説明

粉体製造装置、及び粉体の製造方法

【課題】竹、杉、ヒノキ等の棒状木質材の表皮部分からの粉体を容易に得ることができる粉体製造装置及び粉体の製造方法を提供する。
【解決手段】軸を中心に回転しつつ軸方向に移動する円筒状木質材100表皮部分に、モータ113により1分間に1800〜3600回転の回転速度で回転するチップソー108a〜108eを押圧させ、木質材100表皮部分を粉砕するとともに、チップソー108a〜108eの押圧力、ストッパ1091の外径とチップソー108a〜108eの外径との差Qの値を調整することなどにより、木質材表皮部分の粉体114aを一工程で得ることができ、かつ木質材表皮部分を確実に剥ぎ取ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体製造装置、及び粉体の製造方法に関し、特に、竹、杉、ヒノキなど、略円柱形状の木質材から当該木質材表面部の粉体を製造する粉体製造装置、及び木質材粉体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
竹から粉体を製造する装置の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に記載されている技術では、所定方向に回転する回転切削歯を有する回転切削機構と、竹の直径に対応して、竹の切削加工部位を前記回転切削歯に対して略直交する位置に位置決めするとともに、前記竹の切削加工部位を前記回転切削歯に接触するように案内する位置決めガイド機構とを備え、前記回転切削歯で竹を粉砕することにより竹粉を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3967931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
竹の表皮部分には抗菌機能を有する成分が多く含まれていることが知られているが、特許文献1に記載の技術では、表皮部分からの粉体を分離して得ることは不可能であるという問題がある。木質材表面の皮を剥ぐ装置としては、例えばリングバーカー、ジェットバーカー、ドラムバーカー等、種々知られているところであるが、いずれも、表皮部分の粉体を得るためには、皮剥ぎの後に、さらに皮を粉体に粉砕する工程が必要になるという問題がある。一方、杉、ヒノキなどの木質材をバイオマス化学材料とする場合、表皮部分を充分に剥ぎとって、残りの部分を粉体とすることが好ましいという要求もあるところ、上記したリングバーカー等の皮剥ぎ方法では、表皮の剥ぎ取りが不充分で表皮が多く残ってしまうという問題もある。
【0005】
本発明は上記の諸点に鑑みてなされたものであって、第1の目的は、特に、竹、杉、ヒノキなどの棒状木質材から、当該木質材表皮部分からの粉体を一工程で容易に得ることができる粉体製造装置、及び粉体の製造方法を提供することを目的とする。第2の目的として、棒状木質材から表皮部分を確実に剥ぎ取ることができる粉体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題点を解決するために、本発明に係る第1の粉体製造装置は、略円筒形状の木質材を回転させつつ軸方向に移動させる回転移送機構と、積層された複数枚のチップソーを回転させつつ、前記複数枚のチップソーの外刃を前記木質材表皮部分に押入することにより前記木質材表皮部分を粉砕し、粉体を製造する回転切削機構とを備えることを特徴としている。
【0007】
本発明においては、木質材を所定方向に回転させつつ軸方向に移送しながら、当該木質材の表皮部分に押圧される回転切削機構を用いて木質材表皮部分を粉砕することにより、棒状木質材から、当該木質材表皮部分の粉体を一工程で容易に製造することが可能となる。なお、一般的に「粉体」というと一粒の大きさがかなり小さいものも含まれるが、本明細書で「木質材の粉体」というときには、例えば一粒の大きさが0.5mm×1mm程度、またはそれ以上の大きさの場合も含むものとする。実際の粉体の用途等に応じて、適切な粉体のサイズが決定され、その希望するサイズに最適な加工条件(回転切削機構における刃物の歯数、厚さ、回転数、木質材の送り速度等)が設定され得る。条件設定により、例えば0.01mm×0.01mmといった小さい粉体が多く製造されるようにすることもできるし、数mmといった大きめの粉体が多く製造されるようにすることもできる。
【0008】
前記チップソーの外刃が前記木質材表皮部分に押入される深さを規制するストッパを備える構成とすると、チップソーが前記木質材表皮部分に押入される深さ(押入深さ)を容易に制御することができる。
