説明

粉体飛散曝露装置

【課題】 様々な大きさの試験用チャンバーにおいて、信頼性の高い粉体飛散曝露試験が可能となる程度の一様な粉体の濃度分布を有し、かつ、被験者に不自然な風が当るようなことのない粉体飛散曝露を提供する。
【解決手段】 粉体の出入を遮断可能なチャンバーと、粉体を含んだ気体(粉体混合気)をチャンバーへ供給する粉体混合気供給手段と、粉体混合気供給手段により供給される粉体混合気をチャンバー内で旋回するように流して、粉体をチャンバー内に飛散させる粉体飛散手段と、を含む粉体飛散曝露装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバー(試験室)の中に粉体を飛散させて粉体の飛散曝露試験を行なう臨床試験のための装置に関し、特に、花粉に関する飛散曝露試験を行なう装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な公害物質を始めとする粉体が大気中に浮遊し、人体に悪影響を与えている。また、近年、特に、スギ花粉に代表される大量の花粉が大気中に浮遊して、人にアレルギー症状を引き起こすいわゆる花粉症が問題になっている。
この花粉症の問題を解決するため、マスクに代表されるような、人が花粉を吸い込むことを防ぐ防護器具の開発や、花粉症の諸症状に効果のある医薬品、健康食品の開発が急務となっている。
【0003】
これらの防護器具や医薬品、健康食品の開発を行なうためには、所定の花粉濃度を有する空間に被験者を留めて、一定期間、飛散する花粉に曝露させる花粉飛散曝露が可能な環境を設ける必要がある。しかし、花粉の真比重は大きく、自然界では大気の風速や風向きが変化するので、所定の花粉濃度を有する花粉飛散曝露試験が可能な環境を、一定期間保つことは困難である。
【0004】
所定の花粉濃度を有する花粉飛散曝露試験が可能な環境を設ける方法としては、例えば、人ひとりが入れる程度の小さなチャンバーの上部から花粉を降り注いで、所定の花粉濃度を有する環境を設ける方法が提案されている。また、複数の人間を同時に曝露させる花粉飛散曝露試験が実施可能な環境を設ける方法として、被験者の前面から複数の送風機を回して、被験者の集まる領域へ花粉を飛散させる方法が提案されている。
更に、花粉を始めとする粉体を散布する装置についても、様々な装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2000−055711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の人ひとりが入れる程度のチャンバーを用いた方法では、複数の人を同時に曝露させることはできないので、信頼性のある試験データを得ることができない。また、このチャンバーのサイズを大きくするだけでは、チャンバー内の花粉濃度分布が一様とならないので、場所によって被験者の花粉曝露量が異なり、信頼性のある試験データを得ることは困難である。
【0006】
また、送風機を回して被験者の集まる領域へ花粉を飛散させる方法では、複数の被験者を同時に曝露させることはできるが、送風機による風がかなり強く被験者に当るため、自然界で人が花粉を吸い込む環境とはかなり異なった環境設定となり、適切な試験データが得られない問題が生じる。
【0007】
更に、特許文献1に記載の粉体供給装置は、あくまで、装置内での粉体の詰まりを解消する課題を解決するための発明であり、この装置によって、一様な粉体の濃度分布を得ることはできない。
【0008】
従って、本発明の目的は、上述の問題を解決し、様々な大きさの試験用チャンバーにおいて、信頼性の高い粉体飛散曝露試験が可能となる程度の一様な粉体の濃度分布を有し、かつ、被験者に不自然な風が当るようなことのない粉体飛散曝露を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の問題を解決するため、本発明の粉体飛散曝露装置の第1の実施態様は、 粉体の出入を遮断可能なチャンバーと、粉体を含んだ気体(粉体混合気)を前記チャンバーへ供給する粉体混合気供給手段と、前記粉体混合気供給手段により供給される前記粉体混合気を前記チャンバー内で旋回するように流して、前記粉体を前記チャンバー内に飛散させる粉体飛散手段と、を含むことを特徴とする。
【0010】
ここで、「粉体」とは、花粉、ほこり、金属粉を始めとするあるゆる粉末物質が含まれ、あらゆる比重のあらゆる粒子径の粉体が含まれる。また、「気体」には、空気を始めとするあらゆる気体が含まれ、「粉体混合気」に含有される粉体の濃度は、あらゆる濃度のものが含まれる。
【0011】
「チャンバー」は、外殻によって外部と仕切られた空間を内部に有し、この空間と外部の間で粉体の出入を遮断することが可能な構造になっている。チャンバーの形状としては、箱形、円筒形、円錐形、角錐形、球形、またはそれらの組み合わせを始めとするあらゆる形状のものが含まれる。ただし、これまでの試験データから考えると、一様な粉体の濃度分布を得るためには、矩形の断面形状を有するよりも、円形または6角以上の正多角形の断面形状を有する方が有利である。
【0012】
チャンバーの大きさとしては、例えば、小動物を収容するのに適した大きさから、多人数の人を収容できる大きさまで、あらゆる大きさのチャンバーが含まれる。外殻の材料としては、金属、木材、樹脂を始めとするあらゆる材料を用いることができる。
