説明

粉末圧縮成型機

【課題】粉末滑沢剤の残量及び回収量を高精度に計測できると共に、付着に使用された粉末滑沢剤の量を正確に管理できる粉末圧縮成型機を提供する。
【解決手段】滑沢剤噴霧器20、滑沢剤供給装置30、ロードセル85、滑沢剤回収装置4、ロードセル115、及びデータ処理部86を具備する。噴霧器20は、上下杵7,8の杵先面及び臼6の臼孔に粉末の滑沢剤を噴霧して付着させる。供給装置30は、供給器31、及び供給器31の重量と略同等の重量を供給器31に上向きに与える供給器バランサー71を有する。セル85は、供給器31とバランサー71との重量差を滑沢剤の供給量として計測する。回収装置4は、付着されなかった余剰滑沢剤NO回収タンク92、及びタンクの重量と略同等の重量をタンク92に上向きに与えるタンクバランサー101を有する。セル115は、タンク92とバランサー101との重量差を余剰滑沢剤の回収量として計測する。処理部86はロードセル85,115の計測情報を処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末を圧縮して医薬品錠剤等を成型する際に、成型される錠剤等に粉末滑沢剤を付着させることができる回転式打錠機等の粉末圧縮成型機に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品錠剤等を回転式打錠機で成型する過程で発生するステッキング、キャッピング等の打錠障害を抑制し、かつ、成型性の向上及び成型された錠剤等の崩壊性等の改善のために、ステアリン酸マグネシウム粉末などの粉末滑沢剤が用いられている。この粉末滑沢剤を回転式打錠機の目的部位に供給するのに外部滑沢方式が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1には、回転盤上に配置されて粉末滑沢剤が連続して噴射される箱体内に、上杵に粉末滑沢剤を噴射する上向きノズルの先端部と、下杵及び臼孔に粉末滑沢剤を噴射する下向きノズルの先端部とを設けて、これらのノズルから噴射される粉末滑沢剤を、上杵、下杵及び臼孔に付着させるとともに、噴射されて余剰となった粉末滑沢剤を箱体に接続された吸塵管路から粉末吸塵機構に吸塵する技術が記載されている。
【0004】
この特許文献1の回転式粉末圧縮成型機では、実際に必要な粉末滑沢剤の噴射量を制御するために、粉末滑沢剤供給部が送出した粉末滑沢剤の量をレーザセンサや静電容量型センサ等の流量検知部で検知するとともに、杵先及び臼孔への付着に使用されなかった余剰の粉末滑沢剤の回収量をレーザセンサや静電容量型センサ等の回収量検知部で検知し、これら両検知部での検知量から送出すべき粉末滑沢剤の量を制御部で演算し、その演算した量の粉末滑沢剤を送出するように制御部で粉末滑沢剤供給部を制御している。
【特許文献1】特許第3415558号明細書(段落0023−0048、図1−図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば医薬品錠剤や浴用剤等の粉末圧縮成形品では、それに添加されるステアリン酸マグネシウムなどの無機質の添加物の量は厳格に管理されることが求められている。
【0006】
輸送気体中に分散された粉末滑沢剤の量を検知する流量計測では、特に、余剰の粉末滑沢剤の回収量を正確に知ることの信頼性が低い。つまり、粉末吸塵機構は、粉末滑沢剤供給部から送出された空気だけではなく、周囲の空気をも吸引する。それにより、吸引される空気中の粉末滑沢剤の濃度が低下して、その濃度を正確に知ることができない。更に、余剰の粉末滑沢剤の回収に伴い粉末吸塵機構内のフィルタの目詰まりが進行するので、それに従い粉末吸塵機構が吸引する空気量が変動する。このように粉末吸塵機構が吸引する空気量が一定に保持されないことに加えて、その気流中に含まれる余剰粉末滑沢剤の濃度が一定に保持されないことから、余剰の粉末滑沢剤の回収量を正確に知ることの信頼性が著しく低い。したがって、粉末滑沢剤供給部が送出した粉末滑沢剤の量と余剰の粉末滑沢剤の回収量とを基にする添加量の管理、言い換えれば、例えば医薬品錠剤一錠毎に添加される粉末滑沢剤の量を管理する上での信頼性が低い。
【0007】
更に、外部滑沢方式で医薬品錠剤等を製造する場合には、供給される外部滑沢剤の残量、及び外部滑沢剤の回収量に応じて、その補給時期や取出し時期を知る必要がある。しかし、こうしたモニタリングのための情報を得る点については、特許文献1には記載がない。
【0008】
本発明の目的は、粉末滑沢剤の残量及び回収量のモニタリング情報を高精度に計測できるとともに、付着に使用された粉末滑沢剤の量を正確に管理できる粉末圧縮成型機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の粉末圧縮成型機は、臼内に充填された粉末を前記臼内で互いに近寄る方向に移動される上杵と下杵とを用いて圧縮成型する粉末圧縮成型機において、前記臼孔への粉末の充填に先立って前記上杵及び下杵の杵先面及び前記臼の臼孔に粉末滑沢剤を噴霧して付着させる滑沢剤噴霧器と、粉末滑沢剤を蓄えてこの粉末滑沢剤を輸送気体とともに前記滑沢剤噴霧器に供給する滑沢剤供給器、及びこの供給器の重量と略同等の重量を前記滑沢剤供給器に上向きに与える供給器バランサーを有した滑沢剤供給装置と、前記滑沢剤噴霧器への粉末滑沢剤の供給量を求める計測情報として粉末滑沢剤が供給された前記滑沢剤供給器と供給器バランサーとの重量差を計測する第1のロードセルと、前記滑沢剤噴霧器から噴霧された粉末滑沢剤の内の前記杵先面及び臼孔に付着されなかった余剰の粉末滑沢剤を回収して蓄える回収タンク、及びこのタンクの重量と略同等の重量を前記回収タンクに上向きに与えるタンクバランサーを有した滑沢剤回収装置と、余剰粉末滑沢剤の回収量を求める計測情報として余剰粉末滑沢剤が収容された前記回収タンクとタンクバランサーとの重量差を計測する第2のロードセルと、前記第1、第2のロードセルの計測情報を演算処理するデータ処理部と、を具備している。
【0010】
本発明では、第1のロードセルでの計測により、滑沢剤供給器内に蓄えられている粉末滑沢剤の重量を求める計測情報を得ることができる。この第1のロードセルには、蓄えられた粉末滑沢剤より遥かに重い滑沢剤供給器の全重量が作用することはなく、供給器バランサーの重量が軽減された重さが作用する。同様に、第2のロードセルでの計測により、回収タンク内に回収された余剰粉末滑沢剤の重量を求める計測情報を得ることができる。この第2のロードセルには、回収された余剰粉末滑沢剤より遥かに重い回収タンクの全重量が作用することはなく、タンクバランサーの重量が軽減された重さが作用する。
