説明

粉末状薬剤の復元のためのシステム

物質を形成するために第1の容器(2)の第1の中身および第2の容器(3)の第2の中身を混合することができる混合システム(1)。混合された物質は、発泡を生じることなくシリンジ(20)に回収される。混合システム(1)は、第1のポート(11)において第1の容器(2)を受け入れ、第2のポート(12)において第2の容器(3)を受け入れ、第3のポート(13)においてシリンジ(20)を受け入れる移送ユニット(5)を備える。さらに、移送ユニット(5)は、3つのポート(11、12、13)を互いに接続するいくつかの流体通路(14、15、16)と、容器(2、3)とシリンジ(20)との間の流体の流れを制御するためのいくつかの流れ制御部材(17、18、19、22)とを収容している。流れ制御部材(17、18、19、22)のうちの少なくとも1つが、流体の流れの2つの状態の間のユーザによる切り替え、すなわち第1のポート(11)と第3のポート(13)との間および第3のポート(13)と第2のポート(12)との間の流体の流れが可能である状態と、第2のポート(12)と第3のポート(13)との間の流体の流れが可能である状態との間の切り替えを可能にする。さらに本発明は、第1および第2の容器をそれぞれ受け入れるための第1および第2のポートと、シリンジとの結合のための第3のポートと、ポートを互いに接続するいくつかの流体通路と、流体の流れの2つの状態の間のユーザによる切り替えを可能にする少なくとも1つの流れ制御部材と、この少なくとも1つの流れ制御部材が、シリンジが第3のポートに結合している場合だけ操作可能であることを保証するロック手段とを備える移送ユニットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば注射または注入によって体へと投与することができる生成物を生成するための物質の混合に関し、例えば薬効のある粉末状の薬剤と溶媒または希釈剤との混合に関する。
【背景技術】
【0002】
グルカゴンなどの特定の注射可能な物質の保管期限を、物質を粉末状態で保管することによって長くできることが、この技術分野において周知である。凍結乾燥が、液体主体の材料から粉末状の物質を生成する1つの方法である。凍結乾燥は、きわめて低い温度での材料の急速な凍結と、その後の高真空での昇華による急速な脱水とによって生じる。得られた凍結乾燥物質は、典型的には、キャップ(ゴム製のストッパまたは隔膜など)によって閉じられるガラス製の薬瓶またはカートリッジに保管される。
【0003】
粉末状または固体の物質を、投与に先立って復元することが必要である。これは、粉末状の物質を適切な希釈剤または液体と混ぜることによって達成される。復元は、伝統的に、1つの別個の薬瓶から希釈剤を取り出し、粉末状の化合物を収容しているもう1つの別個の薬瓶へと注入すべく、針付きのシリンジを使用して実行され、後者の瓶が2つの成分を完全に混合すべく振盪または攪拌される。次いで、針付きのシリンジが、この瓶から患者へと注射すべき所望の量の復元済みの薬剤を取り出すために使用される。2つの別々の容器が使用されるため、化合物の復元を行う者は、正しい濃度の混合物が得られるように、確実に正しい量を混合しなければならない。希釈剤および薬剤の混合にシリンジが使用される場合、正確な希釈剤対薬剤の比を得ることが難しい。このため、投与される薬剤の正確な濃度に関して、或る程度の不確かさを生じさせる。
【0004】
さらに、希釈剤および化合物が別々の無菌の容器に存在し、希釈剤が針付きのシリンジによって希釈剤の容器から手作業で取り出され、次いでシリンジが希釈剤を化合物の容器へと注入すべく希釈剤の容器から化合物の容器へと移動させられるため、無菌性および安全性の両方が、損なわれる危険がある。
【0005】
粉末状の化合物または凍結乾燥された薬剤の使用が増加しているため、専門家および非専門家の両者に、正確な量の混合物、例えば、復元された化合物を容易に用意できるようにする簡単かつ確実なシステムを提供することが望まれる。
【0006】
加えて、プロセスの全体にわたって無菌状態を保ちつつ、ユーザを潜む危険にさらすことなく凍結乾燥された薬剤を復元することができるシステムを提供することが望まれる。
【0007】
米国特許第5,466,220号が、シリンジおよび2つの薬瓶がT字形のコネクタ部品とともに搭載されるベースを備えている混合装置を開示している。装置の動作前には、リテーナが、2つの薬瓶をそれぞれのコネクタから所定の距離だけ離して動かぬように保持している。装置は、薬瓶がそれぞれのコネクタへと押し込まれるまで、保護用の無菌のパッケージ内に保たれ、復元プロセスの全体にわたって密封されたシステムが提供されるとされている。
【0008】
米国特許第6,364,865号が、凍結乾燥された化合物および希釈剤をそれぞれ収容している1組の薬瓶からの成分から溶液を形成するための薬剤送出システムおよび移送システムの種々の実施形態を開示している。
【0009】
所望される薬剤溶液の量が、1組の薬瓶に含まれる薬剤に相当する量を超えることもある。この場合、総量を、2組以上の薬瓶(所望の量に相当する組数の薬瓶)からの凍結乾燥薬剤を使用して作成しなければならない。これは、例えば、溶媒の液を各々の薬瓶へと次々に加え、復元された薬剤を1つの共通のリザーバまたはシリンジへと取り出すことによって行うことができる。すべての薬瓶の薬剤がこの方法で復元された後で、総量を、共通のリザーバまたはシリンジから個人へと投与することができる。しかしながら、この方法で2つ以上の薬瓶から凍結乾燥の薬剤を復元するには、比較的時間がかかる。さらには、開け放たれた開口が自由大気または塵埃に曝される回数ゆえに、薬剤の汚染の危険が存在する。
【0010】
したがって、2つ以上の薬瓶からの粉末状の薬剤を用いて1回分の量を混合すること(プーリングとしても知られる)を容易にするとともに、得られる薬剤の汚染の危険を少なくする混合システムを提供することが望まれる。
【0011】
国際公開第2007/122209号パンフレットが、2つの容器を保持する容器ユニットと、容器ユニットに接続され、2つの容器の中身を混合することができる移送ユニットとを備える移送システムを開示しており、一方の容器の中身を2つの容器を流体連通させている移送ユニットのチャネルを介して他方の容器へと移動させるために、シリンジなどの圧力発生器が使用されている。
【0012】
最終的な混合物を収容している容器を空にするときに、薬剤の発泡を防止するために、含まれている空気の影響を最小限にすべきである。国際公開第2007/122209号パンフレットに記載のようなシステムにおいて、発泡の発生の原因となりうる2つの因子は、容器からシリンジへと移されるときの薬剤溶液の流速およびシステムの他の部分(溶媒容器など)から吸い込まれる可能性がある空気である。
【0013】
発泡の問題を実質的に取り除く混合システムを提供することが望まれる。発泡の回避は、いくつかの種類の薬剤、特には静脈注射によって投与されなければならない薬剤(血友病患者の治療のための組み換え因子製剤など)において、きわめて重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述の問題および欠陥に鑑みて、本発明の目的は、ユーザにとって操作が簡単かつ効率的であり、投与用の薬剤の正確な量を無菌で生成することができる混合装置を提供することにある。
【0015】
本発明のさらなる目的は、粉末状の薬剤を復元するための混合システムであって、最終的な復元済みの製品の発泡を実質的になくすことができる混合システムを提供することにある。
【0016】
本発明のまたさらなる目的は、簡単かつ費用効率の高い製造が可能な混合システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の開示において、上述の目的のうちの1つ以上に取り組み、あるいは以下の開示ならびに典型的な実施形態の説明から明らかな目的に取り組む態様および実施形態が、説明される。
【0018】
本発明の第1の態様においては、第1の中身を収容している第1の容器と、第2の中身を収容している第2の容器と、移送ユニットとを備えている医療用混合システムが提供される。移送ユニットは、第1の容器を受け入れる第1のポート、第2の容器を受け入れる第2のポート、シリンジを受け入れる第3のポート、第1のポートと第3のポートとの間の流体の流れを可能にする第1の流体通路、第3のポートと第2のポートとの間の流体の流れを可能にする第2の流体通路、第2のポートと第3のポートとの間の流体の流れを可能にする第3の流体通路、第1のポートと第3のポートとの間に配置され、シリンジが第3のポートに接続されたときに第1のポートから第3のポートへの一方向の流体の流れを可能にする第1の流れ制御部材、第3のポートと第2のポートとの間に配置され、シリンジが第3のポートに接続されたときに第3のポートから第2のポートへの一方向の流体の流れを可能にする第2の流れ制御部材、および第3の流れ制御部材を備えている。第3の流れ制御部材が、流体の流れが第1の流体通路を介して第1のポートと第3のポートとの間で可能にされ、かつ第2の流体通路を介して第3のポートと第2のポートとの間で可能にされる第1の状態と、流体の流れが第3の流体通路を介して第2のポートと第3のポートとの間で可能にされるが、第1のポートと第3のポートとの間については不可能にされる第2の状態との間の選択的な切り替えを、ユーザに提供する。
