説明

粒子材料の計量及び気化

粒子材料を計量し、気化するための装置190が、粒子材料を計量するための計量デバイスであって、粒子材料を受け取るための貯蔵室230と、内部容積250を有し、第1の開口部及び第2の開口部を有するハウジング240と、内部容積内に配置され、滑らかな表面と外周溝とを有する回転可能シャフト270と、貯蔵室内に配置され、粒子材料を流動化して該材料を貯蔵室から溝内に移送するために回転可能シャフトと協働する送達する構造とを備え、シャフト及び内部容積は、粒子材料が溝によって移送されるように協働し、スクレーパーが、その中に保持される粒子材料を取り除き、擦り取られた粒子材料を流動化し、計量された量の粒子材料を第2の開口部を通して送達するために溝と協働する、計量デバイスと、計量された粒子材料を受け取り、フラッシュ蒸発させるフラッシュ蒸発器210とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化装置に供給される小さな粒径の粉末材料を、広範な供給量にわたって計量することに関する。
【背景技術】
【0002】
少量、たとえば、1マイクログラム/秒〜9マイクログラム/秒の粉末材料を正確、かつ精密に連続して計量できることが必要とされている。エレクトロニクス産業では、直に蒸着するために、又は化学気相成長(CVD)の前駆物質を得るために、気化ゾーンへの少量の粒子材料を計量することが必要とされている。さらには、3桁大きな材料量、たとえば、1000マイクログラム/秒を正確、かつ精密に計量できることも必要とされている。多くのシステムにおいて、同じ装置で1マイクログラム〜1000マイクログラムの範囲にわたって粉末材料を計量できれば好都合であろう。たとえば、有機発光ダイオードデバイス(OLED)は発光層を有し、その層は多くの場合にホスト及びドーパントを含み、ホスト及びドーパントは2桁〜3桁だけ大きさが異なる量で堆積される。ホスト、共同ホスト及びドーパント材料に対して共通の輸送設計を用いて、OLED製造時に、気化領域への粉末有機材料を個別に、かつ連続的に計量することができれば、極めて好都合であろう。
【0003】
少量の粉末材料を精密に計量することが難しいことはよく知られている。粉末材料を輸送するのを容易にするために担体及び添加剤として付加的な材料を用いる数多くのシステム例がある。用いられる担体は、不活性ガス、液体及び固体を含む。いかなる添加剤を使用することも材料輸送をさらに複雑にする。これは、担体又は添加剤は、対象となる実際の材料とは別に追加され、除去され、かつ処理される必要があるためである。担体を使用することは、汚染される危険性も高める。汚染は、材料を計量することが特に必要とされている製薬及びエレクトロニクス製造業界において特に有害である。
【0004】
特許文献1において、Fleischnerは、不活性担体と混合されている粉末材料を輸送するためのオーガデバイス(auger device)を記述しており、不活性担体は砂であることが好ましい。活性材料と砂との比は1:9であると報告される。実質的に不活性の担体である混合物を輸送することは、システムのコストを高め、システムを複雑にし、さらには材料供給物が汚染される危険性を高める。
【0005】
特許文献2及び特許文献3は、従来のオーガ設計を用いて粉末を計量しており、滑らかな胴部内にパターン化されたスクリューが存在する。本開示の計量デバイスは、大型の蒸着システムの1つの部品として用いることもできる。特に対象となる蒸着システムは、有機発光ダイオード(OLED)デバイスを製造するために設計されるシステムである。OLEDデバイスは基板と、アノードと、有機化合物から形成される正孔輸送層と、適切なドーパントを用いる有機発光層と、有機電子輸送層と、カソードとを備える。OLEDデバイスは、駆動電圧が低く、ルミナンスが高く、視野が広く、かつフルカラーフラット放出ディスプレイとして用いることができるために魅力的である。Tang他が、特許文献4及び特許文献5においてこの多層OLEDデバイスを記述した。
【0006】
真空環境における物理気相成長が、小分子OLEDデバイスにおいて用いられるような薄い有機材料薄膜を堆積する主な方法である。そのような方法は既知であり、たとえば、Barrによる特許文献6及びTanabe他による特許文献7を参照されたい。OLEDデバイスの製造において用いられる有機材料は、多くの場合に、気化速度に応じた所望の気化温度に、又はその近くに、長期間にわたって保持されるときに分解を受ける。敏感な有機材料をさらに高い温度に曝露することによって、分子の構造が変化し、それに関連して、材料特性が変化する可能性がある。
【0007】
