説明

粒子からの核酸複合体の送達

本発明の実施形態は、核酸複合体を有する粒子、これを含む医療装置ならびに、関連の方法を含む。一実施形態では、本発明は医療装置の製造方法を含み得る。この方法は、核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、核酸複合体を多孔性粒子に吸着させて粒子を含有する核酸複合体を形成し、粒子を含有する核酸複合体をポリマー溶液と混合してコーティング混合物を生成し、当該コーティング混合物を基材に適用することを含み得る。一実施形態では、この方法は、核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、核酸複合体を材料と組み合わせて粒子を含有する核酸複合体をin situで形成し、核酸複合体粒子をポリマー溶液と混合してコーティング混合物を生成し、当該コーティング混合物を基材に適用することを含み得る。一実施形態では、本発明は、基材と、基材に配置された溶出制御マトリクスと、溶出制御マトリクス内に配置された複数の粒子と、粒子内に配置された複数の核酸複合体とを含み、核酸複合体が核酸とカチオン性キャリア剤とを含む、植込み型医療装置を含み得る。他の実施形態も本明細書に含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国を除くすべての指定国での出願人である米国籍企業SurModics, Inc.ならびに、指定国としての米国にかぎっての出願人であるオランダ国民であるJoram Slagerの名前で、2009年5月7日にPCT国際特許出願として出願されており、2008年5月7日出願の米国特許出願第60/051,041号(その内容を本明細書に援用する)の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、活性剤を放出するための装置および方法に関する。特に、本発明は、粒子から核酸複合体を放出するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
さまざまな病状の治療に対する有望な手法のひとつに、治療剤としての核酸の投与がある。一例として、この手法は、RNA、DNA、siRNA、miRNA、piRNA、shRNA、アンチセンス核酸、アプタマー、リボザイム、触媒DNAなどの投与を含み得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
標的細胞に対する作用に介在するために、核酸ベースの活性剤は通常、いくつかあるステップのうち特に、適切な標的細胞まで送達され、細胞によって取り込まれ、エンドソームから放出され、核または細胞質まで運ばれ(細胞内移動)なければならない。それ自体、核酸を用いて成功する治療は、部位特異的送達、送達段階での安定性、以後の標的細胞内での生物活性の度合いに左右される。さまざまな理由で、これらのステップは、達成が困難な場合がある。一例として、核酸はin vivoの環境では酵素によって容易に分解される。
【0005】
したがって、治療用核酸を標的組織に送達可能な装置ならびに、これを製造および使用する方法に需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、核酸複合体を有する粒子、これを含む医療装置ならびに、関連の方法を含む。一実施形態では、本発明は、核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、核酸複合体を多孔性粒子に吸収することを含み、粒子の平均直径が約100μm未満である、核酸複合体を有する粒子を形成する方法を含む。
【0007】
一実施形態では、本発明は、核酸複合体を有する粒子を形成する方法を含む。この方法は、核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、核酸複合体をポリマーと接触させ、ポリマーを架橋させることを含む。
【0008】
一実施形態では、本発明は、核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、ペプチドを含む溶液に核酸複合体を接触させることを含み、核酸複合体がペプチドの成核剤として作用する、核酸複合体を有する粒子を形成する方法を含み得る。
【0009】
一実施形態では、本発明は、医療装置の製造方法を含み得る。この方法は、核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、核酸複合体を多孔性粒子に吸着させて粒子を含有する核酸複合体を形成し、粒子を含有する核酸複合体をポリマー溶液と混合してコーティング混合物を生成し、当該コーティング混合物を基材に適用することを含み得る。
【0010】
一実施形態では、本発明は、医療装置の製造方法を含み得る。この方法は、核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、核酸複合体を材料と組み合わせて粒子を含有する核酸複合体をin situで形成し、核酸複合体粒子をポリマー溶液と混合してコーティング混合物を生成し、当該コーティング混合物を基材に適用することを含み得る。
【0011】
一実施形態では、本発明は、基材と、基材に配置された溶出制御マトリクスと、溶出制御マトリクス内に配置された複数の粒子と、粒子内に配置された複数の核酸複合体と、を含み、核酸複合体が核酸とカチオン性キャリア剤とを含む植込み型医療装置を含み得る。
【0012】
上記の発明の概要は、それぞれ論じられている本発明の実施形態を説明することを意図するものではない。これは、以下の図面および詳細な説明の目的である。
【0013】
以下の図面を参照することで、本発明を一層完全に理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本明細書に記載の実施形態による核酸複合体を含む粒子の概略断面図である。
【図2】本明細書に記載の実施形態による活性剤送達装置の概略断面図である。
【図3】本明細書に記載の実施形態による活性剤送達装置の概略断面図である。
【図4】本明細書に記載の実施形態による核酸複合体を含む粒子の概略断面図である。
【図5A】蛍光顕微鏡法で撮影した粒子の画像である。
【図5B】蛍光顕微鏡法で撮影した粒子の画像である。
【図6】ポリアルジトール粒子からの核酸複合体の放出を示すグラフである。
【図7】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図8A−8B】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図9A】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図9B】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図9C】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図9D】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図9E】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図9F】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図9G】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図9H】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図9I】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図9J】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図10A】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図10B】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図10C】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図10D】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図10E】蛍光顕微鏡法で撮影したHEK293細胞の画像である。
【図11A】ミリグラム単位のPVP粒子の関数としてDNAの放出を示す。
【図11B】ミリグラム単位のPVP粒子の関数としてDNAの放出を示す。
【図12】siRNAでのトランスフェクションの結果としてのルシフェラーゼ発現のノックダウンの割合を示すグラフである。
【図13】siRNAでのトランスフェクションの結果としてのルシフェラーゼ発現のノックダウンの割合を示すグラフである。
【図14】siRNAでのトランスフェクションの結果としてのルシフェラーゼ発現のノックダウンの割合を示すグラフである。
【図15】siRNAでのトランスフェクションの結果としてのルシフェラーゼ発現のノックダウンの割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用する場合、「複合体」という用語は、非共有結合による2以上の化学種の化学的会合を示すものとする。
【0016】
核酸ベースの治療剤の活性を維持するためのひとつの手法に、哺乳類の被検体への投与前に核酸を送達剤と複合化することがある。一例として、送達段階での分解を防止し、細胞侵入を促進するために、核酸(正味の負電荷を有する)を、ポリエチレンイミンなどの正味の正電荷を有するキャリア剤と複合化することが可能である。これらの核酸/キャリア複合体は、ポリプレックスまたは核酸複合体と呼ばれることもある(文脈によっては、これらの複合体は核酸送達粒子とも呼ばれてきたが、そこでの「粒子」という用語の使い方は、本明細書に記載の核酸複合体を含む粒子とは異なる)。ポリプレックスを使用すると送達段階で核酸の活性を保つ一助にはなり得るが、核酸の徐放という論点には触れていない。
【0017】
溶出制御マトリクスを使用すれば、いくつかのタイプの活性剤の徐放が得られる。しかしながら、溶出制御コーティングなどの溶出制御マトリクスからの核酸複合体の送達は、特定の課題を提示し得るものである。これらが一般にコーティング形成で用いられる条件下で解離するか、そうでなければ不活性化される可能性があるためである。たとえば、核酸複合体は、ポリマー溶出制御コーティングを適用するのに普通に用いられる有機溶媒によって、不活性化したり、そうでなければ損なわれたりすることがある。
【0018】
本発明の実施形態は、複合体を粒子内に配置した後、この粒子を装置および/またはコーティングに取り込むことを伴う、核酸複合体を投与するための方法を含み得る。核酸複合体を粒子内に配置した後、これらは一層丈夫で、以後の処理時に分解されにくくなる。それにもかかわらず、粒子内に配置された核酸複合体は、その活性を維持することが可能であり、図示のように、以下の実施例をうまく用いて標的細胞をトランスフェクトすることが可能である。いくつかの実施形態では、粒子内に配置される核酸複合体が、有機溶媒中に懸濁されているにもかかわらず、その活性を保持し得る。核酸複合体を配置する粒子は、多孔性セラミック粒子との関連など予備成形したものであってもよいし、核酸複合体と、ポリマー賦形剤などの少なくとも1種類の他の成分とを含む混合物からin situで形成することも可能である。ポリマー賦形剤は、ペプチドおよび多糖を含み得るがこれに限定されるものではない。以下、代表的な実施形態の態様について、一層詳細に説明する。
【0019】
ここで図1を参照すると、核酸複合体を含む粒子100の概略断面図が示されている(原寸比例ではない)。粒子100は、粒子材料102と、粒子材料102内部の1つ以上の核酸複合体106とを含み得る。粒子材料は、ポリマー(架橋ポリマーを含む)、セラミック、金属などであればよい。具体例としては、カオリン、架橋ポリビニルピロリドンまたは架橋メタクリレートマルトデキストリンがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0020】
粒子材料を予備成形した後に核酸複合体をこれに加えることが可能である。あるいは、核酸複合体の周りに粒子材料をin situで形成しても構わない。粒子材料の具体例については、後ほど詳細に説明する。核酸複合体は、核酸とカチオン性キャリア剤とを含み得る。代表的な核酸複合体に関するさらに詳細については、後述する。粒子100は、直径108が約1μm〜約50μmであればよい。図1に示す粒子100は断面が球状であるが、本発明の実施形態が不規則な形状をはじめとして異なる形状の粒子を含み得る旨は理解できよう。
【0021】
粒子が相分離技術で形成されるものなどのいくつかの実施形態では、相分離を開始するのに用いられる残留量の両親媒性ポリマーが、粒子内に残っていてもよい。いくつかの実施形態では、粒子に残る両親媒性ポリマーの量が約5重量パーセント未満である。いくつかの実施形態では、それが約2重量パーセント未満である。いくつかの実施形態では、それが0重量パーセントよりも多い。いくつかの実施形態では、それが0重量パーセント〜5重量パーセントの間である。
