調整しても良いし、滞留量を重量やレベル計で測定しながら当該位置または開度を調整しても良い。また、当該排出部の位置または開度の変更法は扉体を電動モータまたは人力で移動させることで可能である。
なお、占積率を一定に保つ際に、設備上多少の変動は生じるが、±5%の範囲内であれば許容できる。
【0030】
また、粉体の処理量が増減しても混練装置内の粉体の滞留量(占積率)が適正範囲内であれば、堰13等の占積率を調整する手段はなくても構わない。例えば、図1に示すように、撹拌羽根9の形状を扇形とし、シャフト17への設置向きを送り側と返し側が交互となるように設置した横型ニーダは、粉体の処理量が増減しても混練装置内の粉体の滞留量がほとんど変化しないため、占積率調整手段を必要とせず、設備費や混練安定性の観点から好ましい。
【0031】
また、堰13を設ける方法も構造が単純で設定が容易なため、設備費や混練安定性の観点から好ましい。そして、当該混練装置6にて、粉体とバインダーとを混練した後、混練物をロール塊成機14で塊成化する。なお、本発明において滞留量(占積率)は、混練装置の混練部の底部から、撹拌羽根高さまでの高さに相当する混練機(筒体)の容積に対する混練部の粉体の体積とする。すなわち、混練部の撹拌羽根が粉体により埋まっている断面積の割合にほぼ相当する。
【0032】
分級処理する粉体(例えば、石炭)の水分や粒度等が変動すると、粉体ホッパ1に供給される粉体の量も変動するため、粉体供給装置3から混練装置6に供給する粉体の供給量が増減する。他に、生産計画による生産量の変更や操業トラブル等でも、混練装置6に供給する粉体の供給量は増減する。このように粉体の供給量が増減すると、粉体とバインダーの混練状態が変化し、混練物の粒度分布や嵩密度等の性状が変動する。混練物の粒度分布や嵩密度が変動すると、混練物を塊成した際の塊成物の歩留や強度等の品質も変動する。
【0033】
その理由を図2(a)〜(d)を用いて説明する。(a)は粉体とバインダーを混練装置に供給し、混練を開始した混練初期の状態のイメージ図であり、バインダーの分散が不充分で「ダマ」が生成し塊成物の品質が悪化する。ここで「ダマ」とはバインダーの液滴粒の表面に粉体が付着した塊のことであり、「ダマ」が生成するということはバインダー不足の粉体部位やバインダー過多の粉体部位が生成することに相当し、混練物及び塊成物の品質が変動するとともに付着等の操業障害を招く。混練を継続すると撹拌羽根の回転による剪断作用でダマが解砕されて(b)の状態となるが、まだバインダーの分散が不充分のため、混練物の擬似粒子化が不充分であり、塊成物の品質も向上しない。更に混練を継続すると、バインダーが適度に分散され粉体同士がより接触して擬似粒子化した(c)の状態となり、混練物中の発塵性微粉が低減するとともに、混練物の嵩密度が増加する。また、当該混練物を塊成すると、同様な理由で塊成物の歩留や強度等の品質が向上する。更に混練を継続すると、擬似粒子が解砕された(d)の状態となり、混練物の嵩密度が低下するとともに、バインダーが粉体表面に薄く延ばされすぎて、塊成化した際のバインダー効果を発揮できず塊成物の品質が低下する。従って、粉体の供給量が増減しても、塊成物の歩留や強度、強いては混練物の粒度や嵩密度を安定化させるために、本発明等は鋭意検討し、以下の手法を見出した。
【0034】
混練物の粒度や嵩密度、塊成物の歩留や強度等の品質には、供給する粉体に対するバインダーの添加割合が最も影響するため、適正なバインダーの割合を設定した後は、粉体の供給量が増減しても、バインダーの添加割合は一定となるように制御する必要がある。その制御方法の一例を、図1に示す。本方法では、粉体供給装置3からの粉体供給量の信号をフィードフォワード制御装置8で受けてバインダー添加量を演算し、バインダー供給装置5に信号を送り、粉体の供給量が増減してもバインダー添加割合が一定となるように、バインダー添加量を調整する。なお、バインダーの添加量は、混練対象の粉体の性状、バインダーの種類、混練物の用途(成型方法)などにより異なるので、予め実験等により定めておくことは、言うまでもない。
【0035】
粉体の供給量が増減すると混練装置6内での粉体とバインダーの混練状態が変化し、混練物の粒度や嵩密度等の性状のみならず、塊成物の歩留や強度等の品質も変動する。
粉体の供給量が増減しても粉体とバインダーの混練状態を適正範囲にするには、従来技術である混練装置6内の滞留量(占積率)を変えて調整する第1の方法、従来技術の撹拌羽根の回転速度を調整する第2の方法、参考技術である撹拌羽根枚数を調整する第3の方法、及び、本発明であるバインダー添加位置を調整する第4の方法の4つの混練方法がある。
【0036】
従来技術である第1の混練方法は、たとえば、前述のように装置の傾斜を調整したり、装置内に操業中に高さ変更可能な堰を設けてその高さを調整したりして粉体の混練装置内の滞留量(占積率)を変えて調整するものであるが、粉体の供給量の増減範囲が、混練装置の適正な占積率の範囲を超えると適用できない。粉体の供給量が低減した際に混練装置6内の占積率を変えて適正範囲より低くすると、混練装置底面の影響が大きく撹拌羽根による混練作用を発揮できない上に、シャフトや撹拌羽根にバインダーが付着して操業を阻害する。また、粉体処理量が増加した際に混練装置6の占積率を変えて適正範囲より高くすると、撹拌した際に羽根高さを超える粉体が発生し撹拌羽根の混練作用を充分に発揮できないまま排出されるからである。
【0037】
従来技術である第2の混練方法の撹拌羽根の回転数を調整する方法は、インバータモータを設置すれば操業中に変更可能であるが、設備コストが高くなるのみならず、適正な混練状態を維持できなくなるおそれがある。撹拌羽根には大きさに応じた適正な回転数があり、回転数が高すぎると遠心力が過大となり撹拌羽根の混練作用を発揮できず、回転数が低すぎると撹拌羽根が粉体を持ち上げる混練作用が発揮できないからである。このように、適正な回転数は混練装置の大きさや形式によっても異なるので、適正な回転数は、予め実験によって決めることが好ましい。撹拌羽根の適正な回転数は撹拌羽根の形状にもよるが、一般的には撹拌羽根先端の遠心力が重力の1/4程度になる回転数が適正である。
参考技術である第3の混練方法の撹拌羽根枚数を調整する手法は、操業を停止し、混練装置6の撹拌羽根9を改造せねばならないため、連続操業をする際は適用できない。
【0038】
本発明である第4の混練方法は、粉体供給装置3からの粉体供給量の信号をフィードフォワード制御装置8で受けて適正な混練部10の長さを演算し、バインダー添加ノズル7に信号を送ってノズル位置を調整し、粉体の供給量に比例して混練部10の長さを調整する混練方法であり、粉体の供給量が増減しても粉体とバインダーの混練状態を一定に保てるため、混練物の粒度や嵩密度等の性状及び、塊成物の歩留や強度等の品質を安定化するための最適な混練方法である。
その際、第1の混練方法の問題のようにならないように、混練装置6内の占積率を一定に保つ必要がある。混練装置6内の占積率が適正範囲から外れてしまう場合は、例えば、混練装置の排出部12の上流側(混練部10と排出部12の境界近傍)に堰13をその高さを変更可能に設け、堰13の高さを調整し、占積率が一定になるように調整すれば良い。
【0039】
占積率が低すぎると撹拌羽根の混練作用が効かないと共にバインダーがシャフトや羽根に付着する弊害があり、逆に占積率が高すぎると混練されずに装置内を通過する粉体が生じる。
このようなことから、一定とする占積率は、装置の仕様等に応じて予め実験などにより定めれば良い。たとえば、本発明の実施例の装置では、80〜90%の占積率が適正な占積率であり、これを一定の占積率として調整した。
【0040】
ここで、本発明の混練方法はバインダーを添加しない状態で混練しても、擬似粒子化せずに粒度分布や嵩密度等の性状が変化しない乾燥した粉体を対象とする。当該乾燥した粉体は、粉体の種類にも依るが、一般的には水分割合が5質量%以下、好ましくは2質量%以下の粉体が望ましい。乾燥していない粉体に当該混練方法を適用すると、バインダー添加ノズル7より上流側でも混練されて擬似粒子化するため、粒度や嵩密度等の粉体性状が変化するからである。前述の乾燥した粉体では、バインダー添加ノズル7より上流側で混練されても粉体性状は変化せず、バインダーを添加して混練することで粉体にバインダーを分散させて擬似粒子化して粉体性状を変化させることがはじめて可能となる。
【0041】
バインダー添加ノズル7の位置を調整する手段は、フレキシブルホースや伸縮管等を使用してノズルを移動させても構わないし、あらかじめ混練装置の長手方向に位置の異なる複数ノズルを設置してバルブ等で実際にバインダーを添加するノズルの位置を選択しても構わない。但し、複数ノズルの長手方向における段数は、粉体の供給量の増減代によるが、2,3段では少なすぎるため、4段以上が必要で、バインダー添加割合を一定化して混練状態をより適正に保つには5段以上が好ましい。また、多すぎる段数は設備コスト、制御コストが増大するため、10段以下が好ましい。混練装置6が天井のない開放系であれば前者(移動ノズル)が、天井のある密閉系であれば後者(多段ノズル)の手法が有効である。本発明の粉体の混練方法を適用することで、粉体の供給量が増減しても、粉体とバインダーの混練状態を適正範囲に保ち、混練物の粒度や嵩密度等の性状及び、塊成物の歩留や強度等の品質を安定化させることが可能となる。
【0042】
なお、バインダーの添加位置は、占積率を一定の範囲とする中で、予め適正な混練状況が得られる場合の供給量と混練部の長さ(混練装置のバインダー添加ノズル位置から排出部までの長さ)との関係を求めておき、混練部の長さが供給量に応じた長さとなるように、混練装置の長手方向に位置の異なるバインダー添加ノズルを選択するか、長手方向に移動可能なバインダー添加ノズルを移動させて制御する。
通常、平均的な供給量に対してバインダー添加ノズルの標準位置を設定しておき、平均的な供給量に対する各時点での供給量の増減に比例して、バインダー添加ノズルの標準位置からシフト量を求め、これに応じてバインダー添加ノズルの位置を選択ないしは移動させて制御することができる。
【0043】
