説明

粉末状チーズ加工品の製造方法

【課題】チーズ特有のロースト風味を有し、流動性を有する粉末状のチーズ加工品の製造方法を提供することである。
【解決手段】粉末状チーズと穀粉とを含有する混合物を加熱するロースト風味を有する粉末状チーズ加工品の製造方法を実施することにより、香ばしいチーズのロースト風味を有し、且つ流動性がある粉末状チーズ加工品が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロースト風味を有する粉末状チーズ加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チーズを他の食品と共に加熱した際、他の食品の香ばしい香りとチーズの香ばしい香り(ロースト風味)が相俟って非常に食欲をそそる好ましい香りとなる。粉末状チーズをトッピングして加熱することにより好ましい香りがする食品としては、例えば、チーズグラタン、ピザ、オニオンコンソメスープ、調理パンなどが挙げられ、これらは広く一般的に食されている。
しかし、ロースト風味を有する粉末状チーズを得るために粉末状チーズを加熱すると、ロースト風味は付くもののチーズが溶解、またはチーズから油分がにじみでて粉末状チーズの粒が付着し合い流動性を有する粉末状チーズが得られないという問題があった。
【0003】
ロースト風味を有するチーズの製造方法に関する技術としては、噴霧乾燥した粉末チーズを加熱して得られるロースト風味を有する粉末チーズ(特許文献1参照)、エメンタールチーズ(おろし金にて粗く挽いたもの)と小麦粉との混合物とサラダ油を透明樹脂製の平型のレトルトパウチに充填し、密封した後、これを蒸気式レトルト釜にて120℃で20分間加熱した斬新な油漬けロースト食品(特許文献2参照)、などの技術が開示されているが、さらに香ばしいチーズのロースト風味を有し、且つ流動性を有する粉末状チーズ加工品の製造方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−180725号公報
【特許文献2】特開2002−345431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、チーズ特有の香ばしいロースト風味を有し、流動性を有する粉末状のチーズ加工品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、粉末状チーズと穀粉を加熱することにより上記課題を解決することを見出した。本発明者は、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、粉末状チーズと穀粉を加熱釜内で撹拌しながら加熱する工程を含むことを特徴とするロースト風味を有する粉末状チーズ加工品の製造方法、からなっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法を実施することにより、香ばしいチーズのロースト風味を有し、さらに流動性を有する粉末状チーズ加工品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いられる粉末状チーズとしては、ナチュラルチーズおよび/またはプロセスチーズを切断、粉砕して粉末状にしたものである。
【0009】
上記ナチュラルチーズとしては、例えばパルメザンチーズ、グリュイエールチーズ、エメンタールチーズ、ゴーダチーズ、チェダーチーズなどの超硬質チーズおよび硬質チーズが挙げられる。上記プロセスチーズとは、1種または2種以上のナチュラルチーズを切断、粉砕し、乳化剤、香辛料および調味料などを加えて加熱、溶解後成形したものである。上記のチーズの中で、好ましくはパルメザンチーズ、グリュイエールチーズ、エメンタールチーズである。
【0010】
本発明で用いられる粉末状チーズとしては、上記チーズを細かく粉砕したものであり、例えばブロック状のチーズをすりおろしたり、チョッパー、グラインダーなどを用いて細かく粉砕することにより得られる。本発明では市販されている粉末状チーズを用いることができる。チーズを溶融塩で溶解・均質化した後にスプレードライヤーやドラム式乾燥機で乾燥した粉末状チーズは、本発明でいう粉末状チーズに含まれない。
【0011】
本発明で用いられる粉末状チーズの大きさは、約1mm以下の粉末状であることが好ましい。この大きさであれば均一な加熱が可能であり適している。
【0012】
本発明で用いられる粉末状チーズの水分含量は、約8〜40%が好ましく、約8〜35%がさらに好ましい。水分含量が上記範囲であると、粉末状チーズと穀粉とを加熱混合する際、さらさらとした粉末状態を保ち、且つチーズをローストした際の好ましい香りを有する粉末状チーズ加工品が得られる。
【0013】