【0013】
「粉体混合気供給手段」は、粉体を含む気体を供給するものであればあるゆる装置、機構が含まれる。例えば、吸引力を生じさせて気体の中に粉体を含有させることも考えられるし、気体中に粉体を吹き込むことによって粉体を含有させることも考えられる。また、粉体を含む気体が容器等に貯蔵されている場合には、送風機等により容器に送風を行なって、貯蔵された気体を供給することも考えられる。
【0014】
「粉体飛散手段」については、チャンバー内で粉体混合気を旋回させることのできるものであればあらゆる装置、機構が含まれる。粉体の比重を考慮すると、チャンバー内を旋回する粉体混合気は、重力により徐々に降下していくことが考えられるが、粉体混合気を旋回させるだけでなく、更に、粉体混合気に上向きまたは下向きの気流を加えることも考えられる。
【0015】
本実施態様によれば、粉体混合気をチャンバー内で旋回させることによって、チャンバー内の全領域に粉体を飛散させ、チャンバー内に粉体の一様な濃度分布を形成することができる。
【0016】
本発明の粉体飛散曝露装置のその他の実施態様は、前記粉体飛散手段が、円環状の流路と、前記円環状の流路の接線方向に前記粉体混合気を吹き込む少なくとも1つの吹込口と、を有する第1の旋回流発生装置を含むことを特徴とする。
【0017】
本実施態様によれば、円環状の流路の接線方向に粉体混合気を吹き込むことによって、確実に旋回流を発生させることができる。吹込口は、例えば、吹き込み風量や円環状の流路の大きさに応じて、任意の個数の吹込口を設けることができる。また、第1の旋回流発生装置の設置個数も、チャンバーの大きさや形状に合わせて、任意の数の装置を設置することができる。
【0018】
本発明の粉体飛散曝露装置のその他の実施態様は、前記粉体飛散手段が、前記第1の旋回流発生装置による前記旋回流の接線方向に送風を行なう少なくとも1つの吹出口を有する第2の旋回流発生装置を含むことを特徴とする。
【0019】
第1の旋回流発生装置により発生した粉体混合気の旋回流は、徐々に流速が低下すると考えられるが、本実施態様の第2の旋回流発生装置を用いて、旋回流の接線方向に送風を行なうことによって、低下した旋回流の流速を補うまたは回復させることが可能である。また、第2の旋回流発生装置の送風の強さによっては、旋回流の流速を更に増すことも可能である。
【0020】
第2の旋回流発生装置による送風は、外部の気体を取り込んでチャンバー内の旋回流に吹き込むことも可能であるし、チャンバー内に設置した内部送風機として、チャンバー内の旋回流の流速を増すことも考えられる。吹出口の個数は、チャンバーの形状、チャンバーの大きさ、送風の強さ等に応じて、任意の個数の吹出口を設定することができる。
【0021】
本発明の粉体飛散曝露装置のその他の実施態様は、前記第1の旋回流発生装置が前記チャンバーの上部に設置され、前記第2の旋回流発生装置が前記第1の旋回流発生装置の設置位置よりも下方に設置されることを特徴とする。
【0022】
本実施態様によれば、チャンバーの上部に設置された第1の旋回流発生装置によって、粉体混合気は旋回しながら徐々に降下していき、降下するにつれて旋回流速は低下していく。しかし、第1の旋回流発生装置よりも下方に設置された第2の旋回流発生装置によって、粉体混合気は再び旋回力を加えられ、チャンバー内全体に粉体を飛散させることができる。
【0023】
本発明の粉体飛散曝露装置のその他の実施態様は、前記第2の旋回流発生装置が、前記チャンバー内で被験者が前記粉体混合気体を吸い込む位置よりも上方に設置されていることを特徴とする。
【0024】
ここで、「被験者」とは、チャンバーの中に留まって、粉体飛散曝露試験を受ける者を意味し、その人数は試験の用途、目的に応じて任意の数を設定することができる。被験者は、例えば、試験用の動物であってもよい。また、被験者は、チャンバーの床面上で粉体飛散曝露試験を受け、具体的には、床面上に立つ、床面上に座る、床面上に置いた椅子に座る、等の態様が考えられる。
【0025】
本実施態様では、第2の旋回流発生装置が、被験者が粉体混合気を吸い込む位置よりも上方に設置されているので、第2の旋回流発生装置により旋回力を与えられた粉体混合気は、降下するにつれて旋回流速を低下させ、被験者が粉体混合気体を吸い込む位置では流速が非常に低くなるように設定できる。従って、本実施態様によれば、チャンバー内に一様な粉体の濃度分布を得るだけでなく、自然界で人が粉体を吸い込むときと同様の試験環境を設定することができる。
【0026】
本発明の粉体飛散曝露装置のその他の実施態様は、前記第2の旋回流発生装置により、更に、前記チャンバー内の空調を行なうこともできることを特徴とする。
【0027】
本実施態様によれば、第2の旋回流発生装置が空調の機能も果たし、チャンバー内の温度と湿度を所望の値にコントロールすることができる。従って、被験者が長時間、粉体飛散曝露試験を受けることが可能な環境を設定することが可能であり、更に、様々な自然条件、環境をシミュレーションした粉体飛散曝露試験を行なうことも可能である。
【0028】
本発明の粉体飛散曝露装置のその他の実施態様は、前記チャンバーの断面形状が、円形または角数が6以上の正多角形であることを特徴とする。本実施態様により、チャンバー内に一様な粉体の濃度分布を形成することができる。