これらの材料の熱敏感性を克服するために、蒸発源に少量の有機材料だけを装填しており、それらの材料ができる限り加熱されないようにする。このようにして、その材料は、著しい分解を受ける前に蒸発される。この手法に伴う制約は、ヒータ温度の制限に起因して利用可能な気化速度が非常に低いこと、及び用いられる材料が少量であることに起因して蒸発源の動作時間が非常に短いことである。したがって、堆積チャンバに通気し、蒸発源を分解して洗浄し、蒸発源を再び満たして、堆積チャンバ内を再び真空にし、動作を再開する数時間前から、導入されたばかりの有機材料のガス抜きをすることが必要とされている。蒸発源を再充填することに関連して、堆積速度が低くなること、及びその工程を頻繁に実施し、時間がかかることが、OLED製造設備のスループットを大きく制限している。
【0008】
有機材料の装填量全体を実質的に同じ温度まで加熱することからの派生的な結果は、ホスト及びドーパントの気化時の振舞い及び蒸気圧が極めて近い場合を除いては、ドーパントのような付加的な有機材料と、ホスト材料との混合が実行不可能であることである。さらに、別個の蒸発源を標準的に使用することは、堆積された薄膜内に勾配効果を生み出し、前進している基板に最も近い蒸発源内の材料が、基板に直に隣接する初期薄膜において過剰に示され、一方、最後の蒸発源内の材料が最終薄膜表面において過剰に示される。この勾配共堆積は、各蒸発源から単一の材料が基板上に直に蒸着される従来技術の複数の蒸発源では避けることはできない。堆積された薄膜内の勾配は、共同ホストが用いられるときのように、終端蒸発源のいずれかの寄与が中央蒸発源の数パーセントより高いときに特に明らかである。
【0009】
同じ譲受人に譲渡される特許文献8及び特許文献9は、フラッシュ蒸発ゾーンへの材料を計量することによって別個の点蒸発源の多くの短所を克服する。特許文献4は、単一の粉末輸送機構においてホスト及びドーパントの混合物を計量すること、及びマニホールドを用いて、蒸気を基板に分配することを教示する。特許文献5は、マニホールド内で有機物蒸気を混合し、材料の混合物を基板表面に送達できることを開示する。しかしながら、これらの先行する教示はいずれも、ホスト材料及びドーパント材料のための独立した計量制御を有する必要があることを考慮していない。それゆえ、その輸送機構は、設計によって、独立したドーパント供給のために要求される、低速度、1マイクログラム/秒〜10マイクログラム/秒において計量することができない。
【0010】
特許文献10、特許文献11、特許文献12及び特許文献13は、入口ポートから吐出ポートまで容積が増加していく、容積を画定する内部空洞を有するハウジング内で回転する、平行に間隔を置いて配置される円板を用いて、入口ポートから吐出ポートまで粉末を移動させるための粉末供給ポンプを開示する。これらの粉末供給ポンプは、はるかに大きな粒径の粉末と共に用いることが意図されており、ミリグラム又はマイクログラム単位で粉末を計量するようになっていない。
【0011】
これらの利点にも関わらず、気化装置内に供給されるミリグラムないしマイクログラム単位の粉末材料量の計量を精密に制御することが引き続き必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第3,754,529号
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0062918号
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0177576号
【特許文献4】米国特許第4,769,292号
【特許文献5】米国特許第4,885,211号
【特許文献6】米国特許第2,447,789号
【特許文献7】欧州特許第0982411号
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0062918号
【特許文献9】米国特許出願公開第2006/0062919号
【特許文献10】米国特許出願公開第2007/0084700号
【特許文献11】米国特許出願公開第2006/0157322号
【特許文献12】米国特許第6,832,887号
【特許文献13】米国特許第7,044,288号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
気化デバイスに供給されるミリグラムないしマイクログラム単位の粉末量の計量及び送達を精密に制御することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、粒子材料を計量し、気化するための装置であって、
(a)粒子材料を計量するための計量装置であって、
