説明

粉末焼結積層造形装置

【課題】 大型の物を一体的に造形することができ、小型の物を造形する際に、造形後の冷却時間を短縮することができるとともに、加熱によるダメージを受ける粉末材料の量を軽減すること。
【解決手段】第1の造形領域を画定する筒状の第1の容器13と、第1の容器13内壁に沿って上下移動する第1の造形用テーブル15と、第1の造形領域内に第2の造形領域を画定し、第1の容器13に着脱自在に設置され、第2の造形領域の外側であって第1の容器13内側の上面を覆うフランジを有する筒状の第2の容器17と、第2の容器17内壁に沿って上下移動する第2の造形用テーブルとを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末焼結積層造形装置に関し、造形用テーブル上に複数の焼結薄層を積層して3次元造形物を作製する粉末焼結積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能試験用試作部品や少量多品種の製品に使用される部品等を造形することができる造形装置への要望が増えてきつつある。
【0003】
この要求を満たすものとして、光造形装置や粉末焼結積層造形装置などがある。なかでも、粉末焼結積層造形装置は、紫外線硬化性樹脂を使用した造形装置(以下「光造形装置」)と異なり、多種類かつ強靭な材料が使用できることが大きな特徴の一つであり、市場での認知度も向上し、さまざまな用途で使用されはじめている。
【0004】
図14は、従来市販されている粉末焼結積層造形装置の斜視図である。図14に示すように、レーザ光出射部101Aと、造形部101Bと、制御装置101Cとから構成されている。
【0005】
レーザ光出射部101Aにおいては、レーザ光の光源1とレーザ光の照射方向を制御するミラー2とが設けられている。
【0006】
造形部101Bにおいては、中央部に設置され、レーザ光の照射により造形が行われて3次元造形物が作製される造形用容器3と、その両側に設置されて粉末材料を貯めておく粉末材料容器4a、4bとを備えている。また、造形用容器3内には造形用容器3内壁に沿って昇降するパートシリンダ5が設置され、粉末材料容器4a、4b内には粉末材料容器4a、4b内壁に沿って昇降するフィードシリンダ6a、6bが設置されている。
【0007】
制御装置101Cは、パートシリンダ5を薄層一層分降下させ、フィードシリンダ6bを上昇させて、リコータローラ7によってパートシリンダ5上に粉末材料8を供給させ、かつパートシリンダ5上で粉末材料の薄層8aを形成させ、次いで、レーザ光及び制御ミラー2によって作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき粉末材料の薄層8aを選択的に加熱して焼結させ、これらの動作を繰り返させる。このようにして3次元造形物を形成させ、最後に、3次元造形物を冷却手段によって冷却させる。
【0008】
上記従来の粉末焼結積層造形装置は、光造形装置に比較すると、概して造形用容器3の造形可能なXY平面積が小さかった。例を挙げれば、光造形装置の大型機の中で最も普及している最大造形サイズは、XY平面積600mm×600mmまで可能であるが、粉末焼結積層造形装置の場合は、XY平面積380mm×330mmである。
【0009】
ところで、近年、従来の装置では造形できなかった大きなサイズを一体で造形する要望が増加しており、光造形装置の最大造形サイズと同等程度の最大造形サイズとなる550mm×550mmの造形可能なXY平面積を持つ大型サイズの粉末焼結積層造形装置が市場に投入され始めている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、一方で、機能試験用試作部品や少量多品種の製品は、必ずしもその大型サイズの造形装置に適したものばかりではなく、従来のような小さな平面積で十分造形できるものも数多くある。このような場合、粉末焼結積層造形装置のXY造形サイズが大きくなると以下のような2つの問題を避けることはできない。
【0011】
(1)冷却時間の増大
粉末焼結積層造形装置では、造形用容器内で、順次、粉末材料の薄層を積層し、選択的に加熱し、焼結して3次元造形物を作製するため、焼結薄層と焼結されないで残った焼結薄層周囲の粉末材料とが造形用容器内に収納されることとなる。このような粉末焼結積層造形装置では、光造形装置と異なり、造形物の反りを防止するため、および、レーザ出力を比較的小さくしても造形を可能にするために、造形時に積層物の表面温度をその造形材料の融点から5〜15℃程度低い温度に設定し、造形用容器の全XY平面が均一な温度になるように制御して造形することが一般的である。このような場合、造形が完了した後、急激な冷却をしてしまったり、冷却が不完全な状態で造形物の取り出し作業を行なったりすると、造形物の内外に温度不均一な状態が発生し、それによる熱応力で造形物が歪んだり、精度を維持することができなくなったりする。