【0029】
本発明の粉体飛散曝露装置のその他の実施態様は、前記粉体混合気供給手段が、気体の流れによる負圧を用いて吸い込んだ粉体を含む圧縮空気を、送風機により送風される空気中に吹き込むことによって、所定の粉体濃度の前記粉体混合気を供給することを特徴とする。
本実施態様により、粉体が気体の中に一様に混合された粉体混合気を作り、チャンバーへ供給することができる。
【0030】
本発明の粉体飛散曝露装置のその他の実施態様は、前記粉体が、花粉であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の粉体飛散曝露装置によれば、粉体混合気をチャンバー内で旋回させることによって、任意の大きさのチャンバー中に、一様な粉体の濃度分布を有する粉体飛散曝露試験の環境を得ることができる。
更に、被験者が粉体を吸い込む位置で、粉体混合気の流速を小さくして、自然環境下に近い粉体飛散曝露試験の環境を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の粉体飛散曝露装置の実施形態について、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
【0033】
(装置全般の説明)
図1に、本発明の粉体飛散曝露装置の1つの実施形態の外形図を示す。本実施形態では、チャンバー(試験室)内に粉体として(スギ)花粉を飛散させる場合を例にとって説明する。図1(a)には、装置の外形を上方から見た平面図を示し、図1(b)には側面図を示す。また、図2には、図1(b)の矢印Aから見た断面図を示す。
【0034】
本発明の粉体飛散曝露装置は、チャンバー2と、チャンバー2へ花粉を含んだ空気を供給する粉体混合気供給手段3と、粉体混合気供給手段3により供給される花粉を含んだ空気をチャンバー2内で旋回するように流して、花粉をチャンバー内に飛散させる粉体飛散手段4と、を含む。
【0035】
本実施形態では、チャンバー2は内接円の直径が6mの正八角形の断面形状(床形状)を有し、チャンバー2の高さは約4.2mである。また、チャンバー2の屋根部分は八角錐台状の形状になっていて、上部にいくにつれて狭められている。
更に、チャンバー2の附帯設備として、被験者がチャンバー2へ入る前に通過する前室2aとエアシャワー室2bとが、チャンバー2に接続されている。
【0036】
粉体混合気供給手段3は、圧縮空気を発生させる圧縮空気発生装置10と、発生された圧縮空気に花粉を含有させて花粉混合気を作り出す粉体混合気発生装置20と、配管25、分岐管25a、bを経て送られる花粉混合気と、送風機32a、bにより送風される空気とを混合して、配管34a、bからチャンバー2の上部に設置された第1の旋回流発生装置40へ送り込む粉体混合気送込機構30と、を含む。
粉体混合気送込機構30は、分岐管25aから送られる花粉混合気と送風機32aにより送風される空気とを混合して、配管34aから第1の旋回流発生装置40の吹込口40aへ送り込む第1送込機構30a(図1(b)で右側の機構)と、分岐管25bから送られる花粉混合気と、送風機32bにより送風される空気とを混合して、配管34bから第1の旋回流発生装置40の吹込口40bへ送り込む第2送込機構30b(図1(b)で左側の機構)と、を含む。
【0037】
また、図1(b)に示すように、本実施形態では、圧縮空気発生装置10と粉体混合気発生装置20は地上に設置され、粉体混合気送込機構30を構成する各機器は、チャンバー2の屋根部分に設置されている。ただし、これらの機器の配置は、状況に応じて、任意に配置することができる。
【0038】
粉体飛散手段4は、チャンバー2の上部に設置された第1の旋回流発生装置40と、第1の旋回流発生装置40よりも下方に設置された第2の旋回流発生装置42を含む。第1の旋回流発生装置40は、図1(a)の矢印に示すように、粉体混合気送込機構30によって送り込まれた花粉混合気を、チャンバー2内で円弧状に流れるように吹き込む。第2の旋回流発生装置42は、図2に示すように、第1の旋回流発生装置40の働きにより旋回しながら下降する花粉混合気の接線方向に気流を加えて、旋回力を付加する働きをする。
【0039】
本実施形態では、第1の旋回流発生装置40はチャンバー2の床から約4.2mの高さに設置され、第2の旋回流発生装置42はチャンバー2の床から約2mの高さに設置されている。また、チャンバー2内の空調(温度と湿度のコントロール)を行なうこともできるように、第2の旋回流発生装置42として、エアコンが用いられている。なお、粉体飛散曝露試験を受ける被験者は、チャンバーの床から70cmから1mの高さで粉体混合気を吸うように設計されている。
【0040】
また、図2に示すように、本実施形態では、更に、チャンバー2内の換気を行なう吸気装置50と排気装置52とが備えられている。上述の第2の旋回流発生装置42、吸気装置50、及び排気装置52にはフィルタが備えられており、外部の不純物がチャンバー2内に混入したり、チャンバー2内の花粉が外部に漏れたりすることを防いでいる。また、吸気装置50と排気装置52とは、上述の花粉混合気の流れを乱さないように、非常に低い流速で換気を行なうように設計されている。
【0041】
(気体の流れの説明)
次に、図1と図2とを用いて、気体の流れを説明する。図の配管部分に示す矢印は、気体の流れを示す。