【0019】
上述の混合システムによれば、シリンジが、第1の容器から第1の中身を受け取り、この第1の中身を第2の容器へと移すことができ、第1の中身と第2の中身との混合によって形成された分の物質を受け取ることができる。
【0020】
上述の構成によれば、ユーザが、第1の容器から第2の容器への第1の中身の移送、および第2の容器からシリンジへの混合済みの製品の移送を、手順の全体において無菌性を維持しつつ、安全な方法で実行することができる。さらに、シリンジにおいてプランジャを引き戻して第1の容器からシリンジへと第1の中身を移動させる工程、およびシリンジにおいてプランジャを前進させて第1の中身をシリンジから第2の容器へと移動させる後続の工程が、針付きのシリンジを用いて媒体を或る容器から別の容器へと移す伝統的な工程に似ているため、直感的に理解しやすく、ユーザによる実行が容易である。
【0021】
第1の中身は、粉末状または凍結乾燥された薬剤のための溶媒として適している希釈剤など、液体材料であってもよく、第2の中身は、粉末状または凍結乾燥された薬剤など、乾燥材料であってもよい。この場合、第1の中身と第2の中身とが混合されたときに形成される物質は、例えば注入または注射によってユーザへとすぐに送り込むことができる復元された薬剤である。代案として、第1の中身および第2の中身が、液体材料であってもよい。
【0022】
第1の容器は、薬瓶や可撓容器など、任意の適切な種類の容器であってもよい。同様に、第2の容器は、任意の適切な種類の容器であってもよい。
【0023】
一般に、粉末状の薬剤が復元された場合、確実に薬剤溶液がシリンジへの移送の際に発泡を生じることがないように、高度の注意を払わなければならない。なぜならば、結果として薬剤溶液と一緒に大量の空気が血流または組織へと注射または注入されるというユーザの危険を招きかねないからである。
【0024】
したがって、本発明の一実施形態においては、混合システムの移送ユニットが、第1および第2の中身の混合によって形成された薬剤溶液がシリンジへと移されるときの発泡を実質的になくすために、第3の流体通路に位置する第4の流れ制御部材をさらに備える。特定の好ましい実施形態においては、第3の流体通路を経由する第2のポートから第3のポートへの流体の流れを可能にするように第3の流れ制御部材が位置するときに、第4の流れ制御部材が、薬剤溶液の流速を低下させる/制限するように機能する。第4の流れ制御部材は、第3の流体通路の断面積を減少させる構成要素となると考えられる。
【0025】
一実施形態によれば、第1のポートから第3のポートへの流体の流れが、シリンジのプランジャを引き戻すことによって第3のポートの流体の圧力が所定の負圧を超える場合に可能にされる。この実施形態によれば、第1の中身を、第3のポートの圧力の低下ゆえに、第1の流体通路を介して第1の容器からシリンジへと移動させることができる。第1の容器からの第1の中身の吸引によって、第1の容器において負圧の高まりが生じる可能性がある。この負圧を、第1の容器への外気の進入を可能にすることによって、補償することができる。第1の容器への外気の進入を可能にする1つの方法は、外部と第1のポートとの間の空気の流れを可能にする通気路を、移送ユニットに設けることである。
【0026】
あるいは、第1の容器に陽圧をあらかじめ確立させておくことで、シリンジが第3のポートに接続されたときに自動的に第1のポートから第3のポートへの流体の流れをもたらすことができる。
【0027】
一実施形態においては、第1のポートが、2つのチャネルを備えている。これらのチャネルのうちの一方が、第1の容器から第1の中身を移送するために専用の液体チャネルであってもよく、他方のチャネルが、第1の容器と外部との間の空気の流れを可能にするために通気路へと流体連通する空気チャネルであってもよい。通気路に、外部から第1の容器への一方向の流体の流れを可能にする第5の流れ制御部材を設けることができる。
【0028】
そのような構成において、第1の中身が第1の容器からシリンジへと移動する際に、気泡が液体チャネルに進入する可能性がある。しかしながら、空気チャネルの開口が、第1の容器からの第1の中身の吸引の際に、液体チャネルの開口よりも上方に配置されるならば、第1の中身と一緒に移送される空気は基本的に皆無である。
【0029】
一実施形態においては、第1の中身の無菌性を確実にするために、第1の容器に、例えば穿刺可能な膜の形態のふたが設けられる。第1のポートが、この膜を穿刺して第1の容器と第1の流体通路との間の流体連通を確立するように構成される。穿刺が2つの個別の穿刺部材、例えば、2本の針によって実行される場合、接続の境界が、例えば比較的小さい寸法ゆえに不安定になる可能性があり、個別の穿刺部材の一方または両方の破損につながる可能性がある。さらに、2つの個別の穿刺部材を膜を貫いて導入することで、第1の容器から第1の中身が漏れる恐れが大きくなる。
【0030】
したがって、本発明の一実施形態においては、第1のポートが、基本的に空気を含ませることなく第1の中身を第1の容器から第3のポートへと移すことができるように、開口の軸をずらしている2つの内部チャネルを有している、非対称な中空スパイクまたは針を備えている。
【0031】
移送ユニットは、万が一に気泡が予期せず液体チャネルに進入してしまう場合に、第1の中身の汚染の危険をさらに最小化するために、フィルタを通気路に配置して備えることができる。
【0032】
これに代え、あるいはこれに加えて、移送システムは、第3の流体通路に配置されたフィルタを備えることができる。そのようなフィルタを、薬剤溶液がシリンジへと移されるときに不純物が第2の容器からシリンジへと移されることを防止するために、使用することができる。そのような不純物は、例えば、薬瓶のストッパから生じ、ストッパの穿刺の際に発生するゴム粒子、および適切に溶解しなかった乾燥成分の少なくとも一方であるかもしれない。
【0033】
シリンジを、上述の構成において、プランジャが完全に前進させられた状態で移送ユニットに接続することができる。これにより、混合の手順の最中に汚染された空気がシステムに進入することができないため、完璧に無菌の混合システムがもたらされる。
【0034】
スパイクが第1の容器のふたを穿刺するとき、正の圧力が第1に容器において生じ、少量の第1の中身がスパイクを通って押し出される結果となる可能性がある。通気路に、第1の容器から外部への流体の流れを防止する流れ制御部材が設けられていない場合、この分の第1の中身が完全に移送ユニットから押し出され、周囲へと失われる可能性がある。これは、第1の中身と第2の中身との間の量的関係の不釣り合いにつながり、最終的な混合済みの製品が、意図されるよりも高い効能を得ることにつながるため、決定的に望ましくない。さらに、ユーザが装置の漏れに直面し、製品の信頼性に疑念を抱く可能性もある。
【0035】
本発明の別の態様においては、医療用混合システムが、第1の中身を収容している第1の容器、第2の中身を収容している第2の容器、および移送ユニッとを備えている。移送ユニットは、ハウジングと、第1の容器を受け入れる第1のポートと、第2の容器を受け入れる第2のポートと、容積可変のリザーバ、例えばシリンジを受け入れる第3のポートと、例えば第1の態様に関して上述したように第1のポート、第2のポート、および第3のポートを互いに接続するための複数の流体通路、ならびに第1のポートに流体連通したリザーバとを備えている。
【0036】
特定の実施形態においては、第1のポートが、2つのチャネルを有するスパイクを備えており、リザーバが、スパイクのチャネルの一方に流体連通している。
【0037】
さらに、リザーバは、例えば移送ユニットのハウジングの開口を介して外気に流体連通でき、端部が外気に直接流体連通している蛇行チャネル部分を備えることができる。これにより、ユーザによる混合システムの穿刺の際に、逃げ出した分の第1の中身がリザーバから漏れ出す恐れを低減する曲がりくねった経路がもたらされる。
【0038】
移送ユニットにリザーバを備えることによって、逃げ出した物質がリザーバに溜まり、ひとたびユーザが第1の中身を第1の容器から吸い出すことによって混合の手順を開始したならば、容器のふたの穿刺時にスパイクを通って逃げ出したかもしれない少量の第1の中身が、単純にリザーバから再び第1の容器へと引き込まれ、さらには多量の第1の中身と一緒に第1の流路へと引き込まれるため、第1の中身の漏れが効果的に防止される。これにより、確実に第1の中身の全量がシリンジへと吸い込まれて、第2の中身との混合に使用され、すなわち最終的な投与用の薬剤が定められた効能を有する。
