説明

粒子状物質検出装置

【課題】粒子状物質の検出を簡易に行えて低廉であり、測定精度が高い粒子状物質検出装置を提供すること。
【解決手段】一の面が平面状の電極間誘電体4で被覆をされた板状を呈する一の電極1、その一の電極1の一の面の側に粒子状物質11を含む気体が流れる空間を介して配設をされ一の電極1との間に印加をされる電圧によって電界の形成及び放電の何れか又は両方を行う二の電極2、及びその電圧の印加をする電源9、並びに、電極間誘電体4の表面に設けられた凸状の段差基礎誘電体34の更に表面に電極間誘電体4に対し段差をもって配設をされる測定対向電極5、その測定対向電極5と一の電極1との間における電気的特性の測定をする特性測定手段3、及びその特性測定手段3で測定をされる電気的特性の変化量に基づいて放電によって集塵をされた粒子状物質11の量を求める粒子状物質量算出手段13、を備える粒子状物質検出装置100の提供による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気ガス等に含まれる粒子状物質を検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス等には、粒子状物質(Particulate Matter(PM)、有機溶媒可溶成分とスートとサルフェートの3成分として検出されるもの)が含まれており、これが大気汚染の原因になっている。特に、ディーゼルエンジン等の粒子状物質の発生源に不具合が生じれば、大気へ放出される排気ガス中の粒子状物質が増加し、環境に大きな悪影響を与えることになる。これを防ぐためには、排気ガス中の粒子状物質を検出し、ディーゼルエンジン等の不具合を認識することが肝要である。
【0003】
又、近時、公害を防止し環境の改善を図るために、排気ガスの処理に、ディーゼルパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter(DPF))が排気系等に組み込まれて使用されるようになってきている。このDPFは、一般にセラミック製であり、高い信頼性で長期間の使用が可能なものである。但し、熱劣化等によりクラック等の欠陥が発生する可能性は皆無とはいえず、仮にそうなれば微量ではあるが粒子状物質が漏れてしまう。これを防止するためには、DPFで処理された排気ガス中の粒子状物質を検出し、欠陥の発生を即座に検知することが重要である。
【0004】
尚、先行文献として、例えば、特許文献1を挙げることが出来る。特許文献1では、コロナ放電によって粒子状物質を帯電させ、そのイオン電流を測定することにより、粒子状物質の量を測定する粒子状物質検出装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−123761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、粒子状物質に帯電するイオン電流が微弱であることから、その微弱なイオン電流を検出するための大掛かりな検出回路が必要となり、装置が高価になってしまう。加えて、排気ガスの流量が多い場合には、粒子状物質を効果的に帯電させることが出来ず、測定値は、実際に排気ガスに含有されている粒子状物質の量より小さくなり、精度の点で改善すべき余地がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、粒子状物質の検出を簡易に行え、低廉であり、測定精度が高い粒子状物質検出装置を提供することを課題とする。研究が重ねられた結果、以下の手段によって、この課題を解決出来ることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明によれば、一の面が平面状の誘電体(電極間誘電体)で被覆をされた板状を呈する一の電極、その一の電極の一の面の側に粒子状物質を含む気体が流れる空間を介して配設をされ一の電極との間に印加をされる電圧によって電界の形成及び放電の何れか又は両方を行う二の電極、及び上記電圧の印加をする電源、並びに、平面状の誘電体(電極間誘電体)の表面に設けられた凸状の誘電体(段差基礎誘電体)の更に表面に平面状の誘電体(電極間誘電体)に対し段差をもって配設をされる測定対向電極、その測定対向電極と一の電極との間における電気的特性の測定をする特性測定手段、及びその特性測定手段で測定をされる電気的特性の変化量に基づいて電界の形成及び放電の何れか又は両方によって集塵をされた粒子状物質の量を求める粒子状物質量算出手段、を備える粒子状物質検出装置が提供される。
【0009】
上記の通り、測定対向電極を配設するための凸状の誘電体を段差基礎誘電体ともよぶが、これは、見かけ上、類似するので、凸状の誘電体を、物体の基礎、台座、土台等になぞらえた表現であって、段差基礎誘電体の役割は、平面状の電極間誘電体に対し段差をもって(平面状の電極間誘電体から嵩上げして)測定対向電極を配設するところにある。二の電極の放電によって、粒子状物質は集塵されるが、その場所は、この段差基礎誘電体、測定対向電極の表面を含む電極間誘電体の表面上である。
【0010】
本発明に係る粒子状物質検出装置においては、空間を流れる気体の流量の測定又は推定をする流量計を備え、その流量計で測定又は推定をされる気体の流量と粒子状物質の量とに基づいて、空間を流れる気体における粒子状物質の濃度を算出する粒子状物質濃度算出手段を備えることが好ましい。
【0011】
