説明

粉体測定装置用タッピング装置

【課題】タッピングのストロークと振動数を容易に変更できる粉体測定装置用タッピング装置を提供する。
【解決手段】粉体物性測定装置1に設けられるタッピング装置20は、測定カップ64やメスシリンダー70を取り付けるタッピング台21、21Aと、それを支持するタッピング軸22を備える。垂直面内で回動するリフトバー25が、タッピング軸22を持ち上げては落とす。リフトバー25はステッピングモータ24のモータ軸24aに直結され、ステッピングモータ24がリフトバー25に垂直面内での回動を与える。ステッピングモータ24がリフトバー25に与える回動の角度と回動速度は制御装置30によって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体測定装置用タッピング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体の物性値は、安息角、崩潰角、スパチュラ角、ゆるめ・固めかさ密度、圧縮度、凝集度、分散度、差角など、様々なパラメータをもって測定される。これらの物性値を測定する装置については、特許文献1に例を見ることができる。
【0003】
特許文献2には粉体のかさ密度を測定する装置が開示されている。特許文献2記載の装置では、測定室の底部のタッピング台に試料粉体を入れる測定用カップをセットする。測定室の天井には測定用カップの真上にあたる箇所に天窓が設けられ、その上にセンサキャビネットが設置される。センサキャビネットの中に配置された非接触型センサが測定用カップの中の粉体面レベルを測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2798827号公報
【特許文献2】特許第4368738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粉体の物性測定において、粉体の圧縮性に関する評価方法としては、ゆるめかさ密度とは別に、所定容積の測定カップ内に試料粉体を入れ、所定のストローク量及び所定の振動数(単位時間当たりのタッピング回数)で所定回数又は所定時間のタッピングを行わせて固めかさ密度を測定する方法がある。また、その他の方法として、測定カップの代わりにメスシリンダーを使用し、メスシリンダー内に試料粉体を入れてタッピングを行わせ、固めかさ密度(タップ密度ともいう)を測定するアメリカ薬局方(USP)タッピングや米国材料試験協会(ASTM)タッピングがあり、さらには同様の方法でかさべり度を測定する川北式粉体圧縮評価法などがある。これらいずれの評価方法においても、測定用容器に投入された試料粉体をタッピングする必要がある。
【0006】
タッピングのストローク量、振動数及び回数は測定方法によって異なる。従来、タッピング軸の昇降はカムにより行うこととしていたため、ストローク量を変えようと思えばカムを交換する必要があった。またタッピング振動数の変更も容易ではなかった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、タッピングのストローク量と振動数を容易に変更できる粉体測定装置用タッピング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の粉体測定装置用タッピング装置は、垂直面内で回動し、タッピング軸を持ち上げては落とすリフトバーと、前記リフトバーに垂直面内での回動を与えるステッピングモータと、前記ステッピングモータが前記リフトバーに与える回動の角度と、回動速度を制御する制御装置と、を備える。
【0009】
本発明の粉体測定装置用タッピング装置において、前記制御装置は、前記ステッピングモータが前記リフトバーに与える回動の速度を、前記タッピング軸が上昇限界に達する直前に所定の減速量で減速させる。
【0010】
本発明の粉体測定装置用タッピング装置において、前記制御装置は、前記タッピング軸を下げるとき、前記リフトバーを、前記タッピング軸が落下するよりも速く下げ、また、前記タッピング軸の下降限界よりもさらに下方まで下げる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、タッピング軸を持ち上げるのがリフトバーであり、ステッピングモータと制御装置によってリフトバーの回動角度と回動速度を比較的自由に設定できるため、カムの交換といった手数をかけることなくタッピングのストローク量を変えることができる。またリフトバーの原動力がステッピングモータであることから、リフトバーの回動角度と回動速度を比較的自由に設定することができる。このため、試験方法の基準に従ってタッピングのストローク量や振動数を設定することが容易になり、タッピング装置の使い勝手が向上する。さらに、ステッピングモータと制御装置により、ステッピングモータがリフトバーに与える回動の速度を、タッピング軸が上昇限界に達する直前に減速させることで、測定用容器が、慣性力によって跳ね上げられるなどして設定値以上に持ち上げられることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】粉体物性測定装置の概略正面図である。