(i)粒子材料を受け取るための貯蔵室と、
(ii)内部容積を有し、前記貯蔵室から前記粒子材料を受け取るための第1の開口部、及び前記粒子材料を吐出するための第2の開口部を有するハウジングと、
(iii)前記内部容積内に配置される回転可能シャフトであって、該シャフトは滑らかな表面と、前記貯蔵室から前記粒子材料を受け取るための前記第1の開口部、及び前記粒子材料を吐出するための前記第2の開口部と位置合わせされる外周溝とを有する、回転可能シャフトと、
(iv)前記貯蔵室内に配置される送達する手段であって、前記粒子材料を流動化して該粒子材料を前記貯蔵室から前記外周溝内に移送するために前記回転シャフトと協働する、送達する手段と、
(v)なお、前記回転可能シャフト及び前記内部容積は、前記粒子材料が実質的に前記外周溝によって移送され、前記回転可能シャフトの残りの部分に沿って移送されないように協働し、
(vi)前記第2の開口部に関連して配置される擦り取る手段であって、その中に保持される前記粒子材料を取り除き、該粒子材料を流動化し、前記シャフトが回転するのに応じて、計量された量の粒子材料を、前記第2の開口部を通して、単一の粒子の粒、又は粒子の粒の小さな凝集体の形で送達するように前記溝と協働する、擦り取る手段と、
を備える、計量装置と、
(b)前記計量された粒子材料を受け取り、気化させるフラッシュ蒸発器と、
を備える、装置によって達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の利点は、真空環境においてマイクログラム単位の粉末量を連続的に分注し、制御された容量計量供給を提供できることである。本発明のさらなる利点は、30ミクロン未満の平均粒径を有する材料、及びオーガのような他の分注デバイスを用いて分注することができない流動性の低い材料を含む、広範な粒径を有する粒子材料を、単一の粒子、又は小さな粒子群として分注できることである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来技術の粉末供給装置の末端部の断面図である。
【図2】異なる粉末供給装置の一部の立体断面図である。
【図3】本発明による、気化装置の一実施形態の立体断面図である。
【図4】異なる断面を通して見た、図3の気化装置の立体断面図である。
【図5】図4の気化装置をさらに詳細に示す断面図である。
【図6】その中にある回転可能フラッシュ蒸発器を示す、図3の気化装置の断面図である。
【図7】回転可能フラッシュ蒸発器を駆動するための磁気結合を示す、図6の回転可能フラッシュ蒸発器の立体断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
米国特許出願公開第2006/0062918号及び同第2006/0177576号は、従来のオーガ設計を用いて、気化装置への粒子材料を計量しており、その装置には、滑らかな胴部内にパターン化されたスクリューが存在する。図1は、滑らかなオーガ胴部7内にあるパターン化されたオーガスクリュー5を示す典型的な従来技術のオーガ構造の断面図である。オーガ構造8のオーガスクリュー5をモーター(図示せず)によって回転させる。スクリュー螺旋部のねじ山間の距離、及びねじ山の高さは、粒子材料が螺旋部の中で固まり、螺旋部と共に回転するのではなく、水平に配向されるオーガ胴部7の底部に残存するほど十分に大きくなるように選択される。オーガスクリュー5とオーガ胴部7との間の相対的な運動によって、粒子材料は直線的に移送される。図示されるような水平の配向では、粒子材料は、転がりながら分散される形で、主にオーガスクリュー5の底部に沿って進行する。オーガスクリュー5の末端部はねじ山がない部分9を有するように構成することができ、その部分は短い長さにわたって一定の円形断面を有し、固められた粒子材料を閉じ込めて細い環状又は管状の形状を形成する。このタイプのオーガ構造が抱える1つの問題は、吐出量が変化することであり、吐出量はオーガスクリュー5の角度方向と共に周期的に変化することが観察されている。回転する度に吐出される材料の量は完全に再現可能であるが、一度の回転の中ではかなり変動する可能性がり、結果として、計量される材料の気化速度が変化する。水平の配向では、オーガ胴部の上半分よりも下半分に多くの粒子材料が存在するので、周期的な吐出をさらに顕著にする可能性がある。粒子材料がオーガ胴部の内部にわたって均等に分散されるように垂直な配向においてオーガを使用することによって、周期的な吐出を弱めることはできるが、周期的変動はそのままであり、オーガ及びアジテーターのための機械的な駆動構成はさらに複雑である。