本発明に係る粒子状物質検出装置においては、電気的特性が、抵抗、インダクタンス、静電容量、及びインピーダンスからなる電気的特性群から選ばれる一以上の電気的特性であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る粒子状物質検出装置においては、測定対向電極が線状を呈し、粒子状物質を含む気体が流れる方向に対し垂直方向に長くなるように配設をされることが好ましい。この場合において、線状を呈する測定対向電極が、折れ曲がりながら平面状の誘電体(電極間誘電体)の表面の全面にわたって配設をされることが好ましい。
【0013】
本発明に係る粒子状物質検出装置においては、二の電極が、板状を呈することが好ましい。この場合において、二の電極が、管壁面で構成されることが好ましい。即ち、板状体を丸めて曲面で構成し管状としたものであり、具体的には、排気管の全面又は一面が該当する。
【0014】
本発明に係る粒子状物質検出装置においては、二の電極が、針状又は棒状を呈することが好ましい。
【0015】
本発明に係る粒子状物質検出装置においては、板状を呈する一の電極の他の面を被覆する誘電体(電極外誘電体)と、その誘電体(電極外誘電体)の表面に配設されたヒータと、を備えることが好ましい。
【0016】
本発明に係る粒子状物質検出装置においては、一の電極と測定対向電極との間に電圧の印加をして沿面放電により粒子状物質を酸化除去するための除去用電源を備え、その電圧の印加によって一の電極の一の面に被覆された平面状の誘電体(電極間誘電体)の表面に沿面放電をさせることが好ましい。
【0017】
本発明に係る粒子状物質検出装置においては、測定対向電極が、膜状の誘電体で被覆されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る粒子状物質検出装置は、粒子状物質を含む気体(排気ガス)が通過する流路に設置して、気体に含まれる粒子状物質を検出する装置である。本発明に係る粒子状物質検出装置では、電源によって電圧の印加をして二の電極に放電をさせ、一の電極の電極間誘電体の側と二の電極との間の空間を流れる気体に含まれる粒子状物質を荷電させるか、予め荷電された粒子状物質を、主に一の電極を被覆する電極間誘電体の表面(段差基礎誘電体及び測定対向電極の表面を含む)に集塵させる。そうすると、段差基礎誘電体で電極間誘電体から嵩上げされた測定対向電極と、その測定対向電極に対し粒子状物質が堆積された主に電極間誘電体を挟んで設けられている一の電極と、の間に放射線状に発生する電気的特性が、堆積した粒子状物質の量との間に一定の関係を持ちつつ、変化する。そこで、本発明に係る粒子状物質検出装置では、この電気的特性の変化量を知って、主に電極間誘電体の表面に集塵をされた粒子状物質の量を求めている。定量化することが出来るのであるから、当然に、空間を流れる気体における粒子状物質の有無(量が0(零)か否か)を判断することは可能である。そのため、本発明に係る粒子状物質検出装置は、検出装置と称している。本発明に係る粒子状物質検出装置では、粒子状物質の量を基に補正して空間を流れる気体に含まれる粒子状物質の量を求め、空間を流れる気体の流量との関係から、その気体における粒子状物質の濃度を算出することが可能である。
【0019】
電気的特性として、例えばインピーダンスの変化量の検出をするためには、測定周波数や測定電圧の大きさによって異なるが、10nA(ナノアンペア)レベルの電流の変化の測定を行えればよい。従って、本発明に係る粒子状物質検出装置は、高価にはならず、粒子状物質の検出、あるいは量の測定、更には濃度の測定を、簡易に行うことが出来、且つ、測定誤差は小さい。加えて、粒子状物質の検出、量の測定、濃度の測定によって、ディーゼルエンジン等の不具合や、DPFの欠陥の発生を即座に検知することが可能になるので、これらを通じて、本発明に係る粒子状物質検出装置は、粒子状物質の排出量低減に寄与し、大気汚染の防止に貢献する。
【0020】
本発明に係る粒子状物質検出装置では、平面状の電極間誘電体の表面に凸状の段差基礎誘電体が設けられていて、段差が存在しており、その段差によって物理的な粒子状物質のトラップが可能であるため、低電圧で安定的に粒子状物質の集塵を行うことが出来る。
【0021】
本発明に係る粒子状物質検出装置は、その好ましい態様において、測定対向電極が、線状を呈し、粒子状物質を含む気体が流れる方向に対し垂直方向に長くなるように配設をされ、折れ曲がりながら平面状の誘電体の表面の全面にわたって配設をされる。このような態様の本発明に係る粒子状物質検出装置によれば、電気的特性の測定感度を向上させることが出来るとともに、主に電極間誘電体の上に堆積した粒子状物質を逃さず検出することが可能であり、粒子状物質の量及び濃度の測定精度に優れる。
【0022】
本発明に係る粒子状物質検出装置は、その好ましい態様として、二の電極が板状を呈する場合に、特に、二の電極が管壁面で構成される態様を採ることが出来るので、ディーゼルエンジン等の排気管の中へ、コンパクトに収容することが出来る。
【0023】
本発明に係る粒子状物質検出装置は、その好ましい態様において、電極外誘電体の表面に配設されたヒータを備えるので、一の電極と測定対向電極とによって測定される電気的特性が安定する。加えて、粒子状物質をヒータの熱で酸化除去することが可能となり、粒子状物質の検出を、繰り返し精度よく行うことが可能である。
【0024】
本発明に係る粒子状物質検出装置は、その好ましい態様において、一の電極と測定対向電極との間に電圧の印加をして沿面放電により粒子状物質を酸化除去するための除去用電源を備え、その電圧の印加によって一の電極の一の面に被覆された電極間誘電体の表面に沿面放電をさせることが出来るので、この沿面放電によって、集塵された粒子状物質を酸化除去することが可能である。この酸化除去によって、粒子状物質の検出を、繰り返し精度よく行うことが可能である。
【0025】
