説明

粒子作製方法、粒子作製装置および粒子作製用基材

【課題】小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が得られる粒子作製方法を提供する。
【解決手段】粒子形成用の原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の複数の液滴を、溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とが形成された基材の高親和性領域の上に形成する液滴形成工程と、液滴を固化して粒子を形成する粒子形成工程と、粒子を基材の表面から剥離する剥離工程と、を含み、高親和性領域および低親和性領域の面積を電気的に制御する粒子作製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子作製方法、粒子作製装置および粒子作製用基材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法など静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、現在様々な分野で利用されている。電子写真法においては、帯電、露光工程により像保持体上に静電潜像を形成し(潜像形成工程)、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」と呼ぶ場合がある。)を含む静電荷像現像用現像剤(以下、単に「現像剤」と呼ぶ場合がある。)で静電潜像を現像し(現像工程)、転写工程、定着工程を経て可視化される。ここで用いられる現像剤には、トナーとキャリアからなる2成分現像剤と、磁性トナーまたは非磁性トナーを単独で用いる1成分現像剤とがある。そのトナーの製法は、通常、熱可塑性樹脂などの結着樹脂を顔料などの着色剤、帯電制御剤、ワックスなどの離型剤等とともに溶融混練し、冷却後、粉砕し、さらに分級する混練粉砕法が使用されている。
【0003】
近年、トナーの形状および表面構造などの制御を意図的に行うことが可能な手段として、乳化重合凝集法などの湿式製法によるトナーの製造方法が提案されている。特に高画質化を狙うためにトナーの粒径をできるだけ揃える方法として、例えば、懸濁重合法、乳化重合凝集法等がある。乳化重合凝集法は、一般に乳化重合などにより樹脂粒子分散液を作製し、一方、溶媒に着色剤を分散した着色剤分散液、溶媒に離型剤を分散した離型剤分散液等を作製した後、これらを混合し、トナー粒径に相当する凝集粒子を形成し、加熱することによって融合・合一させてトナーとする製造方法である。湿式製法によるトナーの製造方法としては、その他にも各種提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
これらの湿式製法では、混練粉砕法に比べて小粒径かつ狭い粒度分布を有するトナーが得られる。しかし、より小粒径かつ狭い粒度分布を有するトナーの作製方法が求められている。また、トナーの分野に限らず、小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子の作製方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−122525号公報
【特許文献2】特開2008−180924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が得られる粒子作製方法およびそのような粒子を作製するための粒子作製装置および粒子作製用基材である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、粒子形成用の原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の複数の液滴を、前記溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とが形成された基材の前記高親和性領域の上に形成する液滴形成工程と、前記液滴を固化して粒子を形成する粒子形成工程と、前記粒子を前記基材の表面から剥離する剥離工程と、を含み、前記高親和性領域および低親和性領域の面積を電気的に制御する粒子作製方法である。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記粒子形成工程および前記剥離工程の少なくともいずれかにおいて、前記液滴あるいは前記粒子と前記基材の表面との接触面における前記高親和性領域の面積を電気的に制御して減少させる、請求項1に記載の粒子作製方法である。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記液滴あるいは前記粒子と前記基材の表面との接触面における前記高親和性領域の面積をその中心に向かって減少させる、請求項2に記載の粒子作製方法である。
【0010】
請求項4に係る発明は、絶縁性の基材の表面に形成された誘電体膜中に複数の一対の電極とを形成する電極形成工程と、前記誘電体膜の表面に、前記溶媒に対する親和性を前記電極により電気的に制御するための親和性制御膜を形成する親和性制御膜形成工程と、を含む基材作製工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒子作製方法である。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記一対の電極が、円形状の円状電極と、前記円状電極の周囲を囲む環形状の環状電極とを含む、請求項4に記載の粒子作製方法である。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記粒子が静電荷像現像用トナーである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粒子作製方法である。
【0013】
