説明

粉末状のシリカコンポジット粒子及びその製造方法

【課題】粒子表面にアンモニウム塩系イオン性液体が固定化された粉末状のシリカコンポジット粒子であって、耐熱性が向上した粉末状のシリカコンポジット粒子を提供する。
【解決手段】(a)平均粒子径が5〜200nmのコアシリカ粒子、(b)アルコキシシラン、(c)アンモニウム塩系イオン性液体,及び(d)反応溶媒を含む反応原料液に、アルカリを加えて、該アルコキシシランを26℃以上39℃以下の温度範囲で加水分解することにより、該コアシリカ粒子の表面処理を行う表面処理工程を行い得られるシリカコンポジット粒子であることを特徴とする粉末状のシリカコンポジット粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れたアンモニウム塩系イオン性液体を含有する粉末状のシリカコンポジット粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオン性液体は、カチオンとアニオンとの塩であり、常温、常圧では液体であり、沸点を持たない物質であるが、そのうちのいくつかは、20世紀初頭から電気化学の分野では、研究されてきた。しかし、他の用途については、研究されていなかった。
ところが、1990年代になり、グリーンケミストリーが叫ばれるようになると、イオン性液体は、不燃性、不揮発性等の興味深い性質を示すことから、注目を集め始めた。そのため、種々のイオン性液体が開発されるようになった。そして、近年、イオン性液体を、不燃性、不揮発性かつ極性の高い溶媒として利用することについては、研究が進められている。
【0003】
しかし、溶媒としての用途以外については、イオン性液体の利用方法については、未だ開発されておらず、今後、イオン性液体の新規な用途が期待される。
【0004】
イオン性液体の新規な用途の1つとして、イオン性液体を含有する機能性材料が考えられる。ところが、イオン性液体を含有する機能材料を製造するためには、イオン性液体を、種々の溶媒又は樹脂材料等に、均一に分散しなければならないが、イオン性液体が、液体であるため、種々の溶媒又は樹脂材料等に均一に分散することが極めて困難であるという問題があった。
【0005】
このため、本発明者らは、先に溶媒や樹脂に均一に分散させることができ、また耐熱性にも優れた粒子表面にイオン性液体を固定化した粉末状のシリカコンポジット粒子を提案した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】2007−270124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1で得られる粉末状のシリカコンポジット粒子において、ホスホニウム塩系イオン性液体を含有するものは、800℃における重量減少率が10重量%以下で耐熱性が格段に優れている。これに対してアンモニウム塩系イオン性液体は800℃における重量減少率が多くの場合、10重量%以上あり、更なる耐熱性の向上が望まれている。
【0008】
従って、本発明の課題は、粒子表面にアンモニウム塩系イオン性液体が固定化された粉末状のシリカコンポジット粒子であって、耐熱性が向上した粉末状のシリカコンポジット粒子を提供することにある。また、本発明の課題は、該粉末状のシリカコンポジット粒子を工業的に有利な方法で製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(a)平均粒子径が5〜200nmのコアシリカ粒子を含有するシリカゾル、(b)アルコキシシラン、(c)アンモニウム塩系イオン性液体、及び(d)反応溶媒を混合して得られる反応原料溶液に、アルカリを加えて、該アルコキシシランを加水分解することにより、該コアシリカ粒子の表面処理を行う表面処理工程を行って、粉末状のシリカコンポジット粒子を製造する方法において、表面処理工程に係るアルコキシシランの加水分解温度が目的物の耐熱性に深く関与していること、また、用いるイオン性液体の種類により、耐熱性を向上させることができる温度範囲が異なること、アンモニウム塩系イオン性液体を含有するものは、その温度範囲がホスホニウム塩系イオン性液体を含有するものに比べて高いこと。また、このような好適な温度範囲でアルコキシシランの加水分解を行って得られるアンモニウム塩系イオン性液体を含有する粉末状のシリカコンポジット粒子は、耐熱性が飛躍的に向上することを見出し本発明を完成するに到った。
【0010】
即ち、本発明が提供しようとする第1の発明は、(a)平均粒子径が5〜200nmのコアシリカ粒子、(b)アルコキシシラン、(c)アンモニウム塩系イオン性液体,及び(d)反応溶媒を含む反応原料液に、アルカリを加えて、該アルコキシシランを26℃以上39℃以下の温度範囲で加水分解することにより、該コアシリカ粒子の表面処理を行う表面処理工程を行い得られるシリカコンポジット粒子であることを特徴とする粉末状のシリカコンポジット粒子である。
