説明

粉塵の除去装置、及び粉塵の除去方法

【課題】公知のサイクロンスクラバーを改良して、広範囲に濃密な水ミストを形成し、除塵効果を一層向上させる。
【解決手段】集塵サイクロン1の上流側にミストルーム4を設け、その中に回転水槽14を設置する。該回転水槽は回転軸12の上端に装着されていて、モータ8によって回転駆動される。この回転水槽14の側壁には多数の透孔14aが穿たれている。これら多数の透孔の配置が上下方向に分布していることを必須の要件とする。上記回転水槽14の中へ給水管10から注水すると、水は遠心力によって飛散し、上下方向の厚みを有する区域に濃密なミストを形成する。処理風は上記の広範囲の濃密なミストの中を通過する間に、浮遊している粉塵を洗い取られて清浄になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば研掃機(ショットブラストなど)を運転した場合に発生する粉塵を捕捉,除去する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の技術に関しては、実公昭49−45026号公報に記載されたサイクロンスクラバー、及び、これを改良した特開2004−314017号公報に記載された「粉塵の除去方法、および同装置」が公知である。
【0003】
図6は前記「粉塵の除去方法、および同装置」の実施形態を描いた模式的な断面正面図である。
符号1を付して示したのはサイクロンであって、ブロワ2、およびブロワモータ3を有している。
更にスクラバー(水洗式の集塵装置)としてのミストルーム4を備えていて、粉塵を含む空気は矢印aのように処理風入口5からミストルーム4内へ吸入され、旋回しながら該ミストルーム内を通過した後、連結ダクト6を経て矢印bのようにサイクロン1へ流入する。
サイクロン1へ流入した空気流は矢印aのように旋回しつつ、浮遊していた粉塵を捕捉除去され、矢印dのように内筒1aを経てブロワ2に吸い込まれ、無公害化されて大気中へ放出される。
【0004】
この公知発明に係る粉塵除去装置は、前記ミストルーム4の中にモータ8が設置されている。該モータは、その回転軸が垂直となるように設置され、回転軸の上端に翼車9が装着されている。
上記翼車の中央部付近へ、給水管10から水が送給(矢印e)される。送給された水は、翼車によって回転を与えられ、遠心力によって水平方向に矢印fのごとく周囲へ振り撒かれる。
振り撒かれた水は処理風の中を突き切って飛び散り、ミストルーム4の内壁面に衝突して浮遊微粒子(ミスト)となる。
上記の微粒子とは古典的な意である。すなわち原子物理学的な意味での微粒子ではなく、肉眼もしくは光学顕微鏡で認識し得る程度の微細な粒子をいう。
【0005】
矢印aのようにミストルーム4へ流入し、矢印bのように流出してゆく処理風は、前記のミストで洗われて粉塵を除去される。
粉塵を捕捉したミストはミストルーム4の内壁面に接触し、集合して水滴(粉塵を含む)となり、該内壁面に沿う水流となって下降し、傾斜底7に案内されて受水槽11に流入する。
受水槽11内に溜まった水の上澄みは、図外のポンプで汲み上げられ、再び給水管10に送られて循環する。
この公知技術は水のミストを使用するので、爆発性を有する粉塵(例えばマグネシュウム微粉、アウミニュウム微粉、鉄微粉など)であっても粉塵爆発を防止することができ、実用的価値が高い。
【特許文献1】実公昭49−45026号公報
【特許文献2】特開2004−314017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲の図6に示した公知技術に係る粉塵除去装置は非常に優れており、広く賞用されているが、更に次の点について改良の余地が有る。
図6から推察できるように、翼車9から放射状に噴出される水が矢印fを含む水平面内で飛び散るので、水流の全体的な形状が水平な円盤状をなし、平面的であって上下方向の広がりが少ない。
このため、矢印aのようにミストルーム4内へ流入した処理風は旋回しながら上昇し、前記の水の円盤を1度だけ通って矢印bのように連結ダクト6を経てサイクロン1に吸い込まれてゆく。
【0007】
前記円盤状に振り撒かれた水はミストルームの内壁面に衝突し、粉砕されミストになるが、そのミスト密度が一様でない。
すなわち、矢印fを含む水平な円盤状部分の密度が大きく、仮想線で囲んで示した区域S付近はミスト密度が小さい。
処理風がミスト密度の小さい区域S付近を通過する際は、粉塵除去作用が充分に発揮されない。
