説明

粉液型歯科用修復材

【課題】 粉材に無機顔料を配合した粉液型歯科用修復材において、硬化体における、無機顔料の分散性を向上させ、色ムラや色調の粗さを改善し、加えて粉材の流動性も良好で、筆先に形成される泥粒の大きさをコントロールし易いものを開発すること。
【解決手段】 重合性単量体を含む(A)液材と、該(A)液材に溶解性の有機ポリマー粒子を含む(B)粉材とからなり、これら(A)液材または(B)粉材の少なくとも一方には重合開始剤が含有されてなる粉液型歯科用修復材において、
上記(B)粉材に含まれる有機ポリマー粒子の少なくとも一部が、粒子内に無機顔料微粒子、好適には酸化チタン微粒子が0.1〜2質量%の含有量で分散する無機顔料分散有機ポリマー粒子であることを特徴とする粉液型歯科用修復材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉材と液材とを混ぜ合わせて使用する、粉液型歯科用修復材に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科治療において、粉材と液材とからなる粉液型歯科用修復材料が使用されている。すなわち、粉液型歯科用修復材料は、重合性単量体を含む(A)液材と、該(A)液材に溶解性の有機ポリマー粒子を含む(B)粉材とからなり、これら(A)液材または(B)粉材の少なくとも一方には重合開始剤が含有されている。また、上記粉材には、硬化体に歯牙の色調を付与するために、二酸化チタン等の白色顔料を始めとした、種々の有機・無機顔料微粒子が配合されている。
【0003】
粉液型歯科用修復材料では、これらの各成分の未硬化状態での保存安定性を確保するために上記粉材と液材との2部材に分包されているものであり、使用時にこれら部材を混合し、重合開始剤を機能させることで硬化を開始させる。また、このように粉材と液材とを混合すれば、該粉材の少なくとも一部が液材に溶解して混合液の粘度が上昇し、それにより上記硬化反応が促進される。こうした構成の粉液型歯科用修復材料は、例えば、義歯の補修や暫間歯等に使用される歯科用常温重合レジン、動揺歯の暫間固定等に使用される歯科用セメント、入れ歯の補修材であるリベース材、更には治療と治療の間において暫定的に歯に詰める仮封材等で利用されている。
【0004】
ところで、粉液型歯科用修復材料の具体的操作方法には、大別して、練和法と筆積み法とがある。このうち、練和法とは、粉材と液材とを、一定量ずつ採り、ヘラ等を用いて練和し、賦形して硬化体を得る方法である。他方、筆積み法とは、豚毛などの動物の毛や合成繊維製の筆の先に液材を充分に浸み込ませ、その筆先を粉材に接触させることにより、筆に含まれる液材が粉材粒子の隙間に毛細管現象によって染み込み、その結果、液材と粉材とが筆先で混ざり合うことで、粉材と液材との混合泥粒を形成させ、硬化体を得る方法である。具体的には、筆を2,3秒間液材に浸漬して筆に液材を含ませた後、筆先の2〜5mmを別容器に入れた粉材に1,2秒間接触させることで筆先に粉材と液材の泥粒を形成する。泥粒は、粉材の中に埋もれず、筆先に付着するので、筆を持ったまま泥粒を任意の場所に乗せれば、泥粒をその場所で硬化させることができる。上記の方法は、筆積み法の一例であり、人によって筆を液材に漬ける時間や、粉材に接触させる時間、筆先を粉材に接触させる深さが異なるので、全ての場合において上記の通りに筆積みを行うわけではないが、概ね上記の方法で筆積みを行っている。筆積み法では上記のように液材を含んだ筆先を粉材に接触させるが、粉材の流動性が悪い場合は、複数回筆積みを行うと粉材の表面に泥粒の抜けた部分が窪みとして残り、粉材表面が凸凹になる。粉材表面に凸凹があると、筆先と粉材との接触部分の深さが安定せず、使いにくいため、粉材を入れた容器を軽く叩く等の操作で振動を付与することで表面を平坦化しているが、この作業は実際の使用上では面倒な操作となる。その一方、流動性の高い粉材であれば、泥粒が抜けた部分に自然と粉材が流れ込み、粉材表面が平坦化するので、粉材を入れた容器に振動付与する必要が無く、使い勝手が良い。
【0005】
練和法にせよ、筆積み法にせよ、前記硬化体の審美性を良好にする観点から、液材と粉材との混合時に顔料微粒子が均一に分散することが要求される。ところが、従来の粉液型歯科用修復材料は、特に、筆積み法において、該顔料微粒子を均一に分散させるのが難しく、筆先に形成される泥粒に色ムラを生じる問題があった。この原因は、筆積み法では、粉材と液材とが接触する際に、粉材と液材を混合するための力が外部からほとんど加わらないことが大きい。つまり、筆の先に液材を浸み込ませる当初に、粉材の隙間を毛細管現象によって一気に流れる液材の強流によって、粉材に含まれる顔料微粒子も同伴して流れてしまい、流動先において密集することが原因と考えられる。
【0006】
このため、粉材に含有させる有機ポリマー粒子の表面に、顔料微粒子を担持させて用いることが提案されている(非特許文献1、2参照)。この場合、顔料微粒子は、前記液材の当初の強流には同伴し難くなり、その多くは有機ポリマー粒子の表面に担持されたままで留まる。そして、当初の強流が収まってから、液材に、有機ポリマー粒子の表層部が溶解するに応じて、該有機ポリマー粒子表面から脱離し周囲に拡散する。この結果、こうした顔料担持有機ポリマー粒子を粉材に用いた粉液型歯科用修復材料では、前記色むらの発生はかなり良好に抑制される。
【0007】
また、同様に、顔料を有機ポリマー粒子の表面に担持させる提案とともに、これら顔料を、有機ポリマー粒子を重合する際に、原料の重合性単量体に混合して供給し、得られる有機ポリマー粒子の内部に分散して含有させても良いと開示する特許文献もある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−231011号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】株式会社ジーシーの歯科医療ホームページ(URLhttp://www.gcdental.co.jp)のジーシーユニファストスリーの紹介ページ(URLhttp://www.gcdental.co.jp/unifast3/)「平成22年4月15日検索」
【非特許文献2】熊谷知弘、篠崎裕,「日本の製品 ジーシーユニファストIIIのSURFテクノロジー」,DE,日本歯科理工学会,第160号,2007年1月25日,p35−36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