【0009】
前記チップソーの前記木質材表皮部分への押入深さが、竹の表皮部から抗菌成分を得る目的のために約0.3mm程度である構成とすると、例えば竹の表皮部分(抗菌成分を多く含む)からの粉体を製造するために好適である。
【0010】
前記チップソーの前記木質材表皮部分への押入深さが約5mm〜15mm程度である構成とすれば、表皮部分を確実に除去した後の木質材を、バイオマス化学材料として用いる場合に、バイオマス材料の品質劣化を防止することが可能となる。
【0011】
前記回転切削機構の自重により、前記チップソーの外刃が前記木質材表皮部分に押入する構成とすることもできる。
【0012】
前記木質材表皮部分が、前記チップソーにより粉砕される前に、前記木質材表皮部分の繊維をせん断する筋入れカッターを備える構成とすることは好ましいことである。
【0013】
前記チップソーにより表皮部分が粉砕された木質材の表面から、さらに表示部分を取り除くブラシを備える構成としても良い。
【0014】
上記本発明に係る粉体製造装置により、表皮部分が剥ぎ取られた木質材を、さらに粉砕して粉体を得ることが可能である構成とすることは、バイオマス化学材料の製造に好適である。表皮部分が確実に剥ぎ取られた木質材からの粉体を容易に得ることができるからである。
【0015】
前記回転移送機構に、複数本の木質材を順次転送する木質材転送機構を備える構成とすることは、好ましいことである。特に、前記したように、表皮部分が剥ぎ取られた木質材を、さらに粉砕して粉体を得ることが可能である構成とした場合、木質材を順次、押し出すようにして粉体製造に供することもできる。
【0016】
前記回転切削機構は、一本の木質材から表皮部分の粉砕を終えた後は、次の木質材の表皮部分粉砕を行うまで、前記木質材が通過し得る位置から離間する構成とすることができる。ここで、前記木質材が通過し得る位置から前記回転切削機構を離間させるように、前記回転切削機構の位置を決める位置決め手段を備える構成とすることができる。また、前記位置決め手段は、木質材の存在を検知するセンサと接続され、当該センサの検知位置で木質材の存在が検知されなくなってから所定時間の経過後に前記回転切削機構の位置を移動させる構成とすることができる。
【0017】
本発明の第2の粉体製造装置として、複数のチップソーを回転させつつ、前記複数のチップソーの外刃を木質材表皮部分外周に公転的に押入することにより前記木質材表皮部分から粉体を製造する構成も可能である。装置は大型化、複雑化する可能性はあっても、このような形態も本願の技術的思想に含まれる。
【0018】
本発明の粉体製造方法は、複数のチップソーを回転させつつ、前記複数のチップソーの外刃を木質材表皮部分外周に押入することにより前記木質材表皮部分を粉砕し、粉体を製造することを特徴としている。
【0019】
木質材を回転させつつ軸方向に移動させる回転移送ステップと、積層された複数のチップソーを回転させつつ、前記複数のチップソーの外刃を前記木質材表皮部分に押入することにより前記木質材表皮部分を粉砕し、粉体を製造する回転切削ステップとを含むことができる。
【0020】
前記チップソーの前記木質材表皮部分への押入深さは、約5mm以上であり、木質材表皮部分が粉砕された後の木質材から、さらに、当該木質材の粉体を製造するようにすれば、バイオマス化学材料の生産に好適である。
【0021】
前記チップソーの前記木質材表皮部分への押入深さが、竹の表皮部から抗菌成分を得る目的のために約0.3mm程度である構成とすると、例えば竹の表皮部分(抗菌成分を多く含む)からの粉体を製造するために好適である。このように、竹の表皮部分のみから得られた竹パウダーは従来無かったものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る粉体製造装置等によると、木質材表皮部分の粉体を容易に製造することができるという効果を奏する。また、回転切削機構が表皮部分に押圧される押圧力、回転切削機構が表皮部分に入り込む深さなどを調整すれば、確実に表皮を剥がずことができるという効果も得られる。バイオマス化学材料の生産においては、竹や木材に表皮部分が残ってしまうことで品質低下につながるという問題もあり、本発明によれば係る問題点の解決を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態における木質材表皮部分の粉体製造機構の概略構成の一例について説明するための模式図である。