【0022】
本明細書のさまざまな実施形態によれば、核酸複合体を含有する粒子を、活性剤溶出制御マトリクス(または徐放マトリクス)内に取り込んでもよい。ここで図2を参照すると、活性剤送達装置200を形成する溶出制御マトリクス210内に配置された複数の粒子100が示されている。溶出制御マトリクス210は、粒子100内の核酸複合体を溶出制御マトリクス210の外まで溶出させることのできる材料で生成可能なものである。溶出制御マトリクス210は、さまざまなポリマーなどのさまざまな材料を含み得る。いくつかの実施形態では、溶出制御マトリクス210が非分解性ポリマーを含み得る。代表的な非分解性ポリマーについては、後ほど詳細に説明する。いくつかの実施形態では、溶出制御マトリクス210が分解性ポリマーを含み得る。代表的な分解性ポリマーについては、後ほど詳細に説明する。いくつかの実施形態では、溶出制御マトリクス210が、分解性ポリマーと非分解性ポリマーの両方を含み得る。溶出制御マトリクス210は、さまざまな技術を用いて堆積可能なものである。一例として、噴霧堆積、ディップコーティング、ブラシコーティング、プリンティング、キャスティングなどがあげられる。噴霧堆積を容易にするなどのいくつかの実施形態では、粒子100を堆積前に有機溶媒に懸濁させてもよい。一例として、粒子100を溶出制御マトリクス210のポリマーと一緒に堆積前に有機溶媒に懸濁させてもよい。図2では、活性剤送達装置200は、実質的に平坦な構成で示されている。しかしながら、装置200が、フィラメント、円柱、不規則な形状などをはじめとする多くの異なる形態を取り得ることは、理解できよう。
【0023】
いくつかの実施形態では、核酸複合体を含有する粒子を含む溶出制御マトリクスを、医療装置の基材上に配置可能である。一例として、このような溶出制御マトリクスを金属ステントに配置可能である。本明細書に含まれる医療装置の別の例については、後述する。ここで図3を参照すると、核酸複合体を含む粒子302のある溶出制御マトリクス310を含む装置300であって、溶出制御マトリクス310が基材312に配置された状態が示されている。基材312は、ポリマー、金属、セラミックなどをはじめとするさまざまなタイプの材料を含み得る。基材材料の別の例については後述する。図示の基材312が、医療装置の一部をなすことも可能である。
【0024】
核酸複合体を含有する粒子は、さまざまな方法で形成可能である。上述したように、いくつかの実施形態では、粒子材料を予備成形し、核酸複合体を粒子材料に加えるか、吸収させる。他の実施形態では、粒子材料を核酸複合体の周りにin situで形成する。粒子材料を核酸複合体の周りに形成するには、さまざまな技術を用いることが可能である。いくつかの実施形態では、粒子材料がポリマー系であり、これを核酸複合体の周りに配置した後で架橋ステップを実施してポリマーを架橋させることが可能である。架橋は、光開始およびレドックス反応開始をはじめとする、当業者間で周知のさまざまな技術で開始可能である。
【0025】
いくつかの実施形態では、核酸複合体が効果的に成核剤として機能でき、粒子を形成するための材料を核酸複合体の周りに堆積可能である。一例として、相分離技術などの技術で、核酸複合体を用いて、タンパク質(Fab断片など)を粒子に形成可能である。このような実施形態では、タンパク質またはペプチドが、相分離のなされるポリマー賦形剤として機能できる。この手法の一例を以下の実施例3に示す。このような手法では、成核剤をペプチド溶液に加えたときにペプチド核を形成するのに十分な濃度で、ペプチドを溶液に溶解させることが可能である。多くの調製物において、溶液中でのペプチドの濃度は通常、約10mg/mL以上の濃度である。しかしながら、選択したペプチドが容易に成核剤と融合して核が形成されるのであれば、これよりも低濃度のペプチドを用いてもよい。実用上の特定のモードでは、ペプチドが抗体またはFab断片であり、約10mg/mL〜約50mg/mLの範囲、特に15mg/mL〜約20mg/mLの範囲の濃度で溶液中にある。
【0026】
ペプチド以外に、他の成分も相分離がなされるポリマー賦形剤として機能し得る旨は理解できよう。一例として、ポリマー賦形剤は、多糖を含み得る。代表的な多糖としてグリコーゲンがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0027】
ここで図4を参照すると、核酸複合体406を含む粒子400の概略図が示されている。核酸複合体406は、核酸と、カチオン性キャリア剤とを含む。核酸複合体は、複数の正に荷電した基402を外面(本明細書では、説明の都合で概念的に図示してある)に有する。タンパク質などの材料からなる層410を核酸複合体406の周りに堆積させることが可能である。いくつかの実施形態では、層410は、ポリマー、炭水化物などをはじめとする他のタイプの材料を含み得る。
【0028】
相分離技術は、粒子を形成するための成分の材料を含有する溶液に相分離剤を混合することを含み得る旨は理解できよう。相分離剤には、両親媒性化合物が可能である。両親媒性試薬をポリマー系と非ポリマー系の両親媒性材料から選択すればよい。本発明のいくつかの態様では、両親媒性試薬が両親媒性ポリマーである。代表的な両親媒性ポリマーおよび化合物として、ポリ(エチレングリコール)(PEG)およびPEGコポリマー、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパンエトキシレートおよびペンタエリスリトールエトキシレート、ポリビニルピロリドン(PVP)およびPVPコポリマー、デキストラン、Pluronic(商標)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピリジン、ポリリシン、ポリアルギニン、スルホン酸PEG、脂肪族第四級アミン、脂肪族スルホネート、脂肪酸、デキストラン、デキストリン、シクロデキストリンがあげられる。両親媒性ポリマーは、親水性と疎水性のポリマーブロックのコポリマーであってもよい。
【0029】
いくつかの態様では、両親媒性試薬(両親媒性ポリマーなど)の濃縮溶液を調製した後、粒子を形成するための成分の材料を含有する溶液に加える。実用上の多くのモードでは、両親媒性試薬の最終濃度が約1%(w/v)以上になるように、両親媒性試薬を溶液に加える。いくつかの実施形態では、両親媒性試薬の最終濃度が、約2.5%(w/v)〜約12.5%(w/v)、特に約5%(w/v)〜約10%(w/v)の範囲である。たとえば、PEGなどの両親媒性試薬を、約7.5%の量で使用可能である。
【0030】
核酸複合体
さまざまな実施形態で用いられる核酸複合体は、活性剤としての核酸と、この核酸に複合化されたキャリア剤とを含み得る。本発明の実施形態で用いられるキャリア剤は、製造および送達過程で核酸の活性を保つために核酸と複合化可能な化合物を含み得る。
【0031】
代表的なクラスの好適なキャリア剤としては、カチオン性化合物(正味の正電荷を有する化合物)ならびに、電荷が中性の化合物があげられる。一例として、好適なキャリア剤は、カチオン性ポリマーおよびカチオン性脂質を含み得る。また、好適なカチオン性キャリア剤は、シクロデキストリン含有ポリカチオン、ヒストン、カチオン化ヒト血清アルブミン、キトサンなどのアミノ多糖、ポリ−L−リシン、ポリ−L−オルニチンおよびポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステルなどのペプチド、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリプロピレンイミン、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリ(β−アミノエステル)などのポリアミンも含み得る。他のキャリア剤として、固体の核酸脂質ナノ粒子(SNALP)、リポソーム、ポリビニルピロリドン(PVP)などがあげられる。さらに、キャリアを、特定の細胞型を標的できるようにする分子にコンジュゲートしてもよい。標的化剤の例として、特定の細胞表面分子を認識して結合する抗体およびペプチドがあげられる。
【0032】
たとえば、実用上の一モードでは、PEIと核酸とを組み合わせてポリプレックスを調製する。一般論として、PEI試薬は重量単位あたり特定数の第一級アミノ基(「N」)を提供し、核酸が重量単位あたり特定数の荷電したホスフェート基(「P」)を提供する。PEIと核酸とを組み合わせ、所望のN:P比を得ることが可能である。いくつかの態様では、N:P比が約10:1〜約25:1の範囲である。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明の実施形態で用いる核酸送達コンストラクトが、対象となる細胞への核酸の送達を容易にするペプチドを含み得る。たとえば、代表的なペプチドは、核酸と会合し、細胞の細胞質に対するその核酸の送達を容易にする可能である。本明細書で使用する場合、「ペプチド」という用語は、あるアミノ酸(残基)のカルボキシル基と次のアミノ酸のアミノ基から形成されるアミド結合(単数または複数)で結合された2つ以上のアミノ酸残基を含有するあらゆる化合物を含むものとする。それ自体、ペプチドは、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質などを含み得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、本発明の実施形態で用いられる核酸送達コンストラクトが、細胞透過ドメインおよび核酸結合ドメインなどの少なくとも2つのドメインを有するペプチドを含み得る。本明細書で使用する場合、「細胞透過ドメイン」という用語は、細胞内への分子の侵入を容易にするよう機能するペプチド分子の領域を示すものとする。本明細書で使用する場合、「核酸結合ドメイン」という用語は、核酸と結合するよう機能するペプチド分子の領域を示すものとする。
【0035】
多くの異なるペプチドが本明細書で企図されることは、理解できよう。MPGとして知られる代表的なペプチドのひとつは、HIV−1 gp41タンパク質由来の疎水性ドメインと、SV40ラージT抗原の核局在配列(NLS)由来の塩基性ドメインとからなる27アミノ酸の二分両親媒性ペプチドである(GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKKKRKV)(N-TER Nanoparticle siRNA Transfection SystemとしてSigma-Aldrich, St. Louis, MOから市販されている)。MPGΔNLSとして知られるもうひとつの代表的なペプチドも、27アミノ酸の二分両親媒性ペプチド(GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKSKRKV)である。他の代表的なペプチドとしては、ポリ−アルギニン融合ペプチドがあげられる。さらに他の代表的なペプチドには、二本鎖RNA結合ドメイン(PTD−DRBDペプチド)で結合されたタンパク質形質導入ドメインを持つものがある。
【0036】
本発明の実施形態で使用する核酸は、治療効果が得られるよう機能し得るさまざまなタイプの核酸を含み得る。代表的なタイプの核酸として、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、piwi相互作用RNA(piRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、アンチセンス核酸、アプタマー、リボザイム、ロックされた核酸、触媒DNAがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0037】
核酸送達複合体は、さまざまなプロセスを経てキャリア剤および核酸から形成可能である。場合によっては、たとえば、カチオン性キャリア剤がアニオン性核酸分子と相互作用し、小さく規則正しい複合体として凝縮される。それ自体、いくつかの実施形態では、核酸送達複合体を形成するのに核酸を単にカチオン性キャリア剤と接触させればよい。
【0038】
ポリマー