【0039】
第1の中身が第2の中身との混合のために第2の容器へと移された後で、ユーザは、混合済みの生成物を第2の容器からシリンジへと移すことができるよう、第3の流れ制御部材を操作することができる。これを、例えば第3の流れ制御部材を移送ユニットのハウジングにおいて回転させることによって、第3の流れ制御部材を移送ユニットにおいて第1の位置から第2の位置へと動かすことによって行うことができる。第3の流れ制御部材は、移送ユニットのハウジングにぴったりとはまり込む軸対称な、例えば円柱形または円錐形の栓本体と、ユーザが移送ユニットのハウジングの外部から第3の流れ制御部材を回転させることができるように大きくされた把持部とを備える栓の形態であってもよい。
【0040】
栓本体は、いくつかのチャネル部分を備えることができ、そのようなチャネル部分は、第3の流れ制御部材が第1の位置にあるときに、第1のチャネル部分が第1の流体通路の一部分を構成するとともに、第2のチャネル部分が第2の流体通路の一部分を構成し、第3の流れ制御部材が第2の位置にあるときに、第3のチャネル部分が第3の流体通路の一部分を構成するような方法で配置される。重要なことには、第3の流れ制御部材が第2の位置にあるとき、第1のポートと第3のポートとの間の流体連通が存在せず、したがって混合済みの生成物を第2の容器からシリンジへと移す際に、第1の流体通路を介して確実に空気が導入されることがない。したがって、発泡の恐れが最小限にされると同時に、混合済みの生成物が外気によって汚染される恐れがない。
【0041】
特定の実施形態においては、第1のチャネル部分および第2のチャネル部分が、チャネル部分の一部を共有する。
【0042】
チャネル部分を、例えば栓の材料における溝として、栓本体の表面に配置することが可能である。チャネル部分を、第3の流れ制御部材が第1の位置にあるときに、第1のチャネル部分が第1の流体通路を完成させ、第2のチャネル部分が第2の流体通路を完成させる一方で、第3の流体通路が非接続にされ、第3の流れ制御部材が第2の位置にあるときに、第3のチャネル部分が第3の流体通路を完成させる一方で、第1の流体通路および第2の流体通路が非接続にされるような方法で、周方向において隔てることができる。
【0043】
栓本体の表面におけるチャネル部分の特定の配置が、第1の状態と第2の状態との間の切り替えに必要な第3の流れ制御部材の動きの角度を決定する。特定の実施形態においては、チャネル部分が、第3の流れ制御部材の実質的に90°の回転が、第1の状態と第2の状態との間の切り替えに必要であるように配置される。
【0044】
チャネル部分が栓本体の表面に配置される場合、栓と移送ユニットのハウジングとの間に流体を漏らさないはまり合いをもたらすことが重要である。さもないと、移送される液体の一部が、実際に栓本体に沿ってハウジングから漏れ出す可能性がある。他方で、第3の流れ制御部材はユーザによって操作されるため、はまり合いがきつすぎて、境界面における摩擦が大きくなって第3の流れ制御部材の回転が難しくなってはならない。
【0045】
本発明のさらなる態様においては、例えば上述したような流体移送ユニットのために、第1の材料からなる軸対称な本体と、ユーザによる操作のための把持部と、軸対称な本体の表面に配置された2つ以上のチャネル部分とを備えており、チャネル部分が少なくとも1つの畝によって画定されている流れ制御部材が設けられる。
【0046】
少なくとも1つの畝は、第1の材料とは異なる第2の材料からなることができ、その場合には、流れ制御部材を、2成分の成型プロセスを使用して製造することができる。第1の材料は、例えばHDPEなどの熱可塑性ポリマーであってもよく、第2の材料は、例えばTPVなどの熱可塑性エラストマまたは熱硬化性エラストマであってもよい。
【0047】
そのような2成分の本体を用意することによって、流れ制御部材の封止の能力が顕著に改善される一方で、移送ユニットおよび流れ制御部材の接触面の間に低摩擦が確立される。これにより、ユーザが、わずかなトルクを加えるだけで流れ制御部材を回転させることができる。
【0048】
第3のポートは、シリンジとの結合のためのコネクタを備えることができる。シリンジは、例えば、雌ねじを有する保持カラーを備えているルアーロック(Luer lock)式であってもよく、コネクタは、例えば、シリンジを取り付けることができる雄ねじを備えることができる。代案として、例えば圧入またはバヨネット式の接続など、シリンジと第3のポートとの間の他の種類の接続も、採用することが可能である。第3のポートへのシリンジの取り付けに関して、シリンジをコネクタへと過度に推し進める、例えばねじ込むことができないことが重要である。なぜならば、シリンジの先細りの出口部が破損し、シリンジおよび移送ユニットの両方が使えなくなってしまう可能性があるからである。
【0049】
本発明のさらなる態様においては、ハウジングと、第1の容器を受け入れる第1のポートと、第2の容器を受け入れる第2のポートと、容積可変のリザーバ、例えばシリンジを受け入れる第3のポートと、例えば上述のように第1のポート、第2のポート、および第3のポートを互いに接続するための複数の流体通路と、容積可変のリザーバが第3のポートに接続されたときに容積可変のリザーバと接する接触面とを備えている医療用混合システムのための移送ユニットが提供される。
【0050】
接触面は第3のポートに配置することができ、移送ユニットに対するシリンジの取り付けの方向のさらなる直進運動について明確な停止をもたらすために、シリンジの接触面、例えばルアーロック式シリンジの保持カラーに接するように構成することができる。
【0051】
そのような明確な停止によって、ユーザが適切な取り付けと不適切な取り付けとを区別することができるため、移送ユニットへの取り付けの際のシリンジの誤った取り扱い(例えば、シリンジを第3のポートのコネクタへと過度にねじ込んでしまう)に対して、安全性がもたらされる。ユーザは、単に移送ユニットの接触面とシリンジの接触面との間の当接を感じ取り、それ以上の移動が必要でないことを直感的に理解する。
【0052】
一実施形態によれば、第3のポートから第2のポートへの流体の流れが、第1の中身をシリンジから第2の流体通路へと追い出すべくシリンジのプランジャが前進させられるときに可能になる。これにより、第1の中身が第2の容器へと移動し、第2の容器に存在する空気の分子が圧縮されるがゆえに、第2の容器に余分な圧力が生じる。システムは、第3の流体通路を介する第2のポートから第3のポートへの流体の流れを可能にすべく第3の流れ制御部材が操作されるまで、この加圧された状態にとどまる。そのような操作により、薬剤溶液が、膨張する空気によって、第2の容器から第3の流体通路へと押し出される。
【0053】
第3の流れ制御部材が第3の流体通路を介する第2のポートから第3のポートへの流体の流れを可能にすべく操作されるときに、シリンジが第3のポートに接続されていない場合、薬剤溶液の一部またはすべてが、第3のポートを通ってシステムから周囲へと流れ出し、無駄になる可能性がある。
【0054】
したがって、本発明のさらなる態様においては、医療用混合システムのための移送ユニットであって、第1の中身を収容している第1の容器を受け入れる第1のポートと、第2の中身を収容している第2の容器を受け入れる第2のポートと、容積可変のリザーバを受け入れる第3のポートと、例えば第1の態様に関して上述したように第1のポート、第2のポート、および第3のポートを互いに接続するための複数の流体通路と、第2のポートから第3のポートへのユーザの選択による流体の流れを可能にするユーザ操作可能な流れ制御部材とを備えている移送ユニットが提供される。この移送ユニットが、ユーザ操作可能な流れ制御部材に係合して、ユーザ操作可能な流れ制御部材を動かなくするロック手段をさらに備えており、ロック手段が、容積可変のリザーバが第3のポートに接続されたときにユーザ操作可能な流れ制御部材との係合から外れる。さらに、この移送ユニットは、上述の態様に関して述べたいずれかの特徴および要素含むことができる。
【0055】
ロック手段は、ユーザ操作可能な流れ制御部材を、容積可変のリザーバ(シリンジなど)が第3のポートに接続されている場合に限って、第2のポートから第3のポートへの流体の流れを可能にすべく確実に操作することができるように設けられる。
【0056】
一実施形態によれば、ロック手段が、キャッチ部材とユーザ操作可能な流れ制御部材との間の機械的な、例えば、突起と凹所との間の係合を備えている。キャッチ部材を、シリンジが第3のポートに接続されていない限りにおいて、キャッチ部材とユーザ操作可能な流れ制御部材との間の機械的な相互作用によってユーザ操作可能な流れ制御部材が動かぬように保持されるように、付勢することができる。シリンジが第3のポートに接続されると、シリンジとロック手段との間の機械的な接点が、キャッチ部材をユーザ操作可能な流れ制御部材との係合から移動させて、ユーザ操作可能な流れ制御部材の操作を可能にする解放機構を提供する。