【0011】
また、本発明が提供しようする第2の発明は、(a)平均粒子径が5〜200nmのコアシリカ粒子を含有するシリカゾル、(b)アルコキシシラン、(c)アンモニウム塩系イオン性液体、及び(d)反応溶媒を混合して得られる反応原料溶液に、アルカリを加えて、該アルコキシシランを26℃以上39℃以下で加水分解することにより、該コアシリカ粒子の表面処理を行う表面処理工程を有することを特徴とする粉末状のシリカコンポジット粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アンモニウム塩イオン性を含有した粉末状のシリカコンポジット粒子において、耐熱性が向上したものを提供することができる。
また、本発明の製造方法によれば、工業的に有利な方法で該粉末状のシリカコンポジット粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1及び比較例1〜2で得られた粉末状のシリカコンポジット粒子のTGAチャート。
【図2】比較例3〜4で得られた粉末状のシリカコンポジット粒子のTGAチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
【0015】
本発明の粉末状のシリカコンポジット粒子は、(a)平均粒子径が5〜200nmのコアシリカ粒子、(b)アルコキシシラン、(c)アンモニウム塩系イオン性液体,及び(d)反応溶媒を含む反応原料液に、アルカリを加えて、該アルコキシシランを26℃以上39℃以下の温度範囲で加水分解することにより、該コアシリカ粒子の表面処理を行う表面処理工程を行い得られるシリカコンポジット粒子であることを特徴とする粉末状のシリカコンポジット粒子である。
【0016】
表面処理工程に係る(a)コアシリカ粒子は、平均粒子径が5〜200nmのシリカ粒子である。表面処理工程に係るコアシリカ粒子源としては、平均粒子径が5〜200nmのシリカ粒子を含有するシリカゾルが挙げられる。表面処理工程に係るコアシリカを含有するシリカゾルは、親水性溶媒シリカゾル、疎水性シリカゾル等が挙げられ、メタノールゾル、エタノールゾル、イソプロピルアルコールゾルが、ゾルを製造し易い点で好ましい。また、メタノールゾルは、市販品でもよく、疎水性溶媒シリカゾルは、水性シリカゾルを溶媒置換することにより調製されていてもよい。シリカゾル中のコアシリカ粒子は、SiO2からなるシリカ粒子である。シリカゾル中のコアシリカ粒子の含有量は、特に制限はないが、好ましくは1〜80重量%、特に好ましくは3〜50重量%である。例えば、表面処理工程に係る反応溶媒に、表面処理工程に係るコアシリカを含有するシリカゾルを添加することにより、平均粒子径が5〜200nmのコアシリカを含有する反応原料液が得られる。
【0017】
表面処理工程に係るコアシリカ粒子のシリカ源としては、例えば、珪酸ソーダ又は活性珪酸溶液から粒子成長を行って製造されたものや、有機珪素化合物を原料として製造されたものや、ヒュームドシリカ等、特に制限されない。
【0018】
表面処理工程に係るコアシリカ粒子の平均粒子径は、5〜200nm、好ましくは5〜50nmである。コアシリカ粒子の平均粒子径が、上記範囲内にあることにより、分散溶媒又は樹脂材料へのシリカコンポジット粒子の分散性が良好になる。一方、コアシリカ粒子の平均粒子径が5nm未満だと、コアシリカ粒子を含有するシリカゾルの製造及び工業的に入手することが困難であり、また、平均粒子径が200nmを超えると、シリカコンポジット粒子の分散安定性が低くなる。コアシリカ粒子は動的光散乱法によって測定することができる。本発明においては、大塚電子製のDLS−6000HLを用いて測定を行った。
【0019】
表面処理工程に係る(b)アルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン、ヘキシルオキシトリメチルシラン等のアルコキシトリアルキルシランが挙げられる。これらのアルコキシシランにおけるアルキル基の炭素鎖長は1〜6であることが好ましい。アルコキシ基の炭素鎖長も1〜6であることが好ましい。これらのうち、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランが、製造上、取り扱い易い点で好ましい。また、アルコキシシランは、1種単独でも、2種以上の組み合せでもよい。
【0020】
表面処理工程に係る(c)アンモニウム塩系イオン性液体は、例えば、下記一般式(1)で表わされ、アンモニウム塩であり、且つイオン性液体である。
【0021】
【化1】