請求項7に係る発明は、絶縁性の基材と、前記基材の表面に形成された誘電体膜と、前記誘電体膜中に形成された複数の一対の電極と、前記誘電体膜の表面に形成された、粒子形成用の原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の前記溶媒に対する親和性を前記電極により電気的に制御するための親和性制御膜と、を有する粒子作製用基材と、前記それぞれの一対の電極に互いに独立した電圧を印加する電圧印加手段と、を有する粒子作製装置である。
【0014】
請求項8に係る発明は、前記一対の電極が、円形状の円状電極と、前記円状電極の周囲を囲む環形状の環状電極とを含む、請求項7に記載の粒子作製装置である。
【0015】
請求項9に係る発明は、絶縁性の基材と、前記基材の表面に形成された誘電体膜と、前記誘電体膜中に形成された一対の電極と、前記誘電体膜の表面に形成された、粒子形成用の原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の前記溶媒に対する親和性を前記電極により電気的に制御するための親和性制御膜と、を有し、前記それぞれの一対の電極には互いに独立した電圧が印加可能である粒子作製用基材である。
【0016】
請求項10に係る発明は、前記一対の電極が、円形状の円状電極と、前記円状電極の周囲を囲む環形状の環状電極とを含む、請求項9に記載の粒子作製用基材である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1によると、本構成を有する粒子作製方法以外の方法に比べて、容易に小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が得られる。
【0018】
本発明の請求項2によると、本構成を有する粒子作製方法以外の方法に比べて、容易に小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が得られる。
【0019】
本発明の請求項3によると、本構成を有する粒子作製方法以外の方法に比べて、容易に小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が得られる。
【0020】
本発明の請求項4によると、本構成を有する粒子作製方法以外の方法に比べて、容易に小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が得られる。
【0021】
本発明の請求項5によると、本構成を有する粒子作製方法以外の方法に比べて、容易に小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が得られる。
【0022】
本発明の請求項6によると、本構成を有する粒子作製方法以外の方法に比べて、容易に小粒径かつ狭い粒度分布を有するトナーが得られる。
【0023】
本発明の請求項7によると、本構成を有する粒子作製装置以外の装置に比べて、容易に小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が得られる。
【0024】
本発明の請求項8によると、本構成を有する粒子作製装置以外の装置に比べて、容易に小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が得られる。
【0025】
本発明の請求項9によると、本構成を有する粒子作製用基材以外の基材に比べて、容易に小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が得られる。
【0026】
本発明の請求項10によると、本構成を有する粒子作製用基材以外の基材に比べて、容易に小粒径かつ狭い粒度分布を有する粒子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る粒子作製方法における原料分散液の調製方法の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る粒子作製方法における粒子作製用基材の一例を示す概略上面図である。
【図3】図2におけるA−A’断面図である。
【図4】(a)本発明の実施形態に係る粒子作製用基材の一例を示す概略上面図である。(b)本発明の実施形態に係る粒子作製用基材における電極の最密充填の様子を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る粒子作製方法の一例を示す概略図である。
【図6】膜により高親和性領域と低親和性領域とが形成された基材における液滴の様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0029】
本発明の実施形態に係る粒子作製方法は、粒子形成用の原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の複数の液滴を、溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とが形成された基材の高親和性領域の上に形成する液滴形成工程と、液滴を固化して粒子を形成する粒子形成工程と、粒子を基材の表面から剥離する剥離工程と、を含み、高親和性領域および低親和性領域の面積を電気的に制御するものである。粒子形成用の原料を溶媒に溶解または分散させて溶液または分散液を調製する溶液調製工程を含んでもよい。また、絶縁性の基材の表面に形成された誘電体膜中に複数の一対の電極とを形成する電極形成工程と、誘電体膜の表面に、溶媒に対する親和性を電極により電気的に制御するための親和性制御膜を形成する親和性制御膜形成工程と、を含む基材作製工程を含んでもよい。
【0030】
<溶液調製工程または分散液調製工程>
溶液調製工程(分散液調製工程)では、粒子形成用の原料を溶媒に溶解または分散させて、原料の溶液または分散液を調製する。
【0031】
粒子形成用の原料としては、目的の粒子を形成するための樹脂、着色剤、その他添加剤等が挙げられ、目的の粒子に応じて適宜選択すればよい。
【0032】