このタイプの粒子材料供給装置が抱える第2の問題は、その装置は一般的に、容器から滑らかに注ぐことができるほど十分に易流動性である材料の場合にしか用いることができないことである。これは一般的に、厳しく制御された粒径範囲を有するように、粒子材料を篩いにかける必要がある。たとえば、重量の大部分が50〜100ミクロン径の粒子から構成される材料は、一般的に、容器から滑らかに注がれるであろう。この例では、粒径の範囲は、制御される最も小さな粒径に等しい。同様に、重量の大部分が100〜200ミクロン径の粒子から構成される材料は、一般的に、容器から滑らかに注がれるであろう。滑らかに注がれるのではなく、代わりに凝集して落下することになる材料は、少量の材料のみを供給した後に、オーガスクリューのねじ山において詰まる傾向があり、急速に固まることになるので、固体塊状物を形成し、それによりオーガが回転するのを妨げる可能性がある。
【0018】
粒子材料の流れは、粉末粒子の形状、粒径、粒径及び形状の均一性、凝集力、アーチ強度、表面積及び含水率を間接的に測定するいくつかの方法によって特徴付けられてきた。高い真空条件下での粒子材料の流れは、粒子間に空気分子が存在しないことに起因して、通常、大気圧時よりも悪い。材料粒子間の複雑な相互作用、及び真空条件下での粒子の易流動性の低下が、ミリグラム又はマイクログラム単位の分注精度を可能にする連続的な粒子材料供給機構の開発を制限してきた。粒子材料の流れは、任意の単一の試験方法によって完全には特徴付けることができない複雑な現象であるが、5つの一般的に用いられる方法が以下に記述される。
【0019】
振動スパチュラ:この方法は振動スパチュラ又はトラフを使用し、粒子材料をマスバランス上に滝状に落とす(cascade)。蓄積される材料の量が時間の関数として記録される。時間に対して蓄積される量が多いほど、流れが良好であることを表す。
【0020】
安息角:一定量の粒子材料が、一定の高さから漏斗を通して水平なベンチトップ上に注がれる。粒子材料は円錐体として蓄積し、水平面に対する円錐体の側面の角度が安息角であり、安息角が小さいほど、流れが良好であることを表す。この方法は、材料の形状、粒径、多孔性、凝集力、流動性、表面積及びバルク特性の間接的な測定を提供する。
【0021】
パーセント圧縮率:一定量の粒子材料が、風袋を差し引かれたメスシリンダーに徐々に注ぎ込まれ、材料の初期の容積及び重量が記録される。シリンダーがタップ密度テスター上に置かれ、力を加減して所与の回数だけ叩いた後に最終的な容積が記録される。パーセント圧縮率値が小さいほど、流れが良好であることを表す。この方法は、試験材料の粒径及び形状の均一性、変形性、表面積、凝集力、並びに含水率の間接的な測定を提供する。
【0022】
臨界オリフィス径:円柱形貯蔵室の底面吐出口が適切なオリフィス径リングを嵌め込まれる。漏斗を通して材料を注ぎ込むことによって、円柱形貯蔵室は、所定の容積のサンプル粒子材料で満たされる。材料が30秒間、静止したままにされ、その後、シャッターリリースレバーが徐々に開位置に回される。連続した3回の試験において材料サンプルを通してオープンキャビティが視認可能である場合には、試験に成功していると見なされる。材料が自由落下する最小の開口部の直径として流動率が与えられる。この方法は、材料凝集力及びアーチ強度の直接の指標であり、その値が小さいほど、流れが良好であることを表す。
【0023】
なだれ法:一定の容積の材料が半透明の回転ドラム内に装填され、ゆっくりと回転される。光電池アレイ検出器が、なだれの全数を測定する。なだれ間の平均時間が計算される。なだれ間の平均時間が短いほど、流れが良好であることを表す。
【0024】
Long他による上記で引用された、同じ譲受人に譲渡される米国特許出願第11/970,548号は、図2において立体断面図で示される粒子材料供給装置を開示しており、その装置は、以前に直面した粒子材料供給制限のうちのいくつかを克服する。この装置は、内部容積150内にあり、外周溝175を有する回転可能シャフト170を備えており、外周溝は、第1の開口部155を通して、アジテーターを備える貯蔵室から粒子材料を受け取る。回転可能シャフト170が回転するのに応じて、固定スクレーパー185が外周溝175と協働して、溝から粒子材料を取り除き、計量された量の粒子材料を、第2の開口部160を通して、加熱されたフラッシュ蒸発器120に送達する。
【0025】