前記一般式(1)で表されるアンモニウム塩系イオン性液体の式中のR、R、R及びRは、炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又はフェニル基を示す。また、R、R、R及びRはシリカ原子を含む基であってもよい。R、R、R及びRが、シクロアルキル基又はフェニル基の場合、例えば、4−メチルシクロヘキシル基、4−メチルフェニル基のように、シクロアルキル環又はベンゼン環の水素原子の一部が、アルキル基で置換されていてもよい。また、R、R、R及びRは、同一の基であっても異なる基であってもよい。また、R、R、R及びRは、炭素数1〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、又はフェニル基の水素原子の一部が、ヒドロキシル基、アミノ基、アルコキシ基、シリル等の置換基で置換されている基であってもよい。これらのうち前記R〜Rの基は炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、特に2〜10のアルキル基が好ましい。
本発明において、アンモニウム塩のカチオン基はトリエチル−n−オクチルアンモニウムカチオン、トリ−n−ブチルメチルアンモニウムカチオンが好ましく、特にトリエチル−n−オクチルアンモニウムカチオンがより好ましい。
【0022】
また、前記一般式(1)で表されるアンモニウム塩系イオン性液体の式中のXはアニオン基を示す。Xのアニオン基としては、ベンゾトリアゾールイオン、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、BF、PF、N(SOCF、PO(OMe)、PS(OEt)、(COMe)PhSO等のアニオン基が挙げられ、特にN(SOCFが好ましい。
【0023】
表面処理工程に係る(d)反応溶媒は、表面処理工程に係る(b)アルコキシシラン及び(c)アンモニウム塩イオン性液体を溶解するものが用いられる。表面処理工程に係る反応溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールが挙げられ、この中で、メタノールが反応効率が高い観点から特に好ましい。
【0024】
表面処理工程において、反応原料液を調製する際に、(a)コアシリカ粒子を含有するシリカゾル、(b)アルコキシシラン、(c)アンモニウム塩イオン性液体を反応溶媒に混合する順序は特に制限されるものではない。
【0025】
反応原料液中の(a)コアシリカ粒子の含有量は、特に制限されないが、好ましくは1〜80重量%、特に好ましくは3〜50重量%である。反応原料液中のコアシリカ粒子の含有量が、上記範囲にあることにより、シリカコンポジット粒子の分散安定性が高くなる。
【0026】
反応原料液中の(b)アルコキシシランの含有量は、(a)コアシリカ粒子1gに対して、0.05〜1.5mmol、好ましくは0.08〜1.05mmolである。反応原料液中のアルコキシシランの含有量が、上記範囲にあることにより、粉末状のシリカコンポジット粒子中の(c)アンモニウム塩イオン性液体の含有量が高くなる。反応原料液中のアルコキシシランの含有量が、(a)コアシリカ粒子1gに対して、0.05mmol未満だと、粉末状のシリカコンポジット粒子中の(c)アンモニウム塩イオン性液体の含有量が低くなり易く、また、1.5mmolを超えると、シリカコンポジット粒子の分散安定性が低くなり易い。
【0027】
反応原料液中の(c)アンモニウム塩イオン性液体の含有量は、(a)コアシリカ粒子1gに対して、0.03ml以上、好ましくは0.03〜1.5ml、特に好ましくは0.03〜1.0ml、更に好ましくは0.06〜0.8mlである。反応原料液中の(c)アンモニウム塩イオン性液体の含有量が、上記範囲にあることにより、粉末状のシリカコンポジット粒子中のアンモニウム塩イオン性液体の含有量が高くなる。反応原料液中に含有させる(c)アンモニウム塩イオン性液体の含有量が、(a)コアシリカ粒子1gに対して、0.03ml未満だと、粉末状のシリカコンポジット粒子中に含有されるアンモニウム塩イオン性液体の含有量が低くなり易い。
【0028】
表面処理工程において、反応原料液に加えるアルカリとしては、アルコキシシランの加水分解を行うことができるものであれば、特に制限されず、例えば、アルカリとしては、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等が挙げられるが、反応性が高く、目的物を高純度で得ることができる観点で、水酸化アンモニウムが特に好ましい。
【0029】
反応原料液に加えるアルカリの混合量は、特に制限されず、適宜選択される。
【0030】
本発明者らは、アンモニウム塩系イオン性液体を含有する粉末状のシリカコンポジット粒子において、多くの場合800℃において、重量減少が10重量%以上になる理由が、表面処理工程に係るアルコキシシランの加水分解温度にあること。この加水分解温度の好適な範囲は、イオン性液体の種類により異なること。ホスホニウム塩系イオン性液体を含有する粉末状のシリカコンポジット粒子の場合には、耐熱性が向上したものを得るには、概ね25℃であるのに対して、アンモニウム塩系イオン性液体を含有する粉末状のシリカコンポジット粒子では、ホスホニウム塩系イオン性液体に比べ高い温度でないと更に耐熱性が向上したものが得られないことを見出した。
【0031】
従って、本発明において、反応原料液に、アルカリを混合して、アルコキシシランの加水分解を行う際の反応温度は、26℃以上39℃以下、好ましくは28〜32℃、いっそ好ましくは概ね30℃である。なお、概ね30℃とは、30℃±0.5℃の範囲を意味する。当該範囲の温度範囲でアルコキシシランの加水分解を行うことにより、本発明では耐熱性が向上したアンモニウム塩系イオン性液体を含有する粉末状のシリカコンポジットを得ることができ、一方、この温度範囲以外で加水分解を行っても、耐熱性が向上したものが得られ難い。
【0032】
また、反応原料液に、アルカリを混合して、アルコキシシランの加水分解を行う際の反応時間は、特に制限されず、適宜選択されるが、好ましくは1〜72時間、特に好ましくは1〜24時間である。
【0033】
反応原料溶液に、アルカリを混合して、アルコキシシランの加水分解を行う表面処理工程を行った後、反応液から固形分を遠心分離等により分離し、必要に応じ、得られた固形分を溶媒に分散させて、再び遠心分離を行うという操作を、数回繰り返し、次いで、乾燥して、粉末状のシリカコンポジット粒子が得られる。
【0034】
また、本発明の粉末状のシリカコンポジット粒子の他の好ましい物性としては、平均粒子径が好ましくは5〜900nm、特に好ましくは10〜200nmである。平均粒子径が前記範囲内にあると、種々の溶媒や樹脂への分散性が良好である観点から好ましい。
【0035】
本発明の粉末状のシリカコンポジット粒子は、アンモニウム塩系イオン性液体を含有しているので、アンモニウム塩系イオン性液体に起因したイオン伝導性、帯電防止性、抗菌性等の各種特性を有する。更に、本発明の粉末状のシリカコンポジット粒子は、有機物を含有する材料でありながら、800℃程度に加熱処理しても、僅かな重量減少しか認められない。従って、例えば本発明の粉末状のシリカコンポジット粒子を樹脂等に含有させることにより、これらの機能を持った耐熱性に優れた機能性材料にすることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(イオン性液体)
以下に、実施例で用いたイオン性液体の化学式を示す。
【0037】
【化2】