【0057】
キャッチ部材の付勢を、キャッチ部材そのものを一部分とする構造によってもたらすことができる。これに代え、或いはこれに加えて、付勢を、1つ以上の別途の弾性要素によってもたらしてもよい。
【0058】
ロック手段を、容積可変のリザーバが第3のポートから切り離されたときに再びユーザ操作可能な流れ制御部材に係合するように、さらに構成することができる。
【0059】
キャッチ部材とユーザ操作可能な流れ制御部材との間の機械的な係合を、突起と凹所との間の相互作用によって実現することができる。凹所を、ユーザ操作可能な流れ制御部材に設けることができ、あるいはロック手段に設けることができる。したがって、キャッチ部材が、突起または凹所を備えることができる。
【0060】
特定の実施形態においては、ロック手段が、弾性変形可能な形状を有しており、キャッチ部材をユーザ操作可能な流れ制御部材に向かって付勢するような方法で移送ユニットに配置されている。これにより、シリンジが第3のポートから取り外されたときに、キャッチ部材がユーザ操作可能な流れ制御部材を動かぬように固定すべく再びユーザ操作可能な流れ制御部材に確実に係合する。
【0061】
キャッチ部材は、ロック手段と一体になっている部分であってもよく、あるいはロック手段との物理的な接続に適した別の構成要素であってもよい。
【0062】
流体を漏らさないシステムに関して上述したとおりのロック手段を設けることで、やはり上述したように、ユーザが、薬剤溶液または混合済みの物質を含んでいる1つ以上の容器を作り上げ、薬剤溶液の濃度または無菌性を心配することなく、後にシリンジへと移送することができる。これにより、複数の容器の中身のプーリングが、安全かつ容易である。
【0063】
さらなる態様において、本発明は、第1の態様による医療用混合システムのための容器ユニットであって、第1の中身を収容している第1の容器と、この第1の中身と混合される第2の中身を収容している第2の容器とを備えている容器ユニットに関する。
【0064】
本発明の一実施形態においては、容器が製造者によって容器ユニットにあらかじめ配置され、したがって第1の中身および第2の中身は、例えば量および種類に関して確実に整合する。したがって、第1の中身および第2の中身が混合される場合に、中身の混合時に誤りが生じる危険が最小限にされる。容器は、好ましくは、容器ユニットにおいて互いに固定された位置に不動に配置される。
【0065】
あるいは、第1および第2の容器を、別々の容器として供給することもでき、すなわち第1および第2の容器が、同じハウジングに固定されていなくてもよい。
【0066】
容器ユニットおよび移送ユニットは、混合システムまたは混合キットを形成すべく一体に接続される。ユニットを、好都合には、1つのパッケージにて一緒に届けることができる。第1の中身と第2の中身とを混合するために、ユーザはユニットを一体に結合させなければならず、第1の中身を第2の容器へと移動させ、あるいは薬剤溶液をシリンジへと移動させるために、場合により移送ユニットの1つ以上の機能、例えば、1つ以上の流れ制御部材およびシリンジのプランジャの少なくとも一方を操作しなければならない。これにより、容器ユニットを、保管のあいだ密封された状態に保つことができる。これは、容器の中身について耐用年数を長くし、中身の汚染を防ぐ。最後に、容器ユニットを独立して製造することは、絶対的な無菌の製造設備を必要とする部品の数が最小限にされ、すなわち製造の複雑さが最小限であるため、製造者にとっての大きな利点である。このように、本発明は、簡単かつ費用効率の高い製造が可能な混合システムを提供する。
【0067】
さらには、容器ユニットおよび移送ユニットをキットとして提供することによって、移送ユニットが第1および第2の容器の中身の混合に実際に適することを、保証することができる。
【0068】
容器ユニットおよび移送ユニットを、所定の互いの向きに配置されたときに限って一体に結合させることができるような方法で、形作ることができる。この実施形態によれば、容器ユニットおよび移送ユニットを一体に結合させたときに、確実に第1の容器が第1のポートに接続され、第2の容器が第2のポートに接続されることができる。これにより、確実に、第1の容器、第2の容器、およびシリンジが流路によって正しい方法で互いに接続されること、および第1および第2の中身の混合の際に移送ユニットにおける流体の流れが期待されるとおりになる。したがって、第1の中身と第2の中身との正しい混合を、保証することができる。所定の互いの向きを確実にする方法は、容器ユニットおよび移送ユニットを、例えばそれぞれが真っ直ぐな縁と真っ直ぐな縁に対向する湾曲した縁とを有するように、非対称な様相に形作ることである。
【0069】
本発明のさらなる態様においては、物質を混合するための方法であって、a)第1の容器と第2の容器とを備えている容器ユニット、および第1の容器への流体連通を確立するための第1の接続手段と、第2の容器への流体連通を確立するための第2の接続手段と、容積可変のリザーバへの流体連通を確立するための第3の接続手段と、第1の接続手段、第2の接続手段、および第3の接続手段を相互接続する複数の流体通路と、流れ制御部材とを備えている流体移送ユニットを、結合させるステップと、b)容積可変のリザーバを第3の接続手段に取り付けるステップと、c)容積可変のリザーバの容積を増加させるステップと、d)容積可変のリザーバの容積を減少させるステップと、を含む方法が提供される。
【0070】
流体移送ユニットが、ユーザ操作可能な流れ制御部材をさらに備えることができ、上記方法が、e)ユーザ操作可能な流れ制御部材を第1の位置から第2の位置へと回転させるステップと、f)容積可変のリザーバの容積を増加させるステップとをさらに含むことができる。
【0071】
上記方法の後者のステップは、混合済みの生成物を、ひとたび容積可変のリザーバが第3の接続手段から取り外されたならばすぐに、例えば輸液セットを介して容積可変のリザーバから直接投与できるように準備する。
【0072】
容積可変のリザーバは、シリンジ、例えばルアーロック式シリンジを備えることができ、あるいは実際のところ、内容積を増加および減少させることができる任意の種類の容器(可撓な袋など)であってもよい。
【0073】
本明細書において、特定の態様または特定の実施形態への言及(例えば、「一態様」、「第1の態様」、「一実施形態」、「典型的な実施形態」、など)は、それぞれの態様または実施形態に関して説明される特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも本発明のその1つの態様または実施形態に含まれるが、必ずしも本発明のすべての態様または実施形態に含まれるわけではないことを示している。しかしながら、本発明の種々の態様および実施形態に関して説明される特徴、構想、および特性の少なくとも一つについて、それらの任意の組み合わせが、本明細書において否定され、あるいは文脈に照らして明らかに矛盾しない限りは、本明細書に包含されることを強調しておく。
【0074】
以下に、本発明を、図面を参照してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態による混合システムの概略図を示している。
【図2】本発明の別の実施形態による混合システムの概略図を示している。
【図3】本発明の実施形態による中空スパイクの断面図を示している。
【図4】本発明の実施形態による混合システムの移送ユニットの斜視図を示している。
【図5a】本発明の実施形態によるユーザ操作可能な流れ制御部材の斜視図を示している。
【図5b】本発明の実施形態によるユーザ操作可能な流れ制御部材の斜視図を示している。
【図6a】本発明の実施形態によるロック手段の基本的な設定の断面図を示している。
【図6b】本発明の実施形態によるロック手段の動作原理の断面図を示している。
【図6c】本発明の実施形態によるロック手段の動作原理の断面図を示している。
【図6d】本発明の実施形態によるロック手段の動作原理の断面図を示している。
【図7】分解された状態にある、本発明の実施形態による混合システムの斜視図を示している。
【図8】組み立てられた状態にある、図7の混合システムの斜視図を示している。
【図9】本発明の別の実施形態による移送ユニットの斜視図を示している。
【図10】図9の移送ユニットのためのカバー板の斜視図を示している。
【図11a】本発明の別の実施形態によるユーザ操作可能な流れ制御部材の斜視図を示している。
【図11b】本発明の別の実施形態によるユーザ操作可能な流れ制御部材の斜視図を示している。
【図12】本発明の実施形態による停止規定機構の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図面において、同様の構造は、主に同様の参照番号によって指し示されている。