回転可能シャフト170はモーター(図示せず)によって回転する。この設計の装置は、高真空下で従来技術のオーガ構造によって要求される同じ狭い粒径範囲を有する粒子材料を供給するのに十分に適応している。易流動性粒子材料が、第2の開口部160を通して、個々の粒子又は小さな粒子群として供給されることになる。粒径が小さいか、又は粒径分布が広い粒子材料ほど、凝結性及びなだれ流を示すことができる。そのような粒子材料はアジテーターによっては十分に流動化されないので、第1の開口155から外周溝175内に確実には入らないであろう。溝に入らない任意の粒子材料は、固定スクレーパー185に対して押し付けられるときに固められる可能性があり、ランダムな長さからなる短い棒状物として第2の開口部160から出る可能性がある。ランダムな体積の分注された材料棒は、気化装置から出る蒸気流にランダムな変動を引き起こす。この蒸気流の変動は、堆積される薄膜厚の変動につながるおそれがあるので、望ましくない。
【0026】
固定スクレーパー185は加熱されたフラッシュ蒸発器120に極めて近接しており、或る量の有機物粉末を融解するだけの十分な温度を達成することができる。融解した粒子材料は、マイクログラム又はミリグラム粒子の連続的な流れとしてフラッシュ蒸発器120まで落下するのではなく、不揃いの体積として蓄積し、その後、落下又は流動する傾向がある。したがって、一貫した測定量の粒子材料を送達する際に、図2の装置は従来技術よりも改善されているにもかかわらず、その装置では十分に処理されない材料がある。気化装置への粒子材料のミリグラム又はマイクログラム量の計量を正確に制御することが引き続き必要とされている。
【0027】
ここで図3を参照すると、本発明による粒子材料の気化のための装置の一実施形態の立体断面図が示される。気化装置190は粒子材料を計量及び気化するための装置である。気化装置190は粒子材料を計量する計量装置を含み、その計量装置は、粒子材料を収容するための貯留室と、内部容積並びに第1の開口部及び第2の開口部を有するハウジングと、内部容積内に配置され、滑らかな表面、内部容積の形状に対応する形状、及び外周溝を有する回転可能シャフトと、その端部において、回転シャフト内の溝と実質的に同じ断面を有する冷却されたスクレーパーとを備える。その計量装置はさらに、貯蔵室内に配置されるアジテーターと、フラッシュ蒸発器に送達される粒子材料を流動化するための機構とを備える。気化装置190は、計量された粒子材料を受け取り、気化するフラッシュ蒸発器をさらに備える。これらの構成要素は、後にさらに詳細に説明される。
【0028】
貯留室230は粒子材料を収容するためのものである。粒子材料は、単一の成分を含むことができるか、又は2つ以上の異なる材料成分を含み、それぞれが異なる気化温度を有することができる。図には示されないが、貯留室230は、装填することができる粒子材料の量を増やすために、大きな貯蔵室と、その上方にある供給装置とを備えることができる。そのようなコンテナ及び供給装置は、同じ譲受人に譲渡される米国特許第7,288,285号においてLong他によって記述されている。貯留室230はハウジング240内にあり、貯留室230内の粒子材料を流動化するアジテーター290を含む。ハウジング240は、アルミニウムのような熱伝導性の材料から構成されることが好ましく、それは能動的に冷却することができ、貯留室230内の粒子材料を粒子材料の実効的な気化温度よりも十分に低い温度に保持するための役割を果たす。
【0029】
ハウジング240は、内部容積250も含む。回転可能シャフト270は、滑らかな表面と、内部容積250の形状に対応する形状、例えばこの実施形態では円柱形とを有し、内部容積250内に配置される。回転可能シャフト270は外周溝も有し、それは後の図面において明らかになる。回転可能シャフト270は、ニッケル又はモリブデン等の熱伝導性材料から構成されることが好ましく、その材料は能動的に冷却することができ、かつ外周溝内の粒子材料を粒子材料の実効的な気化温度よりも十分に低い温度に保持するための役割を果たす。窒化チタン又はダイヤモンドライクカーボンのようなハードコーティングが内部容積150及び回転可能シャフト270に被着されることが好都合である。モーター(図示せず)が、回転可能シャフト270を所定の速度で回転させる。モーターは、アジテーター290を回転させるために用いることもできる。ハウジング240は、第1の開口部及び第2の開口部も含み、その開口部の特性及び機能は後に明らかになる。気化装置190は、気化チャンバ200内に回転可能なフラッシュ蒸発器210も備える。回転可能なフラッシュ蒸発器210は、磁気結合320を介して、ドライブシャフト325によって駆動される。放射遮蔽体220を用いて、加熱された気化チャンバ200を冷却された計量装置から熱分離する。
【0030】