【0012】
これを避けるため、造形が完了しても、オペレータが粉末材料の中から造形物を取り出すことができる温度になるまで造形物をゆっくりと自然冷却することが必要になる。自然冷却時間の目安として、例えば、造形可能なXY平面が380mm×330mmで、Z方向の深さが400mmのモデルが造形可能な造形用容器を用いて造形した場合は、約20時間程度の冷却時間が必要である。また、Z方向の深さが造形可能な平面積に比較して極端に浅くない場合は、その平面積に比例して冷却時間が長くなると言ってよい。例えば、XY平面が380mm×330mmの平面積は125,400mmで、同じく600mm×600mmの平面積は360,000mmであるから、後者は前者の約2.9倍の面積比となり、冷却時間もこれに比例して長くなる。さらに、上記のように造形可能な平面積が大きく、かつ、Z方向が上記と同じ400mmのモデルが造形可能な造形用容器を用いて造形した場合には、冷却時間が約58時間もかかることになる。
【0013】
以上のように、小さな造形物しか造形しないのに、造形可能なXY平面積が不必要に大きな造形用容器を用いると、冷却時間が増大して実際に造形物を取り出すまでの時間を長くしてしまい、運用効率が下がる結果となってしまう。
【0014】
(2)材料の劣化
光造形装置では、紫外線レーザが照射された部分の硬化反応を促進することと、造形液面の高さを一定に維持することを目的として、光硬化性樹脂を40℃程度まで昇温し、一定の温度になるように制御するが、その程度の昇温では材料の劣化はほとんどないと言ってよい。
【0015】
粉末焼結積層造形装置の場合は、造形用容器内の粉末材料の全表面がその材料の融点から5〜15℃程度低い温度、例えば粉末焼結積層造形装置の主要材料であるナイロンの場合165℃程度の比較的高い温度に設定されるため、一度造形に使用した粉末材料は熱によるダメージを受けて劣化し、場合によっては廃棄しなければならなくなることがしばしばある。したがって、その粉末焼結積層造形装置において造形可能な最大平面積に比べて小さな造形物を造形するような場合、本来必要のない粉末材料を無駄に消費することになってしまう。
【0016】
以上のように、造形物の平面積が小さいものを造形する場合に、必要以上に大きな平面積の造形用容器を備えた粉末焼結積層造形装置では、冷却時間が増大し、また、再利用可能な粉末材料が劣化し、使用できなくなってしまうという問題がある。かといって小さな部品を作るためにもう1台小型の粉末焼結積層造形装置を導入するのでは、導入費用、装置の運用効率、設置スペース等の問題も発生する。
【0017】
本発明は、上記の従来例の問題点に鑑みて創作されたものであり、大型の物を一体的に造形することができ、小型の物を造形する際に、造形後の冷却時間を短縮することができるとともに、加熱によるダメージを受ける粉末材料の量を軽減することができる粉末焼結積層造形装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、第1の発明は、粉末焼結積層造形装置に係り、第1の造形領域を画定する第1の区画壁と、前記第1の区画壁の内壁に沿って上下移動する第1のテーブルと、前記第1の造形領域内に第2の造形領域を画定し、前記第1の区画壁の上端に掛けるフランジを有する第2の区画壁と、前記第2の区画壁の内壁に沿って上下移動する第2のテーブルとを備え、前記第1の造形領域では大きい物を造形し、前記第2の造形領域では小さい物を造形することを特徴とし、
第2の発明は、第1の発明の粉末焼結積層造形装置に係り、前記第1のテーブルは、前記第2のテーブル上に板状部材を被せて形成されたものであることを特徴とし、
第3の発明は、第1の発明の粉末焼結積層造形装置に係り、前記第1のテーブルは、前記第2のテーブルの周辺部を拡張する板状部材を取り付けて形成されたものであることを特徴とし、
第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れか一の粉末焼結積層造形装置に係り、前記第1及び第2のテーブルを上下移動させる駆動手段を備えていることを特徴とし、
第5の発明は、第4の発明の粉末焼結積層造形装置に係り、前記駆動手段は前記第1及び第2のテーブルに着脱可能となっていることを特徴とし、
第6の発明は、第1乃至第5の発明の何れか一の粉末焼結積層造形装置に係り、前記第1の区画壁の下端部及び前記第2の区画壁の下端部のうち少なくとも何れか一は、対応する前記テーブルを前記下端部から抜き取ることが可能なようになっていることを特徴とし、