本発明に係る粒子状物質検出装置は、その好ましい態様において、測定対向電極が、膜状の誘電体で被覆されているので、放電や排ガスによる劣化が起こり難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明について、適宜、図面を参酌しながら、実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではない。本発明に係る要旨を損なわない範囲で、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良、置換を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明に係る実施形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は、以下に記述される手段である。
【0027】
[粒子状物質検出装置]先ず、本発明に係る粒子状物質検出装置について、構成、機能、作用等を中心に説明する。
【0028】
図1及び図6は、本発明に係る粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す図である。図1はセンサ部を示す断面図であり、図6は電気制御系統を示す構成図である。図1及び図6に示される粒子状物質検出装置100は、板状を呈する一の電極1、板状を呈する二の電極2、一の電極1の(図1における)上面(一の面)を被覆する電極間誘電体4、電極間誘電体4の表面に設けられる段差基礎誘電体34、一の電極1と二の電極2の間に電圧の印加をする電源9、段差基礎誘電体34によって電極間誘電体4の表面から嵩上げされ段差基礎誘電体34の表面に配設をされる測定対向電極5、一の電極1の(図1における)下面(他の面)を被覆する電極外誘電体6、電極外誘電体6の表面(図1における下面)に配設されたヒータ7、そのヒータ7に電気を供給するヒータ用電源10、ヒータ7を覆って保護し周りと隔離して保温するシート状の断熱材8、一の電極1と測定対向電極5との間の電気的特性(の変化)を測定する特性測定装置(手段)3、粒子状物質11の量を算出する粒子状物質量算出装置(手段)13、粒子状物質11の濃度を算出する粒子状物質濃度算出装置(手段)16、流量計14、及び制御装置12で構成される。尚、図1に示される一の電極1、二の電極2、電極間誘電体4、段差基礎誘電体34、測定対向電極5、電極外誘電体6、ヒータ7、及び断熱材8で構成される部分が、粒子状物質11を含む排気ガスが通過する流路に設置される。これらをセンサ部ということがある。
【0029】
粒子状物質検出装置100では、粒子状物質11を含む排気ガスが、図1において(矢印で示されるように)左から右へ、板状を呈する一の電極1を被覆する電極間誘電体4と、板状を呈する二の電極2との間の空間を流れる。この排気ガスの流量は、図1には示されない流量計14によって測定される。この状態で、電源9が、二の電極2に、例えば、直流高電圧の印加をすると、放電が生じ、二の電極2の周囲の排気ガス(分子)はプラスイオンとマイナスイオンに分離し、プラスの直流高電圧の印加された一の電極1に向かって、マイナスイオンが移動する。このとき、排気ガスに含まれる粒子状物質11は、このマイナスイオンと衝突してマイナスに荷電する。そして、荷電された粒子状物質11は、プラスの一の電極1を被覆する電極間誘電体4の表面に、静電気力によって集塵され堆積する。そうすると、その粒子状物質11の堆積の程度によって、一の電極1と、段差基礎誘電体34で電極間誘電体4の表面から嵩上げされた測定対向電極5と、の間に放射線状に生じる(図1を参照)電気的特性が変化するから、その電気的特性の変化量を知れば、集塵によって電極間誘電体4の表面に堆積した粒子状物質(PM)の量が求まる。そして、そのPM堆積量から排気ガスのPM濃度が求まる。
【0030】
図7は、粒子状物質量算出装置13のはたらきを説明するためのグラフであり、図8は、粒子状物質濃度算出装置16のはたらきを説明するためのグラフである。一の電極1と測定対向電極5との間に放射線状に生じる電気的特性の変化量E1は、PM堆積量W1と一定の関係にあり(図7を参照)、特性測定装置3によって電気的特性の変化量E1を知れば、図7に基づく算出機能を有する粒子状物質量算出装置13によって、PM堆積量W1が求まる。そして、排気ガスの流量を一定とすれば、PM堆積量W1は、PM濃度C1と一定の関係にあり(図8を参照)、PM堆積量W1がわかれば、図8に基づく算出機能を有する粒子状物質濃度算出装置16によって、PM濃度C1が求まる。排気ガスの流量が変る場合には、流量計14で求めた流量に基づいて粒子状物質濃度算出装置16が補正をして、PM堆積量W1からPM濃度C1を求める。
【0031】
粒子状物質検出装置100では、粒子状物質量算出装置13及び粒子状物質濃度算出装置16は、制御装置12に組み込まれている。その制御装置12は、主に、例えば電気信号入出力機能を備えたシーケンサ等で構成され、粒子状物質量算出装置13と粒子状物質濃度算出装置16の他に、流量計14で測定された流量の電気信号を入力する機能を備えるとともに、ヒータ用電源10や電源9の制御や、工程の切換等を含め、装置全体の制御を行う。
【0032】
一の電極1と測定対向電極5の間に放射線状に生じる電気的特性として、例えばインピーダンスを求める場合には、交流電源を用い、抵抗、静電容量、インダクタンスをそれぞれ測定することが出来る。その他に、定電流源を使い、一の電極1と測定対向電極5の間に放射線状に生じる電圧の変化を測定することによって、インピーダンスの変化を測定してもよく、定電圧源を使って、一の電極1と測定対向電極5の間に粒子状物質を伝わって放射線状に流れる電流の変化や、一の電極1と測定対向電極5の間に蓄積される電荷の変化を測定することによって、一の電極1と測定対向電極5の間のインピーダンスの変化を測定してもよい。