【0011】
このため、第1、第2のロードセルに、滑沢剤供給器又は回収タンクの全重量に耐える計測感度のものを使用する必要がなく、計測対象である粉末滑沢剤又は余剰粉末滑沢剤の量を計測するのに適した計測感度のものを使用できる。それにも拘わらず、滑沢剤供給器又は回収タンクの重量によって第1、第2のロードセルが破損されることがない。
【0012】
ロードセルの計測感度は、計測する荷重が小さいほど高感度、つまり、計測誤差が小さいことが知られている。したがって、これら高感度の第1、第2のロードセルによって、滑沢剤供給器内の粉末滑沢剤の残量及び回収タンク内の余剰粉末滑沢剤の量を、モニタリング情報として高精度に計測できる。更に、第1、第2のロードセルが計測した情報をデータ処理部で処理することで、滑沢剤噴霧器から噴霧されて上下杵の杵先面及び臼の臼孔に実際に付着された粉末滑沢剤量を正確に求めることができ、それに基づいて前記付着量が所望量に維持されるように滑沢剤供給器からの粉末滑沢剤の送出を管理できる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記第1、第2のロードセルの夫々を、シリンダに組合されたピストンに支持するとともに、前記シリンダに対して与えられる流体の供給経路にレギュレータを設けている。
【0014】
本発明では、誤って滑沢剤供給器及び回収タンクに荷重が作用した場合、その荷重が第1、第2のロードセルに波及することがある。この場合、ロードセルに対する負荷が高まるとともに、シリンダに与えられている流体の供給経路内の流体圧も上昇する。しかし、供給経路内の流体圧がレギュレータの設定圧力を超えるようになると、このレギュレータで過剰圧力が逃がされる。このため、ロードセルが異常に高い負荷を受けて破損する恐れを回避できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、滑沢剤供給装置の重量及び滑沢剤回収装置の重量に比較して遥かに少ない重量の粉末滑沢剤に見合って使用される計測感度が高いロードセルの破損を防止しつつ、粉末滑沢剤の残量及び回収量を重量として計測するので、粉末滑沢剤の残量及び回収量のモニタリング情報を高精度に計測できるとともに、その計測情報を演算処理することで付着に使用された粉末滑沢剤の量を正確に管理できる粉末圧縮成型機を提供できる。
【0016】
又、本発明によれば、滑沢剤供給器及び回収タンクに荷重が作用した場合、それに基づいてロードセルが異常に高い負荷を受けて破損する恐れを回避可能な粉末圧縮成型機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1から図5を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0018】
図1中符号Pはいわゆる回転式打錠機として機能する回転式の粉末圧縮成型機(以下成型機Pと略称する。)を示している。この成型機Pは、回転式粉末圧縮成型装置1(以下成型装置1と略称する。)と、粉末滑沢剤噴射装置2(以下噴射装置2と略称する。)と、滑沢剤回収装置4(以下回収装置4と略称する。)と、を具備している。
【0019】
成型装置1が備える回転盤5は、図示しない駆動装置で回転される。回転盤5は、臼取付け部5aと、この臼取付け部5aの上面に対向する上杵取付け部5b、及び臼取付け部5aの下面に対向する下杵取付け部5cを有している。臼取付け部5aには、回転盤5の回転中心を中心とする半径が描く円上に位置して、多数の臼6(一個のみ図示)が等間隔に取付けられている。臼6は型本体として機能するものであって、その中央部に医薬品錠剤等の圧縮成型品の外形を作るための臼孔を有している。
【0020】
臼取付け部5a上には図示しないがスクレーパ及び粉末供給器が配置されている。スクレーパは、圧縮成型品の排出手段として機能する。粉末供給器はその開口された下面が臼取付け部5aの上面で塞がれるように設けられている。この粉末供給器には、図示しない原料ホッパが有した定量供給器から粉末材料が適宜補給され、補給された粉末供給器内の粉末材料は流動化されながら、粉末供給器の真下に移動してきた臼6の臼孔に供給される。
【0021】
上杵取付け部5bには、臼6と同数でかつ臼6と同じ配置の上杵案内孔が上下方向に貫通されていて、これらの上杵案内孔の夫々には、上パンチとして機能する上杵7が上下方向に摺動自在に貫通して取付けられている。これら上杵7は、回転盤5の回転に伴い図示しない上カムによって上下動される。
【0022】
下杵取付け部5cには臼6と同数でかつ臼6と同じ配置の下杵案内孔が上下方向に貫通されていて、これらの下杵案内孔の夫々には、下パンチとして機能する下杵8が上下方向に摺動自在に貫通して取付けられている。これら下杵8の杵先部は、対応する臼6の臼孔に挿入され、臼孔の底をなしている。各下杵8は、回転盤5の回転に伴い図示しない各種の下杵案内軌道によって上下動される。
【0023】
上下方向に対応して配置された上杵7及び下杵8は、その杵先部を圧縮成型位置にて互いに近寄るように軸線方向に移動されて、臼6内に充填された粉末材料の圧縮成型を行う。そのために、圧縮成型位置には、上杵7を押下げる上ロール(図示しない)と、下杵8を押上げる下ロール(図示しない)が配置されている。
【0024】
回転盤5の回転により、臼6が粉末供給器の下側を通過する際に、下杵8が下杵案内軌道で昇降されるに従い、臼6内への粉末材料の秤量を伴う粉末供給器から充填が完了する。次に、粉末材料が充填された臼6に上杵7の杵先が挿入された後に、臼6が圧縮成型位置に移動されて、この位置に配置されている上ロールと下ロールとにより、上杵7と下杵8とが互いに近寄るように移動されて臼6内の粉末材料が圧縮成型される。この成型後には、上杵7が上カムで上昇されて臼6の上方へ引き抜かれるとともに、下杵8が下杵案内軌道で突上げられるので、臼6の上側に錠剤等の圧縮成型品が押し出される。そして、下杵8の杵先の通過を許すスクレーパによって、下杵8上の圧縮成型品が外されるとともに回転盤5外に排出される。以上の一連の動作により一成型サイクルが完了し、以後同じサイクルが回転盤5の回転が継続することによって繰り返される。
【0025】
