粒子、および粒子の製造方法
【課題】有機重合体とポリシロキサンを構成として有し且つ表面が非平滑な粒子、およびこの粒子の製造方法の提供。
【解決手段】粒子は、有機重合体とラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサンとが複合化し、表面に複数の凹部および/または凸部が存在する。粒子の製造方法は、ラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサン粒子を製造するシード粒子製造工程と、このオルガノポリシロキサン粒子に1個のラジカル重合性二重結合を有する単官能単量体および3個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能単量体を吸収させる吸収工程と、これらの吸収させた単官能単量体および多官能単量体を重合させる重合工程とを有する。
【解決手段】粒子は、有機重合体とラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサンとが複合化し、表面に複数の凹部および/または凸部が存在する。粒子の製造方法は、ラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサン粒子を製造するシード粒子製造工程と、このオルガノポリシロキサン粒子に1個のラジカル重合性二重結合を有する単官能単量体および3個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能単量体を吸収させる吸収工程と、これらの吸収させた単官能単量体および多官能単量体を重合させる重合工程とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の構成粒子としても使用できる粒子、および当該粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
懸濁重合、シード重合、分散重合、乳化重合等の従来公知の重合方法により得られる粒子の形状は、真球状になることが一般的である。例えば、特許文献1に開示されている(メタ)アクリロキシ基を有するポリシロキサン粒子であって、この構造中にビニル系重合体を含む粒子は、真球状の粒子である。粒子が真球状になることは、当該形状が粒子生成過程においてエネルギー的に最も安定であるためと考えられている。得られた真球状粒子は、光学フィルムにおける光散乱粒子等の光学部材用途に利用されており、光を十分に散乱させるために、光学部材への真球状粒子の添加量をある程度多くすることが通常である。しかし、粒子の添加量を多くすることは、光学部材自体の光線透過率の低下を引き起こして、光学部材性能が低下する場合があった。
【0003】
また、真球状粒子以外の粒子として、例えば特許文献2〜5に開示されている通り、多孔質粒子が知られている。特許文献2には、水中に分散した重量平均分子量が1万〜30万の重合体シード粒子に、架橋性単量体及び重合開始剤を吸収させた後、架橋性単量体を重合させて製造された多孔質粒子が開示されている。特許文献3には、シード粒子に加水分解性を有する重合性官能基を複数有している単量体を膨潤乃至吸収させ、この単量体の重合を行い、次いで酸またはアルカリ処理を行ってその単量体の重合物を除去することにより製造された中空多孔質重合体粒子が開示されている。特許文献4には、数平均粒子径が1〜30μm、BET比表面積が0.1〜80m2/gである多孔質粒子が開示されている。特許文献5には、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂で構成された多孔質粒子が開示されている。
【0004】
上記特許文献2〜5等に開示されている公知の多孔質粒子は、いずれも非架橋性有機シード粒子または非架橋性有機重合体を出発原料とし、シード重合、ポリマー溶解法、またはポリマー析出法により多孔質構造が形成されたものである。このような粒子は、非架橋性有機粒子が高い原料比率となるため、耐溶剤性が低い。そのため、樹脂または溶剤と、粒子と配合して使用する場合には、粒子の膨潤によりその配合物の粘度が上昇する等の問題が生じることがあった。
【特許文献1】特開2003−183337号公報
【特許文献2】特開2000−191818号公報
【特許文献3】特開2006−131738号公報
【特許文献4】特開2007−219183号公報
【特許文献5】特開2002−265529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリシロキサンを構成部材として有し、多孔質粒子のような表面が非平滑な粒子であれば、光学部材への粒子添加量を増加させなくとも優れた特性を発揮する光学部材を実現できると共に、耐溶剤性にも優れると予想される。しかし、本出願人が知る限り、そのような粒子は実現されていない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、ポリシロキサンを構成として有し、表面が非平滑な粒子、および当該粒子の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が、有機ポリマーとポリシロキサンとを構成部材として有し、かつ、表面が非平滑な粒子を実現するべく鋭意検討した結果、これら構成部材が複合化した表面非平滑粒子を実現するに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る粒子は、有機重合体とラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサンとが複合化し、表面に複数の凹部および/または凸部が存在することを特徴とする。本発明における「複合化」とは、有機重合体がオルガノポリシロキサン骨格間に入り込んでいることを意味する。また、「凹部および/または凸部」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用し、倍率5000倍で観察できる凹部および/または凸部である。
【0009】
前記各凹部は不規則形状であっても良い。また、前記表面の形状は房状であっても良い。
【0010】
前記有機重合体は、1個のラジカル重合性二重結合を有する単官能単量体と3個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能単量体との重合体であると良い。前記多官能単量体は、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルであると良い。前記多価アルコールは、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリメチロールプロパンから選択された一種または二種以上であると良い。
【0011】
前記オルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で表される一種または二種以上のケイ素化合物を縮合させて製造されたものであると良い。下記一般式(1)で表されるケイ素化合物のR1の少なくとも一種が、エポキシ基を有する有機基であると良い。
R1nSi(OR2)4-n (1)
(一般式(1)中、R1はラジカル重合性不飽和結合を有さない有機基を表し、nは1または2を表し、R2は水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0012】
本発明に係る粒子は、樹脂を含む樹脂組成物の材料に適している。この樹脂組成物を使用して、光拡散フィルム、光拡散板、防眩フィルムを製造できる。また、本発明に係る粒子は、導体層が少なくとも一部に形成された導電性粒子の材料に適している。
【0013】
本発明に係る粒子の製造方法は、ラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサン粒子を製造するシード粒子製造工程と、1個のラジカル重合性二重結合を有する単官能単量体および3個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能単量体を、前記オルガノポリシロキサン粒子に吸収させる吸収工程と、前記単官能単量体および多官能単量体を重合させる重合工程とを有することを特徴とする。
【0014】
前記吸収工程における多官能単量体は、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルであると良く、その多価アルコールは、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリメチロールプロパンから選択された一種または二種以上であると良い。
【0015】
前記シード粒子製造工程において、上記一般式(1)で表される加水分解性ケイ素化合物を縮合させることにより前記オルガノポリシロキサン粒子を製造することが良く、そのケイ素化合物のR1の少なくとも一種がエポキシ基を有する有機基であると良い。
【発明の効果】
【0016】
表面に複数の凹部および/凸部が存在する本発明に係る粒子によれば、当該粒子の使用量が少量であっても優れた光学部材を得ることができる。例えば、光線透過率および輝度共に優れた光拡散フィルム、光拡散板等を本発明の粒子により実現できる。
【0017】
また、有機重合体だけではなくオルガノポリシロキサンをも構成とする本発明に係る粒子は、樹脂と混合された場合であっても、膨潤が抑えられる。従って、取り扱い易い樹脂組成物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(粒子)
本発明に係る粒子は、その表面に複数の凹部および/または複数の凸部が存在し、かつ、有機重合体とラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサンとが複合化して構成された粒子である。
【0019】
本発明に係る粒子表面に存在する凹部および/または凸部は、複数の不規則形状の凹部、房状等である。ここで「房状」とは、第一粒子に、この第一粒子よりも小さな複数の第二粒子が融着したような外観形状をいう。
【0020】
本発明に係る粒子における凹凸部を無視した全体形状は、略球状、略針状、略板状、略鱗片状、略俵状、略繭状等、特に限定されないが、通常、略球状である。
【0021】
粒子の平均粒子径は、0.1〜200μmであると良く、0.5〜100μmであると好ましく、1〜50μmであるとより好ましい。平均粒子径が0.1〜200μmの範囲であれば、有機重合体とオルガノポリシロキサンとの比率を広く変化させることが可能なので、本発明に係る粒子の硬度、破壊強度等の機械的特性を適宜に設定できる。また、平均粒子径が0.1μm未満であると、有機重合体の比率を高めることが困難になり、200μmを超えると、有機重合体を形成させるための重合反応において粒子が不安定になりやすく、後記単量体の量が非常に多くなって、本発明に係る粒子同士の凝集が生じ易くなる。なお、粒子の平均粒子径には、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置で測定した体積平均粒子径を採用する。
【0022】
この本発明粒子の粒子径における変動係数は、特に限定されない。しかし、この変動係数は、小さいことが要求される場合があるので、20%以下であると良く、10%以下でると好ましく、5%以下であるとより好ましい。この変動係数は、粒子の平均粒子径と、粒子の粒子径の標準偏差とを次式(A)に当てはめて求められる値である。
式(A):本発明粒子の変動係数(%)=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
【0023】
粒子を構成する有機重合体は、その分子量が特に限定されるものではなく、当該粒子の構成となっているオルガノポリシロキサン骨格間に存在する。この存在を確認するためには、例えば、加熱されたトルエン等の有機溶剤に粒子を添加し、添加前後の粒子の質量変化を確認する方法(質量変化がないことは、有機重合体がオルガノポリシロキサン骨格間に存在することを意味する。);粒子の切断面を観察することにより、有機重合体の存在を確認する方法;赤外吸収スペクトル分析により、有機重合体由来の官能基の存在を確認する方法;等が挙げられる。
【0024】
有機重合体は、特に限定されず、一種または二種以上であっても良い。有機重合体としては、例えば、(メタ)アクリル系重合体;スチレン系重合体;酢酸ビニル系重合体;環状オレフィン系重合体;塩化ビニル系重合体;塩化ビニリデン系重合体;これらの共重合体;などが挙げられる。これらの有機重合体は、単独で用いても2種以上を併用しても良く、また、アミノ基、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基などの官能基で部分的に変性されていても良い。
【0025】
好ましい有機重合体は、1個のラジカル重合性二重結合を有する単官能単量体と3個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能単量体との重合体である。より好ましい有機重合体は、前記有機重合体の多官能単量体が多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルであるもの、より好ましい有機重合体は、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリメチロールプロパンから選択された一種または二種以上が前記多価アルコールであるものである。
【0026】
粒子を構成するオルガノポリシロキサンは、ラジカル重合性不飽和結合を有さない限り、特に限定されない。好ましくは、下記一般式(1)で表される一種または二種以上のケイ素化合物が加水分解縮合したオルガノポリシロキサンである。前記ケイ素化合物としては、エポキシ基を有する基を備えるケイ素化合物が好ましい。
R1nSi(OR2)4-n (1)
(一般式(1)中、R1はラジカル重合性不飽和結合を有さない有機基を表し、nは1または2を表し、R2は水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0027】
また、粒子中におけるオルガノポリシロキサンの比率は、特に限定されない。粒子中においてSiO2量が0.1〜80質量%となるオルガノポリシロキサン量が一般的であり、当該量は、0.5〜70質量%が好ましく、1.0〜60質量%がより好ましい。
【0028】
(粒子の製造方法)
ラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサン粒子を製造するシード粒子製造工程と、所定の単量体をそのオルガノポリシロキサン粒子に吸収させる吸収工程と、オルガノポリシロキサン粒子に吸収させた所定の単量体を重合させる重合工程とを有する方法を使用すれば、本発明に係る粒子を製造できる。
【0029】
シード粒子製造工程:
シード粒子製造工程では、シード粒子を製造する。この「シード粒子」とは、シロキサン結合の三次元ネットワーク体を主要構成とするオルガノポリシロキサン粒子であり、非ラジカル重合性の有機基を有するが、ラジカル重合性の有機基を有さない。
【0030】
シード粒子製造工程では、下記一般式(1)で表される加水分解性ケイ素化合物の一種または二種以上を加水分解縮合させることにより、シード粒子を製造することが好適である。この好適なシード粒子の製法は本発明に係る粒子の製造方法において使用するシード粒子の製法の一態様であり、公知の製法によっても本発明方法で使用するシード粒子を製造できる。
R1nSi(OR2)4-n (1)
(一般式(1)中、R1はラジカル重合性不飽和結合を有さない有機基を表し、nは1または2を表し、R2は水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0031】
上記一般式(1)で表されるケイ素化合物が有するR1は一種または二種である。R1としては、例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基、デシル基等のアルキル基;3,4−エポキシシクロヘキシル基、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、グリシドキシプロピル基等のエポキシ基を有する基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;が挙げられる。これらの例示の内、エポキシ基を有する基とアルキル基とをR1として有するケイ素化合物が好ましい。
【0032】
上記一般式(1)で表されるケイ素化合物が有する水素原子以外のR2としては、例えば、メチル基、エチル基である。
【0033】
n=1である一般式(1)で表されるケイ素化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシブチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。n=2である一般式(1)で表されるケイ素化合物の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ジフェニルシランジオールが挙げられる。