【0033】
特性測定装置3は、上記のような電気的特性及びその変化の求め方によって、適切な構成とすることが可能である。例えば、特性測定装置3は、一の電極1と測定対向電極5に電圧を印加する交流電源と測定器とで構成することが出来る。好ましい測定器としては、LCRメータを挙げることが出来る。
【0034】
既述のように、本発明に係る粒子状物質検出装置では、先ず、排気ガス中から粒子状物質11を主に電極間誘電体4の表面に集塵し堆積させ(集塵工程)、次いで、一の電極1と測定対向電極5の間の電気的特性の変化を測定する(測定工程)、という主に2つの工程を経て、粒子状物質が検出され、あるいは、その量が求められる(他に、後述する粒子状物質11を除去する除去工程がある)。そして、一の電極1は、集塵工程では集塵用電極として機能し、測定工程では測定用電極としてはたらく。そのため、工程毎に、一の電極1の接続を切り替えられるようにしておく必要がある(図6を参照)。即ち、集塵工程では、一の電極1と特性測定装置3を切り離し、測定工程では、一の電極1と電源9を切り離す。制御装置12は、これらの工程の管理、制御を行う。
【0035】
排気ガスが流れる空間を形成する電極間誘電体4と二の電極2との間の好ましい距離は、0.5〜50mmであり、より好ましい距離は、0.6〜40mmである。このような間隔にすることにより、より効率的に放電させ、粒子状物質を集塵することが出来る。電極間誘電体4と二の電極2との間の距離が0.5mmより短いと、集塵率が低下することにより測定精度が低下することがあり、50mmより長いと、より高い電圧が必要になり無駄なエネルギーを要することがある。
【0036】
電源9は、一の電極1と二の電極2との間に放電を発生させ得る安定した直流電圧又は交流電圧を供給するものである。電源9として、例えば、フライバック方式による電源回路等を用いた電源を採用することが出来る。これは、入力側の電源からトランスにエネルギーを蓄積し、蓄積されたエネルギーを出力側に放出することによって高圧の直流電圧を供給することが出来るものである。フライバック方式による電源回路においては、トランスへのエネルギーの蓄積と放出は、トランジスタ等により制御され、出力側の電流はダイオードにより整流される。
【0037】
図4は、電極外誘電体6及び一の電極1を表した斜視図である。図4において矢印は排気ガスの流れ方向を示している。一の電極1は、二の電極2の対向電極として電界の形成及び放電の何れか又は両方を行うとともに、荷電された粒子状物質11を吸引し集塵する部材としての役割を果たす。粒子状物質検出装置100における板状の一の電極1は、図4に示されるように、概ね長方形を呈しているが、他に、五角形等の多角形、円形、楕円形、トラック形状等の形状や、外周に凹凸が形成される形状、あるいは、1又は複数のスリットが形成された形状等を採ることが出来る。
【0038】
板状の二の電極2は、斜視図を示さないが、一の電極1と同様に、概ね長方形を呈している。一の電極1と同様に、五角形等の多角形、円形、楕円形、トラック形状や、外周に凹凸が形成される形状、あるいは、1又は複数のスリットが形成される形状を採ることも出来る。
【0039】
測定対向電極5は線状を呈し、排気ガスが流れる(図1における矢印)方向に対し垂直方向に長くなるように配設をされる。線状の測定対向電極5相互の間の距離は、一の電極1が粒子状物質11を集塵することによって生じた、一の電極1と測定対向電極5の間に放射線状に生じる電気的特性の変化を、明確に測定することが出来る範囲に設定される。例えば、0.2〜10mm程度である。
【0040】
図5は、線状を呈する測定対向電極の他の態様を表す斜視図である。図5において矢印は排気ガスの流れ方向を示している。図5に示される測定対向電極105は、折れ曲がりながら電極間誘電体4の表面の全面にわたって配設をされている。測定対向電極105は、電極間誘電体4の表面に設けられた段差基礎誘電体34の上に電極間誘電体4に対し段差をもって配設をされるものであるから、段差基礎誘電体34も、折れ曲がりながら電極間誘電体4の表面の全面にわたって設けられる。本発明に係る粒子状物質検出装置では、電気的特性の測定感度及び測定精度を向上させる観点から、線状の測定対向電極相互の間の距離が長いことは好ましくなく、一方、測定対向電極が排気ガスが流れる空間全てに対応する位置に配設されることが好ましい。図5に示される測定対向電極105は、このような好ましい態様を具現化したものである。
【0041】
粒子状物質検出装置100の説明に戻る。ヒータ7の形状及び大きさは、電極間誘電体4の表面に集塵された粒子状物質11の全部を燃焼することが可能なように決定すればよい。
【0042】
ヒータ7は、粒子状物質11を酸化して除去するときだけでなく、一の電極1と測定対向電極5の間に放射線状に生じる電気的特性の変化を測定する場合に、結露等の水分の影響を受けないようにするために使用される。例えば、インピーダンス変化の検出や放電の際に、適度に加熱することによって、一の電極1と測定対向電極5への水分の付着を防止することが出来る。このときの好ましい加熱温度は、200〜300℃である。
【0043】
好ましいヒータ用電源10として、効率的な温度制御を可能とする観点から、降圧チョッパ方式の電源を挙げることが出来る。特に好ましいものは、自己消弧型の半導体スイッチを使用した降圧チョッパ方式のスイッチング電源である。この場合、好ましいスイッチング周波数は、可聴周波数以上の20kHz以上である。燃費に直接影響するため、ヒータ用電源の電流、電力は、より小さくすることが望ましい。又、好ましいヒータ用電源10は、電圧と電流からヒータ7の温度を算出して温度制御機能を有するものである。