粉材に含有させる有機ポリマー粒子の表面に、顔料微粒子を担持させる方法は、前記したように色むらの発生に対してかなり効果的であるが、それでもさらに改善の必要性があった。それは、有機ポリマー粒子の表面を、上記顔料微粒子が覆っていると、該有機ポリマー粒子の溶解性が損なわれ、顔料の拡散性が十分でなくなるからである。すなわち、この場合、硬化体には、有機ポリマー粒子の表面付近に顔料の密集群が残存し易くなり、これが発色点として点在する状態になり、表現される色調がどうしても粗い感じになっていた。
【0011】
また、斯様に有機ポリマー粒子の表面に顔料微粒子を担持させる態様では、有機ポリマー粒子の流動性が悪くなる問題もあった。これは有機ポリマー粒子の表面が顔料微粒子の被覆により粗雑化することが原因であり、斯様に流動性が悪い粉材を用いた筆積み法では、筆先に形成される泥粒のサイズが安定化しなくなる。すなわち、粉材の流動性が悪いと、容器に採取した粉材面に液材を浸み込ませた筆先を接触させ、筆先に粒子を付着させて取り去ることより形成される粉材面の窪みが、粒子の自然落下や簡単な振動付与等では平坦化しなくなる。そのため、筆積み操作を続けていくと、凹凸のある粉材面に、液材を浸み込ませた筆先を接触させなくてはならなくなり、場合によっては、筆積みによって粉材にできた窪みの斜面部分に筆を接触させることになるので、筆先に付着させる粒子量をうまくコントロールできなくなるからである。
【0012】
他方、特許文献1において、顔料微粒子を、有機ポリマー粒子の内部に分散させる態様は、実施例等で実際に製造している具体的なものではない。すなわち、その実施例では、上記顔料を有機ポリマー粒子の表面に担持させる態様のみが行なわれている。しかも、これらの態様で、有機ポリマー粒子の表面に担持させてある顔料は、無機顔料では二酸化チタンが一例あるだけで、後は、有機顔料ばかりである(〔0058〕)。しかして、有機顔料は、同じ有機成分として液材の重合性単量体と馴染みが良く、比重も軽いのが一般的である。したがって、該有機顔料微粒子であれば、有機ポリマー粒子の表面に担持させる態様でも、液材と粉材との混合後に、有機ポリマー粒子表面の溶解が左程に遅滞化することはない。すなわち、有機顔料微粒子の拡散性も比較的良好に保持できて、前記色調の粗さも許容範囲程度である。
【0013】
これに対して、無機顔料の場合は、これらは概して、液材の重合性単量体との馴染みが悪く、比重も重い。したがって、その微粒子を有機ポリマー粒子の表面に担持させる態様により実施すると、有機ポリマー粒子表面の溶解性は大きく損なわれ、そうなると、無機顔料微粒子の拡散性は大きく低下し、得られる硬化体の色調は顕著に粗くなる。
【0014】
しかも、特許文献1では、有機ポリマー粒子の表面への顔料の担持量が0.1〜20質量%の幅広い範囲として規定されており(〔0033〕)、前記実施例における二酸化チタンの担持量も10質量%の多量になっている(〔0058〕)。しかして、このように有機ポリマー粒子の表面に多量の無機顔料を担持して、これを粉材に使用した場合には、前記無機顔料微粒子の密集による、有機ポリマー粒子表面の溶解性の遅滞化はさらに増大しており、上記色調の不良はより深化している。
【0015】
以上の背景から本発明は、粉材に無機顔料を配合した粉液型歯科用修復材において、硬化体における、無機顔料の分散性を向上させ、色ムラや色調の粗さを改善し、加えて粉材の流動性も良好で、筆先に形成される泥粒の大きさをコントロールし易いものを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題に鑑み、本発明者らは、鋭意研究を続けてきた。その結果、無機顔料微粒子は、0.1〜2質量%の含有量で、粉材に含まれる有機ポリマー粒子の内部に分散させることで、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、重合性単量体を含む(A)液材と、該(A)液材に溶解性の有機ポリマー粒子を含む(B)粉材とからなり、これら(A)液材または(B)粉材の少なくとも一方には重合開始剤が含有されてなる粉液型歯科用修復材において、
上記(B)粉材に含まれる有機ポリマー粒子の少なくとも一部が、粒子内に無機顔料微粒子が0.1〜2質量%の含有量で分散する無機顔料分散有機ポリマー粒子であることを特徴とする粉液型歯科用修復材である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の粉液型歯科用修復材は、(B)粉材における、有機ポリマー粒子に担持させる顔料が無機顔料微粒子でありながら、その担持量を0.1〜2質量%の低めに抑え、しかも、粒子内部に分散させる態様で含有させているため、硬化体における、これらの分散性に極めて優れる。すなわち、有機ポリマー粒子内に含有される無機顔料微粒子は、筆積み操作当初の粉材間を浸透する液材の強流にはほとんど流されず、その後の有機ポリマー粒子の溶解に応じて、有機ポリマー粒子内から順次放出されて周囲に拡散する。また、無機顔料分散有機ポリマー粒子の一部は溶解し残るのが通常であるが、本発明では、上記有機ポリマー粒子中に分散させる無機顔料微粒子の含有量を低めに抑えているため、該残留子が強い発色点になることも防止される。かくして、その硬化体では、無機顔料微粒子が良好に分散しており、色ムラの発生もなく、滑らかな色調になる。
【0019】
また、これら無機顔料分散有機ポリマー粒子は、無機顔料微粒子は内包されているため、粉材の粉体としての流動性が損なわれない。そのため、これを(B)粉材に含有させた本発明の粉液型歯科用修復材では、筆積み操作時に、液材を浸み込ませた筆先を粉材面に接触し一部を付着させて、該粉材面に窪みを形成させても、係る窪みには周辺粒子が自然落下する等して再び平滑化し易い。そのため、以後の筆積み操作においても、筆先に付着させる粒子量のコントロールが容易であり、安定したサイズの泥粒を操作性良く形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の粉液型歯科用修復材を構成する、(A)液材と(B)粉材の各素材について、順次説明する。
〔(A)液材〕
<重合性単量体>
本発明において、(A)液材に使用する重合性単量体は、液状の重合性化合物である限り公知のものが制限なく使用できる。カチオン重合性単量体等であっても良いが、ラジカル重合性単量体が好適である。ラジカル重合性単量体としては、ビニル基等の重合性不飽和結合を有する公知の化合物から採択すれば良く、重合性の良さなどから、(メタ)アクリレート系の単量体が特に好適に用いられる。当該(メタ)アクリレート系の重合性単量体を具体的に例示すると、次に示すものが挙げられる。
【0021】
単官能ラジカル重合性単量体
