説明

粒子ビーム装置

【課題】荷電粒子線装置の高電圧変動を測定する簡単な構造の測定装置を備える高圧電源ユニットを提供する。
【解決手段】高圧電源ユニット100は、高電圧を供給する少なくとも一つの高電圧ケーブル101及び高電圧を測定する測定装置105を備え、測定装置105はケーブルの長手軸線に沿って延在する内部導体と絶縁体及びシールドより形成されるの少なくとも一つの第1のキャパシタ108を有し、第1のキャパシタ108のシールド電圧を測定装置105により測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒子ビーム装置用の高圧電源ユニット及びこの種の高圧電源ユニットを備える粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の状態下における物体の特性及び挙動に関する知見を得るために電子ビーム装置、特に走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて前記物体を検査することが行われている。
【0003】
SEMの場合もTEMの場合も、電子はビーム発生器によって発生される。電子はビーム発生器から発生し、電子ビームを形成する。電子はビーム発生器と陽極との間の電位差により加速される。この目的のために、ビーム発生器には通常負の高電圧が供給される。SEMの場合には、前記高電圧は接地電位に対して例えば(−1)kV〜(−30)kVの範囲である。TEMの場合には、前記高電圧は接地電位に対して例えば(−10)kV〜(−300)kVの範囲である。
【0004】
上述した粒子ビーム装置の場合において高分解能の物体検査を達成するためには、高圧電源ユニットにより得られる高電圧が大きな変動を受けないようにするのが望ましい。高電圧を安定化する対応手段を始めるためには、高電圧の変動を測定することが知られている。一例では、抵抗分圧器又は容量分圧器を有する測定装置が使用される。容量分圧器は高電圧キャパシタの形の第1のキャパシタ及び測定キャパシタの形の第2のキャパシタを備える。第1のキャパシタはハウジング内に収容され、高電圧シールドで被覆される。しかしながら、ハウジング及び高電圧シールドは大きな重量を有するため、容量分圧器が設けられた測定装置は極めて重くなる。一例では、200kV用に設計された既知の測定装置の重量は数百キログラムである。このように大きな重量は既知の測定装置の取り扱い及び設置を極めて困難にする。特に、粒子ビーム装置への測定装置の移送が困難になる。従って、既知の測定装置の後からの取り付けは比較的高い費用をかけてのみ可能となる。
【0005】
更に、既知の測定装置に使用される高電圧キャパシタは調達に費用がかかる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、コストエフェクティブで取り扱いが簡単な高電圧の変動を測定する測定装置を備える高圧電源ユニットを提供するという目的に基づく。
【0007】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載された特徴を備える高圧電源ユニットによって達成される。この種の高圧電源ユニットを備える粒子ビーム装置は請求項14に記載された特徴によりもたらされる。本発明による高圧電源ユニットの使用方法の特徴は請求項13に記載されている。本発明の他の特徴は以下の記載から、後記の請求項から及び/又は添付図面から明らかになる。
【0008】
本発明は粒子ビーム装置用の高圧電源ユニットを提供する。この高圧電源ユニットは、高電圧を供給する少なくとも一つの高電圧ケーブルを有する。更に、この高圧電源ユニットは前記高電圧を測定する少なくとも一つの測定装置を備える。この測定装置は少なくとも一つの第1のキャパシタを有する。この第1のキャパシタは、例えば高電圧キャパシタとして具体化される。更に、第1のキャパシタは、高電圧ケーブルの少なくとも一つの第1の区分で形成される。
【0009】