【0077】
以下で、「内側」および「外側」などといった相対的な表現が使用される場合、それらは添付の図面を指しており、必ずしも実際の使用状況を指してはいない。図示の図は、概略図であるため、種々の構造の構成ならびにそれらの相対の寸法は、あくまでも例示を目的としたものにすぎない。
【0078】
本発明の典型的な実施形態の説明を、以下に提示する。
【0079】
本発明は、乾燥薬剤を溶媒または液体と混合することによって復元するためのシステムに関する。この復元システムは、一組の容器(それぞれが、シリンジなどの容積可変のリザーバである)に接続することができ、後に一方の容器から他方の容器への中身の移送を可能にする移送ユニットを含んでいる。さらに、移送ユニットは、最終的な薬剤溶液のシリンジへの移送を可能にする。
【0080】
図1は、所定の量の希釈剤8を収容している第1の容器2と、所定の量の粉末状の薬剤9を収容している第2の容器3と、シリンジ20とが、移送ユニット5に接続されている混合システム1の概略図を示している。
【0081】
図示の実施形態においては、2つの容器2および3が、それぞれが穿刺可能な隔膜によって閉鎖され、隔膜を固定して保持するための保持キャップを有している標準的な薬瓶として形成されている。
【0082】
移送ユニット5は、必要な流体の通路と、制御部材と、ポートとを収容しているハウジング10(図4および7を参照)を備えている。ハウジング10を、2つの容器2および3を受け入れ、ハウジング10の内部に部分的または完全に収容するように設計することができる。あるいは、ハウジング10を、薬瓶のキャップの部分を囲むだけであるように設計することができる。
【0083】
移送ユニット5に、第1の容器2を受け入れる第1のポート11と、第2の容器3を受け入れる第2のポート12とが設けられている。ポート11および12を、2つの容器2および3の各々の第1の状態および第2の状態にて受け入れるように構成することができる。第1の状態においては、2つの容器2および3がハウジングに保持されるだけであり、2つの容器2および3の内部への流体連通は確立されない。この第1の状態において、2つの容器2および3を含む移送システム5を、長期にわたって保管することができる。第2の状態においては、移送ユニット5の流体の通路と容器2および3との間に、流体連通が確立される。
【0084】
接続ポート11および12は、基本的には、容器2および3の内部との流体連通をもたらす任意の手段(中空針、中空スパイク、など)を備えることができる。好ましくは、隔膜を貫く針またはスパイクが使用される場合、針またはスパイクは、実質的に残余の液体が容器2および3の内部に残されることがないように形成される。
【0085】
ハウジング10は、密封プランジャ21が内部に摺動可能に取り付けられてなるシリンジ20を着脱可能に接続するための第3のポート13の形態の接続手段をさらに備えている。好ましくは、シリンジ20の開放端(遠位端)が、輸液セットのLuerコネクタなど、着脱式のコネクタによって導管を着脱可能に取り付けるための手段を備えている。したがって、ハウジング10は、シリンジ20を第3のポート13へと着脱可能に接続するための相応の接続手段を備えている。
【0086】
図1は、第1のポート11と第3のポート13との間の流体の流れを可能にする第1の流体通路14をさらに示している。さらに、第3のポート13および第2のポート12が、第2の流体通路15を介して流体連通する。また、第2のポート12および第3のポート13は、第3の流体通路16を介して流体連通する。
【0087】
第1の流体通路14における一地点に、好ましくはチェックバルブまたは逆止弁の形態の第1の流れ制御部材17が設けられ、第1のポート11から第3のポート13への一方向の流体の流れをもたらしている。
【0088】
第2の流体通路15における一地点に、好ましくはチェックバルブまたは逆止弁の形態の第2の流れ制御部材18が設けられ、第2の流体通路15を経由する第3のポート13から第2のポート12への一方向の流体の流れをもたらしている。
【0089】
さらには、例えばダイアル栓の形態の第3の流れ制御部材19が設けられ、ユーザが、第1の流体通路14を経由する第1のポート11と第3のポート13との間の流体の流れおよび第2の流体通路15を経由する第3のポート13と第2のポート12との間の流体の流れを可能にする第1の状態と、第3の流体通路16を経由する第2のポート12と第3のポート13との間の流体の流れを可能にする第2の状態との間で、選択的な切り替えを行うことができるようにしている。
【0090】
第3の流体通路16における一地点に、例えば絞り弁の形態の第4の流れ制御部材22が、第2のポート12からシリンジ20へと移動する流体の流速を下げるための絞りとして設けられている。第4の流れ制御部材22の機能は、混合システムの動作に関する部分において、さらに詳しく後述される。
【0091】
第1の容器2からの希釈剤8の移送に関連して、外気が第1の容器2へと進入できるように、通気路25が移送ユニット5に設けられ、第1のポート11を外部へと流体連通させている。このように、第1のポート11は、第1の容器2からの希釈剤8を移送するための専用の流体通路、および第1の容器2への空気の進入を可能にするための専用の流体通路の両方を備えている。
【0092】
通気路25における一地点に、好ましくはチェックバルブまたは逆止弁の形態の第5の流れ制御部材23が設けられ、外部から第1のポート11への一方向の流体の流れをもたらしている。通気路25は、汚染された空気が第1の容器2へと進入できないように、フィルタ24をさらに備えている。
【0093】
図2は、別の実施形態による混合システム100の概略図を示している。この実施形態においては、所定の量の希釈剤を収容している第1の容器102と、所定の量の粉末状の薬剤を収容している第2の容器103と、シリンジ120とが、上述と同じ方法で移送ユニット105に接続されている。第1の流体通路114が、第1のポート111と第3のポート113との間の流体の流れを可能にし、第2の流体通路115が、第3のポート113と第2のポート112との間の流体の流れを可能にする。
【0094】
逆止弁117が、第1の流体通路114に設けられ、第1のポート111から第3のポート113への一方向の流体の流れをもたらしている。さらに、逆止弁123が、通気路125に設けられ、外部から第1の容器102への一方向の流体の流れをもたらしている。
【0095】
例えばダイアル栓の形態の第3の流れ制御部材119が設けられ、ユーザが、第1の流体通路114を経由する第1のポート111と第3のポート113との間の流体の流れを可能にする第1の状態と、第2の流体通路115を経由する第2のポート112と第3のポート113との間の流体の流れを可能にする第2の状態との間で、選択的な切り替えを行うことができるようにしている。
【0096】
図3は、第1の容器2と第1の流体通路14との間の流体連通を確立させるように機能する第1の中空スパイク30を示している。第1の中空スパイク30は、2つの内部チャネルを備えており、第1の容器2からの希釈剤8の移送に専用の液体チャネル31と、通気の空気の第1の容器2への進入を可能にするために専用の空気チャネルとを備えている。空気チャネル32の開口の軸は、第1の容器2からの希釈剤8の移送の際に気泡が液体チャネル31に進入する可能性を少なくするために、液体チャネル31の開口の軸からずらされている。第2の中空スパイク57(図7を参照)が、第2の容器2と第2の流体通路15との間(さらには、第2の容器2と第3の流体通路16との間)の流体連通を確立するために、同様の方法で使用される。第2の中空スパイク57は、好ましくは、チャネルが1つだけのスパイクであるが、2つのチャネル(例えば、図1の通路15、16の各々に1つずつ)を有するスパイクであってもよい。
【0097】
図4は、図1の移送ユニット5の斜視図を、そのさまざまな流体通路とともに示している。第1および第2の中空スパイク30、57は、移送ユニット5の背中側から突き出しているため、この図では見て取ることができない。しかしながら、液体チャネル31は、希釈剤排出ノード71に流体連通しており、空気チャネル32は、空気導入ノード72に流体連通している。同様に、第2の中空スパイク57のただ1つのチャネルは、混合ノード73に流体連通している。これにより、流体の流れが、第1のポート11と第1の流路34との間、第1のポート11と通気路25との間、および第2のポート12と第2および第3の流路35、36のそれぞれとの間で、それぞれ可能にされる。さらに、第3の流路36は、希釈剤8と粉末状の薬剤9との混合後に投与可能な薬剤が第2の容器3から排出される際に流れ出る送出ノード74に流体連通している。流路34、35、36は、図示のとおり、ハウジング10の上面7の成型によるチャネルとして設けられている。