【図2】粉体物性測定装置の概略側面図である。
【図3】タッピング動作機構の概略側面図である。
【図4】粉体物性測定装置のブロック構成図である。
【図5】測定用容器として測定カップを用いた場合のゆるめ又は固めかさ密度測定について説明する概略断面図である。
【図6】測定用容器としてメスシリンダーを用いた場合の固めかさ密度又はかさべり度測定について説明する概略断面図である。
【図7】リフトバーの上昇速度のグラフである。
【図8】リフトバーの下降速度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るタッピング装置は、測定用容器に投入した試料粉体の固めかさ密度又はかさべり度の測定が可能である粉体物性測定装置1の構成要素として実現されている。
【0014】
粉体物性測定装置1の外観を構成する二大要素は、本体2と、その前部を覆うカバー3である。本体2は図示しない架台構造の外側を板金製の筐体4で囲んだものであり、高さ調整可能な複数の支持脚5により支持面の上に支持される。カバー3は透明な合成樹脂により主要部が形成されており、左右一対のアーム6で本体2の左右両側面に取り付けられる。アーム6の先端は本体2に連結する支点部7となり、カバー3は支点部7を中心として垂直面内で回動する。
【0015】
カバー3を下ろすと図2の実線状態となる。この時カバー3で囲い込まれる空間が図5に示す測定室10となる。前述の通りカバー3は主要部が透明であるため、カバー3を下ろした状態でも測定室10の内部を見通すことができ、作業者は試料の状況等を目視で確認しながら、粉塵の影響を受けることなく測定作業を行うことができる。
【0016】
カバー3の正面には手掛け部3aが形成されており、そこに手を掛けて、カバー3を図2の仮想線の位置まで引き上げることができる。図2の仮想線の位置まで引き上げたときは、カバー3は手を離してもその位置に留まっている。このように測定室10を開放状態にした上で、作業者は測定済みの試料や測定に供した用具の片付け、新たな測定作業のセッティング、保守点検作業などを行う。測定室10を開放状態にしておく必要がなくなったときはカバー3を下ろす。支点部7でカバー3を支える軸にはダンパーが組み合わせられており、下ろす途中で手を離せばカバー3はゆっくりと降下し、衝撃を与えることなく静かに閉じる。
【0017】
粉体物性測定装置1は、固めかさ密度又はかさべり度測定のために必要なタッピング装置を備えている。図5に示す通り、測定室10の床面部にタッピング装置20が配置される。タッピング装置20は、タッピング台21と、タッピング台21を支持するタッピング軸22を備える。
【0018】
図3に示す通り、タッピング軸22は架台構造に取り付けられた軸受23に垂直に支持され、上下自在である。タッピング軸22と後述のリフトバー25との接点は、タッピング軸22の中心から外周方向に外れた位置にあり、タッピング軸22は上昇時に回転する。タッピング軸22に上下方向の動きを与えるのはステッピングモータ24である。ステッピングモータ24は水平方向に突き出すモータ軸24aを備え、モータ軸24aには先端にローラ26を備えるリフトバー25が直結されている。ローラ26はタッピング軸22の下面に当たり、タッピング軸22を支える。モータ軸24aが回転するとリフトバー25は垂直面内で回動し、その回動角に応じてタッピング軸22が上下する。
【0019】
ステッピングモータ24は図4に示すモータドライバ27で駆動される。モータドライバ27を制御するのは制御装置30である。制御装置30は、パーソナルコンピュータ31と、パーソナルコンピュータ31より指令を受けて各構成要素を制御するメイン制御部32を含む。制御装置30がモータドライバ27に制御信号を送ると、制御信号に応じた駆動パルスがモータドライバ27から出力され、モータ軸24aは駆動パルス数に応じた角度だけ回転する。
【0020】