本発明は、高圧電源ユニットの高電圧ケーブルをキャパシタとして利用できるという驚くべき洞察に基づいている。高電圧ケーブル自体は、電線として、特性変数、即ち単位長さ当りのキャパシタンスを有する。この特性変数は高電圧ケーブルの単位長さあたりのキャパシタンスを記述する。高電圧ケーブルの上述した第1の区分の長さの適切な選択が与えられるとすれば、第1のキャパシタは高電圧を測定するのに十分なキャパシタンスを有する。
【0010】
本発明は、第1に、本発明の測定装置は第1のキャパシタの製造が簡単であるためにコストエフェクティブであるという利点を有する。第2に、本発明の測定装置は従来のものと比較して軽い。よって、高圧電源ユニットの移送及び設置が簡単になる。更に、考察の結果、このように形成されたキャパシタは測定される高電圧に僅かな影響を与えるのみであるため、高電圧を高い精度で測定できることが明らかになった。
【0011】
本発明による高圧電源ユニットの一実施例は、加えて又は代わりに、高電圧ケーブルが下記の構造を有するものとする。高電圧ケーブルは少なくとも一つの第1の絶縁体で取り囲まれた少なくとも一つの内部導体を有する。第1の絶縁体は次に少なくとも一つの第1のシールドで取り囲まれる。上記の高電圧ケーブルは、例えば導電性の外面を有する高電圧ケーブルである。第1のシールドは高電圧ケーブルの第1の区分の少なくとも一つの第1の領域及び/又は少なくとも一つの第2の領域において遮断される。更に、高電圧ケーブルの第1の区分は第2のシールドで取り囲まれる。第1のシールドも第2のシールドも本発明による高圧電源ユニットを扱う仕事をする人を保護する働きをする。
【0012】
本発明による高圧電源ユニットの他の実施例は、加えて又は代わりに、高電圧ケーブルの第1の区分が高電圧ケーブルの長手軸線に沿って延在し、第1の長さを有するものとする。更に、第1の領域は高電圧ケーブルの長手軸線に沿って延在し、第2の長さを有し、第1の領域の第2の長さは高電圧ケーブルの第1の区分の第1の長さより小さいものとする。これに加えて又は代わりに、第2の領域は高電圧ケーブルの長手軸線に沿って延在し、第3の長さを有し、第2の領域の第3の長さは高電圧ケーブルの第1の区分の第1の長さより小さいものとする。
【0013】
本発明による高圧電源ユニットの更に他の実施例は、内部導体が少なくとも一つの第2の絶縁体で取り囲まれるものとする。これは、特に、高電圧ケーブルが2つの内部導体を有する場合に与えられる。第2の絶縁体は少なくとも一つの第3のシールドで取り囲まれる。この実施例は、例えば絶縁されシールドされた(即ち第2の絶縁体及び第3のシールドを貫通する)複数の導体を有し、更に他の絶縁体(即ち第1の絶縁体)で取り囲まれ、次に(第1のシールドで)遮蔽された高電圧ケーブルに該当する。更に他の実施例は2つ以上の内部導体の各々を第2の絶縁体で取り囲み、次にこれらの2つ以上の内部導体を共通の第3のシールドで取り囲むものとする。
【0014】
本発明による高圧電源ユニットの次の実施例では、該高圧電源ユニットは以下の特徴: ・第1のシールドが少なくとも一つの第1のシースで取り囲まれている、又は
・高電圧ケーブルの第1の区分において、第2のシールドが少なくとも一つの第2のシースで取り囲まれている、
の少なくとも一つを有する。
【0015】
一例として、第1のシース及び第2のシースの少なくとも一つはゴム及び/又はプラスチックによって形成される。
【0016】
本発明による高圧電源ユニットの更に他の実施例では、加えて又は代わりに、第1のシールドは接地電位にされる。しかしながら、第1のシールドは高電圧ケーブルの第1の区分では接地電位にされない。しかし、加えて又は代わりに、第2のシールドが接地電位にされる。
【0017】
本発明による高圧電源ユニットの更に別の実施例は、加えて又は代わりに、高電圧ケーブル(101)が、
10pF/m〜1000pF/mの範囲の単位長さ当たりキャパシタンスを有する、又は
50pF/m〜500pF/mの範囲の単位長さ当たりのキャパシタンスを有する、又は
80pF〜250pF/mの範囲の単位長さ当たりのキャパシタンスを有する、
ものとする。
【0018】