また、粉体の供給量が増減した際に、塊成物の品質を安定化させるには、ロール塊成機14による塊成物の製造方法も調整することが必要である。その手法は特許文献3に記載しているが、図1を参照して簡単に説明する。
油圧シリンダー(図示せず)により所定の圧力で押圧され、前記所定の圧力が保たれるようにロール間ギャップが連続的に変動し、且つ、回転数を調整可能な一対の回転ロール20と、前記一対の回転ロールの上方に設置され、スクリューフィーダー18及びそのケーシング19からなる粉体供給装置とを備えたロール塊成機14を使用する。前記回転ロールの表面には、ロール軸に直角な方向の断面形状がV字状または波状で、ロール軸方向にほぼ平行に伸びる溝状の凹凸が形成されており、前記スクリューフィーダー18の回転により前記一対の回転ロール20上に粉体を供給且つ押圧して、前記回転ロールの回転と共に粉体を板状に塊成化する。その際、前記一対の回転ロール間のギャップ21が一定になるように、前記スクリューフィーダーの回転数を制御するとともに、粉体の処理量の増減の割合に比例して、前記回転ロール及びまたは前記スクリューフィーダーの回転数を増減させる。本手法により、粉体の供給量が増減しても、塊成物の厚みを一定に保つことが可能となり、塊成物の歩留や強度等の品質を安定化させることが可能となる。
【0044】
本発明の粉体の混練方法および粉体塊成方法は、コークス事前処理用石炭を流動床乾燥分級機にて微粉と粗粒に分級した微粉に対して有効で、その中でも特に、本発明者等のなした特許文献3に記載のロール成形前の混錬とその後の塊成に対して有効であるものの、これに限定されることはなく、様々な乾燥した粉体をバインダーで混練および塊成する場合に適用可能である。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
コークス事前処理工程における微粉炭の塊成化試験の実施例を以下に示す。図1に示すフローと同様に、粉体とバインダーを混練装置で混練した後、ロール塊成機で塊成化する試験を実施した。
粉体は流動床乾燥分級機で乾燥および分級して回収した微粉炭であり、微粉炭中の0.3mm以下の粒子の質量割合が70〜90%の粉体を使用した。微粉炭の水分は1.5質量%の乾燥した粉体を使用した。また、コークス事前処理工程に流動床乾燥分級機を使用した実機と温度条件を合わせるために、微粉炭を70〜80℃に加熱して使用した。バインダーは室炉式コークス炉から副産物として発生するタールを使用したが、コスト低減のため水分や固形分を含むタール滓と精製前の粗タールを質量比で50:50に混合したものを使用した。尚、当該タール滓とはコークス炉から発生したタールを静置分離した際の沈殿物であり、水分や固形分を多量に含むため有効利用することが難しい。当該タール滓の成分は質量割合で水分5〜20%、固形分5〜20%、タール分60〜90%であった。当該粗タールとはコークス炉から発生したタールを静置分離法でタール分として分離したものであり、精製前段階のため水分や固形分を若干含んでおり安価である。当該粗タールの成分は質量割合で水分0〜5%、固形分0〜2%、タール分94〜99%であった。また、バインダーの添加割合は微粉炭に対し、外数で8質量%一定となるように微粉炭供給量に合わせて調整し、バインダーの温度も70〜80℃に加熱して使用した。
【0046】
この試験に使用した混練装置の模式図を図3(a)〜(c)に示す。(a)は混練装置の長手方向に垂直な断面を、(b)は側面の断面を、(c)は平面の断面を示した図である。混練装置の形式は撹拌羽根9の形状を扇形とし、シャフト(回転軸)17への設置向きを送り側と返し側が交互となるように設置した2軸の横型ニーダであり、回転軸17の直径は20mm、撹拌羽根9の直径は120mm、撹拌羽根の枚数は9枚、撹拌羽根の間隔は60mm、撹拌羽根の形状は140°の扇型、回転数は60rpm一定とし、2軸の回転方向は図3の(a)に示すように互いに反対向きであり、筒体は天井のない開放系である。また、バインダー添加ノズル7は単管を1本使用し、混練装置の幅方向(長手方向と直交する方向)の中央部に設置し、レールを設けて(図示せず)長手方向に手動で任意に動かせる構造とした。混練装置への粉体供給量を2〜20kg/分の範囲で2kg/分づつ変化させ、粉体供給量に応じてバインダー添加ノズルの位置を10段階に調整して試験を行った。具体的には、粉体供給量が10kg/分の時の混練部の長さを基準に、混練部の長さが粉体供給量に比例するようにバインダー添加ノズルの位置を上流側あるいは下流側に調整した。また、混練装置内の粉体の滞留量(占積率)を80〜90%に調整するために混練装置内に堰13を設けたが、本装置においては、当該堰13を使用せずとも占積率は80〜90%と安定していた。
【0047】
この試験に使用したロール塊成機のロールは、表面にV字状断面を有しロール軸方向に平行に延びる溝が、周方向に多数形成されたものであり、ロール直径は224mm、ロール圧下力は1.5t/cm一定のロール塊成機を使用し、ロール間ギャップが3.5±0.1mmとなるように塊成機のスクリューフィーダの回転数を調整した。また、前述のように粉体の供給量の増減の割合に比例して、回転ロール及びスクリューフィーダーの回転数を増減させて、塊成物を製造した。
前記条件で、粉体とバインダーを混練装置に供給して混練した後、ロール塊成機で塊成化し、混練物の粒度と嵩密度及び、塊成物の歩留と落下強度を指標として評価した。
なお、嵩密度は、事前にすり切り一杯の容積と空質量を測定した1Lビーカーに混練物をシャベルで軽く満杯以上に装入し、上部を棒ですり切り一杯に均して質量を測定し、嵩密度を計算して求めた。また、落下強度は、1mm以上(網目1mmの篩上以上)の塊成物1kg程度を秤量し、袋に入れ、実機搬送時の落下条件(落差、床面、順番、回数)に合わせてオフラインで落下させた後、袋内の0.3mm以上の粒子を秤量し、その割合(質量比)を算出して求めた。
【0048】
なお、混練物の粒度は混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合とし、発塵防止の観点から50%以下にすることを目標とした。混練物の嵩密度とは、微粉炭とバインダーを混練装置で混練した混練物の単位容積当たりの質量であり、高い程、望ましい。塊成物の歩留は塊成物中の1mm以上の塊成物の質量割合であり、高い程、望ましい。塊成物の落下強度とは実機搬送時の落下条件を模擬した落下試験時の落下後の0.3mm以上の粒子の質量割合であり、発塵及びキャリーオーバー防止の観点から80%以上を目標とした。
【0049】
図4に混練物の嵩密度と混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を評価した結果を、図5に塊成物の落下強度と歩留を評価した結果を示す。図中横軸の粉体供給量比とは粉体供給量10kg/分を基準の1とし、2kg/分づつ供給量を変化させた時の粉体供給量の増減の比率を表す。粉体供給量比が0.2〜2(2〜20kg/分に相当)の10倍の範囲で変化しても、バインダー添加位置を調整することで、バインダーを適度に分散させて擬似粒子化し、混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を目標の50%以下にすると共に、混練物の嵩密度を0.7kg/L以上に確保することが可能となった。また、更に塊成化した際も、粉体供給量比が0.2〜2の範囲で変化しても、バインダー添加位置を調整することで、塊成物の落下強度を目標の80%以上とすると共に、塊成物の歩留も90%以上に確保することが可能となった。
なお、この試験では粉体供給量比が0.2〜2の範囲であったが、バインダーの添加割合を一定に保ち、混練装置内の粉体の滞留量を一定に保ち、攪拌羽根の回転数を一定に保ち、粉体の供給量の増減に応じてバインダー添加位置を調整する本手法を用いれば、粉体供給量比が0.2〜2の範囲を越えても、つまり、粉体処理量を10倍以上に増減しても、今回の試験と同様な結果になると推定されるため、混練物及び塊成物の性状を目標以上に安定化させ、搬送や装入時の発塵やキャリーオーバーを抑制することができると推定される。
【0050】
(実施例2)
実施例1と同じ原料を使用し、バインダー添加ノズルの位置以外は実施例1と同じ試験装置を使用し、実施例1と同様な試験を行った。バインダー添加ノズルの位置は実施例1の1つ飛ばしの5段階に調整した。
図6に混練物の嵩密度と混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を評価した結果を、図7に塊成物の落下強度と歩留を評価した結果を示す。粉体供給量比が0.2〜2の10倍の範囲で変化しても、バインダー添加位置を調整することで、バインダーを適度に分散させて擬似粒子化し、混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を目標の50%以下にすると共に、混練物の嵩密度を0.7kg/L以上に確保することが可能となった。また、更に塊成化した際も、粉体供給量比が0.2〜2の範囲で変化しても、バインダー添加位置を調整することで、塊成物の落下強度を目標の80%以上とすると共に、塊成物の歩留も90%以上に確保することが可能となった。
【0051】
(実施例3)
実施例1と同じ原料を使用し、混練装置以外は実施例1と同じ試験装置を使用し、実施例1と同様な試験を行った。混練装置は実施例1の横型ニーダの撹拌羽根9をパドルに改造したパドルミキサーを使用した。パドルの長さは50mm、幅は15mm、枚数は18枚であり、混練装置内の粉体の占積率が80〜90%となるように混練装置内の堰13の高さを調整し、試験を行った。
図8に混練物の嵩密度と混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を評価した結果を、図9に塊成物の落下強度と歩留を評価した結果を示す。粉体供給量比が0.2〜2の10倍の範囲で変化しても、バインダー添加位置を調整することで、バインダーを適度に分散させて擬似粒子化し、混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を目標の50%以下にすると共に、混練物の嵩密度を0.7kg/L以上に確保することが可能となった。また、更に塊成化した際も、粉体供給量比が0.2〜2の範囲で変化しても、バインダー添加位置を調整することで、塊成物の落下強度を目標の80%以上とすると共に、塊成物の歩留も90%以上に確保することが可能となった。
