説明

粉粒体タンクにおけるエアスライド構造

【課題】タンク本体内に敷設されるキャンバスは、溶接火の粉により、焦げつき、焼損の虞れがなく、しかも粉粒体の残留を一層確実に防止して、粉粒体の排出能率を高めることができる粉粒体タンクのエアスライド構造の提供。
【解決手段】粉粒体タンクにおいて、タンク本体内に固定したキャンバス支持フレームFCと押え板20との間に、キャンバス10を挟持して取付ボルト24により固定し、その取付ボルト24を、キャンバス支持フレームFCと押え板20との間に差し込み固定される押え板カバー25により覆い、押え板カバー25は、タンク本体1内の滑り板11の滑り面11Aと、キャンバス10の上面間を滑らかに連絡する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体タンク内に収容される粉粒体を、エアスライドさせて排出するようにした、粉粒体タンクにおけるエアスライド構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントなどの粉粒体を積載する粉粒体タンクをシャシフレームに搭載してなる粉粒体運搬車において、その粉粒体タンク内の底部にキャンバスを敷設し、そのキャンバス上に積載した粉粒体を、キャンバスのメッシュから噴き出す加圧エアにより流動化させて排出管より外部に排出するようにしたエアスライド式の排出手段を備えたものは良く知られている。
【0003】
ところで、かかる粉粒体タンクのエアスライド構造では、粉粒体タンクの底部にキャンバスを固定する支持フレームと、そのタンクの側壁に固定される滑り板の下端部との間に形成される段差空間に粉粒体が残留するのを防止するため、前記支持フレームと滑り板との間に押え板カバーを設けて、粉粒体が滑り板から押え板カバーへ滑らかにスライドしてキャンバスに至るようにされているが、このものでは、押え板カバーが支持フレームおよび滑り板に溶接されるため、その溶接作業時の溶接火の粉により、キャンバスが焦げつき、焼損する虞れがあった。
【0004】
そこで、後記特許文献1に開示されるものでは、キャンバス取付用支持フレームと滑り板との間に、前記押え板カバーをボルト・ナットにより固定し溶接作業を一掃して前記虞れを解消するようにしている。
【特許文献1】実用新案登録第2589410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記特許文献1に開示されるものでは、押え板カバーに、ボルト・ナットの締め付け用の空間が形成されるので、その空間に粉粒体が堆積、残留するばかりでなくボルト・ナットに粉粒体が付着、堆積してメンテナンス性が損なわれるという問題があった。
【0006】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたもので、前記問題を解決した、新規な粉粒体タンクにおけるエアスライド構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的達成のため、本請求項1記載の発明は、タンク本体内にキャンバスを敷設し、このキャンバスによりタンク本体内をエア室と、粉粒体収容室とに区画し、エア室よりキャンバスを通って粉粒体収容室に噴き出す加圧エアにより粉粒体を流動化させてタンク本体内に開口する排出配管から外部に排出するようにした、粉粒体タンクにおいて、
タンク本体内に固定したキャンバス支持フレームと、その上の押え板との間にキャンバスを挟持して取付ボルトにより固定し、その取付ボルトを含むキャンバス取付部を、前記キャンバス支持フレームと押え板との間に差し込み固定される押え板カバーにより被覆し、該押え板カバーは、タンク本体の内面に固定される滑り板の滑り面と、キャンバスの上面間を連絡するようにされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本請求項1記載の発明によれば、キャンバスは、キャンバス支持フレームと押え板との間に取付ボルトをもって固定され、取付ボルトを含むキャンバスの取付部は、その全域にわたて押え板カバーによって被覆され、しかもこの押え板カバーは、押え板とキャンバス支持フレームとの間に差し込み固定され、その固定にあたり、従来の溶接作業を必要としない。したがって、キャンバスは、溶接火の粉により、焦げつき、焼損の虞れがなく、しかも固定用取付ボルトを含むキャンバス取付部は、その全域が押え板カバーにより万遍なく覆われて、粉粒体の滞留する空間部が取付ボルトの周囲に存在しないので、粉粒体の残留を一層確実に防止して、粉粒体の排出能率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【0010】