本発明は上記の値に限定されないことが明確に指摘される。それどころか、任意の適切な単位長さ当たりのキャパシタンス値を選択することができる。
【0019】
本発明による高圧電源ユニットの他の実施例は、加えて又は代わりに、前記測定装置は少なくとも一つの容量分圧器を有し、この容量分圧器は第1のキャパシタ及び少なくとも一つの第2のキャパシタを備えるものとする。その代わりとして、測定装置は高電圧を測定するための少なくとも一つの測定抵抗を有するものとし得る。一例として、測定抵抗は電圧測定ユニット内に配置される。それゆえ、測定抵抗は直接電圧測定ユニットの一部分とすることができる。
【0020】
本発明による高圧電源ユニットの別の実施例は、加えて又は代わりに、高電圧ケーブルが少なくとも一つの第2の区分(132)を備えるものとする。第1の区分は前記第2の区分(132)から離して配置される。一例として、第2の区分は第1の区分と同一に具体化されるものとする。これらの模範的な実施例は、例えば複数の第1のキャパシタが高電圧ケーブルに形成されるものとする。第1の区分及び第2の区分はそれぞれが第1のキャパシタを構成する。
【0021】
本発明は、高電圧を測定する及び/又は高圧電源ユニットを調整するために使用される測定信号を発生させるために、上述した特徴の少なくとも一つを備える又は上述した特徴の少なくとも2つを備える高圧電源ユニットを使用する使用方法にも関する。
【0022】
本発明は、更に、粒子ビームを発生する少なくとも一つのビーム発生器、前記粒子ビームを少なくとも一つの物体の上に集束する少なくとも一つの対物レンズ、及び少なくとも一つの高圧電源ユニットを備える粒子ビーム装置に関し、前記高圧電源ユニットは上述した特徴の少なくとも一つを有する又は上述した特徴の少なくとも2つを有するものとする。
【0023】
本発明による粒子ビーム装置の一実施例では、加えて又は代わりに、前記高圧電源ユニットが電子源又は電極、例えば引出し電極又はアノードに高電圧を供給するように設計される。それに加えて又は代わりに、前記高圧電源ユニットは粒子ビーム装置の他の構成要素、例えば補正装置又はスペクトロメータの少なくとも一つの電極を給電するように設計される。更に、粒子ビーム装置は、例えば電子ビーム装置として又はイオンビーム装置として具体化される。
【0024】
以下に、図面を用いて本発明を模範的な実施例に基づいて更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】透過型電子顕微鏡の形態の粒子ビーム装置の概略図を示す。
【図2】走査型電子顕微鏡の形態の粒子ビーム装置の概略図を示す。
【図3】本発明による測定装置を備える高圧電源ユニットの概略図を示す。
【図4】本発明による測定装置を備える高圧電源ユニットの概略図を示す。
【図5】キャパシタとして具体化された高電圧ケーブルの第1の実施例の概略図を示す。
【図6】キャパシタとして具体化された高電圧ケーブルの第2の実施例の概略図を示す。
【図7】キャパシタとして具体化された高電圧ケーブルの第3の実施例の拡大断面の概略図を示す。
【図8】キャパシタとして具体化された高電圧ケーブルの第4の実施例の拡大断面の概略図を示す。
【図9】2つの第1のキャパシタを有する高電圧ケーブルの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は透過型電子顕微鏡(以後常にTEMと表記する)及び走査型電子顕微鏡(以後常にSEMと表記する)の形態の粒子ビーム装置に基づいて以下に説明される。しかしながら、本発明はTEM又はSEMに限定されないことを予め指摘しておく。むしろ、本発明は任意の粒子ビーム装置、例えばイオンビーム装置にも使用することができる。
【0027】
図1はTEMの概略図を示す。TEM11は熱電界放出源の形態の電子源1を有する。しかし、他の任意の電子源を使用することもできる。TEM11の光軸OAに沿って、引出し電極2が電子源1の下流に配置され、電子がこの電極の電位のおかげで電子源1から引き出される。更に、電子源位置を集束するための第1電極3及び電子を加速するための第2電極4が設けられる。第2電極4のおかげで、電子源1から発生する電子は電極電圧によって所望の調整可能なエネルギーに加速される。この目的のために、電子源1は高電圧ケーブルを経て高圧電源ユニット100に接続される。この点は以下において更に詳しく説明する。