溶媒としては、粒子形成用の原料を溶解または分散させるものであればよく、特に制限はない。溶媒としては、例えば、水や、メタノール、エタノール等のアルコール類等の有機溶媒が挙げられる。
【0033】
溶解または分散は、公知の撹拌装置、分散装置等を用いて行えばよい。
【0034】
原料の溶液または分散液の固形分濃度は、例えば、5質量%以上50質量%以下、好ましくは10質量%以上20質量%以下とすればよい。5質量%未満では、生産効率が低い場合があり、50質量%を超えると、原料の分散性が悪く均一性に劣る場合がある。
【0035】
図1は、分散液の調製方法の一例を示す概略図である。溶媒18に樹脂20の粒子が分散された樹脂粒子分散液10と、溶媒18に着色剤22の粒子が分散された着色剤分散液12と、溶媒18に添加剤24の粒子が分散された添加剤分散液14とをそれぞれ調製する。それらを混合して、溶媒18に樹脂20と着色剤22と添加剤24とが分散された分散液16を調製する。なお、樹脂粒子分散液10、着色剤分散液12、添加剤分散液14のそれぞれに用いられる溶媒18は、同じものでも異なるものでもよい。
【0036】
<基材作製工程>
図2は、本実施形態に係る粒子作製方法における粒子作製用基材1の一例を示す概略上面図である。図3は、図2におけるA−A’断面図である。図3に示すように、粒子作製用基材1は、平面状等の絶縁性の基材30と、基材30の表面に形成された誘電体膜32と、誘電体膜32中に形成された一対の電極34a,34bと、誘電体膜32の表面に形成された、原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性を電極34a,34bにより電気的に制御するための親和性制御膜36とを有する。一対の電極34a,34bには互いに独立した電圧が印加可能である。電極34a,34bからはそれぞれ引き出し電極38a,38bが、基材30の誘電体膜32が形成された面とは反対側の面に向かって延びるように形成され、図示しない電圧印加手段に接続される。図2に示す例では、一対の電極は、円状の中心電極34aと、円状の中心電極34aの周囲を一定の隔たりd3をもって囲む環形状の周囲電極34bとを含む。
【0037】
図3に示すように、絶縁性の基材30の表面に誘電体膜32を形成し、フォトリソグラフィ法等を利用して、誘電体膜32中に一対の電極34a,34bと、電極34a,34bから基材30の誘電体膜32が形成された面とは反対側の面に向かって延びるように引き出し電極38a,38bを形成する(電極形成工程)。誘電体膜32の表面には、親和性制御膜36を形成する(親和性制御膜形成工程)。
【0038】
基材30としては、絶縁性のものであればよく、特に制限はないが、例えば、ガラス、樹脂等が挙げられる。
【0039】
基材30の形状としては、平面状(板状)、円筒等の筒状等が挙げられ、通常は、平面状である。
【0040】
誘電体膜32を構成する材料としては、シリコン酸化膜、ポリイミド樹脂膜等が挙げられる。
【0041】
誘電体膜32の厚みは、膜が安定であればよく、特に制限はないが、例えば、0.1μm以上10μm以下、好ましくは0.5μm以上5μm以下である。
【0042】
誘電体膜32は、スパッタ法、プラズマCVD法、塗布法、イオンプレーティング法等により形成すればよい。
【0043】
親和性制御膜36を構成する材料としては、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。親和性制御膜36は、原料の溶液または分散液の溶媒に対して低親和性である低親和性膜または原料の溶液または分散液の溶媒に対して高親和性である高親和性膜である。原料の溶液または分散液の溶媒が水である場合、低親和性膜(疎水性膜)としては、フッ素樹脂等が挙げられ、高親和性膜(親水性膜)としては、ポリイミド樹脂、特に酸素プラズマ処理を施したポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0044】
親和性制御膜36の厚みは、膜が安定であればよく、特に制限はないが、例えば、0.1μm以上10μm以下、好ましくは0.5μm以上5μm以下である。
【0045】
親和性制御膜36は、スパッタ法、プラズマCVD法、塗布法、イオンプレーティング法等により形成すればよい。
【0046】
電極34a,34b、引き出し電極38a,38bを構成する材料としては、アルミ、銅等が挙げられる。
【0047】
中心電極34aのパターン形状は、目的とする粒子の形状に応じて選択すればよく、特に制限はないが、例えば、円状、楕円状や、三角状、四角状等の角状、多角形状等である。粒子の形状は通常、球状であるので、中心電極34aのパターン形状は円状にすればよい。例えば、粒子の形状を楕円にしたい場合は中心電極34aの形状を楕円状にすればよく、さらに小径の粒子を得たい場合は中心電極34aの最大幅を小さくすればよい。
【0048】
周囲電極34bの形状は、中心電極34aの周囲を一定の隔たりをもって囲むものであればよく、特に制限はないが、中心電極34aの形状が円状の場合は、周囲電極34bの形状は環形状となる。
【0049】
中心電極34aの最大幅d1は、形成する粒子の大きさに応じて選択すればよく、特に制限はないが、例えば、0.1μm以上10μm以下、好ましくは0.5μm以上5μm以下である。周囲電極34bの幅d2は、形成する粒子の大きさに応じて選択すればよく、特に制限はないが、例えば、0.5μm以上10μm以下、好ましくは1μm以上3μm以下である。周囲電極34bの幅d2は一定であることが好ましい。中心電極34aと周囲電極34bとの間の幅d3は、一定であることが好ましく、例えば、0.5μm以上10μm以下、好ましくは1μm以上5μm以下である。
【0050】
図4(a)は、複数の一対の電極34a,34bが集積化され、形成された粒子作製用基材1の一例を示す概略上面図である。図4(a)において中心電極34aは円状であり、周囲電極34bは環状である。中心電極34aを円状、周囲電極34bを環状とすることにより最密充填で集積化されて形成される。たとえば図4(b)のような最密充填配置にすると、基材の利用効率が高い。d1+d2+d3=5μmのとき六角形の一辺をたとえば10μmにすると、6インチのウェハ上には5μmのパターンは約2億個となる。