図1中符号9は回転位置センサを示し、符号10は原点位置センサを示している。回転位置センサ9は回転盤5の回転位置を検出するためのパルス信号など回転位置信号を発生する。この回転位置センサ9として例えばパルスジェネレータ又はロータリーエンコーダなどを用いることができる。原点位置センサ10は、例えば回転盤5の周部などに設けた原点例えば単一の切欠き等を検出するセンサである。
【0026】
噴射装置2は、滑沢剤噴霧器20と滑沢剤供給装置30を具備している。滑沢剤噴霧器20は、円筒21、噴射部材23、駆動部25を備えている。
【0027】
円筒21は複数例えば180度隔たった二箇所に噴射孔22を有している。円筒21は、スクレーパが設置された成型品取出し位置と、粉末供給器が設置された粉末供給位置との間の位置、つまり、滑沢剤噴霧位置に設置されている。噴射孔22は、上杵7及び下杵8が滑沢剤噴霧位置に移動された際に、上杵7又は下杵8の杵先面と対向可能な位置に開けられている。
【0028】
噴射部材23は円筒21内に配置されている。噴射部材23には滑沢剤供給器31から輸送気体例えば空気により粉末滑沢剤が供給される。この噴射部材23は、円筒の内周面に接触又近接する複数例えば二つの噴霧口23a,23bを有している。これらの噴霧口23a,23bは、噴射部材23の180度隔たった上下二箇所に夫々開口されている。
【0029】
駆動部25は、円筒21を回転させるものであって、駆動モータ26と、伝動機構27とを備えている。駆動モータ26はサーボモータなどからなる。伝動機構27は、歯車伝動機構からなり、例えば駆動モータ26のモータ軸に連結された小歯車27aと、これに噛み合わされた大歯車27bを有している。大歯車27bには円筒21が接続されている。
【0030】
したがって、駆動モータ26が駆動されると、伝動機構27を介して円筒21が回転されるに伴って、二つの噴射孔22及びこれら噴射孔22に対して円筒21の周方向に連続する周壁部位で、噴霧口23a,23bが開閉される。噴霧口23a,23bが開いた状態になると、上杵7及び下杵8の杵先面に向けて噴射孔22から粉末滑沢剤が噴霧され、この噴霧は噴霧口23a,23bが前記周壁部位で閉じられた状態になることで停止される。
【0031】
図1中符号3は回転位置センサ9及び原点位置センサ10の出力信号が入力される同期回転コントローラ3を示している。この同期回転コントローラ3は、それに原点位置センサ10の出力信号が入力された時点から回転位置センサ9の出力パルス信号をカウントすることで、回転盤5の回転位置を知ることができる。それに基づいて、同期回転コントローラ3は、上下方向に対をなした上杵7、臼6及び下杵8が滑沢剤噴霧位置に達したかどうかを知ることができる。これに伴い、同期回転コントローラ3は、回転盤5の回転速度と杵数等に応じて駆動部25の駆動モータ26の駆動を制御する。それにより、同期回転コントローラ3は、上下方向に対をなした上杵7、臼6及び下杵8が移動されて滑沢剤噴霧位置に到達することにタイミングを合わせて、一対の噴射孔22が上下方向を向くように円筒21の回転を、同期をとって制御する。
【0032】
滑沢剤供給装置30は、粉末滑沢剤を所望濃度に調節するとともに、この粉末滑沢剤を噴射部材23に気体を用いて搬送するものであって、図1に示すように定量供給機構32及び粉末濃度制御装置50を有した滑沢剤供給器31と、供給器バランサー71とを備えている。
【0033】
定量供給機構32は、定量供給器33と、ホッパ34と、攪拌器(アジテータ)41、レベルセンサ47とを備えている。定量供給器33上には粉末滑沢剤が収容されるホッパ34が連結されている。
【0034】
攪拌器41に対して粉末滑沢剤を一定量ずつ連続的に供給する定量供給器33は、その内部の図示しない仕切り壁と底壁33aとの間に形成された定量間隙を通って回転される定量羽根35と、この定量羽根35を回転させるサーボモータ等のモータ36とを有している。定量羽根35はその回転中心に対して周方向に等配され放射状に設けられている。この定量供給器33の動作時には、隣接する定量羽根35相互間に受入れられた粉末滑沢剤が所定量に計量されて定量間隙に移送される。定量供給器33の底壁33aには出口37が開設されている。この出口37を通して、定量間隙に移送された隣接する定量羽根35相互間の粉末滑沢剤は、定量供給器33の下方に流出される。
【0035】
攪拌器41はその粉末入口42を出口37に連通させて設けられている。この攪拌器41への定量供給器33から粉末滑沢剤の供給を円滑に行わせるために、攪拌器41とホッパ34とは、これらに両端を接続したバイパス管38により連通されていて、それにより、攪拌器41とホッパ34との内圧を同じにしている。
【0036】
攪拌器41の内部には、サーボモータ等のモータ43により一定速度で回転される攪拌羽根44が収容されている。攪拌羽根44は、周方向に等配され放射状に設けられていて、粉末入口42から供給された粉末滑沢剤を攪拌しながら移送する。攪拌器41の上壁には粉末出口45が設けられている。粉末入口42から供給された粉末滑沢剤は、回転される攪拌羽根44によって粉末出口45に向けて移動される。
【0037】
レベルセンサ47は、攪拌器41内の粉末滑沢剤の高さ位置を検出するものであり、例えば超音波センサからなる。レベルセンサ47の出力信号は、図示しない定量供給コントローラに供給される。定量供給コントローラはそれに供給されたレベルセンサ47の出力信号に応じて定量供給器33のモータ36の回転速度等を制御する。それにより、攪拌器41内の粉末滑沢剤の層の厚みが略一定に制御される。言い換えれば、粉末滑沢剤の層は、後述のメインノズルから噴射される空気により、後述の噴射部に位置している粉末滑沢剤が円滑かつ確実に吹き飛ばされる厚みに制御される。
【0038】
粉末濃度制御装置50は、噴射部51と、調節筒53と、濃度センサ54と、希釈ノズル55,56とを具備し、この粉末濃度制御装置50に、送気系統61と、濃度コントローラ(図示しない)とが組合されている。
【0039】
噴射部51は、粉末出口45と、これに対向して例えば攪拌器41の底壁に上向きに取付けられたメインノズル52とを含んだ攪拌器41の一部で形成されている。
【0040】