【0028】
更に光軸OAに沿って、3つの磁気レンズ5〜7(即ち第1磁気レンズ5、第2磁気レンズ6及び第3磁気レンズ7)を有する多段コンデンサが配置され、このコンデンサの後に磁気レンズの形態の対物レンズ8が配置される。対物面9は対物レンズ8に位置し、この対物面に検査すべき物体を試料マニュピレータによって位置させることができる。第1磁気レンズ5、第2磁気レンズ6、第3磁気レンズ7及び対物レンズ8の動作パラメータ(例えばレンズ電流)の対応する設定によって、特に対物面9の照明領域を設定することができる。
【0029】
磁気レンズとして具体化された回折レンズ15が対物レンズ8の下流に電子源1と反対方向に配置される。この回折レンズ15は、最初に、対物レンズ8の後焦点面10を回折中間像面21に結像する。更に、対物レンズ8は対物面9の実中間像を形成する。回折レンズ15は、第2に、対物面9の中間像14を第1投影レンズ18及び第2投影レンズ19からなる投影系の入射像面17に結像する。投影系18,19は次いで、対物面9に配置され対物系18,19の入射像面に結像された物体から、検出器20上に像を生成する。投影系18,19を対応して切り替えることによって、後焦点面10又は回折中間像面21を検出器20上(又は最終像面内に)結像することもできる。この種のTEM11は他のレンズ及び偏向及び補正系(例えばスチグマート又は補正装置)及び/又はスペクトロメータを有することができる。
【0030】
図2は本発明が実施されるSEM12の形態の他の粒子ビーム装置を示す。この粒子ビーム装置は、光軸23を備える電子柱22、電子源(カソード)の形態のビーム発生器、引出し電極25及びビーム案内管27の一端も同時に構成するアノード26を有する。一例では、電子源24は熱電界放出体である。電子源24から発生する電子は電子源24とアノード26との間の電位差のおかげでアノード電位に加速される。その結果、電子ビームの形の粒子ビームが得られる。この模範的な実施例でも、電子源24は高電圧ケーブル101を経て高圧電源ユニット100に接続される。
【0031】
更に、対物レンズ28が設けられ、この対物レンズはビーム案内管27が通る孔を有する。対物レンズ28は更に磁極片29を有し、この磁極片内にはコイル30が設けられる。静電遅延装置がビーム案内管27の下流に接続される。この静電遅延装置は個別電極31と管電極32とからなる。管電極32はビーム案内管27の端部に位置し、搬送素子33に向かい合って位置する。搬送素子33は検査すべき物体を収容する機能をなす。
【0032】
管電極32はビーム案内管27とともにアノード電位にされ、個別電極31及び搬送素子33上に配置される物体はアノード電位より低い電位にされる。このようにすると、粒子ビームの電子は搬送素子33上に配置される物体の検査に必要な所望のエネルギーに減速される。電子柱22は更に走査手段34を有し、この走査手段によって電子ビームを偏向し、搬送素子33上に配置される物体を走査することができる。
【0033】
イメージングのために、電子ビームと搬送素子33上の物体との相互作用によって生じる二次電子及び/又は後方散乱電子がビーム案内管27内に配置された検出器35によって検出される。検出器35により発生される信号はイメージングのために電子装置(図示せず)に送られる。
【0034】
図3は、TEM11及び/又はSEM12の高電圧を測定するためにこれまで使用されてきた従来技術を示す概略図である。高圧電源ユニット100は高電圧ケーブル101を経てTEM11又はSEM12に接続される。高圧電源ユニット100は高電圧発生器102、高電圧調整器104及び高電圧調整器104のための抵抗103を有する。高電圧調整器104及び抵抗103は高圧電源ユニット100により使用可能にされる高電圧を調整するように機能する。この場合、一例では、高電圧調整器104において、基準信号が抵抗103を経て得られる実際の信号と比較され、高電圧調整器104は、実際の信号が基準信号に一致するように高電圧発生器102を設定する。高電圧を測定するために、測定装置105が設けられ、この測定装置は高電圧キャパシタ106を有する。高電圧キャパシタ106はタップを経て測定ユニット107に接続される。高電圧キャパシタ106を有する測定装置105は高圧電源ユニット100内に直接組み込むこともでき、その場合には別個のハウジングが不要になる。