リフトバー25がタッピング軸22を上昇させる時の加減速の概念を図7に示す。グラフに見られる通り、ステッピングモータ24を制御して、リフトバー25によるタッピング軸22の上昇速度を、タッピング軸22が上昇限界に達する直前に所定の減速量で減速させるようにしている。こうすることで、タッピング軸22によって測定用容器が跳ね上げられるのを防止することができる。
【0021】
図7では、1ステップにつき25Hzの減速量で、最高速4000Hzから初速1500Hzまで、100ステップかけて減速させている。ここで、減速量は、30[Hz/ステップ]を最大として、それよりも小さければよく、タッピング振動数、ストローク量、最高速、初速などを考慮して適宜決定される。減速量が30[Hz/ステップ]より大きいと、測定用容器が跳ね上げられるおそれがある。
【0022】
タッピング軸22を下げるときは、リフトバー25を、厳密にはリフトバー25の先端のローラ26を、タッピング軸22が落下するよりも速く下げ、また、タッピング軸22の下降限界よりもさらに下方まで下げる。こうすることで、落下時にタッピング軸22がリフトバー25に当たることがなくなり、タッピングによる測定が安定する。
【0023】
図8にリフトバー25が下降する時の加減速の概念を示す。図8に見られるように、リフトバー25の下降速度は上昇速度よりも速い。リフトバー25の下降速度はタッピングのストローク量に応じて変更することができる。
【0024】
上述の通り、タッピング軸22を持ち上げるのがリフトバー25であり、ステッピングモータ24と制御装置30によってリフトバー25の回動速度と比較的自由に設定することができるため、カムの交換といった手数をかけることなくタッピングのストローク量を変えることができる。このため、試験方法の基準に従ってタッピングのストローク量や振動数を設定することが容易になり、使い勝手が向上する。なお、タッピングのストローク量は、固めかさ密度測定の場合は通常18mmであるが、かさべり度測定のストローク量をカバーできる約40mmを最大とし、任意に設定可能である。
【0025】
ステッピングモータ24としては、定格電流が1.4A/相、励磁最大静止トルクが1.3N・mで、基本ステップ角が0.36°といった規格のものを用いることができる。
【0026】
粉体物性測定装置1には、試料粉体を振動篩にかける篩振動装置が設けられている。篩振動装置の本体部分は筐体4内に存在し、その本体部分が備える篩取付枠40のみが、図5に示す通り測定室10に突き出している。篩取付枠40には、図4に示す電磁石41により上下方向の振動が与えられる。
【0027】
制御装置30には、図4に示す通り、ステッピングモータ24とモータドライバ27、電磁石41といった既出の構成要素の他に、表示装置50が接続される。表示装置50は外付けのモニター装置などにより構成され、測定データや計算結果などの表示を行う。
【0028】
続いて、図5に基づき、粉体物性測定装置1がどのように用いられるかについて説明する。
【0029】
図5に示すのは測定用容器として測定カップを使用した場合のゆるめ又は固めかさ密度測定用のセッティングである。篩60には篩押さえ67を重ね、篩取付枠40の下面には上段シュート61を取り付け、これらを締結具68で篩取付枠40に固定している。上段シュート61の下にはブラケット62で支持された下段シュート63が配置されている。タッピング台21には測定カップ64が取り付けられる。測定室10の床の上には粉体回収バット65が置かれている。測定カップ64は、容積が10ml、25ml、50ml、100mlのものが用いられる。
【0030】
篩押さえ67及び篩60に試料粉体を投入し、篩取付枠40を振動させると、篩60を通過した試料粉体が上段シュート61と下段シュート63を通じて落下し、測定カップ64に入る。試料粉体が測定カップ64から溢れたら、試料粉体の投入をやめ、試料粉体をすり切る。次いで測定カップ64をタッピング台21から取り外し、電子天秤等の質量測定装置に載せて質量を測定する。その値を測定カップ64の容積で除した値が、ゆるめかさ密度となる。次いで測定カップ64にキャップ64aを被せてタッピング台21に戻し、試料粉体を投入しつつタッピングを行う。
【0031】
所定回数又は所定時間タッピングを行った後、キャップ64aを取り外し、試料粉体をすり切る。その後測定カップ64をタッピング台21から取り外し、質量測定装置に載せて質量を測定する。その値を測定カップ64の容積で除した値が、固めかさ密度となる。
【0032】