図1〜6は、本発明の一実施例を示すものであり、図1は、本発明にかかる粉粒体タンクを備えた粉粒体運搬車の全体側面図、図2は、図1の2−2線に沿う拡大断面図、図3は、図2の3−3線に沿う拡大断面図、図4は、図3の4−4線に沿う断面図、図5は、パンチプレートの斜視図、図6は、図4の6矢視仮想線囲い部分の拡大図である。
【0011】
図1において、粉粒体運搬車のシャシフレームCF上には、サブフレームSFが一体に設けられ、このサブフレームSF上に粉粒体タンクPTが搭載されている。粉粒体タンクPTは、前後方向に長い筒状のタンク本体1を備えており、このタンク本体1は、その前後に湾曲状に膨出する前後部端板1f,1rを有して密閉状に形成されており、その底部に収容粉粒体を排出するためのエアスライド構造を備えている。
【0012】
タンク本体1の底壁1bは、その前後端板より中央部に向かって下向きに傾斜しており、そのタンク本体1の底部にはキャンバス10が敷設され、このキャンバス10により、タンク本体1内は、エア室CAと、その上の粉粒体収容室CPとに区画されており、エア室CAに、シャシフレームCFに設けられるエアコンプレッサ3の吐出口がエア配管2を介して連通され、エアコンプレッサ3からの加圧エアが圧送されるようにされる。
【0013】
また、タンク本体1には、粉粒体収容室CPと外部とを連通する排出管4が設けられ、該排出管4の吸込部は、粉粒体収容室CP内を下向きに湾曲されていて、その吸込口4pは、漏斗状に拡開されて、タンク本体1の中央部においてキャンバス10の最低部上に開口しており、流動化した粉粒体は、この排出管4を通って外部に排出される。
【0014】
また、粉粒体タンクPTの上面には、粉粒体の投入用の数個のマンホール5が開口され、これらのマンホール5は、マンホール蓋6により開閉される。
【0015】
つぎに、図1〜6を参照して、タンク本体1内の収容粉粒体を排出するためのエアスライド構造について説明する。
【0016】
図3,4に示すように、タンク本体1の側壁内面には、その全域にわたり滑り板11が配設される。この滑り板11は、その上縁がタンク本体1の内面に溶接されている。滑り板11は、タンク本体1の中央部に向かって下り勾配に傾斜する滑り面11Aを備える。そして、滑り面11Aの傾斜角は、タンク本体1内に収容される粉粒体の安息角よりも若干大きくされている。滑り板11には、その下端より略鉛直に屈曲されて下向きに延長するキャンバス支持壁12が一体に形成されていて、その下端は、タンク本体1の底壁1b内面に溶接されている。
【0017】
キャンバス支持フレームFCを構成するキャンバス支持壁12の上下中間部には、その全長に亘ってキャンバス支持プレート13が溶接される。このキャンバス支持プレート13は、図6に明瞭に示すように、略平坦なキャンバス支持面13Aと、そこから内方に向かって下向きに傾斜するパンチプレート支持面13Bとを備え、キャンバス支持面13A上に、後に述べるように、キャンバス10の外側部が取り付けられる。キャンバス支持面13Aには、その長手方向に間隔をあけて複数のボルト孔23が穿設されると共にその裏面にはそれらのボルト孔23に対応してウエルドナット22が溶接されている。
【0018】
しかして、前記キャンバス支持壁12とキャンバス支持プレート13とは、本発明に係るキャンバス支持フレームFCを構成している。
【0019】
タンク本体1の底壁1bの幅方向の中央部には、中央支持フレーム14が、その全長に亘り固定されており、この中央支持フレーム14は、後の述べるようにキャンバス10の浮き上がりを防止すべく、その上面に、キャンバス10の中間部が固定される。
【0020】
キャンバス支持プレート13および中央支持フレーム14には、キャンバス10を敷設するためのパンチプレート群15が取り付けられる。パンチプレート群15は、複数のパンチプレート16および一対の中央部パンチプレート17とより構成されて、キャンバス支持プレート13と、中央支持フレーム14上に橋架固定される。図2に示すように、パンチプレート群15は、左右2列に並列して左右キャンバスプレート13と中央支持フレーム14上に前後に連続して縦列配置される。そして、パンチプレート16,17の外側縁は、前記キャンバスプレート13上に載置され、また、それらの内側縁は中央支持フレーム14に係合溶接される。