第7の発明は、第1乃至第5の発明の何れか一の粉末焼結積層造形装置に係り、前記第1の区画壁の下端部及び前記第2の区画壁の下端部のうち少なくとも何れか一は、対応する前記テーブルを前記下端部に掛止することが可能なようになっていることを特徴とし、
第8の発明は、第1乃至第7の発明の何れか一の粉末焼結積層造形装置に係り、前記粉末焼結積層造形装置は、さらに前記第1の造形領域に隣接するように設置された粉末材料収納部と、前記第1及び第2のテーブル上に形成された粉末材料の薄層にレーザ光を選択的に照射するレーザ光照射手段とを備え、前記第1又は第2の造形領域に粉末材料を供給して前記第1又は第2のテーブル上に粉末材料の薄層を形成し、該粉末材料の薄層に前記レーザ光を選択的に照射して焼結薄層を形成し、これらの動作を繰り返すことにより前記焼結薄層を積層して3次元造形物を作製することを特徴としている。
【0019】
次に、上記構成によって奏される作用について説明する。
【0020】
本発明の粉末焼結積層造形装置においては、第1の造形領域を画定する第1の区画壁及び第1の区画壁の内壁に沿って上下移動する第1のテーブルのほかに、第1の造形領域内に第2の造形領域を画定し、第1の区画壁の上端に掛けるフランジを有する第2の区画壁と、第2の区画壁の内壁に沿って上下移動する第2のテーブルとを備え、第1の造形領域では大きい物を造形し、前記第2の造形領域では小さい物を造形するようにしている。
【0021】
したがって、一台の粉末焼結積層造形装置によって大型の物も小型の物も造形可能である。
【0022】
また、大型の物を造形する際には、大きな第1の造形領域を用いているため、大型の物を一体的に形成することができる。
【0023】
一方、小型の物を造形する際には、小さな第2の造形領域を用いているため、造形物周囲に残留する粉末材料を減らし、これにより予備加熱しても造形後の冷却時間を短縮することができるとともに、予備加熱によるダメージを受ける粉末材料の量を軽減することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の粉末焼結積層造形装置によれば、一台の粉末焼結積層造形装置で、大型の物を造形する際には、大きな第1の造形領域を形成してこれを用い、小型の物を造形する際には、第1の造形領域内にこれより小さい第2の造形領域を形成してこれを用いているので、一台の粉末焼結積層造形装置で大型の物も小型の物も造形可能である。
【0025】
しかも、大型の物を造形する際には、大きな第1の造形領域を用いることで、大型の物は一体的に形成することができる。
【0026】
小型の物を造形する際には、小さな第2の造形領域を用いることで、予備加熱しても造形後の冷却時間を短縮することができるとともに、予備加熱によるダメージを受ける粉末材料の量を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
(粉末焼結積層造形装置の説明)
図1は、本発明の実施の形態に係る粉末焼結積層造形装置の構成を示す斜視図である。図2(a)は、図1の第2の造形用容器17、第2の粉末材料容器18a、18bを第1の造形用容器13、第1の粉末材料容器14a、14b内にセットした後にI−I線に沿ってとった断面図であり、主に、造形用容器、その両側の粉末材料容器の部分を示す。図2(b)は、その部分の上面図である。
【0029】
この粉末焼結造形装置111は、図1に示すように、レーザ光出射部111Aと、造形部111Bと、制御装置111Cとから構成されている。
【0030】
レーザ光出射部111Aにおいては、レーザ光の光源11とレーザ光の照射方向を制御するミラー12とが設けられている。光源11から出射したレーザ光はコンピュータによるミラー制御により、造形部111Bのパートシリンダ15上の粉末材料の薄層に選択的に照射されるようになっている。例えば、作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき、コンピュータによるミラー制御が行われる。レーザ光の光源11とミラー12とが加熱焼結手段を構成する。
【0031】
造形部111Bにおいては、図1及び図2に示すように、レーザ光の照射により造形が行われて3次元造形物が作製される四角い筒状の第1の造形用容器(第1の区画壁)13と、その両側に設置されて粉末材料を貯めておく四角い筒状の第1の粉末材料容器14a、14bとを備えている。第1の造形用容器13の内壁に囲まれた領域が造形エリア(第1の造形領域)であり、第1の粉末材料容器14a、14bの内壁に囲まれた領域が粉末材料の収納エリア(第1の収納領域)である。
【0032】
また、第1の造形用容器13内、第1の粉末材料容器14a、14b内にはそれぞれ四角い筒状の第2の造形用容器(第2の区画壁)17、四角い筒状の第2の粉末材料容器18a、18bを着脱自在に取り付け得るようになっている。