まず、圧縮空気発生装置10により、圧縮空気を発生させる。この圧縮空気発生装置10は、後述するように圧縮機と乾燥器を備え、乾燥した圧縮空気を発生させることができる。また、更に、流量制御弁を備え、所望の流量に制御することができる。
【0042】
この圧縮空気は、配管14を通って粉体混合気発生装置20へ入る。粉体混合気発生装置20では、後述するようにエジェクタの原理を用いて、粉体貯蔵室に貯蔵された花粉を圧縮空気へ吸い込んで含有させることができる。
【0043】
粉体混合気発生装置20で発生した花粉混合気は、配管25を通って上昇し、分岐管25aと分岐管25bに分岐されて、粉体混合気送込機構30へ接続される。粉体混合気送込機構30は、送風機32aと配管34aから構成される第1送込機構30aと、送風機32bと配管34bから構成される第2送込機構30bと、を含む。
図1(a)(b)に示すように、分岐管25aは配管34aに接続され、分岐管25bは配管34bに接続されるが、分岐管25aと分岐管25bとは、配管25の位置を中心線としてほぼ対称の形状をなしており、花粉混合気が分岐管25aと分岐管25bで等分に流れるように配置されている。
【0044】
分岐管25aから流れる花粉混合気は、配管34aとの接続点34cで送風機32aにより送風される空気中に吹き込まれ、この混合気が配管34a中を流れる間に花粉濃度が一様となり、第1の旋回流発生装置40の吹込口40aへ達する。同様に、分岐管25bから流れる花粉混合気は、配管34bとの接続点34dで送風機32bにより送風される空気中に吹き込まれ、この混合気が配管34b中を流れる間に花粉濃度が一様となり、第1の旋回流発生装置40の吹込口40bへ達する。
【0045】
接続点34c、dの位置は、配管34a、bの送風機32a、bとの接続位置の近傍であるが、接続点34c、dと送風機32a、bとの間には一定の直管部が確保されている。接続点34c、dと第1の旋回流発生装置40の吹出口40a、bとの間には、花粉混合気内の花粉濃度が一様になるのに十分な距離の直管部を確保してある。
【0046】
円環状の流路を有する第1の旋回流発生装置40では、図1(a)の矢印で示すように、分岐管25aにより送り込まれた花粉混合気が、吹き込み口40aから円環状の流路の接線方向に吹き込まれ、同様に、分岐管25bにより送り込まれた花粉混合気が、吹き込み口40bから円環状の流路の接線方向に吹き込まれる。
従って、第1の旋回流発生装置40の円環状の流路で、花粉混合気は旋回するように流れる。そして、この花粉混合気は、チャンバー2内を旋回しながら、重力により下降するが、このとき、チャンバー2の屋根の形状に沿って、旋回径が広がりながら下降する。
【0047】
また、チャンバー2の床から約2mの高さには、正八角形断面形状を有するチャンバー2の対向する2面に、第2の旋回流発生装置の吹出口42aと吹出口42bとが設置されており、図2の白抜き矢印で示すように、旋回しながら下降する花粉混合気の旋回方向に、気流を加えて旋回力を付加する。
以上のように、チャンバー2内における花粉混合気の旋回流により、チャンバー2内に一様に花粉を飛散させることが可能となり、チャンバー2内に一様な花粉の濃度分布を得ることができる。
【0048】
なお、最終的に花粉混合気に含まれる花粉はチャンバー2の床面に堆積されるが、計測装置により花粉濃度を計測する場合や、被験者が基本的には静止している粉体飛散曝露試験においては、床の上の花粉が舞い上がる問題が生じる恐れはない。なお、チャンバー2内の花粉混合気の流れの更に詳細な説明は、後述する。
【0049】
本実施形態では、第2の旋回流発生装置42としてエアコンを用いることによって、チャンバー2内の空気の温度と湿度を所望の値にコントロールすることができる。また、更に、チャンバー2内の換気を行なうため、外気を取り入れる吸気装置50と、内部の空気を外部へ排出する排気装置52とを備えている。これらの第2の旋回流発生装置42、吸気装置50、及び排気装置52には、フィルタが備えられており、外部の不純物がチャンバー2内に混入したり、チャンバー2内の花粉が外部に漏れたりすることを防いでいる。また、上述の花粉混合気の流れを乱さないように、非常に低い流速で換気を行なうように設定されている。
次に、本発明の粉体飛散曝露装置の主要構成機器について、詳細な説明を行なう。
【0050】
(チャンバー2の説明)
本実施形態では、チャンバー2は、直径6mの円が内接する正八角形の床形状を有する。チャンバー2の床形状としては、本実施形態では正八角形を採用しているが、その他の正多角形または円形の床形状を採用することが可能である。ただし、一様な花粉の分布を考慮すると、なるべく角数の多い正多角形または円形が望ましいと考えられる。
チャンバー2の正八角形の床の各辺から、平板状の側壁が高さ2.5mまで垂直に伸び、その上に八角錐台の形状を有する屋根部分が接続している。屋根部分の最上部の高さは、チャンバー2の床面から約4.2mとなっている。
【0051】
チャンバー2には被験者が座る椅子を設置することができ、チャンバー2内で、長時間にわたる花粉の曝露試験を行なうことができる。このチャンバー2内には、30人の被験者を収容することができる。また、チャンバー2内の花粉濃度を測定するために、任意の場所に測定装置を設置することができる。花粉の測定装置としては、連続的に花粉濃度を測定して画面上に表示する自動測定装置を設置することもできる。