調節筒53は、その開口された下端と対向する上端に出口53aを有している。調節筒53は、その下端を攪拌器41の上壁に接続して起立されている。この調節筒53の下端開口と粉末出口45とは連続されている。調節筒53の出口53aには供給管60の一端が接続されている。供給管60の他端は噴射部材23に接続されている。供給管60には、塩化ビニル樹脂、四弗化エチレン樹脂、合成ゴム、ステンレスなどで形成できる。その中でも四弗化エチレン樹脂とすることは、供給管60内面への粉末滑沢剤の付着をより効果的に抑制できる点で好ましい。
【0041】
調節筒53の長手方向中間部に取付けられた濃度センサ54は、調節筒53内を流れる含粉気流の粉末濃度を計測する。この濃度センサ54には、例えば投光部54aと受光部54bを有したレーザセンサを好適に使用できる。投光部54aは調節筒53を横切るレーザ光を出射する。受光部54bは、含粉気流中の粉末滑沢剤を透過することによって減衰されたレーザ光を受光し、その光強度に応じて光電変換により変換して得た電圧を出力する。濃度センサ54の出力電圧(計測結果)は濃度コントローラに供給される。
【0042】
調節筒53に取付けられた一対の希釈ノズル55,56は、希釈気体である空気を調節筒53内に噴射する。投光部54a側に設けられた一方の希釈ノズル55は、調節筒53の管壁を貫通した部位を有し、この部位はレーザ光の出射口を兼ねている。受光部54b側に設けられた他方の希釈ノズル56も、調節筒53の管壁を貫通した部位を有し、この部位はレーザ光の受光口を兼ねている。したがって、調節筒53の径方向に対向している一対の希釈ノズル55,56は、レーザ光の光路上に配置されている。
【0043】
図1に示すように送気系統61は、輸送気体源であるエアー源に接続された第1の流量調節弁(図示しない)、メインノズル52に供給される空気の流量を変える第2の流量調節弁(図示しない)を有して第1の流量調節弁からメインノズル52にわたって設けられた送気経路、及び希釈ノズル55,56に供給される希釈気体(前記エアー源から供給される気体である空気)の流量を変える第3の流量調節弁(図示しない)を有して第1の流量調節弁から希釈ノズル55,56にわたって設けられた他の送気経路を備えている。
【0044】
第1の流量調節弁の弁開度は濃度コントローラにより調節される。この調節は、例えば成型装置1の運転条件の変化等のように杵先への粉末滑沢剤の付着量を変える条件の変化に応じて行われる。第2、第3の流量調節弁の夫々の弁開度は、濃度センサ54の計測結果に基づいて濃度コントローラによって共に制御される。
【0045】
この場合、濃度コントローラは、輸送空気の流量Q1と希釈空気の流量Q2とを合計した総流量Qを一定に保持しつつ、第1の流量調節弁の弁開度を制御するとともに、前記濃度センサ54の測定結果に基づいて、第2、第3の流量調節弁の弁開度を制御する。それにより、輸送空気の流量Q1と希釈空気の流量Q2との割合を調節して、粉末濃度を目標濃度とする
前記構成の滑沢剤供給器31は、図2及び図3に示すアームベース65に上下動可能に支持されている。つまり、アームベース65には複数のガイドパイプ66が上向きに突設されていて、これらガイドパイプ66の夫々にスライド軸67が通されている。各スライド軸67の上端は滑沢剤供給器31に連結されている。なお、図3中符号68はスライド軸67の下端部に固定された止め輪を示している。
【0046】
アームベース65には支点部材69が上向きに突設されている。この支点部材69には供給器バランサー71が回転可能に支持されている。
【0047】
すなわち、図2及び図3に示すように供給器バランサー71は、回転アーム72と、カムフォロア73と、バランサー本体74とを備えている。回転アーム72の一端側部位は二股に形成されていて、この二股部位の先端部に夫々カムフォロア73が取付けられている。これらカムフォロア73は回転可能なころからなる。回転アーム72の前記二股部位は、カムフォロア73側に寄った位置で枢軸69aを介して支点部材69に回転可能に支持されている。
【0048】
バランサー本体74は回転アーム72の他端部上に連結されている。バランサー本体74は一対のカムフォロア73を介して滑沢剤供給器31に上向きに力を与えるもので、それにより、滑沢剤供給器31の底部に設けた一対の当て板31cの下面に、カムフォロア73が接触されている。バランサー本体74は滑沢剤供給器31の重量W1と略同等の重量W2を有している。ここに「略同等」とは、数十kgに達する滑沢剤供給器31の重量W1と同じかそれよりも数キログラム少ない重量例えば重量W1の1/10以下の重量を指している。
【0049】
バランサー本体74は、円形のダンパーケース75と、円形のダンパーディスク76と、このダンパーディスク76が固定されたダンパー軸77とを有している。ダンパーディスク76は、その外周面をダンパーケース75の内周面に接触させて、ダンパーケース75内に上下動可能に収容されている。ダンパー軸77はダンパーケース75の中央部を貫通している。このダンパー軸77の下端部は回転アーム72の他端部にこの他端部の上側から連結されている。ダンパーケース75内にはダンパー用流体として例えば空気が充満されている。ダンパーディスク76の外周面とダンパーケース75の内周面との間には、ダンパーディスク76の上側と下側に充満されたダンパー用流体の流通を抑制する僅かな隙間が設けられている。なお、ダンパー用流体としてオイル等の液体を用いることもできる。
【0050】
図2及び図3に示すように前記アームベース65の下方に例えばプレート状のシリンダベース81が配置されている。このシリンダベース81の上面にはエアーシリンダ等からなるシリンダ82が上向きに固定されている。このシリンダ82にはピストン83が組合されている。ピストン83はプレート状のピストンヘッド83aを有している。一方、カムフォロア73が接触された滑沢剤供給器31の底部には、一対の当て板31c間に位置して加圧プレート84がピストンヘッド83aと平行に設けられている。
【0051】
これら加圧プレート84とピストンヘッド83aと間には第1のロードセル85が挟まれている。第1のロードセル85は、滑沢剤供給装置30から滑沢剤噴霧器20への粉末滑沢剤の供給量を求める計測情報、つまり、粉末滑沢剤が収容された滑沢剤供給器31と供給器バランサー71との重量差を計測するものである。第1のロードセル85には、計測対象である粉末滑沢剤の重量を計測するのに適した計測感度のものが使用されている。ホッパ34に投入される粉末滑沢剤の重量は最大でも数kgであって、例えば滑沢剤供給器31の重量W1の1/5ないし1/10と格段に少ない。第1のロードセル85の出力電圧は図1に示すデータ処理部86に供給される。