外周溝270の容積を一貫して満たすことができるように、回転可能シャフト270の送込み部分に近接している粒子材料が攪拌によって流動化されるときに、供給量の均一性が改善される。これは、特定の粒子材料の粒径及び特性に応じて変化することができる回転速度で、アジテーター290を用いて粒子材料をゆっくり攪拌することによって成し遂げることができる。図4は、図3の装置の一部の立体断面図をさらに詳細に示しており、本発明のさらなる顕著な特徴を示す。回転可能シャフト270は、ハウジング240内の第1の開口部255及び第2の開口部260と位置合わせされた狭い外周溝275を有する。第1の開口部255は、貯蔵室から外周溝275への粒子材料を受け取るための開口部であり、第2の開口部260は、粒子材料を外周溝275から気化チャンバ200に吐出するための開口部である。アジテーター290は回転アジテーターであり、複数の細いワイヤのアジテーター棒295を有し、粒子材料を収容する貯蔵室230内に配置される。アジテーター290がこの図において時計方向に回転するのに応じて、アジテーター棒295が特定の材料のバルクを流動化するが、それらの先端は、粒子材料を貯蔵室から外周溝275内に移送するための役割を果たす。アジテーター棒295の流動化及び移送特性は、貯蔵室内の材料が外周溝に架からないようにすることによって、第1の開口部255にある外周溝275の露出した容積を粒子材料で均一に満たすための役割を果たす。楔形の入口225が、回転可能シャフト270の回転方向において開口部225にあり、粒子材料を外周溝275内に誘導するための手段となる。回転可能シャフト270は、ハウジング240内の内部容積の実質的に直径になるような大きさに作られる。このようにして、回転可能シャフト及び内部容積は、外周溝275によって粒子材料を実質的に移送し、回転可能シャフト270の残りの部分に沿って移送しないように協働する。アジテーター290及び回転可能シャフト270は、反対方向に回転できるように、たとえば、歯車によって接続することができ、それにより、貯蔵室230からの粒子材料を、第1の開口部255を通して外周溝275内に、その後、第2の開口部260まで連続して移送し、第2の開口部において、粒子材料は気化チャンバ200内に吐出される。ハウジング240の内部容積は、回転可能シャフト270に厳密に一致する。回転可能シャフト270が回転するのに応じて、回転可能シャフト及び内部容積が協働して、外周溝275よりも径方向に突出する粒子材料を除去する。こうして、粒子材料は外周溝を正確に満たし、材料の体積は高度に制御されている。振動スクレーパー285が第2の開口部260に配置され、振動スクレーパーは、その端部において外周溝275と実質的に同じ断面を有する。回転可能シャフト270が回転するのに応じて、振動スクレーパー285は溝と協働して、溝内に保持される粒子材料を取り除き、粒子材料を第2の開口部260から押し出す。振動スクレーパー285はその長さに沿って振動し、シャフトが回転するのに応答して、吐出される粒子材料の計量された量が、ランダムな長さの棒状物として落下するのではなく、小さな粒子として、たとえば、小さな粒子の粒、若しくは粒子の粒の小さな凝集体、又はその両方の形で気化チャンバ200の中に落下するように、第2の開口部260において粒子材料を流動化する。アクチュエーター235を通して振動の周波数及び振幅を変動させて、粒子材料が均一な体積の小さな粒子として、たとえば、単一の粒子の粒、若しくは粒子の粒の小さな凝集体、又はその両方として分注されるように、第2の開口部260において粒子材料を最適に攪拌又は流動化することができる。その振動は、材料粒子が重力だけの場合よりも速く落下し、かつ計量装置に対して種々の角度において落下するように、材料粒子に付加的な速度を与える。この方法によって種々の角度にわたって材料粒子を分散させることによって、粒子が、回転可能なフラッシュ蒸発器210のより広いエリアを覆うことになり、それにより、粒子が重なり合って蓄積する傾向を最小限に抑える。材料粒子は、振動スクレーパーによって制御される周波数において、かつ回転可能シャフト270の角速度によって制御される容積計量供給量で、回転可能なフラッシュ蒸発器210上に落下し、接触時に気化する。図3において、回転可能なフラッシュ蒸発器210は、円柱形又は円錐形を有する、連続気泡網状ガラス質炭素構造であることが望ましいが、その表面上に一連の細かい外周溝又は螺旋溝を有する中実の円柱体又は円錐体の形をとることもできる。円錐形の回転可能なフラッシュ蒸発器210が、図3に示されるように、回転可能シャフト270に歯車で接続される磁気結合320を通して回転することができる。回転可能なフラッシュ蒸発器210は、円錐体が静止していた場合よりも広い加熱エリアにわたって粒子材料を効果的に分散させる。これにより、回転可能なフラッシュ蒸発器210の表面上に直に材料粒子が落下し、粒子が重なり合って落下した場合よりも迅速に気化できるようになる。高い粒子材料供給量では、静止している気化構成要素上に落下する粒子は、先行して分注された粒子上に落下するので、蓄積する可能性がある。この蓄積は、フラッシュ蒸発を妨げる断熱層を作り出す可能性があり、粒子材料が高温において滞留する時間が長くなるので、結果として材料を劣化させる可能性がある。各材料粒子がフラッシュ蒸発器に直に近づけるようにすることによって、最も迅速な気化を提供し、粒子材料の劣化を最小限に抑える。