【0044】
断熱材8は、ヒータ7で発生する熱の放熱を抑制して、ヒータ7の熱を粒子状物質11の燃焼に、効率的に使用することを可能とする。断熱材8の好ましい厚さは、放熱を抑制することが出来る厚さとして、例えば、100〜1000μm程度である。
【0045】
尚、粒子状物質検出装置100では、ヒータ7及びヒータ用電源10の代わりに、又はそれらと併用して、一の電極1と測定対向電極5との間に電圧の印加をして、電極間誘電体4の表面に沿面放電をさせるための除去用電源を備える態様を採ることが出来る。この場合、除去用電源を含み沿面放電をさせるために、集塵工程及び測定工程とは異なる電気制御回路を構築可能にしておく必要がある。即ち、一の電極1と特性測定装置3、一の電極1と電源9、をそれぞれ切り離し、一の電極1と測定対向電極5とを除去用電源に接続することが出来るような切換回路を設けておく必要がある。除去用電源としては、交流電源やパルス電源を採用することが出来る。
【0046】
以上、本発明に係る粒子状物質検出装置の一の実施形態を説明したが、他の実施形態として、二の電極を管壁面で構成した態様、あるいは針状又は棒状を呈する二の電極を採用した態様を挙げることが出来る。図2は、前者に相当する粒子状物質検出装置200を表す断面図であり、図2では、管状の二の電極202が管壁面を構成している。図2において、排気ガスが流れる方向は、手前から奥側に向けた方向である。図3は、後者に相当する粒子状物質検出装置300を表す断面図であり、二の電極302は先の尖った棒状を呈している。この粒子状物質検出装置300では、放電はコロナ放電となる。粒子状物質検出装置200,300は、原理・作用、二の電極を除く装置構成は、粒子状物質検出装置100に準じたものであるので、説明は省略する。又、本発明に係る粒子状物質検出装置の更に他に実施形態として、測定対向電極を膜状の誘電体で被覆した態様を採ることが可能である。
【0047】
[粒子状物質検出装置の材料]次に、本発明に係る粒子状物質検出装置の各構成要素を形成する材料について、粒子状物質検出装置100の場合を例にして、説明する。
【0048】
一の電極1、二の電極2、及び測定対向電極5、並びにこれらの接続に用いる配線を形成する好ましい材料として、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、チタン、マンガン、モリブデン及びタングステンからなる群から選択される少なくとも一種を含有するものが挙げられる。これらの成分の好ましい含有率は、20体積%以上、より好ましい含有率は60体積%以上である。又、一の電極1、二の電極2、及び測定対向電極5、並びにこれらの接続に用いる配線を形成する材料として、ステンレススチールを採用することが出来る。
【0049】
電極間誘電体4、電極外誘電体6、段差基礎誘電体34、及び断熱材8を形成する好ましい材料として、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、ジルコニア、コーディエライト、ムライト、スピネル、アルミニウム−チタン系酸化物、マグネシウム−カルシウム−チタン系酸化物、バリウム−チタン−亜鉛系酸化物、及びバリウム−チタン系酸化物からなる群から選択される少なくとも一種を含むセラミックを挙げることが出来る。上記セラミックスにガラス成分を混合した低温焼成可能なセラミック−ガラス複合材料も使用することが出来る。このようなセラミック製の電極間誘電体4、電極外誘電体6、及び段差基礎誘電体34、は、温度変動が発生しても破壊され難く、耐熱衝撃性に優れる。断熱材8の場合は、多孔質やファイバ状とすることが好ましい。これらの材料は、測定対向電極を膜状の誘電体で被覆した態様における、その膜状の誘電体の好ましい材料としても採用される。
【0050】
ヒータ7を形成する好ましい材料は、白金、銅、ニッケル、チタン、マンガン、タングステン、モリブデン、タングステンカーバイド等である。特に、白金は、抵抗値と温度との関係において高い精度を示すので、これをヒータ7の材料として使用することにより、精度の高い温度制御が可能となる。
【0051】
[粒子状物質検出装置の製造方法]次に、本発明に係る粒子状物質検出装置を製造する方法について、粒子状物質検出装置100を作製する場合を例にして、説明する。
【0052】
先ず、既述の電極間誘電体4、電極外誘電体6、段差基礎誘電体34、及び断熱材8として好ましいセラミック原料に、必要に応じて、バインダ、可塑剤、分散剤、水や有機溶剤等の溶媒を混合して、スラリー状の成形用原料を調製する。混合に際しては、アルミナ製ポット及びアルミナ玉石、又は、モノボール(ボールミル)を使用することが出来る。電極間誘電体4、電極外誘電体6、段差基礎誘電体34、及び断熱材8の原料は、同じ組成としてもよいし、異なる組成としてもよい。断熱材8の成形用原料には、発泡剤を入れることが好ましい。
【0053】
バインダは、水系バインダとして、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド等を好適に使用することが出来、非水系バインダとして、ポリビニルブチラール、アクリル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等を好適に使用することが可能である。アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等を挙げることが出来る。のちのグリーンシートの成形、乾燥、焼成の際に、クラックの発生を抑制するという観点から、バインダの好ましい添加量は、セラミック原料100質量部に対して、3〜20質量部であり、特に好ましい添加量は、6〜17質量部である。