【0052】
図1に示すようにシリンダ82に与えられる流体例えば空気の供給経路87には、電磁開閉弁88とレギュレータ89とが設けられている。供給経路87は流体源として前記エアー源に接続されている。電磁開閉弁88は、非通電時に閉じた状態を保持し、通電されることにより開かれる。この電磁開閉弁88の上流側に配置されたレギュレータ89は、それに設定された圧力を供給経路87の圧力が超えるようになると、その過剰圧力を逃がすものである。なお、図1中符号Fはフィルタ、Pは圧力計を示している。
【0053】
図1に示すように前記回収装置4は、フィルタ91が内蔵された回収タンク92を備えている。回収タンク92の出口92aは図示しないブロワに連通されている。回収タンク92の入口92bは吸塵ホース93を介して吸塵部94に接続されている。吸塵部94は滑沢剤噴霧器20の円筒21の周囲に設けられている。この回収装置4のブロワが運転されることにより吸塵部94の内部に負圧が波及される。それにより、噴射孔22から噴霧された粉末滑沢剤のうちで、上杵7と下杵8の杵先面及び臼6の臼孔内面に付着されなかった余剰分が、吸塵部94に吸引される。したがって、余剰な粉末滑沢剤が回収タンク92に回収される。
【0054】
図5に示すように回収タンク92は、図2から図4を用いて既に説明した滑沢剤供給器31と同様な構成によってアームベース95に上下動可能に支持されている。つまり、アームベース95には複数例えば4本のガイドパイプ96(2本のみ図示)が上向きに突設されていて、これらガイドパイプ96の夫々にスライド軸97が通されている。各スライド軸97の上端は回収タンク92に連結されている。なお、図5中符号98はスライド軸97の下端に固定された止め輪を示している。
【0055】
アームベース95には支点部材99が上向きに突設されている。この支点部材99にはタンクバランサー101が回転可能に支持されている。
【0056】
すなわち、タンクバランサー101は、回転アーム102と、カムフォロア103と、バランサー本体104とを備えている。回転アーム102の一端側部位は二股に形成されていて、この二股部位の先端部に夫々カムフォロア103(一方のみ図示)が取付けられている。これらカムフォロア103は回転可能なころからなる。回転アーム102の前記二股部位は、カムフォロア103側に寄った位置で枢軸99aを介して支点部材99に回転可能に支持されている。
【0057】
バランサー本体104は回転アーム102の他端部上に連結されている。バランサー本体104は一対のカムフォロア103(一方のみ図示)を介して回収タンク92に上向きに力を与えるもので、それにより、回収タンク92の底部に設けた一対の当て板92c(一方のみ図示)の下面に、カムフォロア103が接触されている。バランサー本体104は回収タンク92の重量W5と略同等の重量W6を有している。ここに「略同等」とは、数十kgに達する回収タンク92の重量W5と同じかそれよりも数キログラム少ない重量例えば重量W5の1/10以下の重量を指している。
【0058】
バランサー本体104は、円形のダンパーケース105と、円形のダンパーディスク106と、このダンパーディスク106が固定されたダンパー軸107とを有している。ダンパーディスク106は、その外周面をダンパーケース105の内周面に接触させて、ダンパーケース105内に上下動可能に収容されている。ダンパー軸107はダンパーケース105の中央部を貫通している。このダンパー軸107の下端部は回転アーム102の他端部にこの他端部の上側から連結されている。ダンパーケース105内にはダンパー用流体として例えば空気が充満されている。ダンパーディスク106の外周面とダンパーケース105の内周面との間には、ダンパーディスク106の上側と下側に充満されたダンパー用流体の流通を抑制する僅かな隙間が設けられている。なお、ダンパー用流体としてオイル等の液体を用いることもできる。
【0059】
アームベース95の下方に例えばプレート状のシリンダベース111が配置されている。このシリンダベース111の上面にはエアーシリンダ等からなるシリンダ112が上向きに固定されている。このシリンダ112にはピストン113が組合されている。ピストン113はプレート状のピストンヘッド113aを有している。一方、カムフォロア103が接触された回収タンク92の底部には、一対の当て板92c間に位置して加圧プレート(図示しない)がピストンヘッド113aと平行に設けられている。
【0060】
これら加圧プレートとピストンヘッド113aと間には第2のロードセル115が挟まれている。第2のロードセル115は、噴霧された粉末滑沢剤の内で杵先面及び臼孔に付着されなかった余剰の粉末滑沢剤の回収量を求める計測情報、つまり、回収タンク92とタンクバランサー101との重量差を計測するものである。第2のロードセル115には、計測対象である余剰粉末滑沢剤の重量を計測するのに適した計測感度のものが使用されている。回収タンク92に回収して溜められる余剰粉末滑沢剤の重量は最大でも数kgであって、例えば回収タンク92の重量W5の1/5ないし1/10と格段に少ない。第2のロードセル115の出力電圧はデータ処理部86に供給される。
【0061】
図1に示すようにシリンダ112に与えられる流体例えば空気の供給経路117には、電磁開閉弁118とレギュレータ119とが設けられている。供給経路117は前記エアー源に接続されている。電磁開閉弁118は、非通電時に閉じた状態を保持し、通電されることにより開かれる。この電磁開閉弁118の上流側に配置されたレギュレータ119は、それに設定された圧力を供給経路117の圧力が超えるようになると、その過剰圧力を逃がすものである。
【0062】
データ処理部86は、残量演算部、回収量演算部、及び供給量演算部などを有している。残量演算部は、これに入力される第1のロードセル85の出力電圧の値を演算処理して得たデータを、図1に示すメインコントローラ120に供給する。回収量演算部は、これに入力される第2のロードセル115の出力電圧の値を演算処理して得たデータを、メインコントローラ120に供給する。供給量演算部は、残量演算部と回収量演算部との演算結果を更に演算処理した結果、つまり、杵先面及び臼孔に付着された実際の粉末滑沢剤の量を表すデータを、メインコントローラ120に供給するものである。
【0063】