本発明で用いられる穀粉としては、例えば麦、米、とうもろこし、イモ類、キビ、アワなどの穀類を製粉したものであり、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉、とうもろこし粉、馬鈴薯粉、片栗粉などや、該穀粉から澱粉を取り出したコーンスターチ、小麦澱粉などが挙げられ、好ましくは、小麦粉、とうもろこし粉、コーンスターチである。
【0014】
本発明で用いられる穀粉の水分含量に特に制限はないが、約1〜20%が好ましく、約5〜15%がさらに好ましい。
【0015】
以下に本発明の粉末状チーズ加工品の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、粉末状チーズと穀粉を加熱釜内で撹拌しながら加熱した後に常温まで冷却する。
【0016】
粉末状チーズと穀粉は、加熱釜内で撹拌しながら加熱する際に均一に混合されればよく、例えば加熱釜に加える前に混合してもよいし、加熱釜内で撹拌混合してから加熱または撹拌混合しながら加熱しても良い。
【0017】
本発明において粉末状チーズと穀粉を加熱釜内で撹拌しながら加熱する際の品温は、約100〜180℃の範囲で行うのが好ましく、さらに好ましくは約130〜180℃である。撹拌しながら加熱する時間は混合物の量や加熱温度によって異なるが、品温が約100〜180℃に達してから0分〜約60分間撹拌しながら加熱することが好ましい。上記温度と加熱時間の範囲内であれば、ロースト風味を有する風味良好な粉末状チーズ加工品が得られる。
【0018】
本発明において粉末状チーズと穀粉を加熱釜内で撹拌しながら加熱する方法は、公知の撹拌装置と加熱装置を備えた釜で加熱すればよく、例えば煮炊撹拌機、クッキングミキサー、ニーダー、ロータリーフライヤーなどが挙げられる。その際用いられる熱源としては、例えばガスによる直火、電気式、電磁誘導式、ジャケット式の蒸気方式等が挙げられる。
【0019】
加熱した粉末状チーズと穀粉の混合物を冷却する方法は、混合物が常温まで冷却できれば特に制限はなく、例えば加熱釜から取り出して放冷する方法や、流動層に移して冷却する方法や、加熱釜内にて放冷する方法などが挙げられる。
【0020】
本発明における粉末状チーズと穀粉との配合量は、粉末状チーズ100質量部に対して穀粉が約30〜200質量部が好ましく、さらに好ましくは約50〜150質量部である。この配合の範囲内であると、粉末状チーズと穀粉を撹拌する際チーズが溶けることなく粉末状を保ち、さらに香りの良い粉末状チーズ加工品が得られる。
【0021】
粉末状チーズと穀粉との加熱前の混合物の平均水分含量は約23%以下であることが好ましく、これ以上であると加熱時にチーズが溶解して流動性を有する粉末状とならない場合があり、また粉末状チーズと穀粉が均一に加熱できずチーズ特有のロースト風味を有する粉末状チーズ加工品を得ることができない場合がある。
【0022】
ここで水分含量とは、試料3gを常圧下において105℃・4時間乾燥した際の減量分であり、下記式によって求められる。
水分含量={(乾燥前の質量−乾燥後の質量)/乾燥前の質量}×100
また、粉末状チーズと穀粉の平均水分含量は下記式で求められる。
平均水分含量={(粉末状チーズ質量×粉末状チーズの水分含量+穀粉質量×穀粉の水分含量)/(粉末状チーズ質量+穀粉質量)}×100
【0023】
本発明のロースト風味を有する粉末状チーズ加工品の製造方法では、本発明の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤(ビタミンC、ビタミンEなど)、調味料(砂糖、食塩など)、粉末状乳製品(ホエーパウダー、脱脂粉乳など)などを併用することができる。
【0024】
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0025】
<ロースト風味を有する粉末状チーズ加工品の作製1>
[原材料]
粉末状パルメザンチーズ(商品名:パルメザンパウダーUN;六甲バター社製 水分含量:14%)
ブロック状グリュイエールチーズ(市販品 水分含量:35%)
小麦粉(商品名:日清フラワー;日清製粉社製 水分含量:14%)
コーンスターチ(商品名:コーンスターチ;向後スターチ社製 水分含量:12.5%)
【0026】
[実施例1]
粉末状パルメザンチーズ(60g)と小麦粉(40g)をビニール袋に入れ混合し、ホットプレート(型式IHP−30VC;東芝社製 設定温度160℃)でヘラを用いて撹拌しながら30分間加熱し品温が150℃に達した後に、ステンレス製ボールに取り出し常温まで放冷してロースト風味を有する粉末状チーズ加工品(実施例品1)を87g得た。
【0027】
[実施例2]
ブロック状のグリュイエールチーズをチーズおろしで摩り下ろして、粉末状グリュイエールチーズを得た。この粉末状グリュイエールチーズの水分含量は、35%であった。
実施例1の粉末状チーズ加工品の作製において、粉末状パルメザンチーズ(60g)と小麦粉(40g)を用いるのに替えて、得られた粉末状グリュイエールチーズ(40g)と小麦粉(60g)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行って、粉末状チーズ加工品(実施例品2)を88g得た。