【0034】
溶媒中で、上記ケイ素化合物の加水分解縮合を行う。この縮合の際には、必要に応じて、ケイ素化合物を加水分解縮合させるための触媒も溶媒に含ませる。
【0035】
上記溶媒には、水と一種または二種以上の有機溶媒との混合溶媒を使用する。ここでは、ケイ素化合物および水を溶解し、必要に応じて後記触媒を溶解する有機溶媒;または、水と触媒とのミセルを均一に分散させることができる有機溶媒;を使用すると良い。そのような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル;イソオクタン、シクロヘキサン等のパラフィン;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;が挙げられる。メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールを選択すれば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基をオルガノポリシロキサン粒子表面に多く存在させることができる。なお、水や触媒と相溶しない有機溶媒を用いることもできるが、この場合には、水および触媒を均一に分散させるために界面活性剤を溶媒に添加すると良い。
【0036】
触媒を使用する場合、アンモニア;加熱によりアンモニアを発生し得る尿素等のアンモニア発生剤;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン;シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ベンジルアミン等の芳香族アミン;テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の4級アンモニウムハイドロオキサイド;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;等の塩基性触媒を使用すると良く、これらの中でも、シード粒子の粒子径制御が容易なアンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、アルカノールアミンが好ましい。また、得られるシード粒子における触媒残存量を少なくし易い観点からは、沸点が低いアンモニア、炭素数1〜4の脂肪族アミンが好ましく、加水分解縮合の促進に優れたアンモニアが特に好ましい。
【0037】
触媒濃度を調整すると、調製されるシード粒子の形状や粒子径、溶媒中におけるケイ素化合物の溶解状態に影響を及ぼすことがある。溶媒における触媒濃度は、通常、0.001モル/L以上、10モル/L以下であると良く、0.01モル/L以上、1モル/L以下であると好ましい。0.001モル/L未満では、加水分解反応速度を高めるための触媒効果が出ない場合があり、10モル/Lを超えると、得られるシード粒子の粒度分布が広くなる恐れがある。
【0038】
上記ケイ素化合物の縮合を行なう場合、溶媒にケイ素化合物を添加する。このときの添加態様は、特に限定されず、様々な方法を採用できる。例えば、(1)溶媒にケイ素化合物を一括して添加し、攪拌する方法、(2)溶媒を攪拌しながら、ケイ素化合物を数回に分けてその溶媒に添加する方法、(3)溶媒を攪拌しながら、ケイ素化合物を連続的に添加する方法、(4)ケイ素化合物を含有する有機溶媒を予め調製し、この有機溶媒を前記(1)〜(3)のいずれかの方法で添加する方法、である。
【0039】
また、使用する水および触媒も有機溶媒または溶媒(水と有機溶媒とからなるもの)に添加する。このときの添加態様も、特に限定されず、様々な方法を採用できる。例えば、初めに一括して添加する方法、数回に分けて添加する方法、連続的に添加する方法である。
【0040】
ケイ素化合物の加水分解縮合反応を生じさせる際の温度は5〜50℃が好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜35℃が更に好ましい。5℃未満であると加水分解縮合が進行し難い恐れがあり、50℃を超えると、触媒や溶媒が揮発して反応が進行し難くなることや粒子が凝集することがある。
【0041】
また、上記加水分解縮合の反応時間は、30分以上が良く、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。また、この時間は、100時間以下が良く、20時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましい。反応時間が30分以上であれば、ケイ素化合物の加水分解縮合が十分進行し、100時間以下であれば、シード粒子同士の合着や凝集を生じさせることなく加水分解縮合を進行させることができる。
【0042】
以上の条件により、シード粒子が分散する乳濁液を得ることができる。当該乳濁液中には粗大なシード粒子が含まれている場合があり、この粗大粒子を除去する必要があれば、フィルターでその除去が可能である。シード粒子の平均粒子径よりも1μm以上大きな目開きのフィルターを使用すれば、粗大なシード粒子を除去できる。上記フィルターは、空隙を持つメッシュであってもよい。
【0043】
得られた乳濁液中のシード粒子の形状は、通常、粒子形成過程においてエネルギー的に安定な真球状乃至略球状である。シード粒子の形状により、本発明に係る粒子の形状が定まる。例えば、シード粒子が真球状乃至略球状であれば、本発明に係る粒子における凹凸部を無視した全体形状は、略球状になる。
【0044】
シード粒子の平均粒子径は、特に限定されない。0.1〜100μmであることが通常であり、0.3〜50μmであると好ましく、0.5〜30μmがより好ましい。シード粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、シード粒子に単量体を十分に吸収させることができない場合があり、平均粒子径が100μmを超えると、製造過程においてシード粒子が沈降してシード粒子凝集体が形成されやすくなる。シード粒子の平均粒子径には、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置で測定した体積平均粒子径を採用する。
【0045】
シード粒子における粒子径の変動係数は特に限定されないが、均質な本発明に係る粒子を製造するためには変動係数が小さいことが望まれる。従って、この変動係数は、20%以下であると良く、10%以下であると好ましく、5%以下であるとより好ましい。上記平均粒子径の測定と同時に測定された体積基準粒度分布の標準偏差、および平均粒子径を次式(B)に当てはめれば、シード粒子の変動係数を算出できる。
式(B):シード粒子の変動係数(%)=標準偏差/平均粒子径×100
【0046】
吸収工程:
吸収工程では、シード粒子中に有機重合体原料となる単量体を吸収させる。当該吸収は、シード粒子に前記単量体を添加するものであっても良いが、本発明に係る粒子の製造効率の観点からは、上記シード粒子製造工程で得られた乳濁液と前記単量体を含むエマルションとを混合する。この単量体エマルションを混合する吸収工程を以下に詳述する。
【0047】
単量体エマルションは、エマルション溶媒、乳化剤、単量体(「単量体」とは「単官能単量体」と「多官能単量体」の総称である。以下、同じ。)、重合開始剤を含有する。また、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、難燃剤、酸化防止剤等の添加剤も、必要に応じて、単量体エマルションに含有されている場合がある。
【0048】
上記エマルション溶媒としては、安価な水を使用すると良い。エマルション溶媒の使用量は、特に限定されないが、単量体エマルション全量を100質量部とした場合に20〜70質量部である。
【0049】
乳化剤は、単量体エマルションにおける単量体の分散を高めると共に、吸収工程において効率良くシード粒子に単量体を吸収させるために使用する。ここでは、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、高分子界面活性剤等の公知の界面活性剤から選択したものを、乳化剤として使用できる。アニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤から選択された一種または二種以上の界面活性剤を使用することが、単量体の吸収性が優れると共に、溶媒中におけるシード粒子の分散性にも優れるので好ましく、中でも後に詳述する重合工程における粒子の分散性に優れるアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0050】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムラウリルサルフェート、ナトリウムラウリルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィンアルカリ金属塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;が挙げられる。
【0051】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、アミド型ジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルイミダゾリニウム塩が挙げられる。
【0052】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型が挙げられる。
【0053】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル等のポリオキシエチレンエーテル;ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールのモノラウレート等のポリオールと脂肪酸のモノエステル;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪酸アミン、アミドまたは酸(ホウ酸、リン酸等)との縮合生成物;が挙げられる。
【0054】
高分子界面活性剤としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびその変性物;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム等のポリ(メタ)アクリル酸塩系高分子;ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有高分子;ポリビニルピロリドン等;これらの高分子の構成単量体を含む共重合体;が挙げられる。
【0055】
乳化剤の使用量は、単官能単量体と多官能単量体の総量100質量部に対して、0.01〜10質量部であると良く、0.05〜5質量部であると好ましく、0.1〜2質量部であるとより好ましい。乳化剤の使用量が0.01質量部未満では、単量体の分散が不安定になることがあり、一方10質量部を超えると、重合工程において副反応が併発する恐れがある。
【0056】
単官能単量体はラジカル重合性二重結合を1個有する単量体であり、一種または二種以上の単官能単量体が選択されていると良い。
【0057】
単官能単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、等のポリエチレングリコール成分を有する単量体;(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等のアルキル(メタ)アクリレート;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタンフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロアミル(メタ)アクリレート等のフッ素原子含有(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルマン、α−クロロスチレン、0−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;環状オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩化オレフィン;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等を用いることが好ましい。
【0058】
単官能単量体の使用量は、単官能単量体と多官能単量体の総量100質量部に対して、20〜90質量部であると良く、30〜80質量部であると好ましく、50〜70質量部であると更に好ましい。
【0059】
多官能単量体は、3個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体である。一種または二種以上の多官能単量体を使用することで、表面に複数の凹部および/または凸部が存在する本発明に係る粒子を製造できるのである。
【0060】
単量体エマルション調製工程では、一種または二種以上の公知の多官能単量体を使用することができ、多官能単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のメチロール系エステル;ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のエリスリトール系エステル;ジアリルフタレート等のアリル系エステル;トリアリルイソシアヌレートおよびその誘導体;などが挙げられる。
【0061】
多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルから選択された一種または二種以上の多官能単量体を使用することが好ましい。より好ましい多官能単量体は、前記エステルを構成する多価アルコールがペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリメチロールプロパンから選択された一種または二種以上である多官能単量体である。
【0062】
本発明に係る粒子の表面形状は、多官能単量体が有するラジカル重合性二重結合の数により変化する。例えば、6個のラジカル重合性二重結合を有するジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを使用した場合には、本発明に係る粒子の表面には不規則形状の凹部が複数存在することになり、4個のラジカル重合性二重結合を有するペンタエリスリトールテトラアクリレートを使用する場合には、本発明に係る粒子の表面形状が房状になり、3個のラジカル重合性二重結合を有するペンタエリスリトールトリアクリレートを使用する場合には、本発明に係る粒子の表面形状が房状、かつ、当該房状を構成する凸部がペンタエリスリトールテトラアクリレートを使用した場合よりも小さくなる。
【0063】
多官能単量体の使用量は、単官能単量体と多官能単量体の総量100質量部に対して、10〜80質量部であると良く、20〜70質量部であると好ましく、30〜50質量部であると更に好ましい。
【0064】
重合開始剤には、一種または二種以上の過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等の公知のラジカル重合用重合開始剤を使用すると良い。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドが挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
【0065】
重合開始剤の使用量は、単量体(単官能単量体と多官能単量体)の総量100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部であると良く、1質量部〜5質量部であると好ましい。
【0066】
単量体エマルションの調製では、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ラインミキサーなどの高速撹拌機を使用すると良い。
【0067】
上述の通り、シード粒子製造工程で得られた乳濁液と単量体エマルションを混合することにより、シード粒子に単量体を吸収させる。このときに使用する単量体エマルションの量は、当該エマルション中の単量体の総量がシード粒子調製工程で使用したケイ素化合物の質量の0.01倍〜100倍となる量であると良く、0.1〜50倍となる量であると好ましく、0.5〜30倍になる量であるとより好ましい。0.01倍より小さい場合は、シード粒子への単量体吸収量が少なくなり、本発明に係る粒子表面に凹凸が生じないことがある。一方、100倍を超える場合は、シード粒子に単量体を完全に吸収させることができないことがあり、この場合、後の重合工程において吸収されなかった単量体が本発明に係る粒子同士の凝集を引き起こす。
【0068】