メインコントローラ120は、図示しないが表示部を兼ねる入力部としての液晶タッチパネルを備えている。このメインコントローラ120は、同期回転コントローラ3、回収装置4、定量供給コントローラ、濃度コントローラ、データ処理部86等を制御する。更にメインコントローラ120の表示部にはデータ処理部86の演算結果が適時表示されるようになっている。
【0064】
メインコントローラ120は、成型装置1の運転を開始させると同時に、噴射装置2及び回収装置4等を動作させる。さらに、メインコントローラ120は、滑沢剤供給器31の運転を開始させる。これにより、滑沢剤供給器31の粉末濃度制御装置50で所望濃度に調節された粉末滑沢剤が供給管60を通って噴射部材23に供給されるので、回転盤5により移動される上杵7、臼6及び下杵8が滑沢剤噴霧位置に達するたびに、それに同期して噴射部材23の円筒21の噴射孔22を通って粉末滑沢剤が噴霧される。したがって、上杵7、臼6及び下杵8に粉末滑沢剤を付着させることができる。この粉末滑沢剤は、成型装置1での例えば錠剤の圧縮成型に伴い、この錠剤の表面に付着される。
【0065】
粉末濃度制御装置50での粉末滑沢剤の濃度調節は以下のようになされる。送気系統61で導かれた空気は輸送気体としてメインノズル52から連続して噴射されるので、噴射部51に連続して供給される粉末滑沢剤が粉末出口45を通って上向きに吹き飛ばされる。それにより、吹き飛ばされた粉末滑沢剤が混じった基本濃度の含粉気流が形成される。この含粉気流は、調節筒53内にその一端から受入れられて、この調節筒53の他端の出口53aに向けて流れる。同時に、送気系統61で導かれた空気は希釈気体として希釈ノズル55,56から調節筒53内に噴出されて、含粉気流中に混ざる。
【0066】
これにより、含粉気流が希釈される。この希釈の程度を制御することによって、以下のように含粉気流中の粉末濃度が所望濃度に調節される。すなわち、メインノズル52から噴出された輸送空気により粉末を吹き飛ばして形成される基本濃度の含粉気流に対して、希釈ノズル55,56から噴出される希釈空気の混入量を多くすることにより、出口53aから流出する含粉気流の粉末濃度を低下させることができる。この逆に、メインノズル52から噴出された輸送空気により粉末を吹き飛ばして形成される基本濃度の含粉気流に対して、希釈ノズル55,56から噴出される希釈空気の混入量を少なくすることにより、出口53aから流出する含粉気流の粉末濃度を高めることができる。
【0067】
こうした輸送空気の流量Q1と希釈気体の流量Q2との割合調節は、調節筒53に取付けられた濃度センサ54が、調節筒53内の含粉気流の粉末濃度を計測した結果に基づいてなされる。つまり、濃度コントローラが有した濃度判断部(図示しない)が、そこに設定された目標濃度より濃度センサ54で計測された結果が高いと判定したときに、濃度コントローラは、輸送空気の流量Q1を減らすとともに希釈空気の流量Q2を増やすように制御する。この逆に、前記目標濃度より濃度センサ54で計測された結果が低いと前記濃度判断部が判定したときに、濃度コントローラは、輸送空気の流量Q1を増やすとともに希釈空気の流量Q2を減らすように制御する。
【0068】
以上の制御により、粉末滑沢剤を輸送する空気の総流量Qを一定に保持したままで粉末濃度を所望濃度に調節して、この濃度を保持した含粉気流による輸送力で、目的部位である噴射部材23に粉末滑沢剤を輸送できる。これに伴い滑沢剤噴霧器20は、既述の動作で、上杵7及び下杵8の杵先面と臼6の臼孔に所望濃度の粉末滑沢剤を噴霧して付着させることができる。
【0069】
この場合、既述のように総流量Qが一定であるので、成型装置1の成型条件などに適合して粉末滑沢剤の濃度を調節できるにも拘わらず、噴射部材23に供給される粉末滑沢剤の総量がばらつくことがない。この総流量Qは、例えば毎分20l以上とすることが好ましい。これは、実験により求められたものである。この実験により、含粉空気の流路をなす部材、特に供給管60の内面に粉末滑沢剤が付着することを防止できることが分かった。供給管60の内面に粉末滑沢剤が付着して成長すると、それが、ある一定の成長段階で供給管60の内面から剥がれて噴射部材23に供給される。この場合には、高濃度の粉末滑沢剤が噴射孔22から噴霧されることになるので好ましくない。しかし、こうした不具合は、以上のように総流量Qを毎分20l以上としたことで解消できることが分かった。
【0070】
そして、既述のように総流量Qを所定流量に保持しつつ所望濃度に調節ができるので、この濃度調節に拘わらず総流量Qが例えば毎分20l未満となって、供給管60の内面に粉末滑沢剤が付着して成長する事態を防止できる。これに対して、総流量を変えて濃度調節をすると、特に濃度を低くする場合に総流量が減るので、供給管60の内面への粉末滑沢剤の付着・成長を防止できる流量を下回ることがあって、好ましくない。
【0071】
更に、既述のように所望濃度に保持する調節に拘わらず総流量Qが所定流量に保持されるので、噴射孔22から噴霧される粉末滑沢剤の上杵7、下杵8の杵先に対する付着条件が変動して、付着不良を招くことがない。
【0072】
つまり、総流量を増やして所望の濃い粉末濃度を得る場合には、噴射孔22からの粉末滑沢剤の噴霧速度が速すぎ、噴霧された粉末滑沢剤が杵先に付着せずに吹き飛ばされ易くなることがある。この逆に、総流量を減らして所望の薄い粉末濃度を得る場合には、噴射孔22からの粉末滑沢剤の噴霧速度が遅すぎ、噴霧された粉末滑沢剤が杵先に付着し難くなることがある。いずれにしても、濃度調節に伴って杵先への粉末滑沢剤の付着不良を生じることがなる。しかし、総流量Qが適正な所定流量に保持される構成では、濃度調節に拘わらず噴射孔22からの噴霧速度が変化しないので、上杵7、下杵8の杵先に対する粉末滑沢剤の付着条件を適正に保持できる。
【0073】
以上の動作によりホッパ34内の粉末滑沢剤は次第に消費されるが、滑沢剤供給装置30内に蓄えられている粉末滑沢剤の重量は、第1のロードセル85での重量計測により知ることができる。
【0074】
この場合、第1のロードセル85は滑沢剤供給器31全体の重量W1を見かけ上受けている。しかし、実際には、第1のロードセル85は、滑沢剤供給装置30が備えた供給器バランサー71の重量W2を滑沢剤供給器31の重量W1から差し引いた重さを計測している。この差し引いた重さは、滑沢剤供給器31の重量W1から供給器バランサー71の重量W2を差し引いた既知の基準重量に粉末滑沢剤の残量に応じた重量を加えた重さである。前記既知の基準重量はデータ処理部86が有した残量演算部に予め設定されている。