【0051】
<液滴形成工程、粒子形成工程>
液滴形成工程では、原料の溶液または分散液の複数の液滴を、粒子作製用基材1の親和性制御膜36の表面に形成し、粒子形成工程では、液滴形成工程で形成した液滴を固化して粒子を形成する。液滴形成工程では、親和性制御膜36の表面において、原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が異なる高親和性領域と低親和性領域とを電気的に制御して形成し、原料の溶液または分散液を粒子作製用基材1の表面の高親和性領域に配分、秤量して液滴を形成する。
【0052】
図5は、本実施形態に係る粒子作製方法の一例を示す概略図である。図5(a)に示すように、例えば、電圧が印加されない状態では、親和性制御膜36は全体が原料の溶液または分散液の溶媒に対して親和性が低い低親和性領域42となっている。図5(b)に示すように、例えば、中心電極34aおよび周囲電極34bに電圧を印加すると、中心電極34aおよび周囲電極34bの位置に対応する親和性制御膜36が高親和性となり、高親和性領域40が形成される。
【0053】
これは、EWOD(Electro Wetting on Dielectric)と呼ばれる現象を利用したもので、水等の溶媒の濡れ性を電気的に制御する方法である。EWODとは、絶縁層に挟まれた二つの電極を製作し、その上に疎水性等の膜を形成する。その二つの電極に電圧をかけると電位の高い側で水等の接触角が低下するという現象である。
【0054】
図5(b)に示すように、中心電極34aおよび周囲電極34bの位置に対応する親和性制御膜36が高親和性となった状態で、粒子作製用基材1を分散液16に浸漬した後、粒子作製用基材1を分散液16から取り出し、例えば、粒子作製用基材1を僅かに傾けながら振動させると、基材30上の高親和性領域40に選択的に分散液16の液滴44が担持される。ここで、フォトリソグラフィ法等により高精度に形成された複数の電極34a,34bに対応する高親和性領域40上に原料が溶解または分散された分散液16が担持されるので、原料がほぼ均等に配分、秤量された液滴44が形成される。また、液滴44の粒径や形状は、高親和性領域40の大きさ、形状、分散液16の固形分濃度等を変えることにより制御される。
【0055】
液滴形成手段として浸漬法によるもの以外にも、噴霧法、スピンコート法、インクジェット法、滴下法によるもの等を用いればよい。
【0056】
液滴44の溶媒を自然乾燥等により乾燥させるときに、EWODの作用を用いて、液滴44の粒子作製用基材1の表面からの立ち上がり位置を制御する。すなわち、液滴44と親和性制御膜36とが接触している長さbを制御(小さく)することにより、液滴44の断面形状を真円に近くなるように制御する。例えば、図5(c)に示すように、周囲電極34bへの電圧の印加を停止あるいは徐々に電圧を低下させ、中心電極34aへの電圧の印加を継続すると、液滴44の断面形状が真円に近くなる。液滴44の溶媒を自然乾燥等により乾燥させると、原料粒子同士を引き付け合うように表面張力が原料粒子に働き、高親和性領域40上に原料が集積化されて固化され、粒子46が形成される。
【0057】
なお、粒子形成手段として加熱装置等を用いて、粒子作製用基材1を加熱して溶媒を乾燥させて固化してもよい。例えば、原料として樹脂を含む場合には、樹脂のガラス転移温度未満の温度で加熱して、溶媒を乾燥させて固化すればよい。また、粒子形成手段として減圧装置等を用いて、粒子作製用基材1を減圧処理して、固化してもよい。また、原料が分離しなければ必ずしも加熱や減圧をしなくてもよい。
【0058】
原料として樹脂を含む場合には、粒子作製用基材1を樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱すると、他の原料が樹脂により融合される。
【0059】
電極34a,34bをフォトリソグラフィ法により形成することにより、高親和性領域40は円状を含む任意の形状とされる。高親和性領域40の形状は、形成する電極34a,34bのパターン形状により、制御される。高親和性領域40の形状が円形状であれば、高親和性領域40は最密充填で形成される。
【0060】
なお、「高親和性領域」および「低親和性領域」とは原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が異なるものであり、原料の溶液または分散液の溶媒に対して相対的に親和性が異なることを意味し、親和性がより高い方を「高親和性領域」、親和性がより低い方を「低親和性領域」と呼ぶ。溶媒が水を含む場合は、水に対する親和性がより高い方を「親水性領域」、親和性がより低い方を「疎水性領域」と呼ぶこともある。ここで、溶媒に対する親和性は、原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角で表される。すなわち、高親和性領域40と低親和性領域42とは原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角が異なればよい。高親和性領域40と低親和性領域42とは原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角の差が30度以上異なることが好ましく、60度以上異なることがより好ましい。高親和性領域40と低親和性領域42との原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角の差が30度未満であると、後述する後工程の液滴形成工程において、液滴が基材の表面の高親和性領域に選択的に形成されにくくなる。
【0061】