図6に示すのはUSPタッピングやASTMタッピングで固めかさ密度を測定する場合、あるいは川北式粉体圧縮評価法でかさべり度を測定する場合のセッティングである。篩取付枠40には篩60とシュート66が取り付けられ、タッピング軸22にはタッピング台21Aが取り付けられている。タッピング台21Aにはメスシリンダー70が取り付けられる。
【0033】
篩押さえ67及び篩60に試料粉体を投入し、篩取付枠40を振動させると、篩60を通過した試料粉体がシュート66を通じて落下し、メスシリンダー70に入る。所定量の試料粉体がメスシリンダー70に投入されたところで、タッピングを行う。所定回数のタッピングを行うと、メスシリンダー70の内部の粉体層が圧縮され、粉体面がタッピング前の粉体面よりも下がる。そして、タッピング後の試料粉体の体積を読み取ることで、固めかさ密度やかさべり度を求める。ここで、USPタッピングやASTMタッピングの場合の固めかさ密度は、メスシリンダー70内に投入した試料粉体の質量をタッピング後の試料粉体の体積で除して求められる。また、川北式粉体圧縮評価法のかさべり度は、タッピング前の試料粉体の体積をV、タッピング後の試料粉体の体積をVとしたとき、(V−V)/Vで求められる。
【0034】
USPタッピングの場合は、容積250mlまたは100mlのガラスメスシリンダーが用いられる。第1の方法では、タッピング振動数は1分間当たり300ドロップ、タッピングストローク量は14±2mmとされる。第2の方法では、タッピング振動数は1分間当たり250ドロップ、タッピングストローク量は3mm(±10%)とされる。第1の方法でも第2の方法でも、初回タッピング回数は500回、2回目は750回、3回目以降は1250回である。
【0035】
ASTMタッピングの場合は、容積100mlまたは25mlのガラスメスシリンダーが用いられる。タッピング振動数は1分間当たり100〜300ドロップ、タッピングストローク量は3±0.2mmとされる。
【0036】
タッピングのストローク量や振動数を変化させる必要が生じた場合、本実施形態では、制御装置30のパーソナルコンピュータ31で条件入力を行い、モータドライバ27から所要の駆動パルスを出力させてステッピングモータ24の回動角度と回動速度を変えることにより、目的を達成できる。そのため、タッピング装置としてきわめて使い勝手の良いものとなる。
【0037】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は粉体測定装置用タッピング装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 粉体物性測定装置
2 本体
3 カバー
10 測定室
20 タッピング装置
21 タッピング台
22 タッピング軸
24 ステッピングモータ
25 リフトバー
27 モータドライバ
30 制御装置
40 篩取付枠
60 篩
61 上段シュート
63 下段シュート
64 測定カップ
64a キャップ
21A タッピング台
66 シュート
70 メスシリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直面内で回動し、タッピング軸を持ち上げては落とすリフトバーと、
前記リフトバーに垂直面内での回動を与えるステッピングモータと、
前記ステッピングモータが前記リフトバーに与える回動の角度と、回動速度を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする粉体測定装置用タッピング装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ステッピングモータが前記リフトバーに与える回動の速度を、前記タッピング軸が上昇限界に達する直前に所定の減速量で減速させることを特徴とする請求項1に記載の粉体測定装置用タッピング装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記タッピング軸を下げるとき、前記リフトバーを、前記タッピング軸が落下するよりも速く下げ、また、前記タッピング軸の下降限界よりもさらに下方まで下げることを特徴とする請求項1または2に記載の粉体測定装置用タッピング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−237722(P2012−237722A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108529(P2011−108529)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000113355)ホソカワミクロン株式会社 (43)