(式中、「Et」はエチル基、「Octyl」はn−オクチル基を示す。)
【0038】
{実施例1及び比較例1〜2}
50mlのサンプル瓶に、メタノール20mlを入れ、次いで、イオン性液体(a)0.5ml、シリカゾル3.33g(SiOの含有量が1.0g)、及びテトラエトキシシラン2.3mmolを入れ、撹拌混合した。次いで、十分に撹拌しながら、25%アンモニア水0.5mlを加え、25℃、30℃、40℃でそれぞれ一晩撹拌した後、濃縮した。濃縮後、固形分にメタノールを入れ、一晩撹拌して、固形分を分散させた後、遠心分離を行った。得られた固形分を、メタノールに加え、一晩分散させた後、遠心分離を行うという操作を2回繰り返し、精製を行った。精製後の固形分を、減圧デシケーター内で真空乾燥させ、粉末状のシリカコンポジット粒子を得た。
・シリカゾル:(30%メタノール溶液、日産化学工業社製、粒子径10〜20nm)
・テトラエトキシシラン:東京化成社製、T0100
【0039】
【表1】

【0040】
<物性の評価>
粉末状のシリカコンポジット粒子試料について、イオン性液体の含有量、平均粒子径、及び800℃での重量減少率を測定した。
(イオン性液体の含有量の評価)
粉末状のシリカコンポジット粒子試料を元素分析することにより求めた。
(平均粒子径の評価)
粉末状のシリカコンポジット粒子試料に、メタノールに加えて、24時間撹拌して、メタノール中に分散させ、光散乱光度計を用いて、平均粒子径を測定した。
(800℃での重量減少率の評価)
粉末状のシリカコンポジット粒子試料を熱重量分析することにより求めた。なお、TGA曲線を図1に示す。また、シリカゾル単独のTGA曲線も併せて併記した。
【0041】
【表2】