花粉混合気に含まれる花粉は、最終的にチャンバー2の床面に堆積するが、上記の測定や試験では、床に堆積した花粉が舞い上がる問題は生じない。ただし、床に絨毯等をひくことによって、花粉の再飛散を更に効果的に防止することができる。
【0052】
チャンバー2の附帯設備として、被験者がチャンバー2へ入る前に通過する前室2aとエアシャワー室2bが、チャンバー2に接続されている。各室には各々扉が設けられており、被験者がチャンバー2へ入るときに、チャンバー2に不純物が混入したり、チャンバー2内の花粉が外部へ流出したりすることを防いでいる。また、エアシャワー室2bは、送風機54により、上部から被験者に空気を吹きつけることによって、被験者の体に付いた不純物を除去することができる。
【0053】
被験者がチャンバー2内に入るときには、まず、前室2aの扉を開けて前室2aの中へ入る。このとき、エアシャワー室2bの扉は閉じた状態になっている。次に、前室2aの扉を閉め、エアシャワー室2bの扉を開けて、エアシャワー室2bの中に入る。このとき、チャンバー2の扉は閉じた状態になっている。次に、エアシャワー室2bの扉を閉め、チャンバー2の扉を開けてチャンバー2の中に入り、チャンバー2の扉を閉める。このとき、エアシャワー室2bではエアシャワー(上方からの空気流)によって、被験者に付いたほこり等の不純物が除去される。
【0054】
(粉体混合気供給手段3の説明)
次に、圧縮空気発生装置10と、粉体混合気発生装置20と、粉体混合気送込機構30と、を含む粉体混合気供給手段3の各構成機器の説明を行なう。
【0055】
<圧縮空気発生装置10の説明>
まず、圧縮空気発生装置10の説明を、各機器を模式的に表した図3(a)を用いて行なう。圧縮空気発生装置10は、圧縮機11と、乾燥器12と、流量制御弁13と、を含む。圧縮機11により所望の圧力の圧縮空気を発生させる。また、圧縮機11の圧縮工程の間に空気中の水分が凝縮するので、乾燥器12によって圧縮空気中の水分を除去する。そして、流量調整弁13によって所望の流量に調整して、配管14によって、圧縮空気を粉体混合気発生装置20へ送る。
【0056】
<粉体混合気発生装置20の説明>
次に、粉体混合気発生装置20の説明を、各機器を模式的に表した図3(a)、(b)を用いて行なう。粉体混合気発生装置20は、溝が円弧状に掘られた円板21と、円盤21を回転させる駆動装置22と、貯蔵した花粉を下部の注ぎ口23aから、回転している円板21の溝部へ注ぎ込む花粉貯蔵室23と、圧縮空気が吹き込まれるときに生じる負圧を用いて円板21(溝内)の花粉を吸引するエジェクタ24と、円板21上の余分な花粉を除去するスクレーパ26と、を含む。
【0057】
図3(b)は、図3(a)の矢印Cで示す部分の詳細な構造を示す図であり、円板21の円弧状の溝を構成する各凹部21aの詳細な断面形状を示す。円板21には、同一の形状、同一の寸法を有する複数の凹部21aが円弧状に配置され、円板21の溝部を形成している。図3(b)に示すように、各凹部21aの断面形状はほぼU字形の形状を有している。
花粉を貯蔵する花粉貯蔵室23の下部は漏斗状になっており、その下端は注ぎ口23aが開口している。図3(a)に示すように、花粉貯蔵室23の中に貯蔵された花粉が、注ぎ口23aから回転している円板21へ注がれる。このとき、花粉は各凹部21aへ充填されると同時に、更に余った花粉が円板21上に堆積する。
【0058】
図3(a)に示すように、円板21が回転することによって、各凹部21aはスクレーパ26の下を通過し、このとき、スクレーパ26によって、円板21の上に堆積した余分な花粉が取り除かれる。このスクレーパ26の働きを、図3(b)に示す。Xで示す領域が、余分な花粉が円板21に堆積したスクレーパ26を通過する前の状態を示し、Yで示す領域が、スクレーパ26によって余分な花粉が取り除かれ、凹部21aの中にだけ花粉が充填された状態を示す。
【0059】
円板21の回転につれて、スクレーパ26を通過した凹部21aは、エジェクタ24の位置へ達する。エジェクタ24では、図3(a)に示すように、圧縮空気が配管14からエジェクタ24内部に、紙面で上向きに吹き込まれる。このとき、エジェクタ24では、圧縮空気が吹き込まれる点より下側に負圧を生じるので、エジェクタ24の下端の開口24aから、凹部21aに充填された花粉を吸い込む。
【0060】
以上のように、圧縮空気発生装置10から供給された圧縮空気中に花粉が吸い込まれ、所望の花粉含有量を有する花粉混合気が、粉体混合気発生装置20によって発生する。特に、各凹部21aは同一の体積を有するので、常に同一量の花粉を圧縮空気に取り込むことができる。なお、円板21の回転速度を変化させることによって、所望の花粉の含有量にコントロールすることができる。また、溝の円弧径を変化させたり、圧縮空気量の供給量や圧力を変化させることによって、花粉の含有量を変化させることもできる。
【0061】
<粉体混合気送込機構30の説明>
粉体混合気発生装置20で発生した花粉混合気は、配管25、分岐管25a、bを通って粉体混合気送込機構30へ送られる。粉体混合気送込機構30は、上述のように、送風機32aと分岐管25aと接続する配管34aとで構成される第1送込機構30aと、送風機32bと分岐管25bと接続する配管34bとで構成される第2送込機構30bと、を含む。