原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が高い高親和性領域40は、例えば、原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角が30度以下であり、原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が低い低親和性領域42は、例えば、原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角が45度以上である。
【0062】
原料の溶液または分散液の溶媒に対する接触角は、接触角計(協和界面科学社製、FACE接触角計CA−D型)を用いて、測定する。
【0063】
<剥離工程>
剥離工程では、粒子を粒子作製用基材の表面から剥離する。EWODの作用を用いて、液滴44の粒子作製用基材1の表面からの立ち上がり位置を制御することにより、また、固化する際の原料の溶液または分散液の溶媒の残存率等に応じて液滴44と親和性制御膜36とが接触している長さbを制御(小さく)することにより、機械的手段等を使用しなくても、例えば、図5(d)に示すように、形成された粒子46が粒子作製用基材1の表面から容易に離型される。
【0064】
なお、離型工程において、剥離手段として、ゴム製等のブレードや、超音波発生装置、気体吹きつけ装置等を併用してもよい。粒子46を剥離した後の粒子作製用基材1は、必要に応じて洗浄処理等を施した後、再利用できる。
【0065】
図6のように基材上に形成された原料の溶液または分散液の溶媒に対する親和性が異なる一定の領域を膜により予め形成し、溶液または分散液の液滴を高親和性領域に均一に秤量、固化、離型する方法では、例えば、原料の溶液または分散液の溶媒が水系の場合には、疎水性領域中に設けられた親水性領域に形成された液滴を固化するため、図6(a)の液滴の幅bは固定で接触角θに応じて、液滴の高さaが変わる。例えばθ=90度の場合、形成される粒子の断面形状は、直径b=2aの半円形状となると考えられる。溶媒を加熱、減圧等により揮発させる場合には、bの長さは固定で、a<b/2、θ<90度となり、図6(b)のように半円よりも扁平な形となると考えられる。このように、親和性の異なる一定の領域を予め形成した基材による粒子の作製方法においては、形成される粒子の断面形状は円弧と直線からなる半円状もしくは半円より円弧部が少ない扁平な形状になる可能性があるが、本実施形態に係る粒子作製方法によれば、粒子の形状がより球状に近づくと考えられる。また、固化する際に上記形状となるため、形成された粒子を粒子作製用基材から離型する工程においては、粒子作製用基材にブレードを接触させる方法、超音波を印加する方法などの機械的手段を用いると、粒子の一部が粒子作製用基材に固着し、一定体積の粒子が形成されない可能性があるが、本実施形態に係る粒子作製方法によれば、粒子の離型性が向上すると考えられる。
【0066】
このようにして作製した粒子の体積平均粒径は、例えば、0.1μm以上10μm以下の範囲であり、0.5μm以上5μm以下の範囲である。また、個数平均粒径は、例えば、0.1μm以上10μm以下の範囲であり、0.5μm以上5μm以下の範囲である。
【0067】
前記体積平均粒径および個数平均粒径の測定は、コールターマルチサイザII型(ベックマン−コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャ径で測定することにより行われる。この時、測定は粒子を電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、撹拌により30秒分散させた後に行う。
【0068】
また、このようにして作製した粒子の体積平均粒度分布指標GSDvは、例えば、1.2以下であり、1.1以下である。
【0069】
なお、体積平均粒径D50vおよび体積平均粒度分布指標GSDvは、以下のようにして求める。前述のコールターマルチサイザII型(ベックマン−コールター社製)で測定される粒子の粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積D16v、数D16p、累積50%となる粒径を体積D50v、数D50p、累積84%となる粒径を体積D84v、数D84pと定義する。この際、D50vは体積平均粒径を表し、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2として求められる。なお、(D84p/D16p)1/2は数平均粒度分布指標(GSDp)を表す。
【0070】
粒子作製用基材から剥離した粒子をそのまま所望の目的に利用してもよいし、このように作製した粒子を溶媒に分散させた粒子分散液を調製し(粒子分散液調製工程)、その粒子分散液に、上記原料と同じまたは異なる粒子形成用の原料を混合して粒子に上記原料と同じまたは異なる粒子形成用の原料を付着させて粒子を成長させてもよい(成長工程)。また、粒子を、上記原料と同じまたは異なる粒子形成用の溶液または分散液に混合して、粒子の周囲に原料を付着させて粒子を成長させてもよい。このように成長させた粒子を加熱および減圧のうち少なくとも1つによりさらに融合してもよい(融合工程)。
【0071】
また、粒子作製用基材から剥離した粒子あるいは成長させた粒子を溶媒に分散させた粒子分散液を調製し(粒子分散液調製工程)、その粒子分散液に樹脂粒子を混合して粒子の表面に樹脂粒子を付着させ(付着工程)、その付着させた付着粒子を加熱して融合してもよい(加熱融合工程)。また、粒子作製用基材から剥離した粒子あるいは成長させた粒子を樹脂分散液に混合して、粒子の周囲に樹脂を付着させた後、例えば樹脂のガラス転移温度以上の温度に加熱して、粒子とその周囲の樹脂とを融合してコアシェル構造としてもよい。
【0072】
本発明の実施形態に係る粒子作製装置は、絶縁性の基材と、基材の表面に形成された誘電体膜と、誘電体膜中に形成された複数の一対の電極と、誘電体膜の表面に形成された、粒子形成用の原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の溶媒に対する親和性を電極により電気的に制御するための親和性制御膜と、を有する粒子作製用基材と、それぞれの一対の電極に互いに独立した電圧を印加する電圧印加手段と、を有する。