なお、この試験では粉体供給量比が0.2〜2の範囲であったが、バインダーの添加割合を一定に保ち、混練装置内の粉体の滞留量を一定に保ち、攪拌羽根の回転数を一定に保ち、粉体の供給量の増減に応じてバインダー添加位置を調整する本手法を用いれば、粉体供給量比が0.2〜2の範囲を越えても、つまり、粉体処理量を10倍以上に増減しても、今回の試験と同様な結果になると推定されるため、混練物及び塊成物の性状を目標以上に安定化させ、搬送や装入時の発塵やキャリーオーバーを抑制することができると推定される。
【0052】
(比較例1)
実施例1と同じ原料及び試験装置を使用し、混練装置のバインダー添加ノズルの位置を撹拌羽根を設置した部分の中央(混練部の長手方向中央部)に固定して試験を行った。その他の条件は実施例1と同様にした。
図10に混練物の嵩密度と混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を評価した結果を、図11に塊成物の落下強度と歩留を評価した結果を示す。粉体供給量比が0.2〜2の範囲で変化した際に、バインダー添加位置を調整しなければ、粉体供給量比が0.8〜1.6の範囲を超えると、混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を目標の50%以下にできず、塊成物の落下強度も目標の80%以上にできないと共に、混練物の嵩密度や塊成物の歩留も低下した。
逆に言うと、ノズル位置を固定した場合、混練物及び塊成物の性状を目標以上に安定化できる粉体供給量比の範囲は0.8〜1.6程度であった。言い換えると、粉体供給量が2倍以上に大きく増減する場合、バインダー添加位置を調整する必要があると推定される。
【0053】
(比較例2)
次に、実施例3と同じ原料及び試験装置を使用し、堰の高さを調整して粉体の供給量に比例させて、滞留量(占積率)を強制的に変更し、その他の条件は実施例1と同様にして試験を行った。その結果、占積率が50%以下になると、シャフトや撹拌羽根にバインダーと粉体が付着して、粉体の流れを阻害し、混練装置の運転ができなくなり、試験を中止せざるを得なくなった。
【0054】
(比較例3)
更に、実施例3と同じ原料及び試験装置を使用し、特許文献2に開示されている手法に倣い、混練機内の微粉の移動速度を調整することで混練装置内の粉体の占積率が80〜90%の範囲で一定となるようにパドルの回転数を調整し、実施例3と同様な試験を行った。その際、混練装置内の堰を取り外して試験を行った。なお、特許文献2に開示されている手法では100℃以上の粉体を処理するので、水分を含む精製前の粗タールやタール滓は沸騰するため、バインダーとしては使用できないと思われたが、この試験では70〜80℃の粉体を処理するため、安価な精製前の粗タールとタール滓の混合物をバインダーとして使用した。
図12に混練物の嵩密度と混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を評価した結果を、図13に塊成物の落下強度と歩留を評価した結果を示す。粉体供給量比が0.4〜0.8以外の範囲では、混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を目標の50%以下にできず、塊成物の落下強度も目標の80%以上にできないと共に、混練物の嵩密度や塊成物の歩留も低下した。粉体の供給量が今回のように大きく増減した場合、混練装置内の占積率を微粉の移動速度(パドルの回転数)で調整しても、適正な混練状態を確保できない場合があるためと推定される。
【符号の説明】
【0055】
1 粉体ホッパ
2、2’ レベル検知器
3 粉体供給装置(ロータリ・バルブ)
4 バインダーホッパ
5 バインダー供給装置(ポンプ)
6 混練装置(混練機)
6a 筒体
7 バインダー添加ノズル
8 フィードフォワード制御装置
9 撹拌羽根
10 混練部
11 供給部
12 排出部
13 堰
14 ロール塊成機
15 開口部
16 スクリュー
17 回転軸
18 スクリュ−フイーダー
19 ケーシング
20 ロール
21 ロール間ギャップ
M 駆動装置(モーター)
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥した粉体とバインダーとを混練する横型ニーダやパドルミキサ等の横長型の混練装置を用いた混練方法、混錬装置、および混錬後の粉体を塊成する方法に関するものである。特には、コークス事前処理用石炭を流動床乾燥分級機で乾燥した際に生じる微粉炭を、ロール塊成機に投入して横溝状や波板状等の板状に塊成化する前段階の、横型ニーダやパドルミキサ等の横長型の混練装置を用いた微粉炭とバインダーの混練方法および装置、並びに混錬後の粉体を塊成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水分を含む粉体を1000℃等の高温で熱処理する場合、熱処理時の熱量を低減するためには、事前に粉体を乾燥することが有効ある。しかし、水分を含む粉体の乾燥が進むと、搬送の際に発塵するという問題が発生する傾向がある。このような乾燥処理に、室炉式コークス炉に装入する石炭原料の事前処理方法がある。コークス事前処理用の石炭を乾燥すると、コークス化する際の乾留熱量を低減できるだけでなく、石炭のコークス炉への装入密度が増加してコークス品質や生産量を増加させることができる。
粘結性の低い非微粘結炭の配合割合を増加しても、コークス品質を高炉操業に必要なレベルまで向上させることができれば、コークスの原料コストを低減でき、安価なコークスを製造できる。世界的に良質な粘結炭は不足傾向にあることからも、非微粘結炭の配合割合を高めることは非常に重要である。これらの効果を狙って、コークス原料となる石炭を事前処理にて乾燥させることでコークス炉装入時の嵩密度を増加させて、コークス品質及び生産量を増加することが可能な調湿炭装入法が多くのコークス炉で実施されている。
しかし、石炭の乾燥度を高めていくと、石炭をコークス炉に搬送する際や装入する際に、発塵やキャリーオーバーが激しくなるという問題が発生する。これは乾燥により擬似粒子が崩壊し、発塵し易い微粉が増加するためである。このため、調湿炭装入法では、石炭水分を5質量%(水分質量/石炭質量-wet ×100)程度までしか乾燥できない。
そこで、石炭乾燥時に問題となる発塵性微粉を事前に分離して、横長型の混練装置内で当該発塵性微粉にバインダーを添加して混練して擬似粒子化させたり、更に混練した物(以下、混練物と記す)をロール成型機でブリケットやポケット型等に成型、あるいは、ロール塊成機で横溝状や波板状等の板状に塊成化して、分級後に残った粗粒石炭と混合してコークス炉に装入することで、発塵やキャリーオーバーを抑制できる石炭事前処理方法が提案されている。ここで、発塵性微粉を分離する手段としては振動篩等があるが、流動床乾燥分級機が一般的である。当該分級機とは、流動床に連続的にコークス用石炭を供給し、下方から100〜300℃程度の熱風を供給して石炭を乾燥しながら、発塵性微粉を分級して分離するものであり、分級する微粉の粒径は流動床上部の分級部のガス流速で調整することが可能である。
【0003】
これらのうち、特にロール塊成機で横溝状や波板状の板状に塊成する手法は、発塵性の低減に加えて、更に塊成物の偏析も抑制し、コークス炉内での装入密度を適正な範囲に制御することが可能であることを本発明者等は見出し、提案している(特許文献4)。
【0004】
コークス用の石炭を流動床乾燥分級機等で分級する場合、石炭水分や石炭粒度等で、分離する微粉の量が変動する。このため、前述の石炭事前処理方法において、微粉の処理量が増減すると、バインダー添加割合を一定にしても、微粉とバインダーの混練状態が変化し、さまざまな問題が発生していた。
例えば、微粉の処理量が増加した場合、混練物の微粉へのバインダーの分散が不充分となり、部分的にバインダー過多となった混練物が搬送ラインに付着して操業の障害となり、バインダー不足となった混練物は擬似粒子化が不充分で発塵していた。その混練物を塊成しても、バインダー過多となった混練物では塊成時に混練物がホッパやロールに付着して操業の障害となり、バインダー不足となった混練物では塊成物の強度や歩留が低下し、コークス炉への搬送過程で塊成物が崩壊し、発塵やキャリーオーバーが激しくなるという課題があった。
【0005】
また、微粉の処理量が減少した場合(バインダー量は変わらず)、混練物の微粉へのバインダーの分散が過剰となり、擬似粒子が崩壊して発塵していた。その混練物を塊成しても混練物の嵩密度が低下しているため、塊成物が緻密にならず強度や歩留が低下し、コークス炉への搬送過程で塊成物が崩壊し、発塵やキャリーオーバーが増加するという課題があった。従って、微粉の処理量が増減しても、混練物の擬似粒子化(以降、粒度で評価する)や嵩密度等の性状を安定化させるための対策が必要であった。
【0006】
例えば、特許文献1には、混練装置から排出された混練物の嵩密度を測定して、ファジィ推論にて混練装置の滞留量(占積率)を増減させて調整し、混練物の性状を安定化する手法が開示されている。
また、微粉炭を混錬してコークス炉装入用の疑似造粒物を製造する方法として、特許文献2には、パドルが内蔵された横型の混練装置を用いて、粉体の温度(70、150℃)と処理量(20、40t/Hr)に応じて混練装置のバインダー添加位置を3段階(領域I、II、III )で断続的に調整する擬似造粒物の安定化製造方法が開示されている。具体的には、微粉炭の投入量が20t/hで一定の場合、温度が70→150℃に高くなるとバインダーの投入位置を領域Iから下流側の領域III に移動し、温度が150℃一定の場合、微粉炭の投入量が20→40t/hに増加するとバインダーの投入位置を領域III から上流側の領域IIに移動する手法である。
なお、粉体の供給量が増減した場合の塊成方法については、供給量に応じて、ロール押圧力を調整する手法が考えられるが、塊成機の運転が難しい上に設備費が増加してしまう。従って、供給量が増減しても、ロール押圧力は一定とし、供給量の増減割合に比例してロール回転数を調整し、ロール間ギャップが一定になるようにスクリューフィーダーの回転数を制御する手法が有効であることを本発明者等は見出し、提案している(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−47266号公報