【図2】表皮部分が剥がされた後の木質材100から、さらに表皮部分以外の粉体を製造する機構の実施形態の一例について説明するための模式図である。
【図3】本発明の実施の形態において、粉体製造機構に複数本の木質材を順次転送する機構の実施形態の一例について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態における粉体製造装置の概略構成の一例について説明するための模式図である。
【0025】
木質材100は、例えば竹、杉、ヒノキなどであり、略円柱状(棒状)の形状を有する。木質材内部には中空部分を含んでいても良い。木質材100は、木質材100の軸方向に所定の角度を持って設けられた送りローラ101a〜101cの回転により、矢印A方向に回転しつつ、軸方向に移動する。図1には、木質材100の下方のみに送りローラ101a等が設けられているが、木質材100の上方側に押えローラを設ける構成としても良い。また、図1には、送りローラ101a等、木質材100の軸方向略同一の位置には一つの送りローラのみ図示しているが、例えば図3に示すように、軸方向略同一の位置に二つの送りローラを設けて、両ローラの間に木質材100を載置して移動させる構成とすれば、より好ましい。
【0026】
送りローラ101a等の外周周囲には、例えばゴム製のリングが取り付けられており、同図には不図示の駆動機構により、送りローラが回転駆動される。なお、前記送りローラ101a等としては、外周周囲にチェーンスプロケットの複数の歯先の先端を尖らせる加工を施した回転体を用いることもできる。本実施の形態の粉体製造装置は、送りローラ101a等により回転しつつ移動する木質材100の表皮部分に、複数の積層された切削歯(外刃)を有する回転切削機構を、当該切削歯を回転させつつ接触させることにより、木質材100の表皮部分のみを粉砕して表面部分の粉体を一工程で容易に得ることができる。ここで、前記回転切削機構を木質材100表皮部分に押圧するようにすれば、表皮部分を確実に剥ぎ取ることができ、バイオマス化学材料の生産に好適な木質材が得られる。
【0027】
以下、回転切削機構の実施形態の一例について説明する。図1において回転切削機構は、5枚の木質材用チップソー108a〜108eを含む。同図の例では5枚のチップソーが図示されているが、チップソーの枚数に特に限定はなく、好ましくは4枚以上、より好ましくは20枚程度のチップソーを積層して用いることができる。複数枚の積層したチップソーが木質材に接する木質材100軸方向の幅は、例えば65mm程度とすることができるが、これに限定されない。チップソー108a等としては、例えば直径25cm程度であり、外周部に100箇所以上の切刃(外刃)が設けられた鋼製のものを用いることができるが、木質材表皮部分を粉体へと粉砕することができれば、特に直径、切刃の数、材質等に限定はない。これらは、目的とする粉体のサイズ、使用目的(表皮部分の粉体の製造を主たる目的とするか、確実に表皮部分を剥ぎ取ることを主たる目的とするか)などによって、設計が変更され得る。チップソーの重量によっては、後述するチップソーの位置決めに要するモータが高価となる可能性もあるから、低コスト化のために、チップソーの重量、枚数等を適宜選択することができる。
【0028】
図1の例では、チップソー108a〜108e、それぞれの間に鋼製のスペーサ109を挟んでいるけれども、スペーサを介して積層することは必須でなく、チップソー同士を直接積層するようにしても構わない。チップソー108a〜108e、スペーサ109は、いずれも回動軸110を中心として回動可能なアーム111内のモータ113により、矢印B方向に、例えば毎分1800〜3600回転させて木質材100の表面部分を粉砕して粉体114aを得る。本実施の形態では、モータ113の逆側に、金属製のブラシ112を設けており、チップソー108a等と等速度で回転させて、木質材100表面部分の剥ぎ残し部分をさらに粉砕し、さらに確実に表皮を剥ぎ取るとともに表皮部分の粉体を得る構成としているが、このブラシ112の実装は必須ではない。
【0029】