【0008】
本発明は以上に述べた事情に鑑みて為されたものであって、その目的とするところは、
前述の公知技術を更に改良し、広い区域に濃密なミストを形成して粉塵除去効果を増加せしめ得る技術を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基本的な原理について、その1実施形態に対応する図2と従来例(図6)とを対比して説明すると下記の通りである。
この[課題を解決するための手段]の欄は、図面との対照が容易なように括弧書きで図面符号を付記してあるが、この括弧付き符号は本発明の構成を図面のとおりに限定するものではない。
図6(従来例)では単一の翼車9で水を振り撒いていたが、これを改良した図2(本発明)では回転水槽14を設け、その側壁に穿たれた多数の透孔14aから立体的に水を噴射する。
上述の原理から理解されるように、本発明における多数の透孔は上下方向に広く分布していることが必要である(ただし、多数の透孔が相互に連なって溝孔(スリット)になっていても良い)。
【0010】
上述の原理に基づいて創作した請求項1に係る発明装置の構成は、
(図1参照)サイクロン集塵機(1)によって処理される空気流路の途中にミストルーム(4)が設けられていて、
垂直軸の周りに回転する水槽(14)が上記ミストルームの中に設置されるとともに、該回転水槽の側壁を貫通する流路が、上下方向に分布せしめて穿たれていることを特徴とする。
前記の流路が上下方向に分布していることにより、噴出する水流の形状が上下方向に厚みを持ち、広い区域に濃密なミストを形成するので、空気流中に浮遊している粉塵を有効に捕捉することができる。
【0011】
請求項2の発明に係る粉塵除去装置の構成は、前記請求項1の発明装置の構成要件に加えて、
(図3(A)、図3(B)、図3(D)参照)前記の側壁を貫通する流路が、回転水槽の側壁に穿たれた多数の孔(14a,または14b)であることを特徴とする。孔の形状は円形でも角形でも良く、不定形状であっても良い。
【0012】
請求項3の発明に係る粉塵除去装置の構成は、前記請求項1の発明装置の構成要件に加えて、
(図3(C)参照)前記の側壁を貫通する流路が、回転水槽の側壁に設けられた螺旋状の溝孔(14c)であることを特徴とする。
螺旋状の溝孔(スリット)から噴出する水流は、多数の孔から噴出した水流に比して、切れ目の無い水幕を形成し、空気流に対する接触効率が高い。
【0013】
請求項4の発明に係る粉塵除去装置の構成は、前記請求項3の発明装置の構成要件に加えて、
(図4、図5参照)前記の側壁を貫通する流路が、側壁の厚さ寸法(t)よりも大きい長さ寸法(L、L′)を有する筒状のノズル(15a,15b)によって形成されていることを特徴とする。
前記筒状のノズルは回転水槽と一緒に回転して水流に回転を与え、大きい遠心力によって勢い良く飛散させる。
【0014】
請求項5の発明に係る粉塵の除去方法は、
(図1参照)サイクロン集塵機(1)によって処理される空気流路の途中にミストルーム(4)を設けるとともに、該ミストルームの中に水槽(14)を設置し、
上記水槽の側壁に、上下方向に分布せしめて多数の透孔(14a)を穿ち、もしくは、該側壁に螺旋状の溝孔(図3(C)参照)を形成し、
前記水槽(14)の中へ水を注入(矢印e)しつつ該水槽を垂直軸の周りに回転させ、水槽内の水に遠心力を与えて、前記多数の透孔もしくは螺旋状溝孔から噴出せしめることにより、前記ミストルーム内に水の浮遊微粒子を充満せしめ、
該ミストルームを流通する空気流中の粉塵を水微粒子によって捕捉除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明装置を適用すると、回転水槽の側壁を貫通する流路が上下方向に分布せしめて穿たれているので、上下方向に厚さを有する立体的な区域にミストが充満する。
このため、ミスト充満区域を通過する処理風が長時間ミストと接触して、充分に粉塵除去作用を受ける。
【0016】
請求項2の発明装置を、前記請求項1の発明装置に併せて適用すると、
側壁を貫通する流路が多数の孔によって構成されているから、広い区域に亙って均一な密度のミストが形成され、処理風と良く接触する。このため、優れた粉塵除去作用が発揮される。
【0017】
請求項3の発明装置を、前記請求項1の発明装置に併せて適用すると、
側壁を貫通する流路が螺旋状の溝孔(スリット)によって構成されているから、前記請求項2の発明と同様に、広い区域に亙って均一な密度のミストが形成される。