【0033】
第2の造形用容器17は、小型の造形物を作製するときに第1の造形用容器13内に設置され、図3(a)に示すように、第1の造形用容器13内に第1の造形用容器13の造形エリアよりも小さな造形エリア(第2の造形領域)を画定する。容器17壁の外側であって第1の造形用容器13内側の上面を覆うフランジ17aを備えている。また、第2の粉末材料容器18a、18bは、図3(b)に示すように、小型の造形物を作製するときに第1の粉末材料容器14a、14b内にそれぞれ設置され、第1の粉末材料容器14a、14bの粉末材料の収納エリアよりも小さな粉末材料の収納エリア(第2の収納領域)を画定する。第2の粉末材料容器18a、18b壁の外側であって第1の粉末材料容器14a、14b内側の上面を覆うフランジ18cを備えている。第2の容器のフランジ17a、18cは、ともに、第1の容器13、14a、14b内に第2の容器17、18a、18bをセットしたときに粉末材料が第1の容器13、14a、14bの空き領域に落下しないようにする機能、及びフランジ17a、18cを第1の容器13、14a、14bに掛止させて第1の容器13、14a、14bによって第2の容器17、18a、18bを支持させる機能を有する。
【0034】
第1の造形用容器13内には、3次元造形物となる積層された焼結薄層を載せて、内壁に沿って昇降可能な、図4(a)に示すようなパートシリンダ(第1のテーブル)15が設置され、パートシリンダ15上で、順次粉末材料の薄層が形成され、粉末材料の薄層ごとに加熱され、焼結される。また、第1の粉末材料容器14a、14b内には、粉末材料を載せて容器内壁に沿って昇降し、粉末材料を供給する、図5(a)に示すようなフィードシリンダ(第1の粉末材料供給テーブル)16a、16bがそれぞれ設置されている。
【0035】
第1のパートシリンダ15は、図4(b)に示すように、造形物の載置面となる平坦な面をもつ上下2つの板状部材15a、15bよりなり、2つの板状部材15a、15bは、通常、図示しないねじなどにより、図4(a)に示すように、一体的に取り付けられている。第2の造形用容器17が用いられるときに、上部の板状部材15aを取り外して用いる。シリンダを第1及び第2の造形用容器内にセットしたときに、シリンダと容器内壁との間で隙間が生じて粉末材料が漏れることがないように、シリンダと容器内壁との間の密着性を保つため板状部材15a、15bの側面全体にわたってパッキング用のゴムなどが取り付けられている。
【0036】
また、第1のフィードシリンダ16a、16bも、第1のパートシリンダ15と同様に、図5(b)に示すように、粉末材料の載置面となる平坦な面を有する上下2つの板状部材16c、16dよりなり、2つの板状部材16c、16dは、通常、図示しないねじなどにより、図5(a)に示すように、一体的に取り付けられている。第2の粉末材料容器18a、18bが用いられるときに、上部の板状部材16cを取り外して用いる。この場合も、シリンダを粉末材料容器内にセットしたときに、シリンダと容器内壁との間で隙間が生じて粉末材料が漏れることがないように、シリンダと容器内壁との間の密着性を保つため板状部材16c、16dの側面全体にわたってパッキング用のゴムなどが取り付けられている。
【0037】
第1のパートシリンダ15及び第1のフィードシリンダ16a、16bには、図6(a)に示すように、着脱自在の支持軸15c、16eが取り付けられている。第1のパートシリンダ15及び第1のフィードシリンダ16a、16bへの支持軸15c、16eの取り付けは、図6(b)に示すように、支持軸15c、16eの一端に設けられた鉤状部材19により板状部材15b、16dの下部に設けられた凸部を挟み込むようにして行われる。支持軸15c、16eの他端は支持軸15c、16eに上下移動を行わせる駆動装置に接続されている。
【0038】
第2の造形用容器17内には、図4(b)に示すように、筒状の容器壁に沿って上下移動し、複数の焼結薄層を積層して載せる第2のパートシリンダ(第2のテーブル)15bが設置されている。また、第2の粉末材料容器18a、18b内には、図5(b)に示すように、筒状の容器壁に沿って上下移動し、粉末材料を載せる第2のフィードシリンダ(第2の粉末材料供給テーブル)16dが設置されている。そして、図2(b)に示すように、粉末材料の収納エリアの縦方向の幅は、造形エリアの縦方向の幅と略同じ寸法となっている。リコータローラにより粉末材料を造形エリアに供給する際に造形エリア以外に不必要な粉末材料を供給しないようにするためである。
【0039】