【特許文献2】特開2007−297537号公報
【特許文献3】特開2008−132537号公報
【特許文献4】特開2007−284557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1に記載の方法を、バインダーを用いて粉体を混練する方法に適用した場合には、処理量が大きく増減するケースには適用できないという問題を有していた。すなわち、粉体とバインダーを撹拌羽根で混練する通常の混練装置には、適正な滞留量(占積率)があり、占積率が低すぎると、混練装置底面の影響が大きく撹拌羽根の混練作用を発揮できない上に、バインダーがシャフトや撹拌羽根に付着して混練装置の運転を阻害してしまい、逆に、占積率が高すぎると、撹拌した際に羽根高さを超える粉体が発生し撹拌羽根の混練作用を充分に発揮できないまま排出されてしまうという問題を有しているからである。従って、バインダーを用いて粉体を混練する方法において、占積率を変化させることにより混練物の性状を一定に保つことには限界があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の方法においては、粉体処理量が断続的に変化した場合に、断続的にバインダーの投入位置を変更しており、増減する粉体の処理量が、断続的な設定値から外れる場合は想定していない。しかしながら、コークス用の原料石炭を流動床乾燥分級機で分級する実際の操業における微粉の発生量は、原料石炭の流動床乾燥分級機への投入量や水分が大きく増減することがあるため、大きく変動することがあり、微粉の混練処理量は2、3段階の変動には止まらず、場合によっては定常操業処理量の1/数〜数倍にも変動することがあった。そのため、特許文献2に記載の方法では、増減する粉体の処理量が設定値から外れた場合に、混練物の粒度や嵩密度等の性状が不安定になるという問題を有していた。その理由は、粉体の処理量が設定値から外れて変動した場合には、バインダー添加割合が所定値からずれてしまうからである。バインダー添加割合は混練及び塊成に大きく影響するため、粉体の処理量が増減してもバインダー添加割合は一定となるよう調整することが重要であるが、特許文献2に記載の方法では、処理量の増減が2、3段階の想定される設定値を外れると、混練物の性状が不安定化する問題を抱えていた。
【0010】
また、上述のように混練機内の占積率を一定に保つことが混練物の性状の安定化には大事であるが、特許文献2には、微粉炭の処理量が増加した場合に、占積率(微粉炭レベル)を一定に保つため、混練機内の微粉炭の移動速度を上昇させることが開示されている。
特許文献2には、微粉炭の移動速度の調整手段は具体的には記載されていないが、パドルを内蔵する混練装置において移動速度を変更するには、パドルの回転数を変更する事が一般的であると考えられる。
しかしながら、発明者等が検討した結果、パドルの回転数を変更するとパドルの遠心力と重力のバランスが崩れ、適正な混練状態を維持できなくなることが判った。パドルの回転数が高すぎると遠心力が過大となりパドルの混練作用を発揮できず、回転数が低すぎるとパドルが粉体を持ち上げる混練作用が発揮できないからと思われる。
【0011】
更にまた、特許文献2に開示されている手法は、粉体の温度が100℃以上の場合もあるため、水分や100℃程度で蒸発する軽質な揮発分を含む安価なタール滓や精製前の粗タールをバインダーとして使用することは想定していないと考えられる。なぜならば、100℃以上の粉体を混練または塊成しても、水分や軽質な揮発分が蒸発し、擬似粒子が崩壊するのみならず、搬送設備や集塵設備に水分や揮発分が付着して操業障害となるからである。
【0012】
本発明は、前述の従来技術の問題点を解決し、流動床乾燥分級機によりコークス事前処理用石炭が乾燥及び分級された際に発生する微粉炭を、ロール塊成機に投入して横溝状や波板状等の板状に塊成化する前段階の、内部に攪拌羽根を備えた横長型の混練装置を用いた微粉炭とバインダーの混練において、処理量が増減しても、混練物の粒度や嵩密度等の性状を安定化させ、搬送や装入時の発塵やキャリーオーバーを抑制することができる粉体とバインダーの混練方法および混練装置、並びに混錬した粉体を塊成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、鋭意検討の結果、流動床乾燥分級機によりコークス事前処理用石炭が乾燥及び分級された際に発生する微粉炭を、内部に攪拌羽根を備えた横型の混練装置を用いてバインダーと混練する際に、処理量(微粉炭の混練装置への投入流量)が増減しても、(A)バインダーの添加割合を一定に保つこと、(B)混練装置内の滞留量(占積率)を一定に保つこと、(C)攪拌羽根の回転数を一定に保つこと、(D)処理量の増減に応じてバインダー添加位置を調整すること、の(A)〜(D)の全てを満たすことで、混練物の粒度や嵩密度等の性状を安定化させ、搬送や装入時の発塵やキャリーオーバーを抑制できることを見出して、発明を為すに至った。
また、上記(A)〜(C)を満たすことでタール滓や精製前の粗タールをバインダーとして使用しても、問題無く使用できることが判った。
【0014】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)コークス事前処理用石炭を流動床乾燥分級機にて微粉と粗粒に分級した微粉炭を、撹拌羽根を内蔵する横長型の混練装置に供給すると共に、当該混練装置にバインダーを添加して、両者を混練する粉体混練方法であって、
前記混練装置に内蔵される撹拌羽根の回転数を一定に保つと共に、前記混練装置内の混練物の滞留量が一定になるように制御し、
且つ、前記バインダーの添加位置を前記混練装置の長手方向に可変とし、前記粉体の供給量が増減した際に、前記微粉炭に対する前記バインダーの添加割合が、前記粉体の供給量増減の前後で一定となるようにバインダーの添加量を調整すると共に、前記バインダーの添加位置を、前記粉体の供給量が増加すれば前記混練装置の上流側に、前記粉体の供給量が減少すれば前記混練装置の下流側に、前記粉体の供給量の増減割合に比例して変更することを特徴とする粉体混練方法。
(2)前記バインダーは、水分及び固形分を含むタール精製前の粗タールを含むことを特徴とする(1)記載の粉体混練方法。
(3)前記バインダーの添加位置を前記混練装置の長手方向に可変とする手段が、バインダー添加ノズルを前記混練装置の長手方向に移動させる機構を設けたことによるものであることを特徴とする(1)又は(2)記載の粉体混練方法。
(4)前記バインダーの添加位置を前記混練装置の長手方向に可変とする手段が、バインダー添加ノズルを前記混練装置の長手方向に4段以上位置を変えて設け、バインダーを添加する前記バインダー添加ノズルを切り替えることによるものであることを特徴とする(1)又は(2)記載の粉体混練方法。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の粉体混練方法にて混練した粉体を、ロール塊成機に投入して板状に塊成することを特徴とする粉体塊成方法。
【0015】
(6)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の粉体混練方法に使用する粉体混練装置であって、上方が開放または密閉され、水平方向に延びる筒体と、該筒体の上流側に設置された粉体供給部と、筒体の下流側に設置された粉体排出部と、前記粉体供給部と前記粉体排出部の間であって筒体内を水平方向に伸びる回転軸に取り付けられた撹拌羽根を備えた混練部と、撹拌羽根が取り付けられた回転軸を回転させる駆動装置と、前記混練部にバインダーを供給するバインダー添加ノズルと、前記粉体供給部に粉体を供給する粉体供給装置と、バインダー添加ノズルにバインダーを供給するバインダー供給装置とを備え、且つ、粉体の供給量が増減した際に、前記混練装置内の粉体の滞留量が一定となるようにする制御手段と、前記粉体に対する前記バインダーの添加割合が、前記粉体の供給量増減の前後で一定となるようにバインダーの添加量を調整するフィードフォワード制御装置とを備え、且つ、前記バインダー添加ノズルは、前記混練装置の長手方向に複数設けられてバインダーを投入するノズルが切り替えられる機構を有するか、又は、前記混練装置の長手方向に移動可能となる機構を有するものであり、前記粉体の供給量増減の際に、前記粉体の供給量が増加すれば前記混練装置の上流側に、前記粉体の供給量が減少すれば前記混練装置の下流側に、前記粉体の供給量の増減割合に比例して前記バインダー添加ノズルの長手方向の添加位置が変更できることを特徴とする粉体混練装置。
なお、本発明に用いる横長型の混練装置とは、重力とは垂直な方向に設置したシャフト(回転軸)に撹拌羽根を備え、当該シャフトを回転させて粉体とバインダーとを混練することを特徴とする横型ニーダやパドルミキサ等の横長型の混練装置であり、長手方向とは、シャフトの延在する方向をいう。また、上流側とは粉体を供給する側を、下流側とは混練物を排出する側をそれぞれいうものとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、流動床乾燥分級機によりコークス事前処理用石炭が乾燥及び分級された際に発生する微粉炭を、ロール塊成機に投入して横溝状や波板状等の板状に塊成化する前段階の、内部に攪拌羽根を備えた横長型の混練装置を用いた微粉炭とバインダーの混練において、粉体(微粉炭)の処理量が増減しても、混練物の粒度や嵩密度等の性状を安定化させることが可能となり、後工程への搬送や装入時の発塵やキャリーオーバーを抑制することが可能となる。これにより、室炉式コークス炉への搬送や装入時の発塵やキャリーオーバーを抑制しつつ、コークス炉への石炭の装入密度を増加してコークス品質の向上や生産量を増加させることが期待できる。