【0073】
電圧印加手段としては、公知の電圧印加装置を用いればよい。
【0074】
本実施形態に係る粒子作製方法、粒子作製装置および粒子作製用基材は、例えば、樹脂、着色剤、離型剤等を含む静電荷像現像用トナーの製造に用いられる。また、インク、液晶ディスプレイ用スペーサ粒子、化粧品等の製造にも用いられる。
【0075】
本実施形態に係る粒子作製方法において、例えば、直径D1=5μm、ピッチD2=10μmの最密充填で高親和性領域を配置した12インチのウェハを用いて、固形分50質量%の樹脂粒子分散液を高親和性領域に坦持させ、その後乾燥固化すると、直径3.1μmの球形の粒子が1基板当たり約63mg得られ、1バッチ25枚、1時間タクトで生産すると、1日当たり38gの粒子が得られると考えられる。また、ガラス基板(2.4m×2.8m)を用いると、同様に1基板当たり1.5gの粒子が得られ、1バッチ25枚、1時間タクトで生産すると、1日当たり0.9kgの粒子が得られると考えられる。
【0076】
<静電荷像現像用トナー用の原料の溶液または分散液の調製>
静電荷像現像用トナーの製造の場合の原料の溶液または分散液の調製について、以下説明する。樹脂粒子を生成するには、通常、重合性単量体と界面活性剤とを水に加え、撹拌してエマルションとする。重合性単量体エマルションが生成したら、該エマルションの好ましくは25質量%以下(すなわち、少量のエマルション)と、遊離基開始剤とを、水相に加えて混合し、所望の反応温度で種重合を開始する。種粒子の生成後、この種粒子含有組成物にさらに残りのエマルションを追加し、所定の温度で、所定の時間、重合を続けて重合を完了し、樹脂粒子(樹脂粒子分散液)を生成させる。
【0077】
前記重合性単量体の種類としては、遊離基開始剤と反応しうるものであれば特に制限はない。重合性単量体の具体例としては、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類等が挙げられ、これらの重合性単量体は重合されて、単独重合体あるいは共重合体とされる。
【0078】
また、ポリエステル類、ポリウレタン類のような樹脂を界面活性剤とともに水系媒体中でせん断し、分散させてもよい。また、樹脂粒子として、アンモニア成分を含むものも用いられる。
【0079】
樹脂粒子の製造に使用される界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤または非イオン系界面活性剤を使用すればよく、一般的にはアニオン系界面活性剤が、分散力が強く、樹脂粒子の分散に優れているため、好ましく用いられる。非イオン系界面活性剤は、前記アニオン系界面活性剤またはカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0080】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油ナトリウム等の脂肪酸セッケン類;オクチルサルフェート、ラウリルサルフェート、ラウリルエーテルサルフェート、ノニルフェニルエーテルサルフェート等の硫酸エステル類;ラウリルスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、トリイソプロピルナフタレンスルホネート、ジブチルナフタレンスルホネートなどのアルキルアリールスルホン酸ナトリウム;ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物、モノオクチルスルホサクシネート、ジオクチルスルホサクシネート、ラウリン酸アミドスルホネート、オレイン酸アミドスルホネート等のスルホン酸塩類;ラウリルホスフェート、イソプロピルホスフェート、ノニルフェニルエーテルホスフェート等のリン酸エステル類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸塩類;スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム等のスルホコハク酸塩類;などが挙げられる。
【0081】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、オレイルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、ステアリルアミノプロピルアミン酢酸塩等のアミン塩類;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライド、オレイルビスポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド、ラウロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミノプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムパークロレート、アルキルベンゼントリメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;などが挙げられる。
【0082】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート等のアルキルエステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル、ポリオキシエチレン大豆アミノエーテル、ポリオキシエチレン牛脂アミノエーテル等のアルキルアミン類;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のアルキルアミド類;ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンナタネ油エーテル等の植物油エーテル類;ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテル類;などが挙げられる。