【0035】
測定ユニット107は高圧電源ユニット100により使用可能にされる高電圧の変動を示す。この場合、変動は、例えば約1/10Hzから何100kHzの範囲の振動(即ち低速変動(約1/10Hz)から極めて高い周波数の変動(100kHz超)を意味するものと考えられる。測定ユニット107のこの測定信号は高圧電源ユニット100の安定性を評価するために使用することができる。加えて又は代わりに、この測定信号は高圧電源ユニット100の調整を安定化するために使用することもできる。
【0036】
図4は本発明による高圧電源ユニット100を示す概略図である。図4は図3に基づくものであり、同一の構成要素には同じ参照符号が付与されている。従来技術と対照的に、本発明では高電圧ケーブル101に高電圧キャパシタとして具体化された第1の区分を設ける。
【0037】
図5は高電圧ケーブル101の第1の実施例を示す概略図であり、この高電圧ケーブルは長手軸線116に対して対称に構成される。高電圧ケーブル110は内部胴体109を有し、この内部導体は第1の絶縁体110で取り囲まれる。第1の絶縁体110は次に第1のシールド111により取り囲まれる。高電圧ケーブル101は第1のキャパシタを構成する第1の区分108を有する。
【0038】
高電圧ケーブル101の第1の区分108は第1の端部114及び第2の端部115を有する。第1の領域112が第1の端部114に配置される。他方、第2の領域113が第2の端部115に配置される。第1のシールド111が第1の領域112及び第2の領域113の両領域において分離される。別の言い方をすれば、第1のシールド111は第1の領域及び第2の領域113において遮断される。第1の領域112及び第2の領域113の間に位置する第1のシールド111の部分117は第1のキャパシタとして具体化される第1の区分108の電極を構成する。
【0039】
第1のシールド111は高電圧ケーブル101の全長に亘って第1のシース118により取り囲まれる。しかし、本発明では第1のシース118も第1の領域112及び第2の領域113において分離される。第1の区分108において、第2のシールド119が第1のシース118の上に配置され、前記第2のシールドは長手軸線116に沿って第1の領域112及び第2の領域113を横切って延在する。第2のシールド119は次に第2のシース120で取り囲まれる。第1のシールド111及び第2のシールド119は両方とも接地され、高圧電源ユニット100を扱う人を保護する働きをする。
【0040】
第1のシース118及び/又は第2のシース120は本発明に絶対に必要とは限らないことを明記する。いくつかの実施例は上述した2つのシースの少なくとも一つは含まない。
【0041】
高電圧ケーブル101は、第1の区分108において、例えば10pF/m〜1000pF/mの範囲、又は50pF/m〜500pF/mの範囲、又は80pF〜250pF/mの範囲の単位長さ当たりのキャパシタンスを有するものとすることができる。
【0042】
図5には、2つの可能な電圧測定形式も概略図で示されている。第1の測定形式Aでは、測定装置105は容量分圧器121を有する。容量分圧器121は第1のキャパシタ(高電圧キャパシタ)として具体化された第1の区分108と第2のキャパシタ122(低電圧キャパシタ)を有する。この第2のキャパシタ122の両端間の降下電圧が測定ユニット107によって測定される。第2の測定形式Bでは、測定抵抗123が測定装置105内に設けられ、この抵抗の両端間の降下電圧が測定ユニット107によって測定される。加えて又は代わりに、測定抵抗123は測定ユニット107の一部分とすることができ、別の言い方をすれば、測定ユニット107の内部抵抗をそのまま測定抵抗とすることができる。