【0075】
データ処理部86の残量演算部により、第1のロードセル85の計測重量から前記既知の基準重量を差し引いて求められた重量値は、管理情報である残量モニタリング情報としてメインコントローラ120に記録されるとともに表示部に表示される。したがって、ホッパ34への粉末滑沢剤の補給が必要な程度にまで粉末滑沢剤が消費されたことが演算により求められた場合に、メインコントローラ120によって報知や機械停止(成型機Pの運転停止)などの必要な指示が実行される。
【0076】
既述の粉末滑沢剤の消費に伴って滑沢剤噴霧位置から吸塵部94で吸引されて、回収タンク92に回収された余剰な粉末滑沢剤の重量は、第2のロードセル115での重量計測により知ることができる。
【0077】
この場合、第2のロードセル115は回収タンク92全体の重量W5を見かけ上受けている。しかし、実際には、第2のロードセル115は、回収装置4が備えたタンクバランサー101の重量W6を回収タンク92の重量W5から差し引いた重さを計測している。この差し引いた重さは、回収タンク92の重量W5からタンクバランサー101の重量W6を差し引いた既知の基準重量に余剰粉末滑沢剤の回収量に応じた重量を加えた重さである。前記既知の基準重量はデータ処理部86が有した回収量演算部に予め設定されている。
【0078】
データ処理部86の回収量演算部により、第2のロードセル115の計測重量から前記既知の基準重量を差し引いて求められた重量値は、管理情報である回収量モニタリング情報としてメインコントローラ120に記録されるとともに表示部に表示される。したがって、回収された余剰粉末滑沢剤を回収タンク92から排出する必要が生じる程度にまで粉末滑沢剤が回収されたことが演算により求められた場合に、メインコントローラ120によって報知や機械停止などの必要な指示が実行される。
【0079】
以上のように粉末滑沢剤の残量計測では、蓄えられた粉末滑沢剤より遥かに重い滑沢剤供給器31の重量W1ではなく、この重量W1から供給器バランサー71の重量W2が軽減された重さが、第1のロードセル85に作用する。同様に、余剰粉末滑沢剤の回収量計測では、回収された余剰粉末滑沢剤より遥かに重い回収タンク92の重量W5ではなく、この重量W5からタンクバランサー101の重量W6が軽減された重さが、第2のロードセル115に作用する。
【0080】
このため、第1、第2のロードセル85,115に、滑沢剤供給器31又は回収タンク92の重量に耐える計測感度のものを使用する必要がなく、計測対象である粉末滑沢剤又は余剰粉末滑沢剤の量を計測するのに適した計測感度のものを使用できる。それにも拘わらず第1、第2のロードセル85,115が、滑沢剤供給器31又は回収タンク92の重量によって破損されることがない。
【0081】
しかも、ロードセル85,115の計測感度は、計測する荷重が小さいほど高感度、つまり、計測誤差が小さいことが知られており、既述のように破損の恐れがなく計測誤差が小さいロードセル85,115を使用できることから、高精度に測定ができる。以下に、一例を説明する。
【0082】
例えば、ロードセルの計測誤差がその最高計測重量の1/10であるとする。ここに、滑沢剤供給器31及び回収タンク92の夫々の重量が例えば25kgであるとした場合、この25kgの重量に耐える計測感度のロードセルの計測誤差は2.5kgである。これに対して、滑沢剤供給装置30及び回収タンク92の夫々の重量が例えば25kgであっても、その重量と同程度の重量を有した供給器バランサー71又はタンクバランサー101により、実際にロードセルが受ける重量が5kgに軽減された場合には、この5kgの重量に耐える計測感度のロードセルの計測誤差は0.5kgである。したがって、計測誤差としては5倍向上したことになる。
【0083】
以上の重量計測に基づきデータ処理部86の残量演算部及び回収量演算部で得たデータ(管理情報)は、更に、このデータ処理部86の供給量演算部で演算される。ここでの演算は、残量演算部での算出データの内、成型機Pの運転開始の際に第1のロードセル85が計測した初期重量と運転の進行に伴って得た残量とから滑沢剤噴霧器20への粉末滑沢剤の供給量を算出し、成型機Pの運転開始の際に第2のロードセル115が計測した初期回収量と運転の進行に伴って得た回収量とから回収タンク92に回収された粉末滑沢剤の回収量とを算出し、この回収量を前記供給量から減算する。これにより、上杵7及び下杵8の杵先面及び臼6の臼孔に実際に付着された粉末滑沢剤の使用量(実使用量)が算出される。
【0084】
この実使用量の基となった計測値は、既述のように流量に依存するのではなく重量に依存するので、その信頼性が高い。そのため、結果的にデータ処理部86で算出された実使用量の信頼性も高い。このように滑沢剤噴霧器20から噴霧されて上杵7と下杵8の杵先面及び臼6の臼孔に実際に付着された粉末滑沢剤量を正確に知ることができるから、それに基づく定量供給コントローラでの制御で、前記付着量が所望量に維持されるように滑沢剤供給装置30からの粉末滑沢剤の送出を管理できる。
【0085】
そして、前記実使用量はメインコントローラ120に供給される。このメインコントローラ120には、回転盤5の回転速度、杵の数などの成型装置1の成型条件が与えられている。そのため、メインコントローラ120が有した添加量演算部で、回転盤5の回転数と杵数とを基に、臼6、上杵7、及び下杵8のセットが、成型に要した時間中に滑沢剤噴霧位置を通過した数を算出し、その数で実使用量を割り算することによって、1セットの臼6、上杵7、及び下杵8に対する粉末滑沢剤の付着量を得ることができる。つまり、1セットの臼6、上杵7、及び下杵8で圧縮成型される医薬品錠剤などの粉末成形品1個当たりの粉末滑沢剤の添加量を算出できる。以上説明したメインコントローラ120での演算は、データ処理部86に添加量演算部を設けて、そこで行わせるようにしても良い。
【0086】
又、成型機Pに外部から作用する振動により、供給器バランサー71が連結された回転アーム72が枢軸69aを中心に不用意に回転することがあると、第1のロードセル85の計測値が変動する。同様に、成型機Pに外部から作用する振動により、タンクバランサー101が連結された回転アーム102が枢軸99aを中心に不用意に回転することがあると、第2のロードセル115の計測値が変動する。しかし、供給器バランサー71及びタンクバランサー101はダンパー機能を有している。