上記乳濁液と単量体エマルションとの混合を行う場合、(1)単量体エマルションを一括して乳濁液に添加し、混合する方法、(2)単量体を数回に分けて乳濁液に添加し、混合する方法、(3)任意量の単量体エマルションを連続して乳濁液に添加し、混合する方法、等のいずれの方法も採用できる。
【0069】
顕微鏡観察によりシード粒子の粒子径が大きくなっていれば、シード粒子に単量体が吸収されたと判断できる。
【0070】
重合工程:
重合工程では、シード粒子に吸収された単量体をラジカル重合により重合させる。この際の重合方法は、単量体エマルションに含ませた重合開始剤の種別により熱重合法、光重合法等の重合方法を選択する。
【0071】
単量体を重合させるときの重合温度は、40〜100℃であることが好ましく、50〜90℃がより好ましい。上記反応温度が40℃未満の場合は、重合度が低くなって、得られた粒子の機械的特性が不十分になることがある。一方、100℃を超える場合は、重合過程において本発明に係る粒子同士の凝集が生じやすくなる。
【0072】
重合のための時間は、適宜に設定されるべきものである。あまりに短い重合時間であると、重合度が低くなり、あまりに長い時間であると、本発明に係る粒子同士の凝集が生じてしまうので、5〜600分であると良く、10〜300分であると好ましい。
【0073】
(粒子の用途)
本発明に係る粒子を樹脂に含ませた樹脂組成物として使用することができる。本発明に係る粒子は、樹脂による膨潤が抑制され、かつ光拡散性に優れるので、光学部材用材料として採用できるものである。この樹脂組成物は、本発明に係る粒子と樹脂を含んでいる限り、特に限定されない。つまり、溶剤、硬化剤、架橋剤、硬化触媒、顔料、染料、可塑剤、分散剤、重合安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などを含むものも樹脂組成物に該当する。
【0074】
樹脂組成物中における本発明に係る粒子の量は、適宜設定される。通常、樹脂組成物において5〜90質量%である。
【0075】
樹脂組成物を調製するための樹脂は、特に限定されない。光拡散フィルム、光拡散板等の光学部材を製造するための樹脂組成物を調製する場合には、透明性、樹脂微粒子分散性、耐光性、耐湿性および耐熱性などの特性に応じて樹脂を選択使用する。
【0076】
樹脂組成物を調製するための樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロへキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルシクロへキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、および(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等から選択された一種または二種以上の共重合体である(メタ)アクリル系樹脂;(メタ)アクリルウレタン系樹脂;ウレタン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;メラミン系樹脂;スチレン系樹脂;アルキド系樹脂;フェノール系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリエステル系樹脂;(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーン系樹脂、シリコーンアルキド系樹脂、シリコーンウレタン系樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル系樹脂等の変性シリコーン樹脂;ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテルポリマー等のフッ素系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、熱硬化性樹脂、温気硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等の硬化性樹脂でもよい。
【0077】
また、上記樹脂と共に、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等の有機系バインダー樹脂;シリカゾル、アルカリ珪酸塩、シリコンアルコキシド、これらの縮合物、リン酸塩等の無機系結着剤;等を用いても良い。また、多官能性イソシアネート化合物と水酸基を有する成分とが上記樹脂に含有されていると、多官能性イソシアネート化合物と水酸基を有する成分とで架橋構造が形成されるので、耐湿性、可撓性、耐久性などの特性がさらに向上する。
【0078】
溶剤を樹脂組成物に含ませた場合、樹脂組成物の塗工が容易になる。樹脂組成物の用途に応じて溶剤の一種または二種以上を適宜に選択する。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル等のアルコール系溶剤;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ジメチルホルムアミド;が挙げられる。
【0079】
上記樹脂組成物を使用して製造される光学部材は、例えば、樹脂組成物のみで成形された光学部材;透明のシートと、該表面に樹脂組成物で形成された光拡散層とを有する光学部材;等が挙げられる。
【0080】
図1は、樹脂組成物のみで形成された光学部材の一例を表す断面図である。図1に示す光学部材1は、フィルム状乃至は板状であって、樹脂2中に本発明に係る粒子3が分散する。粒子3が光を拡散する。光学部材1の厚み、大きさは、その用途に応じて適宜に定められる。光学部材1の表面に凹凸が形成されていてもよいし、その表面が平坦であってもよい。凹凸が形成されている場合、光学部材1の光拡散性が向上するので好ましい。なお、上記樹脂組成物を押出成形、キャスト成形すれば光学部材1を製造できる。
【0081】
図2は、透明シートと、このシート表面に樹脂組成物により形成された光拡散層とを有する光学部材の一例を表す断面図である。図2に示す光学部材5は、基材シート8と、基材シート8の表面に形成された光拡散層Aとを有するものである。光拡散層Aは、上記樹脂組成物の層を含む。
【0082】
基材シート8は、一般的な光学部材用シートから選択すると良い。このシートの材質としては、例えば、ガラス;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;トリアセチルセルロース;シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー;ポリメチルメタクリレート、ラクトン環を有する(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル樹脂系ポリマー;ポリスチレン;ポリカーボネート;ブチラール樹脂等のポリビニルアセタール;ポリアリールエーテル系樹脂等が挙げられる。熱収縮による反り、可撓性、剛直性、機械的強度等の要求特性に応じて基材シートの厚みが定められる。光学部材5をフィルム状にする場合、熱収縮に起因する反り等を抑制するとともに、取り扱い性および強度を高める観点から、基材シート8の下限値は、10μm以上であると好ましい。一方、光学部材5をフィルム状にする場合の基材シート8の厚みは、300μm未満が通常である。また、光学部材5を板状とする場合の基材シート8の厚みは、基材シート8自体が撓まず且つ光学部材5が撓むことが無い程度であると良く、0.3mm以上、10mm以下が通常である。
【0083】
基材シート8のヘイズは、好ましくは0%以上、20%以下、より好ましくは0%以上、10%以下、さらに好ましくは0%以上、5%以下である。また、基材シートの全光線透過率は、好ましくは70%以上、100%以下、より好ましくは80%以上、100%以下である。なお、ヘイズおよび全光線透過率は、日本電色工業社製「NDH−1001DP」等の濁度計を用いて、JIS K7105に準拠した測定法により測定した値である。
【0084】
樹脂組成物を基材シートに塗布後、乾燥させれば、光拡散層Aを形成できる。この光拡散層Aは、入射した光を充分に拡散する機能を有する。光拡散層Aの厚さは、1μm〜100μmが一般的である。光拡散層Aが1μm未満であると、光拡散層Aに入射した光を充分に拡散させることができないことがあり、光拡散層Aの厚さが100μmを超えると、光拡散層を通過する光量が減少する場合がある。光拡散層Aは、単層および2層以上の何れであっても良く、2層以上である場合には、少なくとも一層が上記樹脂組成物で形成されていると良い。
【0085】
なお、光拡散層Aの厚みは、光学部材1において、任意に選択した5箇所における光拡散層Aの厚みを測定し、それらの平均値を光拡散層Aの厚みとする。具体的には、光学部材1の一部をエポキシ系樹脂で包埋、固化した後、ミクロトームで光学部材1の断面方向に薄片状に切断し、これを試料として透過型電子顕微鏡で観察する。そして、電子顕微鏡像における光拡散層Aの厚みを測定し、測定値の平均値を光拡散層Aの厚みとする。
【0086】
光拡散層Aの表面に凹凸が形成されていてもよいし、その表面が平坦であってもよい。光拡散層Aの表面に凹凸がある場合、光拡散層Aの表面に形成される凸部の少なくとも一部が、本発明に係る粒子7の存在に基づくものであることが好ましい。
【0087】
上記樹脂組成物のみで成形された光学部材、および光拡散層を有する光学部材は、例えば、携帯電話、PDA端末、デジタルカメラ、テレビ、コンピュータなどにおける液晶表示装置のバックライトユニットの構成部材として使用される。液晶表示パネルの背後にバックライトユニットが配置され、このバックライトユニットからの光が照射されると液晶表示パネルに画像が表示される。また、プラズマ表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置などの視野角を拡大する用途などに、その光学部材を使用できる。
【0088】
図3は、バックライトユニットの構成例を表す分解図であり、図の上方向に液晶パネルが配設される。バックライトユニット9は、光源13と、光源13から下方向に出射した光を上方向に反射する役割を果たす反射シート14と、光源13からの光を拡散する光拡散板12と、光拡散板12を通過した光をさらに拡散する光拡散フィルム11と、光拡散フィルム11を通過した光を正面方向に集光するプリズムシート10と、を備える。なお、図3に表したバックライトユニット9は、公知のバックライトユニットの一例を表したものにすぎず、公知のバックライトユニットでは、複数枚の光拡散フィルムが用いられるのが通常である。
【0089】
上記樹脂組成物のみで成形された光学部材および光拡散層を有する光学部材のいずれも、その厚み、寸法、構成部材を適宜に定めることにより、バックライトユニット等の構成部材に適用できる光拡散フィルム、光拡散板に使用できる。このように使用される光学部材のヘイズは、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上であり、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。また、全光線透過率は好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上である。なお、ヘイズおよび全光線透過率は、濁度計(例えば、日本電色工業社製「NDH−1001DP」)を用いて、JIS K7105に準拠した測定法により測定することができる。
【0090】
上記樹脂組成物を使用して製造された光学部材は、光拡散フィルムや光拡散板以外にも使用できる。例えば、液晶表示装置等の表示パネルの最表面にフィルム状の上記光学部材を積層すれば、この積層された光学部材は、防眩フィルムとしての機能を発揮する。
【0091】
本発明に係る粒子には、上記樹脂組成物、光学部材以外の用途として、導電性粒子用粒子としての用途がある。導電性粒子は、本発明に係る粒子と、当該粒子表面に形成された導体層とを有する。この導電性粒子は、本発明に係る粒子を構成部材としているので、電気的に接続される一対の電極基板間の距離を一定に保持するための硬度および破壊強度とを有する。従って、液晶表示板、LSI、プリント配線基板等のエレクトロニクスの電気的接続材料として前記導電性粒子を使用できる。
【0092】
上記導体層は、本発明に係る粒子の表面の少なくとも一部に形成されていればよい。導体層を構成する金属は、特に限定はされない。その金属としては、例えば、ニッケル、金、銀、銅、インジウム、これらの合金が挙げられ、導電性が高いニッケル、金、インジウムが好ましい。導体層の厚みは、特に限定はされないが、0.01〜5.0μmであると良い。導体層は、1層および2層以上のいずれでもよく、2層以上の場合には、それぞれの導体層が異なる金属で構成されていても良い。
【0093】
公知の方法により導体層を形成すると良く、例えば、電解めっき法、化学めっき法、コーティング法、PVD(真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなど)法が挙げられる。
【実施例】
【0094】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0095】
(実施例1)
オルガノポリシロキサン粒子の調製:
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水526質量部、25質量%アンモニア水1.6質量部、およびメタノール118部を仕込み、撹拌しながらケイ素化合物である2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン30質量部を滴下口から添加して、この2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランの加水分解縮合によりラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサン粒子の乳濁液を調製した。この乳濁液の調製時間は、加水分解縮合開始から2時間とした。調製した乳濁液の一部を採取し、ベックマンコールター社製「コールターマルチサイザー」により測定したオルガノポリシロキサン粒子の平均粒子径は、2.02μmであった。
【0096】
単量体エマルションの調製:
乳化剤であるポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製「ハイテノールNF−08」)2.5質量部と、イオン交換水175質量部とで調製した乳化剤溶液に、単官能単量体であるスチレン60質量部、多官能単量体であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部、架橋剤である2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−65」)2質量部を加え、特殊機化工業社製「TKホモミキサー」を使用して6000rpm、5分間の条件で加えた化合物を乳化剤溶液に分散させて単量体エマルションを調製した。
【0097】
オルガノポリシロキサン粒子への単量体吸収:
上記単量体エマルションに上記乳濁液を混合し、撹拌した。単量体エマルションの混合から2時間後、混合液の一部を採取し、顕微鏡で観察したところ、オルガノポリシロキサン粒子が、単量体エマルションの成分を吸収して肥大化していた。
【0098】
単量体の重合:
上記乳濁液と単量体エマルションとの混合液を、窒素雰囲気に置いて65℃に昇温させた後に、当該昇温後の温度を2時間保持することにより、オルガノポリシロキサン粒子に吸収された単量体をラジカル重合させた。
【0099】
固液分離により上記重合後の液から得られたケーキをエタノールで洗浄し、さらに80℃で12時間真空乾燥させて実施例1の粒子を得た。粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「コールターマルチサイザー」)により測定した実施例1の粒子の平均粒子径は3.5μm、粒子径の変動係数は2.7%であった。また、SEM(日立製作所社製走査型電子顕微鏡「S−3500N」)により実施例1の粒子を観察した。図4は、SEMで実施例1の粒子を5000倍率で観察した写真であり、図5は、10000倍率で観察した写真であり、図6は、20000倍率で観察した写真である。図4〜6において、実施例1の粒子表面には、複数の不規則形状の凹部が存在することを確認できる。
【0100】
(実施例2)
スチレンを80質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを20質量部使用した以外は、実施例1と同様にして実施例2の粒子を調製した。実施例2の粒子の平均粒子径は3.2μm、粒子径の変動係数は4.1%であった。SEMにより実施例2の粒子表面を観察したところ、実施例1の粒子と同様に、複数の不規則形状凹部の存在が確認された。
【0101】