【0054】
好ましい可塑剤は、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジブチルフタレート、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル等である。可塑剤の好ましい添加量は、バインダ100質量部に対して、30〜70質量部であり、特に好ましい添加量は、45〜55質量部である。70質量部より多いと、グリーンシートが柔らかくなりすぎ、シートを加工する工程において変形し易くなることがあり、30質量部より少ないと、グリーンシートが硬くなりすぎ、曲げただけでクラックが入る等、ハンドリング性が悪くなることがある。
【0055】
好ましい分散剤は、水系ではアニオン系界面活性剤、ワックスエマルジョン、ピリジン等であり、非水系では脂肪酸、リン酸エステル、合成界面活性剤等である。分散剤の好ましい添加量は、セラミック原料100質量部に対して、0.5〜3質量部であり、特に好ましい添加量は、1〜2質量部である。0.5質量部より少ないと、セラミック原料の分散性が低下することがあり、グリーンシートにクラック等が生じることがある。3質量部より多いと、セラミック原料の分散性は変わらずに焼成時の不純物を増やすことになる。
【0056】
好ましい有機溶剤(溶媒)は、キシレン、ブタノール等である。有機溶剤は、一種単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。好ましい溶媒の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、50〜200質量部であり、特に好ましい添加量は、75〜150質量部である。
【0057】
次に、スラリー状の成形用原料を、減圧下で撹拌して脱泡し、更に所定の粘度となるように調製する。シート状に成形し易くなるという観点から、好ましい粘度は、B型粘度計で測定した値として、2.0〜6.0Pa・sであり、より好ましい粘度は、3.0〜5.0Pa・sであり、特に好ましい粘度は、3.5〜4.5Pa・sである。
【0058】
そして、粘度が調製された成形原料を、シート状に成形して、のちに電極間誘電体4、電極外誘電体6、段差基礎誘電体34、及び断熱材8となるグリーンシートを形成する。好ましい成形方法は、ドクターブレード法、プレス成形法、圧延法、カレンダーロール法等である。好ましいグリーンシートの厚さは、50〜800μmである。
【0059】
次いで、得られたグリーンシートの表面に、のちに一の電極1、測定対向電極5、ヒータ7、及び必要な配線となる導体ペーストを配設するとともに、グリーンシートを積層してグリーン積層体を得る。導体ペーストは、既述の一の電極1、測定対向電極5、ヒータ7、及び必要な配線に好適な材料からなる粉末に、バインダ及びテルピネオール等の溶剤を加え、トリロールミル等を用いて十分に混錬して調製することが出来る。導体ペーストの好適な配設手段は、スクリーン印刷法である。
【0060】
グリーン積層体を得るために、具体的には、先ず、電極外誘電体6となるグリーンシートの一の面には、一の電極1及び必要な配線となる導体ペーストを印刷し、更に、電極間誘電体4となるグリーンシートを積層し、続いて、段差基礎誘電体34となるグリーンシートを積層し、その段差基礎誘電体34となるグリーンシートの表面に、測定対向電極5及び必要な配線を、所望のパターンで(測定対向電極は、例えば図5に示される態様を採ることが好ましい)印刷する。測定対向電極5のための配線は、電極間誘電体4となるグリーンシートの表面に形成してもよい。他方、電極外誘電体6となるグリーンシートの他の面には、ヒータ7及び必要な配線となる導体ペーストを印刷し、更に断熱材8となるグリーンシートを積層する(図1を参照)。グリーンシートの積層は加圧しながら行うことが好ましい。
【0061】
次に、得られたグリーン積層体を、60〜150℃で乾燥し、有機バインダを含有する場合には400〜800℃で脱脂し、その後、1200〜1600℃で焼成する。このようにして、粒子状物質検出装置100を構成する、一の電極1、電極間誘電体4、段差基礎誘電体34、測定対向電極5、電極外誘電体6、ヒータ7、及び断熱材8を含む焼成積層体が得られる。
【0062】
二の電極2は、既述の好適な材料からなる市販の薄板を購入して用い、上記焼成積層体に支持部材を介して一体化させる。二の電極として、セラミックスと導体ペーストを積層したものを用いてもよい。支持部材としては、既述の電極間誘電体4、電極外誘電体6、及び断熱材8に好適な材料からなる焼結体を使用することが出来る。又、粒子状物質11を含む排気ガスが流れる空洞(空間)が形成されるように、上記焼成積層体と二の電極2の支持部材とを、一体化させた積層構造としてもよい。この場合、上記焼成積層体を得る前に、上記したグリーン積層体の電極間誘電体4(測定対向電極5)の側に、その空洞を形成するグリーンシート(支持部材に相当する部分を形成するもの)と、天板となるグリーンシートと、を更に積層し、その天板となるグリーンシートの内面(空洞に対向する面)に、のちに二の電極2及び必要な配線となる導体ペーストを配設し、これら全体からなるグリーン積層体を得て、乾燥、必要な脱脂、焼成を行えばよい。
【0063】