一方、チップソー108aの図中左側には、チップソーの回転軸と同芯にチップソーの外径よりも小さな外径をもち、一定の厚さをもつストッパ1091が取り付けられている。ストッパ1091は、例えば鋼板で形成することができ、厚さは、例えば10mmとすることができるが、これに限定されない。チップソーが木質材100に押入する深さQは、ストッパ1091の外径とチップソーの外径の差であり、チップソーが木質材100を粉砕する木質材100の表皮部分の厚さとして設定できる。即ち、木質材100の外径が変化しても、外径寸法とは無関係に一定の厚さ部分が粉砕され、確実な皮剥ぎが実現できる。なお、チップソーの押入深さQは、竹の表皮部分からの粉体を得る場合には約0.3mm、木質材100から表皮部分を剥ぎ取ってバイオマス化学材料に用いる場合など、より確実に木質材100の表皮部分を剥ぎ取りたい場合には、5mmから15mm程度とすることができる。
【0030】
なお、本実施の形態では、ストッパ1091の、さらに図中左側に、筋入れカッター103を設けて木質材100表皮部分の軸方向の繊維をせん断するようにして、木質材100の粉砕を補助し、より確実に表皮部分を剥ぎ取ることが可能な構成としている。
【0031】
この筋入れカッター103は、例えば円筒状のドラム102に固着して、前記回動軸110の回動に伴って移動可能に取り付けられた取り付け部104、軸104aが回動可能であるように取り付けられる。筋入れカッター103は、必ずしもモータ等で回転させる必要はなく、木質材100表皮部分に押入して木質材100表皮部分の繊維をせん断することが可能であれば良い。筋入れカッター103の押入深さ(ドラム102の外径と筋入れカッター103の外径との差)Pは、例えば5mm〜10mmとすることができるが、これに限定されない。筋入れカッター103により、木質材100表皮部分は、螺旋103a状に深さPでせん断されて、チップソー108a〜108eによる粉砕に供される。もっとも、この筋入れカッター103も、実装は必須ではない。
【0032】
木質材100自体の軸方向の長さは任意であるが、本実施の形態では、後述するように、複数本の木質材を順次表皮剥ぎ取りに供することができるように構成しているため(図3参照)、木質材100の存在を検出するセンサ105a及び105bを設けている。センサ105a、105bの出力により、チップソー108a〜108eを含む回転切削機構を上げ下げするようにしている。センサ105a及び105bの出力は、例えばPLC(シーケンサ)等を主として構成される制御部106に入力され、制御部106によって位置決めモータ107が動作する。位置決めモータ107としては、例えばギヤードモータを用いることができる。位置決めモータ107は、前記したように回動軸110を回動させ、チップソー108a等やブラシ112、取り付け部104を上げ下げするように制御する。
【0033】
例えば、センサ105bの出力がオフ(木質材100が存在しない)であって、センサ105aの出力がオン(木質材100が存在する)と検出された場合、センサ105aがオンとなった後、所定時間の経過後に位置決めモータ107を駆動して、ドラム102が木質材100に接触するように回動軸110を回動させる。この際には、位置決めモータ107の駆動に限らず、位置決めモータ107の電源を切り、チップソー108a等の自重で落下させる構成も可能である。位置決めモータ107の電源を切らずとも(チップソー108a等の外刃への衝撃を減ずるべく)、回動軸110を、回転切削機構が木質材100に徐々に近づくように位置決めモータ107を制御して、回転切削機構の木質材100表皮部分への押入は回転切削機構の自重に任せるような構成とすることも好ましい。
【0034】
木質材100は、送りローラ101a等により、軸方向に移動するため、センサ105aがオンとなった後、更なる時間の経過によりセンサ105bの出力もオンとなる。例えば、このタイミングでチップソー108a等の回転を開始し、チップソー108aの位置に到達した木質材100表面の粉砕を開始させることができる。もっとも、チップソー108a等の回転開始のタイミングは、これに限定されない。
【0035】
木質材100の末端がセンサ105aの位置を通過し、次の木質材が存在しないとすると、センサ105aの出力はオフとなるが、センサ105bがオンである間は、チップソー108等による木質材100表面の粉砕を継続する。そして、木質材100の末端がセンサ105bの位置を通過し、センサ105bの出力がオフとなって、所定時間の経過後に、次の木質材を受け入れるべく、位置決めモータ107を駆動し、チップソー108a等の回転切削機構を図中上方に移動させる。なお、位置決めモータ107の駆動タイミング等は、木質材100の移動速度(送りローラ101aの回転速度等)に合わせて、適宜設定するようにすれば良い。
【0036】