核酸複合体が配置される粒子を形成する材料としてポリマーを含ませることが可能である。核酸を含み得る粒子の形成に使用可能なポリマーの例として、エチレンビニルアルコールコポリマー;ポリ(ヒドロキシバレレート);ポリ(L−乳酸);ポリカプロラクトン;ポリ(ラクチド−コ−グリコライド);ポリ(ヒドロキシブチレート);ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−バレレート);ポリジオキサノン;ポリオルトエステル;ポリ酸無水物;ポリ(グリコール酸);ポリ(D,L−乳酸);ポリ(グリコール酸−コ−トリメチレンカーボネート);ポリホスホエステル;ポリホスホエステルウレタン;ポリ(アミノ酸);シアノアクリレート;ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(イミノカーボネート);コポリ(エーテルエステル)(PEO/PLAなど);ポリアルキレンオキサレート;ポリホスファゼン;フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、スターチ、コラーゲン、ヒアルロン酸などの生体分子;ポリウレタン;シリコーン;ポリエステル;ポリオレフィン;ポリイソブチレンおよびエチレン−αオレフィンコポリマー;アクリルポリマーおよびコポリマー;ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニルポリマーおよびコポリマー;ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル;ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン化ポリビニリデン;ポリアクリロニトリル;ポリビニルケトン;ポリスチレンなどのポリビニル芳香族;ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル;エチレン−メタクリル酸メチルコポリマー、アクリロニトリルスチレンコポリマー、ABS樹脂、エチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのビニルモノマー同士やビニルモノマーとオレフィンとのコポリマー;ナイロン66およびポリカプロラクタムなどのポリアミド;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル;エポキシ樹脂;ポリウレタン;レーヨン;レーヨン−トリアセテート;セルロース;酢酸セルロース;酪酸セルロース;酪酸酢酸セルロース;セロファン;硝酸セルロース;プロピオン酸セルロース;セルロースエーテル;およびカルボキシメチルセルロースがあげられる。
【0039】
さまざまな実施形態では、溶出制御マトリクスの一部としてポリマーを含めることも可能である。多くの異なるタイプのポリマーをこの目的で使用できる。溶出制御マトリクスの形成に用いることが可能なポリマーの具体例については後述する。
【0040】
分解性ポリマー
分解性ポリマーを、本明細書のいくつかの実施形態と関連させることが可能である。一例として、いくつかの実施形態では、核酸複合体を含有する粒子に分解性ポリマーを含めることが可能である。いくつかの実施形態では、核酸複合体を有する粒子を含む溶出制御マトリクスに分解性ポリマーを含めることが可能である。本発明の実施形態で用いられる分解性ポリマーは、天然ポリマーまたは合成ポリマーの両方を含み得る。分解性ポリマーの例として、ポリマー骨格に加水分解的に不安定な結合を有するものがあげられる。本発明の分解性ポリマーは、バルク浸食特性を有するものと表面浸食特性を有するものの両方を含み得る。
【0041】
理論に拘泥されることを意図したわけではないが、分解性ポリエステルを用いることは、核酸複合体の徐放を提供するという観点で利点となり得る。なぜなら、マトリクス内での拡散だけでなくマトリクスの分解によっても放出に介在可能であるからである。
【0042】
合成分解性ポリマーは、分解性ポリエステル(ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(ジオキサノン)、ポリラクトン(ポリ(カプロラクトン)など)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(バレロラクトン)、ポリ(タルトロン酸)、ポリ(β−マロン酸)、ポリ(プロピレンフマレート))など;分解性ポリエステルアミド;分解性ポリ酸無水物(ポリ(セバシン酸)、ポリ(1,6−ビス(カルボキシフェノキシ)ヘキサン、ポリ(1,3−ビス(カルボキシフェノキシ)プロパン);分解性ポリカーボネート(チロシンベースのポリカーボネートなど);分解性ポリイミノカーボネート;分解性ポリアリレート(チロシンベースのポリアリレートなど);分解性ポリオルトエステル;分解性ポリウレタン;分解性ポリホスファゼン;およびこれらのコポリマーを含み得る。
【0043】
天然または天然ベースの分解性ポリマーは、スターチ、セルロース、キチン、キトサン、およびこれらのコポリマーなど、多糖および修飾多糖を含み得る。
【0044】
分解性ポリマーの具体例として、以下の一般構造で説明可能なポリ(エチレングリコール)(PEG)およびポリ(ブチレンテレフタレート)を主成分とするポリ(エーテルエステル)マルチブロックコポリマーがあげられる。
[−(OCH2CH2n−O−C(O)−C64−C(O)−]x[−O−(CH24−O−C(O)−C64−C(O)−]y,
式中、−C64−はテレフタル酸の各エステル化分子からの二価の芳香環残基を示し、nは各親水性PEGブロックにおけるエチレンオキシド単位の数を示し、xはコポリマー中の親水性ブロックの数を示し、yはコポリマー中の疎水性ブロックの数を示す。添え字「n」は、PEGブロックの分子量が約300〜約4000になるように選択可能である。ブロックコポリマーを操作して、コポリマー構造の値n、x、yを変えることで幅広い物理的特性(親水性、密着性、強度、鍛造性、分解性、耐久性、可撓性など)ならびに、活性剤放出特性(制御されたポリマー分解および膨張によるなど)を得るようにしてもよい。このような分解性ポリマーは特に、米国特許第5,980,948号明細書(その内容全体を本明細書に援用する)に記載されているものを含み得る。
【0045】
分解性ポリエステルアミドは、モノマーOH−x−OH、zおよびCOOH−y−COOHから形成されるものを含み得る。ここで、xはアルキル、yはアルキル、zはロイシンまたはフェニルアラニンである。このような分解性ポリエステルアミドは特に、米国特許第6,703,040号明細書((その内容全体を本明細書に援用する)に記載されているものを含み得る。
【0046】
分解性ポリマー材料は、(a)非ペプチドポリアミノポリマー;(b)ポリイミノカーボネート;(c)アミノ酸由来のポリカーボネートおよびポリアリレート;および(d)ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーからも選択可能である。
【0047】
一実施形態では、分解性ポリマー材料が、非ペプチドポリアミノ酸ポリマーからなる。代表的な非ペプチドポリアミノ酸ポリマーが、たとえば、米国特許第4,638,045号明細書(「Non−Peptide Polyamino Acid Bioerodible Polymers」、1987年1月20日)に記載されている。一般的に言えば、これらのポリマー材料は、以下に示す2つの構造のうちの1つを有する、2つまたは3つのアミノ酸単位を含むモノマー由来である。
【0048】
【化1】

式中、モノマー単位は、側基R1、R2、R3の1箇所以上で加水分解的に不安定な結合によって結合され、ここでR1、R2、R3は、天然に生じるアミノ酸の側鎖であり;Zは望ましい任意のアミン保護基または水素であり、Yは望ましい任意のカルボキシル保護基またはヒドロキシルである。各モノマー単位が天然に生じるアミノ酸を含み、これが後にアミドまたは「ペプチド」結合以外の結合によってモノマー単位として重合される。モノマー単位は、ペプチド結合によって結ばれた2つまたは3つのアミノ酸からなるものであってもよく、よって、ジペプチドまたはトリペプチドを含む。モノマー単位の厳密な組成とは関係なく、いずれもポリペプチド鎖に典型的なアミド結合を形成するアミノ基およびカルボキシル基ではなく、それぞれの側鎖を介して加水分解的に不安定な結合によって重合される。このようなポリマー組成物は無毒かつ分解性で、多岐にわたる治療用途において活性剤の送達にゼロ次の放出動態を提供できる。これらの態様によれば、アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リシン、ヒドロキシリシン、アルギニン、ヒドロキシプロリン、メチオニン、システイン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、シトルリン、オルニチン、ランチオニン、ヒポグリシンA、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、αアミノアジピン酸、カナバニン、venkolic acid、チオールヒスチジン、エルゴチオニン、ジヒドロキシフェニルアラニンをはじめとする天然に生じるL−αアミノ酸ならびに、タンパク質化学において十分に認識されてキャラクタライズされている他のアミノ酸から選択される。
【0049】
本発明の分解性ポリマーは、発明の名称「COATINGS FOR MEDICAL ARTICLES INCLUDING NATURAL BIODEGRADABLE POLYSACCHARIDES」として米国特許出願公開第2005/0255142号明細書に記載されているもの、発明の名称「COATINGS INCLUDING NATURAL BIODEGRADABLE POLYSACCHARIDES AND USES THEREOF」として米国特許出願公開第2007/0065481号明細書に記載されているもの、発明の名称「HYDROPHOBIC DERIVATIVES OF NATURAL BIODEGRADABLE POLYSACCHARIDES」として米国特許出願公開第20070218102号明細書に記載されているもの(いずれもその内容全体を本明細書に援用する)などの重合化多糖も含み得る。
【0050】
本発明の分解性ポリマーは、発明の名称「PROCESS FOR THE PREPARATION OF A CONTROLLED RELEASE SYSTEM」として米国特許第6,303,148号明細書に記載されているもの(その内容全体を本明細書に援用する)などのデキストランベースのポリマーも含み得る。商品名OCTODEXで市販されているものを含む代表的なデキストランベースの分解性ポリマー。
【0051】
本発明の分解性ポリマーはさらに、コラーゲン/ヒアルロン酸ポリマーを含み得る。
【0052】
本発明の分解性ポリマーは、プレポリマーAおよびB由来の少なくとも2つの加水分解性セグメントを含むマルチブロックコポリマーを含み得るものであり、これらのセグメントは多官能性鎖延長剤によって結合され、プレポリマーAおよびBならびに、トリブロックコポリマーABAおよびBABから選択され、ここで、マルチブロックコポリマーは非晶質であり、生理学的(身体)条件にて最大でも37℃(Tg)で1以上のガラス転移点(Tg)を有する。プレポリマーAおよびBには、ラクチド(L,DまたはL/D)、グリコライド、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、炭酸トリメチレン、炭酸テトラメチレン、1,5−ジオキセパン−2−オン、1,4−ジオキサン−2−オン(para−ジオキサノン)などの環状モノマーまたは環状無水物(オキセパン−2,7−ジオン)由来の加水分解性ポリエステル、ポリエーテルエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリ酸無水物またはこれらのコポリマーが可能である。プレポリマーの組成については、得られるコポリマーの身体状態での最高ガラス転移点が37℃未満になるように選択すればよい。37℃未満というTgの要件を満たすのに、上述したモノマーまたはモノマーの組み合わせのうちのいくつかのほうが他のものより好ましいことがある。これだけでTgが下がることもあるし、あるいはコポリマーのガラス転移点を下げるのに十分な分子量のポリエチレングリコールでプレポリマーを修飾する。分解性マルチブロックコポリマーは、非晶質の加水分解性配列を含み得るものであり、物理的特性や分解特性の異なるセグメントが多官能性鎖延長剤によって結合されることもある。たとえば、グリコライド−ε−カプロラクトンセグメントおよびラクチド−グリコライドセグメントからなるマルチブロックコ−ポリエステルを、2種類のポリエステルプレポリマーで構成することが可能である。セグメントのモノマー組成、セグメント比、長さを制御することで、容易に調節可能な特性を持つ多岐にわたるポリマーが得られる。このような分解性マルチブロックコポリマーは特に、米国特許出願公開第2007/0155906号明細書(その内容全体を本明細書に援用する)に記載されているものを含み得る。
【0053】
非分解性ポリマー
非分解性ポリマーを、本明細書のいくつかの実施形態と関連させることが可能である。一例として、いくつかの実施形態では、核酸複合体を含有する粒子に非分解性ポリマーを含めることが可能である。いくつかの実施形態では、核酸複合体を有する粒子を含む溶出制御マトリクスに非分解性ポリマーを含めることが可能である。一実施形態では、非分解性ポリマーは、第1のポリマーおよび第2のポリマーを含む複数のポリマーを含む。コーティング溶液が1種類のポリマーしか含有しない場合、これは本明細書に記載したような第1のポリマーであっても第2のポリマーであってもよい。本明細書で使用する場合、「(メタ)アクリレート」という用語は、ポリマーを説明するのに用いる際、メチル基を含む形態(メタクリレート)またはメチル基を含まない形態(アクリレート)を意味するものとする。
【0054】