【0098】
図5aおよび5bは、第3の流れ制御部材またはダイアル栓19の斜視図を示している。ダイアル栓19は、細長い栓本体40および混合システム1のユーザによるダイアル栓19の操作のためのダイアル41を備えている。図5aは、栓本体40の第1のチャネル部分42を示しており、このチャネル部分42は、ダイアル栓19が第1の位置にあるときに、第1のポート11および第3のポート13を流体連通させる第1の流体通路14ならびに第3のポート13および第2のポート12を流体連通させる第2の流体通路15の一部を構成する。第1のチャネル部分42は、「T字」形であり、主要部44、第1の分岐45、および第2の分岐46で構成されている。図5bは、栓本体40の「L字」形の第2のチャネル部分43を示しており、このチャネル部分43が、ダイアル栓19が第2の位置にあるときに、第2のポート12および第3のポート13を連通させる第3の流体通路16の一部を構成する。第1のチャネル部分42および第2のチャネル部分43の両者は、ダイアル栓19の溝として設けられている。
【0099】
図6aは、第3の流れ制御部材19のためのロック50の基本原理を強調する第3のポート13の拡大断面図を示している。図6aは、第3のポート13の接続ピース56への結合の直前のシリンジ20(最も遠位側の部分だけが図示されている)を示している。この位置において、シリンジ20は、ロック/シリンジ境界53のロック50の当接面54に触れている。第3の流れ制御部材19の回転運動が、第3の流れ制御部材19の栓本体40の溝55へと突き出すようにばね手段52によって付勢されたキャッチ部材51によって防止されている。
【0100】
図6bは、図6aの図に対応する断面図A−A(図4を参照)を示している。ロック50が、可撓な構造を有しており、中央部65から側方へと延びている一対の「S字」形のアーム58を備えている。アーム58は、ハウジング10の外周部に末端を有し、それぞれの端部59において、端部59がハウジング10に対して動くことがないような方法で支持されている(図示されていない)。シリンジ20のカラー63は、中央部65に辛うじて当接しているにすぎない。
【0101】
図6cおよび6dは、カラー63の雌ねじ62と接続ピース56上の雄ねじ61との間の係合の種々の段階を示している。シリンジ20が接続ピース56へとねじ込まれる結果として、ロック/シリンジ境界53が第3のポート13の開口から離れるように徐々に内側へと移動させられるとき、アーム58の付勢力が打ち負かされて、アーム58がたわみ、キャッチ部材51が、溝55との係合から完全に取り出される(図6d)。シリンジ20が第3のポート13にしっかりと固定されたとき、第3の流れ制御部材19を自由に回転させ、第1の流体通路14を経由する第1のポート11と第3のポート13との間の流体の流れおよび第2の流体通路15を経由する第3のポート13と第2のポート12との間の流体の流れを可能にする第1の状態と、第3の流体通路16を経由する第2のポート12と第3のポート13との間の流体の流れを可能にする第2の状態との間で、切り替えを行うことができる。
【0102】
同様に、図2に関しては、シリンジ20が第3のポート13にしっかりと固定されたとき、第3の流れ制御部材19を自由に回転させ、第1のポート11と第3のポート13との間の流体の流れを可能にすることと、第2のポート12と第3のポート13との間の流体の流れを可能にすることとの間で、切り替えを行うことができる。
【0103】
ロック50の弾性構造および拘束された端部59のために、第3の流れ制御部材19が第1の状態に相当する位置にあるときにシリンジ20が第3のポート13から外れると、アーム58が初期の位置へ戻り、キャッチ部材51を再び溝55に係合させる。これにより、シリンジが第3のポート13に接続されていない限りは、確実に第3の流れ制御部材19が第1の状態から第2の状態へと切り換えるべく回転させることができないようにされる。
【0104】
シリンジ20と第3のポート13の接続ピース56との間のルアーロック接続は、シリンジ20と第3のポート13との間の取り付けの一例にすぎない。これらに限られるわけではないが、他の例として、例えばスナップ式の接続またはバヨネット式の接続が挙げられる。
【0105】
図7は、本発明の実施形態による混合システム1の分解された状態の斜視図である。混合システム1が、すでに詳しく述べたとおり、容器ユニット26および移送ユニット5を備えており、容器ユニット26および移送ユニット5が一体に組み合わせられて薬剤混合システム1を形成する。
【0106】
容器ユニット26が、ハウジング39、希釈剤の形態の第1の中身を収容している第1の容器2、および乾燥薬剤の形態の第2の中身を収容している第2の容器3を備えている。容器2、3が、ハウジング39に固定されることで、確実に第1の中身と第2の中身とが、例えば量および種類に関して整合する。容器2、3の各々に、着脱式のキャップ27が備えられている。
【0107】
容器ユニット26は、ハウジング39上に非対称に配置された壁部分28を備えている。移送ユニット5に、壁部分28を収容するように構成された対応する溝29が設けられている。これにより、第1のポート11が第1の容器2に接続され、第2のポート12が第2の容器3に接続されるような方法でのみ、確実に容器ユニット26および移送ユニット5が接続でき、逆の方法では接続できない。したがって、組み立てられた混合システム1における流体の流れが正しいことが保証される。
【0108】
移送ユニット5は、第1の容器2を受け入れる第1のポート、第2の容器3を受け入れる第2のポート12、およびシリンジ(図示されていない)を受け入れる第3のポート13を備えている。さらに、移送ユニット5には、移送ユニット5および容器ユニット26が一体に接続されたときに、希釈剤が第1の容器2から第3のポート13に接続されたシリンジへと移動し、希釈剤と乾燥薬剤との混合を可能にすべくシリンジから第2の容器3へと移動できるような方法、および後に混合済みの物質をシリンジへと移動させることができるような方法で、ポート11、12、13を接続するいくつかの流路(見て取ることができない)が設けられている。ポート11、12のスパイク30、57も図示されている。
【0109】
図8は、組み立てられた状態の図7の混合システム1の斜視図である。
【0110】
混合システムの動作
図3から8に示した構成部品のさまざまな構造および特徴を備えている図1の混合システムを、以下の方法で動作させることができる。希釈剤8と粉末状の薬剤9との混合が所望される場合、キャップ27が取り除かれ、移送ユニット5が容器ユニット26へと、第1の容器2が第1のポート11に受け入れられ、第2の容器3が第2のポート12に受け入れられるような方法で接続される。
【0111】
これにより、実際には、第1の中空スパイク30が第1の容器2の膜6を突き抜け、第1の容器2と第1の流体通路14との間の流体連通を確立させる。同様に、第2の中空スパイク57が第2の容器3の膜(図示されていない)を突き抜け、第2の容器3と第2の流体通路15との間の流体連通を確立させる。
【0112】
次いで、プランジャ21が完全またはほぼ完全に前進させられた状態にあるシリンジ20が、第3のポート13に接続される。移送ユニットは、製造者によって、すぐに使える状態で提供され、すなわちダイアル栓19が第1の状態(第1の流体通路14を経由する第1のポート11と第3のポート13との間の流体の流れおよび第2の流体通路15を経由する第3のポート13と第2のポート12との間の流体の流れを可能にする状態)に相当する位置にある状態で提供される。
【0113】
混合システム1が、2つの容器2および3がシリンジ20の上方に位置するように垂直に保持され、プランジャ21が引き戻される。これにより、チェックバルブ17が開く一方で、チェックバルブ18は閉じたままである。したがって、希釈剤8が第1の容器2から吸い出され、液体チャネル31、希釈剤排出ノード71、第1の流路34、第1の分岐45、および主要部44を経由してシリンジ20へと移送される。チェックバルブ18が、この動作の最中に確実に空気または物質が第2の容器3からシリンジ20へと吸い込まれることがないようにする。さらに、外気が、通気路25、空気導入ノード72、および空気チャネル32を介して第1の容器2へと吸い込まれる。混合システムがこの位置に保持されているとき、第1の中空スパイク30の空気チャネル32の開口は、液体チャネル31の開口よりも上方に配置されている。これにより、確実に希釈剤8とともに第1の容器2からシリンジ20へと運ばれる気泡が皆無または最小限になる。
【0114】