【0021】
図3に示すように、パンチプレート群15の上面は、タンク本体1の前後端部よりその中央部に向けて下り勾配に傾斜されている。また、図4,5に示すように、パンチプレート16,17の上面は、タンク本体1の左右両側部からタンク本体1の底部の中央軸線L−Lに向けて、すなわちキャンバス支持プレート13から中央支持フレーム14に向けて水平面に対して所定の傾斜角をもって下り勾配に傾斜して設けられる。
【0022】
キャンバス支持プレート13のキャンバス支持面13A上には、これと協働してキャンバス10の外側部を挟持固定する押え板20が設けられる。この押え板20は、断面L字状をなす帯状の板材により構成されていて、図6に明瞭に示すように、平坦な押え部20Aと、その押え部20Aから略直角に起立する差込案内部20Bとを備えており、前記押え部20Aは、キャンバス支持プレート13の支持面13Aに対面し、一方、前記差込案内部20Bは、前記鉛直なキャンバス支持壁12に、挟持間隙dをあけて対面される。各押え板20の押え部20Aには、その長手方向に間隔をあけて複数のボルト孔21が穿設されており、これらのボルト孔21は、キャンバス支持プレート12に穿設した前記ボルト孔23に対応している。
【0023】
図6に示すように、前記パンチプレート群15上に敷設されるキャンバス10の外側部をキャンバス支持プレート13と押え板20との間に挟んだのち、取付ボルト24をボルト孔21、23を通してウエルドナット22に螺締すれば、キャンバス10の外側部をキャンバス支持プレート13と、押え板20との間に挟持固定することができる。
【0024】
キャンバス10の外側部の、取付ボルト24を含む取付部は、押え板カバー25により覆われる。この押え板カバー25は押え板20に対応するように設けられており、図6に示すように、断面逆V字状に形成されていて、略鉛直な差込部25Aと、この差込部25Aに上縁から内方に向かって下向きに傾斜するカバー部25Bとより構成されていて、その差込部25Aはをキャンバス支持壁12と押え板20の差込案内部20B間の挟持間隙dに差し込まれることにより、それらの間に摩擦挟持される。これにより、押え板カバー25をキャンバス支持壁12と押え板20間に着脱可能に取り付けることができる。そして、押え板カバー25のカバー部25Bは、押え板20および取付ボルト24を覆うと共に滑り板11の滑り面11Aと、キャンバス10の上面間を滑らかに連続的に連絡させることができ、それらの間に段差が形成されることがない。したがって、粉粒体収容室CPに収容される粉粒体は、滑り板11より押え板カバー25を通ってキャンバス10へと円滑に流れ、キャンバス10の取付部に粉粒体が滞留することがない。
【0025】
キャンバス10は、加圧エアによる上方への膨らみを防止するため、その幅方向の中央部が固定される。タンク本体1の底壁1bに固定される前記中央支持フレーム14の上面には、図2,4に示すように、中央部パンチプレート17に対応する部分を除いて押付部材27が取り付けられる。この押付部材27には、その長手方向に間隔をあけて複数のボルト孔28が穿設され、また、それらのボルト孔28に対応して中央支持フレーム14の上壁裏面にはウエルドナット29が溶接されている。中央支持フレーム14の上面には、中央部パンチプレート18に対応する部分を除いてキャンバス10を挟んで押付部材27を載置したのち、ボルト孔28、キャンバス10および中央支持フレーム14を貫通したボルト28をウエルドナット29に螺締することにより、図6に示すように、キャンバス10の左右幅方向の中央部を中央支持フレーム14上に固定することができる。
【0026】
つぎに、この実施例の作用について説明する。
【0027】