以上のように、図1に例示された構成の回転切削機構により、木質材100表皮部分からの粉体114aを一工程で容易に得ることもできるし、木質材100の表皮部分を確実に剥ぎ取るようにすることもできる。表皮部分の切削が終了した木質材100は、本実施の形態の例では、送りローラ101dにより、後述する、表皮部分以外の粉体製造機構へと送られる。
【0037】
図2は、本実施の形態において、上記に詳述したように、表皮部分が剥ぎ取られた後の木質材100から、さらに表皮部分以外の粉体を製造する粉体製造機構の構成の一例について説明するための模式図である。図2(a)は側面図(木質材100の置き台133は図示を省略)であり、図2(b)は、図2(a)を矢印H方向から見た様を示す模式図である。
【0038】
表皮部分が剥ぎ取られた木質材100は、図2(b)に示される置き台133上へと移送される。置き台133下面には、本実施の形態では5本の空溝が設けられ、それぞれに、木質材100を図2(a)右方向に移動させるチェーン130a〜130eが挿通している。チェーンの本数は5本に限らず、後述する図2における回転切削機構に抗して木質材100を図2(a)中右方向に押圧することができれば何本でも構わない。
【0039】
表皮が剥ぎ取られた木質材100は、木質材100先端が、モータ117によって矢印C方向に回転するチップソー115a〜115gに当接して順次粉体114bが製造される。本実施の形態では、7枚のチップソー115a〜115gがスペーサ116を介して積層されている。チップソー115a〜115gは外径が約27cmで外刃の数は約40〜100程度であり、モータ117により、1分間に1800〜3600回転の速度で回転している。木質材100は、一端がバネ1191で引っ張られて木質材100を置き台133上に付勢する押さえ部材119により、置き台133上に押圧されている。
【0040】
チェーン130(130a〜130e)は、図示しないモータにより駆動軸131が回転して木質材100を順次チップソー115a〜115g側へと押圧し、粉体製造に供される。ちなみに、図2に示した、表皮部分以外の木質材100の回転切削機構は、図1に示した表皮部分の回転切削機構と同一の筐体に設けられることは必須ではなく、別筐体であっても良い。また、モータ117の回転や駆動軸131の回転は、図1に示したセンサ105a又は105bの出力を参照して制御することも可能ではあるが、オペレータの手動により、オン/オフを切り替えるようにしても良い。
【0041】
最後に、複数本の木質材を順次転送して、上記に詳述したような粉体製造に供する部分の機構の一例について説明する。図3は、本実施の形態において、粉体製造部分に複数本の木質材を順次転送する部分の構成の一例について説明するための模式図である。
【0042】
図3(a)は、複数本の木質材転送機構を上方から見た図、図3(b)は図3(a)を矢印G方向から見た模式図である。実際に図3(a)に示される矢印F方向に移送され、図1に示した表皮部分粉砕機構に送られる木質材100の他に、同図の例では、木質材100a〜100dが図示されており、これらが順次、表皮部分粉砕機構に転送されるように構成されている。
【0043】
木質材100a〜100dは、表皮部分粉砕機構に転送される前の木質材であって、図3の例では、3本のチェーン121a〜121c上に載置されて待機している。木質材100が送りローラ1011aおよび1012a、1011bおよび1012bにより、矢印F方向に移動して、図1に例示される回転切削機構(表皮部分の粉砕機構)での処理に供される。送りローラ1011aおよび1012a、1011bおよび1012bは、例えば、直径70mmから220mm程度の木質材100を矢印F方向に移動させることが可能な間隔で配され、不図示の駆動機構で回転駆動される。
【0044】
木質材100の全体が、矢印F方向に移動し、図1に示した機構に送られると、次の木質材100aが送りローラ1011aおよび1012a等の上に転送される。具体的には、モータ127により回転軸1271が回転し、アタッチメント1291a、1292aが取り付けられたチェーン124a等(図3(a)には、チェーン124a、124b、124cの3本が図示されている)が矢印E方向(図3(b)参照)に駆動され、アタッチメント1292a(図3(b)参照)、1292b、1292cにより、チェーン121a〜121cから上方に持ち上げられる。持ち上げられた木質材100aが、アタッチメント付きチェーン124a、124b、124cからガイド板135上を滑り落ちて、送りローラ1011a、1012a、1011b、1012b上に移動する。ガイド板136は、木質材100aが滑り落ちる勢いで、木質材100aが送りローラ1011a、1012a、1011b、1012b上を外れて落ちてしまわないために設けられている。