本発明の第1のポリマーは、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)およびポリ(芳香族(メタ)アクリレート)からなる群から選択されるポリマーを含み得るものであり、ここで、当業者であれば「(メタ)」とはアクリルおよび/またはメタクリル形態(それぞれアクリレートおよび/またはメタクリレートに対応)におけるこのような分子を含むものと理解するであろう。代表的な第1のポリマーは、ポリ(n−ブチルメタクリレート)(pBMA)である。このようなポリマーは、分子量約200,000ダルトン〜約320,000ダルトンの範囲で、さまざまな内部粘度、溶解性および形態(結晶または粉末など)でAldrichなどから市販されている。いくつかの実施形態では、分子量約200,000ダルトン〜約300,000ダルトンのポリ(n−ブチルメタクリレート)(pBMA)を使用する。
【0055】
好適な第1のポリマーの例には、ポリ(アリール(メタ)アクリレート)、ポリ(アラルキル(メタ)アクリレート)、およびポリ(アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート)からなる群から選択されるポリマーも含まれる。このような用語は、少なくとも1つの炭素鎖と少なくとも1つの芳香環が、一般にエステルであるアクリル基と組み合わさり、組成物が得られるポリマー構造を説明するのに用いられる。特に、代表的なポリマー構造は、6〜16個の炭素原子を有し、重量平均分子量が約50〜約900キロダルトンであるアリール基を有するものを含む。好適なポリ(アラルキル(メタ)アクリレート)、ポリ(アリールアルキ(メタ)アクリレート)またはポリ(アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート)は、同じく芳香族部分を含有するアルコール由来の芳香族エステルから生成可能である。ポリ(アリール(メタ)アクリレート)の例として、ポリ(9−アントラセニルメタクリレート)、ポリ(クロロフェニルアクリレート)、ポリ(メタクリルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン)、ポリ(メタクリルオキシベンゾトリアゾール)、ポリ(ナフチルアクリレート)および−メタクリレート)、ポリ(4−ニトロフェニルアクリレート)、ポリ(ペンタクロロ(ブロモ、フルオロ)アクリレート)および−メタクリレート)、ポリ(フェニルアクリレート)および−メタクリレート)があげられる。ポリ(アラルキル(メタ)アクリレート)の例として、ポリ(ベンジルアクリレート)および−メタクリレート)、ポリ(2−フェネチルアクリレート)および−メタクリレート、ポリ(1−ピレニルメチルメタクリレート)があげられる。ポリ(アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート)の例として、ポリ(フェノキシエチルアクリレート)および−メタクリレート)、ポリ(ポリエチレングリコールフェニルエーテルアクリレート)および−メタクリレート(さまざまなポリエチレングリコール分子量である)があげられる。
【0056】
好適な第2のポリマーの例は、市販されており、ビーズ、ペレット、顆粒などの形で、酢酸ビニル濃度が約10%〜約50%(12%、14%、18%、25%、33%の製品が市販されている)のポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)(pEVA)を含む。これよりも酢酸ビニルの割合を減らすにつれてpEVAコ−ポリマーが一般的な溶媒に不溶になるのに対し、これよりも酢酸ビニルの割合を多くするにつれて耐性が低くなっていく。
【0057】
代表的なポリマー混合物は、pBMAおよびpEVAの混合物を含む。このポリマー混合物は、絶対ポリマー濃度(すなわち、コーティング材料中の両方のポリマーを組み合わせた合計濃度)約0.25wt.%〜約99wt.%で使用可能である。この混合物は、コーティング溶液中の個々のポリマー濃度約0.05wt.%〜約99wt.%でも使用可能である。一実施形態では、ポリマー混合物は、分子量100キロダルトン〜900キロダルトンのpBMAと、酢酸ビニル含有量24〜36重量パーセントのpEVAコポリマーを含む。一実施形態では、ポリマー混合物が、分子量200キロダルトン〜300キロダルトンのpBMAと、酢酸ビニル含有量24〜36重量パーセントのpEVAコポリマーを含む。コーティング混合物中に溶解または懸濁された活性剤(単数または複数)の濃度は、最終コーティング材料の重量に対して0.01〜99重量パーセントの範囲となり得る。
【0058】
第2のポリマーは、(i)ポリ(アルキレン−コ−アルキル(メタ)アクリレート、(ii)他のアルキレンとのエチレンコポリマー、(iii)ポリブテン、(iv)ジオレフィン由来非芳香族ポリマーおよびコポリマー、(v)芳香族基含有コポリマー、および(vi)エピクロロヒドリン含有ポリマーからなる群から選択される1以上のポリマーも含み得る。
【0059】
ポリ(アルキレン−コ−アルキル(メタ)アクリレート)は、アルキル基が直鎖または分岐鎖で、置換または未置換の非干渉基または原子を有するコポリマーを含む。このようなアルキル基は、1〜8個の炭素原子を含み得る。このようなアルキル基は、1〜4個の炭素原子を含み得る。一実施形態では、アルキル基がメチルである。いくつかの実施形態では、このようなアルキル基を含むコポリマーが、約15%〜約80%(wt)のアルキルアクリレートを含み得る。アルキル基がメチルである場合、いくつかの実施形態ではポリマーが約20%〜約40%のメチルアクリレートを含有し、特定の実施形態では約25%〜約30%のメチルアクリレートを含有する。アルキル基がエチルの場合、一実施形態ではポリマーが約15%〜約40%のエチルアクリレートを含有し、アルキル基がブチルの場合、一実施形態ではポリマーが約20%〜約40%のブチルアクリレートを含有する。
【0060】
あるいは、第2のポリマーは、他のアルキレンとのエチレンコポリマーを含み得るものであり、これが直鎖および分岐鎖のアルキレンならびに、置換または未置換のアルキレンを含み得る。例として、3〜8個の分岐鎖または直鎖炭素原子を含むアルキレンから調製されるコポリマーがあげられる。一実施形態では、3〜4個の分岐鎖または直鎖炭素原子を含むアルキレン基から調製されるコポリマー。特定の実施形態では、3個の炭素原子を含有するアルキレン基から調製されるコポリマー(プロペンなど)。一例として、他のアルキレンが直鎖アルキレン(1−アルキレンなど)である。このタイプの代表的なコポリマーは、約20%〜約90%(モルベース)のエチレンを含み得る。一実施形態では、このタイプのコポリマーが約35%〜約80%(モル)のエチレンを含む。このようなコポリマーは、分子量が約30キロダルトン〜約500キロダルトンになる。代表的なコポリマーは、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)、ポリ(エチレン−コ−1−ブテン)、ポリ(エチレン−コ−1−ブテン−コ−1−ヘキセン)および/またはポリ(エチレン−コ−1−オクテン)からなる群から選択される。
【0061】
「ポリブテン」は、イソブチレン、1−ブテンおよび/または2−ブテンをホモ重合またはランダムに共重合することで誘導されるポリマーを含む。ポリブテンは、どのような異性体のホモポリマーであってもよく、あるいは、任意の比率での任意のモノマーからなるコポリマーまたはターポリマーであってもよい。一実施形態では、ポリブテンが少なくとも約90%(wt)のイソブチレンまたは1−ブテンを含有する。特定の実施形態では、ポリブテンが少なくとも約90%(wt)のイソブチレンを含有する。ポリブテンは、非干渉量の他の成分または添加剤を含有するものであってもよい。たとえば、最大1000ppmの酸化防止剤(2,6−ジ−tert−ブチル−メチルフェノールなど)を含有してもよい。一例として、ポリブテンは、分子量が約150キロダルトン〜約1,000キロダルトンであり得る。一実施形態では、ポリブテンが、約200キロダルトン〜約600キロダルトンであり得る。特定の実施形態では、ポリブテンが約350キロダルトン〜約500キロダルトンであり得る。分子量が約600キロダルトンを超えるポリブテン(1,000キロダルトンを超えるものを含む)も得られるが、扱いが困難になると想定される。
【0062】
別の第2のポリマーとして、ジオレフィン由来の非芳香族ポリマーおよびコポリマーがあげられる(ポリマーまたはコポリマーの調製に用いられるジオレフィンモノマーがブタジエン(CH2=CH−CH=CH2)および/またはイソプレン(CH2=CH−C(CH3)=CH2)から選択されるものを含む)。一実施形態では、ポリマーがジオレフィンモノマー由来のホモポリマーであるか、あるいはジオレフィンモノマーと非芳香族モノオレフィンモノマーとのコポリマーであり、任意に、ホモポリマーまたはコポリマーが部分的に水素化されていてもよい。このようなポリマーは、cis−、trans−および/または1,2−モノマー単位の重合によって調製されるポリブタジエンまたは3種類のモノマーすべての混合物、cis−1,4−および/またはtrans−1,4−モノマー単位の重合によって調製されるポリイソプレンからなる群から選択可能である。あるいは、ポリマーがコポリマーである(アクリロニトリルなどの非芳香族モノオレフィンモノマーベースのグラフトコポリマーおよびランダムコポリマー、アルキル(メタ)アクリレートおよび/またはイソブチレンを含む)。一実施形態では、モノオレフィンモノマーがアクリロニトリルの場合、共重合アクリロニトリルが最大約50重量%存在し、モノオレフィンモノマーがイソブチレンの場合、ジオレフィンがイソプレン(商業的に「ブチルゴム」として知られているものを形成するためなど)である。代表的なポリマーおよびコポリマーは、分子量が約150キロダルトン〜約1,000キロダルトンである。一実施形態では、ポリマーおよびコポリマーの分子量が約200キロダルトン〜約600キロダルトンである。
【0063】
別の第2のポリマーとして、芳香族基含有コポリマーがあげられる(ランダムコポリマー、ブロックコポリマーおよびグラフトコポリマーを含む)。一実施形態では、芳香族基がスチレンの重合によってコポリマーに取り込まれる。特定の実施形態では、ランダムコポリマーが、スチレンモノマーと、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、C1〜C4アルキル(メタ)アクリレート(メチルメタクリレートなど)および/またはブテンから選択される1つ以上のモノマーとの共重合由来のコポリマーである。有用なブロックコポリマーとして、(a)ポリスチレンのブロック、(b)ポリブタジエン、ポリイソプレンおよび/またはポリブテンから選択されるポリオレフィンのブロック(イソブチレンなど)、(c)任意に、ポリオレフィンブロックで共重合可能な第3のモノマー(エチレンなど)を含有するコポリマーがあげられる。芳香族基含有コポリマーは、約10%〜約50%(wt.)の重合された芳香族モノマーを含有し、コポリマーの分子量は約300キロダルトン〜約500キロダルトンである。一実施形態では、コポリマーの分子量が約100キロダルトン〜約300キロダルトンである。
【0064】
別の第2のポリマーとして、エピクロロヒドリンホモポリマーおよびポリ(エピクロロヒドリン−コ−アルキレンオキシド)コポリマーがあげられる。一実施形態では、コポリマーの場合、共重合されたアルキレンオキシドがエチレンオキシドである。一例として、エピクロロヒドリン含有ポリマーのエピクロロヒドリン含有量が約30%〜100%(wt)である。一実施形態では、エピクロロヒドリン含有量が約50%〜100%(wt)である。一実施形態では、エピクロロヒドリン含有ポリマーの分子量が約100キロダルトン〜約300キロダルトンである。
【0065】
非分解性ポリマーは、発明の名称「DEVICES, ARTICLES, COATINGS, AND METHODS FOR CONTROLLED ACTIVE AGENT RELEASE OR HEMOCOMPATIBILITY」として米国特許出願公開第2007/0026037号明細書(その内容全体を本明細書に援用する)に記載されているものを含み得る。具体例として、非分解性ポリマーは、ブチルメタクリレート−コ−アクリルアミド−メチル−プロパンスルホネート(BMA−AMPS)のランダムコポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、ランダムコポリマーが、AMPSを約0.5mol.%〜約40mol.%に等しい量で含み得る。
【0066】
基材
本明細書に記載のいくつかの実施形態によれば、核酸複合体を有する粒子を含むマトリクスを基材上に配置することが可能である。代表的な基材として、金属、ポリマー、セラミック、天然材料があげられる。基材ポリマーは、付加重合または縮合重合によって得られるオリゴマー、ホモポリマー、コポリマーを含む合成ポリマーからなるものを含む。例として、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、グリセリルアクリレート、グリセリルメタクリレート、メタクリルアミド、アクリルアミドから重合されるものなどのアクリル;エチレン、プロピレン、スチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、二フッ化ビニリデンなどのビニルならびに、ポリカプロラクタム、ポリラウリルラクタム、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンドデカンジアミドなどのポリアミドを含むがこれに限定されるものではない縮合ポリマー、さらにはポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリシロキサン(シリコーン)、セルロース、ポリエーテルエーテルケトンがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0067】