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、プロピオンオキシエチル(メタ)アクリレート、ブタノンオキシエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,6H−デカフルオロヘキシル(メタ)アクリレート及び1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート等の含フッ素(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
二官能ラジカル重合性単量体
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス((メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(3−(メタ)アクリロキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジプロポキシフェニルプロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシジプロポキシフェニル−2−(4−(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシイソプロポキシフェニルプロパン等の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
三官能ラジカル重合性単量体
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
四官能ラジカル重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
これらの(メタ)アクリレート系重合性単量体の中でも、有機ポリマー粒子の溶解性を考慮すると、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アセトキシエチル(メタ)アクリレート、プロピオンオキシエチル(メタ)アクリレート、ブタノンオキシエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,6H−デカフルオロヘキシル(メタ)アクリレート及び1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート等の含フッ素(メタ)アクリレートを好適に用いることができ、これらの重合性単量体に他の重合性単量体を組み合わせて使用することも好ましい。
【0026】
更に、上記(メタ)アクリレート系重合性単量体以外に、他の重合性単量体を混合して重合することも可能である。これらの他の重合性単量体を例示すると、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル化合物;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物を挙げることができる。これらの他の重合性単量体は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
<液材の任意成分>
本発明の粉液型歯科用修復材において、(A)液材には、可塑剤を配合させるのが好ましい。こうした可塑剤は、特に限定されず、通常、歯科用分野に使用されるものが使用できる。代表的なものを例示すれば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブヂルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸エステル、ジブチルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジブチルセバチート、ジオクチルセバチート、ジブチルマレエート、ジブチルフマレート等のフタル酸以外の二塩基酸エステル、グリセロールトリアセテート等のグリセリンエステル、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル等である。上記エステル類の内、脂肪族エステルは、炭素原子数1〜12、さらには1〜8のものが好ましい。特に、上記記載の可塑剤の内、フタル酸エステルが好適である。これらの可塑剤は、必要に応じて1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
さらに、(A)液材には、紫外線に対する変色防止のため、公知の紫外線吸収剤を配合してもよい。また、保存安定性を向上させるために、公知の重合禁止剤を配合することも好ましい。
【0029】
〔(B)粉材〕
<粒子を構成する有機ポリマー成分>
本発明において、(B)粉材の有機ポリマー粒子を構成する有機ポリマー成分は、上記(A)液材に溶解性のある有機ポリマーである。ここで、有機ポリマーが(A)液材に溶解性がある状態とは、内径が35〜40mmで100ml以上の容量のあるサンプル瓶に、(A)液材50gと有機ポリマー1gを添加して、長さ25mmのスターラーピースを用いて回転速度300rpmにて23℃の液温下で3分攪拌後、攪拌液を濾過して有機ポリマーの未溶解量を採取して重量を計測することにより該有機ポリマーの溶解率を求めた際に5質量%以上である状態を言う。有機ポリマーの溶解率が高いほどゲル化による重合反応が促進されて好ましいため、該溶解率は10質量%以上であるのが好ましい。
【0030】
こうした有機ポリマーの具体例としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−エチル(メタ)アクリレート共重合体等のポリ低級アルキル(メタ)アクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物として用いることができる。このうち液材への溶解性の高さや、透明性の高い硬化体が得られることから、ポリ低級アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−エチル(メタ)アクリレート共重合体が最も好ましい。
【0031】
なお、これら有機ポリマーは、上記(A)液材への溶解性の性状が保持できている少量の範囲で、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(メタクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(3−(メタ)アクリロキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジプロポキシフェニルプロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)−2−(4−(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2−(4−(メタ)アクリロキシジプロポキシフェニル−2−(4−(メタ)アクリロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシイソプロポキシフェニルプロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性重合性単量体により架橋されたものであっても良い。