【0045】
木質材100aが送りローラ1011a、1012a上に送られると、モータ120が回転して、回転軸1201が回転し、ギア123a、123b、123cが回転してチェーン121a、121b、121c上の木質材100b〜100dが矢印D方向に移動する(図3(b)参照)。この際、モータ127は回転を停止しており、アタッチメント付きチェーン124a、124b、124cは駆動していない。そして、木質材100bが、次に、送りローラ1011a、1012a、1011b、1012b上へと送られる待機状態となる。木質材100aも、その全体が表皮剥ぎ取り、粉体製造処理に供されると、モータ127が所定量回転し、木質材100bは、アタッチメント1291a等により、送りローラ1011a、1012a、1011a、1012b上に送られることになる。
【0046】
以上のように、木質材100から、100a、100bと順次転送されて、図1の機構による表皮部分の剥ぎ取り、図2の機構による粉体製造に供されるので、図2の粉体製造機構においては、粉体製造に供される木質材が、次の木質材によって押圧されることになり、チップソー115a〜115gを含む図2の粉体製造機構による粉体製造に、順次、円滑に供されることになる。
【0047】
以上に説明したように、本実施の形態の粉体製造装置によれば、木質材表皮部分の粉体を、表皮部分以外の他の部分の粉体と分離して、一工程で容易に製造することができる。また、複数の送りローラを設置して、その上に木質材を載置する構成によれば、例えば直径約70mm〜220mm程度の任意の直径の木質材について、特に人手による調整を行うことなく、粉体化処理を行うことができる。ストッパ1091とチップソー108a〜108eの直径の差Qの長さを調整することにより、表面部分のみの粉体を製造することもできるし、より確実に表皮部分を剥ぎ取る構成とすることもできる。さらに、複数本の木質材を人手を介さずに、連続的に粉体化処理に供することも可能となる。
【0048】
なお、上記実施の形態では、例えば図1に示すように、木質材100側を回転させつつ移動させて、チップソー108a〜108e等により、木質材表皮部分を粉砕する構成としたが、装置の大型化、複雑化をいとわなければ、チップソーの側が木質材周囲を回転するような構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば、竹、杉、ヒノキなどの木質材から粉体を製造する粉体製造装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
100 木質材(竹、杉、ヒノキなど)
101a〜101d 送りローラ
1011a、1012a 送りローラ
1012a、1012b 送りローラ
102 ドラム
103 筋入れカッター
104 取り付け部
105a、105b センサ
106 制御部
107 位置決めモータ
108a〜108e チップソー
109 スペーサ
110 回動軸
111 アーム
112 ブラシ
113 モータ
114a 木質材表皮部分の粉体
114b 木質材表皮部分以外の粉体
115a〜115g チップソー
116 スペーサ
117 モータ
119 押さえ部材
1191 バネ
120 モータ
121a〜121c チェーン
124a〜124c アタッチメント付きチェーン
127 モータ
1291a アタッチメント
1292a〜1292c アタッチメント
130(130a〜130e) チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形状の木質材を回転させつつ軸方向に移動させる回転移送機構と、
積層された複数枚のチップソーを回転させつつ、前記複数枚のチップソーの外刃を前記木質材表皮部分に押入することにより前記木質材表皮部分を粉砕し、粉体を製造する回転切削機構とを備える
ことを特徴とする木質材の粉体製造装置。
【請求項2】
前記チップソーの外刃が前記木質材表皮部分に押入される深さを規制するストッパを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の木質材の粉体製造装置。
【請求項3】
前記チップソーの前記木質材表皮部分への押入深さが、竹の表皮部から抗菌成分を得る目的のために約0.3mm程度である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の木質材の粉体製造装置。