本発明の実施形態は、セラミックを基材として用いることを含み得る。セラミックとしては、窒化ケイ素、シリコンカーバイド、ジルコニア、アルミナならびにガラス、シリカ、およびサファイアがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0068】
基材金属としては、コバルト、クロム、ニッケル、チタン、タンタル、イリジウム、タングステンならびに、ステンレス鋼、ニチノールまたはコバルトクロムなどの合金があげられるが、これに限定されるものではない。好適な金属としては、金、銀、銅、白金などの貴金属ならびに、これを含む合金もあげられる。
【0069】
いくつかの実施形態では、装置の構成要素として用いる場合に、骨、軟骨、皮膚、エナメル質などのヒト組織を含む特定の天然材料ならびに、木材、セルロース、圧縮炭素、ゴム、絹、羊毛、綿などの他の有機物質も使用可能である。基材は、カーボンファイバも含み得る。基材は、樹脂、多糖、ケイ素またはシリカベースの材料、ガラス、フィルム、ゲル、膜も含み得る。
【0070】
医療装置
本発明の実施形態は、グラフト(腹部大動脈瘤グラフトなど)、ステント(一般にニチノール製である自己拡張ステント、一般にステンレス鋼で作られるバルーン拡張ステント、分解性冠動脈ステントなど)、カテーテル(動脈、静脈、血圧、ステントグラフトなどを含む)、弁(ポリマーまたは炭素の機械弁、組織弁、経皮的、縫合カフを含む弁設計など)、塞栓保護フィルタ(遠位保護装置を含む)、大静脈フィルタ、動脈瘤空置装置、人工心臓、心臓ジャケット、心臓補助装置(左心補助装置を含む)、植込み型除細動器、電気刺激装置およびワイヤ(ペースメーカー、リードアダプタ、リードコネクタを含む)、植込み医療装置の電源(電池など)、末梢血管装置、心房中隔欠損症閉鎖栓、左心耳フィルタ、僧帽弁形成装置(僧帽弁形成環など)、僧帽弁修復装置、脈管介入装置、脈管補助ポンプ、脈管アクセス装置(非経口栄養カテーテル、脈管アクセスポート、中心静脈アクセスカテーテルを含む)などの血管装置;あらゆるタイプの縫合糸、止め金、吻合装置(吻合器を含む)、縫合糸アンカー、止血バリア、スクリュー、プレート、クリップ、脈管インプラント、組織スキャフォールド、脳脊髄液シャント、水頭症用シャント、ドレナージチューブ、胸腔吸引ドレナージカテーテルをはじめとするカテーテル、膿瘍ドレナージカテーテル、胆道ドレナージ製品、植込み型ポンプなどの外科用装置;関節インプラント、寛骨臼カップ、膝蓋骨ボタン、骨修復/増強装置、脊椎装置(椎間板など)、骨ピン、軟骨修復装置、人工腱などの整形外科用装置;歯科用インプラントおよび歯科用骨折修復装置などの歯科用装置;薬剤送達ポンプ、植込み型薬剤輸液チューブ、薬剤輸液カテーテル、硝子体内薬剤送達装置などの薬剤送達装置;眼窩インプラント、緑内障シャントおよび眼内レンズをはじめとする眼科用装置;陰茎装置(性交不能症インプラントなど)、括約筋、尿道、前立腺、膀胱装置(失禁装置、良性前立腺肥大症管理装置、前立腺癌インプラントなど)、留置(「Foley」)および非留置尿路カテーテルをはじめとする尿路カテーテル、腎臓装置などの泌尿器科用装置;義乳房および人工臓器(膵臓、肝臓、肺、心臓など)などの合成装具;肺カテーテルをはじめとする呼吸器装置;神経刺激装置、神経カテーテル、神経血管バルーンカテーテル、神経動脈瘤治療コイル、neuropatcheなどの神経装置;経鼻ボタン、鼻スプリントおよび気道スプリント、鼻タンポン、イヤーウィック、耳用ドレナージチューブ、鼓膜切開減圧管、耳鼻科用ストリップ、喉頭摘出管、食道管、食道ステント、咽頭ステント、唾液バイパス管、気管開口管などの耳鼻咽喉科用装置;グルコースセンサ、心臓センサ、動脈内血液ガスセンサをはじめとするバイオセンサ装置;腫瘍インプラント;および疼痛管理インプラントを含むがこれに限定されるものではない、植込み型装置または一過的植込み型装置(の表面に配置されるなど)を含み得るものであり、これと併用可能である。
【0071】
いくつかの態様では、本発明の実施形態は、眼科用装置を含み得るものであり、これと併用可能である。これらの態様による好適な眼科用装置は、眼の所望の部分に生物活性剤を提供できるものである。いくつかの態様では、この装置を利用して、(水晶体の前にある)眼の前側セグメントおよび/または(水晶体の背後にある)眼の後側セグメントに生物活性剤を送達することが可能である。また、必要があれば、好適な眼科用装置を利用して、眼の近辺の組織に生物活性剤を提供することも可能である。
【0072】
いくつかの態様では、眼の外部または内部の部位での配置用に構成された眼科用装置と本発明の実施形態を併用可能である。好適な外部装置は、生物活性剤の局所投与用に構成可能なものである。このような外部装置は、角膜(たとえばコンタクトレンズ)または眼球結膜などの眼の外面で使用できるものである。いくつかの実施形態では、好適な外部装置は、眼の外面の近辺で使用可能である。
【0073】
眼の内部の部位での配置用に構成された装置は、眼の所望の部位内で使用可能である。いくつかの態様では、眼科用装置は、硝子体などの眼内部位への配置用に構成可能なものである。例示的な眼内装置として、米国特許第6,719,750号明細書(「Devices for Intraocular Drug Delivery」、Varnerら)および同第5,466,233号明細書(「Tack for Intraocular Drug Delivery and Method for Inserting and Removing Same」、Weinerら);米国特許出願公開第2005/0019371号明細書(「Controlled Release Bioactive Agent Delivery Device」、Andersonら)、同第2004/0133155号明細書(「Devices for Intraocular Drug Delivery」、 Varnerら)、同第2005/0059956号明細書(「Devices for Intraocular Drug Delivery」、 Varnerら)、同第2003/0014036号明細書(「Reservoir Device for Intraocular Drug Delivery」、 Varnerら)、米国特許出願第11/204,195号明細書(2005年8月15日出願、Andersonら)、同第11/204,271号明細書(2005年8月15日出願、Andersonら)、同第11/203,981号明細書(2005年8月15日出願、Andersonら)、同第11/203,879号明細書(2005年8月15日出願、Andersonら)、同第11/203,931号明細書(2005年8月15日出願、Andersonら)ならびに関連の出願に記載されているものがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0074】
いくつかの態様では、眼科用装置は、眼内の網膜下領域での配置用に構成可能なものである。網膜下用の例示的な眼科用装置として、米国特許出願公開第2005/0143363号明細書(「Method for Subretinal Administration of Therapeutics Including Steroids; Method for Localizing Pharmacodynamic Action at the Choroid and the Retina; and Related Methods for Treatment and/or Prevention of Retinal Diseases」、de Juanら);米国特許出願第11/175,850号明細書(「Methods and Devices for the Treatment of Ocular Conditions」、de Juanら);および関連の出願に記載されているものがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0075】
好適な眼科用装置は、眼の所望の組織内での配置用に構成可能なものである。たとえば、眼科用装置は、緑内障ドレナージ装置といった強膜外であるが結膜の下に位置する装置など、眼の結膜下領域での配置用に構成可能なものである。
【0076】
本発明の実施形態は基材なしでも使用可能である旨は理解できよう。一例として、基材を含むことなくフィラメントまたは他の形状での核酸複合体が内部に配置されたマトリクスを実施形態に含むことが可能である。
【0077】
以下の実施例を参照することで、本発明について一層よく理解できよう。これらの実施例は、本発明の特定の実施形態を代表することを意図したものであり、本発明の範囲を限定することは想定していない。
【実施例】
【0078】
実施例1:核酸複合体を有する粒子のIn Situ形成
ポリエチレンイミン(PEI)(分岐鎖25kDa、Sigma, St.Louis, MO)を蒸留脱イオン水(DDW)に20ml中9mgで溶解させ、アミン基の濃度が10mMの溶液を得た。塩酸(HCl)を使用してこの溶液をpH7.4に調整した。10ulのフルオレセインイソチオシアナート(FITC)(Sigma, St. Louis, MO)20mg/mlを溶液に加えた。反応の進行を薄層クロマトグラフィ(TLC)で追跡した。
【0079】
N/P(窒素/ホスフェート)比を6にして、DNA(25ul、1ug/ul)((ニシン精子DNA、500〜1000bpに切断、Lofstrand Labs Limited, Gaithersburg, MD)を6ulの0.75M NaClまたは6ulのスクロースDDW溶液(0.75M)と混合した。上記にて調製したフルオレセイン標識PEI(10mMアミン濃縮、分岐鎖25kDa、45ul)を11.25ulの0.75M NaClまたは11.25ulの0.75M スクロースDDWのいずれかと混合した。最後のNaClまたはスクロース濃度は150mMであった。次に、DNA溶液にPEI溶液をゆっくりと加えた後、ボルテックスせずに上下に6回ピペットで動かし、核酸複合体溶液を生成した。
【0080】
メタクリレート化ポリアルジトール(PA)(SurModics, Inc., Eden Prairie, MN)(150mM NaClまたは150mMスクロース中100mg/ml、合計で8mgまたは24mg)(アクリレート置換度0.5または12)を核酸複合体溶液に加えた。0.5mg/mlの4,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウム塩を含有する1mlの30%w/vのPEG 20kDa溶液を加えることで相分離を達成した。この混合物に、紫外線(約1〜2mW/cm2で330nmにて動作するDYMAX BLUE−WAVE 200))を15秒間または1分間すみやかに照射した。さまざまな試験条件を以下の表1にまとめておく。
【0081】
【表1】

【0082】
蛍光PEIを使用して、カプセル封入について判断した。図5A〜図5Bに粒子の蛍光を示す。
【0083】
粒子を秤量し、PBS中に放出させた。それぞれの規定の時間が経過した後、PBSを交換し、蛍光を測定することでPBSへの核酸複合体の放出量を評価した。図6は、核酸複合体の経時的な累積放出を示すグラフである。
【0084】
これらの結果から、in situで形成された粒子内に核酸複合体を取り込んだ後、PBS溶液に入れた際に粒子から放出できることが分かる。突発的な放出(または核酸複合体の初期放出)に関して、吸着量比(PA/DNA比)およびPAの置換度には有意な効果があった。しかしながら、UV照射時間は突発的な放出に影響しなかった。放出プロファイル(または放出の直線性)に関して、PAの置換度に有意な効果があった。UV照射時間およびNaClvs.スクロースは放出の直線性に対して若干の効果があっただけなのに対し、吸着量比はまったく効果がなかった。粒子の形成に関して、低置換度および短いUV照射時間では、粒子は形成されなかった。合計放出に関して、ポリアルジトールの置換度の強い影響があった。しかしながら、UV照射は合計放出に何ら影響しなかった。
【0085】
実施例2:BSA、マルトデキストリンまたはデキストランでの粒子のIn Situ形成ならびにトランスフェクション
HEK293細胞(ATCC, Manasass, VA)を24ウェルのプレートに細胞約8×104個/ウェルで蒔いた。細胞をEMEM/10%FBSと一緒に24時間インキュベートした後、トランスフェクションを実施した。
【0086】
マルトデキストリン(MD070)、デキストラン35〜45kDaおよびBSA(ウシ血清アルブミン)を各々別個に100mg/mlで0.15Mスクロースに溶解させた。
【0087】