【0083】
遊離基開始剤としては、特に制限はない。具体的には、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド等が挙げられる。
【0084】
本実施形態において、樹脂粒子の大きさは、レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、0.05μm以上1μm以下程度である。
【0085】
(着色剤分散液、離型剤分散液の製造工程)
着色剤分散液は、着色剤、界面活性剤等を、水相中で混合し、分散処理をすることによって得られる。同様にして、離型剤分散液は、離型剤、界面活性剤等を、水相中で混合し、分散処理をすることによって得られる。
【0086】
着色剤としては、例えばカーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカライトグリーンオキサレート、などの種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料などが挙げられる。これらの着色剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
また、着色剤分散液中の着色剤の大きさは、例えば、上記レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、0.05μm以上0.5μm以下程度である。
【0088】
また離型剤として働くワックスの種類としては特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス類;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャトロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス類;ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等の高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルワックス類;などが挙げられる。
【0089】
また、離型剤分散液中の離型剤の大きさは、例えば、上記レーザ回折式粒度分布測定装置(日機装社製マイクロトラック)で測定した体積平均粒径で、0.05μm以上0.5μm以下程度である。
【0090】
界面活性剤としては、上記樹脂粒子の製造に使用される界面活性剤と同様のものが挙げられる。
【0091】
上記調製法により得られた樹脂粒子と、着色剤分散液と、離型剤分散液と、必要に応じて凝集剤と、必要に応じて帯電制御剤と、および必要に応じて他の添加剤とを混合し、溶液または分散液を調製する。得られた溶液または分散液から上記粒子作製方法により、凝集体を生成し、粒子を得る。
【0092】
樹脂粒子は、通常トナーの結着樹脂として用いられ、トナーの固形分に対して75質量%以上98質量%以下程度トナー内に存在する。
【0093】
着色剤は、通常トナー中に、着色に効果的な量、例えばトナーの固形分に対して1質量%以上15質量%以下程度、好ましくは3質量%以上10質量%以下程度存在する。
【0094】
離型剤として働くワックス類の好ましい量としては、トナーの固形分に対して、5質量%以上20質量%以下程度である。
【0095】
必要に応じて使用される凝集剤は、融合に効果的な量、例えばトナーの固形分に対して0.01質量%以上10質量%以下程度を用いればよい。使用する凝集剤としては、一価以上の電荷を有する化合物が好ましく、その化合物の具体例としては、前述のアニオン系界面活性剤類;塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸等の酸類;塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム等の塩類;等が挙げられるが、これらに限るものではない。好ましい凝集剤としては、硝酸等の窒素成分を有するものが挙げられる。
【0096】
また、凝集体の生成等において、金属イオンと配位結合を形成する有機化合物(キレート化剤)が用いられることがある。
【0097】
帯電制御剤は、帯電させるのに効果的な量、例えばトナーの固形分に対して0.1質量%以上5質量%以下で使用してもよい。適当な帯電制御剤としては、アルキルピリジニウムハロゲン化物類、重硫酸塩類、シリカ等の帯電制御剤類、アルミニウム錯体のような陰帯電制御剤等が挙げられるが、これらに限るものではない。
【0098】
その他必要に応じて添加剤として、無機粒子等を湿式添加してもよい。湿式添加する無機粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなど、通常トナー表面の外添剤として使用される全てのものを、イオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基等で水に分散して、シリカ等の無機粒子分散液として湿式添加してもよい。
【実施例】
【0099】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0100】
<実施例1>
転送乳化法で、体積平均粒径200μmのポリエステル樹脂粒子を含む樹脂粒子分散液を作製し、原料溶液(分散液)とした。なお、この樹脂のガラス転移温度は50℃であった。なお、ここでは分散液の固形分濃度を40質量%とした。
【0101】
平面状の絶縁性の基材30としてガラス基板(150mm×150mm)を準備し、基材30上に誘電体膜32としてシリコン酸化膜を形成し、誘電体膜32の上に疎水性の親和性制御膜36として、フッ素系樹脂(旭硝子製、サイトップ)の膜を形成した。接触角計により測定したところ、親和性制御膜36の表面の水に対する接触角は約110度であった。なお、誘電体膜32、親和性制御膜36の膜厚はそれぞれ1μm、1μmとした。フォトリソグラフィ法を利用して、スパッタ法により形成したアルミによる円状の中心電極34a(幅d1=2μm)、中心電極34aの周囲を一定の隔たりd3(1μm)をもって囲む環形状(ドーナツ状)の周囲電極34b(幅d2=1μm)、引き出し電極38を形成した。