例えば希釈剤8のすべてなど、充分な量の希釈剤8がシリンジへと移送されたとき、プランジャ21が前方へと押される。これにより、チェックバルブ17が閉じ、チェックバルブ18が開き、希釈剤8をシリンジ20から主要部44、第2の分岐46、第2の流路35、混合ノード73、および第2の中空スパイク57を介して第2の容器3へと移送することができる。希釈剤8が第2の容器3へと移送されることで、第2の容器3の圧力が上昇する。チェックバルブ18および第1の状態に相当する位置にあるダイアル栓19が、希釈剤8および粉末状の薬剤9のどちらも第2の容器3から出ることがないようにする。
【0115】
希釈剤8および粉末状の薬剤9が適切に混合されて薬剤溶液が形成されたとき、ダイアル41が、例えば約90°だけ回転させられる。これにより、ダイアル栓19が、第1の状態から、第3の流体通路16を経由する第2のポート12と第3のポート13との間の流体の流れを可能にする第2の状態へと切り換わる。第2の容器3の高い圧力によって、薬剤溶液の一部またはすべてが、第2の容器3から第2の中空スパイク57、混合ノード73、第3の流路36、送出ノード74、および第2のチャネル部分43を介してシリンジ20へと追い出される。すべての薬剤溶液が第2の容器3の高い圧力によって第2の容器3からシリンジ20へと押し出されるのではない場合、確実に第2の容器3が空になるようにするために、さらにプランジャ21を手動で引き戻してもよい。重要なことに、ダイアル栓19が第2の状態にあるとき、第1のポート11と第3のポート13との間の流体の流れは不可能になっている。これにより、ユーザが投与可能な薬剤を第2の容器3からシリンジ20へと移送することによって送出の準備を行うときに、確実に、望ましくない第1の容器2の残余の中身または汚染されている可能性がある外気が、意図せずにシリンジ20へと吸い込まれて薬剤溶液と混ざる可能性がないようにする。
【0116】
第2の容器3の高い圧力による上述の第2の容器3からシリンジ20への薬剤溶液の移送を、薬剤溶液が発泡し始めるような高速で実行してもよい。第3の流体通路16の絞り弁22が、薬剤溶液の流速を発泡が生じない水準まで下げることによって、この恐れを取り除く。発泡を回避することは、いくつかの種類の薬剤、特には、静脈注射によって投与されなければならない薬剤において、きわめて重要である。
【0117】
システムを或る時間期間にわたって第1の状態のままにしておくことができるという事実は、ユーザにとって、薬剤の注入に先立って類似の混合システムからのさらなる量の混合(上述のとおりのいわゆる「プーリング」)が必要である場合に、きわめて重要である。単一の粉末薬剤容器でもたらされるよりも多くの薬剤を復元する必要がある場合、いくつかの混合システムを、希釈剤が第2の容器へと移されて粉末状の薬剤と混合する段階まで準備することができる。次いで、最終的な薬剤溶液を収容している個々の容器を、シリンジを各々の第3のポートへと順次に接続し、混合済みの中身を加圧された容器から押し出すことができるようにそれぞれのダイアルを回転させることによって、順次に空にすることができる。結果として、生成された分をすべて、例えば同じシリンジに集めて、1回の試みで注入または注射することができ、これはユーザ、特には、静脈への注入を必要とする患者にとってきわめて好ましい。
【0118】
上述の動作の段階から理解できるとおり、本発明は、ユーザにとって操作がきわめて簡単かつ効率的な混合システムを提供する。
【0119】
図9は、混合システム1において使用するための移送ユニット205を、別の実施形態にて示している。移送ユニット205の基本的な機能は、すでに説明した移送ユニット5の機能と同様である。しかしながら、移送ユニット205のこの実施形態は、以下の説明から明らかになるさらなる特徴を提供する。
【0120】
移送ユニット205は、いくつかの成型によるチャネルを含んでいる上面207を備えるハウジング210を有している。移送ユニット205の背中側から突き出している第1の中空スパイク(見て取ることができない)が、希釈剤の容器(図示されていない)が第1のポート(見て取ることができない)に受け入れられるときに、希釈剤の容器との流体連通を確立する。このスパイクは、上述の第1の中空スパイク30と同様の液体チャネル(見て取ることができない)および空気チャネル(見て取ることができない)を有している。液体チャネルが、希釈剤排出ノード271に流体連通し、希釈剤排出ノード271が、さらに第1の流路234に流体連通している。空気チャネルは、或る量の液体を収容することができるリザーバ275ももたらす通気路225に流体連通している。リザーバ275は、空気導入ノード272から蛇行端部276まで延びる蛇行チャネルとして形成されている。移送ユニット205の背中側から突き出している第2の中空スパイク(見て取ることができない)が、粉末の容器(図示されていない)が第2のポート(見て取ることができない)に受け入れられるときに、粉末の容器との流体連通を確立する。このスパイクは、混合ノード273に流体連通したただ1つのチャネル(見て取ることができない)を有しており、混合ノード273が、第2の流路235および第3の流路236のそれぞれに流体連通している。第3の流路236が、シリンジ(図示されていない)が移送ユニット205に取り付けられたときに、第2の容器からシリンジへの移送の際の混合済み製品の流速を制御する絞り222を備えている。第3のポート213の接続ピース256が、そのようなシリンジとの結合のための境界をもたらす。図9は、ユーザ操作可能な流れ制御部材(図示されていない)を収容する穴280も開示している。
【0121】
図10は、移送ユニット205の種々のチャネルを封止すべく上面207へと、例えば、接着または溶接によって、恒久的に取り付けられる封止カバーの斜視図を示している。封止カバー277は、該当の流路を完全に覆うことができる構成を有するプレート278を備えている。小さな穴279が、プレート278が上面207へと取り付けられたときに穴279が蛇行端部276の直上に位置するように、プレート278に配置されている。
【0122】
使用時、移送ユニット205が容器ユニット26に接続されるとき、第1の中空スパイクが膜6を貫く際に、第1の容器2の内部に過度の圧力の高まりが生じる可能性がある。これが生じる場合、少量の希釈剤8が、空気チャネルを通って通気路225へと押し出される。しかしながら、通気路225がリザーバ275を備えるように形成されているため、希釈剤8は、単にリザーバ275に溜まるだけである。第3のポート213に接続されたシリンジ20のプランジャ21が引き戻される結果として、第1の容器2に負圧が生じるとき、空気が蛇行端部276の上方の穴279を通って通気路225へと吸い込まれ、溜まった希釈剤8と一緒に第1の容器2へと進入する。ここから、この分の希釈剤8は、単純に残りの希釈剤8と一緒に第1の流路234へと排出され、さらにシリンジ20へと排出される。リザーバ275を、蛇行経路が空気導入ノード272から蛇行端部276まで設けられている蛇行チャネルとして構成し、穴279を、蛇行端部276の上方に配置することで、逃げ出した希釈剤8が穴279を通って移送ユニット205から漏れ出る恐れが、最小限にされる。
【0123】
図11aおよび11bは、混合システム1の移送ユニットにおいて使用するための第3の流れ制御部材であって、上述と同じ機能を有している第3の流れ制御部材の別の実施形態の斜視図を示している。ダイアル栓219が、円錐形の栓本体240および混合システム1のユーザによるダイアル栓219の操作のためのダイアル241を備えている。図11aは、栓本体240の第1のチャネル部分242を示しており、このチャネル部分242が、ダイアル栓219が第1の位置にあるときに、第1のポート11および第3のポート13を連通させる第1の流体通路14ならびに第3のポート13および第2のポート12を連通させる第2の流体通路15の一部を構成する。第1のチャネル部分242は、主要部244および第1の分岐245で構成されている。第1のポート11から第3のポート13への物質の輸送の際に、物質が第1の分岐245および主要部244を通って流れる一方で、第3のポート13から第2のポート12への物質の輸送の際には、物質が(第3のポート13への流れとは反対の方向に)主要部244だけを通って流れる。図11bは、栓本体240の第2のチャネル部分243を示しており、このチャネル部分243が、ダイアル栓219が第2の位置にあるときに、第2のポート12および第3のポート13を連通させる第3の流体通路16の一部を構成する。チャネル部分242、243は、例えば2成分の成型によって栓本体240に結合させられ、栓本体240を流体を漏らさぬように移送ユニットのハウジングに取り付けできるようにする材料のリップ247の間に設けられている。さらに、リップ247は、栓本体240よりも柔らかくてたわみやすい材料からなり、結果として栓本体240と移送ユニットのハウジングとの間の境界の摩擦が小さくなり、第3の流れ制御部材219が、あまり器用でないユーザにとっても操作しやすいものになる。
【0124】