【0032】
こうした有機ポリマーの質量平均分子量は特に限定されるものではないが、小さすぎるとTgが低下し、液材と接触して得られるペーストの操作性が不良になる虞がある。また、極端な場合には液状になる。一方、質量平均分子量が大きすぎても、合成・入手が困難になる他、ペーストの操作性も不良になる虞がある。これらから有機ポリマーは、質量平均分子量が2万〜500万が好適であり、5万〜100万がより好ましい。
【0033】
なお、上記有機ポリマーの質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略す)により測定される、標準ポリスチレン換算での分子量である。
【0034】
<有機ポリマー粒子内に分散される無機顔料微粒子>
本発明において、有機ポリマー粒子内に分散させる無機顔料微粒子は、得られる歯科用修復材が、所望する歯牙の色調になるように公知のものから適宜採択すれば良い。具体的には、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、カーボンブラック、黒酸化鉄、黄色酸化鉄、弁柄、銅クロマイトブラック、酸化クロムグリーン、クロムグリーン、バイオレット、クロムイエロー、クロムグリーン、クロム酸鉛、モリブデン酸鉛、チタン酸カドミウム、ニッケルチタンイエロー、ウルトラマリーンブルー、コバルトブルー、ビスマスバナデート、カドミウムイエローまたはカドミウムレッド等が挙げられる。歯牙の色調を再現するためには、白顔料が主顔料として使用されることが多く、特に、二酸化チタンが最適に使用される。また、二酸化チタンは親水性の顔料であり、疎水的な前記重合性単量体との馴染みが良くないので、本発明は無機顔料を粉液型歯科用修復材の硬化体中におい良好に分散させることができ、本発明の効果が特に良好に発揮できて好ましい。二酸化チタンは、有機ポリマー粒子内に分散される無機顔料微粒子の内の少なくとも一部、より好適には80質量%を占めるように配合させるのが好ましい。
【0035】
二酸化チタンとしては、ルチル型結晶、アナタース型結晶等があるが、アナタース型は光による有機物分解能が高いため、二酸化チタンとしてはルチル型が好ましい。
【0036】
これら無機顔料の平均粒子径は、特に制限されるものではないが、微細なほど、有機ポリマー粒子に担持させない場合において、粉材と液材の混合当初に流されて偏在し色ムラを生じさせる問題が顕著化するので、これを防止する本発明の効果がより高度に発揮できて好ましい。通常、0.1〜0.6μmの平均粒子径の微粒子であり、0.15〜0.5μmの平均粒子径の微粒子であるのが更に好ましい。なお、本発明において、無機顔料の平均粒子径(1次粒子径)は、レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒径を意味する。
【0037】
<無機顔料分散有機ポリマー粒子>
本発明において、粉材に配合する上記無機顔料微粒子は、有機ポリマー粒子内に0.1 〜2質量%の含有量で分散させて用いる。このような適量の無機顔料微粒子を、有機ポリマー粒子内部に分散させて用いることにより、本発明の粉液型歯科用修復材は、硬化体中において、該無機顔料微粒子が良好に分散し、色ムラの発生もなく滑らかな色調で、且つ粉材の流動性にも優れるものになる。
【0038】
ここで、上記無機顔料微粒子の含有量は、無機顔料分散有機ポリマー粒子全体の質量に対する、含有される無機顔料微粒子の質量の割合である。その測定は、既知の質量の無機顔料含有ポリマー粒子を800℃の焼成炉で5時間焼成することで有機成分を分解除去した残滓の質量(他の無機成分が含まれる場合は、これに占める顔料の質量)を測定することにより求めることができる。
【0039】
無機顔料分散有機ポリマー粒子において、無機顔料微粒子は、硬化体に、歯牙の色調を与える観点から0.1質量%以上含有させることが必要であり、0.15質量%以上含有させるのがより好ましい。他方、有機ポリマー粒子中に均一に含有させる観点や、筆積み操作時に、粒子が溶け残っても強い発色点とならない穏やかな色付きにする観点から、2質量%以下含有させることが必要であり、1質量%以下含有させるのがより好ましい。
【0040】
無機顔料含有有機ポリマー粒子の平均粒子径は、粉末状であれば特に制限はないが、あまりに大きいと、筆積み操作時に粒子が大粒径で溶け残って、硬化体の色調が粗くなる虞があり、他方、あまりに小さいと、粉材と液材の混合当初に流されて偏在する虞もあるため、10〜200μmの範囲が好ましく、特に、20〜150μmの範囲がより好ましい。なお、無機顔料含有有機ポリマー粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法で測定した体積平均粒径を意味する。
【0041】
本発明において、上記無機顔料含有有機ポリマー粒子は、例えば、以下の方法により製造することができる。1)重合性単量体に、無機顔料微粒子を分散させ塊状重合により硬化させ、得られた硬化体を粉砕する方法(塊状重合・粉砕法);2)無機顔料微粒子を、重合性単量体と水含有溶媒との混合液に分散させ懸濁重合により硬化させる方法(懸濁重合法);3)熱融解した有機ポリマーに無機顔料微粒子を練り込み、冷却後に得られた固形化物を粉砕する方法(熱融解・粉砕法);4)有機ポリマーを溶媒に溶解させ、得られた有機ポリマー溶液に無機顔料微粒子を分散させ、溶媒を揮発させた後に得られた固形化物を粉砕する方法(溶液・粉砕法)等が挙げられる。
【0042】
これら製造方法の中でも、得られる無機顔料含有有機ポリマー粒子が球形または略球形であり、(B)粉材の流動性を特に優れたものにできることから、懸濁重合法が好ましい。
【0043】
多くの無機顔料微粒子は表面に親水基を有しているが、その程度によっては、懸濁重合において、該無機顔料微粒子が水相側に移動した状態で重合が進行して、生成する有機ポリマー内部に効率的に含有され難くなる。そこで、懸濁重合法では、無機顔料を疎水性の重合性単量体に高度に分散させるために、無機顔料の表面をカップリング剤で疎水化処理するか、界面活性剤型等の各種分散剤を用いるのが好ましい。
【0044】