【0062】
第1送込機構30aでは、送風機32aの吐出力により送風される空気に、この送風圧よりも高い圧力を有する花粉混合気を吹き込み、空気量の増した花粉混合気を生成して、第1の旋回流発生装置40の吹出口40aへ送る。ここで、配管34aにおいて、分岐管25aとの接続点34cから第1の旋回流発生装置40の吹出口40aに達するまでの距離は、分岐管25aの内径の5倍以上の値を取ることによって、一様な花粉濃度を有する花粉混合気が得られる。本実施形態においては、配管34aの内径は10cmであり、接続点34cと吹出口40aとの間の距離は50〜100cmに設定される。
【0063】
また、第2送込機構30bに関しても、全く同じ寸法、構造を有しており、第1の旋回流発生装置40を中心としてほぼ対称に配置されている。
【0064】
(粉体飛散手段4の説明)
以上のように、粉体混合気送込機構30により送り込まれた花粉混合気は、第1の旋回流発生装置40と、第2の旋回流発生装置42と、を含む粉体飛散手段4によって、チャンバー2の中を旋回しながら下降して、チャンバー2内に一様な花粉の濃度分布を形成する。
<第1の旋回流発生装置40の説明>
粉体混合気送込機構30から送り込まれた花粉混合気は、まず、第1の旋回流発生装置40を通ってチャンバー2内へ吹き込まれる。図4に第1の旋回流発生装置40の構造を示すための断面図を示す。図4(a)は、図1(a)の矢印Bから見た第1の旋回流発生装置40の断面図であり、図4(b)は、図4(a)の矢印Dから見た(上方から見た)断面図である。
【0065】
図4(b)に示すように、配管34aから送り込まれた花粉混合気は、吹込口40aから、円環状の流路40cの接線方向に吹き込まれる。同様に、配管34bから送り込まれた花粉混合気は、吹込口40bから、円環状の流路40cの接線方向に吹き込まれる。なお、第1の旋回流発生装置40の中心部には、円筒状の中心壁40dが備えられ、円環状の流路40cを形成している。
以上のように、花粉混合気は第1の旋回流発生装置40の円環状の流路40cを旋回し、この旋回流は重力により徐々にチャンバー2内を下降していく。なお、本実施形態における花粉の真比重は約1.6である。
【0066】
なお、チャンバー2内を旋回しながら下降する状態を作るためには、少なくとも、吹き込まれた花粉混合気が、第1の旋回流発生装置40の円環状の流路40cを半周以上する吹込流速を要すると考えられる。本実施形態では、配管34a、34bから送り込まれる花粉混合気の流速は5m/s以上である。
【0067】
<第2の旋回流発生装置42a、bの説明>
次に、図5には、第1の旋回流発生装置40と第2の旋回流発生装置42とを含む粉体飛散手段4により、花粉混合気をチャンバー2の内部で旋回させながら下降させる様子を模式的に表している。第1の旋回流発生装置40によって発生した花粉混合気の旋回流は、八角錐台状の屋根の形状に沿って、徐々に旋回径を広げながら下降していく。本実施形態では、第1の旋回流発生装置40はチャンバー2の床面から約4.2mの高さに設置され、花粉混合気は下降するにつれて旋回速度が徐々に減少していくが、チャンバーの床面から約2mの高さに設置された第2の旋回流発生装置42の2個の吹出口42a、bからの送風によって、旋回力が加えられる。
【0068】
第2の旋回流発生装置42の吹出口42a、bは、正八角形のチャンバー2の床面の相対する2面に設置されており、本実施形態では、第2の旋回流発生装置42として、空調機能を有するエアコンが用いられている。従って、所望の温度及び湿度に設定された空気が、花粉混合気の旋回流の接線方向に吹き込まれ(図5の白抜き矢印参照)、旋回力が付加される。
【0069】
そして、花粉混合気は更に下降しながら流速を落とし、チャンバー2内に置かれた椅子の上に座っている被験者が呼吸をする位置、つまり、床面から70cmから1mぐらいの高さでは、旋回する流速が非常に小さくなっている。従って、従来の送風機を回して花粉を飛散させる試験装置とは異なり、人が自然界で花粉を吸い込むときと同様な環境をシミュレーションすることができる。
【0070】
以上のように、多数の被験者を収容可能な大型のチャンバー2であっても、花粉混合気を旋回させながら下降させて花粉を飛散させることにより、チャンバー2内に一様な花粉の濃度分布を形成することが可能である。従って、各々の被験者の受ける花粉の曝露量を一定にすることができ、信頼性の高い曝露試験を行なうことができる。また、第2の旋回流発生装置42が有する空調機能によって、チャンバー2内の温度及び湿度を適切な値に管理することによって、被験者がチャンバー2内に長時間留まることが可能な環境を得ることができる。また、その他の様々な自然条件や環境をシミュレーションすることができる。
【0071】
(実施例)
次に、本発明の粉体飛散曝露装置の性能を確認するため行なった花粉の濃度分布の計測結果を下記に示す。この計測は、上述の粉体飛散曝露装置の実施形態と同型の装置を用いて行なった。
【0072】
<試験条件>
まず、花粉の濃度分布の計測を行なった粉体飛散曝露装置の仕様、及び試験条件を下記に示す。
(1)チャンバー2
床: 内接円直径6mの正八角形
側壁: 高さ 床から2.5m
屋根部分: 八角錐台状 屋根仰角30度