【0042】
表1及び図1の結果より、表面処理工程に係るテトラアルコキシシランの加水分解温度を概ね30℃にすることにより、800℃における重量減少率が飛躍的に小さくなっていることが分かる。
【0043】
{比較例3〜4}
50mlのサンプル瓶に、メタノール20mlを入れ、次いで、イオン性液体(b)0.5ml、シリカゾル3.33g(SiOの含有量が1.0g)、及びテトラエトキシシラン2.3mmolを入れ、撹拌混合した。次いで、十分に撹拌しながら、25%アンモニア水0.5mlを加え、25℃、30℃でそれぞれ一晩撹拌した後、濃縮した。濃縮後、固形分にメタノールを入れ、一晩撹拌して、固形分を分散させた後、遠心分離を行った。得られた固形分を、メタノールに加え、一晩分散させた後、遠心分離を行うという操作を2回繰り返し、精製を行った。精製後の固形分を、減圧デシケーター内で真空乾燥させ、粉末状のシリカコンポジット粒子を得た。
・シリカゾル:(30%メタノール溶液、日産化学工業社製、粒子径10〜20nm)
・テトラエトキシシラン:東京化成社製、T0100
【0044】
【表3】

【0045】
<物性の評価>
粉末状のシリカコンポジット粒子試料について、イオン性液体の含有量、平均粒子径、及び800℃での重量減少率を測定した。
(イオン性液体の含有量の評価)
粉末状のシリカコンポジット粒子試料について、元素分析を行うことにより求めた。
(平均粒子径の評価)
粉末状のシリカコンポジット粒子試料を、メタノールに加えて、24時間撹拌して、メタノール中に分散させ、光散乱光度計を用いて、平均粒子径を測定した。
(800℃での重量減少率の評価)
粉末状のシリカコンポジット粒子試料を熱重量分析することにより求めた。なお、TGA曲線を図2に示す。また、シリカゾル単独のTGA曲線も併せて併記した。
【0046】
【表4】

【0047】
表4及び図2の結果より、実施例1のアンモニウム塩系イオン性液体に相当するホスホニウム塩系イオン性液体を用いた場合は、表面処理工程に係るテトラアルコキシシランの加水分解温度を概ね25℃にすることにより、800℃における重量減少率が飛躍的に小さくなっており、相当するアンモニウム塩系イオン性液体と、好適な温度が異なることが分かる。
【0048】
{参考例1}
更に、下記化学式(A)〜(I)で表されるホスホニウム塩を用いる以外は比較例4〜5と同じ条件操作で、テトラエチルシランの加水分解温度を変えて粉末状のシリカコンポジット粒子を得た。得られた粉末状のシリカコンポジット粒子の800℃での重量減少率を実施例1と同様に求めた。その結果を表5に示す。
【化3】


(式中、「n−Bu」はn−ブチル基、「Me」はメチル基、「Octyl」はn−オクチル基、「Decyl」はn−デシル基、「Hexcyl」はn−ヘキシル基をそれぞれ示す。)
【0049】
【表5】

【0050】
表5の結果より、ホスホニウム塩系イオン性液体を用いた場合は、多くの場合表面処理工程に係るテトラアルコキシシランの加水分解温度を概ね25℃にすることにより、800℃における重量減少率が飛躍的に小さくなり、耐熱性が向上することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、アンモニウム塩イオン性を含有した粉末状のシリカコンポジット粒子において、耐熱性が向上したものを提供することができる。
また、本発明の製造方法によれば、工業的に有利な方法で該粉末状のシリカコンポジット粒子を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)平均粒子径が5〜200nmのコアシリカ粒子、(b)アルコキシシラン、(c)アンモニウム塩系イオン性液体,及び(d)反応溶媒を含む反応原料液に、アルカリを加えて、該アルコキシシランを26℃以上39℃以下の温度範囲で加水分解することにより、該コアシリカ粒子の表面処理を行う表面処理工程を行い得られるシリカコンポジット粒子であることを特徴とする粉末状のシリカコンポジット粒子。
【請求項2】
前記アンモニウム塩系イオン性液体のカチオンがトリエチル−n−オクチルアンモニウムカチオンであることを特徴とする請求項1記載の粉末状のシリカコンポジット粒子。
【請求項3】
前記アンモニウム塩系イオン性液体のアニオンがN(SOCFであることを特徴とする請求項1記載の粉末状のシリカコンポジット粒子。
【請求項4】
(a)平均粒子径が5〜200nmのコアシリカ粒子を含有するシリカゾル、(b)アルコキシシラン、(c)アンモニウム塩系イオン性液体、及び(d)反応溶媒を混合して得られる反応原料溶液に、アルカリを加えて、該アルコキシシランを26℃以上39℃以下で加水分解することにより、該コアシリカ粒子の表面処理を行う表面処理工程を有することを特徴とする粉末状のシリカコンポジット粒子の製造方法。
【請求項5】
前記(d)反応溶媒がメタノールであることを特徴とする請求項4記載の粉末状のシリカコンポジット粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−190120(P2011−190120A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54865(P2010−54865)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【出願人】(504229284)国立大学法人弘前大学 (162)
【Fターム(参考)】