【0087】
つまり、供給器バランサー71が動こうとする場合には、ダンパーケース75とダンパーディスク76とが相対的に上下方向に移動しようとするが、その際にはダンパーディスク76の上下の部屋に満たされている空気が、これらの部屋間を流通しなければならない。しかし、この流通は、ダンパーケース75の内周面とダンパーディスク76の外周面との間の僅かな間隙が抵抗となって、抑制される。これにより、ダンパーディスク76の上下の部屋に満たされている空気の振動吸収作用によって、振動を原因として回転アーム72が枢軸69aを中心に不用意に回転することを抑制するダンパー機能が発揮される。
【0088】
同様に、タンクバランサー101が動こうとする場合には、ダンパーケース105とダンパーディスク106とが相対的に上下方向に移動しようとするが、その際にはダンパーディスク106の上下の部屋に満たされている空気が、これらの部屋間を流通しなければならない。しかし、この流通は、ダンパーケース105の内周面とダンパーディスク106の外周面との間の僅かな間隙が抵抗となって、抑制される。これにより、ダンパーディスク106の上下の部屋に満たされている空気の振動吸収作用によって、振動を原因として回転アーム102が枢軸99aを中心に不用意に回転することを抑制するダンパー機能が発揮される。
【0089】
したがって、外部から波及する振動の影響を抑制して粉末滑沢剤の残量及び粉末滑沢剤の回収量等を高精度に計測できる。
【0090】
又、メンテナンス要員などにより滑沢剤供給器31に対して誤って下向きの荷重が加えられる場合が考えられる。この場合、第1のロードセル85に対する負荷が高まるとともに、シリンダ82に与えられている流体の供給経路87内の流体圧も上昇する。しかし、供給経路87内の流体圧がレギュレータ89の設定圧力を超えるようになると、このレギュレータ89から過剰圧力が逃がされるに伴い、ピストン83とともに第1のロードセル85が下方へ変位される。このため、第1のロードセル85が破損する恐れを回避できる。
【0091】
同様に、メンテナンス要員などにより回収タンク92に対しても誤って下向きの荷重が加えられる場合が考えられる。この場合、第2のロードセル115に対する負荷が高まるとともに、シリンダ112に与えられている流体の供給経路117内の流体圧も上昇する。しかし、供給経路117内の流体圧がレギュレータ119の設定圧力を超えるようになると、このレギュレータ119で過剰圧力が逃がされるに伴い、ピストン113とともに第2のロードセル115が下方へ変位される。このため、第2のロードセル115が破損する恐れを回避できる。
【0092】
本発明は前記一実施形態には制約されない。例えば、輸送気体として窒素ガス等の不活性ガスを用いても良い。又、滑沢剤供給器は、粉末滑沢剤を輸送気体とともに滑沢剤噴射器に搬送する機能を有するものであれば、いかなる構成であってもよい。同様に、滑沢剤噴射器も、杵先面に粉末滑沢剤を噴霧して付着させる機能を有するものであればいかなる構成でもよく、上杵用の滑沢剤噴射器と下杵用の滑沢剤噴射器とを別々に設けることもできる。更に、本発明は回転式打錠機以外の回転式粉末圧縮成型装置を備える粉末圧縮成型機に適用できるだけではなく、回転盤を有さない粉末圧縮成型機にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転式粉末圧縮成型機を概略的に示す図。
【図2】図1の回転式粉末圧縮成型機が備える滑沢剤供給装置を一部切り欠いて示す平面図。
【図3】図2の滑沢剤供給装置の下部を一部断面して示す側面図。
【図4】図3中F4−F4線に沿う断面図。
【図5】図1の回転式粉末圧縮成型機が備える滑沢剤回収装置の下部を一部断面して示す側面図。
【符号の説明】
【0094】
P…成型機(粉末圧縮成型機)、2…噴射装置(粉末滑沢剤噴射装置)、4…回収装置(粉末滑沢剤回収装置)、5…回転盤、6…臼、7…上杵、8…下杵、20…滑沢剤噴霧器、30…滑沢剤供給装置、31…滑沢剤供給器、32…定量供給機構、33…定量供給器、34…ホッパ、41…攪拌器、50…粉末濃度調節装置、60…供給管、65,95…アームベース、69,99…支点部材、69a,99a…枢軸、71…供給器バランサー、72,102…回転アーム、85…第1のロードセル、86…データ処理部、87,117…供給経路、89,119…レギュレータ、91…フィルタ、92…回収タンク、115…第2のロードセル、120…メインコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臼内に充填された粉末を前記臼内で互いに近寄る方向に移動される上杵と下杵とを用いて圧縮成型する粉末圧縮成型機において、
前記臼孔への粉末の充填に先立って前記上杵及び下杵の杵先面及び前記臼の臼孔に粉末滑沢剤を噴霧して付着させる滑沢剤噴霧器と、
粉末滑沢剤を蓄えてこの粉末滑沢剤を輸送気体とともに前記滑沢剤噴霧器に供給する滑沢剤供給器、及びこの供給器の重量と略同等の重量を前記滑沢剤供給器に上向きに与える供給器バランサーを有した滑沢剤供給装置と、
前記滑沢剤噴霧器への粉末滑沢剤の供給量を求める計測情報として粉末滑沢剤が供給された前記滑沢剤供給器と供給器バランサーとの重量差を計測する第1のロードセルと、
前記滑沢剤噴霧器から噴霧された粉末滑沢剤の内の前記杵先面及び臼孔に付着されなかった余剰の粉末滑沢剤を回収して蓄える回収タンク、及びこのタンクの重量と略同等の重量を前記回収タンクに上向きに与えるタンクバランサーを有した滑沢剤回収装置と、
余剰粉末滑沢剤の回収量を求める計測情報として余剰粉末滑沢剤が収容された前記回収タンクとタンクバランサーとの重量差を計測する第2のロードセルと、
前記第1、第2のロードセルの計測情報を演算処理するデータ処理部と、
を具備した粉末圧縮成型機。
【請求項2】
前記第1、第2のロードセルの夫々を、シリンダに組合されたピストンに支持するとともに、前記シリンダに対して与えられる流体の供給経路にレギュレータを設けた請求項1に記載の粉末圧縮成型機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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