また、当該混練物をロール塊成機で板状に塊成することで、発塵性微粉の発生をより低減できるため、発塵やキャリーオーバーの更なる低減が可能となるのみならず、石炭密度を更に増加できるため、コークス品質や生産量を更に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る粉体混練方法を用いた塊成物の製造方法のフローの1例を示した図である。
【図2】粉体とバインダーの混練状態のイメージを示した図であり、(a)は混練初期、(b)は混練不足、(c)は最適混練、(d)は混練過多の状態をそれぞれ示す。
【図3】本発明の粉体混練装置を示した模式図であり、(a)は混練装置の長手方向に垂直な断面図、(b)は側面断面図、(c)は平面断面図をそれぞれ示す。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る粉体供給量に対する混練物の嵩密度と混練物の0.3mm以下の粒子割合との関係を示した図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係る粉体供給量に対する塊成物の落下強度と歩留との関係を示した図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る粉体供給量に対する混練物の嵩密度と混練物の0.3mm以下の粒子割合との関係を示した図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る粉体供給量に対する塊成物の落下強度と歩留との関係を示した図である。
【図8】本発明の第三の実施形態に係る粉体供給量比に対する混練物の嵩密度と混練物の0.3mm以下の粒子割合との関係を示した図である。
【図9】本発明の第三の実施形態に係る粉体供給量比に対する塊成物の落下強度と歩留を示した図である。
【図10】比較例1に係る粉体供給量比に対する混練物の嵩密度と混練物の0.3mm以下の粒子割合との関係を示した図である。
【図11】比較例1に係る粉体供給量比に対する塊成物の落下強度と歩留との関係を示した図である。
【図12】比較例3に係る粉体供給量比に対する混練物の嵩密度と混練物の0.3mm以下の粒子割合との関係を示した図である。
【図13】比較例3に係る粉体供給量比に対する塊成物の落下強度と歩留との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係る流動床乾燥分級機処理後の微粉炭(以降、「粉体」とも言う)の混練および塊成化フローを示した図である。粉体を流動床乾燥分級機や振動篩等にて微粉と粗粒に分級した後、分級された微粉の粉体は、粉体ホッパ1に供給され、レベル検知器2で粉体ホッパ内の粉体量を管理しながら、粉体供給装置3で所定量の粉体が混練装置6の粉体供給部15を介して混練装置に供給される。
【0019】
レベル検知器2の種類はマイクロ波レベル計や静電容量式レベル計等があるが、粉体性状や設備費等を勘案し、適宜選定すれば良い。また、粉体の嵩密度の変動が大きければレベル検知器ではなく、ロードセル等で粉体ホッパ1の質量を測定し、ホッパ内の粉体量を管理する方が望ましい。
【0020】
粉体供給装置3はロータリ・バルブが安価で一般的であるが、スクリュー・コンベアやテーブル・フィーダ等の他の供給装置を使用しても構わない。
【0021】
粉体を擬似粒子化させると共に塊成物の歩留や強度等の品質を向上させるためのバインダーは、バインダーホッパ4に供給され、レベル検知器2’でバインダーホッパ内のバインダー量を管理しながら、バインダー供給装置5で所定量のバインダーをバインダー添加ノズル7を介して混練装置6に供給される。バインダーとしてはコークス品質向上、コークス製造量増加及び副産物処理の観点から、タールを使用することが好ましいが、これに限る必要はなく、適宜選定すれば良い。また、タールを使用する場合、水分及び固形分を含むタール滓やタール精製前の粗タールを使用する事が副産物処理及びコスト低減の観点から好ましい。
【0022】
レベル検知器2’の種類はマイクロ波レベル計やフロー式レベル計等があるが、バインダー性状や設備費等を勘案し、適宜選定すれば良い。また、バインダーの嵩密度の変動が大きければレベル検知器ではなく、ロードセル等でバインダーホッパ4の質量を測定し、ホッパ内のバインダー量を管理する方が望ましい。
【0023】
バインダー供給装置5は、バインダーが粉体の場合は前述の粉体供給装置3と同じで良い。バインダーが液体の場合はポンプが安価で一般的であるが、流量調節弁等を使用した他の供給法でも構わない。当該バインダーはバインダー添加ノズル7を用いて混練装置6に供給される。バインダー添加ノズル7は単管でも良いが、バインダーが液体の場合は、粉体に液体バインダーをより均一に分散させるために、噴霧することが望ましい。その噴霧方法は液体バインダーを加圧して直接ノズルで噴霧しても、2流体ノズルで気体と合わせて噴霧しても構わず、液体バインダーの噴霧性等により適宜選定すれば良い。
【0024】
また、バインダー供給ノズルは混練装置6の長手方向におけるバインダー添加位置を調整できる構造とする。具体的には、混練装置6の筒体6aが天井のない開放系であれば、バインダー配管をフレキシブルホース等の可動し得る配管とし、バインダー添加ノズル7を混練装置の長手方向にレールを設け台車などで移動できる構造とすれば良い。バインダー添加ノズルの位置を調整するための台車を動かす手段は、手動で調整しても、油圧シリンダー等で自動で調整しても、どちらでも構わない。混練装置6の筒体6aが天井のある密閉系であれば、バインダー添加ノズル7を混練装置の長手方向の4段以上の異なる位置に設置して、条件に応じて使用するノズルを選択し、バルブを開閉することで使用するノズルを切り替えて調整すれば良い。一般的な横長型混練機の長手サイズからすると、バインダーの均一分散のためには5段以上とすることがより好ましい。
【0025】
本発明に用いるバインダーと粉体の混練装置6は、回分式のものでも連続式のものでも構わないが、連続的に粉体を処理する場合には、連続式の方が望ましい。連続式の混練装置にも、パドルミキサやピンミキサ等の様々な形式があるが、一般的に横型ニーダと呼ばれる重力とは垂直な方向に設置したシャフト17に撹拌羽根9を備えた横長型の混練装置が投資対効果の観点から望ましい。撹拌羽根9にも、棒状、羽根状、スクリュー状等、様々な形式があるが、それぞれの用途や粉体性状を勘案し、混練試験等を行い、適宜選定すれば良い。
【0026】
当該混練装置は長手方向に、供給搬送部11、混練部10、排出部12に分類される。当該供給搬送部11は粉体供給装置3から排出される粉体を混練装置に供給するための開口部15と、粉体を混練部10に搬送するためのスクリュー16を備えている。当該排出部12は混練した粉体を混練装置から排出するための開口部15とスクリュー16を備えている。当該混練部10は、粉体とバインダーを混練するための撹拌羽根9を備え、バインダー添加ノズル7の位置から排出部12までの部分である。粉体にバインダーが添加され、駆動装置Mにより回転軸17を回転させて撹拌羽根9を回転させることで粉体とバインダーの混練が開始される。従って、バインダー添加ノズル7の位置の変化に伴い、当該供給搬送部11と混練部10の範囲は変化する。
【0027】
また、図1または図3(b)に示すように、排出部12の上流側に堰13を上下可動に設け、後述するように混練装置内の粉体の滞留量(占積率)を調整することができる。なお、滞留量(占積率)を一定に保つようにするための調整法は、堰13の高さを調整する方法のみならず、混練機6の長手方向の傾斜を調整する手法、排出部12の位置または開度を調整する方法等があり、適宜選定すれば良い。
堰13の高さを調整する方法は堰の高さを上下に調整して混練機内の粉体の滞留量を調整する方法であるが、予め粉体処理量と堰の高さと滞留量の関係を調査しておき、粉体処理量の増減に合わせて堰の高さを調整しても良いし、滞留量を重量やレベル計で測定しながら堰の高さを自動で調整しても良い。また、堰の高さの変更法は電動モータでも人力でも構わない。
【0028】
上記の混練機6の長手方向の傾斜を調整する手法は、混練機6における排出部12または粉体を供給する開口部15の付近を油圧装置等で上下させて、混練機6自体を傾斜させ、粉体の排出を促進ないし抑制して混練機内の粉体の滞留量を調整する方法であるが、予め粉体処理量と傾斜と滞留量の関係を調査しておき、粉体処理量の増減に合わせて傾斜を調整しても良いし、滞留量を重量やレベル計で測定しながら傾斜を自動で調整しても良い。
【0029】
上記の排出部12の位置または開度を調整する方法は、排出部の開口に、開口を覆うよう混練装置の長手方向或は周方向に移動する扉体(図示せず)を設け、この扉体を移動させることにより、排出部12の位置または開度を調整して混練機内の粉体の滞留量を調整する方法であるが、予め粉体処理量と当該位置または開度と滞留量の関係を調査しておき、粉体処理量の増減に合わせて当該位置または開度を調整しても良いし、滞留量を重量やレベル計で測定しながら当該位置または開度を調整しても良い。また、当該排出部の位置または開度の変更法は扉体を電動モータまたは人力で移動させることで可能である。
なお、占積率を一定に保つ際に、設備上多少の変動は生じるが、±5%の範囲内であれば許容できる。
【0030】
また、粉体の処理量が増減しても混練装置内の粉体の滞留量(占積率)が適正範囲内であれば、堰13等の占積率を調整する手段はなくても構わない。例えば、図1に示すように、撹拌羽根9の形状を扇形とし、シャフト17への設置向きを送り側と返し側が交互となるように設置した横型ニーダは、粉体の処理量が増減しても混練装置内の粉体の滞留量がほとんど変化しないため、占積率調整手段を必要とせず、設備費や混練安定性の観点から好ましい。
【0031】
また、堰13を設ける方法も構造が単純で設定が容易なため、設備費や混練安定性の観点から好ましい。そして、当該混練装置6にて、粉体とバインダーとを混練した後、混練物をロール塊成機14で塊成化する。なお、本発明において滞留量(占積率)は、混練装置の混練部の底部から、撹拌羽根高さまでの高さに相当する混練機(筒体)の容積に対する混練部の粉体の体積とする。すなわち、混練部の撹拌羽根が粉体により埋まっている断面積の割合にほぼ相当する。
【0032】