いま、エアコンプレッサ3を駆動してエア配管2を通してエア室CAに加圧エアを圧送すれば、この加圧エアはキャンバス10のメッシュを通過して粉粒体収容室CP内に噴出し、該室CP内の粉粒体を流動化させる。このとき、滑り板11の滑り面11A上の粉粒体は、該滑り面11Aより押え板カバー25のカバー部25B上を経てキャンバス10上をスライドされるが、滑り板11の滑り面11Aとカバー部25の上面とは略面一に形成されるので、粉粒体の滑り板11からキャンバス10へのスライドが円滑に行われて、粉粒体の流動化を促進することができ、取付ボルト24を含むキャンバス10の取付部に粉粒体が残留することが殆どない。そして、流動化された粉粒体は、排出管4を通って外部に排出される。
【0028】
ところで、この実施例のものでは、キャンバス10の外側部は、キャンバス支持フレームFC、すなわちキャンバス支持壁12に固定したキャンバス支持プレート13と押え板20との間に取付ボルト24をもって固定され、取付ボルト24を含むキャンバス10の取付部は、その全域にわたて押え板カバー25によって被覆され、しかもこの押え板カバー25は、押え板20とキャンバス支持壁12との間に差し込み固定され、その固定にあたり、従来の溶接作業を必要としない。したがって、キャンバス10は、溶接火の粉により、焦げつき、焼損の虞れがなく、しかも固定用取付ボルト24を含むキャンバス10の取付部は、その全域が押え板カバー25により万遍なく覆われて、粉粒体の滞留する空間部(前記特許文献1のもの)が取付ボルトの周囲に存在しないので、粉粒体の残留を一層確実に防止して、粉粒体の排出能率を高めることができる。
【0029】
図7には、本発明の実施例の変形例が示される。
【0030】
この変形例では、前記押え板20の差込案内部20Bの上端に、案内片20B′を屈曲形成して、押え板カバー25の差込部25Aを、挟持間隙dに差込易くしている。
【0031】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
【0032】
たとえば、前記実施例では、本発明エアスライド構造を、粉粒体運搬車の粉粒体タンクに実施した場合を説明したが、これを他の粉粒体タンクにも実施できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明にかかる粉粒体タンクを備えた粉粒体運搬車の全体側面図
【図2】図1の2−2線に沿う拡大断面図
【図3】図2の3−3線に沿う拡大断面図
【図4】図3の4−4線に沿う断面図
【図5】パンチプレートの斜視図
【図6】図4の6矢視仮想線囲い部分の拡大図
【図7】図6に対応した図(変形例)
【符号の説明】
【0034】
1・・・・・・・・タンク本体
4・・・・・・・・排出管
10・・・・・・・・キャンバス
11・・・・・・・・滑り板
11A・・・・・・・滑り面
12・・・・・・・・キャンバス支持壁
13・・・・・・・・キャンバス支持プレート
20・・・・・・・・押え板
24・・・・・・・・取付ボルト
25・・・・・・・・押え板カバー
CA・・・・・・・・エア室
CP・・・・・・・・粉粒体収容室
FC・・・・・・・・キャンバス支持フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体(1)内にキャンバス(10)を敷設し、このキャンバス(10)によりタンク本体(1)内をエア室(CA)と、粉粒体収容室(CP)とに区画し、エア室(CA)よりキャンバス(10)を通って粉粒体収容室(CP)に噴き出す加圧エアにより粉粒体を流動化させてタンク本体(1)内に開口する排出管(4)から外部に排出するようにした、粉粒体タンクにおいて、
タンク本体(1)内に固定したキャンバス支持フレーム(FC)と、その上の押え板(20)との間にキャンバス(10)を挟持して取付ボルト(24)により固定し、その取付ボルト(24)を含むキャンバス取付部を、前記キャンバス支持フレーム(FC)と押え板(20)との間に差し込み固定される押え板カバー(25)により被覆し、該押え板カバー(25)は、タンク本体(1)の内面に固定される滑り板(11)の滑り面(11A)と、キャンバス(10)の上面間を連絡するようにされていることを特徴とする、粉粒体タンクにおけるエアスライド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−131368(P2006−131368A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323631(P2004−323631)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】