(実施例3)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部をペンタエリスリトールテトラアクリレート40質量部に替えた以外は、実施例1と同様にして実施例3の粒子を調製した。実施例3の粒子の平均粒子径は4.2μm、粒子径の変動係数は3.9%であった。図7は、SEMで実施例3の粒子を5000倍率で観察した写真であり、図8は、15000倍率で観察した写真であり、図9は、25000倍率で観察した写真である。図7〜9において、実施例3の粒子の表面形状は、房状であったことを確認できる。
【0102】
(実施例4)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部をペンタエリスリトールトリアクリレート40質量部に替えた以外は、実施例1と同様にして実施例4の粒子を調製した。実施例4の粒子の平均粒子径は3.8μm、粒子径の変動係数は4.0%であった。図10は、SEMで実施例4の粒子を5000倍率で観察した写真であり、図11は、15000倍率で観察した写真であり、図12は、25000倍率で観察した写真である。図10〜12において、実施例4の粒子の表面形状は、房状であったことを確認できる。また、実施例4の粒子表面の凸部は、実施例3の粒子表面の凸部よりも小さかった。
【0103】
(比較例)
オルガノポリシロキサン粒子の調製において2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン30質量部に替えて3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン30質量部を使用し、ラジカル重合性不飽和結合(ラジカル重合性ビニル基)を有するオルガノポリシロキサン粒子を調製した。単量体エマルションの調製においてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部に替えてエチレングリコールジメタクリレート40質量部を使用した。これら以外は、実施例1と同様にして比較例の粒子を調製した。この粒子を調製する過程において得られたオルガノポリシロキサン粒子の平均粒子径は、1.95μmであった。また、比較例の粒子の平均粒子径は3.4μm、粒子径の変動係数は2.9%であった。そして、SEM観察で確認した比較例の粒子は、表面が平滑な真球状であった。
【0104】
(参考例1)
特開2000−191818号公報の実施例5に開示されている方法と同じ方法により、参考例1の粒子を調製した。つまり、次の通り参考例1の粒子を調製した。重量平均分子量30000のポリビニルピロリドン3.6質量部、アニオン界面活性剤(和光純薬工業社製「エアロゾルOT」)0.6質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.14質量部、およびエタノール84質量部の混合液を調製した。窒素気流下において撹拌されているその混合液にスチレン14質量部を滴下した。その後、混合液を60℃に昇温して、24時間反応を進行させることによりシード粒子を調製した。反応終了後、遠心分離機を使用してシード粒子を単離し、メタノールで洗浄した。このシード粒子0.5質量部、イオン交換水50質量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.05質量部を混合してシート粒子分散液を調製し、この分散液に3質量%ポリビニルアルコール水溶液20質量部を加えた。次に別途調製したジビニルベンゼン5質量部、含水量25質量%の過酸化べンゾイル0.25質量部、イオン交換水50質量部、およびラウリル硫酸ナトリウム0.1質量部からなる乳化液を、前記分散液に添加し、25℃、100rpmで24時間攪拌して乳化液をシード粒子に吸収させた。次に、シード粒子雰囲気を窒素置換した後、200rpm攪拌、70℃、24時間の条件でシード粒子に吸収させたジビニルベンゼンを重合させることにより、参考例1の粒子を調製した。そして、遠心分離機を使用して参考例1の粒子を分離し、エタノール、エタノールと水との混合媒体、水の順序で各2回ずつ参考例1の粒子の洗浄と遠心分離を行った。
【0105】
(参考例2)
特開2006−131738号公報の実施例1に開示されている方法と同じ方法により、参考例2の粒子を調製した。つまり、次の通り参考例2の粒子を調製した。エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート80質量部、過酸化ベンゾイル2.0質量部、水200質量部、およびポリオキシエチレン系フェニルエーテル硫酸エステル塩3.3質量部を5分間撹拌して調製した混合液に、電子顕微鏡観察による平均粒径2.9μmのポリメチルメタクリレート粒子であるシード粒子20質量部を添加し、50℃で30分間攪拌してシード粒子にエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレートを吸収させた。その後、60℃で4.0時間、更に95℃で8時間の条件でシード粒子に吸収させたエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレートを重合させることにより、参考例2の粒子を調製した。そして、吸引濾過により参考例2の粒子を分離し、濃度が20質量%となるように10質量%NaOH水溶液に参考例2の粒子を分散させ、その後、90℃で2時間加熱した。この分散液を冷却した後、塩酸で中和し、吸引濾過により参考例2の粒子を分離し、90℃で8時間乾燥した。
【0106】
後記の通り、実施例、比較例、および参考例の粒子を使用して光拡散フィルム、光拡散板、防眩フィルムを製造した。また、製造した光拡散フィルム等の特性を評価した。
【0107】
光拡散フィルム等の特性は、次の通り評価した。
(全光線透過率)
日本電色工業株式会社製の濁度計「NDH−1001DP」を使用し、JIS K7105に準拠して測定した。
【0108】
(ヘイズ)
日本電色工業株式会社製の濁度計「NDH−1001DP」を使用し、JIS K7105に準拠して測定した。
【0109】
(輝度)
トプコン社製の輝度計「BM−7」使用して輝度を測定した。当該測定においては、測定室内の雰囲気を温度25℃、湿度60%RHとし、15インチ型液晶表示装置用の直下型バックライトユニット(冷陰極管ランプの強度が10,000cd/m2となるようにランプ強度を設定)に、縦231mm、横321mmの測定試料を組み込み、測定試料における中心点の輝度(cd/m2)を測定した。なお、測定距離を50cmとし、視野角を1°とした。
【0110】
(防眩性)
試料の裏面に黒フィルムを貼り合わせ、2mの距離より10000cd/m2の蛍光灯を映し、その反射像のボケの程度を下記の基準により評価した。
○:蛍光灯の輪郭を判別できなかった
×:蛍光灯の輪郭を明確に確認できた
【0111】
(透過鮮明度)
写像測定器(スガ試験機社製「ICB−1DD」)と0.5mm幅の光学櫛を用いて、JIS K7150に従って透過鮮明度を測定した。
【0112】
(文字ボケ)
パーソナルコンピュタに接続した液晶モニタ(15インチXGA、TFT−TN方式、正面輝度350cd/m2、正面コントラスト300対1、表面AGなし)の表面に、試料を貼り合わせ、文字のボケ具合いを下記の基準により評価した。
○:文字の輪郭は全くボケていなかった。
×:文字の輪郭がボケており、強い違和感が感じられた
【0113】
(光拡散フィルム)
粒子(実施例または参考例の粒子10質量部、比較例の粒子50質量部)、ポリエステルポリオール100質量部、多官能イソシアネート(住化バイエルウレタン社製「スミジュールN320」)20質量部、および耐電防止剤2質量部を混合して樹脂組成物を調製した。ロールコート法により、調製した樹脂組成物を透明二軸延伸ポリエステルフィルム(厚さ:100μm)の表面に塗工した。その後、ポリエステルフィルムを室温で1時間放置し、次に80℃で2時間乾燥することにより、光拡散フィルムを製造した。光拡散フィルムの光拡散層(樹脂組成物の乾燥膜)の厚みは、15μmであった。
【0114】
なお、参考例1または2の粒子を使用しての樹脂組成物作製過程においては、粒子が膨潤して樹脂組成物の粘度が上昇したため、樹脂組成物を均一に塗工することができなかった。
【0115】
表1に光拡散フィルムの全光線透過率、ヘイズ、輝度を測定した結果を示す。
【0116】
【表1】
【0117】
上記表から、実施例1〜4の粒子を使用した光拡散フィルムは、比較例の粒子を使用したものとヘイズ値が同等であるものの、全光線透過率および輝度共に大幅に優れていたことが分かる。つまり、本発明に係る粒子の使用量が少ない光拡散フィルムであっても光を高散乱させることができるので、上記表の結果は、本発明に係る粒子を使用すれば、全光線透過率を低下させることなくヘイズを調整できることを実証するものである。また、この実証は、実施例1〜4の粒子を使用した光拡散フィルムと参考例1〜2の粒子を使用した光拡散フィルムとの対比においても同様である。
【0118】
(光拡散板)
粒子(実施例または参考例の粒子0.1質量部、比較例の粒子0.5質量部)、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジアプラスチック社製「ユーピロンE2000FN」)100質量部、フェノール−リン酸−ラクトンの三種混合系酸化防止剤(チバスペシャリティーケミカル社製「イルガノックス2215」)0.05質量部、およびオキサゾール系蛍光増白剤(チバスペシャリティーケミカル社製「ユビテックッスOB」)0.03質量部を、ベント・ギアポンプ付・3本ロール・2本ロール圧着ラミネート装置付のシート押出成形機に供給し、成形温度280℃でシート成形することにより、光拡散板(厚さ2mm)を得た。
【0119】
なお、参考例の粒子を使用して光拡散板を製造する際には、使用した粒子の変形、溶融が認められた。
【0120】
表2に光拡散板の輝度を測定した結果を示す。
【0121】
【表2】
【0122】
上記表から、実施例1〜4の粒子を使用した光拡散板は、比較例の粒子を使用したものと比較して輝度が大幅に高かったことが分かる。また、実施例1〜4の粒子を使用した光拡散板と、参考例1〜2の粒子を使用したものとの比較においても同様である。
【0123】
(防眩フィルム)
粒子(実施例または参考例の粒子1質量部、比較例の粒子3質量部)とトルエン20質量部を十分に撹拌混合した。当該混合液に、アクリル系電離放射線硬化樹脂40質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカル社製「イルガキュア907」)2質量部、メチルエチルケトン23質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル2質量部、およびレベリング剤(ビックケミー社製「BYK320」)0.5質量部を加え、十分に撹拌して樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を、バーコーターにより厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製「フジタック」)の片面に塗布した。当該塗布膜を80℃のトライヤーで乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて300mJ/cm2の紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させることにより防眩フィルムを得た。
【0124】
なお、参考例1および2の粒子を使用した防眩フィルムの製造において、樹脂組成物を調製する際に粒子が膨潤して樹脂組成物の粘度が上昇したため、トリアセチルセルロースフィルムに樹脂組成物を均一に塗布することができなかった。
【0125】
表3に防眩フィルムの防眩性、透過鮮明度、文字ボケの評価結果を示す。
【0126】
【表3】
【0127】
上記表から、実施例1〜4の粒子を使用した防眩フィルムは、比較例の粒子を使用したものと比較して透過鮮明度および文字ボケにおいて優れていたことが分かる。また、実施例1〜4の粒子を使用した防眩フィルムは、参考例1〜2の粒子を使用したものとの比較して、防眩性、透過鮮明度、および文字ボケの全てにおいて優れていたことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明に係る光学部材の一例を表す断面図である。
【図2】本発明に係る光学部材の他の例を表す断面図である。
【図3】バックライトユニットの構成例を表す分解図である。
【図4】SEMで実施例1の粒子を5000倍率で観察した写真である。
【図5】SEMで実施例1の粒子を10000倍率で観察した写真である。
【図6】SEMで実施例1の粒子を20000倍率で観察した写真である。
【図7】SEMで実施例3の粒子を5000倍率で観察した写真である。
【図8】SEMで実施例3の粒子を15000倍率で観察した写真である。
【図9】SEMで実施例3の粒子を25000倍率で観察した写真である。
【図10】SEMで実施例4の粒子を5000倍率で観察した写真である。
【図11】SEMで実施例4の粒子を15000倍率で観察した写真である。
【図12】SEMで実施例4の粒子を25000倍率で観察した写真である。
【符号の説明】
【0129】
A 光拡散層
1、5 光学部材
2、6 樹脂
3、7 粒子
8 基材シート
9 バックライトユニット
10 プリズムシート
11 光拡散フィルム
12 光拡散板
13 光源
14 反射シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の構成粒子としても使用できる粒子、および当該粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
懸濁重合、シード重合、分散重合、乳化重合等の従来公知の重合方法により得られる粒子の形状は、真球状になることが一般的である。例えば、特許文献1に開示されている(メタ)アクリロキシ基を有するポリシロキサン粒子であって、この構造中にビニル系重合体を含む粒子は、真球状の粒子である。粒子が真球状になることは、当該形状が粒子生成過程においてエネルギー的に最も安定であるためと考えられている。得られた真球状粒子は、光学フィルムにおける光散乱粒子等の光学部材用途に利用されており、光を十分に散乱させるために、光学部材への真球状粒子の添加量をある程度多くすることが通常である。しかし、粒子の添加量を多くすることは、光学部材自体の光線透過率の低下を引き起こして、光学部材性能が低下する場合があった。
【0003】
また、真球状粒子以外の粒子として、例えば特許文献2〜5に開示されている通り、多孔質粒子が知られている。特許文献2には、水中に分散した重量平均分子量が1万〜30万の重合体シード粒子に、架橋性単量体及び重合開始剤を吸収させた後、架橋性単量体を重合させて製造された多孔質粒子が開示されている。特許文献3には、シード粒子に加水分解性を有する重合性官能基を複数有している単量体を膨潤乃至吸収させ、この単量体の重合を行い、次いで酸またはアルカリ処理を行ってその単量体の重合物を除去することにより製造された中空多孔質重合体粒子が開示されている。特許文献4には、数平均粒子径が1〜30μm、BET比表面積が0.1〜80m2/gである多孔質粒子が開示されている。特許文献5には、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂で構成された多孔質粒子が開示されている。
【0004】
上記特許文献2〜5等に開示されている公知の多孔質粒子は、いずれも非架橋性有機シード粒子または非架橋性有機重合体を出発原料とし、シード重合、ポリマー溶解法、またはポリマー析出法により多孔質構造が形成されたものである。このような粒子は、非架橋性有機粒子が高い原料比率となるため、耐溶剤性が低い。そのため、樹脂または溶剤と、粒子と配合して使用する場合には、粒子の膨潤によりその配合物の粘度が上昇する等の問題が生じることがあった。
【特許文献1】特開2003−183337号公報
【特許文献2】特開2000−191818号公報
【特許文献3】特開2006−131738号公報
【特許文献4】特開2007−219183号公報
【特許文献5】特開2002−265529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリシロキサンを構成部材として有し、多孔質粒子のような表面が非平滑な粒子であれば、光学部材への粒子添加量を増加させなくとも優れた特性を発揮する光学部材を実現できると共に、耐溶剤性にも優れると予想される。しかし、本出願人が知る限り、そのような粒子は実現されていない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、ポリシロキサンを構成として有し、表面が非平滑な粒子、および当該粒子の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が、有機ポリマーとポリシロキサンとを構成部材として有し、かつ、表面が非平滑な粒子を実現するべく鋭意検討した結果、これら構成部材が複合化した表面非平滑粒子を実現するに至った。
【0008】