分級処理する粉体(例えば、石炭)の水分や粒度等が変動すると、粉体ホッパ1に供給される粉体の量も変動するため、粉体供給装置3から混練装置6に供給する粉体の供給量が増減する。他に、生産計画による生産量の変更や操業トラブル等でも、混練装置6に供給する粉体の供給量は増減する。このように粉体の供給量が増減すると、粉体とバインダーの混練状態が変化し、混練物の粒度分布や嵩密度等の性状が変動する。混練物の粒度分布や嵩密度が変動すると、混練物を塊成した際の塊成物の歩留や強度等の品質も変動する。
【0033】
その理由を図2(a)〜(d)を用いて説明する。(a)は粉体とバインダーを混練装置に供給し、混練を開始した混練初期の状態のイメージ図であり、バインダーの分散が不充分で「ダマ」が生成し塊成物の品質が悪化する。ここで「ダマ」とはバインダーの液滴粒の表面に粉体が付着した塊のことであり、「ダマ」が生成するということはバインダー不足の粉体部位やバインダー過多の粉体部位が生成することに相当し、混練物及び塊成物の品質が変動するとともに付着等の操業障害を招く。混練を継続すると撹拌羽根の回転による剪断作用でダマが解砕されて(b)の状態となるが、まだバインダーの分散が不充分のため、混練物の擬似粒子化が不充分であり、塊成物の品質も向上しない。更に混練を継続すると、バインダーが適度に分散され粉体同士がより接触して擬似粒子化した(c)の状態となり、混練物中の発塵性微粉が低減するとともに、混練物の嵩密度が増加する。また、当該混練物を塊成すると、同様な理由で塊成物の歩留や強度等の品質が向上する。更に混練を継続すると、擬似粒子が解砕された(d)の状態となり、混練物の嵩密度が低下するとともに、バインダーが粉体表面に薄く延ばされすぎて、塊成化した際のバインダー効果を発揮できず塊成物の品質が低下する。従って、粉体の供給量が増減しても、塊成物の歩留や強度、強いては混練物の粒度や嵩密度を安定化させるために、本発明等は鋭意検討し、以下の手法を見出した。
【0034】
混練物の粒度や嵩密度、塊成物の歩留や強度等の品質には、供給する粉体に対するバインダーの添加割合が最も影響するため、適正なバインダーの割合を設定した後は、粉体の供給量が増減しても、バインダーの添加割合は一定となるように制御する必要がある。その制御方法の一例を、図1に示す。本方法では、粉体供給装置3からの粉体供給量の信号をフィードフォワード制御装置8で受けてバインダー添加量を演算し、バインダー供給装置5に信号を送り、粉体の供給量が増減してもバインダー添加割合が一定となるように、バインダー添加量を調整する。なお、バインダーの添加量は、混練対象の粉体の性状、バインダーの種類、混練物の用途(成型方法)などにより異なるので、予め実験等により定めておくことは、言うまでもない。
【0035】
粉体の供給量が増減すると混練装置6内での粉体とバインダーの混練状態が変化し、混練物の粒度や嵩密度等の性状のみならず、塊成物の歩留や強度等の品質も変動する。
粉体の供給量が増減しても粉体とバインダーの混練状態を適正範囲にするには、従来技術である混練装置6内の滞留量(占積率)を変えて調整する第1の方法、従来技術の撹拌羽根の回転速度を調整する第2の方法、参考技術である撹拌羽根枚数を調整する第3の方法、及び、本発明であるバインダー添加位置を調整する第4の方法の4つの混練方法がある。
【0036】
従来技術である第1の混練方法は、たとえば、前述のように装置の傾斜を調整したり、装置内に操業中に高さ変更可能な堰を設けてその高さを調整したりして粉体の混練装置内の滞留量(占積率)を変えて調整するものであるが、粉体の供給量の増減範囲が、混練装置の適正な占積率の範囲を超えると適用できない。粉体の供給量が低減した際に混練装置6内の占積率を変えて適正範囲より低くすると、混練装置底面の影響が大きく撹拌羽根による混練作用を発揮できない上に、シャフトや撹拌羽根にバインダーが付着して操業を阻害する。また、粉体処理量が増加した際に混練装置6の占積率を変えて適正範囲より高くすると、撹拌した際に羽根高さを超える粉体が発生し撹拌羽根の混練作用を充分に発揮できないまま排出されるからである。
【0037】
従来技術である第2の混練方法の撹拌羽根の回転数を調整する方法は、インバータモータを設置すれば操業中に変更可能であるが、設備コストが高くなるのみならず、適正な混練状態を維持できなくなるおそれがある。撹拌羽根には大きさに応じた適正な回転数があり、回転数が高すぎると遠心力が過大となり撹拌羽根の混練作用を発揮できず、回転数が低すぎると撹拌羽根が粉体を持ち上げる混練作用が発揮できないからである。このように、適正な回転数は混練装置の大きさや形式によっても異なるので、適正な回転数は、予め実験によって決めることが好ましい。撹拌羽根の適正な回転数は撹拌羽根の形状にもよるが、一般的には撹拌羽根先端の遠心力が重力の1/4程度になる回転数が適正である。
参考技術である第3の混練方法の撹拌羽根枚数を調整する手法は、操業を停止し、混練装置6の撹拌羽根9を改造せねばならないため、連続操業をする際は適用できない。
【0038】
本発明である第4の混練方法は、粉体供給装置3からの粉体供給量の信号をフィードフォワード制御装置8で受けて適正な混練部10の長さを演算し、バインダー添加ノズル7に信号を送ってノズル位置を調整し、粉体の供給量に比例して混練部10の長さを調整する混練方法であり、粉体の供給量が増減しても粉体とバインダーの混練状態を一定に保てるため、混練物の粒度や嵩密度等の性状及び、塊成物の歩留や強度等の品質を安定化するための最適な混練方法である。
その際、第1の混練方法の問題のようにならないように、混練装置6内の占積率を一定に保つ必要がある。混練装置6内の占積率が適正範囲から外れてしまう場合は、例えば、混練装置の排出部12の上流側(混練部10と排出部12の境界近傍)に堰13をその高さを変更可能に設け、堰13の高さを調整し、占積率が一定になるように調整すれば良い。
【0039】
占積率が低すぎると撹拌羽根の混練作用が効かないと共にバインダーがシャフトや羽根に付着する弊害があり、逆に占積率が高すぎると混練されずに装置内を通過する粉体が生じる。
このようなことから、一定とする占積率は、装置の仕様等に応じて予め実験などにより定めれば良い。たとえば、本発明の実施例の装置では、80〜90%の占積率が適正な占積率であり、これを一定の占積率として調整した。
【0040】
ここで、本発明の混練方法はバインダーを添加しない状態で混練しても、擬似粒子化せずに粒度分布や嵩密度等の性状が変化しない乾燥した粉体を対象とする。当該乾燥した粉体は、粉体の種類にも依るが、一般的には水分割合が5質量%以下、好ましくは2質量%以下の粉体が望ましい。乾燥していない粉体に当該混練方法を適用すると、バインダー添加ノズル7より上流側でも混練されて擬似粒子化するため、粒度や嵩密度等の粉体性状が変化するからである。前述の乾燥した粉体では、バインダー添加ノズル7より上流側で混練されても粉体性状は変化せず、バインダーを添加して混練することで粉体にバインダーを分散させて擬似粒子化して粉体性状を変化させることがはじめて可能となる。
【0041】
バインダー添加ノズル7の位置を調整する手段は、フレキシブルホースや伸縮管等を使用してノズルを移動させても構わないし、あらかじめ混練装置の長手方向に位置の異なる複数ノズルを設置してバルブ等で実際にバインダーを添加するノズルの位置を選択しても構わない。但し、複数ノズルの長手方向における段数は、粉体の供給量の増減代によるが、2,3段では少なすぎるため、4段以上が必要で、バインダー添加割合を一定化して混練状態をより適正に保つには5段以上が好ましい。また、多すぎる段数は設備コスト、制御コストが増大するため、10段以下が好ましい。混練装置6が天井のない開放系であれば前者(移動ノズル)が、天井のある密閉系であれば後者(多段ノズル)の手法が有効である。本発明の粉体の混練方法を適用することで、粉体の供給量が増減しても、粉体とバインダーの混練状態を適正範囲に保ち、混練物の粒度や嵩密度等の性状及び、塊成物の歩留や強度等の品質を安定化させることが可能となる。
【0042】
なお、バインダーの添加位置は、占積率を一定の範囲とする中で、予め適正な混練状況が得られる場合の供給量と混練部の長さ(混練装置のバインダー添加ノズル位置から排出部までの長さ)との関係を求めておき、混練部の長さが供給量に応じた長さとなるように、混練装置の長手方向に位置の異なるバインダー添加ノズルを選択するか、長手方向に移動可能なバインダー添加ノズルを移動させて制御する。
通常、平均的な供給量に対してバインダー添加ノズルの標準位置を設定しておき、平均的な供給量に対する各時点での供給量の増減に比例して、バインダー添加ノズルの標準位置からシフト量を求め、これに応じてバインダー添加ノズルの位置を選択ないしは移動させて制御することができる。
【0043】
また、粉体の供給量が増減した際に、塊成物の品質を安定化させるには、ロール塊成機14による塊成物の製造方法も調整することが必要である。その手法は特許文献3に記載しているが、図1を参照して簡単に説明する。
油圧シリンダー(図示せず)により所定の圧力で押圧され、前記所定の圧力が保たれるようにロール間ギャップが連続的に変動し、且つ、回転数を調整可能な一対の回転ロール20と、前記一対の回転ロールの上方に設置され、スクリューフィーダー18及びそのケーシング19からなる粉体供給装置とを備えたロール塊成機14を使用する。前記回転ロールの表面には、ロール軸に直角な方向の断面形状がV字状または波状で、ロール軸方向にほぼ平行に伸びる溝状の凹凸が形成されており、前記スクリューフィーダー18の回転により前記一対の回転ロール20上に粉体を供給且つ押圧して、前記回転ロールの回転と共に粉体を板状に塊成化する。その際、前記一対の回転ロール間のギャップ21が一定になるように、前記スクリューフィーダーの回転数を制御するとともに、粉体の処理量の増減の割合に比例して、前記回転ロール及びまたは前記スクリューフィーダーの回転数を増減させる。本手法により、粉体の供給量が増減しても、塊成物の厚みを一定に保つことが可能となり、塊成物の歩留や強度等の品質を安定化させることが可能となる。
【0044】
本発明の粉体の混練方法および粉体塊成方法は、コークス事前処理用石炭を流動床乾燥分級機にて微粉と粗粒に分級した微粉に対して有効で、その中でも特に、本発明者等のなした特許文献3に記載のロール成形前の混錬とその後の塊成に対して有効であるものの、これに限定されることはなく、様々な乾燥した粉体をバインダーで混練および塊成する場合に適用可能である。