【0043】
図6は高電圧ケーブル101の他の実施例を示す。図6は図5に基づくものであり、同一の構成要素には同一の参照符号が付与されている。図5の模範的な実施例と対照的に、図6の実施例は内部導体109を取り囲む第2の絶縁体124を有する。代替例では、複数の内部導体109が高電圧ケーブル101内に設けられる。第3のシールド125が第2の絶縁体124の周りに配置される。他の模範的な実施例では、複数の内部導体109が設けられ、内部導体の各々が個別に第2の絶縁体124で取り囲まれるものとし得る。あるいはまた、内部導体のすべてを共通の第3のシールド125で取り囲んでもよい。測定ユニット107の高電圧は測定装置105によって測定される。更に、電圧フラッシュオーバの場合における測定装置105の過電圧保護として保護回路(図示せず)を設けることもできる。この目的のために、例えばダイオード保護回路が使用され、この保護回路もキャパシタ回路及び/又は抵抗回路で補うことができる
【0044】
図7は高電圧ケーブル101の第1の区分108の第2の端部115の拡大概略図を示す。図7は図5に基づくものであり、同一の構成要素には同一の参照符号が付与されている。可成形絶縁体126が第2の領域113内に配置され、この絶縁体は第2の領域113を完全に充填し第1の絶縁体110に隣接する。更に、可成形絶縁体126は第1のシールド111、第2のシールド119及び第1のシース118に隣接する。第2のシールド119は、第2のシールド119の第1の端部127が第1のシールド111で支えられるように第1の端部127においてS字状に曲げられる。その結果、第1のシールド111及び第2のシールド119は互いに接触する。従って、両シールドは互いに電気的に接続される。この電気的接触は異なる方法、例えばケーブル接続によって形成することもできる。第2のシース120は第1のシース118で支えられ、次いで第2のシールド119を覆うように設けられる。この実施例は、高い電界強度が個々の構成要素の移行部位で発生し得ないという利点を有する。
【0045】
図8は、高電圧ケーブル101の第1の区分108の第2の端部115の他の拡大概略図を示す。図7は図5に基づくものであり、同一の構成要素には同一の参照符号が付与されている。図7の模範的な実施例と対照的に、図8の模範的な実施例では、第1のシールド111及び第1のシールド111の第1の領域112及び第2の領域113の間に位置する部分117は第1のシールド111と第1の絶縁体110との間及び第1のシールド111の部分117と第1の絶縁体110との間の境界領域に切欠き部130を有する。第1のシールド111の領域における切欠き部130に導電層128が形成され、この導電層は可成形絶縁体126の突部131に接触するとともに、第1のシールド111の部分117に沿う切欠き部130まで広がる。更に、切欠き部130内の第1のシールド111の部分117に、導電層128を部分的に覆うとともに可成形絶縁体126の突部131に隣接する絶縁層129が付加される。これにより、第1のシールド111の部分117は第1のシールド111から更に絶縁される。この実施例では、個々の構成要素の移行部位が一層狭くなり、つまり互いに近接配置される。この実施例も、高い電界強度が個々の構成要素の移行部位で発生し得ないという利点を有する。
【0046】
図8に示す実施例は図示の配置の導電層128及び絶縁層129に限定されない。それどころか、任意所望の配置の導電層128及び絶縁層129を設けることができる。一例として、導電層128及び絶縁層129は図8に示す配置に対して鏡面反転された配置で具現することができる。
【0047】
図8及び図7に示す実施例は第1の区分108の第1の領域112に対して実施することもできる。
【0048】