第2の造形用容器17及び第1のパートシリンダ15は、第1の造形用容器13への取り付け、取り外しが自在になっており、第2のパートシリンダ15bは第2の造形用容器17への取り付け、取り外しが自在になっている。また、第2の粉末材料容器18a、18b及び第1のフィードシリンダ16a、16bは、第1の粉末材料容器14a、14bへの取り付け、取り外しが自在になっており、第2のフィードシリンダ16dは第2の粉末材料容器18a、18bへの取り付け、取り外しが自在になっている。
【0040】
更に、造形エリア及び粉末材料の収納エリアの全領域に渡って回転しつつ移動する、図8又は図10に示すようなリコータローラ20が設けられている。リコータローラ20は、回転しつつ移動することにより、第1又は第2のフィードシリンダ16b、16d上に貯められた粉末材料21を第1又は第2のパートシリンダ15、15b上に供給し、かつ粉末材料21の表面を均して第1又は第2のパートシリンダ15、15b上に粉末材料の薄層21aを形成する機能を有する。従って、粉末材料21の供給量は第1又は第2のフィードシリンダ16b、16dの上昇量で決まり、粉末材料の薄層21aの厚さは第1又は第2のパートシリンダ15、15bの降下量で決まる。粉末材料21として、ナイロン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリルにトリル・ブタジエン・スチレンコポリマ(ABS)、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)、及びポリカプロラクトンよりなる群から選ばれた少なくとも1種、または、金属粉末などを用いることができる。
【0041】
制御装置111Cは、第1又は第2のパートシリンダ15、15bを薄層一層分降下させて、リコータローラ20によって第1の粉末材料容器14a、14b又は第2の粉末材料容器18a、18bから第1又は第2のパートシリンダ15、15b上に粉末材料21を供給させ、かつ第1又は第2のパートシリンダ15、15b上で粉末材料の薄層21aを形成させ、次いで、レーザ光及び制御ミラー12(加熱焼結手段)によって作製すべき3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)に基づき粉末材料の薄層21aを選択的に加熱して焼結させ、これらの動作を繰り返して、複数の焼結薄層を積層させ、3次元造形物を作成させる。
【0042】
以上のように、本発明の実施の形態の粉末焼結積層造形装置においては、大きな第1の造形領域を画定する第1の造形用容器13内に第2の造形用容器17をセットすることにより、第1の造形領域内に第1の造形領域よりも小さな第2の造形領域を形成できるようになっている。また、3次元造形物を載置し、第1及び第2の造形領域を上下移動する第1及び第2のパートシリンダ15、15bもそれぞれの造形領域に合わせて第1及び第2の造形用容器13、17に着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0043】
したがって、一台の粉末焼結積層造形装置によって大型の物も小型の物も造形可能である。大型の物を造形する際には、大きな第1の造形領域をそのまま用いて、大型の物を一体的に形成することができる。一方、小型の物を造形する際には、小さな第2の造形領域を形成することにより造形物周囲に残留する粉末材料を減らし、これにより造形後の冷却時間を短縮することができるとともに、予備加熱によるダメージを受ける粉末材料の量を軽減することができる。
【0044】
(粉末焼結積層造形方法の説明)
次に、図7乃至図10を参照しながら上記造形装置を用いて造形を行う方法について説明する。図7(a)、(b)乃至図8は大型の物を造形する方法について示す図であり、図9(a)、(b)乃至図10は小型の物を造形する方法について示す図である。図7(a)、図9(a)は断面図、図7(b)及び図9(b)は上面図、図8及び図10は斜視図である。なお、図8及び図10に示された第1及び第2の容器13、14a、14b、17、18a、18bの前壁は何れも説明のために省略されている。
【0045】
最初に、図7乃至図8を参照しながら大型の物を造形する場合について説明する。
【0046】
まず、図7(a)、(b)に示すように、第2の造形用容器17を第1の造形用容器13から取り外し、第2の粉末材料容器18a、18bを第1の粉末材料容器14a、14bから取り外しておく。上部の板状部材を取り付けて載置面の面積が大きくなっている第1のシリンダ15、16a、16bを用い、これらを、図8に示すように、第1の造形用容器13、第1の粉末材料容器14a、14bの内壁に沿って上下移動可能なように第1の造形用容器13、第1の粉末材料容器14a、14bに取り付ける。
【0047】
次いで、造形部111Bにおいて、左右のフィードシリンダ16a、16bを降下させ、フィードシリンダ16a、16b上に粉末材料21を供給し、十分な量の粉末材料21を貯めておく。