上記カップリンッグ剤としては具体的には、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシランカップリング剤、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、チタニウムステアレート、チタニウム-i-プロポキシオクチレングリコレート、ジ-i-プロポキシチタンジイソステアレート等のチタネートカップリング剤等が挙げられる。
【0045】
界面活性剤型分散剤としては具体的には、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
また、分散剤としては、前記有機ポリマー粒子を構成するものとして説明した有機ポリマーも、高分子型分散剤として好適に使用できる。特に、無機顔料微粒子を含有させる有機ポリマー粒子と同種の有機ポリマーは、有機ポリマー粒子中に高分散させることができ、更に、異種材料を使用することがないため、得られる無機顔料分散有機ポリマー粒子の色調が濁りのないものになるので特に好ましい。
【0047】
重合性単量体の油滴を水含有溶媒中で安定化させるために、懸濁安定剤を用いてもよい。
懸濁安定剤は、具体的にはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系水溶性樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド系、第三リン酸塩類、ポリカルボン酸の部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミン等が挙げられ、目的に応じて併用してもよい。
【0048】
懸濁重合は、通常、ラジカル重合により重合性単量体を重合させる。そのため、ラジカル重合開始剤を用いるのが好ましく、無機系または有機系のものが制限なく使用できる。好ましいラジカル重合開始剤としては、ペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物などを挙げることができる。
【0049】
懸濁重合において、水の配合量は、重合性単量体100質量部に対して、100〜1000質量部添加するのが好ましい。また、水の他に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類などの親水性溶媒を混合して用いても良い。親水性溶媒の使用量は、水100質量部に対して30質量部以下が好ましい。
【0050】
懸濁重合の重合温度は、重合開始剤の特性にもよるが、一般に、50〜130℃であり、重合時間は、一般に1〜30時間である。懸濁重合により、球形または略球形の無機顔料分散有機ポリマー粒子が分散する反応液が得られる。反応液からの無機顔料分散有機ポリマー粒子の単離は、固液分離し、洗浄によって無機顔料分散有ポリマー粒子の表面に付着している懸濁安定剤を除去するのが好ましい。濾紙やフィルターを用いて、濾過しても良い。
【0051】
なお、無機顔料含有有機ポリマー粒子には、歯牙の多様な色調を再現するために、前記無機顔料微粒子と共に、有機顔料微粒子も含有させることが可能である。ただし、その含有量は、無機顔料含有有機ポリマー粒子に対して0.2質量%以内が好ましく、特に0.1質量%以内であるのが好ましい。また、有機顔料は、無機顔料に比較すれば、液材の重合性単量体との馴染みが良いため、係る有機顔料微粒子であれば、有機ポリマー粒子の表面に担持させても、色調の粗さの問題は表出し難く許容できる。
【0052】
上記有機顔料としては、フタロシアニン系等の多環式顔料やアゾ系顔料等の公知の有機顔料から所望する色調になるように単独もしくは混合して適宜に使用すれば良い。
【0053】
<その他の有機ポリマー粒子>
本発明において、(B)粉材には、上記無機顔料分散有機ポリマー粒子のみを用いても良いが、その場合、色調が濃厚になり過ぎる虞や、(A)液材への溶解性や得られるペーストの操作性が低下する虞もあるため、顔料非含有の有機ポリマー粒子と組合せて用いるのが好ましい。こうした顔料非含有有機ポリマー粒子の細かな粒子性状や、粒子を構成する有機ポリマーの種類等は、前記した無機顔料分散有機ポリマー粒子の場合と同様である。無機顔料含有有機ポリマー粒子に対する無機顔料非分散有機ポリマー粒子の配合割合は、前者100質量部に対して後者を1200質量部以下とするのが好ましく、550質量部以下とするのが特に好ましい。
【0054】
また、無機顔料分散有機ポリマー粒子以外の有機ポリマー粒子として、有機顔料微粒子を粒子内に分散して含有する粒子や、同じく有機顔料微粒子を表面に担持して含有する粒子等を使用して、歯牙の多様な色調を表現しても良い。
【0055】
<粉材の任意成分>
本発明の粉液型歯科用修復材において、(B)粉材には、無機フィラーを配合することもできる。これにより硬化体の強度や切削性を向上させることができる。代表的な無機フィラーを具体的に例示すれば、石英、シリカ、アルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス等が挙げられる。さらに無機フィラーの内、カチオン溶出性フィラーとしては、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム等の水酸化物、酸化亜鉛、ケイ酸塩ガラス、フルオロアルミノシリケートガラス等の酸化物が挙げられる。これらもまた、1種または2種以上を混合して用いても良い。これら無機フィラーは、全有機ポリマー粒子の100質量部に対して0.01〜2質量部の範囲で配合するのが効果的である。
【0056】
〔(A)液材または(B)粉材の少なくとも一方に配合する重合開始剤〕
本発明の粉液型歯科用修復材において、(A)液材または(B)粉材の少なくとも一方には、液材の重合性単量体を重合させるために重合開始剤が配合される。当該重合開始剤としては、公知の重合開始剤が使用可能であり、前記したように(A)液材の重合性単量体はラジカル重合性のものが好適であるため、該重合開始剤もラジカル重合性のものが通常使用される。歯科分野で用いられる重合開始剤としては、化学重合開始剤(常温レドックス開始剤)、光重合開始剤、熱重合開始剤等があるが、口腔内で硬化させることを考慮すると、化学重合開始剤が好ましい。
【0057】
化学重合開始剤は、2成分以上からなり、使用直前に全成分が混合されることにより室温近辺で重合活性種を生じる重合開始剤である。このような化学重合開始剤としては、アミン化合物/有機過酸化物系のものが代表的である。
【0058】
アミン化合物を具体的に例示すると、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエタノール−p−トルイジンなどの芳香族アミン化合物が例示される。
【0059】