【0031】
粒子材料が気化チャンバ200内に分注され、気化されるとき、蒸気の分子はあらゆる方向に進行するので、大部分の分子が脱出し、基板の表面上で凝縮するまで、気化チャンバの加熱された壁面から跳ね返る。しかしながら、気化チャンバ200内の分子の一部は、気化チャンバに入るのに応じて、分注されたばかりの冷たい粒子材料上、振動スクレーパー285を覆う粒子材料上、そして外周溝275内の粒子材料上で凝縮する。この凝縮物は、粒子材料が気化チャンバ200内に落下するのに応じて、2度目に気化される。この凝縮物は、そうでない場合に第2の開口部260から出る緩く固結された粒子材料と結合する可能性があり、粒子材料が、細かく分割された粒子ではなく、ランダムな長さの棒状物として落下する確率を高める。振動スクレーパー285が冷たい材料粒子によって遮蔽される限り、凝縮物をほとんど、又は全く収集しなくなり、収集される任意の凝縮物は、ハウジング240に対するスクレーパーが振動運動によって除去することができる。振動スクレーパー285の運動は、第2の開口部260において蓄積する可能性がある凝縮物を連続的に取り除く傾向があり、気化チャンバ200の開口部において蓄積する可能性がある任意の凝縮物をさらに取り除くことができる。そうでない場合には、この凝縮物は蓄積し、粒子材料の粒子が気化チャンバ200に安定して進入するのを妨げる可能性がある。
【0032】
図5は、図4の気化装置の断面図をさらに詳細に示す。振動スクレーパー285に与えられる軸方向運動が、第2の開口部260から出る固結した粒子材料を流動化し、それにより、粒子材料が気化チャンバ200に塊状物として進入するのを防ぐ。アクチュエーター235によって振動スクレーパー285に与えられる振動運動は、スクレーパーから、さらには第2の開口部260及び気化チャンバ200に隣接する開口部から、凝縮物を取り除く際に効果を発揮することができる。
【0033】
図6は、その中にある回転可能なフラッシュ蒸発器を示す、図3の気化装置の断面図を示す。回転可能なフラッシュ蒸発器210は円錐形を有しており、その磁気結合を見ることができる。上記のように、円錐形のフラッシュ蒸発器210は、網状ガラス質炭素発泡体、炭化シリコン発泡体のようなセラミック発泡体、又はニッケル発泡体のような金属発砲体から構成することができる。円錐形フラッシュ蒸発器は、その表面上に一連の細かい外周溝又は螺旋溝を有する中実のセラミック又は金属材料から構成することもできる。そのような溝は、細かい材料粒子が回転する円錐体表面から気化するまで、その粒子を保持するのを容易にする。そのような網状化材料構造、たとえば、ガラス質炭素の使用は、同じ譲受人に譲渡される米国出願公開第11/834,039号においてLong他によって記述されている。
【0034】
図7は、図6の回転可能なフラッシュ蒸発器の立体断面図であり、冷たい磁気ドライブ結合と熱い気化構成要素との間を物理的に接触させることなく、又は気化チャンバ200の蒸気の完全な状態を破壊することなく、気化チャンバ200の内部にある回転可能なフラッシュ蒸発器210を回転させるための磁気結合320を示す。その結合は、磁気結合320を介して回転ドライブシャフト325に取り付けられるいくつかの磁石315を含み、それらの磁石は回転可能なフラッシュ蒸発器210に取り付けられるドライブラグ340と協働する。フラッシュ蒸発器及びその取り付けられるドライブラグは、セラミックベアリング(図6のベアリング335)上に支持される。熱い回転可能なフラッシュ蒸発器210と冷たい回転可能ドライブシャフト325との間の非接触磁気ドライブによって、その間で熱が流れるのを防ぎ、それにより、フラッシュ蒸発器と共に回転する付加的な加熱構成要素の使用を必要とすることも、付加的な加熱構成要素に電力を伝達するためにスリップリングを複雑にすることもなく、回転可能なフラッシュ蒸発器210を気化チャンバ200からの放射によって加熱できるようにする。磁気結合320はさらに、回転可能なフラッシュ蒸発器210への回転ドライブ接続の周囲を封止するのを不要にする。磁石315が遮蔽され、冷たいままであるので、600℃を超える温度において磁気結合が有効であり、一方、低炭素鋼ドライブラグ340は、実質的に700℃の温度において、その低い磁気抵抗を保持する。