GFP−DNA(緑色蛍光タンパク質)(Aldevron, Fargo, ND)およびPEIを用いてN/P比24で核酸複合体を形成した。DNA(20ul、20ug)を0.75Mスクロース(20ul)および蒸留脱イオン水(DDW)(60ul)と混合した。PEI 25kDaを合計20ml中9mgでDDWに溶解させ、アミン基の濃度10mMの溶液を得た。HClを使用して、この溶液をpH7.4に中和した。スクロース溶液0.75M(40ul)およびDDW(16ul)を144ulのPEIに加えた。両溶液の最終スクロース濃度は0.15Mであった。PEIをDNAに滴下して加えた;合計容積は300ulであった。
【0088】
600ulのBSA、マルトデキストリンまたはデキストラン溶液を90ulの核酸複合体溶液に加え、軽く混合した。次に、700ulのPEG溶液(PEG 20kDa 30%w/v、DDW中)を加えて相分離を誘導した。得られた混合物をボルテックスし、ドライアイスにのせ、凍結乾燥した。凍結乾燥後、1mlのクロロホルムを加え、粒子を7000rpmで3分間スピニングすることで、PEGを抽出した。クロロホルム洗浄を3回実施した後、粒子を乾燥させた。
【0089】
この試料に、1mlのEMEMを加えた。次に、0.5mlのEMEM/粒子混合物を24ウェルのプレートで細胞にのせた。48時間後、蛍光顕微鏡を用いてGFP発現を観察した。デキストランを用いた場合に最適な発現が達成されたのが観察された。BSAは、マルトデキストリンよりもトランスフェクション効率を落とすことが明らかになった。この実施例は、BSA、デキストラン、マルトデキストリンを用いて核酸複合体を含有する粒子をin situで形成可能であり、その内部の核酸複合体が細胞をトランスフェクトするための活性を保持し得ることを示すものである。
【0090】
実施例3:核酸複合体での核生成
ポリエチレンイミン(PEI、Sigma、25kDa分岐鎖)を9mgで10mLの蒸留脱イオン水(DDW)に溶解させた。HClを使用して、最初の塩基性pHを7.4に戻し、合計容積をDDWで20mLに調整した(10mMの第一級アミノ基または「N」を生成)。ニシンDNA 600〜1000bp(Lofstrand, Gaithersburg, MD)をDDWに1μg/μLで溶解させた。1μgのDNAが3nmolの負に荷電したホスフェート基(「P」)を含有する。DNAをPEIと混合し、各々N/P比が12および24のDNA/PEI溶液を得た。
【0091】
N/P比12の場合、5.5μgのDNA(5.5μL)を13.8μLのスクロース 0.75M(水10ml中2.57g、25%w/v)と混合し、150mMまたは5%w/vの溶液を得た。20μLのPEI溶液を4μLの0.75Mスクロース溶液と混合した。PEI混合物をゆっくりとDNA溶液に滴下した。添加後、混合物を軽くボルテックスした。
【0092】
N/P比24の場合:2.75μgのDNA(2.75μL)を0.7μLのスクロース 0.75M(水10ml中2.57g、25%w/v)と混合し、150mMまたは5%w/vの溶液を得た。20μLの量のPEI溶液を4μLの0.75Mスクロース溶液と混合した。PEI混合物をゆっくりとDNA溶液に滴下した。添加後、混合物を軽くボルテックスした。
【0093】
200μlのタンパク質(Fab)(Southern Biotech)を20mg/mlでpH7.4にて各々室温でDNA/PEI核酸複合体溶液に加え、試料を50℃のオーブンに20分間入れておいた。その後、70μLのPEG 20kDa溶液30%w/v(50℃まで加温)を、数秒間ボルテックスしながら滴下して核酸複合体/タンパク質混合物に加えた。
【0094】
試料をすみやかにオーブンに戻して50℃で30分間おくか、オーブンから出して室温に30分間おいた。続いて、混合物を−20℃で凍結するまで冷凍庫に入れ、凍結乾燥させた。PEGをクロロホルムで抽出した。この実施例は、核酸複合体が核生成剤として機能する形で、核酸複合体およびタンパク質を用いて粒子を形成可能であることを示すものである。
【0095】
実施例4:核酸複合体を有する粒子を含むコーティングを用いたコイルの形成ならびにトランスフェクション
200ugのDNA(40ul、緑色蛍光タンパク質(GFP)コードプラスミド)を10ulのスクロース0.75M(DDW中)と混合することで、DNA溶液を調製した。
【0096】
1.44mlのポリエチレンイミン(0.45mg/ml、DDW中、数滴の0.1N HClを用いてpH7.4に調整;10mMアミン基)を360ulのスクロース0.75M(DDW中)と混合することで、PEI溶液を調製した。PEI溶液を0.2μmのフィルタでの濾過により滅菌した。
【0097】
100mg/mlのデキストランを0.150Mのスクロース(DDW中)と混合することで、デキストラン溶液を調製した。デキストラン溶液を0.2μmのフィルタでの濾過により滅菌した。
【0098】
30%w/vのPEG 20kDaをDDW中で混合してPEG溶液を調製した。PEG溶液を0.2μmのフィルタでの濾過により滅菌した。
【0099】
PEI溶液をDNA溶液にゆっくりと加え、ピペットで上下に6回動かし、5分間室温にて放置して核酸複合体混合物を形成した。500ulのデキストラン溶液(100mg/ml、0.150Mスクロース中)を加えてデキストラン/核酸複合体混合物を形成した。
【0100】
対照として、得られた混合物5ulを24ウェルに入れ、HEK293細胞(90%コンフルエント)を播種した。
【0101】
デキストラン/核酸複合体混合物に、7mlのPEG溶液を加えた。得られた懸濁液を軽くボルテックスし、ドライアイスにのせ、凍結乾燥した。
【0102】
PEGを以下のようにして抽出した:40mlのクロロホルムを加え、懸濁液を15mlの遠心管4本に分けた。7.5krpmで10分間スピニングした後、クロロホルムを吸引し、破棄した。試料を乾燥させ、EMEMに溶解させ、24ウェルのプレートで細胞にのせた。48時間後、図7に示すようにトランスフェクションが認められた。
【0103】
新鮮なクロロホルム中で残基を組み合わせ、Millipore遠心濾過チューブ(Ultrafree−CL、0.2μm Teflonフィルタ)に入れた。デキストラン粒子をクロロホルムで3回洗浄し、そのつど7.5krpmで濾過した。
【0104】
次に固体を15mlのクロロホルムに回収し、均質化(Silverson, 8000rpm)した。得られた懸濁液を濾過した(Buchner、20μmフィルタ)。25mgの1000PEG45PBT55(45wt.%の1000mwポリエチレングリコール「PEG」と55wt.%のポリブチレンテレフタレート「PBT」のブロックコポリマー)および25mgの20GAPEGCL80GALA(20wt.%のグリコライド−ポリエチレングリコール−カプロラクトン「GAPEGCL」と80wt.%のグリコライド−ラクチド「GALA」のブロックコポリマー)をクロロホルム中50mgのデキストラン/ポリプレックス粒子に加え、これを37℃で30分間振盪しながら溶解させた。次に、得られた混合物を使用して金属眼インプラント(N=8)(I−VATION(商標)、SurModics, Eden Prairie, MN)にコーティングした。気体噴霧タイプのスプレーコーターでインプラント4つの2シリーズでインプラントにコーティングをほどこした(コーティング重量1700〜2000mg)後、窒素下で一晩乾燥させた。インプラントのコーティング重量を以下の表2に示す。
【0105】
【表2】

【0106】
HEK 293細胞を96ウェルのプレートに蒔いた。トランスフェクション実験の前に、細胞をEMEM/10%FBSと一緒に24時間インキュベートした。細胞は溶出実験前にコンフルエントであることが明らかになった。インプラントをイソプロピルアルコールに軽く浸漬し、浸漬乾燥させ、各々をHEK 293細胞にのせてウェルに入れた。24時間後、蛍光顕微鏡法を用いてトランスフェクションを評価し、インプラントを異なるウェルに移した。コイル#2(第1シリーズ)の蛍光を図8Aにおいて以下に示す。コイル#3(第1シリーズ)の蛍光を図8Aにおいて以下に示す。
【0107】
実施例5:予備成形粒子への核酸複合体の取り込み
この実施例のために、核酸複合体をさまざまな粒子に取り込んだ。核酸複合体溶液(PEIを有するGFPコードDNA、N/P=24)を調製し、指定量の粉末上にピペットでたらし、十分に混合し、真空中にて乾燥させた。次に、粉末を細胞培地(EMEM)に再懸濁させた。一部を遠沈させ、上清をHEK 293細胞にのせ、一部を懸濁液として細胞にのせた。
【0108】
多孔性の微粒子材料に粉砕多孔性セラミックを含めた。0.5μmの孔があるセラミック円板を入手した後、乳鉢とペステルで粉砕して粒度の平均サイズが10μm未満の粒子(SEMで確認した場合)にした。
【0109】
多孔性微粒子材料には、カオリン粒子も含めた。カオリン粒子は平均サイズが5μm未満であった。
【0110】
多孔性微粒子材料には、架橋ポリビニルピロリドン(クロスPVP)粒子(BASF Corporation)も含めた。クロスPVP粒子は平均サイズが10μm未満であった。
【0111】
多孔性微粒子材料には、架橋メタクリレートマルトデキストリン粒子も含めた。架橋メタクリレートマルトデキストリン粒子については、以下のプロセスで形成した。第1に、5mg/mlの4,5−ビス(4−ベンゾイルフェニルメチレンオキシ)ベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウム塩を含有する30%w/vのPEG 20kDa溶液を加えることで、100mg/mlのメタクリレート化マルトデキストリンM40混合物を相分離した。混合物にUV(約1〜2mW/cm2で330nmにて動作するDYMAX BLUE−WAVE 200)を1分間照射した。架橋粒子をスピンした後、PEGをデカントした。次に、架橋粒子をDDWで洗浄した。
【0112】
核酸複合体をN/P比24で調製した。一般に、12ulのDNA溶液1ug/ul(12ug)を12ulの0.75Mスクロース溶液および36ulのDDWと混合した。86.4ulのPEI溶液(10mM[N])を24ulの0.75Mスクロース溶液および9.6ulのDDWと混合した。得られたPEI混合物をDNA溶液に加えて核酸複合体溶液を形成し、5分間放置した。核酸複合体溶液を15ulずつ(DNAごとに1ug)に分けた。
【0113】
ひとつの15ulの試料を対照とし、24ウェルのプレートで細胞にのせた。核酸複合体溶液の他の15ulの試料を2mgまたは10mgの固体材料(セラミック、カオリン、クロスPVPまたは架橋メタクリレートマルトデキストリン)にのせた。室温にて10分間インキュベーション後、各ウェルから試料を取り、EMEMに加えた後、24ウェルのプレートでHEK293細胞にのせた。各試料の残り(粒子)を真空オーブンで1時間乾燥させた。乾燥粒子にEMEMを加えて、十分にボルテックスした。次に、混合物を5krpmで5分間スピンした。上清を24ウェルのプレートでHEK293細胞にのせた。残基(ペレット)をEMEMに再懸濁させ、HEK293細胞にものせて24ウェルのプレートに加え、「ブランケット」を形成した。もう光学顕微鏡では細胞が認められなかった。トランスフェクションの結果を以下の表3に示す。
【0114】
【表3】

【0115】
実施例6:有機溶媒中のクロスPVP粒子
HEK293細胞を24ウェルのプレートに48時間前に蒔いた。5%スクロース中にてN/P比15(7ug DNA、合計容積140ul)でDNA/PEI核酸複合体を調製した。DNA溶液(0.5ug)のアリコート10ulを2つの異なるウェルに対照として入れた。残りの120ulを5mgのクロスPVP粒子が入った6本の微小遠心管(各々20ul)にピペットで入れた。管を十分にボルテックスし、開き、RTで2時間、真空中に放置して乾燥させた。
【0116】
続いて管1〜5(0.5ml)に溶媒としてDCM、クロロホルム、MeOH、THF、およびトルエンを加え、十分にボルテックスした。管6を対照とした。スピニング(10krpm、5分間)後、管1〜5から溶媒を吸引した。残りの溶媒を真空下で除去した。各管にEMEM(細胞培地、200ul)を加えた。200ulのピペットを用いて粒子を懸濁させ、懸濁液をHEK293細胞の2つのウェルに分けた。
【0117】
管6の粒子をEMEMに再懸濁させた後、懸濁液を遠沈させた。上清を2つのウェルに分けた。再びEMEMを加え、粒子を再懸濁させた。次に、懸濁液をHEK293細胞の2つのウェルに分けた。
【0118】
48時間のインキュベーション後、蛍光顕微鏡法を用いてトランスフェクションを評価した。画像を図9A〜図9Jに示す。
【0119】
蛍光顕微鏡を用いる定性的測定から、ほとんどの溶媒を使用可能であるが、メタノールでの処理後に最高の結果が得られたことが分かる。PVP粒子は蒔かれた細胞上にブランケットを形成し、これが蛍光シグナルの減衰をかなり担っている。粒子をTHFで処理した後、トランスフェクションはまったく認められなかった。同様に、室温にて5分間のインキュベーション後に細胞をEMEMと一緒にインキュベートし、粒子を遠沈させると、トランスフェクションは認められなかった。このことから、PVP粒子がすぐには核酸複合体を放出しないことが分かる。
【0120】
実施例7:水性溶媒中での溶出のあるクロスPVP粒子ならびにトランスフェクション