特に、溝孔(スリット)によって切れ目の無い水幕が形成されるので、処理風と良く接触し、一層優れた粉塵除去作用が発揮される。
【0018】
請求項4の発明装置を、前記請求項1の発明装置に併せて適用すると、側壁を貫通する流路が筒状のノズルによって形成されているので、この筒が遠心ポンプとして作用して、水流を加速する。
このため、濃厚で均一なミストが形成され、処理風と良く接触して粉塵除去作用を発揮する。
【0019】
請求項5の発明方法を適用すると、回転水槽の側壁を貫通する多数の透孔または螺旋溝孔が上下方向に分布せしめて穿たれているので、上下方向に厚さを有する立体的な区域に水が噴射されてミストが充満する。
このため、ミスト充満区域を通過する処理風が長時間ミストと接触し、充分に粉塵除去作用を受ける。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明方法を実施するために構成した本発明装置の1実施形態を描いた模式的な断面図である。
従来例を描いた図6に比して異なる点、すなわち本発明を適用して改良した構成部分は次のとおりである。
ミストルーム4の中に垂直な回転軸12が設けられ、その上端に回転水槽14が装着されている。
【0021】
モータ8により、ベルト伝導機構13を介して前記回転軸12を回転駆動すると、回転水槽14は垂直な軸の周りに回転する。
本例の回転水槽14は直立円筒形をなし、その側壁に多数の透孔14aが穿たれている。該透孔の分布については、図3を参照して後に詳しく述べるが、この図1にも表されているように、多数の透孔が上下方向に分布していることが大切である。
前記回転水槽14に対して、給水管10から水が供給される。回転水槽内の水は、回転によって遠心力を受け、側壁に押し付けられる。この押圧力により、水は矢印gのように周囲空間へ噴出する。
【0022】
個々の透孔14aから噴出する水流はほぼ水平方向であるが、該透孔14aが上下方向に広がって分布しているため、多数の透孔14aから噴出する多数の水流は上下方向に厚みを有する立体的な水流群を形成する。
それぞれの水流はミストルーム4の内壁面に衝突して飛散し、微小水滴となってミストを形成する。
上記ミストは、上記方向に厚さを有する立体的な区域に充満する。処理風入口5から流入してミストルーム4内を上昇する処理風は、前記の立体的区域に充満する濃密なミストに接触し、含んでいる粉塵を捕捉,除去される。
【0023】
図2は、前掲の図1と異なる実施形態における要部の拡大断面図である。
本例の回転水槽14はモータ8の回転軸の上端に装着されている。回転水槽14の支持構造と回転駆動手段以外は前記の実施形態(図1)とほぼ同様である。
ミストルーム4に対して処理風入口5が捩れている(両者の中心線が交わっていない)。このため、流入した処理風はミストルーム内で旋回しつつ上昇して矢印bのように出てゆく。その途中で処理風は、広範囲かつ濃密なミストの中を通り、ミストによって粉塵を捕捉,除去される。
粉塵を捕捉したミストはミストルームの内壁面に接触して運動エネルギーを失い、集合して水滴(粉塵を含んでいる)となり、重力により内壁面に沿って流下し矢印hのように受水槽11に流入する。
【0024】
上述の作動状態を観察すると、回転水槽内の水面が上方に向かって凹なるごとく湾曲していることが視認される。
このように水面の周囲が上昇することを考慮して、回転水槽14の高さ寸法Hを設定しておくことが望ましい。または、回転水槽の上端部に内フランジ形の環状部材14dを装着することも推奨される。
上部開口の全面を覆わず環状に形成するのは、静止部材である給水管10との接触を避けるためである。
【0025】
図3は、回転水槽に関する4種類の実施形態を描いた外観斜視図である。
(A)に示した回転水槽14Aは、多数の透孔14aを水平な円弧に沿わしめて、上下3段に配列してある。
(B)に示した回転水槽14Bは、多数の短いスリット14bを水平な円弧に沿わしめて、上下3段に配列してある。上記の"短い"とは、回転水槽14の周囲長さに比して短いという意である。
(C)に示した回転水槽14Cは、その側壁に、螺旋状の溝孔(スリット)14cを切り込んである。
(D)に示した回転水槽14Dは、回転水槽の側壁に想定した仮想の螺旋に沿わしめて多数の透孔14aを配列してある。
これら何れの実施形態を適用することもでき、同様の粉塵除去効果が得られる。