【実施例】
【0045】
(実施例1)
コークス事前処理工程における微粉炭の塊成化試験の実施例を以下に示す。図1に示すフローと同様に、粉体とバインダーを混練装置で混練した後、ロール塊成機で塊成化する試験を実施した。
粉体は流動床乾燥分級機で乾燥および分級して回収した微粉炭であり、微粉炭中の0.3mm以下の粒子の質量割合が70〜90%の粉体を使用した。微粉炭の水分は1.5質量%の乾燥した粉体を使用した。また、コークス事前処理工程に流動床乾燥分級機を使用した実機と温度条件を合わせるために、微粉炭を70〜80℃に加熱して使用した。バインダーは室炉式コークス炉から副産物として発生するタールを使用したが、コスト低減のため水分や固形分を含むタール滓と精製前の粗タールを質量比で50:50に混合したものを使用した。尚、当該タール滓とはコークス炉から発生したタールを静置分離した際の沈殿物であり、水分や固形分を多量に含むため有効利用することが難しい。当該タール滓の成分は質量割合で水分5〜20%、固形分5〜20%、タール分60〜90%であった。当該粗タールとはコークス炉から発生したタールを静置分離法でタール分として分離したものであり、精製前段階のため水分や固形分を若干含んでおり安価である。当該粗タールの成分は質量割合で水分0〜5%、固形分0〜2%、タール分94〜99%であった。また、バインダーの添加割合は微粉炭に対し、外数で8質量%一定となるように微粉炭供給量に合わせて調整し、バインダーの温度も70〜80℃に加熱して使用した。
【0046】
この試験に使用した混練装置の模式図を図3(a)〜(c)に示す。(a)は混練装置の長手方向に垂直な断面を、(b)は側面の断面を、(c)は平面の断面を示した図である。混練装置の形式は撹拌羽根9の形状を扇形とし、シャフト(回転軸)17への設置向きを送り側と返し側が交互となるように設置した2軸の横型ニーダであり、回転軸17の直径は20mm、撹拌羽根9の直径は120mm、撹拌羽根の枚数は9枚、撹拌羽根の間隔は60mm、撹拌羽根の形状は140°の扇型、回転数は60rpm一定とし、2軸の回転方向は図3の(a)に示すように互いに反対向きであり、筒体は天井のない開放系である。また、バインダー添加ノズル7は単管を1本使用し、混練装置の幅方向(長手方向と直交する方向)の中央部に設置し、レールを設けて(図示せず)長手方向に手動で任意に動かせる構造とした。混練装置への粉体供給量を2〜20kg/分の範囲で2kg/分づつ変化させ、粉体供給量に応じてバインダー添加ノズルの位置を10段階に調整して試験を行った。具体的には、粉体供給量が10kg/分の時の混練部の長さを基準に、混練部の長さが粉体供給量に比例するようにバインダー添加ノズルの位置を上流側あるいは下流側に調整した。また、混練装置内の粉体の滞留量(占積率)を80〜90%に調整するために混練装置内に堰13を設けたが、本装置においては、当該堰13を使用せずとも占積率は80〜90%と安定していた。
【0047】
この試験に使用したロール塊成機のロールは、表面にV字状断面を有しロール軸方向に平行に延びる溝が、周方向に多数形成されたものであり、ロール直径は224mm、ロール圧下力は1.5t/cm一定のロール塊成機を使用し、ロール間ギャップが3.5±0.1mmとなるように塊成機のスクリューフィーダの回転数を調整した。また、前述のように粉体の供給量の増減の割合に比例して、回転ロール及びスクリューフィーダーの回転数を増減させて、塊成物を製造した。
前記条件で、粉体とバインダーを混練装置に供給して混練した後、ロール塊成機で塊成化し、混練物の粒度と嵩密度及び、塊成物の歩留と落下強度を指標として評価した。
なお、嵩密度は、事前にすり切り一杯の容積と空質量を測定した1Lビーカーに混練物をシャベルで軽く満杯以上に装入し、上部を棒ですり切り一杯に均して質量を測定し、嵩密度を計算して求めた。また、落下強度は、1mm以上(網目1mmの篩上以上)の塊成物1kg程度を秤量し、袋に入れ、実機搬送時の落下条件(落差、床面、順番、回数)に合わせてオフラインで落下させた後、袋内の0.3mm以上の粒子を秤量し、その割合(質量比)を算出して求めた。
【0048】
なお、混練物の粒度は混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合とし、発塵防止の観点から50%以下にすることを目標とした。混練物の嵩密度とは、微粉炭とバインダーを混練装置で混練した混練物の単位容積当たりの質量であり、高い程、望ましい。塊成物の歩留は塊成物中の1mm以上の塊成物の質量割合であり、高い程、望ましい。塊成物の落下強度とは実機搬送時の落下条件を模擬した落下試験時の落下後の0.3mm以上の粒子の質量割合であり、発塵及びキャリーオーバー防止の観点から80%以上を目標とした。
【0049】
図4に混練物の嵩密度と混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を評価した結果を、図5に塊成物の落下強度と歩留を評価した結果を示す。図中横軸の粉体供給量比とは粉体供給量10kg/分を基準の1とし、2kg/分づつ供給量を変化させた時の粉体供給量の増減の比率を表す。粉体供給量比が0.2〜2(2〜20kg/分に相当)の10倍の範囲で変化しても、バインダー添加位置を調整することで、バインダーを適度に分散させて擬似粒子化し、混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を目標の50%以下にすると共に、混練物の嵩密度を0.7kg/L以上に確保することが可能となった。また、更に塊成化した際も、粉体供給量比が0.2〜2の範囲で変化しても、バインダー添加位置を調整することで、塊成物の落下強度を目標の80%以上とすると共に、塊成物の歩留も90%以上に確保することが可能となった。
なお、この試験では粉体供給量比が0.2〜2の範囲であったが、バインダーの添加割合を一定に保ち、混練装置内の粉体の滞留量を一定に保ち、攪拌羽根の回転数を一定に保ち、粉体の供給量の増減に応じてバインダー添加位置を調整する本手法を用いれば、粉体供給量比が0.2〜2の範囲を越えても、つまり、粉体処理量を10倍以上に増減しても、今回の試験と同様な結果になると推定されるため、混練物及び塊成物の性状を目標以上に安定化させ、搬送や装入時の発塵やキャリーオーバーを抑制することができると推定される。
【0050】
(実施例2)
実施例1と同じ原料を使用し、バインダー添加ノズルの位置以外は実施例1と同じ試験装置を使用し、実施例1と同様な試験を行った。バインダー添加ノズルの位置は実施例1の1つ飛ばしの5段階に調整した。
図6に混練物の嵩密度と混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を評価した結果を、図7に塊成物の落下強度と歩留を評価した結果を示す。粉体供給量比が0.2〜2の10倍の範囲で変化しても、バインダー添加位置を調整することで、バインダーを適度に分散させて擬似粒子化し、混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を目標の50%以下にすると共に、混練物の嵩密度を0.7kg/L以上に確保することが可能となった。また、更に塊成化した際も、粉体供給量比が0.2〜2の範囲で変化しても、バインダー添加位置を調整することで、塊成物の落下強度を目標の80%以上とすると共に、塊成物の歩留も90%以上に確保することが可能となった。
【0051】
(実施例3)
実施例1と同じ原料を使用し、混練装置以外は実施例1と同じ試験装置を使用し、実施例1と同様な試験を行った。混練装置は実施例1の横型ニーダの撹拌羽根9をパドルに改造したパドルミキサーを使用した。パドルの長さは50mm、幅は15mm、枚数は18枚であり、混練装置内の粉体の占積率が80〜90%となるように混練装置内の堰13の高さを調整し、試験を行った。
図8に混練物の嵩密度と混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を評価した結果を、図9に塊成物の落下強度と歩留を評価した結果を示す。粉体供給量比が0.2〜2の10倍の範囲で変化しても、バインダー添加位置を調整することで、バインダーを適度に分散させて擬似粒子化し、混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を目標の50%以下にすると共に、混練物の嵩密度を0.7kg/L以上に確保することが可能となった。また、更に塊成化した際も、粉体供給量比が0.2〜2の範囲で変化しても、バインダー添加位置を調整することで、塊成物の落下強度を目標の80%以上とすると共に、塊成物の歩留も90%以上に確保することが可能となった。
なお、この試験では粉体供給量比が0.2〜2の範囲であったが、バインダーの添加割合を一定に保ち、混練装置内の粉体の滞留量を一定に保ち、攪拌羽根の回転数を一定に保ち、粉体の供給量の増減に応じてバインダー添加位置を調整する本手法を用いれば、粉体供給量比が0.2〜2の範囲を越えても、つまり、粉体処理量を10倍以上に増減しても、今回の試験と同様な結果になると推定されるため、混練物及び塊成物の性状を目標以上に安定化させ、搬送や装入時の発塵やキャリーオーバーを抑制することができると推定される。
【0052】
(比較例1)
実施例1と同じ原料及び試験装置を使用し、混練装置のバインダー添加ノズルの位置を撹拌羽根を設置した部分の中央(混練部の長手方向中央部)に固定して試験を行った。その他の条件は実施例1と同様にした。
図10に混練物の嵩密度と混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を評価した結果を、図11に塊成物の落下強度と歩留を評価した結果を示す。粉体供給量比が0.2〜2の範囲で変化した際に、バインダー添加位置を調整しなければ、粉体供給量比が0.8〜1.6の範囲を超えると、混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を目標の50%以下にできず、塊成物の落下強度も目標の80%以上にできないと共に、混練物の嵩密度や塊成物の歩留も低下した。