すなわち、本発明に係る粒子は、有機重合体とラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサンとが複合化し、表面に複数の凹部および/または凸部が存在することを特徴とする。本発明における「複合化」とは、有機重合体がオルガノポリシロキサン骨格間に入り込んでいることを意味する。また、「凹部および/または凸部」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用し、倍率5000倍で観察できる凹部および/または凸部である。
【0009】
前記各凹部は不規則形状であっても良い。また、前記表面の形状は房状であっても良い。
【0010】
前記有機重合体は、1個のラジカル重合性二重結合を有する単官能単量体と3個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能単量体との重合体であると良い。前記多官能単量体は、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルであると良い。前記多価アルコールは、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリメチロールプロパンから選択された一種または二種以上であると良い。
【0011】
前記オルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で表される一種または二種以上のケイ素化合物を縮合させて製造されたものであると良い。下記一般式(1)で表されるケイ素化合物のR1の少なくとも一種が、エポキシ基を有する有機基であると良い。
R1nSi(OR2)4-n (1)
(一般式(1)中、R1はラジカル重合性不飽和結合を有さない有機基を表し、nは1または2を表し、R2は水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0012】
本発明に係る粒子は、樹脂を含む樹脂組成物の材料に適している。この樹脂組成物を使用して、光拡散フィルム、光拡散板、防眩フィルムを製造できる。また、本発明に係る粒子は、導体層が少なくとも一部に形成された導電性粒子の材料に適している。
【0013】
本発明に係る粒子の製造方法は、ラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサン粒子を製造するシード粒子製造工程と、1個のラジカル重合性二重結合を有する単官能単量体および3個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能単量体を、前記オルガノポリシロキサン粒子に吸収させる吸収工程と、前記単官能単量体および多官能単量体を重合させる重合工程とを有することを特徴とする。
【0014】
前記吸収工程における多官能単量体は、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルであると良く、その多価アルコールは、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリメチロールプロパンから選択された一種または二種以上であると良い。
【0015】
前記シード粒子製造工程において、上記一般式(1)で表される加水分解性ケイ素化合物を縮合させることにより前記オルガノポリシロキサン粒子を製造することが良く、そのケイ素化合物のR1の少なくとも一種がエポキシ基を有する有機基であると良い。
【発明の効果】
【0016】
表面に複数の凹部および/凸部が存在する本発明に係る粒子によれば、当該粒子の使用量が少量であっても優れた光学部材を得ることができる。例えば、光線透過率および輝度共に優れた光拡散フィルム、光拡散板等を本発明の粒子により実現できる。
【0017】
また、有機重合体だけではなくオルガノポリシロキサンをも構成とする本発明に係る粒子は、樹脂と混合された場合であっても、膨潤が抑えられる。従って、取り扱い易い樹脂組成物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(粒子)
本発明に係る粒子は、その表面に複数の凹部および/または複数の凸部が存在し、かつ、有機重合体とラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサンとが複合化して構成された粒子である。
【0019】
本発明に係る粒子表面に存在する凹部および/または凸部は、複数の不規則形状の凹部、房状等である。ここで「房状」とは、第一粒子に、この第一粒子よりも小さな複数の第二粒子が融着したような外観形状をいう。
【0020】
本発明に係る粒子における凹凸部を無視した全体形状は、略球状、略針状、略板状、略鱗片状、略俵状、略繭状等、特に限定されないが、通常、略球状である。
【0021】
粒子の平均粒子径は、0.1〜200μmであると良く、0.5〜100μmであると好ましく、1〜50μmであるとより好ましい。平均粒子径が0.1〜200μmの範囲であれば、有機重合体とオルガノポリシロキサンとの比率を広く変化させることが可能なので、本発明に係る粒子の硬度、破壊強度等の機械的特性を適宜に設定できる。また、平均粒子径が0.1μm未満であると、有機重合体の比率を高めることが困難になり、200μmを超えると、有機重合体を形成させるための重合反応において粒子が不安定になりやすく、後記単量体の量が非常に多くなって、本発明に係る粒子同士の凝集が生じ易くなる。なお、粒子の平均粒子径には、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置で測定した体積平均粒子径を採用する。
【0022】
この本発明粒子の粒子径における変動係数は、特に限定されない。しかし、この変動係数は、小さいことが要求される場合があるので、20%以下であると良く、10%以下でると好ましく、5%以下であるとより好ましい。この変動係数は、粒子の平均粒子径と、粒子の粒子径の標準偏差とを次式(A)に当てはめて求められる値である。
式(A):本発明粒子の変動係数(%)=粒子径の標準偏差/平均粒子径×100
【0023】
粒子を構成する有機重合体は、その分子量が特に限定されるものではなく、当該粒子の構成となっているオルガノポリシロキサン骨格間に存在する。この存在を確認するためには、例えば、加熱されたトルエン等の有機溶剤に粒子を添加し、添加前後の粒子の質量変化を確認する方法(質量変化がないことは、有機重合体がオルガノポリシロキサン骨格間に存在することを意味する。);粒子の切断面を観察することにより、有機重合体の存在を確認する方法;赤外吸収スペクトル分析により、有機重合体由来の官能基の存在を確認する方法;等が挙げられる。
【0024】
有機重合体は、特に限定されず、一種または二種以上であっても良い。有機重合体としては、例えば、(メタ)アクリル系重合体;スチレン系重合体;酢酸ビニル系重合体;環状オレフィン系重合体;塩化ビニル系重合体;塩化ビニリデン系重合体;これらの共重合体;などが挙げられる。これらの有機重合体は、単独で用いても2種以上を併用しても良く、また、アミノ基、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基などの官能基で部分的に変性されていても良い。
【0025】
好ましい有機重合体は、1個のラジカル重合性二重結合を有する単官能単量体と3個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能単量体との重合体である。より好ましい有機重合体は、前記有機重合体の多官能単量体が多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルであるもの、より好ましい有機重合体は、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリメチロールプロパンから選択された一種または二種以上が前記多価アルコールであるものである。
【0026】
粒子を構成するオルガノポリシロキサンは、ラジカル重合性不飽和結合を有さない限り、特に限定されない。好ましくは、下記一般式(1)で表される一種または二種以上のケイ素化合物が加水分解縮合したオルガノポリシロキサンである。前記ケイ素化合物としては、エポキシ基を有する基を備えるケイ素化合物が好ましい。
R1nSi(OR2)4-n (1)
(一般式(1)中、R1はラジカル重合性不飽和結合を有さない有機基を表し、nは1または2を表し、R2は水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0027】
また、粒子中におけるオルガノポリシロキサンの比率は、特に限定されない。粒子中においてSiO2量が0.1〜80質量%となるオルガノポリシロキサン量が一般的であり、当該量は、0.5〜70質量%が好ましく、1.0〜60質量%がより好ましい。
【0028】
(粒子の製造方法)
ラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサン粒子を製造するシード粒子製造工程と、所定の単量体をそのオルガノポリシロキサン粒子に吸収させる吸収工程と、オルガノポリシロキサン粒子に吸収させた所定の単量体を重合させる重合工程とを有する方法を使用すれば、本発明に係る粒子を製造できる。
【0029】
シード粒子製造工程:
シード粒子製造工程では、シード粒子を製造する。この「シード粒子」とは、シロキサン結合の三次元ネットワーク体を主要構成とするオルガノポリシロキサン粒子であり、非ラジカル重合性の有機基を有するが、ラジカル重合性の有機基を有さない。
【0030】
シード粒子製造工程では、下記一般式(1)で表される加水分解性ケイ素化合物の一種または二種以上を加水分解縮合させることにより、シード粒子を製造することが好適である。この好適なシード粒子の製法は本発明に係る粒子の製造方法において使用するシード粒子の製法の一態様であり、公知の製法によっても本発明方法で使用するシード粒子を製造できる。
R1nSi(OR2)4-n (1)
(一般式(1)中、R1はラジカル重合性不飽和結合を有さない有機基を表し、nは1または2を表し、R2は水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0031】
上記一般式(1)で表されるケイ素化合物が有するR1は一種または二種である。R1としては、例えば、メチル基、エチル基、ヘキシル基、デシル基等のアルキル基;3,4−エポキシシクロヘキシル基、(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、グリシドキシプロピル基等のエポキシ基を有する基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;が挙げられる。これらの例示の内、エポキシ基を有する基とアルキル基とをR1として有するケイ素化合物が好ましい。
【0032】
上記一般式(1)で表されるケイ素化合物が有する水素原子以外のR2としては、例えば、メチル基、エチル基である。
【0033】
n=1である一般式(1)で表されるケイ素化合物の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシブチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。n=2である一般式(1)で表されるケイ素化合物の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ジフェニルシランジオールが挙げられる。
【0034】
溶媒中で、上記ケイ素化合物の加水分解縮合を行う。この縮合の際には、必要に応じて、ケイ素化合物を加水分解縮合させるための触媒も溶媒に含ませる。
【0035】
上記溶媒には、水と一種または二種以上の有機溶媒との混合溶媒を使用する。ここでは、ケイ素化合物および水を溶解し、必要に応じて後記触媒を溶解する有機溶媒;または、水と触媒とのミセルを均一に分散させることができる有機溶媒;を使用すると良い。そのような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル;イソオクタン、シクロヘキサン等のパラフィン;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;が挙げられる。メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールを選択すれば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基をオルガノポリシロキサン粒子表面に多く存在させることができる。なお、水や触媒と相溶しない有機溶媒を用いることもできるが、この場合には、水および触媒を均一に分散させるために界面活性剤を溶媒に添加すると良い。
【0036】
触媒を使用する場合、アンモニア;加熱によりアンモニアを発生し得る尿素等のアンモニア発生剤;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族アミン;シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン;ベンジルアミン等の芳香族アミン;テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の4級アンモニウムハイドロオキサイド;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;等の塩基性触媒を使用すると良く、これらの中でも、シード粒子の粒子径制御が容易なアンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、アルカノールアミンが好ましい。また、得られるシード粒子における触媒残存量を少なくし易い観点からは、沸点が低いアンモニア、炭素数1〜4の脂肪族アミンが好ましく、加水分解縮合の促進に優れたアンモニアが特に好ましい。
【0037】
触媒濃度を調整すると、調製されるシード粒子の形状や粒子径、溶媒中におけるケイ素化合物の溶解状態に影響を及ぼすことがある。溶媒における触媒濃度は、通常、0.001モル/L以上、10モル/L以下であると良く、0.01モル/L以上、1モル/L以下であると好ましい。0.001モル/L未満では、加水分解反応速度を高めるための触媒効果が出ない場合があり、10モル/Lを超えると、得られるシード粒子の粒度分布が広くなる恐れがある。
【0038】
上記ケイ素化合物の縮合を行なう場合、溶媒にケイ素化合物を添加する。このときの添加態様は、特に限定されず、様々な方法を採用できる。例えば、(1)溶媒にケイ素化合物を一括して添加し、攪拌する方法、(2)溶媒を攪拌しながら、ケイ素化合物を数回に分けてその溶媒に添加する方法、(3)溶媒を攪拌しながら、ケイ素化合物を連続的に添加する方法、(4)ケイ素化合物を含有する有機溶媒を予め調製し、この有機溶媒を前記(1)〜(3)のいずれかの方法で添加する方法、である。
【0039】
また、使用する水および触媒も有機溶媒または溶媒(水と有機溶媒とからなるもの)に添加する。このときの添加態様も、特に限定されず、様々な方法を採用できる。例えば、初めに一括して添加する方法、数回に分けて添加する方法、連続的に添加する方法である。
【0040】
ケイ素化合物の加水分解縮合反応を生じさせる際の温度は5〜50℃が好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜35℃が更に好ましい。5℃未満であると加水分解縮合が進行し難い恐れがあり、50℃を超えると、触媒や溶媒が揮発して反応が進行し難くなることや粒子が凝集することがある。
【0041】
また、上記加水分解縮合の反応時間は、30分以上が良く、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましい。また、この時間は、100時間以下が良く、20時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましい。反応時間が30分以上であれば、ケイ素化合物の加水分解縮合が十分進行し、100時間以下であれば、シード粒子同士の合着や凝集を生じさせることなく加水分解縮合を進行させることができる。
【0042】
以上の条件により、シード粒子が分散する乳濁液を得ることができる。当該乳濁液中には粗大なシード粒子が含まれている場合があり、この粗大粒子を除去する必要があれば、フィルターでその除去が可能である。シード粒子の平均粒子径よりも1μm以上大きな目開きのフィルターを使用すれば、粗大なシード粒子を除去できる。上記フィルターは、空隙を持つメッシュであってもよい。
【0043】
得られた乳濁液中のシード粒子の形状は、通常、粒子形成過程においてエネルギー的に安定な真球状乃至略球状である。シード粒子の形状により、本発明に係る粒子の形状が定まる。例えば、シード粒子が真球状乃至略球状であれば、本発明に係る粒子における凹凸部を無視した全体形状は、略球状になる。
【0044】