要は、側壁を貫通する流路の分布に上下方向の広がりを与えることである。
【0026】
図4は、前記回転水槽14A(図3(A)参照)を改良した実施形態の1例を描いた外観斜視図である。
回転水槽の側壁に穿った多数の透孔のそれぞれに円筒状ノズル15aを取付けてある。
本例においては、ステンレス鋼管を適宜の長さ(50mm)に切断し、回転水槽の半径方向の姿勢で溶接して、円筒状ノズル15aを構成した。
このように構成すると、回転水槽と一緒に回転する円筒状ノズル15aが遠心ポンプ作用を生じて噴出水流を加速する。このため、ミスト濃度が増大して除塵効果が一層向上する。
【0027】
図5は、前記回転水槽14B(図3(B)参照)を改良した実施形態の1例を描いた外観斜視図であって、回転水槽の側壁に穿った多数の短スリット14bのそれぞれに角筒状ノズル15bを取付けてある。
このように構成しても、前掲の図4におけると同様に、回転水槽と一緒に回転する角筒状ノズル15bが遠心ポンプ作用を生じて噴出水流を加速するので、ミスト濃度が増大して除塵効果が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明方法を実施するために構成した本発明装置の1実施形態を示す模式的な断面図である。
【図2】上記と異なる実施形態の要部を描いた模式的な拡大断面図である。
【図3】本発明に係る回転水槽の4例を描いた外観斜視図である。
【図4】前掲の図3の(A)に示した回転水槽の改良例に対応する実施形態を描いた外観斜視図である。
【図5】前掲の図3の(B)に示した回転水槽の改良例に対応する実施形態を描いた外観斜視図である。
【図6】従来例のサイクロンスクラバーを描いた断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…サイクロン
1a…内筒
2…ブロワ
3…ブロワモータ
4…ミストルーム
5…処理風入口
6…連結ダクト
7…傾斜底
8…モータ
9…翼車
10…給水管
11…受水槽
12…回転軸
13…ベルト伝導機構
14,14A〜14D…回転水槽
14a…透孔
14b…短スリット
14c…螺旋スリット
14d…内フランジ
a…処理風の流入方向を表す矢印
b…処理風の流動を表す矢印
c…空気流の旋回を表す矢印
d…清浄化された空気の排出流動を表す矢印
e…注水を表す矢印
f…水に与えられる遠心力を表す矢印
g…水の飛散を表す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクロン集塵機で処理される空気流路の途中にミストルームが設けられていて、
垂直軸の周りに回転する水槽が上記ミストルームの中に設置されるとともに、該回転水槽の側壁を貫通する流路が、上下方向に分布せしめて穿たれていることを特徴とする粉塵の除去装置。
【請求項2】
前記の側壁を貫通する流路が、回転水槽の側壁に穿たれた多数の孔であることを特徴とする、請求項1に記載した粉塵の除去装置。
【請求項3】
前記の側壁を貫通する流路が、回転水槽の側壁に設けられた螺旋状の溝孔であることを特徴とする、請求項1に記載した粉塵の除去装置。
【請求項4】
前記の側壁を貫通する流路が、側壁の厚さ寸法(t)よりも大きい長さ寸法(L)を有する筒状のノズルによって形成されていることを特徴とする、請求項3に記載した粉塵の除去装置。
【請求項5】
サイクロン集塵機によって処理する空気流路の途中にミストルームを設けるとともに、該ミストルームの中に水槽を設置し、
上記水槽の側壁に、上下方向に分布せしめて、多数の透孔を穿ち、もしくは、該側壁に螺旋状の溝孔を形成し、
前記水槽の中へ水を注入しつつ、該水槽を垂直軸の周りに回転させ、水槽内の水に遠心力を与えて、前記多数の透孔もしくは螺旋状溝孔から噴出せしめることにより、前記ミストルーム内に水の浮遊微粒子を充満せしめ、
該ミストルームを流通する空気流中の粉塵を水微粒子によって捕捉除去することを特徴とする、粉塵の除去方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−136738(P2009−136738A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314206(P2007−314206)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(592148155)株式会社サンポー (14)
【Fターム(参考)】