代表的な有機過酸化物としては、公知のケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリールパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネートに分類される有機過酸化物が好ましい。使用する有機過酸化物は、適宜選択して使用すればよく、単独又は2種以上を組み合わせて用いても何等構わないが、中でもハイドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシエステル類及びジアシルパーオキサイド類が重合活性の点から特に好ましい。さらにこの中でも、硬化性組成物としたときの保存安定性の点から10時間半減期温度が60℃以上の有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0060】
また、アリールボレート化合物が酸により分解してラジカルを生じることを利用した、アリールボレート化合物/酸性化合物系の重合開始剤を用いることもできる。アリールボレート化合物は、分子中に少なくとも1個のホウ素−アリール結合を有する化合物であれば特に限定されず公知の化合物が使用できるが、その中でも、保存安定性を考慮すると、1分子中に3個または4個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物を用いることが好ましく、さらには取り扱いや合成・入手の容易さから4個のホウ素−アリール結合を有するアリールボレート化合物がより好ましい。これらアリールボレート化合物は2種以上を併用しても良い。
【0061】
上記の酸性化合物としては、(A)液材に使用される重合性単量体の一部として、酸性基含有ラジカル重合性単量体を使用することにより機能させても良い。こうした酸性基含有ラジカル重合性単量体としては、1分子中に少なくとも1つの酸性基、又は当該酸性基の2つが脱水縮合した酸無水物構造、あるいは酸性基のヒドロキシル基がハロゲンに置換された酸ハロゲン化物基と、少なくとも1つのラジカル重合性不飽和基とを有する化合物であれば特に限定されず、公知の化合物を用いることができる。ここで酸性基とは、該基を有するラジカル重合性単量体の水溶液又は水懸濁液が酸性を呈す基である。当該酸性基としては、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスフィニコ基{=P(=O)OH}、ホスホノ基{−P(=O)(OH)}等、並びにこれらの基が酸無水物や酸ハロゲン化物等となったものが例示される。
【0062】
また、このようなアリールボレート化合物/酸性化合物系の重合開始剤に更に、有機過酸化物及び/又は遷移金属化合物を組み合わせて用いることも好適である。有機過酸化物としては、前記の通りである。遷移金属化合物としては、+IV価及び/又は+V価のバナジウム化合物が好適である。
【0063】
さらに、化学重合開始剤として好ましいものを例示すれば、(x)ピリミジントリオン誘導体(例えば、1−シクロヘキシル−5−メチルピリミジントリオン、1−シクロヘキシル−5−エチルピリミジントリオン等)、(y)ハロゲンイオン形成化合物(例えば、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等)及び(z)第二銅形成化合物又は第二鉄イオン形成化合物(例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第二銅、オレイン酸銅、アセチルアセトン鉄等)との組み合わせを挙げることができる。この化学重合開始剤系のものは、硬化後の変色が起こりにくく、本発明の硬化性組成物を歯科修復材の目的に使用した場合の開始剤系として特に好ましい。
【0064】
これらの化学重合開始剤は、その複数成分の全てが、(A)液材および(B)粉材の何れか一方に含有されないように、各成分を分けて配合する。その分け方は夫々の成分の、(A)液材または(B)粉材に対する安定性や分散性に応じて適宜に決定すれば良いが、例えば、前記アミン化合物/有機過酸化物系であれば、前者が(A)液材に配合され、後者が(B)粉材に配合されるのが一般的である。また、前記(x)ピリミジントリオン誘導体、(y)ハロゲンイオン形成化合物、及び(z)第二銅形成化合物又は第二鉄イオン形成化合物との組み合わせであれば、(y)ハロゲンイオン形成化合物が(A)液材に配合され、x)ピリミジントリオン誘導体と(z)第二銅形成化合物又は第二鉄イオン形成化合物とが(B)粉材に配合されるのが一般的である。
【0065】
以上説明した、本発明の粉液型歯科用修復材は、液材と粉材とを練和法により混合するタイプのものにおいて適用しても良いが、無機顔料の分散性が良く、色ムラや色調に優れる効果は、液材と粉材とを筆積み法により混合するタイプのものにおいて、特に顕著に発揮されて好ましい。液材と粉材との混合比は特に制限されるものではないが、質量比で粉材/液材が0.2〜10の範囲が好ましく、特に、0.3〜5.0の範囲がより好ましい。
【0066】
粉液型歯科用修復材の具体例としては、義歯の補修や暫間歯等に使用される歯科用常温重合レジン、動揺歯の暫間固定等に使用される歯科用セメント、入れ歯の補修材であるリベース材、更には治療と治療の間において暫定的に歯に詰める仮封材等が挙げられ、このうち特に、筆積み法で使用することの多い即時重合レジン、歯科用セメントに対して適している。
【実施例】
【0067】
次に、本発明の実施例について、比較例と比較しながら説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0068】
各実施例および各比較例において実施した、粉液型歯科用修復材の評価方法は下記のとおりである。
【0069】
(1)硬化体の色調評価法
粉材2.0gを、シリコンラバーカップ(株式会社トクヤマデンタル製「ラバーカップNo.2」)に取り、同様に、液材2.0mlを、シリコンラバーカップ(株式会社トクヤマデンタル製「ラバーカップNo.2」)に取り、筆積み用の筆(株式会社トクヤマデンタル製「トクソー毛筆 No.11」)を用いて7回筆積み操作を行った。個々の筆積み操作で得られる、各粉材と液材の泥粒は、透明なポリプロピレンのシートの上に乗せて硬化させるが、2つ目以降の6個の泥粒は、全て1つ目の泥粒の周囲に接するように配置して硬化させた。得られた硬化体の色調は、ポリプロピレンシートに接する面から観察し、色ムラと、発色点の粗さについて、次の基準で評価した。
<色ムラ>
◎;硬化体から目を30cm離した状態で、色ムラが全く確認できないもの。
○;硬化体から目を30cm離した状態では色ムラが僅かに確認できるものの、硬化体から目を60cm離した状態では、上記色ムラは認識できなくなるもの。
×;硬化体から目を60cm離して観察した状態で、明瞭に色ムラが観察できるもの。
<発色点の粗さ>
◎;硬化体から目を10cm離して観察しても、発色点が目立たないもの。