この研究では、直径10μmのクロスPVP粒子(PVP−CM, BASF)を使用した。360ulのPEI溶液と、100ulの0.75Mスクロース溶液と、40ulのDDW(50ulの1ug/ul GFP−DNA溶液、50ulの0.75Mスクロース溶液、150ulのDDWを含む)を加えることで、核酸複合体N/P=24を調製した。得られた核酸複合体溶液をRTで5分間放置した後、クロスPVP粒子100mgに加えた。混合物を十分にボルテックスして吸収させ、真空下にて乾燥させた。
【0121】
乾燥粉末をクロロホルム溶液に再懸濁させ、ポリマー(1000PEG45PBT55および20GAPEGCL80GALA)を加えた。得られた溶液は粒子を50%w/w、1000PEG45PBT55を25mg(25%w/w)、20GAPEGCL80GALAを25mg(25%w/w)含んでいた。クロスポビドンが膨潤するため、懸濁液を濾過しなかった。次に、気体噴霧タイプのスプレー系で溶液をコイルに噴霧した。この空気圧ベースのスプレー系ではコイルが一度に一回コーティングされる。コイルを窒素下で乾燥させた後、96−ウェルのプレートでHEK293細胞にのせた。コイルの重量を以下の表4に示す。
【0122】
【表4】

【0123】
3日後、コイルを他のウェルに移し、これを6日後と9日後にも繰り返した。3日後、若干のトランスフェクションが認められた。さらに3日後、1つまたは2つの細胞がトランスフェクトされただけであった。6日後には、細胞に対するそれ以上の影響は見られなかった。細胞の蛍光顕微鏡画像を図10A〜図10Eに示す。
【0124】
実施例8:さまざまな量のPVP粒子を有する核酸複合体
1440ulのPEI溶液と205ulの0.75Mスクロース溶液を、200ulの1ug/ul DNA溶液および205ulの0.75Mスクロース溶液に加えることで、核酸複合体(N対P比=24)を調製した。得られた核酸複合体溶液をRTで30分間放置した。2mg、4mg、8mg、10mgの架橋PVP粒子(BASF Kollidon Cl−Mロット番号87825288Q0)を、5ugのDNAを含有する50ulのDNAポリプレックス試料に加えた。粒子を凍結乾燥させるのではなく、単離し、秤量し、溶出試験用に100×HEPES緩衝液に入れた。
【0125】
溶出試料を37℃のオーブンで一晩おいた後、翌日に臭化エチジウム/ヘパリンアッセイを用いて試験した。臭化エチジウム/ヘパリンアッセイのために、以下の溶液を調製した。a.)ヘパリンナトリウム塩(Celsusロット番号PH−39899)15mg/mLの蒸留脱イオン水(DDW)溶液、b.)1000×溶液が形成されるようDDWに溶解させた臭化エチジウム(EtBr)Sigma Aldrichタブレット(この溶液をDDWで100×に希釈した)。
【0126】
臭化エチジウム/ヘパリンアッセイでは、50ug/mlのストックDNA溶液を調製した。25ug/mLのDNAから開始して段階希釈し、195ng/mLまで希釈して96ウェルの黒底プレート(Grenier Bio−one)1ウェルあたり100uLで標準を調製した。10ulの100×臭化エチジウム溶液を各試料に加えた。M2 Spectromaxプレートリーダーを用いて、以下のパラメータで試料を読み取った。励起273nm/発光603nm/カットオフ570nm。裸のDNAとは対照的に、ポリプレックス形態のDNAでは蛍光は得られないであろう。次に、100ulの新たに調製したヘパリン溶液を試料に加えた。最適な読み値が得られるまで(約10分後)再び5分間隔でプレートを読み取った。このアッセイの結果を以下の表5にあげておく。
【0127】
【表5】

【0128】
次に、第2のN/P比(24および10の両方)を加えて凍結乾燥させることで、実験を繰り返した。具体的には、上述したようにしてDNAポリプレックスを形成したが、1つのバッチでN:P比を24にし、もうひとつのバッチではN/P比を10にした(ともに依然として20%(w/v)スクロースに保ったまま)。この実験では、PVP粒子の使用量が、2mg、6mg、10mgであった。ここでは、粒子を一晩凍結乾燥させた後、溶出試験用に100×HEPES緩衝液に入れた。溶出試料を37℃のオーブンに入れた後、6時間の時点と1日後に上述した臭化エチジウム/ヘパリンアッセイを用いて試験した。結果を以下の表6および図11A(6時間)および図11B(24時間)にあげておく。
【0129】
【表6】

【0130】
臭化エチジウム/ヘパリンアッセイで判定した場合、N/P比が変わると、37℃でインキュベートした場合の24時間後に放出された割合とDNAポリプレックス溶液に加えたPVP粒子の量に異なる相関が認められた。具体的には、ポリプレックスをN/P比24で用いるとPVPのミリグラムと放出されたDNAの割合との線形相関が認められた。この相関は混合物を凍結乾燥した後ですら維持された。
【0131】
実施例9:相分離による離散的粒子形成時におけるペプチド/siRNA複合体へのタンパク質およびマルトデキストリン誘導体の添加
タンパク質溶液(IgGおよびFab)を以下のようにして調製した:PBS(Southern Biotech)またはIgG(凍結乾燥、Lampire、HCl滴でわずかに酸性にしたPBSで再構成)中のFabをBioRad脱塩カラムに入れ、10mM Ps/NaClなしで溶出させた。遠心フィルタを用いてタンパク質溶液を約40mg/mlまで濃縮した。
【0132】
50ulのN−ter特異的緩衝液中3.75ulのN−terを用いて、siRNA複合体(1群あたり1.5ul 20uM siRNA)を形成した。一般に6〜9倍の量を混合した後、緩衝液中で得られたsiRNA/Nter複合体を50ulずつに分けた。抗ルシフェラーゼsiRNAならびに非コード(スクランブル)siRNAでも同様の試料を調製した。この試料に、以下の溶液を50ulずつ加えた:40mg/mlのBSA、10mMのPs(ホスフェート、NaClなし)中40mg/mlのIgG、10mM Ps(ホスフェート、NaClなし)中40mg/mlのFab、DDW中40mg/mlのMD−アクリレート、DDW中40mg/mlのMD−ヒドラジド。
【0133】
この溶液に、ボルテックスしながらDDW中400ulのPEG 20kDa 30%w/wを加えた。相分離が生じた部分に白色の懸濁液が生成された。粒子を遠沈させ、PEG相を破棄した。得られた粒子残基に、350ulのDMEM(FBSおよび5ug/mlドキシサイクリンを含む)を加え、徹底的にボルテックスした。1.5ulのsiRNAを45ulのN−ter緩衝液に加えることで、対照試料を調製した(ルシフェラーゼおよびスクランブルsiRNAを使用)。この溶液に、3.75ulのN−terを加え、ボルテックスした。試料を300ulのDMEM/10%FBS/5ug/mlドキシサイクリンで希釈した。
【0134】
HR5CL11ドキシクリン誘導ルシフェラーゼ発現細胞を104個/ウェルで清潔な黒底96ウェルのプレートに蒔き、24時間インキュベートした上でトランスフェクションを実施した。
【0135】
100ulをHR5CL11細胞(86nM濃度のsiRNA)の42のウェルに加えた後、450ulのDMEMを加え、43のウェル(21nM濃度のsiRNA)に100ulを加えた。再度、450ulのDMEMを加え、100ulを3つのウェルに加えた(7nM濃度のsiRNA)。
【0136】
トランスフェクションの24時間後、すべての培地を除去した。これらの細胞をまずCell Titre Blue(試薬1部とDMEM/10%FBSが4部;ドキシサイクリンを加えて最終濃度5ug/mlとした)でインキュベートし、毒性評価を実施した。1.5時間のインキュベーション後、蛍光(λex=560nm、λem=590nm)を用いてプレートを読み取った。次に、細胞をPBSで1回洗浄し、50ulのGlo細胞溶解緩衝液(Promega)を用いて溶解させた。ルシフェリン試薬を加え(50ul)、化学発光を利用してルシフェラーゼ発現レベルを測定した。データを図12に示す。
【0137】
実施例10:粒子中にIgGを有するペプチド/siRNA複合体に有機溶媒がおよぼす影響
50ulのN−ter特異的緩衝液中3.75ulのN−terを用いて、siRNA複合体(1群あたり1.5ul 20uM siRNA)を形成した。一般に、6〜9倍の量を混合した後、緩衝液中で得られたsiRNA/Nter複合体を50ulずつに分けた。抗ルシフェラーゼsiRNAならびに非コード(スクランブル、対照)siRNAでも同様の試料を調製した。
【0138】
この試料に、10mM Ps(ホスフェート、NaClなし)中40mg/mlで、50ulのIgGを加えた。この溶液に、ボルテックスしながらDDW中400ulのPEG 20kDa 30%w/wを加えた。相分離が生じた部分に白色の懸濁液が生成された。粒子を遠沈させ、PEG相を破棄した。
【0139】
得られた残基に、まずはIPAのアリコートを加えてから引き上げ、残っている水分を除去した。次に、以下の溶媒を粒子に加え(0.4ml)、徹底的にボルテックスした:ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、シクロヘキサン。1つの群の粒子には、溶媒を加えなかった。代わりに、粒子をすみやかに300ulのDMEM/10%FBS/5ug/mlドキシサイクリンに再溶解させた(グラフ中の「粒子」)。
【0140】
ボルテックス後、真空下で蒸発させて粒子から有機相を除去した。得られた残基に、600ulのDMEM(FBSおよび5ug/mlドキシサイクリンを含む)を加え、徹底的にボルテックスした。1.5ulのsiRNAを45ulのN−ter緩衝液に加えることで、対照試料を調製した(ルシフェラーゼおよびスクランブルsiRNAを使用)。この溶液に、3.75ulのN−terを加え、ボルテックスした。試料を250ulのDMEM/10%FBS/5ug/mlドキシサイクリンで希釈した。
【0141】
HR5CL11ドキシクリン誘導ルシフェラーゼ発現細胞を104個/ウェルで清潔な黒底96ウェルのプレートに蒔き、24時間インキュベートした上でトランスフェクションを実施した。
【0142】
100ulをHR5CL11細胞(100nM濃度のsiRNA)の42のウェルに加えた後、300ulのDMEMを加え、100ulを3つのウェル(25nM濃度のsiRNA)に加えた。再度、200ulのDMEMを加え、100ulを43のウェル(8.3nM濃度のsiRNA)に加えた。実施例9で上述したようにしてノックダウンの割合を計算した。データを図13に示す。
【0143】
実施例11:粒子中にHuSAまたはグリコーゲンを有するペプチド/siRNA複合体に有機溶媒がおよぼす影響
50ulのN−ter特異的緩衝液中3.75ulのN−terを用いて、siRNA複合体(1群あたり1.5ul 20uM siRNA)を形成した。5倍の量を混合した後、緩衝液中で得られたsiRNA/Nter複合体を50ulずつに分けた。抗ルシフェラーゼsiRNAならびに非コード(スクランブル、対照)siRNAでも同様の試料を調製した。この試料に、以下の溶液50ulを加えた:40mg/mlのHuSA(ヒト血清アルブミン)、40mg/mlのグリコーゲン。
【0144】
この溶液に、ボルテックスしながらDDW中400ulのPEG 20kDa 30%w/wを加えた。相分離が生じた部分に白色の懸濁液が生成された。粒子を遠沈させ、PEG相を破棄した。
【0145】
一組の試料の得られた残基に、600ulのDMEM(FBSおよび5ug/mlドキシサイクリンを含む)を加え、徹底的にボルテックスした(siRNAは、ここでは50nM濃度である)。もうひとつの組の試料の得られた残基に、まずIPAのアリコートを加えてから引き上げ、残っている水分を除去した。この粒子にジクロロメタンを加え(0.4ml)、徹底的にボルテックスした。続いて、真空下で蒸発させて溶媒を除去した。600ulのDMEM(FBSおよび5ug/mlのドキシサイクリンを含む)を乾燥粒子に加え、徹底的にボルテックスした(siRNAは、ここでは50nM濃度である)。
【0146】
1.5ulのsiRNAを45ulのN−ter緩衝液に加えることで、対照試料を調製した(ルシフェラーゼおよびスクランブルsiRNAを使用)。この溶液に、3.75ulのN−terを加え、ボルテックスした。試料を550ulのDMEM/10%FBS/5ug/mlドキシサイクリンで希釈した。
【0147】
HR5CL11ドキシクリン誘導ルシフェラーゼ発現細胞を104個/ウェルで清潔な黒底96ウェルのプレートに蒔き、24時間インキュベートした上でトランスフェクションを実施した。
【0148】
100ulをHR5CL11細胞(50nM濃度のsiRNA)の4つのウェルに加えた後、200ulのDMEMを加え、100ulを4つのウェル(25nM濃度のsiRNA)に加えた。データを図14に示す。
【0149】
実施例12:相分離による離散的粒子形成時におけるDOTAP/siRNA複合体へのタンパク質の添加
DOTAP(Avanti Polar Lipids)とコレステロールを1mg/mlでエタノールに溶解させ、DOTAP/コレステロール比9:1で混合した。45ulのダブル蒸留水中、4.2ulのDOTAP/コレステロール混合物を用いて、siRNA複合体(1群あたり1.5ulの20uM siRNA)を生成した。一般に6〜9倍の量を混合した後、緩衝液中で得られたsiRNA/Nter複合体を50ulずつに分けた。抗ルシフェラーゼsiRNAならびに非コード(スクランブル、対照)siRNAでも同様の試料を調製した。