逆に言うと、ノズル位置を固定した場合、混練物及び塊成物の性状を目標以上に安定化できる粉体供給量比の範囲は0.8〜1.6程度であった。言い換えると、粉体供給量が2倍以上に大きく増減する場合、バインダー添加位置を調整する必要があると推定される。
【0053】
(比較例2)
次に、実施例3と同じ原料及び試験装置を使用し、堰の高さを調整して粉体の供給量に比例させて、滞留量(占積率)を強制的に変更し、その他の条件は実施例1と同様にして試験を行った。その結果、占積率が50%以下になると、シャフトや撹拌羽根にバインダーと粉体が付着して、粉体の流れを阻害し、混練装置の運転ができなくなり、試験を中止せざるを得なくなった。
【0054】
(比較例3)
更に、実施例3と同じ原料及び試験装置を使用し、特許文献2に開示されている手法に倣い、混練機内の微粉の移動速度を調整することで混練装置内の粉体の占積率が80〜90%の範囲で一定となるようにパドルの回転数を調整し、実施例3と同様な試験を行った。その際、混練装置内の堰を取り外して試験を行った。なお、特許文献2に開示されている手法では100℃以上の粉体を処理するので、水分を含む精製前の粗タールやタール滓は沸騰するため、バインダーとしては使用できないと思われたが、この試験では70〜80℃の粉体を処理するため、安価な精製前の粗タールとタール滓の混合物をバインダーとして使用した。
図12に混練物の嵩密度と混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を評価した結果を、図13に塊成物の落下強度と歩留を評価した結果を示す。粉体供給量比が0.4〜0.8以外の範囲では、混練物中の0.3mm以下の粒子の質量割合を目標の50%以下にできず、塊成物の落下強度も目標の80%以上にできないと共に、混練物の嵩密度や塊成物の歩留も低下した。粉体の供給量が今回のように大きく増減した場合、混練装置内の占積率を微粉の移動速度(パドルの回転数)で調整しても、適正な混練状態を確保できない場合があるためと推定される。
【符号の説明】
【0055】
1 粉体ホッパ
2、2’ レベル検知器
3 粉体供給装置(ロータリ・バルブ)
4 バインダーホッパ
5 バインダー供給装置(ポンプ)
6 混練装置(混練機)
6a 筒体
7 バインダー添加ノズル
8 フィードフォワード制御装置
9 撹拌羽根
10 混練部
11 供給部
12 排出部
13 堰
14 ロール塊成機
15 開口部
16 スクリュー
17 回転軸
18 スクリュ−フイーダー
19 ケーシング
20 ロール
21 ロール間ギャップ
M 駆動装置(モーター)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス事前処理用石炭を流動床乾燥分級機にて微粉と粗粒に分級した微粉炭を、撹拌羽根を内蔵する横長型の混練装置に供給すると共に、当該混練装置にバインダーを添加して、両者を混練する粉体混練方法であって、
前記混練装置に内蔵される撹拌羽根の回転数を一定に保つと共に、前記混練装置内の混練物の滞留量が一定になるように制御し、
且つ、前記バインダーの添加位置を前記混練装置の長手方向に可変とし、前記粉体の供給量が増減した際に、前記微粉炭に対する前記バインダーの添加割合が、前記粉体の供給量増減の前後で一定となるようにバインダーの添加量を調整すると共に、前記バインダーの添加位置を、前記粉体の供給量が増加すれば前記混練装置の上流側に、前記粉体の供給量が減少すれば前記混練装置の下流側に、前記粉体の供給量の増減割合に比例して変更することを特徴とする粉体混練方法。
【請求項2】
前記バインダーは、水分及び固形分を含むタール精製前の粗タールを含むことを特徴とする請求項1に記載の粉体混練方法。
【請求項3】
前記バインダーの添加位置を前記混練装置の長手方向に可変とする手段が、バインダー添加ノズルを前記混練装置の長手方向に移動させる機構を設けたことによるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体混練方法。
【請求項4】
前記バインダーの添加位置を前記混練装置の長手方向に可変とする手段が、バインダー添加ノズルを前記混練装置の長手方向に4段以上位置を変えて設け、バインダーを添加する前記バインダー添加ノズルを切り替えることによるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体混練方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体混練方法にて混練した粉体を、ロール塊成機に投入して板状に塊成することを特徴とする粉体塊成方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体混練方法に使用する粉体混練装置であって、上方が開放または密閉され、水平方向に延びる筒体と、該筒体の上流側に設置された粉体供給部と、筒体の下流側に設置された粉体排出部と、前記粉体供給部と前記粉体排出部の間であって筒体内を水平方向に伸びる回転軸に取り付けられた撹拌羽根を備えた混練部と、撹拌羽根が取り付けられた回転軸を回転させる駆動装置と、前記混練部にバインダーを供給するバインダー添加ノズルと、前記粉体供給部に粉体を供給する粉体供給装置と、バインダー添加ノズルにバインダーを供給するバインダー供給装置とを備え、且つ、粉体の供給量が増減した際に、前記混練装置内の粉体の滞留量が一定となるようにする制御手段と、前記粉体に対する前記バインダーの添加割合が、前記粉体の供給量増減の前後で一定となるようにバインダーの添加量を調整するフィードフォワード制御装置とを備え、且つ、前記バインダー添加ノズルは、前記混練装置の長手方向に複数設けられてバインダーを投入するノズルが切り替えられる機構を有するか、又は、前記混練装置の長手方向に移動可能となる機構を有するものであり、前記粉体の供給量増減の際に、前記粉体の供給量が増加すれば前記混練装置の上流側に、前記粉体の供給量が減少すれば前記混練装置の下流側に、前記粉体の供給量の増減割合に比例して前記バインダー添加ノズルの長手方向の添加位置が変更できることを特徴とする粉体混練装置。
【請求項1】
コークス事前処理用石炭を流動床乾燥分級機にて微粉と粗粒に分級した微粉炭を、撹拌羽根を内蔵する横長型の混練装置に供給すると共に、当該混練装置にバインダーを添加して、両者を混練する粉体混練方法であって、
前記混練装置に内蔵される撹拌羽根の回転数を一定に保つと共に、前記混練装置内の混練物の滞留量が一定になるように制御し、
且つ、前記バインダーの添加位置を前記混練装置の長手方向に可変とし、前記粉体の供給量が増減した際に、前記微粉炭に対する前記バインダーの添加割合が、前記粉体の供給量増減の前後で一定となるようにバインダーの添加量を調整すると共に、前記バインダーの添加位置を、前記粉体の供給量が増加すれば前記混練装置の上流側に、前記粉体の供給量が減少すれば前記混練装置の下流側に、前記粉体の供給量の増減割合に比例して変更することを特徴とする粉体混練方法。
【請求項2】
前記バインダーは、水分及び固形分を含むタール精製前の粗タールを含むことを特徴とする請求項1に記載の粉体混練方法。
【請求項3】
前記バインダーの添加位置を前記混練装置の長手方向に可変とする手段が、バインダー添加ノズルを前記混練装置の長手方向に移動させる機構を設けたことによるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体混練方法。
【請求項4】
前記バインダーの添加位置を前記混練装置の長手方向に可変とする手段が、バインダー添加ノズルを前記混練装置の長手方向に4段以上位置を変えて設け、バインダーを添加する前記バインダー添加ノズルを切り替えることによるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体混練方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体混練方法にて混練した粉体を、ロール塊成機に投入して板状に塊成することを特徴とする粉体塊成方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体混練方法に使用する粉体混練装置であって、上方が開放または密閉され、水平方向に延びる筒体と、該筒体の上流側に設置された粉体供給部と、筒体の下流側に設置された粉体排出部と、前記粉体供給部と前記粉体排出部の間であって筒体内を水平方向に伸びる回転軸に取り付けられた撹拌羽根を備えた混練部と、撹拌羽根が取り付けられた回転軸を回転させる駆動装置と、前記混練部にバインダーを供給するバインダー添加ノズルと、前記粉体供給部に粉体を供給する粉体供給装置と、バインダー添加ノズルにバインダーを供給するバインダー供給装置とを備え、且つ、粉体の供給量が増減した際に、前記混練装置内の粉体の滞留量が一定となるようにする制御手段と、前記粉体に対する前記バインダーの添加割合が、前記粉体の供給量増減の前後で一定となるようにバインダーの添加量を調整するフィードフォワード制御装置とを備え、且つ、前記バインダー添加ノズルは、前記混練装置の長手方向に複数設けられてバインダーを投入するノズルが切り替えられる機構を有するか、又は、前記混練装置の長手方向に移動可能となる機構を有するものであり、前記粉体の供給量増減の際に、前記粉体の供給量が増加すれば前記混練装置の上流側に、前記粉体の供給量が減少すれば前記混練装置の下流側に、前記粉体の供給量の増減割合に比例して前記バインダー添加ノズルの長手方向の添加位置が変更できることを特徴とする粉体混練装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−136256(P2011−136256A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295850(P2009−295850)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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