【0035】
本発明は、特定の好ましい実施形態を特に参照しながら詳細に説明されてきたが、本発明の精神及び範囲内で変形及び変更を実施できることは理解されよう。
【符号の説明】
【0036】
5 オーガスクリュー
7 オーガ胴部
8 オーガ構造
9 ねじ山がない部分
120 フラッシュ蒸発器
150 内部容積
155 第1の開口部
160 第2の開口部
170 回転可能シャフト
175 外周溝
185 固定スクレーパー
190 気化装置
200 気化チャンバ
210 回転可能なフラッシュ蒸発器
220 放射遮蔽体
225 楔形の入口
230 貯留室
235 アクチュエーター
240 ハウジング
250 内部容積
255 第1の開口部
260 第2の開口部
270 回転可能シャフト
275 外周溝
285 振動スクレーパー
290 アジテーター
295 アジテーター棒
315 磁石
320 磁気結合
325 ドライブシャフト
335 ベアリング
340 ドライブラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子材料を計量し、気化するための装置であって、
(a)粒子材料を計量するための計量デバイスであって、
(i)粒子材料を受け取るための貯蔵室と、
(ii)内部容積を有し、前記貯蔵室から前記粒子材料を受け取るための第1の開口部、及び前記粒子材料を吐出するための第2の開口部を有するハウジングと、
(iii)前記内部容積内に配置される回転可能シャフトであって、該シャフトは滑らかな表面と、前記貯蔵室から前記粒子材料を受け取るための前記第1の開口部、及び前記粒子材料を吐出するための前記第2の開口部と位置合わせされる外周溝とを有する、回転可能シャフトと、
(iv)前記貯蔵室内に配置される送達する手段であって、前記粒子材料を流動化して該粒子材料を前記貯蔵室から前記外周溝内に移送するために前記回転シャフトと協働する、手段と、
(v)なお、前記回転可能シャフト及び前記内部容積は、前記粒子材料が前記外周溝によって移送され、前記回転可能シャフトの残りの部分に沿って移送されないように協働し、
(vi)前記第2の開口部に関連して配置される擦り取る手段であって、その中に保持される前記粒子材料を取り除き、該擦り取られた粒子材料を流動化し、前記シャフトが回転するのに応じて、計量された量の粒子材料を、前記第2の開口部を通して、単一の粒子の粒、又は粒子の粒の小さな凝集体の形で送達するように前記溝と協働する、手段と、
を備える、計量デバイスと、
(b)前記計量された粒子材料を受け取り、フラッシュ蒸発させるフラッシュ蒸発器と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記送達する手段は、前記貯蔵室から前記外周溝まで前記粒子材料を移送するための役割を果たす複数の棒を有する回転アジテーターを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
擦り取り、流動化する前記手段は、その端部において、前記回転シャフト内の前記溝と実質的に同じ断面を有する振動スクレーパーを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記フラッシュ蒸発器は回転可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記フラッシュ蒸発器は磁気結合を介して回転する、請求項4に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−508817(P2012−508817A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536322(P2011−536322)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/006070
【国際公開番号】WO2010/056319
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(510048417)グローバル・オーエルイーディー・テクノロジー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (95)
【氏名又は名称原語表記】GLOBAL OLED TECHNOLOGY LLC.
【住所又は居所原語表記】13873 Park Center Road, Suite 330, Herndon, VA 20171, United States of America
【Fターム(参考)】