【請求項4】
前記チップソーの前記木質材表皮部分への押入深さが約5mm〜15mm程度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の木質材の粉体製造装置。
【請求項5】
前記回転切削機構の自重により、前記チップソーの外刃が前記木質材表皮部分に押入する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の木質材の粉体製造装置。
【請求項6】
前記木質材表皮部分が、前記チップソーにより粉砕される前に、前記木質材表皮部分の繊維をせん断する筋入れカッターを備える
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の木質材の粉体製造装置。
【請求項7】
前記チップソーにより表皮部分が粉砕された木質材の表面から、さらに表示部分を取り除くブラシを備える
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の木質材の粉体製造装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の粉体製造装置により、表皮部分が剥ぎ取られた木質材を、さらに粉砕して粉体を得ることが可能である
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の木質材の粉体製造装置。
【請求項9】
前記回転移送機構に、複数本の木質材を順次転送する木質材転送機構を備える
ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の木質材の粉体製造装置。
【請求項10】
前記回転切削機構は、
一本の木質材から表皮部分の粉砕を終えた後は、次の木質材の表皮部分粉砕を行うまで、前記木質材が通過し得る位置から離間する
ことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の木質材の粉体製造装置。
【請求項11】
前記木質材が通過し得る位置から前記回転切削機構を離間させるように、前記回転切削機構の位置を決める位置決め手段を備える
ことを特徴とする請求項10に記載の木質材の粉体製造装置。
【請求項12】
前記位置決め手段は、
木質材の存在を検知するセンサと接続され、当該センサの検知位置で木質材の存在が検知されなくなってから所定時間の経過後に前記回転切削機構の位置を移動させる
ことを特徴とする請求項11に記載の木質材の粉体製造装置。
【請求項13】
複数のチップソーを回転させつつ、前記複数のチップソーの外刃を木質材表皮部分外周に公転的に押入することにより前記木質材表皮部分から粉体を製造する
ことを特徴とする木質材の粉体製造装置。
【請求項14】
複数のチップソーを回転させつつ、前記複数のチップソーの外刃を木質材表皮部分外周に押入することにより前記木質材表皮部分を粉砕し、粉体を製造する
ことを特徴とする木質材の粉体製造方法。
【請求項15】
木質材を回転させつつ軸方向に移動させる回転移送ステップと、
積層された複数のチップソーを回転させつつ、前記複数のチップソーの外刃を前記木質材表皮部分に押入することにより前記木質材表皮部分を粉砕し、粉体を製造する回転切削ステップとを含む
ことを特徴とする請求項14に記載の木質材の粉体製造方法。
【請求項16】
前記チップソーの前記木質材表皮部分への押入深さは、約5mm以上であり、
木質材表皮部分が粉砕された後の木質材から、さらに、当該木質材の粉体を製造する
ことを特徴とする請求項14又は15に記載の粉体製造方法。
【請求項17】
前記チップソーの前記木質材表皮部分への押入深さが、竹の表皮部から抗菌成分を得る目的のために約0.3mm程度である
ことを特徴とする請求項14又は15に記載の粉体製造方法。
【請求項18】
請求項3に記載の粉体製造装置、又は請求項17に記載の粉体製造方法により得られたことを特徴とする竹パウダー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−110728(P2011−110728A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266886(P2009−266886)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】