電源9、特性測定装置3、ヒータ用電源10は、既述の好ましい仕様に合致した市販品を購入する。流量計14も市販品を採用することが出来る。電源9は、一の電極1と二の電極2に切り離し可能なように接続し、特性測定装置3は、一の電極1と測定対向電極5に切り離し可能なように接続し、ヒータ用電源10はヒータ7に接続する。粒子状物質量算出装置13及び粒子状物質濃度算出装置16は、シーケンサ等のコンピュータにおいてソフトウエアで構築することが出来る。制御装置12は、既述又は後述する粒子状物質検出装置100の動作を実現するように、シーケンサ等のコンピュータにおけるソフトウエア及び実体的な制御回路(ハードウエア)で構築することが出来る。以上によって、粒子状物質検出装置100を作製することが出来る。
【0064】
[粒子状物質検出装置の使用方法]次に、本発明に係る粒子状物質検出装置を使用する方法について、粒子状物質検出装置100の場合を例にして、説明する。
【0065】
先ず、粒子状物質検出装置100のセンサ部を、例えばディーゼルエンジンの排気系(排気ガス管)に設置し、電源供給、制御線接続等を行い、使用可能な状態とする。
【0066】
(集塵工程)一の電極1を特性測定装置3から切り離した状態で、電源9によって二の電極2と一の電極1との間に直流の高電圧を印加して放電し、粒子状物質11を荷電させて集塵し、主に電極間誘電体4の表面に堆積させる。
【0067】
高電圧を印加する好ましい時間は、0.5〜120秒であり、より好ましくは2〜10秒である。0.5秒より短いと、粒子状物質11の堆積量(集塵量)が少なくなるため、粒子状物質量11の測定精度が低下することがあり、120秒より長いと、粒子状物質11の集塵量が多くなるため、のちに、インピーダンスの変化量の検出から、粒子状物質11の量を正確に把握し難くなることがある。
【0068】
一の電極1と二の電極2との間に印加する好ましい電圧は、電極間の距離によって異なるが、印加する電圧を高くすることで電界が強まり集塵力が向上する。その一方で、絶縁及び絶縁距離等が問題となり装置が大型化するため、実際上は、上記電圧は10kV以下が望ましい。
【0069】
一の電極1と二の電極2との間を流れる放電による好ましい電流は、1mA以下であり、更に好ましい電流は、1〜100μAである。1μAより小さいと、集塵率が低下することがある。
【0070】
使用電力は、本発明に係る粒子状物質検出装置が自動車の排気系で使用される場合には、燃費に直接影響を与えるので小さい方が望ましい。又、発生する電磁ノイズの低減や、放電を発生させる回路の大きさから考えても、好ましい使用電力は10W以下であり、より好ましい使用電力は1W以下である。
【0071】
(測定工程)粒子状物質11の堆積を終えたら、二の電極2と一の電極1との間における高電圧の印加を停止して放電を止め、電源9を一の電極1から切り離す。そして、一の電極1を特性測定装置3に接続し、特性測定装置3を稼動させ、好ましくは1〜60秒程度の時間で、一の電極1と測定対向電極5の間に放射線状に生じたインピーダンスの変化量を測定する。このインピーダンスの変化量によって、粒子状物質11の量及び濃度が求まる。
【0072】
特性測定装置3を交流電源とLCRメータで構成する場合に、交流電源から印加される好ましい電圧の値は、1〜60Vであり、より好ましい電圧の値は2〜30Vである。1Vより小さいと検出信号が小さくなってノイズの影響を受け易くなり、60Vより大きいと汎用ICの使用が出来なくなることがある。好ましい測定周波数は、300kHz以下である。
【0073】
(除去工程)一の電極1と測定対向電極5の間におけるインピーダンスの変化量の測定を終えたら、ヒータ用電源10によってヒータ7を稼動させ、電極間誘電体4の表面に堆積した粒子状物質11を酸化して除去する。
【0074】
ヒータ用電源10が降圧チョッパ方式のスイッチング電源である場合、ヒータ7に印加される好ましい電流は0.8〜4A程度であり、好ましい使用電力は、48W以下である。
【0075】
ヒータ7によって、粒子状物質11を酸化除去するときの好ましい時間は、1〜600秒であり、特に好ましい時間は、3〜120秒である。1秒より短いと粒子状物質11の酸化除去が不十分になることがあり、600秒より長いと無駄にエネルギーを消費することがある。
【0076】
ヒータ7によって、電極間誘電体4の表面に集塵された粒子状物質11を酸化除去するときの好ましい温度は、500〜900℃であり、特に好ましい温度は、550〜700℃である。500℃より低いと粒子状物質11が酸化除去され難くなることがあり、900℃より高いとヒータ7(素子)の寿命が短くなることがある。
【0077】
尚、既述のように、ヒータ7及びヒータ用電源10の代わりに、又はそれらと併用して、一の電極1と測定対向電極5との間に電圧の印加をして、電極間誘電体4の表面に沿面放電をさせるための除去用電源を備え、その沿面放電によって、集塵された粒子状物質11を酸化除去することが出来る。この場合、沿面放電させるときの好ましい電圧は、電極間誘電体4の厚さによって異なるが、例えば2〜15kVである。又、好ましい使用電力は、10〜30Wである。沿面放電する好ましい時間は、1〜600秒であり、特に好ましい時間は、3〜120秒である。1秒より短いと粒子状物質11の酸化除去が不十分になることがとがあり、600秒より長いと無駄にエネルギーを消費することがある。
【0078】