図9に示す実施例では、第1の区分108及び第2の区分132が高電圧ケーブル101に設けられ、第2の区分132は第1の区分108と構造的に同一に具現することができる。第1の区分108及び第2の区分132はいずれも第1のキャパシタ(高電圧キャパシタ)を構成する。両区分はいずれも高圧電源ユニット100の高電圧の測定、調整及び安定化に使用される(図4参照)。
【0049】
本発明は、高圧電源ユニット100の高電圧ケーブル101はキャパシタとして使用できるという驚くべき洞察に基づくものである。高電圧ケーブル101自体は単位長さ当たりのキャパシタンスを有する。高電圧ケーブル101の第1の区分及び/又は第2の区分132の長さの適切な選択を与えれば、第1のキャパシタは高電圧測定用に十分なキャパシタンスを有する。
【符号の説明】
【0050】
1 電子源
2 引出し電極
3 第1電極
4 第2電極
5 第1磁気レンズ
6 第2磁気レンズ
7 第3磁気レンズ
8 対物レンズ
9 対物面
10 後焦点面
11 TEM
12 SEM
14 実中間像
15 回折レンズ
17 投影レンズ用入射像面
20 検出器/最終像面
21 回折中間像面
22 電子柱
23 光軸
24 電子源
25 引出し電極
26 アノード
27 ビーム案内管
28 対物レンズ
29 磁極片
30 コイル
31 個別電極
32 管電極
33 搬送素子
34 走査手段
35 検出器
100 高圧電源ユニット
101 高電圧ケーブル
102 高電圧発生器
103 抵抗
104 高電圧調整器
105 測定装置
106 高電圧キャパシタ
107 測定ユニット
108 高電圧ケーブルの第1の区分
109 内部導体
110 第1の絶縁体
111 第1のシールド
112 第1の領域
113 第2の領域
114 第1の端部
115 第2の端部
116 長手軸線
117 第1のシールドの一部分
118 第1のシース
119 第2のシールド
120 第2のシース
121 容量分圧器
122 第2のキャパシタ
123 測定抵抗
124 第2の絶縁体
125 第3のシールド
126 可成形絶縁体
127 第2のシールドの第1の端部
128 導電層
129 絶縁層
130 切欠き部
131 突部
132 高電圧ケーブルの第2の区分
OA 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧を供給する少なくとも一つの高電圧ケーブル(101)及び
前記高電圧を測定する少なくとも一つの測定装置(105)を備え、前記測定装置は少なくとも一つの第1のキャパシタ(108,132)を有する、粒子ビーム装置(11,12)用の高圧電源ユニット(100)において、
前記第1のキャパシタが前記高電圧ケーブル(101)の少なくとも一つの第1の区分(108)で形成されている、
高圧電源ユニット(100)。
【請求項2】
前記高電圧ケーブル(101)は少なくとも一つの内部導体(109)を有し、
前記内部導体(109)は少なくとも一つの第1の絶縁体(110)で取り囲まれ、
前記第1の絶縁体(110)は少なくとも一つの第1のシールド(111)で取り囲まれ、
前記第1のシールド(111)は前記高電圧ケーブル(101)の前記第1の区分(108)の少なくとも一つの第1の領域(112)及び/又は少なくとも一つの第2の領域(113)で遮断され、
前記高電圧ケーブル(101)の前記第1の区分(108)は少なくとも一つの第2のシールド(119)で取り囲まれている、
請求項1記載の高圧電源ユニット(100)。
【請求項3】
前記高電圧ケーブル(101)の前記第1の区分(108)は前記高電圧ケーブル(101)の長手軸線(106)に沿って延在し、第1の長さを有し、
前記第1の領域(112)は前記高電圧ケーブル(101)の長手軸線(106)に沿って延在し、第2の長さを有し、前記第1の領域の第2の長さは前記高電圧ケーブル(101)の前記第1の区分(108)の前記第1の長さより小さい、及び/又は、
前記第2の領域(113)は前記高電圧ケーブル(101)の長手軸線(106)に沿って延在し、第3の長さを有し、前記第2の領域の前記第3の長さは前記高電圧ケーブル(101)の前記第1の区分(108)の前記第1の長さより小さい、
請求項2記載の高圧電源ユニット(100)。