屋根最上部高さ 床から約4.2m
(2)粉体混合気発生装置20
花粉混合量: 回転速度500目盛、または
回転速度250目盛
(3)粉体混合気送込機構30
送風機(シロッコファン)32の吐出量:
中の場合 5m/s
最弱の場合 1m/s
(4)第1の旋回流発生装置40
円環状の流路40cの外径: 60cm
円環状の流路40cの内径: 58cm
噴込口40a、bの口径: 10cm
(5)第2の旋回流発生装置42
吹出口42a、bの吹出流速:
強の場合 10m/s
弱の場合 5m/s
【0073】
上記の仕様、条件で、花粉混合気をチャンバー2内に吹き込み、旋回させながら下降させてチャンバー2内に花粉を飛散させ、花粉の濃度分布を計測した。ここで、図6に平面的な各測定位置を示す。測定箇所は、ポイント0からポイント18までの番号が付された白丸で示される計17箇所(ポイント9、10はない)である。各測定箇所の高さは、チャンバー2の床面から70cm高であり、被験者が花粉を吸い込む位置と一致する。また、PC−300A、Bと記載された長方形は、自動花粉濃度計測装置を設置する場合の設置位置を示す。
【0074】
<測定方法>
上記のポイント0からポイント18の各測定箇所における測定方法を説明する。測定は、ワセリンを塗布したスライドグラスを、床から70cm高の机上に20分間静置して行なった。その後、このスライドグラスを色素染色し、カバーグラスを付して、その1.8cm×1.8cm角の測定領域の花粉数を顕微鏡で計測した。
【0075】
<測定結果>
次に、図7、図8の表に、各測定箇所における花粉の濃度の測定結果を示す。測定は、計4回行ない、いずれも測定時間は20分である。各測定では、いくつかの条件を変えて計測を行なっている。条件を変えた項目は、花粉混合気の花粉の含有量(表ではフィーダーと記載)と、第2の旋回流発生装置の吹き出し量(表ではエアコン風量と記載)と、送風機32の吐出量(表ではシロッコファンと記載)である。
【0076】
各測定値における左側の値は、1.8cm×1.8cm各の測定領域における総花粉数であり、右側の値は、単位面積(1cm)当たりの花粉数である。
図7の表1に、通常の花粉飛散曝露試験で用いる条件に設定したときの測定結果を示す。第1回目の測定においては、第2の旋回流発生装置42の吹出速度を弱(5m/s)にし、第2回目の測定においては、第2の旋回流発生装置42の吹出速度を強(10m/s)にしている。
【0077】
単位面積当たりの花粉数において、第1回目の測定結果では、平均値が79個/cmであり、最大値が106個/cmで、最小値が62個/cmである。従って、全測定領域において、平均値−17個から平均値+27個の範囲内に収まっている。また、ポイント18を除くと、平均値+16の範囲内に収まっている。
同様に、第2回目の測定結果では、平均値が69個/cmであり、最大値が91個/cmで、最小値が50個/cmである。従って、全測定領域において、平均値−19個から平均値+22個の範囲内に収まっている。また、ポイント18を除くと、平均値+9の範囲内に収まっている。
【0078】
以上の測定結果から、本発明の粉体飛散曝露装置によれば、30人といった多数の被験者をチャンバー2の中に収容して曝露試験を行ったときでも、十分に信頼性のある試験を行なうことができる花粉の濃度分布が得られた。
【0079】
また、第3回目と第4回目の測定では、通常の粉体飛散曝露試験とは異なる条件を設定して、濃度分布を測定し、変化させた項目の花粉の濃度分布に対する影響を調べた。その結果を、図8の表2に示す。
【0080】
まず、第3回目の測定においては、第1、2回目の測定に比べ、送風機32の吐出量を最弱(1m/s)に設定して測定を行った。測定結果では、単位面積当たりの花粉数において、平均値が65個/cmであり、最大値が85個/cmで、最小値が41個/cmである。従って、全測定領域において、平均値−24個から平均値+20個の範囲である。
従って、以上の測定結果から、送風機32の吐出量を減らすことによって、花粉の濃度分布のばらつきが若干大きくなると考えられる。
【0081】
第4回目の測定では、第1、2の測定に比べて花粉混合気の花粉の含有量を回転速度250目盛に半減させた状態で測定を行ない、花粉混合気中の花粉含有量の花粉の濃度分布に対する影響を調べた。
【0082】
第4回目の測定結果では、平均値が106個/cmであり、最大値が138個/cmで、最小値が57個/cmである。従って、全測定領域において、平均値−81個から平均値+32個の範囲にあり、上述のような通常の条件に比べて、濃度分布のばらつきがかなり大きくなっている。
【0083】
以上のように、本発明の粉体飛散曝露装置に適切な設定値を与えることによって、信頼のおける曝露試験を行なうことが可能な程度の一様な花粉の濃度分布を形成することができる。
【0084】
(その他の実施形態)
上述の粉体飛散曝露装置では、扱う粉体として花粉を用いたが、その他のあらゆる粉体を用いることができる。また、上述のチャンバーの断面形状(床形状)は正八角形であるが、円形を始めとするその他様々な形状を採用することができる。チャンバーの大きさも、上述の実施形態には限られず、任意の大きさを採用することができる。
【0085】