以上のように、集塵工程、測定工程、除去工程を繰り返すことによって、安定して、長期にわたり、粒子状物質11の検出を続けることが可能である。尚、ディーゼルエンジンの排気ガスを粒子状物質検出対象とする場合には、ディーゼルエンジンの回転数、トルク、排気ガスの流量、温度等の条件が、特定の状態となったときに電界の形成及び放電の何れか又は両方を行うことが好ましい。これらは、ディーゼルエンジンの情報を信号として制御装置12へ入力するとともに、排気ガス管に温度計を設け、その情報を信号として制御装置12へ入力することによって、制御装置12(シーケンサ等)で判断をさせることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る粒子状物質検出装置は、ディーゼルエンジンや煙道等の排気ガス等に含まれる粒子状物質を検出する手段として、好適に利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す図であり、センサ部のみを表す断面図である。
【図2】本発明に係る粒子状物質検出装置の他の実施形態を模式的に示す図であり、センサ部のみを表す断面図である。
【図3】本発明に係る粒子状物質検出装置の他の実施形態を模式的に示す図であり、センサ部のみを表す断面図である。
【図4】本発明に係る粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す図であり、電極外誘電体及び一の電極を表した斜視図である。
【図5】本発明に係る粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す図であり、測定対向電極の他の態様を表す斜視図である。
【図6】本発明に係る粒子状物質検出装置の一の実施形態を模式的に示す図であり、電気制御系統を表す構成図である。
【図7】本発明に係る粒子状物質検出装置における粒子状物質量算出装置のはたらきを説明するためのグラフである。
【図8】本発明に係る粒子状物質検出装置における粒子状物質濃度算出装置のはたらきを説明するためのグラフである。
【符号の説明】
【0081】
1:一の電極、2,202,302:二の電極、3:特性測定装置、4:電極間誘電体、5,105:測定対向電極、6:電極外誘電体、7:ヒータ、8:断熱材、9:電源、10:ヒータ用電源、11:粒子状物質、12:制御装置、13:粒子状物質量算出装置、14:流量計、16:粒子状物質濃度算出装置、34:段差基礎誘電体、100,200,300:粒子状物質検出装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の面が平面状の誘電体で被覆をされた板状を呈する一の電極、その一の電極の一の面の側に粒子状物質を含む気体が流れる空間を介して配設をされ一の電極との間に印加をされる電圧によって電界の形成及び放電の何れか又は両方を行う二の電極、及び前記電圧の印加をする電源、並びに、
前記平面状の誘電体の表面に設けられた凸状の誘電体の更に表面に前記平面状の誘電体に対し段差をもって配設をされる測定対向電極、その測定対向電極と前記一の電極との間における電気的特性の測定をする特性測定手段、及びその特性測定手段で測定をされる電気的特性の変化量に基づいて前記電界の形成及び放電の何れか又は両方によって集塵をされた粒子状物質の量を求める粒子状物質量算出手段、
を備える粒子状物質検出装置。
【請求項2】
前記空間を流れる気体の流量の測定又は推定をする流量計を備え、その流量計で測定又は推定をされる気体の流量と前記粒子状物質の量とに基づいて、前記空間を流れる気体における粒子状物質の濃度を算出する粒子状物質濃度算出手段を備える請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
前記電気的特性が、抵抗、インダクタンス、静電容量、及びインピーダンスからなる電気的特性群から選ばれる一以上の電気的特性である請求項1又は2に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項4】
前記測定対向電極が線状を呈し、前記粒子状物質を含む気体が流れる方向に対し垂直方向に長くなるように配設をされる請求項1〜3の何れか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項5】
前記線状を呈する測定対向電極が、折れ曲がりながら前記平面状の誘電体の表面の全面にわたって配設をされる請求項4に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項6】
前記二の電極が、板状を呈する請求項1〜5の何れか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項7】
前記二の電極が、管壁面で構成される請求項6に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項8】
前記二の電極が、針状又は棒状を呈する請求項1〜5の何れか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項9】
前記板状を呈する一の電極の他の面を被覆する誘電体と、その誘電体の表面に配設されたヒータと、を備える請求項1〜8の何れか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項10】
前記一の電極と前記測定対向電極との間に電圧の印加をして沿面放電により粒子状物質を酸化除去するための除去用電源を備え、その電圧の印加によって前記一の電極の一の面に被覆された平面状の誘電体の表面に沿面放電をさせる請求項1〜9の何れか一項に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項11】
前記測定対向電極が、膜状の誘電体で被覆されている請求項1〜10の何れか一項に記載の粒子状物質検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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