【0150】
IgGタンパク質溶液(IgG)を以下のようにして調製した:IgG(凍結乾燥、Lampire、HCl滴でわずかに酸性にしたPBSで再構成)中のFabをBioRad脱塩カラムに入れ、10mM Ps/NaClなしで溶出させた。遠心フィルタを用いて、タンパク質溶液を約40mg/mlまで濃縮した。
【0151】
この試料に、以下の溶液50ulを加えた:10mM Ps(ホスフェート、NaClなし中、40mg/mlのBSAまたは40mg/mlのIgG。
【0152】
この溶液に、ボルテックスしながらDDW中400ulのPEG 20kDa 30%w/wを加えた。
【0153】
相分離が生じた部分に白色の懸濁液が生成された。粒子を遠沈させ、PEG相を破棄した。
【0154】
得られた残基に、600ulのDMEM(FBSなし、ただし5ug/mlドキシサイクリンを含む)を加え、徹底的にボルテックスした(siRNAは、ここでは50nM濃度である)。
【0155】
1.5ulのsiRNAを45ulのDDWに加えることで、対照試料を調製した(ルシフェラーゼおよびスクランブルsiRNAを使用)。この溶液に、4.2ulのDOTAP/コレステロール混合物を加え、ボルテックスした。試料を550ulのDMEM/10%FBS/5ug/mlドキシサイクリンで希釈した。
【0156】
HR5CL11ドキシクリン誘導ルシフェラーゼ発現細胞を104個/ウェルで清潔な黒底96ウェルのプレートに蒔き、24時間インキュベートした上でトランスフェクションを実施した。
【0157】
100ulをHR5CL11細胞(50nM濃度のsiRNA)の4つのウェルに加えた後、200ulのDMEMを加え、4つのウェル(25nM濃度のsiRNA)に100ulを加えた。37℃で3時間インキュベートした後、培地をDMEM/10%FBS/5ug/mlドキシサイクリンと交換した)。
【0158】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」、「the」は、文脈からそうでないことが明らかな場合を除いて、複数形も含む点に注意されたい。よって、たとえば、「化合物」を含む組成物とあれば、2種類以上の化合物の混合物も含まれる。また、「または」という表現は通常、文脈からそうでないことが明らかな場合を除いて、「および/または」を含む意味で用いられる点にも注意されたい。
【0159】
さらに、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、「構成される」という言い回しは、特定の作業を実施または特定の構成を採用するために構築または構成されるシステム、装置または他の構造を説明するものである点に注意されたい。「構成される」という言い回しは、配置および構成される、構築および配置される、構築される、製造および配置されるなどの他の同様の言い回しと同義に使用可能である。
【0160】
本明細書に記載の刊行物および特許出願はいずれも、本発明が属する分野での当業者のレベルを示すものである。これらの刊行物および特許出願はいずれも、個々の刊行物または特許出願を具体的かつ個々に援用したのと同程度に本明細書に援用される。本明細書のいずれも、当該刊行物および/または特許(本明細書に引用した刊行物および/または特許を含む)に先行することを本発明者らが認めたことを了承したものと解釈されるものではない。
【0161】
以上、具体的かつ好ましいさまざまな実施形態および技術を参照して本発明について説明した。しかしながら、本発明の主旨および範囲内のままで、多くの変形および改変をほどこし得ることは、理解されたい。
【0162】
別の実施形態:
一実施形態において、本発明は、核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、核酸複合体を多孔性粒子に吸収することを含み、粒子の平均直径が約100μm未満である、核酸複合体を有する粒子を形成する方法を含む。
【0163】
この方法の一実施形態では、粒子の平均直径が40μm以下である。一実施形態では、粒子の平均直径が10μm以下である。一実施形態では、多孔性粒子が、核酸複合体をin vivoで放出するよう構成される。一実施形態では、多孔性粒子が、セラミック、カオリン、および架橋ポリマーからなる群から選択される材料を含む。一実施形態では、カチオン性キャリア剤が、ポリエチレンイミン(PEI)を含む。一実施形態では、この方法が、核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、核酸複合体をポリマーと接触させ、ポリマーを架橋させることを含む。一実施形態では、この方法がさらに、核酸複合体をポリマーと接触させるステップの後に、相分離を実施することを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーを架橋させることが、ポリマーに紫外線を印加することを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーを架橋させることが、架橋剤を添加することを含み得る。
【0164】
一実施形態では、本発明は、核酸複合体を有する粒子を形成する方法を含む。この方法は、核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、タンパク質を含む溶液に、タンパク質の成核剤として作用する核酸複合体を接触させることを含み得る。一実施形態では、この方法は、タンパク質を含む溶液に核酸複合体を接触させるステップの後に、相分離を実施することを含み得る。一実施形態では、タンパク質がFab断片を含み得る。
【0165】
一実施形態では、本発明は、核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、核酸複合体を多孔性粒子に吸着させて粒子を含有する核酸複合体を形成し、粒子を含有する核酸複合体をポリマー溶液と混合してコーティング混合物を生成し、当該コーティング混合物を基材に適用することを含む、医療装置の製造方法を含み得る。多孔性粒子は、セラミック、カオリン、架橋ポリマーの群から選択される材料を含み得る。カチオン性キャリア剤は、ポリエチレンイミン(PEI)を含み得る。ポリマー溶液は、分解性ポリマーを含み得る。
【0166】
ポリマー溶液は、非分解性ポリマーを含み得る。ポリマー溶液は、有機溶媒を含み得る。当該コーティング混合物を基材に適用することは、コーティング混合物を基材にスプレーすることを含み得る。
【0167】
一実施形態では、本発明は、核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、核酸複合体を多孔性材料に吸着させて粒子を含有する核酸複合体を形成し、粒子を含有する核酸複合体をポリマー溶液と混合してコーティング混合物を生成し、コーティング混合物を硬化させることを含む、医療装置の製造方法を含み得る。
【0168】
一実施形態では、本発明は、核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、核酸複合体を材料と組み合わせて粒子を含有する核酸複合体をin situで形成し、核酸複合体粒子をポリマー溶液と混合してコーティング混合物を生成し、当該コーティング混合物を基材に適用することを含む、医療装置の製造方法を含み得る。
【0169】
一実施形態では、本発明は、基材と、基材上に配置された溶出制御マトリクスと、溶出制御マトリクス内に配置された複数の粒子と、粒子内に配置された複数の核酸複合体とを含み、核酸複合体が核酸とカチオン性キャリア剤とを含む、植込み型医療装置を含み得る。
【0170】
一実施形態では、本発明は、溶出制御マトリクスと、溶出制御マトリクス内に配置された複数の粒子と、粒子内に配置された複数の核酸複合体とを含み、核酸複合体が核酸とカチオン性キャリア剤とを含む、植込み型医療装置を含み得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、
ポリマー賦形剤を含む溶液に、核酸複合体を接触させて粒子形成溶液を生成し、
粒子形成溶液を相分離して粒子を形成することを含む、核酸複合体を有する粒子を形成する方法。
【請求項2】
粒子形成溶液を相分離することが、両親媒性ポリマーを添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
両親媒性ポリマーがポリエチレングリコールを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ポリマー賦形剤がペプチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ペプチドが、IgG、Fab断片、BSA、およびHuSAのうちの1つ以上を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ポリマー賦形剤が多糖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリマー賦形剤がグリコーゲンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
核酸がsiRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
カチオン性キャリア剤が、ペプチド、脂質またはカチオン性ポリマーのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
形成された粒子を有機溶媒に懸濁させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
形成された粒子を徐放マトリクスに配置することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
核酸とカチオン性キャリア剤とを含む核酸複合体と、
相分離されるポリマー賦形剤と、を含み、核酸複合体およびポリマー賦形剤が、一緒に配置されて粒子を形成し、粒子の平均直径が約100um未満である、活性剤送達装置。
【請求項13】
ポリマー賦形剤がペプチドまたは多糖のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の活性剤送達装置。
【請求項14】
ペプチドが、IgG、Fab、BSA、およびHuSAからなる群から選択される、請求項13に記載の活性剤送達装置。
【請求項15】
多糖がグリコーゲンを含む、請求項13に記載の活性剤送達装置。
【請求項16】
粒子が、有機溶媒に曝露されるにもかかわらず核酸複合体のトランスフェクション特性を維持するように構成される、請求項12に記載の活性剤送達装置。
【請求項17】
相分離を開始するのに使用される0重量パーセント〜5重量パーセントの両親媒性ポリマーをさらに含む、請求項12に記載の活性剤送達装置。
【請求項18】
両親媒性ポリマーがポリエチレングリコールを含む、請求項17に記載の活性剤送達装置。
【請求項19】
カチオン性キャリア剤が、ペプチド、脂質またはカチオン性ポリマーのうちの1つ以上を含む、請求項12に記載の活性剤送達装置。
【請求項20】
溶出制御マトリクスをさらに含み、粒子が溶出制御マトリクス内に配置される、請求項12に記載の活性剤送達装置。
【請求項21】
核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、
核酸複合体を予備成形粒子に吸収することを含み、粒子の平均直径が約100um未満である、核酸複合体を有する粒子を形成する方法。
【請求項22】
予備成形粒子が、セラミック、カオリン、および架橋ポリマーからなる群から選択される材料を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
核酸をカチオン性キャリア剤と接触させて核酸複合体を形成し、
核酸複合体をポリマーと接触させ、
ポリマーを架橋させることを含む、核酸複合体を有する粒子を形成する方法。
【請求項24】
核酸複合体をポリマーと接触させるステップの後に、相分離を実施することをさらに含む、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A−8B】
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【図9A−9J】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2011−520813(P2011−520813A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508670(P2011−508670)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/043158
【国際公開番号】WO2009/137689
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(506112683)サーモディクス,インコーポレイティド (50)
【Fターム(参考)】