【0048】
次いで、パートシリンダ15を薄層一層分に相当する量だけ降下させる。次いで、右側のフィードシリンダ16bを上昇させて粉末材料21が平坦面から上に出てくるようにする。
【0049】
次いで、リコータローラ20を回転移動させて右側のフィードシリンダ16b上、平坦面から上に出ている粉末材料21を均しつつ造形用容器13内のパートシリンダ15上に移動させる。これにより、パートシリンダ15上に一層分の粉末材料の薄層21aが形成される。このとき、造形用容器13内壁に設置されたヒータ(図示しない)、或いは造形用容器13の斜め上に設けられた赤外線加熱装置(図示しない)などにより粉末材料の薄層21aの表面を、粉末材料の融点よりも5〜15℃程度低い温度に予備加熱する。
【0050】
次に、レーザ光出射部111Aの光源1からレーザ光を出射させるとともに、作製すべき3次元造形物のスライスデータに基づき、コンピュータによりミラー12を制御して、粉末材料の薄層21aに選択的にレーザ光を照射する。これにより、図8に示すように、粉末材料の薄層21bが加熱されて焼結する。
【0051】
次に、図8に示すように、パートシリンダ15を薄層一層分降下させるとともに、フィードシリンダ16bを上昇させる。以下、上記説明した方法と同様にして、新たな粉末材料21をパートシリンダ15上に供給し、焼結した薄層21b上に新たな粉末材料の薄層21aを形成する。次いで、加熱焼結→粉末材料の薄層21aの形成→加熱焼結→・・を繰り返す。
【0052】
このようにして、大型の3次元造形物が完成する。そして、最後に予備加熱を止めて自然冷却を行い、常温付近になったら、造形用容器13から粉末材料21に埋もれた3次元造形物を取り出す。
【0053】
次に、図9(a)、(b)乃至図10を参照しながら小型の物を造形する場合について説明する。
【0054】
まず、図9(a)に示すように、第2の造形用容器17、第2の粉末材料容器18a,18bをそれぞれ第1の造形用容器13、第1の粉末材料容器14a、14bに取り付ける。上部の板状部材15a、16c、16cを取りはずして載置面の面積が小さくなっている第2のシリンダ15b、16d、16dを用い、図10に示すように、第2の造形用容器17、第2の粉末材料容器18a,18bの内壁に沿って上下移動可能なように第2の造形用容器17、第2の粉末材料容器18a,18bに取り付ける。
【0055】
次いで、造形部111Bにおいて、左右のフィードシリンダ16dを降下させ、フィードシリンダ16d上に粉末材料21を供給し、十分な量の粉末材料21を貯めておく。
【0056】
次いで、パートシリンダ15bを薄層一層分に相当する量だけ降下させる。次いで、右側のフィードシリンダ16dを上昇させて粉末材料21が平坦面から上に出てくるようにする。
【0057】
次いで、リコータローラ20を回転移動させて右側のフィードシリンダ16d上、平坦面から上に出ている粉末材料21を均しつつパートシリンダ15b上に移動させる。これにより、パートシリンダ15b上に一層分の粉末材料の薄層21aが形成される。このとき、造形用容器17内壁に設置されたヒータ(図示しない)、或いは造形用容器17の斜め上に設けられた赤外線加熱装置(図示しない)などにより粉末材料の薄層21aの表面を、粉末材料の融点よりも5〜15℃程度低い温度に予備加熱する。
【0058】
次に、レーザ光出射部111Aの光源11からレーザ光を出射させるとともに、作製すべき3次元造形物のスライスデータに基づき、コンピュータによりミラー12を制御して、粉末材料の薄層21aに選択的にレーザ光を照射する。これにより、図10に示すように、粉末材料の薄層21bが加熱されて焼結する。
【0059】
次に、図10に示すように、パートシリンダ15bを薄層一層分降下させるとともに、フィードシリンダ16dを上昇させる。以下、上記説明した方法と同様にして、新たな粉末材料21をパートシリンダ15b上に供給し、焼結した薄層21b上に新たな粉末材料の薄層21aを形成する。次いで、加熱焼結→粉末材料の薄層21aの形成→加熱焼結→・・を繰り返す。
【0060】
このようにして、小型の3次元造形物が完成する。そして、最後に予備加熱を止めて自然冷却を行い、常温付近になったら、第2の造形用容器17から粉末材料21に埋もれた3次元造形物を取り出す。このとき、第2の造形用容器17内の3次元造形物及びその周囲に残る粉末材料の内容量は少ないので、ブレークアウトまでの冷却に要する時間を小型の造形装置並みに抑制することができるとともに、予備加熱によるダメージを受ける粉末材料の量を軽減することができる。
【0061】
これにより、装置の運用効率を向上させ、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0062】