上述の実施形態では、圧縮空気の流れによる負圧で、花粉を圧縮空気中に吸い込んで空気中に花粉を含有させているが、花粉を空気中に吹き込んで含有させる方法を始めとするその他のあらゆる方法を採用することができる。また、上述の実施形態では、花粉を含有した圧縮空気を、送風機により送風される空気中に吹き込んでいるが、花粉混合気の流量、流速、花粉濃度によっては、花粉を含有した圧縮空気をそのままチャンバーへ供給することもできるし、その他の様々な送風方法を採用することができる。
【0086】
上述の実施形態では、第1及び第2の旋回流発生装置により、粉体混合気をチャンバー内で旋回させているが、その他、粉体混合気を旋回させるだけでなく、上向きまたは下向きの気流を与えることも考えられる。
更に、本発明の粉体飛散曝露装置は上述の実施形態に限定されるものではなく、その他の様々な実施態様が本発明の粉体飛散曝露装置に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の粉体飛散曝露装置の1つの実施形態を示す外形図であり、(a)は平面図を示し、(b)は側面図を示す。
【図2】図1(b)の矢印Aから見た断面図である。
【図3】(a)は粉体混合気発生装置20の各機器を模式的に表した図であり、(b)は(a)の矢印Cで示す円板21の溝を構成する各凹部21aの詳細な断面形状を示す図である。
【図4】第1の旋回流発生装置40の構造を示すための断面図を示し、(a)は、図1(a)の矢印Bから見た断面図であり、(b)は、図4(a)の矢印Dから見た断面図である。
【図5】粉体飛散手段4によって、花粉混合気をチャンバー2の内部で旋回しながら下降させる様子を模式的に表した図である。
【図6】本発明の粉体飛散曝露装置を用いた花粉濃度の平面的な測定位置を示す図である。
【図7】図6に示す各測定箇所における花粉の濃度分布(1、2回目測定値)を示す表である。
【図8】図6に示す各測定箇所における花粉の濃度分布(3、4回測定値)を示す表である。
【符号の説明】
【0088】
2 チャンバー
2a 前室
2b エアシャワー室
3 粉体混合気供給手段
4 粉体飛散手段
10 圧縮空気発生装置
11 圧縮機
12 乾燥器
13 流量制御弁
14 配管
20 粉体混合気発生装置
21 円板
21a 凹部
22 駆動装置
23 花粉貯蔵室
23a 注ぎ口
24 エジェクタ
25 配管
25a 分岐管
25b 分岐管
26 スクレーパ
30 混合気送込機構30
30a 第1送込機構
30b 第2送込機構
32a 送風機
32b 送風機
34a 配管
34b 配管
34c 接続点
34d 接続点
40 第1の旋回流発生装置
40a 吹込口
40b 吹込口
40c 流路
40d 中心壁
42 第1の旋回流発生装置
42a 吹出口
42b 吹出口
50 吸気装置
52 排気装置
54 送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体の出入を遮断可能なチャンバーと、
粉体を含んだ気体(粉体混合気)を前記チャンバーへ供給する粉体混合気供給手段と、
前記粉体混合気供給手段により供給される前記粉体混合気を前記チャンバー内で旋回するように流して、前記粉体を前記チャンバー内に飛散させる粉体飛散手段と、
を含むことを特徴とする粉体飛散曝露装置。
【請求項2】
前記粉体飛散手段が、円環状の流路と、前記円環状の流路の接線方向に前記粉体混合気を吹き込む少なくとも1つの吹込口と、を有する第1の旋回流発生装置を含むことを特徴とする請求項1に記載の粉体飛散曝露装置。
【請求項3】
前記粉体飛散手段が、前記第1の旋回流発生装置による前記旋回流の接線方向に送風を行なう少なくとも1つの吹出口を有する第2の旋回流発生装置を含むことを特徴とする請求項2に記載の粉体飛散曝露装置。
【請求項4】
前記第1の旋回流発生装置が前記チャンバーの上部に設置され、前記第2の旋回流発生装置が前記第1の旋回流発生装置の設置位置よりも下方に設置されることを特徴とする請求項3に記載の粉体飛散曝露装置。
【請求項5】
前記第2の旋回流発生装置が、前記チャンバー内で被験者が前記粉体混合気体を吸い込む位置よりも上方に設置されていることを特徴とする請求項4に記載の粉体飛散曝露装置。
【請求項6】
前記第2の旋回流発生装置により、更に、前記チャンバー内の空調を行なうことができることを特徴とする請求項3から5の何れか1項に記載の粉体飛散曝露装置。
【請求項7】
前記チャンバーの断面形状が、円形または角数が6以上の正多角形であることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の粉体飛散曝露装置。
【請求項8】
前記粉体混合気供給手段が、気体の流れによる負圧を用いて吸い込んだ粉体を含む圧縮空気を、送風機により送風される空気中に吹き込むことによって、所定の粉体濃度の前記粉体混合気を供給することを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の粉体飛散曝露装置。
【請求項9】
前記粉体が、花粉であることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の粉体飛散曝露装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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