【0102】
次に、分散液を粒子作製用基材に接触させて、原料粒子を基材の親水領域に集積化して粒子を作製した。上記粒子作製用基材において、中心電極34aの電圧(Vc)、周囲電極34bの電圧(Vd)をともに+30V印加した状態で、分散液を滴下した。すべての電極上の撥水状態が低下し、電極上に選択的に分散液の液滴が形成された。ここで、フォトリソグラフィ法により高精度に形成された電極上に原料をほぼ均一に分散した分散液が載るので、原料がほぼ均等に配分されたと考えられる。
【0103】
液滴中の水分を樹脂のガラス転移温度(約50℃まで)以下で蒸発させながら、周囲電極34bの電圧(Vd)を+30Vから徐々に0Vへ低下させた。液滴と粒子作製用基材との接触面は、電圧が印加された中心電極34a上のみとなる。この状態で、樹脂のガラス転移温度より十分高い温度(90℃)で1時間の加熱を行った後、周囲電極34bの電圧(Vd)を0Vとすると、粒子作製用基材の表面は疎水膜の撥水状態となるため、作製された粒子(トナー)は粒子作製用基材の表面から離型された。
【0104】
このようにして作製したトナーの粒度分布をコールターマルチサイザで測定したところ、体積平均粒径3μm、数平均粒度分布指標(GSDp)は1.15となり、小粒径かつ狭い粒度分布を有するトナーが得られた。
【0105】
<比較例1>
乳化重合凝集法によりトナーを作製した。このようにして作製したトナーの粒度分布をコールターマルチサイザで測定したところ、体積平均粒径6μm、数平均粒度分布指標(GSDp)は1.25であった。
【符号の説明】
【0106】
1 粒子作製用基材、10 樹脂粒子分散液、12 着色剤分散液、14 添加剤分散液、16 分散液、18 溶媒、20 樹脂、22 着色剤、24 添加剤、30 基材、32 誘電体膜、34a 中心電極(電極)、34b 周囲電極(電極)、36 親和性制御膜、38a,38b 引き出し電極、40 高親和性領域、42 低親和性領域、44 液滴、46 粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子形成用の原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の複数の液滴を、前記溶媒に対する親和性が異なる複数の高親和性領域と低親和性領域とが形成された基材の前記高親和性領域の上に形成する液滴形成工程と、
前記液滴を固化して粒子を形成する粒子形成工程と、
前記粒子を前記基材の表面から剥離する剥離工程と、
を含み、
前記高親和性領域および低親和性領域の面積を電気的に制御することを特徴とする粒子作製方法。
【請求項2】
前記粒子形成工程および前記剥離工程の少なくともいずれかにおいて、前記液滴あるいは前記粒子と前記基材の表面との接触面における前記高親和性領域の面積を電気的に制御して減少させることを特徴とする、請求項1に記載の粒子作製方法。
【請求項3】
前記液滴あるいは前記粒子と前記基材の表面との接触面における前記高親和性領域の面積をその中心に向かって減少させることを特徴とする、請求項2に記載の粒子作製方法。
【請求項4】
絶縁性の基材の表面に形成された誘電体膜中に複数の一対の電極とを形成する電極形成工程と、
前記誘電体膜の表面に、前記溶媒に対する親和性を前記電極により電気的に制御するための親和性制御膜を形成する親和性制御膜形成工程と、
を含む基材作製工程を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒子作製方法。
【請求項5】
前記一対の電極が、円形状の円状電極と、前記円状電極の周囲を囲む環形状の環状電極とを含むことを特徴とする、請求項4に記載の粒子作製方法。
【請求項6】
前記粒子が静電荷像現像用トナーであることを特徴する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粒子作製方法。
【請求項7】
絶縁性の基材と、前記基材の表面に形成された誘電体膜と、前記誘電体膜中に形成された複数の一対の電極と、前記誘電体膜の表面に形成された、粒子形成用の原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の前記溶媒に対する親和性を前記電極により電気的に制御するための親和性制御膜と、を有する粒子作製用基材と、
前記それぞれの一対の電極に互いに独立した電圧を印加する電圧印加手段と、
を有することを特徴とする粒子作製装置。
【請求項8】
前記一対の電極が、円形状の円状電極と、前記円状電極の周囲を囲む環形状の環状電極とを含むことを特徴とする、請求項7に記載の粒子作製装置。
【請求項9】
絶縁性の基材と、
前記基材の表面に形成された誘電体膜と、
前記誘電体膜中に形成された一対の電極と、
前記誘電体膜の表面に形成された、粒子形成用の原料を溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液の前記溶媒に対する親和性を前記電極により電気的に制御するための親和性制御膜と、
を有し、
前記一対の電極には互いに独立した電圧が印加可能であることを特徴とする粒子作製用基材。
【請求項10】
前記一対の電極が、円形状の円状電極と、前記円状電極の周囲を囲む環形状の環状電極とを含むことを特徴とする、請求項9に記載の粒子作製用基材。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−190361(P2011−190361A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58076(P2010−58076)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】