図12は、移送ユニット205の側面断面図を示しており、本発明の態様によるストッパ機構を説明している。この図において、シリンジ220(最も遠位側の部分だけが図示されている)が、シリンジのカラー263の雌ねじ262を接続ピース256の雄ねじ261に組み合わせることによって、接続ピース256へと取り付けられている。これにより、シリンジ220が、カラー263が移送ユニット205の上面207を保護する外カバー285の接触面286に接する地点まで、接続ピース256へとねじ込まれている。このようにして、接触面286が、ハウジング210に対するシリンジ220のさらなる取り付けの動きに、停止をもたらす。これにより、ユーザが、例えば適切な取り付けがなされたか否かが不確かであるがためにシリンジ220を接続ピース256へと過剰に押し込むことによってシリンジ220の円錐形の開放端部分を誤って破損させてしまう恐れがないことが、保証される。
【0125】
典型的な実施形態の上述の説明において、移送システムの種々の構成部品に上述の機能をもたらす手段として種々の構成要素間に所望の関係をもたらす種々の構造を、本発明の考え方が当業者にとって明らかになる程度まで説明した。種々の構造の詳細な構成および仕様は、本明細書に記載の方針に沿って当業者によって実行される通常の設計手順の対象であると考えられる。
【0126】
本明細書に提示されるあらゆる例または例示の用語(例えば、「など」)の使用は、あくまでも本発明をより分かりやすくするためのものにすぎず、特に請求項に記載されない限り、本発明の技術的範囲に限定を加えるものではない。明細書におけるいかなる記載も、請求項に記載されていない要素が本発明の実施に不可欠である旨を示していると解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用混合システムのための移送ユニット(5)であって、
− 第1の中身を収容している第1の容器(2)を受け入れる第1のポート(11)と、
− 第2の中身を収容している第2の容器(3)を受け入れる第2のポート(12)と、
− シリンジ(20)を受け入れる第3のポート(13)と、
− 第1のポート(11)と第3のポート(13)との間の流体の流れを可能にする第1の流体通路(14)と、
− 第3のポート(13)と第2のポート(12)との間の流体の流れを可能にする第2の流体通路(15)と、
− 第2のポート(12)と第3のポート(13)との間の流体の流れを可能にする第3の流体通路(16)と、
− 第1のポート(11)と第3のポート(13)との間に配置され、シリンジ(20)が第3のポート(13)に接続されたときに第1のポート(11)から第3のポート(13)への一方向の流体の流れを可能にする第1の流れ制御部材(17)と、
− 第3のポート(13)と第2のポート(12)との間に配置され、シリンジ(20)が第3のポート(13)に接続されたときに第3のポート(13)から第2のポート(12)への一方向の流体の流れを可能にする第2の流れ制御部材(18)と、
− 第3の流れ制御部材(19)と
を備えており、
第3の流れ制御部材(19)により、第1の流体通路(14)を介して第1のポート(11)と第3のポート(13)との間で流体の流れが可能であり、かつ第2の流体通路(15)を介して第3のポート(13)と第2のポート(12)との間で流体の流れが可能である第1の状態と、第3の流体通路(16)を介して第2のポート(12)と第3のポート(13)との間で流体の流れが可能であるが、第1のポート(11)と第3のポート(13)との間では流体の流れが不可能である第2の状態との間でのユーザによる選択的な切り替えが可能であることを特徴とする、移送ユニット。
【請求項2】
シリンジ(20)が第3のポート(13)に接続されたときにだけ第3の流れ制御部材(19)を操作可能であることを確実にするためのロック手段(50)をさらに備えている、請求項1に記載の移送ユニット。
【請求項3】
ロック手段(50)が、ユーザ操作可能な流れ制御部材(19)を動かすことができないようにユーザ操作可能な流れ制御部材(19)に係合し、容積可変のリザーバ(20)が第3のポート(13)に接続されると、ユーザ操作可能な流れ制御部材(19)との係合を解除する、請求項2に記載の移送ユニット。
【請求項4】
ロック手段(50)がさらに、容積可変のリザーバ(20)が第3のポート(13)から切り離されると、ユーザ操作可能な流れ制御部材(19)に再び係合する、請求項3に記載の移送ユニット。
【請求項5】
ロック手段(50)が付勢手段(52)およびキャッチ部材(51)を備えており、キャッチ部材(51)が、第3の流れ制御部材(19)の関連のキャッチ部材(55)との係合に出入りする、請求項3または4に記載の移送ユニット。
【請求項6】
第3の流れ制御部材(19)が、第1の流体通路(14)の一部および第2の流体通路(15)の一部を構成する第1のチャネル部分(42)と、第3の流体通路(16)の一部を構成する第2のチャネル部分(43)とを含んでいる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の移送ユニット。
【請求項7】
それぞれのチャネル部分(42、43)が少なくとも1つの畝によって画定されている、請求項6に記載の移送ユニット。
【請求項8】
第1のポート(11)に流体連通したリザーバ(275)をさらに備えている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の移送ユニット。
【請求項9】
リザーバ(275)が、外気に流体連通した蛇行チャネルを含んでいる、請求項8に記載の移送ユニット。
【請求項10】
第3の流体通路(16)の流速を制限する第4の流れ制御部材(22)をさらに備えている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の移送ユニット。
【請求項11】
第1のポート(11)が、2つの内部チャネル(31、32)を有する非対称な中空スパイクまたは針(30)を備えており、2つの内部チャネルの開口の軸がずれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の移送ユニット。
【請求項12】
− 第1の中身を収容している第1の容器(2)と、
− 第2の中身を収容している第2の容器(3)と、
− 請求項1〜11のいずれか一項に記載の移送ユニット(5)と
を備えた医療用混合システム(1)。
【請求項13】
第1の容器(2)および第2の容器(3)が、2つの容器を互いに固定された位置に保持する容器ユニット(26)内に配置される、請求項12に記載の医療用混合システム。
【請求項14】
容器ユニット(26)および移送ユニット(5)が、互いに所定の向きに配置された場合に限って一体に結合させることができるような形状を有している、請求項13に記載の医療用混合システム。
【請求項15】
請求項13または14に記載の医療用混合システム(1)のための容器ユニット(26)であって、請求項1〜11のいずれか一項に記載の移送ユニット(5)に結合するように構成されており、ハウジング(39)と、第1の中身を収容している第1の容器(2)と、第1の中身と混合される第2の中身を収容している第2の容器(3)とを備えている容器ユニット(26)。
【請求項16】
物質を混合するための方法であって、
a)第1の中身を収容している第1の容器、及び第2の中身を収容している第2の容器を備えている容器ユニットと、第1の容器への流体連通を確立するための第1の接続手段、第2の容器への流体連通を確立するための第2の接続手段、容積可変のリザーバへの流体連通を確立するための第3の接続手段、第1の接続手段、第2の接続手段、および第3の接続手段を相互接続する複数の流体通路、ならびに流れ制御部材を備えている流体移送ユニットとを結合させるステップと、
b)容積可変のリザーバを第3の接続手段に結合させるステップと、
c)容積可変のリザーバの容積を増加させることにより、第1の容器から第1の中身を容積可変のリザーバへと移動させるステップと、
d)容積可変のリザーバの容積を減少させることにより、容積可変のリザーバから第1の中身を第2の容器へと移動させるステップと
を含んでいる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−505676(P2012−505676A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531491(P2011−531491)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063506
【国際公開番号】WO2010/043685
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(507383862)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アーゲー (42)
【Fターム(参考)】