以上、実施の形態によりこの発明の粉末焼結積層造形装置を詳細に説明したが、この発明の範囲は上記実施の形態に具体的に示した例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の上記実施の形態の変更はこの発明の範囲に含まれる。
【0063】
例えば、この実施の形態の粉末焼結造形装置においては、図1、図2(a)、図9(a)に示すように、第2の造形用容器17と第1の造形用容器13の深さ、及び第2の粉末材料容器18a、18bと第1の粉末材料容器14a、14bの深さを同じとしているが、図11に示すように、各第2の造形用容器17c、第2の粉末材料容器18e、18eの深さを造形物の大きさに合わせて第1の造形用容器13の深さ又は第1の粉末材料容器14a、14bの深さより浅くしてもよい。なお、図11中、他の符号17dは第2の造形用容器17cのフランジを示し、18fは第2の粉末材料容器18e、18eのフランジを示す。また、その他の符号で、図9(a)、(b)における符号と同じ符号はそのものと同じものを示す。
【0064】
また、この実施の形態の粉末焼結造形装置においては、第1の造形用容器13、第1の粉末材料容器14a、14b及び第2の造形用容器17、第2の粉末材料容器18a、18bの断面形状は、四角であるが、これに限られない。円形でも、四角以外の多角形でもよい。
【0065】
また、筒状の第1及び第2の造形用容器13、17、第1及び第2の粉末材料容器14a、14b、18a、18bの内径は上から下まですべて同じ寸法となっており、第1及び第2のパートシリンダ15、15b、第1及び第2のフィードシリンダ16a、16b、16dが第1及び第2の造形用容器13、17、第1及び第2の粉末材料容器14a、14b、18a、18bの下端より抜き取られるようになっているが、図12に示すように、筒状の第1及び第2の造形用容器、第1及び第2の粉末材料容器の少なくとも何れか一の下端を鉤状に折り曲げて、シリンダが容器の下端まできたときに容器の下端に掛止されるようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施の形態では、第1のパートシリンダ15は第2のパートシリンダ15b上に板状部材15aを被せて形成されたものであるが、図13に示すように、第2のパートシリンダ15bの周辺部を拡張する輪状の板状部材15dを取り付けて形成されてもよい。なお、図13において、(a)は断面図、(b)は上面図である。このような構造は、粉末材料供給テーブルにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置の構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は、図1のI−I線に沿う断面図であり、(b)は上面図である。
【図3】(a)は、本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置に用いる第1の造形用容器にセットされる第2の造形用容器の構成について示す断面図及び上面図であり、(b)は、同じく第1の粉末材料容器にセットされる第2の粉末材料容器の構成について示す断面図及び上面図である。
【図4】(a)、(b)は、本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置に用いるパートシリンダの構成について示す断面図及び上面図である。
【図5】(a)、(b)は、本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置に用いるフィードシリンダの構成について示す断面図及び上面図である。
【図6】(a)は、本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置においてパートシリンダ及びフィードシリンダへの駆動手段の着脱機構について示す断面図であり、(b)はその部分断面図である。
【図7】(a)は、本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置を用いて大型の造形物を造形する方法について示す断面図であり、(b)は上面図である。
【図8】本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置を用いて大型の造形物を造形する方法について示す斜視図である。
【図9】(a)は、本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置を用いて小型の造形物を造形する方法について示す断面図であり、(b)は上面図である。