シード粒子の平均粒子径は、特に限定されない。0.1〜100μmであることが通常であり、0.3〜50μmであると好ましく、0.5〜30μmがより好ましい。シード粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、シード粒子に単量体を十分に吸収させることができない場合があり、平均粒子径が100μmを超えると、製造過程においてシード粒子が沈降してシード粒子凝集体が形成されやすくなる。シード粒子の平均粒子径には、コールター原理を利用した精密粒度分布測定装置で測定した体積平均粒子径を採用する。
【0045】
シード粒子における粒子径の変動係数は特に限定されないが、均質な本発明に係る粒子を製造するためには変動係数が小さいことが望まれる。従って、この変動係数は、20%以下であると良く、10%以下であると好ましく、5%以下であるとより好ましい。上記平均粒子径の測定と同時に測定された体積基準粒度分布の標準偏差、および平均粒子径を次式(B)に当てはめれば、シード粒子の変動係数を算出できる。
式(B):シード粒子の変動係数(%)=標準偏差/平均粒子径×100
【0046】
吸収工程:
吸収工程では、シード粒子中に有機重合体原料となる単量体を吸収させる。当該吸収は、シード粒子に前記単量体を添加するものであっても良いが、本発明に係る粒子の製造効率の観点からは、上記シード粒子製造工程で得られた乳濁液と前記単量体を含むエマルションとを混合する。この単量体エマルションを混合する吸収工程を以下に詳述する。
【0047】
単量体エマルションは、エマルション溶媒、乳化剤、単量体(「単量体」とは「単官能単量体」と「多官能単量体」の総称である。以下、同じ。)、重合開始剤を含有する。また、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、難燃剤、酸化防止剤等の添加剤も、必要に応じて、単量体エマルションに含有されている場合がある。
【0048】
上記エマルション溶媒としては、安価な水を使用すると良い。エマルション溶媒の使用量は、特に限定されないが、単量体エマルション全量を100質量部とした場合に20〜70質量部である。
【0049】
乳化剤は、単量体エマルションにおける単量体の分散を高めると共に、吸収工程において効率良くシード粒子に単量体を吸収させるために使用する。ここでは、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、高分子界面活性剤等の公知の界面活性剤から選択したものを、乳化剤として使用できる。アニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤から選択された一種または二種以上の界面活性剤を使用することが、単量体の吸収性が優れると共に、溶媒中におけるシード粒子の分散性にも優れるので好ましく、中でも後に詳述する重合工程における粒子の分散性に優れるアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0050】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムラウリルサルフェート、ナトリウムラウリルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィンアルカリ金属塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;が挙げられる。
【0051】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、アミド型ジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルイミダゾリニウム塩が挙げられる。
【0052】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型が挙げられる。
【0053】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル等のポリオキシエチレンエーテル;ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールのモノラウレート等のポリオールと脂肪酸のモノエステル;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪酸アミン、アミドまたは酸(ホウ酸、リン酸等)との縮合生成物;が挙げられる。
【0054】
高分子界面活性剤としては、例えば、ポリビニルアルコールおよびその変性物;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム等のポリ(メタ)アクリル酸塩系高分子;ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有高分子;ポリビニルピロリドン等;これらの高分子の構成単量体を含む共重合体;が挙げられる。
【0055】
乳化剤の使用量は、単官能単量体と多官能単量体の総量100質量部に対して、0.01〜10質量部であると良く、0.05〜5質量部であると好ましく、0.1〜2質量部であるとより好ましい。乳化剤の使用量が0.01質量部未満では、単量体の分散が不安定になることがあり、一方10質量部を超えると、重合工程において副反応が併発する恐れがある。
【0056】
単官能単量体はラジカル重合性二重結合を1個有する単量体であり、一種または二種以上の単官能単量体が選択されていると良い。
【0057】
単官能単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単量体;メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、等のポリエチレングリコール成分を有する単量体;(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等のアルキル(メタ)アクリレート;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタンフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロアミル(メタ)アクリレート等のフッ素原子含有(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルマン、α−クロロスチレン、0−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;環状オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩化オレフィン;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等を用いることが好ましい。
【0058】
単官能単量体の使用量は、単官能単量体と多官能単量体の総量100質量部に対して、20〜90質量部であると良く、30〜80質量部であると好ましく、50〜70質量部であると更に好ましい。
【0059】
多官能単量体は、3個以上のラジカル重合性二重結合を有する単量体である。一種または二種以上の多官能単量体を使用することで、表面に複数の凹部および/または凸部が存在する本発明に係る粒子を製造できるのである。
【0060】
単量体エマルション調製工程では、一種または二種以上の公知の多官能単量体を使用することができ、多官能単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のメチロール系エステル;ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のエリスリトール系エステル;ジアリルフタレート等のアリル系エステル;トリアリルイソシアヌレートおよびその誘導体;などが挙げられる。
【0061】
多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルから選択された一種または二種以上の多官能単量体を使用することが好ましい。より好ましい多官能単量体は、前記エステルを構成する多価アルコールがペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリメチロールプロパンから選択された一種または二種以上である多官能単量体である。
【0062】
本発明に係る粒子の表面形状は、多官能単量体が有するラジカル重合性二重結合の数により変化する。例えば、6個のラジカル重合性二重結合を有するジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを使用した場合には、本発明に係る粒子の表面には不規則形状の凹部が複数存在することになり、4個のラジカル重合性二重結合を有するペンタエリスリトールテトラアクリレートを使用する場合には、本発明に係る粒子の表面形状が房状になり、3個のラジカル重合性二重結合を有するペンタエリスリトールトリアクリレートを使用する場合には、本発明に係る粒子の表面形状が房状、かつ、当該房状を構成する凸部がペンタエリスリトールテトラアクリレートを使用した場合よりも小さくなる。
【0063】
多官能単量体の使用量は、単官能単量体と多官能単量体の総量100質量部に対して、10〜80質量部であると良く、20〜70質量部であると好ましく、30〜50質量部であると更に好ましい。
【0064】
重合開始剤には、一種または二種以上の過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等の公知のラジカル重合用重合開始剤を使用すると良い。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドが挙げられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
【0065】
重合開始剤の使用量は、単量体(単官能単量体と多官能単量体)の総量100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部であると良く、1質量部〜5質量部であると好ましい。
【0066】
単量体エマルションの調製では、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ラインミキサーなどの高速撹拌機を使用すると良い。
【0067】
上述の通り、シード粒子製造工程で得られた乳濁液と単量体エマルションを混合することにより、シード粒子に単量体を吸収させる。このときに使用する単量体エマルションの量は、当該エマルション中の単量体の総量がシード粒子調製工程で使用したケイ素化合物の質量の0.01倍〜100倍となる量であると良く、0.1〜50倍となる量であると好ましく、0.5〜30倍になる量であるとより好ましい。0.01倍より小さい場合は、シード粒子への単量体吸収量が少なくなり、本発明に係る粒子表面に凹凸が生じないことがある。一方、100倍を超える場合は、シード粒子に単量体を完全に吸収させることができないことがあり、この場合、後の重合工程において吸収されなかった単量体が本発明に係る粒子同士の凝集を引き起こす。
【0068】
上記乳濁液と単量体エマルションとの混合を行う場合、(1)単量体エマルションを一括して乳濁液に添加し、混合する方法、(2)単量体を数回に分けて乳濁液に添加し、混合する方法、(3)任意量の単量体エマルションを連続して乳濁液に添加し、混合する方法、等のいずれの方法も採用できる。
【0069】
顕微鏡観察によりシード粒子の粒子径が大きくなっていれば、シード粒子に単量体が吸収されたと判断できる。
【0070】
重合工程:
重合工程では、シード粒子に吸収された単量体をラジカル重合により重合させる。この際の重合方法は、単量体エマルションに含ませた重合開始剤の種別により熱重合法、光重合法等の重合方法を選択する。
【0071】
単量体を重合させるときの重合温度は、40〜100℃であることが好ましく、50〜90℃がより好ましい。上記反応温度が40℃未満の場合は、重合度が低くなって、得られた粒子の機械的特性が不十分になることがある。一方、100℃を超える場合は、重合過程において本発明に係る粒子同士の凝集が生じやすくなる。
【0072】
重合のための時間は、適宜に設定されるべきものである。あまりに短い重合時間であると、重合度が低くなり、あまりに長い時間であると、本発明に係る粒子同士の凝集が生じてしまうので、5〜600分であると良く、10〜300分であると好ましい。
【0073】
(粒子の用途)
本発明に係る粒子を樹脂に含ませた樹脂組成物として使用することができる。本発明に係る粒子は、樹脂による膨潤が抑制され、かつ光拡散性に優れるので、光学部材用材料として採用できるものである。この樹脂組成物は、本発明に係る粒子と樹脂を含んでいる限り、特に限定されない。つまり、溶剤、硬化剤、架橋剤、硬化触媒、顔料、染料、可塑剤、分散剤、重合安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などを含むものも樹脂組成物に該当する。
【0074】
樹脂組成物中における本発明に係る粒子の量は、適宜設定される。通常、樹脂組成物において5〜90質量%である。
【0075】
樹脂組成物を調製するための樹脂は、特に限定されない。光拡散フィルム、光拡散板等の光学部材を製造するための樹脂組成物を調製する場合には、透明性、樹脂微粒子分散性、耐光性、耐湿性および耐熱性などの特性に応じて樹脂を選択使用する。
【0076】
樹脂組成物を調製するための樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロへキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルシクロへキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ステアリル、および(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等から選択された一種または二種以上の共重合体である(メタ)アクリル系樹脂;(メタ)アクリルウレタン系樹脂;ウレタン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;メラミン系樹脂;スチレン系樹脂;アルキド系樹脂;フェノール系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリエステル系樹脂;(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、アルキルポリシロキサン系樹脂、シリコーン系樹脂、シリコーンアルキド系樹脂、シリコーンウレタン系樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル系樹脂等の変性シリコーン樹脂;ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテルポリマー等のフッ素系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、熱硬化性樹脂、温気硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等の硬化性樹脂でもよい。
【0077】
また、上記樹脂と共に、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等の有機系バインダー樹脂;シリカゾル、アルカリ珪酸塩、シリコンアルコキシド、これらの縮合物、リン酸塩等の無機系結着剤;等を用いても良い。また、多官能性イソシアネート化合物と水酸基を有する成分とが上記樹脂に含有されていると、多官能性イソシアネート化合物と水酸基を有する成分とで架橋構造が形成されるので、耐湿性、可撓性、耐久性などの特性がさらに向上する。
【0078】
溶剤を樹脂組成物に含ませた場合、樹脂組成物の塗工が容易になる。樹脂組成物の用途に応じて溶剤の一種または二種以上を適宜に選択する。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル等のアルコール系溶剤;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ジメチルホルムアミド;が挙げられる。
【0079】
上記樹脂組成物を使用して製造される光学部材は、例えば、樹脂組成物のみで成形された光学部材;透明のシートと、該表面に樹脂組成物で形成された光拡散層とを有する光学部材;等が挙げられる。
【0080】
図1は、樹脂組成物のみで形成された光学部材の一例を表す断面図である。図1に示す光学部材1は、フィルム状乃至は板状であって、樹脂2中に本発明に係る粒子3が分散する。粒子3が光を拡散する。光学部材1の厚み、大きさは、その用途に応じて適宜に定められる。光学部材1の表面に凹凸が形成されていてもよいし、その表面が平坦であってもよい。凹凸が形成されている場合、光学部材1の光拡散性が向上するので好ましい。なお、上記樹脂組成物を押出成形、キャスト成形すれば光学部材1を製造できる。