【請求項4】
前記内部導体(109)は少なくとも一つの第2の絶縁体(124)で取り囲まれ、
前記第2の絶縁体(124)は少なくとも一つの第3のシールド(125)で取り囲まれている、
請求項2又は3記載の高圧電源ユニット(100)。
【請求項5】
前記高圧電源ユニット(100)は、
前記第1のシールド(111)が少なくとも一つの第1のシース(118)で取り囲まれている、又は
前記高電圧ケーブル(101)の前記第1の区分(108)において、前記第2のシールド(119)が少なくとも一つの第2のシースで取り囲まれている、
という特徴のうちの少なくとも一つを有する請求項2−4のいずれかに記載の高圧電源ユニット(100)。
【請求項6】
前記第1のシールド(111)が接地される、及び/又は、
前記第2のシールド(119)が接地される、
請求項2−5のいずれかに記載の高圧電源ユニット(100)。
【請求項7】
前記高電圧ケーブル(101)は、10pF/m〜1000pF/mの範囲の単位長さ当たりキャパシタンスを有する、又は
前記高電圧ケーブル(101)は、50pF/m〜500pF/mの範囲の単位長さ当たりのキャパシタンスを有する、又は
前記高電圧ケーブル(101)は、80pF〜250pF/mの範囲の単位長さ当たりのキャパシタンスを有する、
請求項1−6のいずれかに記載の高圧電源ユニット(100)。
【請求項8】
前記測定装置(105)は少なくとも一つの容量分圧器(121)を有し、前記容量分圧器(121)は前記第1のキャパシタ(108)及び少なくとも一つの第2のキャパシタ(122)を備える、請求項1−7のいずれかに記載の高圧電源ユニット(100)。
【請求項9】
前記測定装置(105)は前記高電圧を測定するための少なくとも一つの測定抵抗を備える、請求項1−8のいずれかに記載の高圧電源ユニット(100)。
【請求項10】
前記測定抵抗は電圧測定ユニット(107)内に配置されている、請求項1−9のいずれかに記載の高圧電源ユニット(100)。
【請求項11】
前記高電圧ケーブル(101)は少なくとも一つの第2の区分(132)を備え、
前記第1の区分(108)は前記第2の区分(132)から離れて位置する、
請求項1−10のいずれかに記載の高圧電源ユニット(100)。
【請求項12】
前記第2の区分(132)は前記第1の区分(108)と同一に具体化されている、
請求項11記載の高圧電源ユニット(100)。
【請求項13】
高電圧の変動を測定するため及び/又は高圧電源ユニット(100)を調整するために使用される測定信号を発生させるために請求項1−12のいずれかに記載の高圧電源ユニット(100)を使用する使用方法。
【請求項14】
粒子ビームを発生する少なくとも一つのビーム発生器(1,24)、
前記粒子ビームを少なくとも一つの物体の上に集束する少なくとも一つの対物レンズ(8,28)、及び
請求項1−12のいずれかに記載の少なくとも一つの高圧電源ユニット(100)、
を備える、粒子ビーム装置(11,12)。
【請求項15】
前記高圧電源ユニット(100)は前記ビデオ発生器(1,24)に高電圧を供給するように設計されている、請求項14記載の粒子ビーム装置(11,12)。
【請求項16】
前記粒子ビーム装置は電子ビーム装置として又はイオンビーム装置として具体化されている、請求項14又は15記載の粒子ビーム装置(11,12)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−16479(P2013−16479A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−136233(P2012−136233)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【出願人】(512158505)カール ツァイス マイクロスコーピー ゲーエムベーハー (2)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Microscopy GmbH
【Fターム(参考)】