【図10】本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置を用いた、小型の造形物を造形する方法について示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置における第2の造形用容器及び第2の粉末材料容器の変形例の構成について示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置における第2の造形用容器及び第2の粉末材料容器の他の変形例の構成について示す断面図である。
【図13】(a)は、本発明の実施の形態である粉末焼結積層造形装置に用いる他のパートシリンダの構成について示す断面図であり、(b)は上面図である。
【図14】従来例の粉末焼結造形装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
11 レーザ光の光源(レーザ光出射手段)
12 ミラー(レーザ光出射手段)
13 第1の造形用容器
14a、14b 第1の粉末材料容器
15 第1のパートシリンダ(第1のテーブル)
15a、16c 板状部材
15b 第2のパートシリンダ(第2のテーブル)
15c、16e 支持軸
16a、16b 第1のフィードシリンダ(第1の粉末材料供給テーブル)
16d 第2のフィードシリンダ(第2の粉末材料供給テーブル)
17、17c 第2の造形用容器
17a、17d、18c、18f フランジ
18a、18b、18e 第2の粉末材料容器
20 リコータローラ
21 粉末材料
21a 粉末材料の薄層
21b 焼結した薄層
111A レーザ光出射部
111B 造形部
111C 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の造形領域を画定する第1の区画壁と、
前記第1の区画壁の内壁に沿って上下移動する第1のテーブルと、
前記第1の造形領域内に第2の造形領域を画定し、前記第1の区画壁の上端に掛けるフランジを有する第2の区画壁と、
前記第2の区画壁の内壁に沿って上下移動する第2のテーブルとを備え、
前記第1の造形領域では大きい物を造形し、前記第2の造形領域では小さい物を造形することを特徴とする粉末焼結積層造形装置。
【請求項2】
前記第1のテーブルは、前記第2のテーブル上に板状部材を被せて形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の粉末焼結積層造形装置。
【請求項3】
前記第1のテーブルは、前記第2のテーブルの周辺部を拡張する板状部材を取り付けて形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の粉末焼結積層造形装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のテーブルを上下移動させる駆動手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の粉末焼結積層造形装置。
【請求項5】
前記駆動手段は前記第1及び第2のテーブルに着脱可能となっていることを特徴とする請求項4に記載の粉末焼結積層造形装置。
【請求項6】
前記第1の区画壁の下端部及び前記第2の区画壁の下端部のうち少なくとも何れか一は、対応する前記テーブルを前記下端部から抜き取ることが可能なようになっていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一に記載の粉末焼結積層造形装置。
【請求項7】
前記第1の区画壁の下端部及び前記第2の区画壁の下端部のうち少なくとも何れか一は、対応する前記テーブルを前記下端部に掛止することが可能なようになっていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一に記載の粉末焼結積層造形装置。
【請求項8】
前記粉末焼結積層造形装置は、さらに前記第1の造形領域に隣接するように設置された粉末材料収納部と、前記第1及び第2のテーブル上に形成された粉末材料の薄層にレーザ光を選択的に照射するレーザ光照射手段とを備え、
前記第1又は第2の造形領域に粉末材料を供給して前記第1又は第2のテーブル上に粉末材料の薄層を形成し、該粉末材料の薄層に前記レーザ光を選択的に照射して焼結薄層を形成し、これらの動作を繰り返すことにより前記焼結薄層を積層して3次元造形物を作製することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一に記載の粉末焼結積層造形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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