【0081】
図2は、透明シートと、このシート表面に樹脂組成物により形成された光拡散層とを有する光学部材の一例を表す断面図である。図2に示す光学部材5は、基材シート8と、基材シート8の表面に形成された光拡散層Aとを有するものである。光拡散層Aは、上記樹脂組成物の層を含む。
【0082】
基材シート8は、一般的な光学部材用シートから選択すると良い。このシートの材質としては、例えば、ガラス;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;トリアセチルセルロース;シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー;ポリメチルメタクリレート、ラクトン環を有する(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル樹脂系ポリマー;ポリスチレン;ポリカーボネート;ブチラール樹脂等のポリビニルアセタール;ポリアリールエーテル系樹脂等が挙げられる。熱収縮による反り、可撓性、剛直性、機械的強度等の要求特性に応じて基材シートの厚みが定められる。光学部材5をフィルム状にする場合、熱収縮に起因する反り等を抑制するとともに、取り扱い性および強度を高める観点から、基材シート8の下限値は、10μm以上であると好ましい。一方、光学部材5をフィルム状にする場合の基材シート8の厚みは、300μm未満が通常である。また、光学部材5を板状とする場合の基材シート8の厚みは、基材シート8自体が撓まず且つ光学部材5が撓むことが無い程度であると良く、0.3mm以上、10mm以下が通常である。
【0083】
基材シート8のヘイズは、好ましくは0%以上、20%以下、より好ましくは0%以上、10%以下、さらに好ましくは0%以上、5%以下である。また、基材シートの全光線透過率は、好ましくは70%以上、100%以下、より好ましくは80%以上、100%以下である。なお、ヘイズおよび全光線透過率は、日本電色工業社製「NDH−1001DP」等の濁度計を用いて、JIS K7105に準拠した測定法により測定した値である。
【0084】
樹脂組成物を基材シートに塗布後、乾燥させれば、光拡散層Aを形成できる。この光拡散層Aは、入射した光を充分に拡散する機能を有する。光拡散層Aの厚さは、1μm〜100μmが一般的である。光拡散層Aが1μm未満であると、光拡散層Aに入射した光を充分に拡散させることができないことがあり、光拡散層Aの厚さが100μmを超えると、光拡散層を通過する光量が減少する場合がある。光拡散層Aは、単層および2層以上の何れであっても良く、2層以上である場合には、少なくとも一層が上記樹脂組成物で形成されていると良い。
【0085】
なお、光拡散層Aの厚みは、光学部材1において、任意に選択した5箇所における光拡散層Aの厚みを測定し、それらの平均値を光拡散層Aの厚みとする。具体的には、光学部材1の一部をエポキシ系樹脂で包埋、固化した後、ミクロトームで光学部材1の断面方向に薄片状に切断し、これを試料として透過型電子顕微鏡で観察する。そして、電子顕微鏡像における光拡散層Aの厚みを測定し、測定値の平均値を光拡散層Aの厚みとする。
【0086】
光拡散層Aの表面に凹凸が形成されていてもよいし、その表面が平坦であってもよい。光拡散層Aの表面に凹凸がある場合、光拡散層Aの表面に形成される凸部の少なくとも一部が、本発明に係る粒子7の存在に基づくものであることが好ましい。
【0087】
上記樹脂組成物のみで成形された光学部材、および光拡散層を有する光学部材は、例えば、携帯電話、PDA端末、デジタルカメラ、テレビ、コンピュータなどにおける液晶表示装置のバックライトユニットの構成部材として使用される。液晶表示パネルの背後にバックライトユニットが配置され、このバックライトユニットからの光が照射されると液晶表示パネルに画像が表示される。また、プラズマ表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置などの視野角を拡大する用途などに、その光学部材を使用できる。
【0088】
図3は、バックライトユニットの構成例を表す分解図であり、図の上方向に液晶パネルが配設される。バックライトユニット9は、光源13と、光源13から下方向に出射した光を上方向に反射する役割を果たす反射シート14と、光源13からの光を拡散する光拡散板12と、光拡散板12を通過した光をさらに拡散する光拡散フィルム11と、光拡散フィルム11を通過した光を正面方向に集光するプリズムシート10と、を備える。なお、図3に表したバックライトユニット9は、公知のバックライトユニットの一例を表したものにすぎず、公知のバックライトユニットでは、複数枚の光拡散フィルムが用いられるのが通常である。
【0089】
上記樹脂組成物のみで成形された光学部材および光拡散層を有する光学部材のいずれも、その厚み、寸法、構成部材を適宜に定めることにより、バックライトユニット等の構成部材に適用できる光拡散フィルム、光拡散板に使用できる。このように使用される光学部材のヘイズは、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上であり、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。また、全光線透過率は好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上である。なお、ヘイズおよび全光線透過率は、濁度計(例えば、日本電色工業社製「NDH−1001DP」)を用いて、JIS K7105に準拠した測定法により測定することができる。
【0090】
上記樹脂組成物を使用して製造された光学部材は、光拡散フィルムや光拡散板以外にも使用できる。例えば、液晶表示装置等の表示パネルの最表面にフィルム状の上記光学部材を積層すれば、この積層された光学部材は、防眩フィルムとしての機能を発揮する。
【0091】
本発明に係る粒子には、上記樹脂組成物、光学部材以外の用途として、導電性粒子用粒子としての用途がある。導電性粒子は、本発明に係る粒子と、当該粒子表面に形成された導体層とを有する。この導電性粒子は、本発明に係る粒子を構成部材としているので、電気的に接続される一対の電極基板間の距離を一定に保持するための硬度および破壊強度とを有する。従って、液晶表示板、LSI、プリント配線基板等のエレクトロニクスの電気的接続材料として前記導電性粒子を使用できる。
【0092】
上記導体層は、本発明に係る粒子の表面の少なくとも一部に形成されていればよい。導体層を構成する金属は、特に限定はされない。その金属としては、例えば、ニッケル、金、銀、銅、インジウム、これらの合金が挙げられ、導電性が高いニッケル、金、インジウムが好ましい。導体層の厚みは、特に限定はされないが、0.01〜5.0μmであると良い。導体層は、1層および2層以上のいずれでもよく、2層以上の場合には、それぞれの導体層が異なる金属で構成されていても良い。
【0093】
公知の方法により導体層を形成すると良く、例えば、電解めっき法、化学めっき法、コーティング法、PVD(真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなど)法が挙げられる。
【実施例】
【0094】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0095】
(実施例1)
オルガノポリシロキサン粒子の調製:
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水526質量部、25質量%アンモニア水1.6質量部、およびメタノール118部を仕込み、撹拌しながらケイ素化合物である2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン30質量部を滴下口から添加して、この2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランの加水分解縮合によりラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサン粒子の乳濁液を調製した。この乳濁液の調製時間は、加水分解縮合開始から2時間とした。調製した乳濁液の一部を採取し、ベックマンコールター社製「コールターマルチサイザー」により測定したオルガノポリシロキサン粒子の平均粒子径は、2.02μmであった。
【0096】
単量体エマルションの調製:
乳化剤であるポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製「ハイテノールNF−08」)2.5質量部と、イオン交換水175質量部とで調製した乳化剤溶液に、単官能単量体であるスチレン60質量部、多官能単量体であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部、架橋剤である2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−65」)2質量部を加え、特殊機化工業社製「TKホモミキサー」を使用して6000rpm、5分間の条件で加えた化合物を乳化剤溶液に分散させて単量体エマルションを調製した。
【0097】
オルガノポリシロキサン粒子への単量体吸収:
上記単量体エマルションに上記乳濁液を混合し、撹拌した。単量体エマルションの混合から2時間後、混合液の一部を採取し、顕微鏡で観察したところ、オルガノポリシロキサン粒子が、単量体エマルションの成分を吸収して肥大化していた。
【0098】
単量体の重合:
上記乳濁液と単量体エマルションとの混合液を、窒素雰囲気に置いて65℃に昇温させた後に、当該昇温後の温度を2時間保持することにより、オルガノポリシロキサン粒子に吸収された単量体をラジカル重合させた。
【0099】
固液分離により上記重合後の液から得られたケーキをエタノールで洗浄し、さらに80℃で12時間真空乾燥させて実施例1の粒子を得た。粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製「コールターマルチサイザー」)により測定した実施例1の粒子の平均粒子径は3.5μm、粒子径の変動係数は2.7%であった。また、SEM(日立製作所社製走査型電子顕微鏡「S−3500N」)により実施例1の粒子を観察した。図4は、SEMで実施例1の粒子を5000倍率で観察した写真であり、図5は、10000倍率で観察した写真であり、図6は、20000倍率で観察した写真である。図4〜6において、実施例1の粒子表面には、複数の不規則形状の凹部が存在することを確認できる。
【0100】
(実施例2)
スチレンを80質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを20質量部使用した以外は、実施例1と同様にして実施例2の粒子を調製した。実施例2の粒子の平均粒子径は3.2μm、粒子径の変動係数は4.1%であった。SEMにより実施例2の粒子表面を観察したところ、実施例1の粒子と同様に、複数の不規則形状凹部の存在が確認された。
【0101】
(実施例3)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部をペンタエリスリトールテトラアクリレート40質量部に替えた以外は、実施例1と同様にして実施例3の粒子を調製した。実施例3の粒子の平均粒子径は4.2μm、粒子径の変動係数は3.9%であった。図7は、SEMで実施例3の粒子を5000倍率で観察した写真であり、図8は、15000倍率で観察した写真であり、図9は、25000倍率で観察した写真である。図7〜9において、実施例3の粒子の表面形状は、房状であったことを確認できる。
【0102】
(実施例4)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部をペンタエリスリトールトリアクリレート40質量部に替えた以外は、実施例1と同様にして実施例4の粒子を調製した。実施例4の粒子の平均粒子径は3.8μm、粒子径の変動係数は4.0%であった。図10は、SEMで実施例4の粒子を5000倍率で観察した写真であり、図11は、15000倍率で観察した写真であり、図12は、25000倍率で観察した写真である。図10〜12において、実施例4の粒子の表面形状は、房状であったことを確認できる。また、実施例4の粒子表面の凸部は、実施例3の粒子表面の凸部よりも小さかった。
【0103】
(比較例)
オルガノポリシロキサン粒子の調製において2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン30質量部に替えて3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン30質量部を使用し、ラジカル重合性不飽和結合(ラジカル重合性ビニル基)を有するオルガノポリシロキサン粒子を調製した。単量体エマルションの調製においてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部に替えてエチレングリコールジメタクリレート40質量部を使用した。これら以外は、実施例1と同様にして比較例の粒子を調製した。この粒子を調製する過程において得られたオルガノポリシロキサン粒子の平均粒子径は、1.95μmであった。また、比較例の粒子の平均粒子径は3.4μm、粒子径の変動係数は2.9%であった。そして、SEM観察で確認した比較例の粒子は、表面が平滑な真球状であった。
【0104】
(参考例1)
特開2000−191818号公報の実施例5に開示されている方法と同じ方法により、参考例1の粒子を調製した。つまり、次の通り参考例1の粒子を調製した。重量平均分子量30000のポリビニルピロリドン3.6質量部、アニオン界面活性剤(和光純薬工業社製「エアロゾルOT」)0.6質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.14質量部、およびエタノール84質量部の混合液を調製した。窒素気流下において撹拌されているその混合液にスチレン14質量部を滴下した。その後、混合液を60℃に昇温して、24時間反応を進行させることによりシード粒子を調製した。反応終了後、遠心分離機を使用してシード粒子を単離し、メタノールで洗浄した。このシード粒子0.5質量部、イオン交換水50質量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.05質量部を混合してシート粒子分散液を調製し、この分散液に3質量%ポリビニルアルコール水溶液20質量部を加えた。次に別途調製したジビニルベンゼン5質量部、含水量25質量%の過酸化べンゾイル0.25質量部、イオン交換水50質量部、およびラウリル硫酸ナトリウム0.1質量部からなる乳化液を、前記分散液に添加し、25℃、100rpmで24時間攪拌して乳化液をシード粒子に吸収させた。次に、シード粒子雰囲気を窒素置換した後、200rpm攪拌、70℃、24時間の条件でシード粒子に吸収させたジビニルベンゼンを重合させることにより、参考例1の粒子を調製した。そして、遠心分離機を使用して参考例1の粒子を分離し、エタノール、エタノールと水との混合媒体、水の順序で各2回ずつ参考例1の粒子の洗浄と遠心分離を行った。
【0105】
(参考例2)
特開2006−131738号公報の実施例1に開示されている方法と同じ方法により、参考例2の粒子を調製した。つまり、次の通り参考例2の粒子を調製した。エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート80質量部、過酸化ベンゾイル2.0質量部、水200質量部、およびポリオキシエチレン系フェニルエーテル硫酸エステル塩3.3質量部を5分間撹拌して調製した混合液に、電子顕微鏡観察による平均粒径2.9μmのポリメチルメタクリレート粒子であるシード粒子20質量部を添加し、50℃で30分間攪拌してシード粒子にエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレートを吸収させた。その後、60℃で4.0時間、更に95℃で8時間の条件でシード粒子に吸収させたエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレートを重合させることにより、参考例2の粒子を調製した。そして、吸引濾過により参考例2の粒子を分離し、濃度が20質量%となるように10質量%NaOH水溶液に参考例2の粒子を分散させ、その後、90℃で2時間加熱した。この分散液を冷却した後、塩酸で中和し、吸引濾過により参考例2の粒子を分離し、90℃で8時間乾燥した。
【0106】
後記の通り、実施例、比較例、および参考例の粒子を使用して光拡散フィルム、光拡散板、防眩フィルムを製造した。また、製造した光拡散フィルム等の特性を評価した。
【0107】
光拡散フィルム等の特性は、次の通り評価した。
(全光線透過率)
日本電色工業株式会社製の濁度計「NDH−1001DP」を使用し、JIS K7105に準拠して測定した。
【0108】