【0028】
[実施例3]
実施例1の粉末状チーズ加工品の作製において、小麦粉(40g)を用いるのに替えて、コーンスターチ(40g)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行って、ロースト風味を有する粉末状チーズ加工品(実施例品3)を87g得た。
【0029】
[比較例1]
実施例1の粉末状チーズ加工品の作製において、粉末状パルメザンチーズ(60g)と小麦粉(40g)を用いるのに替えて、粉末状パルメザンチーズ(100g)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行って、ロースト風味を有する粉末状チーズ加工品(比較例品1)を88g得た。
【0030】
[比較例2]
実施例1の粉末状チーズ加工品の作製において、粉末状パルメザンチーズ(60g)と小麦粉(40g)を用いるのに替えて、実施例2と同様に作成した粉末状グリュイエールチーズ(100g)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行った。該チーズは餅状になりロースト風味を有する粉末状チーズ加工品(比較例品2)を得ることができなかった。
【0031】
[比較例3]
実施例1の粉末状チーズ加工品の作製において、粉末状パルメザンチーズ(60g)と小麦粉(40g)を用いるのに替えて、小麦粉(100g)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行って、ロースト小麦粉を85g得た。その後に、比較例1で得た粉末状チーズ加工品(比較例品1)60gと、得られたロースト小麦粉40gとをビニール袋に入れ混合し、ロースト風味を有する粉末状チーズ加工品(比較例品3)を100g得た。
【0032】
<ロースト風味を有する粉末状チーズ加工品の作製2>
[実施例4]
粉末状パルメザンチーズ(3.6kg)と小麦粉(2.4kg)をビニール袋に入れ混合し、煮炊攪拌機(型式:KRS−2766EL型ガス加熱式:梶原工業社製)で、撹拌羽スピード30rpmに設定し、品温が4〜5℃/分ずつ昇温する様にガス流量を調整し、品温が140℃になるまで30分間加熱撹拌を行った。加熱終了後ステンレス製受け皿に取り出して常温まで放冷しロースト風味を有する粉末状チーズ加工品(実施例品4)を5.4kg得た。
【0033】
[比較例4]
実施例4の作製において、粉末状パルメザンチーズ(3.6kg)と小麦粉(2.4kg)を用いるのに替えて、粉末状パルメザンチーズ(6.0kg)を用いた以外は同じ操作を行い、ロースト風味を有する粉末状チーズ加工品(比較例品4)を5.4kg得た。
【0034】
<ロースト風味を有する粉末状チーズ加工品の評価>
(1)香り
得られたロースト風味を有する粉末状チーズ加工品2gを200mlのビーカーにとり、90℃の湯(100ml)を注ぎ香りの官能評価を下記表1に示す評価基準に従い10名のパネラーで評価した。結果は10名の評点の平均値として求め、以下の基準に従って記号化した。結果を表2に示す。

記号 評価点の平均値
◎ : 平均値3.5以上
○ : 平均値2.5以上3.5未満
△ : 平均値1.5以上2.5未満
× : 平均値1.5未満
【0035】
【表1】

【0036】
(2)粉末の状態の確認
得られたロースト風味を有する粉末状チーズ加工品の状態を目視で確認した。その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
粉末状チーズと穀粉を加熱釜内で撹拌しながら加熱したロースト風味を有する粉末状チーズ加工品(実施例品1〜4)は、香りの評価が良好であり、その状態は粉末状を保ち流動性を有する好ましい状態であった。
粉末状チーズを加熱したロースト風味を有する粉末状チーズ加工品(比較例品1、3、4)は、香りの評価はやや好ましくない評価であり、その状態は粒が付着し合った状態であり、べとついて流動性を有せず好ましくない状態であった。また、比較例2では粉末状のチーズ加工品を得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状チーズと穀粉を加熱釜内で撹拌しながら加熱する工程を含むことを特徴とするロースト風味を有する粉末状チーズ加工品の製造方法。

【公開番号】特開2010−187563(P2010−187563A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33208(P2009−33208)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(390010674)理研ビタミン株式会社 (236)
【Fターム(参考)】