○;硬化体から目を20cm離して観察した場合には、滑らかに発色しているように感じられるが、目を10cmの距離に近づけて観察すると、濃厚な発色点の散在が認められ、ざらついた感じがするもの。
×;硬化体から目を20cm離して観察した場合でも、濃厚な発色点の散在が認められ、ざらついた感じがするもの。
【0070】
(2)筆積み操作における粉材面の平滑保持性の評価方法
粉材2.0gを、シリコンラバーカップ(ラバーカップNo.2)に取り、同様に、液材2.0mlを、シリコンラバーカップ(株式会社トクヤマデンタル製「トラバーカップNo.2」)に取り、筆積み用の筆(筆 No.11)を用いて、筆積み操作を行なった。筆先に液材を浸み込ませた状態で、粉材面に筆先を接触させ、該筆先に粒子を付着させて筆先を粉材面から離し、該筆先に泥粒を形成した後、粉材面の平滑性を観察し、以下の基準でスコア付けした。
【0071】
0ポイント:筆先に粒子が付着して形成された窪みが、周りの粉材が均一に崩れ落ちることで埋まり、粉材面は再び平坦になっているもの。
【0072】
1ポイント:筆先に粒子が付着して形成された窪みに対して、周囲の粉材が部分的に崩れ落ちて、浅い窪みになっているもの。
【0073】
2ポイント:筆先に粒子が付着して形成された窪みが、そのまま深く残っているもの。
【0074】
この筆積み操作及び観察・スコア付けを5セット行い、各スコアの合計点(最大10点)の小ささで、筆積み操作における粉材面の平滑保持性を評価した。
【0075】
<無機顔料分散有機ポリマー粒子の製造例>
(懸濁重合法による、二酸化チタン分散有機ポリマー粒子の製造)
<製造例1>
重合性単量体である、エチルメタクリレート(以下、「EMA」と称する)とメチルメタクリレート(以下、「MMA」と称する)との質量比50/50の混合物90gに、高分子型分散剤として、EMA−MMA共重合体〔商品名:「ME50−50」根上工業製;質量平均分子量50万、平均粒径50μm、EMA/MMA質量比50/50〕10gを溶解させた溶液99.40gに、白顔料である二酸化チタン(商品名:「CR−50」石原産業製:平均粒子径0.25μm)0.60g混合し、上記白顔料を分散させた。この二酸化チタン分散液を1Lのナスフラスコに入れ、そこに水500mlと、懸濁安定剤としてポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬製)5.0gを添加し、重合開始剤として、日本油脂製の過酸化ベンゾイル(以下、「BPO」と略する)1.0gを添加後、ナスフラスコ内を窒素置換した。以上の後、ナスフラスコ内の反応液を、スターラーチップを回転速度300rpmで攪拌下、湯浴温度70℃で24時間懸濁重合することにより、平均粒径48μmの二酸化チタン分散有機ポリマー粒子を得た。
【0076】
得られた二酸化チタン分散有機ポリマー粒子を800℃の焼成炉で5時間焼成して有機成分を除去して残滓(二酸化チタン)の質量を求めた。これにより、上記二酸化チタン分散有機ポリマー粒子100g中に、二酸化チタンは0.60gが含有されることが分かった。この二酸化チタン分散ポリマー粒子を、「二酸化チタン分散粒子A」と名付けた。
【0077】
<製造例2>
製造例1において、二酸化チタン分散液の組成を、高分子分散剤の溶解した重合性単量体の質量を99.89g、二酸化チタンの質量を0.11gとする以外は、製造例1と同様に実施して、二酸化チタン分散有機ポリマー粒子を得た。この二酸化チタン分散有機ポリマー粒子は、平均粒径が51μmであり、粒子100g中に、二酸化チタン0.11gが含有されるものであった。この二酸化チタン分散ポリマー粒子を、「二酸化チタン分散粒子B」と名付けた。
【0078】
<製造例3>
製造例1において、二酸化チタン分散液の組成を、高分子分散剤の溶解した重合性単量体の質量を99.10g、二酸化チタンの質量を0.90gとする以外は、製造例1と同様に実施して、二酸化チタン分散有機ポリマー粒子を得た。この二酸化チタン分散有機ポリマー粒子は、平均粒径が49μmであり、粒子100g中に、二酸化チタン0.89gが含有されるものであった。この二酸化チタン分散ポリマー粒子を、「二酸化チタン分散粒子C」と名付けた。
【0079】
<製造例4>
製造例1において、二酸化チタン分散液の組成を、高分子分散剤の溶解した重合性単量体の質量を98.50g、二酸化チタンの質量を1.50gとする以外は、製造例1と同様に実施して、二酸化チタン分散有機ポリマー粒子を得た。この二酸化チタン分散有機ポリマー粒子は、平均粒径が49μmであり、粒子100g中に、二酸化チタン1.49gが含有されるものであった。この二酸化チタン分散ポリマー粒子を、「二酸化チタン分散粒子D」と名付けた。
【0080】
<製造例5>
製造例1において、二酸化チタン分散液に対する、懸濁安定剤であるポリアクリル酸ナトリウムの添加量を7gに変更し、さらに、ナスフラスコ内の反応液に対する、スターラーチップの回転速度を500rpmに変更した以外は、製造例1と同様に実施して、二酸化チタン分散有機ポリマー粒子を得た。この二酸化チタン分散有機ポリマー粒子は、平均粒径が14μmであり、粒子100g中に、二酸化チタン0.60gが含有されるものであった。この二酸化チタン分散ポリマー粒子を、「二酸化チタン分散粒子E」と名付けた。
【0081】
<製造例6>
製造例1において、二酸化チタン分散液に対する、懸濁安定剤であるポリアクリル酸ナトリウムの添加量を3gに変更し、さらに、ナスフラスコ内の反応液に対する、スターラーチップの回転速度を200rpmに変更した以外は、製造例1と同様に実施して、二酸化チタン分散有機ポリマー粒子を得た。この二酸化チタン分散有機ポリマー粒子は、平均粒径が177μmであり、粒子100g中に、二酸化チタン0.60gが含有されるものであった。この二酸化チタン分散ポリマー粒子を、「二酸化チタン分散粒子F」と名付けた。
【0082】
<比較製造例1>
製造例1において、二酸化チタン分散液の組成を、高分子分散剤の溶解した重合性単量体の質量を97.50g、二酸化チタンの質量を2.50gとする以外は、製造例1と同様に実施して、二酸化チタン分散有機ポリマー粒子を得た。この二酸化チタン分散有機ポリマー粒子は、平均粒径が50μmであり、粒子100g中に、二酸化チタン2.49gが含有されるものであった。この二酸化チタン分散ポリマー粒子を、「二酸化チタン分散比較粒子A」と名付けた。
【0083】
(懸濁重合法による、酸化鉄分散有機ポリマー粒子の製造)
<製造例7>