(ヘイズ)
日本電色工業株式会社製の濁度計「NDH−1001DP」を使用し、JIS K7105に準拠して測定した。
【0109】
(輝度)
トプコン社製の輝度計「BM−7」使用して輝度を測定した。当該測定においては、測定室内の雰囲気を温度25℃、湿度60%RHとし、15インチ型液晶表示装置用の直下型バックライトユニット(冷陰極管ランプの強度が10,000cd/m2となるようにランプ強度を設定)に、縦231mm、横321mmの測定試料を組み込み、測定試料における中心点の輝度(cd/m2)を測定した。なお、測定距離を50cmとし、視野角を1°とした。
【0110】
(防眩性)
試料の裏面に黒フィルムを貼り合わせ、2mの距離より10000cd/m2の蛍光灯を映し、その反射像のボケの程度を下記の基準により評価した。
○:蛍光灯の輪郭を判別できなかった
×:蛍光灯の輪郭を明確に確認できた
【0111】
(透過鮮明度)
写像測定器(スガ試験機社製「ICB−1DD」)と0.5mm幅の光学櫛を用いて、JIS K7150に従って透過鮮明度を測定した。
【0112】
(文字ボケ)
パーソナルコンピュタに接続した液晶モニタ(15インチXGA、TFT−TN方式、正面輝度350cd/m2、正面コントラスト300対1、表面AGなし)の表面に、試料を貼り合わせ、文字のボケ具合いを下記の基準により評価した。
○:文字の輪郭は全くボケていなかった。
×:文字の輪郭がボケており、強い違和感が感じられた
【0113】
(光拡散フィルム)
粒子(実施例または参考例の粒子10質量部、比較例の粒子50質量部)、ポリエステルポリオール100質量部、多官能イソシアネート(住化バイエルウレタン社製「スミジュールN320」)20質量部、および耐電防止剤2質量部を混合して樹脂組成物を調製した。ロールコート法により、調製した樹脂組成物を透明二軸延伸ポリエステルフィルム(厚さ:100μm)の表面に塗工した。その後、ポリエステルフィルムを室温で1時間放置し、次に80℃で2時間乾燥することにより、光拡散フィルムを製造した。光拡散フィルムの光拡散層(樹脂組成物の乾燥膜)の厚みは、15μmであった。
【0114】
なお、参考例1または2の粒子を使用しての樹脂組成物作製過程においては、粒子が膨潤して樹脂組成物の粘度が上昇したため、樹脂組成物を均一に塗工することができなかった。
【0115】
表1に光拡散フィルムの全光線透過率、ヘイズ、輝度を測定した結果を示す。
【0116】
【表1】
【0117】
上記表から、実施例1〜4の粒子を使用した光拡散フィルムは、比較例の粒子を使用したものとヘイズ値が同等であるものの、全光線透過率および輝度共に大幅に優れていたことが分かる。つまり、本発明に係る粒子の使用量が少ない光拡散フィルムであっても光を高散乱させることができるので、上記表の結果は、本発明に係る粒子を使用すれば、全光線透過率を低下させることなくヘイズを調整できることを実証するものである。また、この実証は、実施例1〜4の粒子を使用した光拡散フィルムと参考例1〜2の粒子を使用した光拡散フィルムとの対比においても同様である。
【0118】
(光拡散板)
粒子(実施例または参考例の粒子0.1質量部、比較例の粒子0.5質量部)、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジアプラスチック社製「ユーピロンE2000FN」)100質量部、フェノール−リン酸−ラクトンの三種混合系酸化防止剤(チバスペシャリティーケミカル社製「イルガノックス2215」)0.05質量部、およびオキサゾール系蛍光増白剤(チバスペシャリティーケミカル社製「ユビテックッスOB」)0.03質量部を、ベント・ギアポンプ付・3本ロール・2本ロール圧着ラミネート装置付のシート押出成形機に供給し、成形温度280℃でシート成形することにより、光拡散板(厚さ2mm)を得た。
【0119】
なお、参考例の粒子を使用して光拡散板を製造する際には、使用した粒子の変形、溶融が認められた。
【0120】
表2に光拡散板の輝度を測定した結果を示す。
【0121】
【表2】
【0122】
上記表から、実施例1〜4の粒子を使用した光拡散板は、比較例の粒子を使用したものと比較して輝度が大幅に高かったことが分かる。また、実施例1〜4の粒子を使用した光拡散板と、参考例1〜2の粒子を使用したものとの比較においても同様である。
【0123】
(防眩フィルム)
粒子(実施例または参考例の粒子1質量部、比較例の粒子3質量部)とトルエン20質量部を十分に撹拌混合した。当該混合液に、アクリル系電離放射線硬化樹脂40質量部、光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカル社製「イルガキュア907」)2質量部、メチルエチルケトン23質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル2質量部、およびレベリング剤(ビックケミー社製「BYK320」)0.5質量部を加え、十分に撹拌して樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を、バーコーターにより厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製「フジタック」)の片面に塗布した。当該塗布膜を80℃のトライヤーで乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて300mJ/cm2の紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させることにより防眩フィルムを得た。
【0124】
なお、参考例1および2の粒子を使用した防眩フィルムの製造において、樹脂組成物を調製する際に粒子が膨潤して樹脂組成物の粘度が上昇したため、トリアセチルセルロースフィルムに樹脂組成物を均一に塗布することができなかった。
【0125】
表3に防眩フィルムの防眩性、透過鮮明度、文字ボケの評価結果を示す。
【0126】
【表3】
【0127】
上記表から、実施例1〜4の粒子を使用した防眩フィルムは、比較例の粒子を使用したものと比較して透過鮮明度および文字ボケにおいて優れていたことが分かる。また、実施例1〜4の粒子を使用した防眩フィルムは、参考例1〜2の粒子を使用したものとの比較して、防眩性、透過鮮明度、および文字ボケの全てにおいて優れていたことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明に係る光学部材の一例を表す断面図である。
【図2】本発明に係る光学部材の他の例を表す断面図である。
【図3】バックライトユニットの構成例を表す分解図である。
【図4】SEMで実施例1の粒子を5000倍率で観察した写真である。
【図5】SEMで実施例1の粒子を10000倍率で観察した写真である。
【図6】SEMで実施例1の粒子を20000倍率で観察した写真である。
【図7】SEMで実施例3の粒子を5000倍率で観察した写真である。
【図8】SEMで実施例3の粒子を15000倍率で観察した写真である。
【図9】SEMで実施例3の粒子を25000倍率で観察した写真である。
【図10】SEMで実施例4の粒子を5000倍率で観察した写真である。
【図11】SEMで実施例4の粒子を15000倍率で観察した写真である。
【図12】SEMで実施例4の粒子を25000倍率で観察した写真である。
【符号の説明】
【0129】
A 光拡散層
1、5 光学部材
2、6 樹脂
3、7 粒子
8 基材シート
9 バックライトユニット
10 プリズムシート
11 光拡散フィルム
12 光拡散板
13 光源
14 反射シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機重合体とラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサンとが複合化し、表面に複数の凹部および/または凸部が存在する粒子。
【請求項2】
前記各凹部が不規則形状である請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記表面の形状が房状である請求項1に記載の粒子。
【請求項4】
前記有機重合体が、1個のラジカル重合性二重結合を有する単官能単量体と3個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能単量体との重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項5】
前記多官能単量体が、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである請求項4に記載の粒子。
【請求項6】
前記多価アルコールが、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリメチロールプロパンから選択された一種または二種以上である請求項5に記載の粒子。
【請求項7】
前記オルガノポリシロキサンが、下記一般式(1)で表される一種または二種以上のケイ素化合物を縮合させて製造されたものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の粒子。
R1nSi(OR2)4-n (1)
(一般式(1)中、R1はラジカル重合性不飽和結合を有さない有機基を表し、nは1または2を表し、R2は水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【請求項8】
前記一般式(1)で表されるケイ素化合物のR1の少なくとも一種が、エポキシ基を有する有機基である請求項7に記載の粒子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の粒子と樹脂とを含む樹脂組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の樹脂組成物を使用して製造された光拡散フィルム。
【請求項11】
請求項9に記載の樹脂組成物を使用して製造された光拡散板。
【請求項12】
請求項9に記載の樹脂組成物を使用して製造された防眩フィルム。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の粒子と、該粒子の少なくとも一部に形成された導体層とを有する導電性粒子。
【請求項14】
ラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサン粒子を製造するシード粒子製造工程と、
1個のラジカル重合性二重結合を有する単官能単量体および3個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能単量体を、前記オルガノポリシロキサン粒子に吸収させる吸収工程と、
前記単官能単量体および多官能単量体を重合させる重合工程とを有することを特徴とする粒子の製造方法。
【請求項15】
前記吸収工程における多官能単量体が、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである請求項14に記載の粒子の製造方法。
【請求項16】
前記多価アルコールが、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリメチロールプロパンから選択された一種または二種以上である請求項15に記載の粒子の製造方法。
【請求項17】
前記シード粒子製造工程において、下記一般式(1)で表される加水分解性ケイ素化合物を縮合させることにより前記オルガノポリシロキサン粒子を製造する請求項14〜16のいずれか1項に記載の粒子の製造方法。
R1nSi(OR2)4-n (1)
(一般式(1)中、R1はラジカル重合性不飽和結合を有さない有機基を表し、nは1または2を表し、R2は水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【請求項18】
前記一般式(1)で表されるケイ素化合物のR1の少なくとも一種が、エポキシ基を有する有機基である請求項17に記載の粒子の製造方法。
【請求項1】
有機重合体とラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサンとが複合化し、表面に複数の凹部および/または凸部が存在する粒子。
【請求項2】
前記各凹部が不規則形状である請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記表面の形状が房状である請求項1に記載の粒子。
【請求項4】
前記有機重合体が、1個のラジカル重合性二重結合を有する単官能単量体と3個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能単量体との重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒子。
【請求項5】
前記多官能単量体が、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである請求項4に記載の粒子。
【請求項6】
前記多価アルコールが、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリメチロールプロパンから選択された一種または二種以上である請求項5に記載の粒子。
【請求項7】
前記オルガノポリシロキサンが、下記一般式(1)で表される一種または二種以上のケイ素化合物を縮合させて製造されたものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の粒子。
R1nSi(OR2)4-n (1)
(一般式(1)中、R1はラジカル重合性不飽和結合を有さない有機基を表し、nは1または2を表し、R2は水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【請求項8】
前記一般式(1)で表されるケイ素化合物のR1の少なくとも一種が、エポキシ基を有する有機基である請求項7に記載の粒子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の粒子と樹脂とを含む樹脂組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の樹脂組成物を使用して製造された光拡散フィルム。
【請求項11】
請求項9に記載の樹脂組成物を使用して製造された光拡散板。
【請求項12】
請求項9に記載の樹脂組成物を使用して製造された防眩フィルム。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の粒子と、該粒子の少なくとも一部に形成された導体層とを有する導電性粒子。
【請求項14】
ラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサン粒子を製造するシード粒子製造工程と、
1個のラジカル重合性二重結合を有する単官能単量体および3個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能単量体を、前記オルガノポリシロキサン粒子に吸収させる吸収工程と、
前記単官能単量体および多官能単量体を重合させる重合工程とを有することを特徴とする粒子の製造方法。
【請求項15】
前記吸収工程における多官能単量体が、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである請求項14に記載の粒子の製造方法。
【請求項16】
前記多価アルコールが、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、およびトリメチロールプロパンから選択された一種または二種以上である請求項15に記載の粒子の製造方法。
【請求項17】
前記シード粒子製造工程において、下記一般式(1)で表される加水分解性ケイ素化合物を縮合させることにより前記オルガノポリシロキサン粒子を製造する請求項14〜16のいずれか1項に記載の粒子の製造方法。
R1nSi(OR2)4-n (1)
(一般式(1)中、R1はラジカル重合性不飽和結合を有さない有機基を表し、nは1または2を表し、R2は水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【請求項18】
前記一般式(1)で表されるケイ素化合物のR1の少なくとも一種が、エポキシ基を有する有機基である請求項17に記載の粒子の製造方法。
【図3】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−138034(P2009−138034A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312826(P2007−312826)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
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