EMAとMMAとの重量比50/50の混合物90gに、高分子型分散剤としてME50−50の10gを溶解させた溶液99.40gに、赤顔料である酸化鉄(商品名「JC−FH04」JFEケミカル株式会社製:平均粒子径0.4μm)0.60g混合し、上記赤顔料を分散させた。この酸化鉄分散液を用いて、以後、製造例1と同様に実施して、酸化鉄分散有機ポリマー粒子を得た。この酸化鉄分散有機ポリマー粒子は、平均粒径が51μmであり、粒子100g中に、酸化鉄0.59gが含有されるものであった。この二酸化チタン分散ポリマー粒子を、「酸化鉄分散粒子A」と名付けた。
【0084】
(熱融解・粉砕法による、二酸化チタン分散有機ポリマー粒子の製造)
<製造例8>
室温において、EMA−MMA共重合体であるME50−50と白顔料のCR−50との質量比99.40:0.60の予備混合物50gを、陶製の乳鉢内で10分間混合し、得られた混合物を、150℃で1時間加熱し、上記EMA−MMA共重合体を溶融させた。次いで、該EMA−MMA共重合体が溶融している間に、この混合物を乳鉢内で攪拌混合し、白顔料が内部に均一に分散したポリマー塊を得た。この作業を数回行い、ポリマー塊約200gを得た。これらポリマー塊を充分に冷却した後、これらをロールクラッシャー(ロール同士の隙間5mm)で粉砕した。得られた粉砕物の100gを、直径約5mmのジルコニアボール500gと共に、内容積400mlのジルコニアポットに投入し、更に粉砕した。得られた粉砕物を篩い分けし、目開き75μmの篩いを通過し、目開き32μmの篩い上に残る、平均粒径が約50μmの二酸化チタン分散有機ポリマー粒子を得た。この二酸化チタン分散有機ポリマー粒子は、粒子100g中に、二酸化チタン0.60gが含有されるものであった。この二酸化チタン分散ポリマー粒子を、「二酸化チタン分散粒子G」と名付けた。
【0085】
(圧縮剪断法による二酸化チタン被覆有機ポリマー粒子の製造)
<比較製造例2>
EMA−MMA共重合体であるME50−50と白顔料のCR−50との質量比99.40:0.60の予備混合物300gを、ホソカワミクロン社製の混合複合化装置「ノビルタNOB−103」(登録商標)を用いて混合した。この混合は、上記混合複合化装置の内壁及び攪拌羽をジルコニア製とした乾式にて、出力3kwで実施した。以上により、得られた二酸化チタン担持有機ポリマー粒子の平均粒径は50μmであり、粒子100g中に、二酸化チタンを0.59g担持していることが分かった。この二酸化チタン担持有機ポリマー粒子を、「二酸化チタン担持比較粒子A」と名付けた。
【0086】
これらの各製造例で得られた粒子の平均粒径は、ベックマンコールター製の粒度分布計商品名:「LS230」を用いて、レーザー回折散乱法による体積平均粒径として求めた。
【0087】
以上により、製造された各無機顔料含有有機ポリマー粒子の性状を表1に示した。
【0088】
【表1】

【0089】
実施例1
粉液型歯科用修復材は、(A)液材と(B)粉材とが、下記に示すような組成と製造方法により得たものを用いた。
【0090】
(A)液材
表2に示す組成で液材を調製した。なお、重合性単量体は、メチルメタクリレートを用いた。また、重合開始剤として、N,N−ジメチル−p−トルイジンを用いた。
<液材の製造方法>
重合性単量体(100g)と、重合開始剤(N,N−ジメチル−p−トルイジン1.5g)を容器に入れて、スターラー攪拌機を用いて1時間攪拌して、液材を製造した。
【0091】
(B)粉材
表3に示す組成で粉材を調整した。
有機ポリマー粒子は、二酸化チタン分散粒子AとME50−50との混合物を用い、他に、無機フィラーとして、シリカ(トクヤマ社製、商品名:DM−30)を用いた。また、重合開始剤として、過酸化ベンゾイルを用いた。
<粉材の製造方法>
二酸化チタン分散粒子A(25g)とME50−50(75g)とを揺動ミキサーで1時間混合した後、シリカ(0.3g)と過酸化ベンゾイル(2g)を添加し、揺動ミキサーで更に1時間混合して粉材を製造した。
【0092】
【表2】

【0093】
この粉液型歯科用修復材について、(1)硬化体の色調、(2)筆積み操作における粉材面の平滑保持性を各評価した。結果を表4に示した。
【0094】
実施例2〜8
実施例1において、粉液型歯科用修復材の(B)粉材を構成する二酸化チタン分散粒子Aを、表3に示した他の無機顔料分散ポリマー粒子に変更し、さらに、EMA−MMA共重合体であるME50−50の配合量を表3に示した量にする以外は、実施例1と同様に各実施した。結果を表4に夫々示した。
【0095】
【表3】

【0096】
実施例9
実施例1において、(A)液材に配合する重合開始剤をN,N−ジメチル−p−トルイジン1.5gからジラウリルジメチルアンモニウムクロリド0.15gに変更し、さらに、(B)粉材に配合する重合開始剤を過酸化ベンゾイル2gから1−シクロヘキシル−5−メチルピリミジントリオン1.3gとアセチルアセトン銅0.002gとに変更する以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表4に示した。
【0097】
比較例1,2
実施例1において、粉液型歯科用修復材の(B)粉材を構成する二酸化チタン分散粒子Aを、比較製造例1で製造された二酸化チタン分散比較粒子A、および比較製造例2で製造された二酸化チタン担持粒子Aに各変更する以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表4に夫々示した。
【0098】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性単量体を含む(A)液材と、該(A)液材に溶解性の有機ポリマー粒子を含む(B)粉材とからなり、これら(A)液材または(B)粉材の少なくとも一方には重合開始剤が含有されてなる粉液型歯科用修復材において、
上記(B)粉材に含まれる有機ポリマー粒子の少なくとも一部が、粒子内に無機顔料微粒子が0.1〜2質量%の含有量で分散する無機顔料分散有機ポリマー粒子であることを特徴とする粉液型歯科用修復材。
【請求項2】
有機ポリマー粒子に含有させる無機顔料微粒子の少なくとも一部が二酸化チタンである請求項1記載の粉液型歯科用修復材。
【請求項3】
無機顔料分散有機ポリマー粒子を形成する有機ポリマーが、ポリ低級アルキル(メタ)アクリレートである、請求項1または請求項2記載の粉液型歯科用修復材。
【請求項4】
無機顔料分散有機ポリマー粒子の平均粒子径が10〜200μmである、請求項1〜3の何れか一項に記載の粉液型歯科用修復材。
【請求項5】
粒子内に、無機顔料微粒子が0.1〜2質量%の含有量で分散する、粉液型歯科用修復材における粉材用の無機顔料分散有機ポリマー粒子。
【請求項6】
無機顔料微粒子の少なくとも一部が二酸化チタンである、請求項5記載の無機顔料分散有機ポリマー粒子。
【請求項7】
有機ポリマーが低級アルキル(メタ)アクリレートポリマーである請求項5または請求項6記載の無機顔料分散有機ポリマー粒子。